自動溶接装置におけるワーク配置方法
【課題】 溶接ロボットの外部移動装置を増加させることなく、全ての溶接線を良好に溶接することができると共に、ワークの設置スペースを小さくすることができる自動溶接装置におけるワーク配置方法を提供する。
【解決手段】 ワーク20はその段差仕口溶接線20a乃至20dが溶接ロボット16のアーム16aの基端部からワーク20に向かう線4に対して所定角度で傾斜するように配置されている。溶接線20cは溶接トーチの有効動作範囲18内に位置し、溶接トーチはアーム16aの伸縮機能等によって溶接線20cの全長に到達でき、溶接トーチとダイヤフラム6との干渉が生じることもない。溶接線20dについても溶接線20cと同様に良好な溶接姿勢を確保することができる。溶接線30a及び20bは溶接線20c及び20dよりも溶接トーチに近いので良好な姿勢を確保し易い。
【解決手段】 ワーク20はその段差仕口溶接線20a乃至20dが溶接ロボット16のアーム16aの基端部からワーク20に向かう線4に対して所定角度で傾斜するように配置されている。溶接線20cは溶接トーチの有効動作範囲18内に位置し、溶接トーチはアーム16aの伸縮機能等によって溶接線20cの全長に到達でき、溶接トーチとダイヤフラム6との干渉が生じることもない。溶接線20dについても溶接線20cと同様に良好な溶接姿勢を確保することができる。溶接線30a及び20bは溶接線20c及び20dよりも溶接トーチに近いので良好な姿勢を確保し易い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットの外部移動軸を増加することなく、トーチの有効動作範囲内にある溶接線を良好に溶接することができる自動溶接装置におけるワーク配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築鉄骨用の柱は仕口部とシャフト部とから主として構成され、通常仕口部に短尺の梁部材が溶接、接合されている。ところで、鉄骨柱は仕口部への梁部材の取り付け方法によって一般的な仕口と段差仕口とに大別される。
【0003】
図11(a)乃至図11(c)は鉄骨柱の代表的な仕口部の側面図であり、図12は図11(a)の平面図である。
【0004】
図11(a)において、この鉄骨柱は仕口部を構成するダイヤフラム42と梁部材44の梁フランジ45が同一レベルである一般的仕口を有する鉄骨柱である。即ち、角柱状のコラム41の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム42が接合されてコラムコア43が形成されている。ダイヤフラム42の4辺には図12に示したように、夫々短尺の梁部材44の梁フランジ45が図11(a)の裏当金47を用いて溶接、接合されている。梁部材44は上下の梁フランジ45と、その間に配置されたウェブ材46とで構成されている。
【0005】
図11(b)において、この鉄骨柱は仕口部を構成するダイヤフラム52と、これに接合される梁部材54の梁フランジ55は同一レベルであるが、ダイヤフラム52の上部に別のコラム57を介して別のダイヤフラム58が接合されており、段差仕口である。
【0006】
即ち、角柱状のコラム51の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム52が接合され、上部ダイヤフラム52の更に上部にコラム51よりも高さが低いコラム57及びもう1つのダイヤフラム58が順次接合されてコラムコア53が形成されている。コラムコア53にはその4辺に夫々短尺の梁部材54が接合されている。
【0007】
梁部材54は上下の梁フランジ55とその間のウェブ材56とで構成されている。梁部材54の上側の梁フランジ55はコラムコア53の中間のダイヤフラム52に裏当金59を用いて接合されており、下側の梁フランジ55はコラムコア53の下側のダイヤフラム52に裏当金59を用いて接合されている。従って、コラムコア53の上部ダイヤフラム58と梁部材54の上部梁フランジ55との間には段差がある。仕口溶接部は、例えばレ型開先である。なお、図11(b)の平面図は図12と同様に表される。
【0008】
図11(c)において、この鉄骨柱はコラムコア63のダイヤフラム62と梁部材64の梁フランジ65が異なる高さの段差仕口である。即ち、角柱状のコラム61の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム62が接合されてコラムコア63が形成されている。コラムコア63にはその4辺に夫々短尺の梁部材64が接合されている。
【0009】
梁部材64は上下の梁フランジ65とその間のウェブ材66とで構成されている。梁部材64はコラムコア63よりも低いので、下側の梁フランジ65はコラムコア63の下側のダイヤフラム62に裏当金67を用いて接合されているが、上側の梁フランジ65はコラムコア63のコラム部61に裏当金67を用いて接合されている。従って、コラムコア63の上部ダイヤフラム62と梁部材64の上部梁フランジ材65との間には段差がある。仕口溶接部は、例えばレ型開先である。なお、図11(c)の平面図は図12と同様に表される。
【0010】
このような鉄骨柱の仕口部を溶接する溶接装置として例えばX軸方向移動装置及びY方向移動装置を備えた自動溶接装置が挙げられる。
【0011】
図13は、このような自動溶接装置を示す説明図であって、図13(a)はその正面図、図13(b)は図13(a)における溶接アームとワークとの位置関係を示す模式図である。図13(a)において、この自動溶接装置は、Y軸方向ロボット移動装置71と、このY軸方向ロボット移動装置71の上部に配置されたX軸方向ロボット移動装置72と、その上部に設けられた多関節型の溶接ロボット73とから主として構成されている。溶接ロボット73にはアーム73aが設けられており、アーム73aの先端部にはトーチ76が取り付けられている。
【0012】
溶接ロボット73の前方にはワーク置き台75が配置されており、このワーク置き台75上に図11(b)又は(c)に示したような段差のある仕口溶接部を備えたワーク74が載置されている。溶接ロボット73はY軸方向ロボット移動装置71及びX方向ロボット移動装置72を備えていることから、ワークの溶接線に対して適正な溶接姿勢を取るように移動することができ、また大きさの異なる種々のワークに対応することもできる。
【0013】
図13(b)において、ワーク74は段差仕口部の溶接線74a、74b、74c及び74dが溶接ロボット73のアーム73aの基端部からワーク74に向かう線78に対して直交するか又は平行な方向に配置されており、各溶接線は溶接ロボット73の溶接トーチ76をX軸方向及びY軸方向に移動しながら溶接される。破線で囲まれた部分79はY軸方向及びX軸方向ロボット移動装置71、72を固定した場合の溶接トーチの有効動作範囲である。
【0014】
しかしながら、このような従来の自動溶接装置においては、段差仕口溶接部への適用について十分な考慮がなされておらず、溶接ロボットから離れた遠い方の段差仕口部を溶接しようとすると、ワーク上部のダイヤフラムと溶接トーチとが干渉し、段差仕口部を良好に溶接できないという問題点があった。
【0015】
図14(a)及び(b)は夫々図13(b)の状態の溶接ロボットを用いた仕口溶接方法を示す模式図であり、図14(a)はアーム73aの基端部からワークに向かう方向線78(X軸方向)に沿った段差仕口部74dを溶接する場合、図14(b)は溶接ロボットから遠い方のY軸方向に沿った段差仕口部74cを溶接する場合を示す図である。
【0016】
図14(a)において、溶接線74dは溶接トーチ76の有効動作範囲79内にあり、溶接トーチ76はワーク74の上部ダイヤフラム77と干渉することなく段差仕口の溶接線74dに到達し、良好な溶接を行うことができる。一方、図14(b)において、溶接線74cは溶接トーチ76の有効動作範囲79内にあるが、溶接トーチ76はワーク74の上部ダイヤフラム77の端辺と干渉する。即ち、段差への適用はトーチの形状(手首からアーク点までの距離)に依存するが、ロボットアーム73aがワーク74にかぶさる位置関係となるので、段差仕口の溶接線74cにその先端部を到達させることができず、良好な仕口溶接を行うことができない。
【0017】
このような仕口溶接を行う溶接装置に関する従来技術として例えば実開平5−70769号公報が挙げられる。図15は従来の鉄骨仕口フランジの自動溶接装置を示す説明図であって、図15(a)は正面図、図15(b)はその平面図である。図15(a)において、床面102に基台支柱101が設置されており、この基台支柱101に昇降自在な昇降体104が取り付けられている。昇降体104には基端部が基部を中心として回動自在な旋回ビーム111が設けられており、旋回ビーム111の先端部には溶接トーチ112を任意方向に操作できる溶接ロボット113が配置されている。溶接ロボット113は、図15(b)に示した円弧経路Lに沿って移動可能であり、溶接ロボット113はこの円弧経路Lに沿って配置されたワークW1乃至W3の仕口部に対して仕口溶接を行う(特許文献1、実用新案登録請求の範囲、図1、図2)。
【0018】
【特許文献1】実開平5−70769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来技術は、図13に示した自動溶接装置と同様、溶接ロボット113から離れた遠い方の段差仕口を溶接する際、ワーク上部のダイヤフラムの端辺と溶接トーチ112とが干渉する場合があり、段差仕口を良好に溶接できないという問題点があった。
【0020】
また上記従来技術は、溶接ロボット自体を旋回可能なアームに取り付け、旋回範囲内の旋回経路に沿ってワークを配置するものであり、ワークの配置基準が不明瞭であり、ワーク配置動作が煩雑になるという問題点もあった。
【0021】
このような問題点に対し、天井に溶接ロボットを取り付けた自動溶接装置を用いることが考えられる。図16は、天井に溶接ロボットを取り付けた自動溶接装置の正面図である。図16において、床面に設けられたY軸方向ロボット移動装置81の上部に垂直な支柱87が搭載されており、この支柱87の上端部にX軸方向ロボット移動装置82が水平に設けられている。X軸方向ロボット移動装置82には溶接ロボット83が下向きに固定されており、溶接ロボット83のアーム83aの先端部に溶接トーチ86が設けられている。溶接ロボット83の下部床面にワーク置き台85が配置されており、このワーク置き台85上に段差仕口を有するワーク84が載置されている。
【0022】
このような天井走行溶接ロボット装置によれば、天井部分にX方向のロボット移動装置82が設けられているので、溶接対象であるワーク84の上部ダイヤフラム88を跨がないで、支柱87から遠く離れた段差仕口部を溶接することができる。
【0023】
しかしながら、段差仕口部はダイヤフラム88の4辺に夫々対応して存在することから、これらの全てを良好に溶接しようとすると、天井にX軸方向だけでなくY軸方向への移動装置を設ける必要があり、システム全体が大型化又は複雑化し、操作が煩雑になるという問題点がある。なお、溶接ロボット83だけでなく、システム全体にもX軸方向及びY軸方向への移動装置を設けた場合は広大な設置スペースが必要になる。
【0024】
即ち、従来技術に従って多関節型溶接ロボットを使用して段差仕口溶接部を有する鉄骨柱の溶接部を溶接する場合、全ての段差仕口溶接部を良好なロボット姿勢を確保して良好に溶接しようとすると、溶接ロボットの動作を補うために新たな外部移装置が必要となり、移動装置の増加に伴いシステム全体が大型化し、操作が煩雑になるという問題点があった。
【0025】
本発明はかかる問題点に鑑み、溶接ロボットの外部移動装置を増加させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての溶接部を良好に溶接することができると共に、ワークの位置決めが容易で、ワーク設置スペースを小さくすることができる自動溶接装置におけるワーク配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法は、溶接ロボット本体と、この溶接ロボット本体に設けられたアームと、アームの先端部に設けられたトーチと、を有する溶接ロボットを使用し、移動装置により前記溶接ロボット本体を一方向にのみ移動させ、前記アームを操作してワークの溶接線を溶接する自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークを、前記アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワークの溶接線が前記ワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することを特徴とする。
【0027】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークの位置決めは、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うことが好ましい。
【0028】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークは段差仕口溶接部を有する仕口であることが好ましい。
【0029】
また、本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記傾斜角度は45度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、ワークを、ワークの溶接線が溶接ボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することにより、溶接部が溶接トーチの有効動作範囲内にあれば、溶接ロボットから遠く離れた位置の溶接部であっても良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。
【0031】
本願の請求項2に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、前記ワークの位置決めを、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うようにしたので、搬入ワークの中心軸がワークの溶接作業位置の中心軸と多少ずれた場合でも、ワークが拘束部材に当接した後、スライドしてワークの溶接作業位置まで移動するので、ワーク位置が一義的に定まり、容易に位置決めすることができる。
【0032】
本願の請求項3に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、ワークを、段差仕口溶接部を有する仕口としたので、溶接トーチの有効動作範囲内にある段差仕口部に対して良好な溶接姿勢で良好な溶接を行うことができる。
【0033】
また本願の請求項4に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、前記傾斜角度を45度としたので、ワーク置き台上のX軸方向とY軸方向が直交する座標軸を基準にワークを配置することができるので、ワークの位置決めがより容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
本発明者は、従来技術において溶接ロボットから最も離れた位置の段差仕口部を良好に溶接することができない原因は、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して直交又は平行するように配置していることにあると考え、鋭意研究した結果、溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対してワークの溶接線が傾斜するようにワークを配置することにより、溶接トーチの有効動作範囲内であれば、溶接ロボットの外部移動軸を増加させることなく、遠く離れた段差仕口部であっても良好なトーチ姿勢を確保して良好な仕口溶接を行うことができることを見出し、本発明に到達した。
【0036】
図1は本発明の第1実施形態に適用される自動溶接装置の側面図、図2は図1の平面図である。
【0037】
図1及び図2において、この溶接装置は溶接機ビーム11の長さ方向(Y方向)に移動可能であり、外部移動方向が1方向の溶接装置である。
【0038】
図1において、床面10上に長尺状の溶接機ビーム11が配置されている。溶接機ビーム11には基台12が水平移動可能に搭載されており、基台12上に垂直方向に延びる垂直ビーム13が設けられている。
【0039】
垂直ビーム13の上端部にはこの垂直ビーム13に対して直角方向に水平に延びる水平ビーム14が取り付けられている。水平ビーム14の先端部には支持体15を介して溶接ロボット16が設けられており、溶接ロボット16の先端部に溶接トーチ17が取り付けられている。垂直ビーム13にはその高さ方向の中間部に所定の平面を有するデッキ13aが固定されており、オペレータはこのデッキ13aからワークの溶接状況を監視することができる。
【0040】
図2において、床面10に水平に配置された長尺状の溶接機ビーム11に基台12を介して垂直ビーム13が水平移動可能に搭載されている。垂直ビーム13の上部先端部には、水平に延びる水平ビーム14が取り付けられている。水平ビーム14の先端部には支持体15を介して溶接ロボット16が設けられており、溶接ロボット16の先端部に溶接トーチ17が取り付けられている。
【0041】
床面10には溶接機ビーム11に平行にワーク置き台19が配置されている。溶接トーチ17の有効移動範囲18はワーク置き台19の上部表面とほぼ重なっており、溶接トーチ17の有効移動範囲18内に被溶接物である同一形状のワーク20、21等が2列に配置されている。
【0042】
ワーク20の位置決めは、図3に示したように、ワーク置き台(図示省略)上の予め決定されたワークの溶接作業位置に固定された拘束部材としてのストッパー8に、ワークの例えば下側ダイヤフラムを溶接ロボット本体から前記ストッパー8に向かう方向に移動させて前記ストッパー8に当接させることによって行う。
【0043】
図3は、図2における溶接時の溶接ロボットとワークとの位置関係を示す図である。図3において、ワーク20はその溶接線20a乃至20dがアーム16aの基端部からワーク20に向かう線4に対して所定角度で傾斜するように配置されている。ストッパー8は、図示省略したワーク置き台の溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向及びこれに直交する方向へのワーク20の移動を拘束する平面を有するもので、例えばワーク20を受け止めるための角部を有するように平面図上くの字状をしている。
【0044】
ストッパー8の平面図上くの字における角部は、配置されるワークの移動を拘束することができれば、その角部が溶接ロボット本体に対して開口する向きに配置されるものであっても、反溶接ロボット本体側に開口する向きに配置されるものであってもよい。
【0045】
平面図上くの字状のストッパー8を用いることにより、搬入ワークの中心軸がワーク配置位置の中心軸と多少ずれた場合でも、ワークがストッパー8に当接した後、スライドしてワークの溶接作業位置まで移動するので、ワーク位置が一義的に定まり、容易に位置決めすることができる。
【0046】
図2において、ワーク20は段差仕口溶接部を有する仕口であり、ワーク20は、アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワーク20の溶接線20a乃至20dが前記アームの基端部からワークに向かう方向に対して所定角度、例えば約45度で傾斜するように配置されている。
【0047】
図4は、図1の溶接ロボット16の先端部の溶接トーチ17を示す拡大図である。図4において、溶接トーチ17はトーチ部分の長さが例えば600mmあり、このトーチ17の先端部は溶接ロボット16のアーム16aの中心軸に対して例えば35度傾斜するように取り付けられている。このように傾斜して固定されていることにより、段差仕口の溶接時にダイヤフラムとの干渉を有効に回避して良好な溶接姿勢を確保することができる。
【0048】
以下、このような構成の自動溶接装置の動作を説明しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0049】
溶接を開始するに際し、先ず、ワーク20、21等をその溶接線が溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して、例えば45度で傾斜するように配置する。このときワークの位置決めは予めワーク置き台19上の所定の溶接作業位置に固定されたストッパー(図3参照)を使用して上述したように、前記ストッパーに当接させることによって行う。即ち、各ワークの下部ダイヤフラムの角部が溶接作業位置に配置されたストッパーの平面図上くの字の開口部に嵌合するように当接してワークの位置決めを行う(図3参照)。
【0050】
次に、溶接ロボット16を例えばその初期状態位置である図2中溶接機ビーム11の左端から被溶接ワークである例えばワーク20の上部ダイヤフラムの図中縦方向の対角線位置まで移動する。これによって、溶接ロボット16とワーク20との位置関係が図3の状態となる。溶接ロボット16の移動は図示省略した駆動装置によって行う。
【0051】
このとき、ワーク20の段差仕口溶接部である溶接線20a乃至20dは溶接トーチ17の有効動作範囲18内に存在し、溶接ロボット16のアーム16aの多関節部分及び溶接トーチ17の溶接アーム16aの中心軸に対する傾斜角度等を利用することによって図5に示したように、ダイヤフラムとの干渉を回避して全ての段差仕口に対して良好な溶接姿勢を確保して良好な溶接が行われる。
【0052】
図5は、図2の溶接ロボット16によって溶接線20cを溶接する方法を示す説明図であって、図5(a)はその斜視図、図5(b)は平面図、図5(c)は正面図である。図5(a)及び(b)において、溶接線20cは溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及びトーチ17の先端部の傾斜角度等を利用して溶接線20cの全長に到達することができる。またこのとき、ダイヤフラム6の溶接線20cに平行な辺6cと溶接トーチ17先端部との直接の干渉はない。即ち、ワークを、その溶接線がアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することにより、ロボットアームがワークにかぶさらない位置関係となる。従って溶接トーチ17は図5(c)に示したように、溶接線20cの全線に対して良好な溶接姿勢を確保することができ、これによって良好な仕口溶接を施すことができる。
【0053】
溶接線20dについては、溶接線20cの場合とアームの基端部からワークに向かう線4(図3参照)に対して線対称となる位置に溶接トーチ17を移動させ、同様に良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。
【0054】
溶接線20aについては、溶接線20c及び20dを溶接する場合に比べて溶接トーチ17を溶接ロボット16本体に近づける方向に移動させ、トーチ角度を調整することによって全線にわたって良好な溶接姿勢を確保することができ、また溶接線20bについては溶接線20aを溶接する場合とアームの基端部からワークに向かう線4に対して線対象となるように溶接トーチ角度を調整することによって良好な溶接姿勢を確保することができ、これによって夫々良好な仕口溶接を行うことができる。
【0055】
ワーク20に対して段差仕口溶接が終了した後、溶接ロボット16をこのワーク20に隣接するワークである例えばワーク21に対応する位置までY軸方向に沿って移動させ、ワーク21と溶接ロボット16との位置関係を上述した図3の場合と同様にし、ワーク20の仕口溶接と同様にしてワーク21の段差仕口溶接部を溶接する。以下、順次隣接するワークに対して同様にして段差仕口溶接を行う。
【0056】
本実施形態によれば、ワーク20等をその溶接線が溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置したので、溶接ロボット16のアーム16aの多関節機能及び溶接トーチ17のアーム16aの中心軸に対する傾斜角度等を利用することによって、ダイヤフラムと溶接トーチとを干渉させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての段差仕口溶接部に対して良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。従って、溶接ロボット16から遠く離れた段差仕口を溶接するためのみに溶接ロボットの外部移動軸を増加させる必要がない。また、外部移動軸を増加させることによるシステムの複雑化、大型化を回避することができ、装置全体をコンパクトなものとし、操作性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して水平又は垂直となるように配置していた従来技術に比べて、ワークの必要配置面積を狭くすることができる。
【0058】
図6は、本実施形態におけるワークの必要配置面積を従来技術におけるワークの必要配置面積と比較して示す図である。図6において、本実施形態における同じ大きさのワークを8個配置するに必要な面積の長さ(La)は15283mmであり、従来技術の場合の(Lb)15250mmとほぼ同様であるが、必要幅(Wa)は3033mmであり、従来技術における必要幅(Wb)4000mmよりも、約970mm短くなり、必要配置面積を約24%低減することができる。
【0059】
更に、本実施形態によれば、溶接ロボットの動作プログラムを作成する際、従来技術で行っていた溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向の位置決めをした後、これに垂直な方向の位置決めを行うという2段階の位置決め操作が不要となり、溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向の位置決めだけで対応することができる。従って、動作プログラムの作成が容易で且つ正確になる。
【0060】
図7は、本発明の第2実施形態に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法を示す説明図であって、第1実施形態の変形例を示図である。
【0061】
図7において、ワーク24、25等は第1実施形態におけるワークとはその形状が異なる仕口であり、上下又は左右が対象になっていないが、例えばワーク24は段差仕口溶接部24a及び24bを有し、この溶接線24a及び24bは溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して約45度で傾斜するように配置されている。
【0062】
このように配置されたワークに対して段差仕口溶接を開始する際は、先ず、溶接ロボット16を被溶接ワークである例えばワーク24に対応する位置まで移動する。これによって、溶接ロボット16とワーク24との位置関係が図8に示したようになる。
【0063】
図8は、本実施形態における溶接ロボット16とワーク24との位置関係を示す図である。図8において、ワーク24の段差仕口溶接部24a及び24bは全て溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、各溶接線はアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置されている。
【0064】
従って、本実施形態において、溶接ロボット16の溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及び先端部の傾斜角度等を利用して全ての溶接部の溶接線に対して適正姿勢を確保して適正な段差仕口溶接を行うことができる。
【0065】
図9は、本発明の第3実施形態に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法を示す説明図であって、第1実施形態の別の変形例を示図である。
【0066】
図9において、ワーク26、27等の形状は全て同一ではなく、異なる形状のワークが含まれている。このように異なる形状のワークが混在していても、各ワークの溶接線が全て溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、各溶接線、例えばワーク26の溶接線26a、26b、26c及びワーク27の溶接線27a、27b、27c、27dが夫々溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置されているので、溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及び先端部の傾斜角度等を利用して全ての溶接部の溶接線に対して適正姿勢を確保して適正な段差仕口溶接を行うことができる。
【0067】
なお、溶接ロボット本体を移動させない固定型の溶接ロボットにおいては、図10に示したように、溶接ロボット33のアーム33aの基端部からワークに向かう方向線4に対して2つのワーク34及び35が線対象になるように配置することができる。図10は、固定型の溶接ロボットに対するワークの配置方法の1例を示す図である。図10において、ワーク34及び35はアームの基端部からワークに向かう方向線4に対して線対象となるように配置されている。ワークをこのように配置することによってトーチの有効動作範囲を有効活用することができる。このようなワーク配置は、ワークの配列方向の長さを十分に取ることができない工場において有効である。
【0068】
本発明の各実施形態においては、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜する角度を45度として説明したが、本発明における前記傾斜角度はこれに限定されるものではなく、所期の目的を達成することができれば45度以外であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
溶接ロボットの外部移動軸を増加させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての溶接線に対して良好な溶接姿勢を確保して良好な溶接を行うことができる本発明の自動溶接装置におけるワーク配置方法は、溶接ロボットによる自動溶接の分野で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に適用する溶接装置を示す図である。
【図2】図1における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるワークと溶接ロボットとの位置関係を示す図である。
【図4】図1の溶接トーチを示す拡大図である。
【図5】第1実施形態における段差仕口溶接部の溶接方法を示す図である。
【図6】第1実施形態におけるワークの必要配置面積を従来技術と比較して示す図である。
【図7】第2実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図8】第2実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す模式図である。
【図9】第3実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図10】固定型溶接ロボットにおける溶接ロボットとワークとの位置関係を示す模式図である。
【図11】仕口溶接部を有する鉄骨柱を示す側面図である。
【図12】図11(a)の平面図である。
【図13】従来技術を示す説明図である。
【図14】従来技術の問題点を示す説明図である。
【図15】他の従来技術を示す説明図である。
【図16】別の従来技術を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
4:アームの基端部からワークに向かう線
6:ダイヤフラム
6c:ダイヤフラムの辺
8:ストッパー
10:床面
11:溶接機ビーム
12:基台
13:垂直ビーム
13a:デッキ
14:水平ビーム
15:支持体
16:溶接ロボット
16a:アーム
17:溶接トーチ
18:溶接トーチの有効移動範囲
19:ワーク置き台
20:ワーク
20a〜20d:段差仕口溶接線
21:ワーク
23:Y軸方向の移動方向を示す矢印
24:ワーク
24a〜24c:段差仕口溶接線
25:ワーク
26:ワーク
26a〜26c:段差仕口溶接線
27:ワーク
27a〜27d:段差仕口溶接線
33:溶接ロボット
33a:アーム
34:ワーク
34a〜34d:段差仕口溶接線
35:ワーク
35a〜35d:段差仕口溶接線
41:コラム
42:ダイヤフラム
43:コラムコア
44:梁部材
45:梁フランジ
46:ウェブ材
47:裏当金
51:コラム
52:ダイヤフラム
53:コラムコア
54:梁部材
55:梁フランジ
56:ウェブ材
57:コラム
58:ダイヤフラム
59:裏当金
61:コラム
62:ダイヤフラム
63:コラムコア
64:梁部材
65:梁フランジ
66:ウェブ材
67:裏当金
71:Y軸方向ロボット移動装置
72:X軸方向ロボット移動装置
73:溶接ロボット
73a:アーム
74:ワーク
74a〜74d:段差仕口溶接線
75:ワーク置き台
76:溶接トーチ
77:ダイヤフラム
78:アームの基部から基端部に至る線
79:溶接トーチの有効動作範囲
81:Y軸方向ロボット移動装置
82:X軸方向ロボット移動装置
83:溶接ロボット
83a:アーム
84:ワーク
85:ワーク置き台
86:溶接トーチ
87:支柱
88:ダイヤフラム
101:基台支柱
102:床面
104:昇降体
111:旋回ビーム
112:溶接トーチ
113:溶接ロボット
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットの外部移動軸を増加することなく、トーチの有効動作範囲内にある溶接線を良好に溶接することができる自動溶接装置におけるワーク配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築鉄骨用の柱は仕口部とシャフト部とから主として構成され、通常仕口部に短尺の梁部材が溶接、接合されている。ところで、鉄骨柱は仕口部への梁部材の取り付け方法によって一般的な仕口と段差仕口とに大別される。
【0003】
図11(a)乃至図11(c)は鉄骨柱の代表的な仕口部の側面図であり、図12は図11(a)の平面図である。
【0004】
図11(a)において、この鉄骨柱は仕口部を構成するダイヤフラム42と梁部材44の梁フランジ45が同一レベルである一般的仕口を有する鉄骨柱である。即ち、角柱状のコラム41の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム42が接合されてコラムコア43が形成されている。ダイヤフラム42の4辺には図12に示したように、夫々短尺の梁部材44の梁フランジ45が図11(a)の裏当金47を用いて溶接、接合されている。梁部材44は上下の梁フランジ45と、その間に配置されたウェブ材46とで構成されている。
【0005】
図11(b)において、この鉄骨柱は仕口部を構成するダイヤフラム52と、これに接合される梁部材54の梁フランジ55は同一レベルであるが、ダイヤフラム52の上部に別のコラム57を介して別のダイヤフラム58が接合されており、段差仕口である。
【0006】
即ち、角柱状のコラム51の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム52が接合され、上部ダイヤフラム52の更に上部にコラム51よりも高さが低いコラム57及びもう1つのダイヤフラム58が順次接合されてコラムコア53が形成されている。コラムコア53にはその4辺に夫々短尺の梁部材54が接合されている。
【0007】
梁部材54は上下の梁フランジ55とその間のウェブ材56とで構成されている。梁部材54の上側の梁フランジ55はコラムコア53の中間のダイヤフラム52に裏当金59を用いて接合されており、下側の梁フランジ55はコラムコア53の下側のダイヤフラム52に裏当金59を用いて接合されている。従って、コラムコア53の上部ダイヤフラム58と梁部材54の上部梁フランジ55との間には段差がある。仕口溶接部は、例えばレ型開先である。なお、図11(b)の平面図は図12と同様に表される。
【0008】
図11(c)において、この鉄骨柱はコラムコア63のダイヤフラム62と梁部材64の梁フランジ65が異なる高さの段差仕口である。即ち、角柱状のコラム61の上下両端に夫々正方形平板状のダイヤフラム62が接合されてコラムコア63が形成されている。コラムコア63にはその4辺に夫々短尺の梁部材64が接合されている。
【0009】
梁部材64は上下の梁フランジ65とその間のウェブ材66とで構成されている。梁部材64はコラムコア63よりも低いので、下側の梁フランジ65はコラムコア63の下側のダイヤフラム62に裏当金67を用いて接合されているが、上側の梁フランジ65はコラムコア63のコラム部61に裏当金67を用いて接合されている。従って、コラムコア63の上部ダイヤフラム62と梁部材64の上部梁フランジ材65との間には段差がある。仕口溶接部は、例えばレ型開先である。なお、図11(c)の平面図は図12と同様に表される。
【0010】
このような鉄骨柱の仕口部を溶接する溶接装置として例えばX軸方向移動装置及びY方向移動装置を備えた自動溶接装置が挙げられる。
【0011】
図13は、このような自動溶接装置を示す説明図であって、図13(a)はその正面図、図13(b)は図13(a)における溶接アームとワークとの位置関係を示す模式図である。図13(a)において、この自動溶接装置は、Y軸方向ロボット移動装置71と、このY軸方向ロボット移動装置71の上部に配置されたX軸方向ロボット移動装置72と、その上部に設けられた多関節型の溶接ロボット73とから主として構成されている。溶接ロボット73にはアーム73aが設けられており、アーム73aの先端部にはトーチ76が取り付けられている。
【0012】
溶接ロボット73の前方にはワーク置き台75が配置されており、このワーク置き台75上に図11(b)又は(c)に示したような段差のある仕口溶接部を備えたワーク74が載置されている。溶接ロボット73はY軸方向ロボット移動装置71及びX方向ロボット移動装置72を備えていることから、ワークの溶接線に対して適正な溶接姿勢を取るように移動することができ、また大きさの異なる種々のワークに対応することもできる。
【0013】
図13(b)において、ワーク74は段差仕口部の溶接線74a、74b、74c及び74dが溶接ロボット73のアーム73aの基端部からワーク74に向かう線78に対して直交するか又は平行な方向に配置されており、各溶接線は溶接ロボット73の溶接トーチ76をX軸方向及びY軸方向に移動しながら溶接される。破線で囲まれた部分79はY軸方向及びX軸方向ロボット移動装置71、72を固定した場合の溶接トーチの有効動作範囲である。
【0014】
しかしながら、このような従来の自動溶接装置においては、段差仕口溶接部への適用について十分な考慮がなされておらず、溶接ロボットから離れた遠い方の段差仕口部を溶接しようとすると、ワーク上部のダイヤフラムと溶接トーチとが干渉し、段差仕口部を良好に溶接できないという問題点があった。
【0015】
図14(a)及び(b)は夫々図13(b)の状態の溶接ロボットを用いた仕口溶接方法を示す模式図であり、図14(a)はアーム73aの基端部からワークに向かう方向線78(X軸方向)に沿った段差仕口部74dを溶接する場合、図14(b)は溶接ロボットから遠い方のY軸方向に沿った段差仕口部74cを溶接する場合を示す図である。
【0016】
図14(a)において、溶接線74dは溶接トーチ76の有効動作範囲79内にあり、溶接トーチ76はワーク74の上部ダイヤフラム77と干渉することなく段差仕口の溶接線74dに到達し、良好な溶接を行うことができる。一方、図14(b)において、溶接線74cは溶接トーチ76の有効動作範囲79内にあるが、溶接トーチ76はワーク74の上部ダイヤフラム77の端辺と干渉する。即ち、段差への適用はトーチの形状(手首からアーク点までの距離)に依存するが、ロボットアーム73aがワーク74にかぶさる位置関係となるので、段差仕口の溶接線74cにその先端部を到達させることができず、良好な仕口溶接を行うことができない。
【0017】
このような仕口溶接を行う溶接装置に関する従来技術として例えば実開平5−70769号公報が挙げられる。図15は従来の鉄骨仕口フランジの自動溶接装置を示す説明図であって、図15(a)は正面図、図15(b)はその平面図である。図15(a)において、床面102に基台支柱101が設置されており、この基台支柱101に昇降自在な昇降体104が取り付けられている。昇降体104には基端部が基部を中心として回動自在な旋回ビーム111が設けられており、旋回ビーム111の先端部には溶接トーチ112を任意方向に操作できる溶接ロボット113が配置されている。溶接ロボット113は、図15(b)に示した円弧経路Lに沿って移動可能であり、溶接ロボット113はこの円弧経路Lに沿って配置されたワークW1乃至W3の仕口部に対して仕口溶接を行う(特許文献1、実用新案登録請求の範囲、図1、図2)。
【0018】
【特許文献1】実開平5−70769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来技術は、図13に示した自動溶接装置と同様、溶接ロボット113から離れた遠い方の段差仕口を溶接する際、ワーク上部のダイヤフラムの端辺と溶接トーチ112とが干渉する場合があり、段差仕口を良好に溶接できないという問題点があった。
【0020】
また上記従来技術は、溶接ロボット自体を旋回可能なアームに取り付け、旋回範囲内の旋回経路に沿ってワークを配置するものであり、ワークの配置基準が不明瞭であり、ワーク配置動作が煩雑になるという問題点もあった。
【0021】
このような問題点に対し、天井に溶接ロボットを取り付けた自動溶接装置を用いることが考えられる。図16は、天井に溶接ロボットを取り付けた自動溶接装置の正面図である。図16において、床面に設けられたY軸方向ロボット移動装置81の上部に垂直な支柱87が搭載されており、この支柱87の上端部にX軸方向ロボット移動装置82が水平に設けられている。X軸方向ロボット移動装置82には溶接ロボット83が下向きに固定されており、溶接ロボット83のアーム83aの先端部に溶接トーチ86が設けられている。溶接ロボット83の下部床面にワーク置き台85が配置されており、このワーク置き台85上に段差仕口を有するワーク84が載置されている。
【0022】
このような天井走行溶接ロボット装置によれば、天井部分にX方向のロボット移動装置82が設けられているので、溶接対象であるワーク84の上部ダイヤフラム88を跨がないで、支柱87から遠く離れた段差仕口部を溶接することができる。
【0023】
しかしながら、段差仕口部はダイヤフラム88の4辺に夫々対応して存在することから、これらの全てを良好に溶接しようとすると、天井にX軸方向だけでなくY軸方向への移動装置を設ける必要があり、システム全体が大型化又は複雑化し、操作が煩雑になるという問題点がある。なお、溶接ロボット83だけでなく、システム全体にもX軸方向及びY軸方向への移動装置を設けた場合は広大な設置スペースが必要になる。
【0024】
即ち、従来技術に従って多関節型溶接ロボットを使用して段差仕口溶接部を有する鉄骨柱の溶接部を溶接する場合、全ての段差仕口溶接部を良好なロボット姿勢を確保して良好に溶接しようとすると、溶接ロボットの動作を補うために新たな外部移装置が必要となり、移動装置の増加に伴いシステム全体が大型化し、操作が煩雑になるという問題点があった。
【0025】
本発明はかかる問題点に鑑み、溶接ロボットの外部移動装置を増加させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての溶接部を良好に溶接することができると共に、ワークの位置決めが容易で、ワーク設置スペースを小さくすることができる自動溶接装置におけるワーク配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法は、溶接ロボット本体と、この溶接ロボット本体に設けられたアームと、アームの先端部に設けられたトーチと、を有する溶接ロボットを使用し、移動装置により前記溶接ロボット本体を一方向にのみ移動させ、前記アームを操作してワークの溶接線を溶接する自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークを、前記アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワークの溶接線が前記ワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することを特徴とする。
【0027】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークの位置決めは、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うことが好ましい。
【0028】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークは段差仕口溶接部を有する仕口であることが好ましい。
【0029】
また、本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記傾斜角度は45度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本願発明に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、ワークを、ワークの溶接線が溶接ボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することにより、溶接部が溶接トーチの有効動作範囲内にあれば、溶接ロボットから遠く離れた位置の溶接部であっても良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。
【0031】
本願の請求項2に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、前記ワークの位置決めを、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うようにしたので、搬入ワークの中心軸がワークの溶接作業位置の中心軸と多少ずれた場合でも、ワークが拘束部材に当接した後、スライドしてワークの溶接作業位置まで移動するので、ワーク位置が一義的に定まり、容易に位置決めすることができる。
【0032】
本願の請求項3に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、ワークを、段差仕口溶接部を有する仕口としたので、溶接トーチの有効動作範囲内にある段差仕口部に対して良好な溶接姿勢で良好な溶接を行うことができる。
【0033】
また本願の請求項4に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法によれば、前記傾斜角度を45度としたので、ワーク置き台上のX軸方向とY軸方向が直交する座標軸を基準にワークを配置することができるので、ワークの位置決めがより容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
本発明者は、従来技術において溶接ロボットから最も離れた位置の段差仕口部を良好に溶接することができない原因は、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して直交又は平行するように配置していることにあると考え、鋭意研究した結果、溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対してワークの溶接線が傾斜するようにワークを配置することにより、溶接トーチの有効動作範囲内であれば、溶接ロボットの外部移動軸を増加させることなく、遠く離れた段差仕口部であっても良好なトーチ姿勢を確保して良好な仕口溶接を行うことができることを見出し、本発明に到達した。
【0036】
図1は本発明の第1実施形態に適用される自動溶接装置の側面図、図2は図1の平面図である。
【0037】
図1及び図2において、この溶接装置は溶接機ビーム11の長さ方向(Y方向)に移動可能であり、外部移動方向が1方向の溶接装置である。
【0038】
図1において、床面10上に長尺状の溶接機ビーム11が配置されている。溶接機ビーム11には基台12が水平移動可能に搭載されており、基台12上に垂直方向に延びる垂直ビーム13が設けられている。
【0039】
垂直ビーム13の上端部にはこの垂直ビーム13に対して直角方向に水平に延びる水平ビーム14が取り付けられている。水平ビーム14の先端部には支持体15を介して溶接ロボット16が設けられており、溶接ロボット16の先端部に溶接トーチ17が取り付けられている。垂直ビーム13にはその高さ方向の中間部に所定の平面を有するデッキ13aが固定されており、オペレータはこのデッキ13aからワークの溶接状況を監視することができる。
【0040】
図2において、床面10に水平に配置された長尺状の溶接機ビーム11に基台12を介して垂直ビーム13が水平移動可能に搭載されている。垂直ビーム13の上部先端部には、水平に延びる水平ビーム14が取り付けられている。水平ビーム14の先端部には支持体15を介して溶接ロボット16が設けられており、溶接ロボット16の先端部に溶接トーチ17が取り付けられている。
【0041】
床面10には溶接機ビーム11に平行にワーク置き台19が配置されている。溶接トーチ17の有効移動範囲18はワーク置き台19の上部表面とほぼ重なっており、溶接トーチ17の有効移動範囲18内に被溶接物である同一形状のワーク20、21等が2列に配置されている。
【0042】
ワーク20の位置決めは、図3に示したように、ワーク置き台(図示省略)上の予め決定されたワークの溶接作業位置に固定された拘束部材としてのストッパー8に、ワークの例えば下側ダイヤフラムを溶接ロボット本体から前記ストッパー8に向かう方向に移動させて前記ストッパー8に当接させることによって行う。
【0043】
図3は、図2における溶接時の溶接ロボットとワークとの位置関係を示す図である。図3において、ワーク20はその溶接線20a乃至20dがアーム16aの基端部からワーク20に向かう線4に対して所定角度で傾斜するように配置されている。ストッパー8は、図示省略したワーク置き台の溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向及びこれに直交する方向へのワーク20の移動を拘束する平面を有するもので、例えばワーク20を受け止めるための角部を有するように平面図上くの字状をしている。
【0044】
ストッパー8の平面図上くの字における角部は、配置されるワークの移動を拘束することができれば、その角部が溶接ロボット本体に対して開口する向きに配置されるものであっても、反溶接ロボット本体側に開口する向きに配置されるものであってもよい。
【0045】
平面図上くの字状のストッパー8を用いることにより、搬入ワークの中心軸がワーク配置位置の中心軸と多少ずれた場合でも、ワークがストッパー8に当接した後、スライドしてワークの溶接作業位置まで移動するので、ワーク位置が一義的に定まり、容易に位置決めすることができる。
【0046】
図2において、ワーク20は段差仕口溶接部を有する仕口であり、ワーク20は、アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワーク20の溶接線20a乃至20dが前記アームの基端部からワークに向かう方向に対して所定角度、例えば約45度で傾斜するように配置されている。
【0047】
図4は、図1の溶接ロボット16の先端部の溶接トーチ17を示す拡大図である。図4において、溶接トーチ17はトーチ部分の長さが例えば600mmあり、このトーチ17の先端部は溶接ロボット16のアーム16aの中心軸に対して例えば35度傾斜するように取り付けられている。このように傾斜して固定されていることにより、段差仕口の溶接時にダイヤフラムとの干渉を有効に回避して良好な溶接姿勢を確保することができる。
【0048】
以下、このような構成の自動溶接装置の動作を説明しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0049】
溶接を開始するに際し、先ず、ワーク20、21等をその溶接線が溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して、例えば45度で傾斜するように配置する。このときワークの位置決めは予めワーク置き台19上の所定の溶接作業位置に固定されたストッパー(図3参照)を使用して上述したように、前記ストッパーに当接させることによって行う。即ち、各ワークの下部ダイヤフラムの角部が溶接作業位置に配置されたストッパーの平面図上くの字の開口部に嵌合するように当接してワークの位置決めを行う(図3参照)。
【0050】
次に、溶接ロボット16を例えばその初期状態位置である図2中溶接機ビーム11の左端から被溶接ワークである例えばワーク20の上部ダイヤフラムの図中縦方向の対角線位置まで移動する。これによって、溶接ロボット16とワーク20との位置関係が図3の状態となる。溶接ロボット16の移動は図示省略した駆動装置によって行う。
【0051】
このとき、ワーク20の段差仕口溶接部である溶接線20a乃至20dは溶接トーチ17の有効動作範囲18内に存在し、溶接ロボット16のアーム16aの多関節部分及び溶接トーチ17の溶接アーム16aの中心軸に対する傾斜角度等を利用することによって図5に示したように、ダイヤフラムとの干渉を回避して全ての段差仕口に対して良好な溶接姿勢を確保して良好な溶接が行われる。
【0052】
図5は、図2の溶接ロボット16によって溶接線20cを溶接する方法を示す説明図であって、図5(a)はその斜視図、図5(b)は平面図、図5(c)は正面図である。図5(a)及び(b)において、溶接線20cは溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及びトーチ17の先端部の傾斜角度等を利用して溶接線20cの全長に到達することができる。またこのとき、ダイヤフラム6の溶接線20cに平行な辺6cと溶接トーチ17先端部との直接の干渉はない。即ち、ワークを、その溶接線がアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することにより、ロボットアームがワークにかぶさらない位置関係となる。従って溶接トーチ17は図5(c)に示したように、溶接線20cの全線に対して良好な溶接姿勢を確保することができ、これによって良好な仕口溶接を施すことができる。
【0053】
溶接線20dについては、溶接線20cの場合とアームの基端部からワークに向かう線4(図3参照)に対して線対称となる位置に溶接トーチ17を移動させ、同様に良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。
【0054】
溶接線20aについては、溶接線20c及び20dを溶接する場合に比べて溶接トーチ17を溶接ロボット16本体に近づける方向に移動させ、トーチ角度を調整することによって全線にわたって良好な溶接姿勢を確保することができ、また溶接線20bについては溶接線20aを溶接する場合とアームの基端部からワークに向かう線4に対して線対象となるように溶接トーチ角度を調整することによって良好な溶接姿勢を確保することができ、これによって夫々良好な仕口溶接を行うことができる。
【0055】
ワーク20に対して段差仕口溶接が終了した後、溶接ロボット16をこのワーク20に隣接するワークである例えばワーク21に対応する位置までY軸方向に沿って移動させ、ワーク21と溶接ロボット16との位置関係を上述した図3の場合と同様にし、ワーク20の仕口溶接と同様にしてワーク21の段差仕口溶接部を溶接する。以下、順次隣接するワークに対して同様にして段差仕口溶接を行う。
【0056】
本実施形態によれば、ワーク20等をその溶接線が溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置したので、溶接ロボット16のアーム16aの多関節機能及び溶接トーチ17のアーム16aの中心軸に対する傾斜角度等を利用することによって、ダイヤフラムと溶接トーチとを干渉させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての段差仕口溶接部に対して良好な溶接姿勢を確保して良好に溶接することができる。従って、溶接ロボット16から遠く離れた段差仕口を溶接するためのみに溶接ロボットの外部移動軸を増加させる必要がない。また、外部移動軸を増加させることによるシステムの複雑化、大型化を回避することができ、装置全体をコンパクトなものとし、操作性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して水平又は垂直となるように配置していた従来技術に比べて、ワークの必要配置面積を狭くすることができる。
【0058】
図6は、本実施形態におけるワークの必要配置面積を従来技術におけるワークの必要配置面積と比較して示す図である。図6において、本実施形態における同じ大きさのワークを8個配置するに必要な面積の長さ(La)は15283mmであり、従来技術の場合の(Lb)15250mmとほぼ同様であるが、必要幅(Wa)は3033mmであり、従来技術における必要幅(Wb)4000mmよりも、約970mm短くなり、必要配置面積を約24%低減することができる。
【0059】
更に、本実施形態によれば、溶接ロボットの動作プログラムを作成する際、従来技術で行っていた溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向の位置決めをした後、これに垂直な方向の位置決めを行うという2段階の位置決め操作が不要となり、溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向の位置決めだけで対応することができる。従って、動作プログラムの作成が容易で且つ正確になる。
【0060】
図7は、本発明の第2実施形態に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法を示す説明図であって、第1実施形態の変形例を示図である。
【0061】
図7において、ワーク24、25等は第1実施形態におけるワークとはその形状が異なる仕口であり、上下又は左右が対象になっていないが、例えばワーク24は段差仕口溶接部24a及び24bを有し、この溶接線24a及び24bは溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して約45度で傾斜するように配置されている。
【0062】
このように配置されたワークに対して段差仕口溶接を開始する際は、先ず、溶接ロボット16を被溶接ワークである例えばワーク24に対応する位置まで移動する。これによって、溶接ロボット16とワーク24との位置関係が図8に示したようになる。
【0063】
図8は、本実施形態における溶接ロボット16とワーク24との位置関係を示す図である。図8において、ワーク24の段差仕口溶接部24a及び24bは全て溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、各溶接線はアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置されている。
【0064】
従って、本実施形態において、溶接ロボット16の溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及び先端部の傾斜角度等を利用して全ての溶接部の溶接線に対して適正姿勢を確保して適正な段差仕口溶接を行うことができる。
【0065】
図9は、本発明の第3実施形態に係る自動溶接装置におけるワーク配置方法を示す説明図であって、第1実施形態の別の変形例を示図である。
【0066】
図9において、ワーク26、27等の形状は全て同一ではなく、異なる形状のワークが含まれている。このように異なる形状のワークが混在していても、各ワークの溶接線が全て溶接トーチ17の有効動作範囲18内にあり、各溶接線、例えばワーク26の溶接線26a、26b、26c及びワーク27の溶接線27a、27b、27c、27dが夫々溶接ロボット16のアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜するように配置されているので、溶接トーチ17はアーム16aの伸縮機能及び先端部の傾斜角度等を利用して全ての溶接部の溶接線に対して適正姿勢を確保して適正な段差仕口溶接を行うことができる。
【0067】
なお、溶接ロボット本体を移動させない固定型の溶接ロボットにおいては、図10に示したように、溶接ロボット33のアーム33aの基端部からワークに向かう方向線4に対して2つのワーク34及び35が線対象になるように配置することができる。図10は、固定型の溶接ロボットに対するワークの配置方法の1例を示す図である。図10において、ワーク34及び35はアームの基端部からワークに向かう方向線4に対して線対象となるように配置されている。ワークをこのように配置することによってトーチの有効動作範囲を有効活用することができる。このようなワーク配置は、ワークの配列方向の長さを十分に取ることができない工場において有効である。
【0068】
本発明の各実施形態においては、ワークの溶接線が溶接ロボットのアームの基端部からワークに向かう方向に対して傾斜する角度を45度として説明したが、本発明における前記傾斜角度はこれに限定されるものではなく、所期の目的を達成することができれば45度以外であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
溶接ロボットの外部移動軸を増加させることなく、トーチの有効動作範囲内にある全ての溶接線に対して良好な溶接姿勢を確保して良好な溶接を行うことができる本発明の自動溶接装置におけるワーク配置方法は、溶接ロボットによる自動溶接の分野で特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に適用する溶接装置を示す図である。
【図2】図1における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるワークと溶接ロボットとの位置関係を示す図である。
【図4】図1の溶接トーチを示す拡大図である。
【図5】第1実施形態における段差仕口溶接部の溶接方法を示す図である。
【図6】第1実施形態におけるワークの必要配置面積を従来技術と比較して示す図である。
【図7】第2実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図8】第2実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す模式図である。
【図9】第3実施形態における溶接ロボットとワークとの位置関係を示す平面図である。
【図10】固定型溶接ロボットにおける溶接ロボットとワークとの位置関係を示す模式図である。
【図11】仕口溶接部を有する鉄骨柱を示す側面図である。
【図12】図11(a)の平面図である。
【図13】従来技術を示す説明図である。
【図14】従来技術の問題点を示す説明図である。
【図15】他の従来技術を示す説明図である。
【図16】別の従来技術を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
4:アームの基端部からワークに向かう線
6:ダイヤフラム
6c:ダイヤフラムの辺
8:ストッパー
10:床面
11:溶接機ビーム
12:基台
13:垂直ビーム
13a:デッキ
14:水平ビーム
15:支持体
16:溶接ロボット
16a:アーム
17:溶接トーチ
18:溶接トーチの有効移動範囲
19:ワーク置き台
20:ワーク
20a〜20d:段差仕口溶接線
21:ワーク
23:Y軸方向の移動方向を示す矢印
24:ワーク
24a〜24c:段差仕口溶接線
25:ワーク
26:ワーク
26a〜26c:段差仕口溶接線
27:ワーク
27a〜27d:段差仕口溶接線
33:溶接ロボット
33a:アーム
34:ワーク
34a〜34d:段差仕口溶接線
35:ワーク
35a〜35d:段差仕口溶接線
41:コラム
42:ダイヤフラム
43:コラムコア
44:梁部材
45:梁フランジ
46:ウェブ材
47:裏当金
51:コラム
52:ダイヤフラム
53:コラムコア
54:梁部材
55:梁フランジ
56:ウェブ材
57:コラム
58:ダイヤフラム
59:裏当金
61:コラム
62:ダイヤフラム
63:コラムコア
64:梁部材
65:梁フランジ
66:ウェブ材
67:裏当金
71:Y軸方向ロボット移動装置
72:X軸方向ロボット移動装置
73:溶接ロボット
73a:アーム
74:ワーク
74a〜74d:段差仕口溶接線
75:ワーク置き台
76:溶接トーチ
77:ダイヤフラム
78:アームの基部から基端部に至る線
79:溶接トーチの有効動作範囲
81:Y軸方向ロボット移動装置
82:X軸方向ロボット移動装置
83:溶接ロボット
83a:アーム
84:ワーク
85:ワーク置き台
86:溶接トーチ
87:支柱
88:ダイヤフラム
101:基台支柱
102:床面
104:昇降体
111:旋回ビーム
112:溶接トーチ
113:溶接ロボット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボット本体と、この溶接ロボット本体に設けられたアームと、アームの先端部に設けられたトーチと、を有する溶接ロボットを使用し、移動装置により前記溶接ロボット本体を一方向にのみ移動させ、前記アームを操作してワークの溶接線を溶接する自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークを、前記アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワークの溶接線が前記ワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することを特徴とする自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項2】
前記ワークの位置決めは、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項3】
前記ワークは、段差仕口溶接部を有する仕口であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項4】
前記傾斜角度は、45度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項1】
溶接ロボット本体と、この溶接ロボット本体に設けられたアームと、アームの先端部に設けられたトーチと、を有する溶接ロボットを使用し、移動装置により前記溶接ロボット本体を一方向にのみ移動させ、前記アームを操作してワークの溶接線を溶接する自動溶接装置におけるワーク配置方法において、前記ワークを、前記アームの基端部からワークに向かう方向が前記溶接ロボット本体の移動方向に交叉するような位置に、前記ワークの溶接線が前記ワークに向かう方向に対して傾斜するように配置することを特徴とする自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項2】
前記ワークの位置決めは、ワークの所定の溶接作業位置に設けられ前記溶接ロボット本体からワークの溶接作業位置に向かう方向に対して傾斜する面及びこの面に直交する面を有する拘束部材に対し、前記溶接ロボット本体から前記拘束部材に向かう方向にワークを移動させて前記拘束部材に当接させることによって行うことを特徴とする請求項1に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項3】
前記ワークは、段差仕口溶接部を有する仕口であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【請求項4】
前記傾斜角度は、45度であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自動溶接装置におけるワーク配置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−110570(P2006−110570A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298275(P2004−298275)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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