自動等温滴定マイクロ熱量計装置及び使用方法
試料セルステムを介してアクセス可能である試料セル、及び、基準セルステムを介してアクセス可能である基準セルを有するマイクロ熱量計を備える自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム。更に、システムは、滴定剤を供給するために試料セル内へ挿入されるように構成された滴定針を有するシリンジを備え、シリンジ内のプランジャを駆動するためのアクティベータを備える自動ピペットアセンブリと、ピペットアセンブリを支持し、滴定動作位置、洗浄動作位置及び充填動作位置にピペットを配置するように構成されたピペット平行移動ユニットと、滴定針のための洗浄ステーションと、ピペットが滴定位置以外の位置に配置されたとき、試料セル内で試料液を交換するための動作を実施するように構成されたセル準備ユニットとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してマイクロ熱量計に関し、より具体的には、マイクロ熱量計の性能を改善する機能(feature)に関し、特に自動等温滴定マイクロ熱量計システム(ITCシステム)の性能を改善する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ熱量計は、生化学、薬理学、細胞生物学その他の分野で広く使用される。熱量計は、生体高分子の熱力学的特性の変化を測定するための直接的な方法を提供する。マイクロ熱量計は、典型的には、2つのセル計器であり、試料セル内の水性緩衝液中の試験物質の希釈溶液の特性が、基準セル内の等量の水性緩衝液と連続的に比較される。温度又は熱流など、2つのセルの特性間の測定差は、試料セル内における試験物質の存在に起因する。
【0003】
マイクロ熱量計の1つのタイプが、等温滴定熱量計である。等温滴定熱量計(ITC)は、示差デバイスであるが、一定温度及び一定圧力で作動し、一方、試料セル内の液体が連続的に攪拌される。滴定熱量計の最も一般的な用途は、分子間相互作用の熱力学的特徴付けにおけるものである。この用途では、試験物質(例えばタンパク質)の希釈溶液が、試料セル内に配置され、様々な時点で、試験物質に結合するリガンドを含有する少量の第2の希釈溶液が、試料セル内に注入される。この計器は、試験物質に対する新たに導入されたリガンドの結合によって上昇した又は吸収された熱を測定する。複数注入実験の結果より、ギブスのエネルギー、結合定数、エンタルピー変化、エントロピー変化、及び結合の化学量論比などの特性を決定し、試験物質とリガンドとの間で特定の対を形成することができる。
【0004】
現在利用されているITCは確実な結合データ結果を提供するが、薬剤開発の初期段階におけるそれらの利用の普及は、複数の要因、すなわち、結合判定を実施するために必要とされるタンパクの量が比較的多量であること(例えば、約0.1mg〜約1.0mgのタンパク質)、測定の実施に必要とされる時間によって限定されるスループット、及び、従来のITCを利用する複雑さによって、制限されてきた。
【0005】
今日、従来技術のITCを利用して結合データを収集するには、実施者による膨大な準備及び技量が必要となる。例えば、従来技術のITCを使用すると、基準セル及び試料セルは、最初に、対応するセルステムを介して基準物質及び試料物質でそれぞれ充填される。次に、ITCの滴定ピペットが滴定剤で充填されるが、これは細心の注意を要する操作である。というのは、ピペット内のシリンジが正確に充填され、その中に空気が封入されないことが非常に重要であるからである。次いで、滴定ピペットの針がセルステムを介して試料セル内に手動で配置され、ITC実験が開始する。ITC測定手順は、実験を実施するためのプログラムを実行するコンピュータ等の形態にある制御ユニットによって制御される。実験用に使用されるプログラムに合わせて、攪拌モータが、試薬を適切に混合することができる指定速度でシリンジ、針及びパドルを回転させる。実験用に使用されるプログラムに合わせて(例えばある一定の温度及び/又は平衡状態が達成されたとき)、シリンジ内のプランジャが始動され、試料溶液中に滴定剤を注入する。この注入は、プログラム設定に応じて、離散的(段階的)又は連続的に実施できる。熱量計は、試薬の相互作用に関連する時間に対する発熱/熱吸収を連続的に測定し記録する。この結果の解析が、確立されたアルゴリズムにより行なわれる。
【0006】
上述の従来技術の手順を読むことによって理解されるように、従来技術のITCを利用すると、従来技術のITCで実施される結合測定の精度は、実施者の技能及び経験に大きく依存し、相当な準備時間を伴う。
【0007】
最近、市販のマイクロ熱量計と、自動で試料を取り扱うように構成されたリニアロボットシステム及び流体システムとを基にした1つ以上の自動ITCシステム、MicroCal AutoITCが市場に出ている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cooper,Allan & Johnson Christopher,M (1994) Isothermal Titration Microcalorimetry (online) From the internet: [retrievedon 2010−01−15] <URL−http://www.chem.gla.ac.uk/staff/alanc/MMB−ITC−1994.pdf;Fig 3,caption;p 141 para 1;p 144#6;p 145 #9,#10,#12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を解消する、新規の自動等温滴定マイクロ熱量計システム(ITCシステム)を提供することである。これは、独立請求項に規定されるITCシステムにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本ITCシステムに関する1つの利点は、それぞれの滴定試験が要する時間が従来技術と比較して短いことである。これは、例えば、低減されたセル体積、並びに、ピペットアセンブリ及び試料セルの洗浄及び再充填が基本的に平行して実施されることによる。したがって、システムのスループットは、従来技術のシステムと比較して相当高く、それにより、スクリーニング式実験を実施するために大量の試料を評価することが可能となる。
【0011】
別の1つの利点は、ITCシステムが無人で多くの滴定試験を実施するように構成することができることである。
【0012】
本発明の実施形態は、従属請求項に規定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術の自動ピペットアセンブリを備える手動ITCシステムの断面による例図である。
【図2】自動ITCシステムの1つの実施形態の概略図である。
【図3a】自動ITCシステムの別の実施形態の概略図である。
【図3b】自動ITCシステムの別の実施形態の概略図である。
【図4a】自動ITCシステムのためのシリンジ流体システムの2つの実施形態の概略図である。
【図4b】自動ITCシステムのためのシリンジ流体システムの2つの実施形態の概略図である。
【図5a】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図5b】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図5c】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図6】一実施形態によるセル準備流体システムの概略図である。
【図7】図2のITCシステムのための異なる動作状態の概略図である。
【図8a】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8b】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8c】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8d】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
参照により組み込まれる国際特許出願第PCT/US2008/081961号では、図1に開示されるタイプの手動ITCシステム10が提示される。一実施形態では、手動ITCシステム10は本自動ITCシステムにおいてマイクロ熱量計として利用されるが、別の実施形態では、マイクロ熱量計は、以下に更に詳細に説明されるように別のタイプのものである。開示される手動ITCシステム10では、感度を低下させることなく、著しく速い反応時間で、従来技術のITCと比較して約7分の1にセルコンパートメント体積が低減される。このようなITCシステムにより、約10分の1の少量のタンパク試料によって、しかも1時間当たりわずか合計約2〜約4回の滴定によって、実験を実施することが可能となる。ITC実験の実施に関連するコストの削減に加えて、比較的小さなセル体積によっても、ITC用途の数が増大する。例えば、ITCにより測定できる結合親和力の範囲が、「c値」と呼ばれるパラメータにより示される。「c値」は、結合親和力(Ka)及び高分子の総濃度(Mtotal)の積(c=[Mtotal]Ka)である。正確な親和力の判定のために、c値は1から1000の間でなければならない。10分の1にセルの体積が縮小することにより、同量のタンパクが使用される場合には同様にc値が上昇し、その結果、弱い結合物を測定することが可能となる。この能力は、特に完全に自動化された計器との組合せで、結合親和力が弱い創薬の初期段階において、特に重要になる。
【0015】
図1は、本発明により自動化できる手動ITCシステム10の一実施形態を概略的に図示する。ITCシステム10は、マイクロ熱量計20と、自動ピペットアセンブリ30とを備える。マイクロ熱量計20は、基準セル40と、試料セル50とを備え、これらのセルは、熱容量及び体積が基本的に同一になるように設計される。セル40及び50は、金、白金、タンタル、又は、ハステロイ等の適切な化学的不活性の熱伝導性材料から構成される。セル40及び50は、基本的に任意の適切な形状とすることができるが、同一形状であり、完全対称構成に配置することが可能であり、滴定剤の試料との効率的な混合を実現できることが望ましい。開示される実施形態では、セル40及び50の断面は矩形であり、横軸水平方向への断面は円形であり、結果として、円形対向表面を有するコイン形状セルとなる。
【0016】
外部からの熱の影響を最小限に抑えるために、基準セル40及び試料セル50は共に、第1の熱シールド60により封鎖され、更に第1の熱シールド60は、第2の熱シールド70に封鎖される。熱シールド60、70は、銀、アルミニウム、又は、銅等のような任意の適切な熱伝導性材料から構成することができる。更に、シールド60、70は、1つ以上の熱的に相互連結されたサブシールド(図示せず)から構成することができ、熱量計セル40、50に対して、更に一層安定的な温度条件を提供する。
【0017】
シールド60、70の温度を制御するために、熱制御手段を、シールド260、270の温度を制御するように構成することができる。ITCシステムでは、熱制御手段は、滴定実験が開始される前に、熱量計の、すなわち熱シールド60、70の「等温」温度を設定するために主に使用される。しかし、以下でより詳細に開示されるように、熱制御手段は、熱量計の断熱挙動を改善するためにも使用できる。一実施形態では、熱制御手段は、ペルチエ効果等に基づいて熱電ポンプデバイスなどの1つ以上の熱ポンプユニットから構成される。他のタイプの熱制御手段には、温度自動制御式液体槽、機械式熱ポンプ、化学式加熱又は冷却システム等が含まれる。
【0018】
開示される実施形態では、第1の熱ポンプユニット80が、第1の熱シールド60と第2の熱シールド70との間で熱エネルギーを伝達するように構成され、第2の熱ポンプユニット90が、室温との熱的接触状態で、第2の熱シールド70と熱シンク100との間で熱エネルギーを伝達するように構成される。所望の温度条件が実現されるように、温度制御装置110は第1の熱ポンプユニット80及び第2の熱ポンプユニット90を制御するように構成される。温度制御装置110は、関連する温度センサ120及び130によってそれぞれ第1の熱シールド60及び第2の熱シールドの温度を監視する。更に、温度制御装置110はセル加熱構成体145によってセル温度を制御するように構成される。温度制御装置110は、コンピュータ150等上で実行される熱量計ユーザインターフェースを介して制御される。ITC実験中に試料セル50と基準セル40との間の温度差を感知するための熱量計センサ140は、例えば前置増幅器160を介してコンピュータ150に接続できる。
【0019】
基準セルステム170及び試料セルステム180は、基準液、試料液、滴定流体を供給し、セルを洗浄する等のために、それぞれ基準セル40及び試料セル50に対するアクセスをもたらす。開示される実施形態では、セルステム170及び180は共に、熱シールド及び熱シンクを共に通って実質的に垂直方向に延在して、セル40及び50と直接連通し、セルステム170及び180はそれぞれ、第1の熱シールド60の空洞部内でそれらの各セル40及び50を支持する。
【0020】
自動ピペットアセンブリ30は、ピペットハウジング190と、滴定針210が滴定剤を供給するために試料セル50中に挿入されるように構成されたシリンジ200と、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220とを備える。滴定針210は、ハウジング190に対して回転可能であり、滴定剤と試料液との効率的な混合を実現するために試料セル50内の試料液を攪拌するように構成された攪拌パドル240を備える。更に、自動ピペットアセンブリ30は、滴定針210を回転駆動するための攪拌モータ250を備える。
【0021】
図1に開示される実施形態では、攪拌モータ250は、シリンジ200及び滴定針210と同心に配置された中空ロータを伴う直接駆動モータである。シリンジ200は、攪拌モータ400による回転のために、シリンジ200の上方端部で支持され、軸受260によってシリンジ200の下方端部で支持される。
【0022】
代替の一実施形態では、図面には示されないが、攪拌モータ250が、駆動ベルト構成体又は駆動輪構成体等の回転伝達構成体によって、滴定針を回転駆動させる。更には、攪拌モータはピペットアセンブリ30から離して配置でき、磁気結合部等のような適切な伝達構成体によって滴定針を回転駆動するように構成される。
【0023】
自動ピペットアセンブリ30は、例えば試料の攪拌及び滴定のためのITCシステムの制御装置によって制御される。
【0024】
開示される実施形態では、リニアアクティベータ220は、中空ロータの穴を通してシリンジ200内に同軸方向に延在するねじプランジャ230を駆動するように構成されたステッピングモータ270を備え、シリンジ200は、正確な量の滴定液をシリンジ200から押し出すことが可能となるように、シリンジ200の内方壁部に対して密封するピペット先端部280に回転可能に装着される。リニアアクティベータ220は、十分な精度で制御された線形移動を実施できるあらゆる別のタイプとすることができる。この設計により、シリンジは、ピペットアセンブリ30の本体190とは無関係に回転されることが可能となり、同時に、リニアアクティベータ220は、ねじプランジャ230を駆動することが可能となる。
【0025】
図2から8dに概略的に開示される一実施形態によれば、
試料セル50及び基準セル40を有し、試料セル50には試料セルステム180を介してアクセス可能であり、基準セル40には基準セルステム170を介してアクセス可能である、マイクロ熱量計20と、
滴定剤を供給するために試料セル50内へ挿入されるように構成された滴定針210を有するシリンジ200を備え、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220を備える自動ピペットアセンブリ30と、
ピペットアセンブリ30を支持し、滴定動作位置、洗浄動作位置及び充填動作位置にピペットを配置するように構成されたピペット平行移動ユニット310と、
滴定針210のための洗浄ステーション320と、
ピペット30が滴定位置以外の位置に配置されたとき、試料セル50内で試料液を交換するための動作を実施するように構成されたセル準備ユニット330と
を備える自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム300が提供される。
【0026】
マイクロ熱量計20は、図1に概略的に図示されるマイクロ熱量計20のような十分に少量の試料を使用してITC熱量計測定を実施できるあらゆるタイプとすることができる。図2から図8dに具体的に示されないが、上記(図1)に開示されるように、マイクロ熱量計は試料セル50及び基準セル40を一般に備え、試料セル50には試料セルステム180を介してアクセス可能であり、基準セル40には基準セルステム170(図2に円形開口として示される)を介してアクセス可能である。自動ピペットアセンブリ30は、上記に開示されるタイプとすることができるが、滴定剤を供給するために、試料セル50内へ挿入されるように構成された滴定針210を有するシリンジ200を備えた任意の適切な設計のものとすることができる。上記のように、ピペットアセンブリ30は、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220を更に備えることができる。しかし、シリンジ200は、基本的に、確定した量の滴定剤を提供できるあらゆるタイプとすることができる。滴定針210は回転可能であり、滴定中に試料セル50内で液体を攪拌するためのパドル240を備えることができる。攪拌は、上記に説明されるように、又は、任意の別の適切なやり方で行うことができる。
【0027】
ピペット平行移動ユニット310は、適切な滴定位置、洗浄位置及び充填位置内にピペットを配置できるあらゆるタイプとすることができる。図2及び図3は、2つの異なる平行移動ユニットのタイプを概略的に図示し、図2は回転平行移動ユニット310を示し、図3は線形平行移動ユニット310bを示す。試料セル50内の位置、及び/又は、別の位置に滴定針210を配置(挿入)するために、ピペット平行移動ユニット310は、マイクロ熱量計20に対して垂直方向にピペット30を移動できる。ピペット平行移動ユニット310は、機械的にあらかじめ定めされた位置の間だけを移動できるように、その移動の自由を機械的に制限されたものであっても、ソフトウェアのパラメータによって、上記あらかじめ定められた位置の間に移動が制限されるロボットタイプの一般的な平行移動ユニットであっても、それらの組み合せであってもよい。見やすいように、垂直移動のためのそのような手段は、図2から図8dに含まれていない。
【0028】
洗浄ステーション320は、ピペットアセンブリ30の滴定針210を洗浄位置に配置できる適切な位置に配置される。洗浄ステーション320は、ピペットアセンブリ30が洗浄位置に配置されたとき、滴定針210の、少なくとも滴定中に試料に浸漬される部分を洗浄できる任意の適切なタイプとすることができる。一実施形態では、洗浄ステーション320は、滴定針を受容するように構成された洗浄空洞340を備える。洗浄ステーション320は、ITC実験及び洗浄サイクルにおいて使用される試薬に対して不活性な任意の適切な材料から作られ、一実施形態では、洗浄ステーション320は、廃棄物除去ユニット360に連結された洗浄空洞の底端部に廃棄物出口ポート350を備える。廃棄物出口ポート350は、以下により詳細に開示されるように、ピペット洗浄サイクル中に廃液と同様に洗浄液を除去するために使用され、洗浄空洞を完全に排水できるようにするために、好ましくは、洗浄空洞340の底端部に配置される。図面に開示されない一実施形態では、ピペット平行移動ユニット310は、垂直方向に移動が制限され、代わりに、洗浄ステーション320が、針240の洗浄のために、針240と位置合わせされる位置に移動するように構成される。
【0029】
図2から図8dでは、セル準備ユニット330がピペット平行移動ユニット310と同じタイプの平行移動ユニットとして示されるが、試料セル内の洗浄、及び、試料液の交換に関連する2つ以上の位置に位置決めされるように構成される。試料セル50内の試料液を交換するためのセル準備ユニット330を備えることによって、ピペット30が洗浄され、新しい滴定剤で充填されるのと同時に、試料セル50が洗浄され、新しい試料液で充填できるので、合計のサイクル時間が低減され、したがって、ITCシステム300のスループットが増大する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム300を概略的に開示する。上記に述べたように、この実施形態における平行移動ユニット310、330、370は、全てロータリタイプであり、全ての動作位置は回転平行移動ユニットの円軌道に沿って配置される。図示されないが、別の一実施形態では、作業領域を拡張させ、柔軟性を高めるために、1つ以上の回転平行移動ユニットが追加的に線形平行移動手段を備える。
【0031】
図2では、ピペット平行移動ユニット310は、ピペットアーム380を備え、それは軸Aの周りで回転するように回転可能に支持され、他方の端部でピペットアセンブリ30を支持する。更に、ピペットアーム380は、軸Aに沿って垂直に移動できるので、又は、1つの平面内の回転に制限されて、ピペット30がアーム380に対して垂直に移動できるので、ピペットを垂直に移動するように構成される。ピペットアーム380は、
滴定針が試料セル50に挿入された状態での滴定、
滴定針が、組み合わされた洗浄/充填ステーション320に挿入された状態での洗浄及び充填
のためにピペット30を定位置に配置するように構成される。
【0032】
組み合わされた洗浄/充填ステーション320は、洗浄空洞340の底端部に出口ポート350を伴う上記に述べされた洗浄ステーションのタイプとすることができる。出口ポート350は、以下により詳細に述べられる廃棄物流体システム360に連結される。
【0033】
次に、セル準備ユニット330は、軸Bの周りで回転するように回転可能に支持された、対応するセルアーム390から構成され、試料セル50内、及び、おそらくは基準セル40内にも液体を分注し、それらの中の液体を抜き取るための、セル流体システム410に連結されたセル套管400を支持する。セル流体システム410は以下により詳細に開示される。セルアーム390は、マイクロ熱量計のセル40、50、1つ以上の試料源、及び、試料準備ステーション420等のような複数の位置にセル套管400を移動させるように構成される。開示される実施形態では、4つの異なる試料源位置が含まれ、そのうちの3つの位置は、例えば標準的試料液のためのバイアルタイプの大容積の試料リザーバ430a〜430cに相当し、第4の位置は例えば特定又は高感度の試料液のための自動サンプリング位置440に相当し、セル套管400は試料トレー450(例えばマイクロプレート等)内の特定のウェルから試料液を引くように構成される。開示される実施形態では、自動サンプリング位置440は固定位置であり、そこにセル套管400がセルアーム390によって移動され、トレーアクチュエータ(図示せず)によって自動サンプリング位置440に選択されたウェルを位置決めするように移動できる試料トレー450の特定のウェル内に降下できる。トレーアクチュエータは、試料トレー450の特定の試料ウェルを所望の位置に選択的に位置決めできるX−Yリニアアクチュエータ又は回転トレーを伴うロータリアクチュエータのような任意の適切なタイプとすることができる。試料準備ステーション430は、試料がセル50又は40内に移送される前に、例えば試料を実験温度に近い温度にしたり、混合を通して脱気したりすることによって試料を準備するために使用できる。
【0034】
更に、図2に開示されるITCシステム300は、例えば試料トレー450のような主滴定剤源から洗浄/充填ステーション320へ滴定剤を移送するように構成された滴定移送ユニット370を備える。開示される実施形態では、移送ユニット370は、例えばセル移送アーム380に相当する、滴定移送アーム460を備え、それは、軸Cの周りで回転するように回転可能に支持され、シリンジ流体システム480に連結された移送套管470を支持する。滴定移送アーム460は、試料トレー450内の滴定ウェルから滴定試料を引くための自動サンプリング位置440、及び、洗浄/充填ステーション320内で滴定試料を分注するための位置に滴定套管470を位置決めするように構成される。自動サンプリング位置440及び試料トレー450は、上記に述べたセル套管自動サンプリング位置440に対して、別の位置及びトレーとすることができるが、図2に開示されるように、セル套管470及び移送套管400は、同じ自動サンプリング位置440(同時ではない)に位置決めでき、トレーアクチュエータは、自動サンプリング位置440に各々の套管のための適切なウェルを位置決めするように制御できる。更に、シリンジ流体システム480は、ピペットアセンブリ内のシリンジ200の上方部分で充填ポート500に選択的に連結するように構成された充填ポート連結ユニット490に連結される。充填ポート連結ユニット490は、充填ポート500に連結されたとき、シリンジ200を通して液体又は気体を選択的に引くか、又は、押すために、シリンジ空洞とシリンジ流体システム480との間に流体接触をもたらす。
【0035】
先に述べられているように、図3は、図2のシステムに対応するが、ピペット30、セル套管400及び移送套管470のための平行移動ユニット310b、330b、370bはリニアタイプであり、それに従って、関連する動作位置が配置されるITCシステムを示す。更には、セルアーム390b及び移送アーム460bは、(上記に述べられているような垂直方向を考慮しない)二次元内を移動可能であり、それらの1つ又は両方は、固定試料トレー450内の選択されるウェル内に関連する套管を位置決めするように制御される。図3bは、図3aに類似するリニアITCシステムの実施形態を示しており、滴定移送ユニットが除外され、ピペット平行移動ユニット310cが、試料トレー450内の選択されるウェルから直接充填するための位置にピペット30を配置するように構成されている。更には、ピペット30が洗浄ステーション320に配置されたとき、及び、試料トレー450のウェル内の充填位置に配置されたとき、充填ポート500に連結するために、充填ポート連結ユニット490は、ピペットアーム380c上でピペット30の近くに配置される。
【0036】
上記に述べられているように、廃棄物流体システム360は、洗浄ステーションから流体を抜き取るために、洗浄ステーション320の出口ポート350に連結される。一実施形態では、適宜、廃棄物流体の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁520と組み合わせて、廃棄物流体システム360が、洗浄ステーション320から流体を選択的に抜き取るための廃棄物ポンプ510を備える。別の実施形態では、廃棄物ポンプはITCシステム300内の1つ以上の流体システムのための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁はシステム内の流れをそれぞれ制御できる。廃棄物ポンプ510は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような洗浄ステーション内の流体を取り除くことができる任意の適切なタイプのポンプとすることができる。図4aは、シリンジポンプのようなリザーバタイプの廃棄物ポンプ510と、廃棄物ポンプを出口ポート350、廃棄物出口530及びベントポート540へ選択的に連結し、それらから分離させるための廃棄物制御弁520とを備える廃棄物流体システム360の一実施形態の概略図を示す。
【0037】
上記に述べられ、図4aから図5cにより詳細に示されるように、ピペットのシリンジ200はその上方部分に充填ポート500を備えることができ、プランジャ230が充填ポート500の上方に位置決めされたとき、シリンジ空洞との間に流体接触をもたらす。更に、ITCシステム300は、充填ポート500に選択的に連結するように構成された、結合する充填ポート連結ユニット490を備えることができ、それによって、以下により詳細に開示されるように、シリンジ空洞と、部分洗浄動作及び充填動作としてシリンジを通して液体又は気体を選択的に引く、又は、押すように構成されたシリンジ流体システム480との間に流体接触をもたらす。概略的に開示されるように、充填ポート500は、シリンジ200の壁を通る孔とすることができ、孔は、真直又は円錐のような任意の適切な形状とすることができる。連結ユニット490は、信頼性があり、液密な連結を実現するために、結合する形状であり、かつ/又は、弾性材料から作られる連結部材550を備える。更に、シリンジ流体システム480は、移送套管470に連結でき、滴定移送動作中と同様に移送套管470の洗浄動作中に吸引及び分注を制御するように構成される。
【0038】
一実施形態では、シリンジ流体システム480は、適宜、流体の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁570、580、590、及びパージ気体源600と組み合わせて、選択的に流体システム内に液体を引く、又は、流体システム内へ押すための充填ポンプ560を備える。別の実施形態では、充填ポンプはITCシステム300内の1つ以上の流体システムのための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁はシステム内でそれぞれ流体を制御できる。廃棄物ポンプ560は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような比較的高い精度でシリンジ流体システム内で液体を引くか、又は、押すことができる任意の適切なポンプとすることができる。図4aは、シリンジポンプのようなリザーバタイプの充填ポンプ560と、シリンジ制御弁570と、シリンジパージ弁580と、移送套管パージ弁590とを備えるシリンジ流体システムの一実施形態の概略図を示す。シリンジ制御弁570は、充填ポンプ560をシリンジ200の充填ポート500、移送套管470、複数の試薬リザーバ610a〜d、廃棄物出口620及びベントポート630へ選択的に連結し、それらから分離させる。試薬リザーバ610a〜dは、シリンジ210及び/又は移送套管470等を洗浄するための洗浄液を備えることができる。図4bは、シリンジ流体システム480及び廃棄物流体システム360の別の実施形態の概略図を示す。移送套管470がシリンジ流体システム480に連結されないが、代わりに、廃棄物流体システム360に連結され、それによって、滴定試料が移送套管470から廃棄物流体システムを介して洗浄ステーション320へ、そして、洗浄ステーションの出口ポート350へ移送される。更に、図4a及び図4bは、滴定針210が試料セル50内に挿入された状態で滴定位置にあるピペットアセンブリ30を概略的に図示する。
【0039】
幾つかの実施形態では、先に述べられているように、シリンジ200が自動ピペット30に対して回転可能であり、攪拌モータ250によって回転駆動される。そして、充填ポート500の位置を決めるために、充填ポート連結ユニット490は、その連結部材550が充填ポート500と位置合わせされたとき、所定の角度位置でシリンジの回転を防止するように構成されたポート位置合せ機構640を備えることができる。図5aから図5cは、シリンジ200、又は、シリンジ200と共に回転するように構成された任意の別の部分が位置合せ部材650を備え、充填ポート連結ユニット490が、位置合せ部材650の回転起動を妨害するように作動できる回転停止ユニット660を備え、位置合せ部材650が回転停止ユニット660に当接したとき、連結部材550は充填ポート500と位置合わせされる、位置合せ機構640の例を概略的に図示する。位置合せ手順は、
停止ユニット660(図5a)を作動させる段階と、
停止ユニット660が位置合せ部材650(図5b)に当接することによって、更なる回転が防止されるまで、所定の方向にゆっくりとシリンジを回転させる段階と、
充填ポート500(図5c)に連結するように連結部材550を作動させる段階と
を備える。
【0040】
停止ユニット660及び連結部材550は、電動機構成体、ソレノイド等の形態の電磁駆動アクチュエータによって作動でき、又は、停止ユニット660及び連結部材550を移動させることができる液圧アクチュエータ又は空圧アクチュエータ等によって作動できる。シリンジ充填ポート500とシリンジ流体システム480との間の液密な連結を実現するために、連結部材550は所定の力で充填ポート500に押圧される。一実施形態では(図示せず)、連結部材550は、連結部材550を充填ポートと接触させるように移動させる電磁駆動アクチュエータによって作動され、連結部材550はアクチュエータに対してばねによる荷重が掛けられ、それによって、密封力はばね定数及びばねの圧縮によって決定される。
【0041】
例えば図2に開示されるように、ピペットアセンブリ30が洗浄ステーション320に配置されたとき、シリンジ空洞とシリンジ流体システム480との間を連結できるように、充填ポート連結ユニット490は洗浄ステーション320に配置できる。しかし、図3bに開示されるように、充填ポート連結ユニット490は、ピペット平行移動ユニット310によって支持されるピペットアセンブリ30と一体に配置でき、それによって、シリンジ充填ポート500とシリンジ流体システム480との間の流体の連結があらゆる動作位置で確立できる。
【0042】
一実施形態では、ITCシステム300は、ピペット30の滴定針210が洗浄ステーション320の洗浄空洞340内に配置されたとき、シリンジ充填ポート500を介してシリンジ200及び滴定針210を通して1つ以上の洗浄液を押すことによってシリンジ200及び滴定針210を洗浄するためにシリンジ充填ポート500を利用するように構成される。その後、システムが、シリンジ200及び滴定針210を洗浄した後、シリンジ充填ポート500を介してシリンジ200及び滴定針210を通して気体をパージすることによってシリンジ200、針210及び洗浄ステーション320を乾燥できる。
【0043】
多くの状況で、ピペットアセンブリ30のシリンジ200を、シリンジ200内で少しも封入空気を含まずに滴定剤で充填することは重要である。一実施形態では、これは、例えば洗浄ステーション320で、滴定針210が挿入されるシリンジ内へ滴定剤源から、シリンジ体積よりもより大きくなるように選択される所定の体積の滴定剤を引くことによって実現され、それによって、シリンジは過充填され、滴定剤は充填ポート500を通してシリンジから流出し始める。リニアアクティベータ220は、充填ポート500より下方にプランジャ230を移動させることによって、充填ポート500を閉じるように作動する。
【0044】
図6は、試料セル50内、及び、おそらくは基準セル40内にも液体を分注し、抜き取るためのセル套管400に連結されたセル流体システム410の例を概略的に図示する。先に述べられているように、セル套管400は、試料セル50、試料トレー450のウェル、1つ以上の大容積の試料リザーバ430a〜c及び試料準備ステーション420に位置決めされるように構成することができる。一実施形態では、セル流体システム410は、適宜、セル洗浄液等の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁680、690と組み合わせて、セル套管400を通して流体を選択的に分注し、抜き取るためのセルポンプ670を備える。別の実施形態では、セルポンプ670は、ITCシステム300内の1つ以上の流体システム360、380、410のための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁は、システム内の流れをそれぞれ制御できる。セルポンプ670は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような例えば試料セル50内で流体を分注し、抜き取ることができる任意の適切なポンプとすることができる。図6は、シリンジポンプのようなリザーバタイプのセルポンプ670と、廃棄物ポンプを套管400、4つのセル洗浄液リザーバ700a〜c、廃棄物出口710及びベントポート720へ選択的に連結し、それらから分離させるためのセル準備制御弁680と、套管400をセル準備弁680又は套管400を乾燥させるためのパージ気体源600に連結するためのパージ選択弁690を備えるセル流体システム410の一実施形態の概略図を示す。
【0045】
図7は、各平行移動アームのための動作位置が破線で示される、図2のITCシステムを概略的に図示する。
【0046】
図8aから図8Dは、ピペット及び試料セルの準備動作が図2のITCシステム内で同時に実施できる状態の例を概略的に図示する。
【0047】
図8aでは、ピペットアセンブリ30は、シリンジ洗浄サイクルのために洗浄ステーション320内で滴定針210と共に洗浄位置に配置される。洗浄サイクル中に、充填ポート連結ユニット490の連結部材550はシリンジ200の充填ポート500に連結され、シリンジ流体システム480はシリンジ200を通して1つ以上の洗浄液を引き、押し、適宜、続いてシリンジ200を乾燥させるためにシリンジを通して例えば窒素のような気体をパージするように構成される。シリンジを通して洗浄液を押すために、最初にシリンジ制御弁570が適切な試薬リザーバ610a〜dに充填ポンプを連結するために位置Aに配置され、充填ポンプ560がそのポンプリザーバ内へ洗浄液を引くように作動し、次にシリンジ制御弁570がシリンジ200の充填ポート500に充填ポンプ560を連結するために位置Bに配置され、充填ポンプ560がシリンジ200を通して洗浄液を押すように作動し、それによって、滴定針210から洗浄ステーション320内へ洗浄液が分注される。完全なシリンジ洗浄サイクルは、シリンジ200を通して2回以上、同じ又は異なる洗浄液(シリンジ弁位置C〜E)を押すことを含むことができ、更に、洗浄ステーション320からシリンジ200を通してポンプリザーバ内へ液体を引き、それによって、洗浄液はもう1回シリンジ200を通して押され、又は、シリンジ流体システム480の廃棄物出口620を通して廃棄されることを含む。充填ポンプ570がシリンジ200を通して2つ以上の異なる洗浄液を連続して押すように構成されているとき、洗浄液の間の汚染を避けるために、例えば水のようなすすぎ液でポンプリザーバを充填することによって、充填ポンプ570がすすがれる。洗浄ステーション320内へ分注される液体は、位置Aに廃棄物弁520を設定することによって、廃棄物ポンプ510によって出口ポート350を通してポンプリザーバ内に選択的に抜き取られ、その後、位置Bに廃棄物弁520を設定することによって、廃棄物出口530を通して廃棄される。
【0048】
図8aでは、シリンジ洗浄サイクルが洗浄ステーション320で実施される間、滴定移送ユニット370は、位置Fにシリンジ弁570を設定することによって、試料トレー450内のウェルから滴定試料を引き、充填ポンプ560を使用してウェルから滴定剤を引くように構成される。ウェルから滴定剤を引く動作は、例えばシリンジ200が乾燥気体でパージされるときに実施され、それによって、充填ポンプ560及びシリンジ弁570は洗浄サイクルに関与しないが、後で、充填ポンプ560及びシリンジ弁570は、汚染を避けるために完全にすすがれ、洗浄される。
【0049】
図8aでは、また、シリンジ洗浄サイクルが洗浄ステーション320で実施される間、セル準備ユニット330は、試料セル50から前の試料を除去し、試料セル50を洗浄するように構成される。ピペットアセンブリ30が試料セル50から除去されると、セル套管400は試料セル50内に挿入され、位置Aにセル準備制御弁680を配置することによって、セルポンプ670は、ポンプリザーバ内へ前の試料を抜き取るように稼働でき、その後、前の試料は、位置Bにセル準備制御弁680弁を設定することによって、廃棄物出口710を通して廃棄される。その後、セルの洗浄は、試料セル50内で1つ以上のセル洗浄液を分注し、抜き取り、適宜、続いて試料セル50を乾燥するためにセル套管を通して例えば窒素のような気体をパージすることによって実施される。試料セル内に洗浄液を分注するために、最初にセル準備制御弁680は、適切な洗浄液リザーバ700a〜dにセルポンプ670を連結するために、位置C、D、E又はFに配置され、セルポンプ670はそのポンプリザーバ内へ洗浄液を引くように作動し、次にセル準備制御弁680は、套管400にセルポンプ670を連結するために、位置Aに配置され、セルポンプ670はセル套管200を通して試料セル50内に洗浄液を分注するように作動する。その後、洗浄液(複数可)は、抜き取られ、セル準備制御弁680の廃棄物ポート710を通して廃棄される。開示される実施形態では、セル套管400は、セル洗浄手順中、試料セル内に留まり、それによって、セル套管400は、セル50と同時に洗浄され、試料セル50へ新たな試料液を移送する準備が整う。
【0050】
図8bでは、滴定移送ユニット370の滴定移送套管470が、洗浄ステーション320へアクセスして、そこで新しい滴定試料を分注し、次の段階で、セル準備ユニット300のセル套管400が、試料セル50にアクセスして、新たな試料で試料セルを充填できるようにするために、ピペットアセンブリ30は、試料セル50と洗浄ステーション320との間の中間位置に配置される。滴定移送ユニット370は、位置Fにシリンジ弁570を設定することによって、洗浄ステーション内へ套管470から滴定試料を分注し、充填ポンプ560を使用して滴定剤を分注するように構成される。
【0051】
図8bでは、セル準備ユニットは、所望の新たな試料を含む選択されるウェル内にセル套管400を挿入し、位置Aにセル準備制御弁680を設定し、セルポンプ670のポンプリザーバ内へウェルから新たな試料を引くことによって、試料トレー450内のウェルから新たな試料を引くように構成される。代替として、セル套管400は試料リザーバ430a〜cの内の1つに挿入できる。
【0052】
図8cでは、再び、ピペットアセンブリ30は、滴定剤でシリンジ200を充填するために、洗浄ステーション320で滴定針210と共に洗浄位置に配置される。図5a〜cを参照して詳細に述べられているように、シリンジ200の充填中に、充填ポート連結ユニット490の連結部材550は、シリンジ200の充填ポート500に連結され、シリンジ流体システム480は、少量が充填ポート500を通過するまで、シリンジ200内へ滴定針210を通して滴定剤を引き、それによって、プランジャ230が降下して、充填ポート500を閉じるように構成される。このやり方で、シリンジ内に滴定剤を引くことによって、滴定剤中の封入空気は効果的に防止される。図8bに開示される状態の間、滴定移送ユニット370は、基本的に不動であるが、セル準備ユニット330は、セル套管400と共に試料セル50内に位置決めされて、位置Aにセル準備制御弁680を配置し、ポンプリザーバ内に含まれる新たな試料を試料セル50内へ分注するようにセルポンプ670を稼働することによって、試料セル50を正確な量の新たな試料で充填する。
【0053】
図8aでは、ITC実験を実施するために、ピペットアセンブリ30は試料セル50内の滴定針210と共に滴定位置に配置される。ここで、次の滴定移送動作の前に、滴定套管を洗浄するために、滴定移送ユニット370は、滴定套管と共に洗浄ステーション320内に位置決めされる。洗浄サイクルは、基本的にシリンジ200と同じとすることができる。図8bに開示される状態の間、セル準備ユニット330は、基本的に不動であり、セル套管400が試料準備ステーション420に位置する状態で示される。
液体取扱い順序の例は次の段階を含む。
セル洗浄:
a セル套管400がセル40、50内へ挿入され、底部で停止する。
【0054】
b セルの内容物がセル套管400を通して、セルポンプ680内へ引かれ、外部へ廃棄物ポート710に向けて分注される。
【0055】
c 水が、洗浄液リザーバ700a〜dからセルポンプ680のポンプリザーバ内へ引かれ、シリンジをすすぐために外部へ廃棄物ポート710に向けて分注される。
【0056】
d 洗浄液が、洗浄液リザーバ700a〜dの内1つからセルポンプ680のポンプリザーバ内へ引かれ、セルを充填するために必要な正確な量が、セル40、50内へセル套管400を通して分注される。
【0057】
e 洗浄液が、セル40、50を洗浄するために、セルポンプ680のポンプリザーバからセル40、50へ前後に循環する。
【0058】
f 段階bで開始する段階が、セル40、50に関して所定の回数、繰り返される。
【0059】
g 段階bの廃棄物に関してセルが空になる。
【0060】
h セル套管400が、試料準備ステーション420へ移動し、例えば窒素のような気体をパージすることによって乾燥される。セル装着手順に脱気が含まれるとき、試料準備ステーション420は乾燥前に洗浄される。
ピペット洗浄:
a ピペット30が洗浄/充填ステーション320内に配置され、充填ポート500が連結される。
【0061】
b ピペットプランジャ230が充填ポート500の上方ですすがれて、それにより液体がピペット30のシリンジ200を通して流れる。
【0062】
c 第1の水、次いで、空気が、シリンジポンプ560から充填ポート500内へ、そして、シリンジ200及び滴定針210を通して、洗浄/充填ステーション320内へ分注される。同時にこの水が、洗浄/充填ステーション320の底部から廃棄物出口350を通して廃棄物ポンプ510内へ非常に過度に引かれる。
【0063】
d 廃棄物ポンプ510が停止し、滴定針210の外側の頂部まで洗浄/充填ステーション320を充填するように、正確な量の水がピペット30を通して分注される。シリンジ200及び滴定の全体を内側及び外側で洗浄するように、水が前後に循環する。
【0064】
e 段階cが繰り返される。
【0065】
f 段階dがメタノールを使って繰り返される。
【0066】
g 段階cが繰り返される。
【0067】
h システムを乾燥するために、窒素が充填ポート500を通してパージされる。
【0068】
i ピペット30が洗浄/充填ステーション320から除去されて、滴定試料を伴う滴定移送ユニット370がステーション320に装着される。
【0069】
j システムからメタノールを取り除くために、シリンジポンプ560が水ですすがれる。
セル装着:
a 滴定試料が試料トレー450又は試料リザーバ430a〜cからセル套管400内へ引かれる。次いでそれは、気泡を防止するためにゆっくりとセル内へ分注される。適宜、試料は、セル50内へ移送される前に試料準備ステーション420内へ分注されて、加熱及び混合(脱気)される。
ピペット装着:
a 滴定剤が試料トレー450から滴定移送套管470内へ引かれ、洗浄/充填ステーション320内へ分注される。
【0070】
b ピペット30が洗浄/充填ステーション320内に配置され、充填ポート500が連結される。
【0071】
c プランジャ230が充填ポート500の上方ですすがれ、それにより液体がピペットを通して流れる。
【0072】
d 正確な量の滴定剤が、シリンジポンプ560によって滴定針210を通して上方へ引かれ、少量の滴定剤が充填ポート500に存在するように、シリンジ200を過充填する。
【0073】
e プランジャ230が充填ポート500の下方に降下し、それにより滴定針210及びピペットシリンジ200が完全に充填された状態になる。
滴定移送洗浄:
a 滴定移送套管470が洗浄/充填ステーション320内に配置され、水ですすがれ、次いで、メタノールですすがれ、ピペットのシリンジ200が洗浄及び乾燥されるのとまったく同じやり方で乾燥される。
【0074】
任意の1つの実施形態に関して述べられている任意の機能は、単独で、又は、述べられている機能と組み合わせて使用でき、任意の他の実施形態の1つ以上の機能と組み合わせて、又は、任意の他の実施形態を任意に組み合わせて使用できることを理解されたい。更に、上記に述べられていない均等物及び修正形態も、添付の請求項に規定される発明の範囲から逸脱することなく使用できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してマイクロ熱量計に関し、より具体的には、マイクロ熱量計の性能を改善する機能(feature)に関し、特に自動等温滴定マイクロ熱量計システム(ITCシステム)の性能を改善する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ熱量計は、生化学、薬理学、細胞生物学その他の分野で広く使用される。熱量計は、生体高分子の熱力学的特性の変化を測定するための直接的な方法を提供する。マイクロ熱量計は、典型的には、2つのセル計器であり、試料セル内の水性緩衝液中の試験物質の希釈溶液の特性が、基準セル内の等量の水性緩衝液と連続的に比較される。温度又は熱流など、2つのセルの特性間の測定差は、試料セル内における試験物質の存在に起因する。
【0003】
マイクロ熱量計の1つのタイプが、等温滴定熱量計である。等温滴定熱量計(ITC)は、示差デバイスであるが、一定温度及び一定圧力で作動し、一方、試料セル内の液体が連続的に攪拌される。滴定熱量計の最も一般的な用途は、分子間相互作用の熱力学的特徴付けにおけるものである。この用途では、試験物質(例えばタンパク質)の希釈溶液が、試料セル内に配置され、様々な時点で、試験物質に結合するリガンドを含有する少量の第2の希釈溶液が、試料セル内に注入される。この計器は、試験物質に対する新たに導入されたリガンドの結合によって上昇した又は吸収された熱を測定する。複数注入実験の結果より、ギブスのエネルギー、結合定数、エンタルピー変化、エントロピー変化、及び結合の化学量論比などの特性を決定し、試験物質とリガンドとの間で特定の対を形成することができる。
【0004】
現在利用されているITCは確実な結合データ結果を提供するが、薬剤開発の初期段階におけるそれらの利用の普及は、複数の要因、すなわち、結合判定を実施するために必要とされるタンパクの量が比較的多量であること(例えば、約0.1mg〜約1.0mgのタンパク質)、測定の実施に必要とされる時間によって限定されるスループット、及び、従来のITCを利用する複雑さによって、制限されてきた。
【0005】
今日、従来技術のITCを利用して結合データを収集するには、実施者による膨大な準備及び技量が必要となる。例えば、従来技術のITCを使用すると、基準セル及び試料セルは、最初に、対応するセルステムを介して基準物質及び試料物質でそれぞれ充填される。次に、ITCの滴定ピペットが滴定剤で充填されるが、これは細心の注意を要する操作である。というのは、ピペット内のシリンジが正確に充填され、その中に空気が封入されないことが非常に重要であるからである。次いで、滴定ピペットの針がセルステムを介して試料セル内に手動で配置され、ITC実験が開始する。ITC測定手順は、実験を実施するためのプログラムを実行するコンピュータ等の形態にある制御ユニットによって制御される。実験用に使用されるプログラムに合わせて、攪拌モータが、試薬を適切に混合することができる指定速度でシリンジ、針及びパドルを回転させる。実験用に使用されるプログラムに合わせて(例えばある一定の温度及び/又は平衡状態が達成されたとき)、シリンジ内のプランジャが始動され、試料溶液中に滴定剤を注入する。この注入は、プログラム設定に応じて、離散的(段階的)又は連続的に実施できる。熱量計は、試薬の相互作用に関連する時間に対する発熱/熱吸収を連続的に測定し記録する。この結果の解析が、確立されたアルゴリズムにより行なわれる。
【0006】
上述の従来技術の手順を読むことによって理解されるように、従来技術のITCを利用すると、従来技術のITCで実施される結合測定の精度は、実施者の技能及び経験に大きく依存し、相当な準備時間を伴う。
【0007】
最近、市販のマイクロ熱量計と、自動で試料を取り扱うように構成されたリニアロボットシステム及び流体システムとを基にした1つ以上の自動ITCシステム、MicroCal AutoITCが市場に出ている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Cooper,Allan & Johnson Christopher,M (1994) Isothermal Titration Microcalorimetry (online) From the internet: [retrievedon 2010−01−15] <URL−http://www.chem.gla.ac.uk/staff/alanc/MMB−ITC−1994.pdf;Fig 3,caption;p 141 para 1;p 144#6;p 145 #9,#10,#12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の1つ以上の欠点を解消する、新規の自動等温滴定マイクロ熱量計システム(ITCシステム)を提供することである。これは、独立請求項に規定されるITCシステムにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本ITCシステムに関する1つの利点は、それぞれの滴定試験が要する時間が従来技術と比較して短いことである。これは、例えば、低減されたセル体積、並びに、ピペットアセンブリ及び試料セルの洗浄及び再充填が基本的に平行して実施されることによる。したがって、システムのスループットは、従来技術のシステムと比較して相当高く、それにより、スクリーニング式実験を実施するために大量の試料を評価することが可能となる。
【0011】
別の1つの利点は、ITCシステムが無人で多くの滴定試験を実施するように構成することができることである。
【0012】
本発明の実施形態は、従属請求項に規定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術の自動ピペットアセンブリを備える手動ITCシステムの断面による例図である。
【図2】自動ITCシステムの1つの実施形態の概略図である。
【図3a】自動ITCシステムの別の実施形態の概略図である。
【図3b】自動ITCシステムの別の実施形態の概略図である。
【図4a】自動ITCシステムのためのシリンジ流体システムの2つの実施形態の概略図である。
【図4b】自動ITCシステムのためのシリンジ流体システムの2つの実施形態の概略図である。
【図5a】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図5b】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図5c】一実施形態によるシリンジ充填ポート連結ユニットの機能の概略図である。
【図6】一実施形態によるセル準備流体システムの概略図である。
【図7】図2のITCシステムのための異なる動作状態の概略図である。
【図8a】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8b】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8c】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【図8d】より詳細な図2のITCシステムのための異なる動作状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
参照により組み込まれる国際特許出願第PCT/US2008/081961号では、図1に開示されるタイプの手動ITCシステム10が提示される。一実施形態では、手動ITCシステム10は本自動ITCシステムにおいてマイクロ熱量計として利用されるが、別の実施形態では、マイクロ熱量計は、以下に更に詳細に説明されるように別のタイプのものである。開示される手動ITCシステム10では、感度を低下させることなく、著しく速い反応時間で、従来技術のITCと比較して約7分の1にセルコンパートメント体積が低減される。このようなITCシステムにより、約10分の1の少量のタンパク試料によって、しかも1時間当たりわずか合計約2〜約4回の滴定によって、実験を実施することが可能となる。ITC実験の実施に関連するコストの削減に加えて、比較的小さなセル体積によっても、ITC用途の数が増大する。例えば、ITCにより測定できる結合親和力の範囲が、「c値」と呼ばれるパラメータにより示される。「c値」は、結合親和力(Ka)及び高分子の総濃度(Mtotal)の積(c=[Mtotal]Ka)である。正確な親和力の判定のために、c値は1から1000の間でなければならない。10分の1にセルの体積が縮小することにより、同量のタンパクが使用される場合には同様にc値が上昇し、その結果、弱い結合物を測定することが可能となる。この能力は、特に完全に自動化された計器との組合せで、結合親和力が弱い創薬の初期段階において、特に重要になる。
【0015】
図1は、本発明により自動化できる手動ITCシステム10の一実施形態を概略的に図示する。ITCシステム10は、マイクロ熱量計20と、自動ピペットアセンブリ30とを備える。マイクロ熱量計20は、基準セル40と、試料セル50とを備え、これらのセルは、熱容量及び体積が基本的に同一になるように設計される。セル40及び50は、金、白金、タンタル、又は、ハステロイ等の適切な化学的不活性の熱伝導性材料から構成される。セル40及び50は、基本的に任意の適切な形状とすることができるが、同一形状であり、完全対称構成に配置することが可能であり、滴定剤の試料との効率的な混合を実現できることが望ましい。開示される実施形態では、セル40及び50の断面は矩形であり、横軸水平方向への断面は円形であり、結果として、円形対向表面を有するコイン形状セルとなる。
【0016】
外部からの熱の影響を最小限に抑えるために、基準セル40及び試料セル50は共に、第1の熱シールド60により封鎖され、更に第1の熱シールド60は、第2の熱シールド70に封鎖される。熱シールド60、70は、銀、アルミニウム、又は、銅等のような任意の適切な熱伝導性材料から構成することができる。更に、シールド60、70は、1つ以上の熱的に相互連結されたサブシールド(図示せず)から構成することができ、熱量計セル40、50に対して、更に一層安定的な温度条件を提供する。
【0017】
シールド60、70の温度を制御するために、熱制御手段を、シールド260、270の温度を制御するように構成することができる。ITCシステムでは、熱制御手段は、滴定実験が開始される前に、熱量計の、すなわち熱シールド60、70の「等温」温度を設定するために主に使用される。しかし、以下でより詳細に開示されるように、熱制御手段は、熱量計の断熱挙動を改善するためにも使用できる。一実施形態では、熱制御手段は、ペルチエ効果等に基づいて熱電ポンプデバイスなどの1つ以上の熱ポンプユニットから構成される。他のタイプの熱制御手段には、温度自動制御式液体槽、機械式熱ポンプ、化学式加熱又は冷却システム等が含まれる。
【0018】
開示される実施形態では、第1の熱ポンプユニット80が、第1の熱シールド60と第2の熱シールド70との間で熱エネルギーを伝達するように構成され、第2の熱ポンプユニット90が、室温との熱的接触状態で、第2の熱シールド70と熱シンク100との間で熱エネルギーを伝達するように構成される。所望の温度条件が実現されるように、温度制御装置110は第1の熱ポンプユニット80及び第2の熱ポンプユニット90を制御するように構成される。温度制御装置110は、関連する温度センサ120及び130によってそれぞれ第1の熱シールド60及び第2の熱シールドの温度を監視する。更に、温度制御装置110はセル加熱構成体145によってセル温度を制御するように構成される。温度制御装置110は、コンピュータ150等上で実行される熱量計ユーザインターフェースを介して制御される。ITC実験中に試料セル50と基準セル40との間の温度差を感知するための熱量計センサ140は、例えば前置増幅器160を介してコンピュータ150に接続できる。
【0019】
基準セルステム170及び試料セルステム180は、基準液、試料液、滴定流体を供給し、セルを洗浄する等のために、それぞれ基準セル40及び試料セル50に対するアクセスをもたらす。開示される実施形態では、セルステム170及び180は共に、熱シールド及び熱シンクを共に通って実質的に垂直方向に延在して、セル40及び50と直接連通し、セルステム170及び180はそれぞれ、第1の熱シールド60の空洞部内でそれらの各セル40及び50を支持する。
【0020】
自動ピペットアセンブリ30は、ピペットハウジング190と、滴定針210が滴定剤を供給するために試料セル50中に挿入されるように構成されたシリンジ200と、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220とを備える。滴定針210は、ハウジング190に対して回転可能であり、滴定剤と試料液との効率的な混合を実現するために試料セル50内の試料液を攪拌するように構成された攪拌パドル240を備える。更に、自動ピペットアセンブリ30は、滴定針210を回転駆動するための攪拌モータ250を備える。
【0021】
図1に開示される実施形態では、攪拌モータ250は、シリンジ200及び滴定針210と同心に配置された中空ロータを伴う直接駆動モータである。シリンジ200は、攪拌モータ400による回転のために、シリンジ200の上方端部で支持され、軸受260によってシリンジ200の下方端部で支持される。
【0022】
代替の一実施形態では、図面には示されないが、攪拌モータ250が、駆動ベルト構成体又は駆動輪構成体等の回転伝達構成体によって、滴定針を回転駆動させる。更には、攪拌モータはピペットアセンブリ30から離して配置でき、磁気結合部等のような適切な伝達構成体によって滴定針を回転駆動するように構成される。
【0023】
自動ピペットアセンブリ30は、例えば試料の攪拌及び滴定のためのITCシステムの制御装置によって制御される。
【0024】
開示される実施形態では、リニアアクティベータ220は、中空ロータの穴を通してシリンジ200内に同軸方向に延在するねじプランジャ230を駆動するように構成されたステッピングモータ270を備え、シリンジ200は、正確な量の滴定液をシリンジ200から押し出すことが可能となるように、シリンジ200の内方壁部に対して密封するピペット先端部280に回転可能に装着される。リニアアクティベータ220は、十分な精度で制御された線形移動を実施できるあらゆる別のタイプとすることができる。この設計により、シリンジは、ピペットアセンブリ30の本体190とは無関係に回転されることが可能となり、同時に、リニアアクティベータ220は、ねじプランジャ230を駆動することが可能となる。
【0025】
図2から8dに概略的に開示される一実施形態によれば、
試料セル50及び基準セル40を有し、試料セル50には試料セルステム180を介してアクセス可能であり、基準セル40には基準セルステム170を介してアクセス可能である、マイクロ熱量計20と、
滴定剤を供給するために試料セル50内へ挿入されるように構成された滴定針210を有するシリンジ200を備え、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220を備える自動ピペットアセンブリ30と、
ピペットアセンブリ30を支持し、滴定動作位置、洗浄動作位置及び充填動作位置にピペットを配置するように構成されたピペット平行移動ユニット310と、
滴定針210のための洗浄ステーション320と、
ピペット30が滴定位置以外の位置に配置されたとき、試料セル50内で試料液を交換するための動作を実施するように構成されたセル準備ユニット330と
を備える自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム300が提供される。
【0026】
マイクロ熱量計20は、図1に概略的に図示されるマイクロ熱量計20のような十分に少量の試料を使用してITC熱量計測定を実施できるあらゆるタイプとすることができる。図2から図8dに具体的に示されないが、上記(図1)に開示されるように、マイクロ熱量計は試料セル50及び基準セル40を一般に備え、試料セル50には試料セルステム180を介してアクセス可能であり、基準セル40には基準セルステム170(図2に円形開口として示される)を介してアクセス可能である。自動ピペットアセンブリ30は、上記に開示されるタイプとすることができるが、滴定剤を供給するために、試料セル50内へ挿入されるように構成された滴定針210を有するシリンジ200を備えた任意の適切な設計のものとすることができる。上記のように、ピペットアセンブリ30は、シリンジ200内のプランジャ230を駆動するためのリニアアクティベータ220を更に備えることができる。しかし、シリンジ200は、基本的に、確定した量の滴定剤を提供できるあらゆるタイプとすることができる。滴定針210は回転可能であり、滴定中に試料セル50内で液体を攪拌するためのパドル240を備えることができる。攪拌は、上記に説明されるように、又は、任意の別の適切なやり方で行うことができる。
【0027】
ピペット平行移動ユニット310は、適切な滴定位置、洗浄位置及び充填位置内にピペットを配置できるあらゆるタイプとすることができる。図2及び図3は、2つの異なる平行移動ユニットのタイプを概略的に図示し、図2は回転平行移動ユニット310を示し、図3は線形平行移動ユニット310bを示す。試料セル50内の位置、及び/又は、別の位置に滴定針210を配置(挿入)するために、ピペット平行移動ユニット310は、マイクロ熱量計20に対して垂直方向にピペット30を移動できる。ピペット平行移動ユニット310は、機械的にあらかじめ定めされた位置の間だけを移動できるように、その移動の自由を機械的に制限されたものであっても、ソフトウェアのパラメータによって、上記あらかじめ定められた位置の間に移動が制限されるロボットタイプの一般的な平行移動ユニットであっても、それらの組み合せであってもよい。見やすいように、垂直移動のためのそのような手段は、図2から図8dに含まれていない。
【0028】
洗浄ステーション320は、ピペットアセンブリ30の滴定針210を洗浄位置に配置できる適切な位置に配置される。洗浄ステーション320は、ピペットアセンブリ30が洗浄位置に配置されたとき、滴定針210の、少なくとも滴定中に試料に浸漬される部分を洗浄できる任意の適切なタイプとすることができる。一実施形態では、洗浄ステーション320は、滴定針を受容するように構成された洗浄空洞340を備える。洗浄ステーション320は、ITC実験及び洗浄サイクルにおいて使用される試薬に対して不活性な任意の適切な材料から作られ、一実施形態では、洗浄ステーション320は、廃棄物除去ユニット360に連結された洗浄空洞の底端部に廃棄物出口ポート350を備える。廃棄物出口ポート350は、以下により詳細に開示されるように、ピペット洗浄サイクル中に廃液と同様に洗浄液を除去するために使用され、洗浄空洞を完全に排水できるようにするために、好ましくは、洗浄空洞340の底端部に配置される。図面に開示されない一実施形態では、ピペット平行移動ユニット310は、垂直方向に移動が制限され、代わりに、洗浄ステーション320が、針240の洗浄のために、針240と位置合わせされる位置に移動するように構成される。
【0029】
図2から図8dでは、セル準備ユニット330がピペット平行移動ユニット310と同じタイプの平行移動ユニットとして示されるが、試料セル内の洗浄、及び、試料液の交換に関連する2つ以上の位置に位置決めされるように構成される。試料セル50内の試料液を交換するためのセル準備ユニット330を備えることによって、ピペット30が洗浄され、新しい滴定剤で充填されるのと同時に、試料セル50が洗浄され、新しい試料液で充填できるので、合計のサイクル時間が低減され、したがって、ITCシステム300のスループットが増大する。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態による自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム300を概略的に開示する。上記に述べたように、この実施形態における平行移動ユニット310、330、370は、全てロータリタイプであり、全ての動作位置は回転平行移動ユニットの円軌道に沿って配置される。図示されないが、別の一実施形態では、作業領域を拡張させ、柔軟性を高めるために、1つ以上の回転平行移動ユニットが追加的に線形平行移動手段を備える。
【0031】
図2では、ピペット平行移動ユニット310は、ピペットアーム380を備え、それは軸Aの周りで回転するように回転可能に支持され、他方の端部でピペットアセンブリ30を支持する。更に、ピペットアーム380は、軸Aに沿って垂直に移動できるので、又は、1つの平面内の回転に制限されて、ピペット30がアーム380に対して垂直に移動できるので、ピペットを垂直に移動するように構成される。ピペットアーム380は、
滴定針が試料セル50に挿入された状態での滴定、
滴定針が、組み合わされた洗浄/充填ステーション320に挿入された状態での洗浄及び充填
のためにピペット30を定位置に配置するように構成される。
【0032】
組み合わされた洗浄/充填ステーション320は、洗浄空洞340の底端部に出口ポート350を伴う上記に述べされた洗浄ステーションのタイプとすることができる。出口ポート350は、以下により詳細に述べられる廃棄物流体システム360に連結される。
【0033】
次に、セル準備ユニット330は、軸Bの周りで回転するように回転可能に支持された、対応するセルアーム390から構成され、試料セル50内、及び、おそらくは基準セル40内にも液体を分注し、それらの中の液体を抜き取るための、セル流体システム410に連結されたセル套管400を支持する。セル流体システム410は以下により詳細に開示される。セルアーム390は、マイクロ熱量計のセル40、50、1つ以上の試料源、及び、試料準備ステーション420等のような複数の位置にセル套管400を移動させるように構成される。開示される実施形態では、4つの異なる試料源位置が含まれ、そのうちの3つの位置は、例えば標準的試料液のためのバイアルタイプの大容積の試料リザーバ430a〜430cに相当し、第4の位置は例えば特定又は高感度の試料液のための自動サンプリング位置440に相当し、セル套管400は試料トレー450(例えばマイクロプレート等)内の特定のウェルから試料液を引くように構成される。開示される実施形態では、自動サンプリング位置440は固定位置であり、そこにセル套管400がセルアーム390によって移動され、トレーアクチュエータ(図示せず)によって自動サンプリング位置440に選択されたウェルを位置決めするように移動できる試料トレー450の特定のウェル内に降下できる。トレーアクチュエータは、試料トレー450の特定の試料ウェルを所望の位置に選択的に位置決めできるX−Yリニアアクチュエータ又は回転トレーを伴うロータリアクチュエータのような任意の適切なタイプとすることができる。試料準備ステーション430は、試料がセル50又は40内に移送される前に、例えば試料を実験温度に近い温度にしたり、混合を通して脱気したりすることによって試料を準備するために使用できる。
【0034】
更に、図2に開示されるITCシステム300は、例えば試料トレー450のような主滴定剤源から洗浄/充填ステーション320へ滴定剤を移送するように構成された滴定移送ユニット370を備える。開示される実施形態では、移送ユニット370は、例えばセル移送アーム380に相当する、滴定移送アーム460を備え、それは、軸Cの周りで回転するように回転可能に支持され、シリンジ流体システム480に連結された移送套管470を支持する。滴定移送アーム460は、試料トレー450内の滴定ウェルから滴定試料を引くための自動サンプリング位置440、及び、洗浄/充填ステーション320内で滴定試料を分注するための位置に滴定套管470を位置決めするように構成される。自動サンプリング位置440及び試料トレー450は、上記に述べたセル套管自動サンプリング位置440に対して、別の位置及びトレーとすることができるが、図2に開示されるように、セル套管470及び移送套管400は、同じ自動サンプリング位置440(同時ではない)に位置決めでき、トレーアクチュエータは、自動サンプリング位置440に各々の套管のための適切なウェルを位置決めするように制御できる。更に、シリンジ流体システム480は、ピペットアセンブリ内のシリンジ200の上方部分で充填ポート500に選択的に連結するように構成された充填ポート連結ユニット490に連結される。充填ポート連結ユニット490は、充填ポート500に連結されたとき、シリンジ200を通して液体又は気体を選択的に引くか、又は、押すために、シリンジ空洞とシリンジ流体システム480との間に流体接触をもたらす。
【0035】
先に述べられているように、図3は、図2のシステムに対応するが、ピペット30、セル套管400及び移送套管470のための平行移動ユニット310b、330b、370bはリニアタイプであり、それに従って、関連する動作位置が配置されるITCシステムを示す。更には、セルアーム390b及び移送アーム460bは、(上記に述べられているような垂直方向を考慮しない)二次元内を移動可能であり、それらの1つ又は両方は、固定試料トレー450内の選択されるウェル内に関連する套管を位置決めするように制御される。図3bは、図3aに類似するリニアITCシステムの実施形態を示しており、滴定移送ユニットが除外され、ピペット平行移動ユニット310cが、試料トレー450内の選択されるウェルから直接充填するための位置にピペット30を配置するように構成されている。更には、ピペット30が洗浄ステーション320に配置されたとき、及び、試料トレー450のウェル内の充填位置に配置されたとき、充填ポート500に連結するために、充填ポート連結ユニット490は、ピペットアーム380c上でピペット30の近くに配置される。
【0036】
上記に述べられているように、廃棄物流体システム360は、洗浄ステーションから流体を抜き取るために、洗浄ステーション320の出口ポート350に連結される。一実施形態では、適宜、廃棄物流体の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁520と組み合わせて、廃棄物流体システム360が、洗浄ステーション320から流体を選択的に抜き取るための廃棄物ポンプ510を備える。別の実施形態では、廃棄物ポンプはITCシステム300内の1つ以上の流体システムのための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁はシステム内の流れをそれぞれ制御できる。廃棄物ポンプ510は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような洗浄ステーション内の流体を取り除くことができる任意の適切なタイプのポンプとすることができる。図4aは、シリンジポンプのようなリザーバタイプの廃棄物ポンプ510と、廃棄物ポンプを出口ポート350、廃棄物出口530及びベントポート540へ選択的に連結し、それらから分離させるための廃棄物制御弁520とを備える廃棄物流体システム360の一実施形態の概略図を示す。
【0037】
上記に述べられ、図4aから図5cにより詳細に示されるように、ピペットのシリンジ200はその上方部分に充填ポート500を備えることができ、プランジャ230が充填ポート500の上方に位置決めされたとき、シリンジ空洞との間に流体接触をもたらす。更に、ITCシステム300は、充填ポート500に選択的に連結するように構成された、結合する充填ポート連結ユニット490を備えることができ、それによって、以下により詳細に開示されるように、シリンジ空洞と、部分洗浄動作及び充填動作としてシリンジを通して液体又は気体を選択的に引く、又は、押すように構成されたシリンジ流体システム480との間に流体接触をもたらす。概略的に開示されるように、充填ポート500は、シリンジ200の壁を通る孔とすることができ、孔は、真直又は円錐のような任意の適切な形状とすることができる。連結ユニット490は、信頼性があり、液密な連結を実現するために、結合する形状であり、かつ/又は、弾性材料から作られる連結部材550を備える。更に、シリンジ流体システム480は、移送套管470に連結でき、滴定移送動作中と同様に移送套管470の洗浄動作中に吸引及び分注を制御するように構成される。
【0038】
一実施形態では、シリンジ流体システム480は、適宜、流体の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁570、580、590、及びパージ気体源600と組み合わせて、選択的に流体システム内に液体を引く、又は、流体システム内へ押すための充填ポンプ560を備える。別の実施形態では、充填ポンプはITCシステム300内の1つ以上の流体システムのための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁はシステム内でそれぞれ流体を制御できる。廃棄物ポンプ560は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような比較的高い精度でシリンジ流体システム内で液体を引くか、又は、押すことができる任意の適切なポンプとすることができる。図4aは、シリンジポンプのようなリザーバタイプの充填ポンプ560と、シリンジ制御弁570と、シリンジパージ弁580と、移送套管パージ弁590とを備えるシリンジ流体システムの一実施形態の概略図を示す。シリンジ制御弁570は、充填ポンプ560をシリンジ200の充填ポート500、移送套管470、複数の試薬リザーバ610a〜d、廃棄物出口620及びベントポート630へ選択的に連結し、それらから分離させる。試薬リザーバ610a〜dは、シリンジ210及び/又は移送套管470等を洗浄するための洗浄液を備えることができる。図4bは、シリンジ流体システム480及び廃棄物流体システム360の別の実施形態の概略図を示す。移送套管470がシリンジ流体システム480に連結されないが、代わりに、廃棄物流体システム360に連結され、それによって、滴定試料が移送套管470から廃棄物流体システムを介して洗浄ステーション320へ、そして、洗浄ステーションの出口ポート350へ移送される。更に、図4a及び図4bは、滴定針210が試料セル50内に挿入された状態で滴定位置にあるピペットアセンブリ30を概略的に図示する。
【0039】
幾つかの実施形態では、先に述べられているように、シリンジ200が自動ピペット30に対して回転可能であり、攪拌モータ250によって回転駆動される。そして、充填ポート500の位置を決めるために、充填ポート連結ユニット490は、その連結部材550が充填ポート500と位置合わせされたとき、所定の角度位置でシリンジの回転を防止するように構成されたポート位置合せ機構640を備えることができる。図5aから図5cは、シリンジ200、又は、シリンジ200と共に回転するように構成された任意の別の部分が位置合せ部材650を備え、充填ポート連結ユニット490が、位置合せ部材650の回転起動を妨害するように作動できる回転停止ユニット660を備え、位置合せ部材650が回転停止ユニット660に当接したとき、連結部材550は充填ポート500と位置合わせされる、位置合せ機構640の例を概略的に図示する。位置合せ手順は、
停止ユニット660(図5a)を作動させる段階と、
停止ユニット660が位置合せ部材650(図5b)に当接することによって、更なる回転が防止されるまで、所定の方向にゆっくりとシリンジを回転させる段階と、
充填ポート500(図5c)に連結するように連結部材550を作動させる段階と
を備える。
【0040】
停止ユニット660及び連結部材550は、電動機構成体、ソレノイド等の形態の電磁駆動アクチュエータによって作動でき、又は、停止ユニット660及び連結部材550を移動させることができる液圧アクチュエータ又は空圧アクチュエータ等によって作動できる。シリンジ充填ポート500とシリンジ流体システム480との間の液密な連結を実現するために、連結部材550は所定の力で充填ポート500に押圧される。一実施形態では(図示せず)、連結部材550は、連結部材550を充填ポートと接触させるように移動させる電磁駆動アクチュエータによって作動され、連結部材550はアクチュエータに対してばねによる荷重が掛けられ、それによって、密封力はばね定数及びばねの圧縮によって決定される。
【0041】
例えば図2に開示されるように、ピペットアセンブリ30が洗浄ステーション320に配置されたとき、シリンジ空洞とシリンジ流体システム480との間を連結できるように、充填ポート連結ユニット490は洗浄ステーション320に配置できる。しかし、図3bに開示されるように、充填ポート連結ユニット490は、ピペット平行移動ユニット310によって支持されるピペットアセンブリ30と一体に配置でき、それによって、シリンジ充填ポート500とシリンジ流体システム480との間の流体の連結があらゆる動作位置で確立できる。
【0042】
一実施形態では、ITCシステム300は、ピペット30の滴定針210が洗浄ステーション320の洗浄空洞340内に配置されたとき、シリンジ充填ポート500を介してシリンジ200及び滴定針210を通して1つ以上の洗浄液を押すことによってシリンジ200及び滴定針210を洗浄するためにシリンジ充填ポート500を利用するように構成される。その後、システムが、シリンジ200及び滴定針210を洗浄した後、シリンジ充填ポート500を介してシリンジ200及び滴定針210を通して気体をパージすることによってシリンジ200、針210及び洗浄ステーション320を乾燥できる。
【0043】
多くの状況で、ピペットアセンブリ30のシリンジ200を、シリンジ200内で少しも封入空気を含まずに滴定剤で充填することは重要である。一実施形態では、これは、例えば洗浄ステーション320で、滴定針210が挿入されるシリンジ内へ滴定剤源から、シリンジ体積よりもより大きくなるように選択される所定の体積の滴定剤を引くことによって実現され、それによって、シリンジは過充填され、滴定剤は充填ポート500を通してシリンジから流出し始める。リニアアクティベータ220は、充填ポート500より下方にプランジャ230を移動させることによって、充填ポート500を閉じるように作動する。
【0044】
図6は、試料セル50内、及び、おそらくは基準セル40内にも液体を分注し、抜き取るためのセル套管400に連結されたセル流体システム410の例を概略的に図示する。先に述べられているように、セル套管400は、試料セル50、試料トレー450のウェル、1つ以上の大容積の試料リザーバ430a〜c及び試料準備ステーション420に位置決めされるように構成することができる。一実施形態では、セル流体システム410は、適宜、セル洗浄液等の流れを方向付けるための1つ以上の制御可能な弁680、690と組み合わせて、セル套管400を通して流体を選択的に分注し、抜き取るためのセルポンプ670を備える。別の実施形態では、セルポンプ670は、ITCシステム300内の1つ以上の流体システム360、380、410のための共通ポンプとすることができ、1つ以上の弁は、システム内の流れをそれぞれ制御できる。セルポンプ670は、蠕動ポンプ、シリンジポンプ等のような例えば試料セル50内で流体を分注し、抜き取ることができる任意の適切なポンプとすることができる。図6は、シリンジポンプのようなリザーバタイプのセルポンプ670と、廃棄物ポンプを套管400、4つのセル洗浄液リザーバ700a〜c、廃棄物出口710及びベントポート720へ選択的に連結し、それらから分離させるためのセル準備制御弁680と、套管400をセル準備弁680又は套管400を乾燥させるためのパージ気体源600に連結するためのパージ選択弁690を備えるセル流体システム410の一実施形態の概略図を示す。
【0045】
図7は、各平行移動アームのための動作位置が破線で示される、図2のITCシステムを概略的に図示する。
【0046】
図8aから図8Dは、ピペット及び試料セルの準備動作が図2のITCシステム内で同時に実施できる状態の例を概略的に図示する。
【0047】
図8aでは、ピペットアセンブリ30は、シリンジ洗浄サイクルのために洗浄ステーション320内で滴定針210と共に洗浄位置に配置される。洗浄サイクル中に、充填ポート連結ユニット490の連結部材550はシリンジ200の充填ポート500に連結され、シリンジ流体システム480はシリンジ200を通して1つ以上の洗浄液を引き、押し、適宜、続いてシリンジ200を乾燥させるためにシリンジを通して例えば窒素のような気体をパージするように構成される。シリンジを通して洗浄液を押すために、最初にシリンジ制御弁570が適切な試薬リザーバ610a〜dに充填ポンプを連結するために位置Aに配置され、充填ポンプ560がそのポンプリザーバ内へ洗浄液を引くように作動し、次にシリンジ制御弁570がシリンジ200の充填ポート500に充填ポンプ560を連結するために位置Bに配置され、充填ポンプ560がシリンジ200を通して洗浄液を押すように作動し、それによって、滴定針210から洗浄ステーション320内へ洗浄液が分注される。完全なシリンジ洗浄サイクルは、シリンジ200を通して2回以上、同じ又は異なる洗浄液(シリンジ弁位置C〜E)を押すことを含むことができ、更に、洗浄ステーション320からシリンジ200を通してポンプリザーバ内へ液体を引き、それによって、洗浄液はもう1回シリンジ200を通して押され、又は、シリンジ流体システム480の廃棄物出口620を通して廃棄されることを含む。充填ポンプ570がシリンジ200を通して2つ以上の異なる洗浄液を連続して押すように構成されているとき、洗浄液の間の汚染を避けるために、例えば水のようなすすぎ液でポンプリザーバを充填することによって、充填ポンプ570がすすがれる。洗浄ステーション320内へ分注される液体は、位置Aに廃棄物弁520を設定することによって、廃棄物ポンプ510によって出口ポート350を通してポンプリザーバ内に選択的に抜き取られ、その後、位置Bに廃棄物弁520を設定することによって、廃棄物出口530を通して廃棄される。
【0048】
図8aでは、シリンジ洗浄サイクルが洗浄ステーション320で実施される間、滴定移送ユニット370は、位置Fにシリンジ弁570を設定することによって、試料トレー450内のウェルから滴定試料を引き、充填ポンプ560を使用してウェルから滴定剤を引くように構成される。ウェルから滴定剤を引く動作は、例えばシリンジ200が乾燥気体でパージされるときに実施され、それによって、充填ポンプ560及びシリンジ弁570は洗浄サイクルに関与しないが、後で、充填ポンプ560及びシリンジ弁570は、汚染を避けるために完全にすすがれ、洗浄される。
【0049】
図8aでは、また、シリンジ洗浄サイクルが洗浄ステーション320で実施される間、セル準備ユニット330は、試料セル50から前の試料を除去し、試料セル50を洗浄するように構成される。ピペットアセンブリ30が試料セル50から除去されると、セル套管400は試料セル50内に挿入され、位置Aにセル準備制御弁680を配置することによって、セルポンプ670は、ポンプリザーバ内へ前の試料を抜き取るように稼働でき、その後、前の試料は、位置Bにセル準備制御弁680弁を設定することによって、廃棄物出口710を通して廃棄される。その後、セルの洗浄は、試料セル50内で1つ以上のセル洗浄液を分注し、抜き取り、適宜、続いて試料セル50を乾燥するためにセル套管を通して例えば窒素のような気体をパージすることによって実施される。試料セル内に洗浄液を分注するために、最初にセル準備制御弁680は、適切な洗浄液リザーバ700a〜dにセルポンプ670を連結するために、位置C、D、E又はFに配置され、セルポンプ670はそのポンプリザーバ内へ洗浄液を引くように作動し、次にセル準備制御弁680は、套管400にセルポンプ670を連結するために、位置Aに配置され、セルポンプ670はセル套管200を通して試料セル50内に洗浄液を分注するように作動する。その後、洗浄液(複数可)は、抜き取られ、セル準備制御弁680の廃棄物ポート710を通して廃棄される。開示される実施形態では、セル套管400は、セル洗浄手順中、試料セル内に留まり、それによって、セル套管400は、セル50と同時に洗浄され、試料セル50へ新たな試料液を移送する準備が整う。
【0050】
図8bでは、滴定移送ユニット370の滴定移送套管470が、洗浄ステーション320へアクセスして、そこで新しい滴定試料を分注し、次の段階で、セル準備ユニット300のセル套管400が、試料セル50にアクセスして、新たな試料で試料セルを充填できるようにするために、ピペットアセンブリ30は、試料セル50と洗浄ステーション320との間の中間位置に配置される。滴定移送ユニット370は、位置Fにシリンジ弁570を設定することによって、洗浄ステーション内へ套管470から滴定試料を分注し、充填ポンプ560を使用して滴定剤を分注するように構成される。
【0051】
図8bでは、セル準備ユニットは、所望の新たな試料を含む選択されるウェル内にセル套管400を挿入し、位置Aにセル準備制御弁680を設定し、セルポンプ670のポンプリザーバ内へウェルから新たな試料を引くことによって、試料トレー450内のウェルから新たな試料を引くように構成される。代替として、セル套管400は試料リザーバ430a〜cの内の1つに挿入できる。
【0052】
図8cでは、再び、ピペットアセンブリ30は、滴定剤でシリンジ200を充填するために、洗浄ステーション320で滴定針210と共に洗浄位置に配置される。図5a〜cを参照して詳細に述べられているように、シリンジ200の充填中に、充填ポート連結ユニット490の連結部材550は、シリンジ200の充填ポート500に連結され、シリンジ流体システム480は、少量が充填ポート500を通過するまで、シリンジ200内へ滴定針210を通して滴定剤を引き、それによって、プランジャ230が降下して、充填ポート500を閉じるように構成される。このやり方で、シリンジ内に滴定剤を引くことによって、滴定剤中の封入空気は効果的に防止される。図8bに開示される状態の間、滴定移送ユニット370は、基本的に不動であるが、セル準備ユニット330は、セル套管400と共に試料セル50内に位置決めされて、位置Aにセル準備制御弁680を配置し、ポンプリザーバ内に含まれる新たな試料を試料セル50内へ分注するようにセルポンプ670を稼働することによって、試料セル50を正確な量の新たな試料で充填する。
【0053】
図8aでは、ITC実験を実施するために、ピペットアセンブリ30は試料セル50内の滴定針210と共に滴定位置に配置される。ここで、次の滴定移送動作の前に、滴定套管を洗浄するために、滴定移送ユニット370は、滴定套管と共に洗浄ステーション320内に位置決めされる。洗浄サイクルは、基本的にシリンジ200と同じとすることができる。図8bに開示される状態の間、セル準備ユニット330は、基本的に不動であり、セル套管400が試料準備ステーション420に位置する状態で示される。
液体取扱い順序の例は次の段階を含む。
セル洗浄:
a セル套管400がセル40、50内へ挿入され、底部で停止する。
【0054】
b セルの内容物がセル套管400を通して、セルポンプ680内へ引かれ、外部へ廃棄物ポート710に向けて分注される。
【0055】
c 水が、洗浄液リザーバ700a〜dからセルポンプ680のポンプリザーバ内へ引かれ、シリンジをすすぐために外部へ廃棄物ポート710に向けて分注される。
【0056】
d 洗浄液が、洗浄液リザーバ700a〜dの内1つからセルポンプ680のポンプリザーバ内へ引かれ、セルを充填するために必要な正確な量が、セル40、50内へセル套管400を通して分注される。
【0057】
e 洗浄液が、セル40、50を洗浄するために、セルポンプ680のポンプリザーバからセル40、50へ前後に循環する。
【0058】
f 段階bで開始する段階が、セル40、50に関して所定の回数、繰り返される。
【0059】
g 段階bの廃棄物に関してセルが空になる。
【0060】
h セル套管400が、試料準備ステーション420へ移動し、例えば窒素のような気体をパージすることによって乾燥される。セル装着手順に脱気が含まれるとき、試料準備ステーション420は乾燥前に洗浄される。
ピペット洗浄:
a ピペット30が洗浄/充填ステーション320内に配置され、充填ポート500が連結される。
【0061】
b ピペットプランジャ230が充填ポート500の上方ですすがれて、それにより液体がピペット30のシリンジ200を通して流れる。
【0062】
c 第1の水、次いで、空気が、シリンジポンプ560から充填ポート500内へ、そして、シリンジ200及び滴定針210を通して、洗浄/充填ステーション320内へ分注される。同時にこの水が、洗浄/充填ステーション320の底部から廃棄物出口350を通して廃棄物ポンプ510内へ非常に過度に引かれる。
【0063】
d 廃棄物ポンプ510が停止し、滴定針210の外側の頂部まで洗浄/充填ステーション320を充填するように、正確な量の水がピペット30を通して分注される。シリンジ200及び滴定の全体を内側及び外側で洗浄するように、水が前後に循環する。
【0064】
e 段階cが繰り返される。
【0065】
f 段階dがメタノールを使って繰り返される。
【0066】
g 段階cが繰り返される。
【0067】
h システムを乾燥するために、窒素が充填ポート500を通してパージされる。
【0068】
i ピペット30が洗浄/充填ステーション320から除去されて、滴定試料を伴う滴定移送ユニット370がステーション320に装着される。
【0069】
j システムからメタノールを取り除くために、シリンジポンプ560が水ですすがれる。
セル装着:
a 滴定試料が試料トレー450又は試料リザーバ430a〜cからセル套管400内へ引かれる。次いでそれは、気泡を防止するためにゆっくりとセル内へ分注される。適宜、試料は、セル50内へ移送される前に試料準備ステーション420内へ分注されて、加熱及び混合(脱気)される。
ピペット装着:
a 滴定剤が試料トレー450から滴定移送套管470内へ引かれ、洗浄/充填ステーション320内へ分注される。
【0070】
b ピペット30が洗浄/充填ステーション320内に配置され、充填ポート500が連結される。
【0071】
c プランジャ230が充填ポート500の上方ですすがれ、それにより液体がピペットを通して流れる。
【0072】
d 正確な量の滴定剤が、シリンジポンプ560によって滴定針210を通して上方へ引かれ、少量の滴定剤が充填ポート500に存在するように、シリンジ200を過充填する。
【0073】
e プランジャ230が充填ポート500の下方に降下し、それにより滴定針210及びピペットシリンジ200が完全に充填された状態になる。
滴定移送洗浄:
a 滴定移送套管470が洗浄/充填ステーション320内に配置され、水ですすがれ、次いで、メタノールですすがれ、ピペットのシリンジ200が洗浄及び乾燥されるのとまったく同じやり方で乾燥される。
【0074】
任意の1つの実施形態に関して述べられている任意の機能は、単独で、又は、述べられている機能と組み合わせて使用でき、任意の他の実施形態の1つ以上の機能と組み合わせて、又は、任意の他の実施形態を任意に組み合わせて使用できることを理解されたい。更に、上記に述べられていない均等物及び修正形態も、添付の請求項に規定される発明の範囲から逸脱することなく使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料セル及び基準セルを有し、前記試料セルには試料セルステムを介してアクセス可能であり、前記基準セルには基準セルステムを介してアクセス可能である、マイクロ熱量計と、
滴定剤を供給するために前記試料セル内へ挿入されるように構成された滴定針を有するシリンジを備え、前記シリンジ内のプランジャを駆動するためのアクティベータを備える自動ピペットアセンブリと、
前記ピペットアセンブリを支持し、滴定動作位置、洗浄動作位置及び充填動作位置にピペットを配置するように構成されたピペット平行移動ユニットと、
前記滴定針のための洗浄ステーションと、
前記ピペットが前記滴定位置以外の位置に配置されたとき、前記試料セル内で前記試料液を交換するための動作を実施するように構成されたセル準備ユニットと
を備える自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム。
【請求項2】
前記洗浄ステーションは、前記ピペットアセンブリが洗浄位置に配置されたとき、前記滴定針の、少なくとも滴定中に前記試料内に浸漬される部分を受容するように構成された洗浄空洞を備え、前記洗浄ステーションが、廃棄物流体システムに連結された前記洗浄空洞の底端部に廃棄物出口ポートを備える、請求項1記載の自動ITCシステム。
【請求項3】
前記廃棄物流体システムが、前記洗浄ステーションから流体を選択的に抜き取るための廃棄物ポンプを備える、請求項2記載の自動ITCシステム。
【請求項4】
前記シリンジがその上方部分に充填ポートを備え、前記プランジャが前記充填ポート上方に位置決めされたとき、前記シリンジ空洞との間に流体接触をもたらし、
前記自動ITCシステムが、前記充填ポートに選択的に連結するように構成された充填ポート連結ユニットを備え、それによって、前記シリンジ空洞と、前記シリンジを通して液体又は気体を選択的に引く、又は、押すためのシリンジ流体システムとの間に流体接触をもたらす、請求項1記載の自動ITCシステム。
【請求項5】
前記シリンジが、前記自動ピペットに対して回転可能であり、攪拌モータによって回転駆動され、前記充填ポート連結ユニットは、連結部材が前記充填ポートと位置合わせされたとき、所定の角度位置で前記シリンジの回転を防止するように構成されたポート位置合せ機構を備える、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項6】
前記ピペットが前記洗浄ステーションに配置されたとき、前記シリンジ空洞と前記シリンジ流体システムとの間を連結できるように、前記充填ポート連結ユニットが前記洗浄ステーションに配置される、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項7】
前記シリンジ流体システムが、
前記シリンジの前記充填ポートをパージ気体源及びシリンジ充填ポンプに連結し、かつ
前記シリンジ充填ポンプを1つ以上の洗浄液リザーバ及び廃棄物出口に連結する
ことが可能なシリンジ充填弁構成体を備える、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項8】
前記シリンジ流体システムが、前記ピペットの前記滴定針が前記洗浄空洞内に配置されたとき、前記シリンジ充填ポートを介して前記シリンジ及び前記滴定針を通して1つ以上の洗浄液を押すことによって前記シリンジ及び前記滴定針を洗浄するように構成された、請求項7記載の自動ITCシステム。
【請求項9】
前記シリンジ流体システムが、前記シリンジ及び前記滴定針を洗浄した後、前記シリンジ充填ポートを介して前記シリンジ及び前記滴定針を通して気体をパージするように構成された、請求項8記載の自動ITCシステム。
【請求項10】
前記シリンジ流体システムが、前記滴定針が挿入される前記シリンジ内へ滴定剤源から、所定の体積の滴定剤を引くことによって、滴定剤で前記シリンジを充填するように構成されており、前記所定の体積が、前記シリンジを過充填するために前記シリンジ体積よりもより大きくなるように選択され、前記リニアアクティベータが、その後で、前記充填ポートの下方に前記プランジャを位置決めして、前記充填ポートを閉じるように構成されている、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項11】
前記滴定剤源が試料トレー内のウェルであり、前記ピペット平行移動ユニットが、前記ウェルから充填するための位置に前記ピペットを配置するように構成された、請求項10記載の自動ITCシステム。
【請求項12】
充填ステーションの形態で副滴定剤源へ主滴定剤源から滴定剤を移送するように構成された滴定移送ユニットを備え、前記ピペット平行移動ユニットが、前記充填ステーションで充填するための位置に前記ピペットを配置するように構成された、請求項10記載の自動ITCシステム。
【請求項13】
前記主滴定剤源が試料トレー内のウェルである、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項14】
前記滴定移送ユニットが、前記主滴定剤源から滴定剤を引くように構成された套管を備え、流体システムが、前記充填ステーションへ前記套管から前記滴定剤の分量を移送するために、前記充填ステーション内のポートに連結される、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項15】
前記滴定移送ユニットが、前記主滴定剤源から滴定剤を引くように構成された套管を備え、前記充填ステーションへ前記套管を移動し、そこで前記滴定剤を分注するように構成された、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項16】
前記充填ステーション及び前記洗浄ステーションが、1つの組み合わされたステーションとして組み合わされる、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項17】
前記セル準備ユニットが、前記試料セル内へ挿入されるように移動可能である套管を備える、請求項1記載の自動ITCシステム。
【請求項1】
試料セル及び基準セルを有し、前記試料セルには試料セルステムを介してアクセス可能であり、前記基準セルには基準セルステムを介してアクセス可能である、マイクロ熱量計と、
滴定剤を供給するために前記試料セル内へ挿入されるように構成された滴定針を有するシリンジを備え、前記シリンジ内のプランジャを駆動するためのアクティベータを備える自動ピペットアセンブリと、
前記ピペットアセンブリを支持し、滴定動作位置、洗浄動作位置及び充填動作位置にピペットを配置するように構成されたピペット平行移動ユニットと、
前記滴定針のための洗浄ステーションと、
前記ピペットが前記滴定位置以外の位置に配置されたとき、前記試料セル内で前記試料液を交換するための動作を実施するように構成されたセル準備ユニットと
を備える自動等温滴定マイクロ熱量計(ITC)システム。
【請求項2】
前記洗浄ステーションは、前記ピペットアセンブリが洗浄位置に配置されたとき、前記滴定針の、少なくとも滴定中に前記試料内に浸漬される部分を受容するように構成された洗浄空洞を備え、前記洗浄ステーションが、廃棄物流体システムに連結された前記洗浄空洞の底端部に廃棄物出口ポートを備える、請求項1記載の自動ITCシステム。
【請求項3】
前記廃棄物流体システムが、前記洗浄ステーションから流体を選択的に抜き取るための廃棄物ポンプを備える、請求項2記載の自動ITCシステム。
【請求項4】
前記シリンジがその上方部分に充填ポートを備え、前記プランジャが前記充填ポート上方に位置決めされたとき、前記シリンジ空洞との間に流体接触をもたらし、
前記自動ITCシステムが、前記充填ポートに選択的に連結するように構成された充填ポート連結ユニットを備え、それによって、前記シリンジ空洞と、前記シリンジを通して液体又は気体を選択的に引く、又は、押すためのシリンジ流体システムとの間に流体接触をもたらす、請求項1記載の自動ITCシステム。
【請求項5】
前記シリンジが、前記自動ピペットに対して回転可能であり、攪拌モータによって回転駆動され、前記充填ポート連結ユニットは、連結部材が前記充填ポートと位置合わせされたとき、所定の角度位置で前記シリンジの回転を防止するように構成されたポート位置合せ機構を備える、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項6】
前記ピペットが前記洗浄ステーションに配置されたとき、前記シリンジ空洞と前記シリンジ流体システムとの間を連結できるように、前記充填ポート連結ユニットが前記洗浄ステーションに配置される、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項7】
前記シリンジ流体システムが、
前記シリンジの前記充填ポートをパージ気体源及びシリンジ充填ポンプに連結し、かつ
前記シリンジ充填ポンプを1つ以上の洗浄液リザーバ及び廃棄物出口に連結する
ことが可能なシリンジ充填弁構成体を備える、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項8】
前記シリンジ流体システムが、前記ピペットの前記滴定針が前記洗浄空洞内に配置されたとき、前記シリンジ充填ポートを介して前記シリンジ及び前記滴定針を通して1つ以上の洗浄液を押すことによって前記シリンジ及び前記滴定針を洗浄するように構成された、請求項7記載の自動ITCシステム。
【請求項9】
前記シリンジ流体システムが、前記シリンジ及び前記滴定針を洗浄した後、前記シリンジ充填ポートを介して前記シリンジ及び前記滴定針を通して気体をパージするように構成された、請求項8記載の自動ITCシステム。
【請求項10】
前記シリンジ流体システムが、前記滴定針が挿入される前記シリンジ内へ滴定剤源から、所定の体積の滴定剤を引くことによって、滴定剤で前記シリンジを充填するように構成されており、前記所定の体積が、前記シリンジを過充填するために前記シリンジ体積よりもより大きくなるように選択され、前記リニアアクティベータが、その後で、前記充填ポートの下方に前記プランジャを位置決めして、前記充填ポートを閉じるように構成されている、請求項4記載の自動ITCシステム。
【請求項11】
前記滴定剤源が試料トレー内のウェルであり、前記ピペット平行移動ユニットが、前記ウェルから充填するための位置に前記ピペットを配置するように構成された、請求項10記載の自動ITCシステム。
【請求項12】
充填ステーションの形態で副滴定剤源へ主滴定剤源から滴定剤を移送するように構成された滴定移送ユニットを備え、前記ピペット平行移動ユニットが、前記充填ステーションで充填するための位置に前記ピペットを配置するように構成された、請求項10記載の自動ITCシステム。
【請求項13】
前記主滴定剤源が試料トレー内のウェルである、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項14】
前記滴定移送ユニットが、前記主滴定剤源から滴定剤を引くように構成された套管を備え、流体システムが、前記充填ステーションへ前記套管から前記滴定剤の分量を移送するために、前記充填ステーション内のポートに連結される、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項15】
前記滴定移送ユニットが、前記主滴定剤源から滴定剤を引くように構成された套管を備え、前記充填ステーションへ前記套管を移動し、そこで前記滴定剤を分注するように構成された、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項16】
前記充填ステーション及び前記洗浄ステーションが、1つの組み合わされたステーションとして組み合わされる、請求項12記載の自動ITCシステム。
【請求項17】
前記セル準備ユニットが、前記試料セル内へ挿入されるように移動可能である套管を備える、請求項1記載の自動ITCシステム。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【公表番号】特表2012−510620(P2012−510620A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538721(P2011−538721)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066160
【国際公開番号】WO2010/065480
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/066160
【国際公開番号】WO2010/065480
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(598041463)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【Fターム(参考)】
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