説明

自動水栓装置

【課題】自動水栓装置においてイルミネーション効果を発揮させる。
【解決手段】 自動水栓装置において、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在しないときには、発光時間比率H(=Ton/Toff)が14ppmで、かつ発光時間Thが1μsecになっているので、使用者にとって発光素子16からの出射光が実質的に視認されなくなる。水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在するときには、発光時間比率Hを大きくする。このため、発光素子16から出射光を照明光として水栓ケース19の出射部21から出射させる。このため、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物(使用者の手など)が存在するときには、発光素子16から出射光が視認される。したがって、発光素子16以外に照明用ランプを用いることなく、イルミネーション効果を発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動的に吐水口から水を流す自動水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動水栓装置において、電磁弁と、電磁弁を開閉して給水を制御する制御回路と、この制御回路に制御信号を入力する物体検出センサと、物体検出センサは、間欠的に発光する発光素子と、検知対象物(例えば、使用者の手)からの光の反射を受光する受光素子とを備え、受光素子が所定量以上の光を受光した場合に制御回路が検知対象物を検出したとして電磁弁を開弁して水栓ケースの吐水口から吐水させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、照明用ランプからの光を水栓ケースの吐水口付近から照射してイルミネーション効果を発揮させるものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平4−2924号公報
【特許文献2】特開2002−266393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1の自動水栓装置と特許文献2の水栓金具とを組み合わせて、電磁弁の開弁時に照明ランプを点灯させてイルミネーション効果を発揮させるように構成した場合には、発光素子および受光素子以外に、照明ランプが必要になり、部品数が増加してしまう。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、部品数の増加を抑えるようにした自動水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、吐水口(20)に向けて水を流す給水管(11)を開閉する弁(12)と、
光を出射する発光素子(16)と、
前記光を間欠的に出射させるように前記発光素子を制御する第1の制御手段(S100、S110、S120、S130、S140、S250)と、
前記発光素子の出射光の検知対象物に対する反射光を受光する受光素子(17)と、
前記受光素子により反射光を受光したか否かを判定することにより、前記吐水口の周辺に検知対象物が存在する否かを判定する第1の判定手段(S140、S150、S160、S230、S231、S232)と、
前記吐水口の周辺に検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定したときには、前記弁を開弁して前記給水管からの水を前記吐水口から吐出させ、前記吐水口の周辺に検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定したときには、前記弁を閉弁して前記吐水口からの水を吐出させることを停止する第2の制御手段(S180、S234)と、を備える自動水栓装置であって、
前記発光素子は、前記光として可視光を出射するものであり、
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定したときには、前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定したときに比べて、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を大きくして、前記出射光を照明光として出射させるように前記発光素子を制御する第3の制御手段(S190、S200、S210、S220、S230、S240)を備えることを特徴とする。
【0007】
これにより、吐水口の周辺に検知対象物が存在するときには、発光素子から出射光を照明光として出射させることができるので、発光素子以外に照明用ランプを用いることなく、イルミネーション効果を発揮することができる。したがって、部品数の増加を抑えることができる。
【0008】
ここで、第3の制御手段は発光素子を間欠的に点灯させる場合に限らず、連続的に点灯させるようにしてもよい。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定した場合において、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率は、4ppm以下で、かつ前記発光素子における発光時間が10μsec以下になっていることを特徴とする。
【0010】
これにより、吐水口の周辺に検知対象物が存在しないときには、発光素子の出射光が実質的に視認されなくなる。更に一般的な蛍光灯などの照明器具の発光周期は16msec〜20msecおよび20μsec〜100μsecであるのに対し、これとは異なる発光時間を10μsec以下にすることにより、蛍光灯などの照明光と識別し易くし、蛍光灯などによる誤検知を防止することができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記吐水口と、前記発光素子の出射光を前記吐水口の周辺に出射する出射部(21)と、前記検知対象物から反射される反射光を受光する受光部(22)と、を有する水栓ケース(19)と、
前記発光素子および前記受光素子をそれぞれ収納する本体ケーシング(10)と、
前記発光素子の出射光を前記水栓ケースの出射部に導く第1の光ファイバ(18a)と、
前記水栓ケースの受光部で受光した反射光を前記受光素子に導く第2の光ファイバ(18b)と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、水栓ケース内に発光素子および受光素子を収納する必要がなくなるので、水栓ケースの小型化を図ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明では、前記第1、第2の光ファイバは、プラスチック製の光ファイバであることを特徴とする。
【0014】
一般的に、プラスチック製の光ファイバは、比較的に自由に曲げられる。このため、第1、第2の光ファイバとしてプラスチック製の光ファイバを用いると、第1、第2の光ファイバの設置位置の自由度が増す。
【0015】
ここで、一般的に、プラスチック製の光ファイバとしては、波長が600400nm〜700nmの光の透過率が良い。しかしながら400nm〜600nmの帯域は、一般に受光素子として用いられるフォトダイオードの感度が低いため、総合的に高い信号レベルを得るためには、600nm〜700nmの帯域を用いるのが良い。
【0016】
そこで、請求項6に係る発明のように、前記発光素子の出射光の波長は、600nm〜700nmとしてもよい。
【0017】
請求項5に係る発明では、前記第1、第2、第3の制御手段と前記第1の判定手段とをそれぞれ実行する制御装置(15)を備え、前記制御装置は、前記本体ケーシングに収納されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に係る発明では、前記吐水口の周辺の明度を検出する明度センサと、
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定した場合において、前記明度センサの検出値に基づいて、前記吐水口の周辺の明度が小さい場合ほど、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を下げるように前記発光素子を制御する第4の制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項8に係る発明では、前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定した場合において、夜間は昼間に比べて前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を下げるように前記発光素子を制御する第4の制御手段を備えることを特徴とする。
【0020】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態の照明付自動水栓装置の全体図を示す。
【0022】
照明付自動水栓装置は本体ケーシング10aを備えている。本体ケーシング10aには、給水管11が貫通している。給水管11の入口側には水道管が接続されている。給水管11の出口側には給水ホース14を介して水栓ケース19の吐出口に接続されている。
【0023】
本体ケーシング10内には、電磁弁12が配置されている。電磁弁12は、給水管11の入口側と出口側との間を開閉する弁体である。
【0024】
本体ケーシング10内には、発電機13が配置されている。発電機13は給水管11に対して直列的に配置されている。発電機13は、電磁弁12に対して給水管11内の水流れに対して下流側に配置されている。発電機13は、内蔵する水車を給水管11内の水流により回転させて発電する。
【0025】
本実施形態の発電機13は、水車の回転軸に結合されているロータとしての磁石と、この磁石に対して回転軸の径方向外周側に配置されるステータコイルとを備え、磁石の回転によりステータコイルに誘導起電力を発生させる。
【0026】
本体ケーシング10内には、制御装置15が配置されている。制御装置15は、マイクロコンピュータ15a、蓄電池15b、カウンタ15c、15d、発光素子16および受光素子17、等を備えている。
【0027】
マイクロコンピュータ15aは、後述するように、発光素子16の点灯処理と受光素子17の受信信号を用いた検知対象物の検出処理とを実行する。
【0028】
蓄電池15bは、二次電池からなるものであって、発電機13により発電された電力を蓄え、この電力をマイクロコンピュータ15a、発光素子16等の自動水栓装置で必要とする電力は蓄電池15bの電力(すなわち、発電機3の発電電力)で賄うようになっている。
【0029】
発光素子16は、可視光を投光用光ファイバ18aに向けて出射する発光ダイオードである。発光素子16は、後述するように、検知対象物の照明用の光源として用いられている。発光素子16の出射光の波長は、600nm〜700nmである。
【0030】
ここで、波長600nmnm〜700nm付近の波長の光を用いるのは発光ダイオードの発光効率が良いことと、後述する受光素子に用いるフォトダイオードの感度が高いこと、およびプラスチック製の光ファイバに対する透過率が良いためである。
【0031】
投光用光ファイバ18aは、発光素子16と水栓ケース19の出射部21との間に配設されている。投光用光ファイバ18aは、発光素子16の出射光を水栓ケース19の出射部21に導く。
【0032】
受光素子17は、フォトダイオード等から構成され、受光用光ファイバ18bにより導かれる光を受光して検知信号を出力する。受光素子17としてはその波長が650nm付近に高い感度を持つのものが用いられている。
【0033】
これにより、受光素子17の波長感度特性と、発光素子16の出射光波長特性との間のマッチングをとることができる。また、受光回路(図示せず)は1μsec(周波数1MHz)付近の信号に対して高い増幅率を有するようにバンドパスフィルタと増幅器を組合わせた回路になっている。
【0034】
受光用光ファイバ18bは、受光素子17と水栓ケース19の受光部22との間に配設されており、受光用光ファイバ18bは、受光部22で受光した光を受光素子17に導く。
【0035】
本実施形態の光ファイバ18a、18bは、プラスチック製の光ファイバが用いられる。理由は安価である上、小径の曲げにも耐えるため小形の水栓ケースへの収納に自由度が持たせられるからである。
【0036】
水栓ケース19は、洗面所等の壁30に取り付けられている。水栓ケース19は、壁30から突出するように形成されている。水栓ケース19の先端側には、吐水口20、出射部21、および受光部22が設けられている。
【0037】
吐水口20は、給水管11から給水ホース14を通して流入する水を吐出する出水口である。出射部21は、投光用光ファイバ18aを通して導かれた発光素子16の出射光を下側に照射する。受光部22は、発光素子16の出射光の検知対象物に対する反射光を受光して、検知信号を出力する。
【0038】
ファイバ18a、18bは、給水ホース14とともに、壁30の穴部30aを通して水栓ケース19と制御装置15との間に配設されている。
【0039】
次に、本実施形態の制御装置15の作動について図2、図3を参照して説明する。図2、図3は、制御装置15の制御処理を示すフローチャートである。
【0040】
制御装置15は、図2、図3のフローチャートにしたがって、コンピュータプログラムを実行する。なお、図2、図3中に発光素子16をLEDと記す。
【0041】
まず、ステップS100において発光素子16を消灯する。その後、ステップS110では0.25secの間待機する。これにより、発光素子16の消灯が0.25secの間継続されることになる。
【0042】
次に、ステップS120では発光素子16を点灯する。その後、ステップS130では1μsecの間待機する。これにより、発光素子16の点灯が1μsecの間継続されることになる。このため、発光素子16の出射光は投光用光ファイバ18aを通して水栓ケース19の出射部21から出射される。
【0043】
その後、ステップS140において、受光素子17から検知信号が出力されたか否かを判定する。すなわち、水栓ケース19の受光部22で発光素子16の出射光の検知対象物に対する反射光を受光したか否かを判定することになる。
【0044】
ここで、ステップS140において、受光素子17から検知信号が出力されていないときには、NOと判定する。
【0045】
すなわち、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在しなく、検知対象物が非検知状態であると判定されることになる。
【0046】
これに伴い、ステップS250において、カウンタ15cのカウント値をクリアにする。検知カウンタ15cは、ステップS140で検知信号を検知したとしてYESと判定された回数をカウントするものである。なお、以下、カウンタ15cを検知カウンタ15cという。
【0047】
その後、ステップS100に戻り、ステップS140でYESと判定される迄、ステップS100、S110、S120、S130、S140のNO判定、およびステップS250の処理を繰り返す。
【0048】
これにより、発光素子16が通常周期にて間欠的に点灯することになる(図4参照)。このような発光素子16の間欠点灯時には、発光素子16の発光時間Tonを1μsecとし、発光素子16の発光停止時間Toffを0.25secとすると、発光停止時間Toffに対する発光時間onの発光時間比率H(=Ton/Toff)が4ppmになっている。
【0049】
このように発光素子16が間欠的に点灯すると、発光素子16の出射光は、投光用光ファイバ18aにより水栓ケース19の出射部21に導かれ、この導かれた光は出射部21から出射する。
【0050】
このとき、水栓ケース19の吐水口20の周辺に使用者の手の平が近づいて、この手の平に対して発光素子16の出射光が反射されその反射光の一部が受光部22で受光されると、この受光された光が受光用光ファイバ18bに導かれて受光素子17により受光されて受光素子17から検知信号が出力される。
【0051】
このとき、ステップS140において、受光素子17から検知信号が出力されたとしてYESと判定される。これに伴い、検知カウンタ15cのカウント値をインクリメントする。
【0052】
次のステップS160において、検知カウンタ15cのカウント値が「2」であるか否かを判定する。ここで、検知カウンタ15cのカウント値が「2」がでないときには(カウント値≠2)、NOと判定してステップS100に戻る。
【0053】
その後、ステップS100、S110、S120、S130、S140のYES判定のそれぞれの処理を経て、ステップS150に進むと、検知カウンタ15cのカウント値をインクリメントしてカウント値が「2」になる。すると、次のステップS160において、検知カウンタ15cのカウント値が「2」であるときには、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物を検出したとして、YESと判定する。
【0054】
すなわち、水栓ケース19の吐水口20の周辺に使用者の手の平、すなわち検知対象物が存在すると判定されることになる。
【0055】
これに伴い、図3のステップS180において、電磁弁13を開く。このため、水道管からの水道水が給水管11を経て給水ホース14を通して水栓ケース19の吐出口20に向かって流れて、この流れた水道水が吐出口20から吐水される。このとき、発電機13は、給水管11内の水流れにより電力を発生しその電力を蓄電池15bに蓄える。
【0056】
次に、ステップS190において発光素子16を消灯する。その後、ステップS200では0.1msecの間待機する。これにより、発光素子16の消灯が0.1msecの間継続されることになる。
【0057】
次に、ステップS210では発光素子16を点灯する。その後、ステップS220では1μsecの間待機する。これにより、発光素子16の点灯が1μsecの間継続されることになる。このため、発光素子16の出射光は投光用光ファイバ18aを通して水栓ケース19の出射部21から出射される。その後、ステップS230において、受光素子17から検知信号が出力されたか否かを判定する。
【0058】
このとき、ステップS230において、受光素子17から検知信号が出力されているとしてYESと判定すると、ステップS240において、カウンタ15dのカウント値をクリアにする。
【0059】
カウンタ15dは、ステップS230で検知信号を検知していないとしてNOと判定された回数をカウントするものである。なお、以下、カウンタ15dを非検知カウンタ15dという。
【0060】
その後、ステップS190に戻り、受光素子17から検知信号が出力される限り、ステップS190、S200、S210、S220、S230のYES判定、S240それぞれの処理を繰り返すことになる。
【0061】
これにより、発光素子16が短周期にて間欠的に点灯することになる(図4参照)。このような発光素子16の間欠点灯時には、発光素子16の発光時間Tonを1μsecとし、発光素子16の発光停止時間Toffを100μsecとすると、発光停止時間Toffに対する発光時間Tonの発光時間比率H(=Ton/Toff)が1%になっている。すなわち、ステップ160でYESと判定される前に比べて、発光時間比率Hが大きくなっている。
【0062】
このように発光素子16が間欠的に照明光を出射することにより、水栓ケース19の吐水口20周辺が照明されることになる。
【0063】
その後、使用者の手の平が水栓ケース19の吐水口20付近から離れると、この手の平に対して発光素子16の出射光が反射されなくなる。このため、反射光が受光部22で受光されなくなり、受光素子17から検知信号が出力されなくなる。
【0064】
このため、ステップS230において、受光素子17から検知信号が出力されていないとしてNOと判定すると、ステップS231において、非検知カウンタ15dのカウント値をインクリメントにする。
【0065】
さらに次のステップS232において、非検知カウンタ15dのカウント値が「2」であるか否かを判定する。ここで、非検知カウンタ15dのカウント値が「2」がでないときには(カウント値≠2)、NOと判定してステップS190に戻る。
【0066】
その後、ステップS190、S200、S210、S220、S230のNO判定、およびステップS231のそれぞれの処理を終えると、ステップS232に移行する。
【0067】
このステップS232において、非検知カウンタ15dのカウント値が「2」である場合には(カウント値=2)、YESと判定する。次に、ステップS233において非検知カウンタ15dのカウント値をクリアして、ステップ234において電磁弁12を閉じる。このため、水道管からの水道水が給水管11から水栓ケース19の吐出口20側に流れなくなる。これに伴い、発電機13の発電が停止する。
【0068】
その後、ステップS100に戻り、ステップS140でYESと判定される迄、ステップS100、S110、S120、S130、S140のNO判定、およびステップS250の処理を繰り返す。これにより、発光素子16が通常周期にて間欠的に点灯することになる。これにより、発光素子16が照明光を出射することを停止する。
【0069】
以上説明した本実施形態によれば、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物(使用者の手など)が存在するときには、発光素子16から出射光を照明光として水栓ケース19の出射部21から出射させることができる。
【0070】
本実施形態では、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在しないとしてステップS140でNOと判定した場合において、発光停止時間Toffに対する発光時間Tonの発光時間比率H(=Ton/Toff)が4ppmで、かつ発光時間Thが1μsecになっている。
【0071】
本発明者等の実験、検討によれば、発光時間比率Hが4ppm以下で、発光時間Tonが10μsec以下になっていれば、発光素子16からの出射光が使用者に違和感を与えず、使用者により実質的に視認されない状態になっていることが分かった。
【0072】
以上により、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在しないときには、発光時間比率H(=Ton/Toff)が4ppmで、かつ発光時間Tonが1μsecになっているので、使用者にとって発光素子16からの出射光が実質的に視認されなくなる。
【0073】
一方、水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物(使用者の手など)が存在するときには、発光素子16から出射光が視認される。
【0074】
したがって、発光素子16以外に照明用ランプを用いることなく、イルミネーション効果を発揮させることができる。したがって、照明付自動水栓装置における部品数の増加を抑えることができる。これに加えて、安価な照明付自動水栓を提供することができる。
【0075】
本実施形態では、本体ケーシング10に発光素子16および受光素子17を収納して、発光素子16と水栓ケース19の出射部21との間に投光用光ファイバ18aを配設し、さらに受光素子17と水栓ケース19の受光部22との間に受光用光ファイバ18bを配設した。したがって、水栓ケース19に収納する部品を減らすことができる。このため、水栓ケース19に対して小型化を図ることができる。
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、本体ケーシングに発光素子および受光素子を収納して本体ケーシングと水栓ケースとの間に投光用ファイバと受光用光ファイバを配設した例について説明したが、これに代えて、本第2実施形態では、水栓ケースに発光素子および受光素子を収納する。
【0076】
この場合の構成を図5に示す。図5において、図1と同一符号のものは、同一のものを示す。
【0077】
本実施形態では、水栓ケース19に発光素子16および受光素子17が収納されている。発光素子16は、水栓ケース19の出射部21から直接的に可視光を出射する。受光素子17は、水栓ケース19の受光部22に入射した検知対象物からの反射光を受光する。
【0078】
また、発光素子16と制御装置15との間には、リード線23aが接続されており、受光素子17と制御装置15との間には、リード線23bが接続されている。リード線23a、23bは壁30の穴部30aを通して水栓ケース19と制御装置15との間に配設されている。
【0079】
以上説明した本実施形態によれば、発光素子16以外に、照明用ランプを別途設ける必要がないので、水栓ケース19の小型化、スリム化が可能になる。
【0080】
(他の実施形態)
上述の第1実施形態では、ステップS140において受光素子17から検知信号が出力されたとしてYESと判定された後に、発光素子16の間欠的点灯を維持した状態で発光時間比率H(=Ton/Toff)を上げた例を示したが、これに代えて、発光素子16を連続点灯することにより、発光時間比率H(=Ton/Toff)を上げるようにしてもよい。
【0081】
上述の第1、第2実施形態において、ステップ160において水栓ケース19の吐水口20の周辺に検知対象物が存在するとしてYESと判定した場合において、第4の制御手段として、夜間には昼間に比べて発光素子16における発光停止時間Toffに対する発光時間Tonの発光時間比率Hを下げて、吐水口20付近の照影光の明るさを下げてもよい。
【0082】
ここで、昼、夜の判別は、マイクロコンピュータ15aに時計機能を付加し、この時計機能により時刻を判別するようにしてもよい。
【0083】
これに代えて、水栓ケース19の吐水口20の周辺の明度を検出する明度センサを用いて昼、夜を判別してもよい。すなわち、吐水口20の周辺の明度が小さい場合ほど発光時間比率Hを下げるように発光素子16を制御する。
【0084】
上述の第1、第2実施形態では、照明光として発光素子16を点灯させる際の発光周期を約10kHzとした例を示したが、これに限らず、約10kHz以外の発光周期で発光素子16を間欠的に点灯させてもよい。この場合、使用者にとって照明光のチラツキ感を与えないようにするため、発光周期を数十Hz〜数十kHzにするのが望ましい。
【0085】
以下、上記実施形態と特許請求項の範囲の構成との対応関係について説明すると、ステップS100、S110、S120、S130、S140、S250のそれぞれの処理が第1の制御手段を構成し、ステップS180,S234の処理が第2の制御手段を構成し、ステップS190、S200、S210、S220、S230、S240の処理が第3の制御手段を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態の照明付自動水栓装置の全体図を示す図である。
【図2】図1の制御装置の制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図3】図1の制御装置の制御処理の残りを示すフローチャートである。
【図4】図1の発光素子の点灯および受光素子の受光を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の照明付自動水栓装置の全体図を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 本体ケーシング
11 給水管
12 電磁弁
13 発電機
15 制御装置
15a マイクロコンピュータ
15b 蓄電池
15c カウンタ
15d カウンタ
16 発光素子
17 受光素子
18a 投光用光ファイバ
18b 受光用光ファイバ
19 水栓ケース
20 吐水口
21 出射部
22 受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口(20)に向けて水を流す給水管(11)を開閉する弁(12)と、
光を出射する発光素子(16)と、
前記光を間欠的に出射させるように前記発光素子を制御する第1の制御手段(S100、S110、S120、S130)と、
前記発光素子の出射光の検知対象物に対する反射光を受光する受光素子(17)と、
前記受光素子により反射光を受光したか否かを判定することにより、前記吐水口の周辺に検知対象物が存在する否かを判定する第1の判定手段(S140、S150、S160、S230、S231、S232)と、
前記吐水口の周辺に検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定したときには、前記弁を開弁して前記給水管からの水を前記吐水口から吐出させ、前記吐水口の周辺に検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定したときには、前記弁を閉弁して前記吐水口からの水を吐出させることを停止する第2の制御手段(S180,234)と、を備える自動水栓装置であって、
前記発光素子は、前記光として可視光を出射するものであり、
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定したときには、前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定したときに比べて、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を大きくして、前記出射光を照明光として出射させるように前記発光素子を制御する第3の制御手段(S190、S200、S210、S220)を備えることを特徴とする自動水栓装置。
【請求項2】
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在しないと前記第1の判定手段が判定した場合において、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率は、4ppm以下で、かつ前記発光素子における発光時間が10μsec以下になっていることを特徴とする請求項1に記載の自動水栓装置。
【請求項3】
前記吐水口と、前記発光素子の出射光を前記吐水口の周辺に出射する出射部(21)と、前記検知対象物から反射される反射光を受光する受光部(22)と、を有する水栓ケース(19)と、
前記発光素子および前記受光素子をそれぞれ収納する本体ケーシング(10)と、
前記発光素子の出射光を前記水栓ケースの出射部に導く第1の光ファイバ(18a)と、
前記水栓ケースの受光部で受光した反射光を前記受光素子に導く第2の光ファイバ(18b)と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動水栓装置。
【請求項4】
前記第1、第2の光ファイバは、プラスチック製の光ファイバであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の自動水栓装置。
【請求項5】
前記第1、第2、第3の制御手段と前記第1の判定手段とを有する制御装置(15)が前記本体ケーシングに収納されていることを特徴とする請求項3に記載の自動水栓装置。
【請求項6】
前記発光素子の出射光の波長は、600nm〜700nmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の自動水栓装置。
【請求項7】
前記吐水口の周辺の明度を検出する明度センサと、
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定した場合において、前記明度センサの検出値に基づいて、前記吐水口の周辺の明度が小さい場合ほど、前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を下げるように前記発光素子を制御する第4の制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の自動水栓装置。
【請求項8】
前記吐水口の周辺に前記検知対象物が存在すると前記第1の判定手段が判定した場合において、夜間は昼間に比べて前記発光素子における発光停止時間に対する発光時間の比率を下げるように前記発光素子を制御する第4の制御手段を備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の自動水栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228336(P2009−228336A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76217(P2008−76217)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】