説明

自動製氷機の運転方法

【課題】低コストで周囲温度に対応して効率よく運転する。
【解決手段】除氷運転完了時に、除氷時間に要した除氷時間T2に対する製氷運転に要した製氷時間T1の比率T1/T2を計算し、その比率T1/T2と閾値A,Bとを比較して周囲温度の高低を判定する。この周囲温度の判定結果に基づいて、次回の運転サイクルにおける冷却ファンFMの回転数制御およびホットガス弁HVの開閉制御を行う。具体的には、前記判定結果において周囲温度が低いと判定された場合は、製氷運転時に冷却ファンFMの回転数を基準値に対して低くする冷却ファンFMの低回転制御および除氷運転時にホットガス弁HVの開閉が所定回数繰返されるホットガス弁HVの開閉制御が行われ、周囲温度が高いと判定された場合は、製氷運転時に冷却ファンFMの回転数を基準値に対して高くする冷却ファンFMの高回転制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製氷部を蒸発器で冷却すると共に製氷部に製氷水を供給して氷塊を生成する製氷運転と、該製氷運転で製氷部に生成された氷塊を離脱させる除氷運転とを繰り返す自動製氷機の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように、氷塊Iを連続的に生成する自動製氷機としては、製氷室12に設けられた下向きに開口する多数の製氷小室12Aに製氷水を下方から噴射供給する噴射式のものがある。前記自動製氷機の製氷機構10は、本体内に水平に配設された前記製氷室12と、この製氷室12の下方に支軸16を介して傾動可能に枢支された水皿14と、この水皿14の下部に一体的に設けられ、内部に所定量の製氷水を貯留する製氷水タンク18とを備えている。製氷室12の上面には、圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EV、および冷却ファンFM等から構成される冷凍機構30の一部をなす蒸発器EPが蛇行状に密着して配設されている。
【0003】
前記冷凍機構30は、圧縮機CMからの冷媒を、冷却ファンFMで冷却する凝縮器CDおよび膨張弁EVを経て蒸発器EPへ供給する冷凍回路32と、圧縮機CMからの高温冷媒(ホットガス)をバイパス管36を介して蒸発器EPへ供給するバイパス回路34とを備えている。前記バイパス管36の途中にはホットガス弁HVが設けられている。冷凍機構30は、製氷運転時にホットガス弁HVを閉成することで、冷凍回路32に冷媒が循環する。製氷運転では、圧縮機CMで圧縮された気化冷媒が、凝縮器CDで凝縮液化し、膨張弁EVで減圧され、蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換して該製氷室12を冷却している。このとき、前記製氷機構10では、製氷小室12Aを下方から閉成する位置に水皿14を保持した状態で、冷却された製氷小室12Aに対して製氷水タンク18の製氷水を水皿14から噴射供給することで、各製氷小室12Aに氷塊Iが生成される。
【0004】
冷凍機構30は、除氷運転時にホットガス弁HVを開放することで、バイパス回路34にホットガスが循環する。除氷運転では、圧縮機CMからのホットガスを蒸発器EPに供給して、該蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換して該製氷室12を加熱している。このとき、製氷機構10では、開閉機構22を作動することで、支軸16を中心として水皿14を斜め下方向へ傾動して、製氷小室12Aを開放する。そして、氷塊Iにおける製氷小室12Aとの氷結部分が融解され、氷塊Iが自重により製氷小室12Aから離脱して水皿14上を滑落しストッカ38に貯蔵される。製氷運転および除氷運転の切替は、製氷室12に配設したサーミスタ等の運転切替手段40の温度検知に基づいて行われる。
【0005】
冬場のように自動製氷機の周囲温度が低くなると、冷凍回路32およびバイパス回路34を循環する冷媒の温度も低下する。この場合に、冷却ファンFMを過剰に回転させると凝縮器CDにおいて冷媒の温度が必要以上に低下し、除氷時間が長くなってしまう。このため、自動製氷機の周囲温度が低い場合に、冷却ファンFMの回転数を低くすることで除氷時間を調整している(例えば、特許文献1参照)。この冷却ファンFMの回転数の制御は、外気温を測定するサーミスタや凝縮器CDの温度を測定するサーミスタ等の温度検知手段THの検知結果が、予め設定された温度以下である場合に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−141821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記温度検知手段THで検知した周囲温度に基づいて冷却ファンFMの回転数を制御する方法では、温度検知手段THを必要とするため、自動製氷機の製造コストが嵩んでしまう。また、温度検知手段THの検知結果によって1回の製氷運転中であっても冷却ファンFMの回転数が切替わるため、安定した運転が行えない、という問題もある。
【0008】
そこで本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、低コストで周囲温度に対応した効率のよい運転を行い得る自動製氷機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に係る自動製氷機の運転方法は、
圧縮機からの冷媒を凝縮器を介して蒸発器へ供給して製氷部を冷却すると共に該製氷部に製氷水を供給して氷塊を生成する製氷運転と、前記製氷運転で製氷部に生成された氷塊を離脱させる除氷運転とを繰返す自動製氷機において、
前記製氷運転に要した製氷時間および前記除氷運転に要した除氷時間の比率と、予め設定された閾値とを比較して周囲温度の高低を判定し、
前記周囲温度の判定結果に基づいた運転の制御を行うようにしたことを要旨とする。
【0010】
請求項1に係る発明によれば、製氷時間および除氷時間の比率と閾値とを比較して周囲温度の高低を判定するので、周囲温度を検知するための温度検知手段を設ける必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、実際の自動製氷機の動作に基づく製氷時間および除氷時間を用いて周囲温度の高低を判定するので、自動製氷機の運転を自動製氷機の実状に即して制御することができる。更に、製氷時間および除氷時間の両方を用いて周囲温度の高低を判定するので、周囲温度の判定に対する機械の老朽化や設置条件による影響を抑制できる。そして、製氷時間および除氷時間に基づいて周囲温度の高低を判定するから、1回の製氷運転中および除氷運転中に周囲温度の判定結果が変化せず安定した運転制御を行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記判定結果で周囲温度が低いと判定された場合は、製氷運転時に前記凝縮器を冷却する冷却ファンの回転数を基準値に対して低くなるよう制御することを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、周囲温度が低い場合に、製氷運転時に冷却ファンの回転数を低くするから、冷却ファンによる過剰な冷媒温度の低下を抑制でき、周囲温度に対応して自動製氷機を効率よく運転することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記判定結果で周囲温度が高いと判定された場合は、製氷運転時に前記冷却ファンの回転数を基準値に対して高くなるよう制御することを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、周囲温度が高い場合に、製氷運転時に冷却ファンの回転数を高くするから、周囲温度に伴う冷媒温度の上昇を高回転数の冷却ファンによって抑制でき、周囲温度に対応して自動製氷機を効率よく運転することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記判定結果で周囲温度が低いと判定された場合は、除氷運転時に開放することで前記圧縮機からのホットガスを前記蒸発器に供給するホットガス弁を閉成する期間を除氷運転中に設けるよう該ホットガス弁の開閉制御を行うことを要旨とする。
請求項4に係る発明は、周囲温度が低いと判定された場合、除氷運転中にホットガス弁が閉成される期間が設けられてホットガスが凝縮器に供給されるので、凝縮器に滞留する液化冷媒の気化を促し、滞留した液化冷媒に起因するホットガスの循環量の低下を解消できる。すなわち、蒸発器に充分な量のホットガスが供給されるので、周囲温度が低い場合であっても効率的な除氷運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る自動製氷機の運転方法によれば、周囲温度に対応して効率がよい運転を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例に係る運転方法に用いられる自動製氷機の一部を示す概略構成図である。
【図2】実施例の自動製氷機の制御ブロック図である。
【図3】実施例の自動製氷機を運転した場合の各機器の動作を示すフローチャート図である。
【図4】実施例の自動製氷機における圧縮機、ホットガス弁および冷却ファン等の動作状態を示すタイミングチャート図であって、周囲温度が通常温度より低いと判定された場合である。
【図5】実施例の自動製氷機における圧縮機、ホットガス弁および冷却ファン等の動作状態を示すタイミングチャート図であって、周囲温度が通常温度より高いと判定された場合である。
【図6】実施例の自動製氷機における圧縮機、ホットガス弁および冷却ファン等の動作状態を示すタイミングチャート図であって、周囲温度が通常温度範囲内と判定された場合である。
【図7】従来の自動製氷機における製氷機構および冷凍機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る自動製氷機の運転方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、説明の便宜上、図7に示した自動製氷機の構成要素と同じ要素については同一の符号を使用する。
【実施例】
【0017】
実施例に係る自動製氷機は、図1に示すように、製氷部としての製氷室12を有する製氷機構10と、製氷室12を冷却および加熱する蒸発器EPを有する冷凍機構30とを備えている。図2に示すように、自動製氷機は、運転切替手段40、計時手段42および切替スイッチ44等に基づいて、制御手段46により製氷機構10および冷凍機構30を構成する各機器が制御され、製氷運転および除氷運転を繰返すようになっている。
【0018】
前記製氷機構10は、図1に示すように、下向きに開口する多数の製氷小室12Aが設けられ、本体内に水平に配設された製氷室12と、この製氷室12の下方に支軸16を介して傾動可能に枢支された水皿14と、水皿14の下部に一体的に設けられ、内部に所定量の製氷水を貯留する製氷水タンク18と、製氷水タンク18の下部に設けられ、製氷水を循環供給するポンプモータ20と、水皿14および製氷水タンク18を一体的に傾動させる開閉機構22等とから構成される。製氷室12の上面には、冷凍機構30の一部をなす蒸発器EPが蛇行状に密着して配設されている。製氷室12は、この蒸発器EPにより、製氷運転時に冷却されると共に除氷運転時に加熱されるようになっている。
【0019】
前記水皿14および水皿14に固定された製氷水タンク18は、開閉機構22の開閉モータ24の駆動により、支軸16を中心として製氷室12に対して近接および離間するよう傾動される。水皿14は、製氷運転において、製氷小室12Aの開口を閉成する閉成位置となるよう保持され、除氷運転が開始されると開閉モータ24の駆動により、製氷小室12Aの開口を開放する開放位置となるよう支軸16を中心として下方に傾動するよう構成される。また、水皿14は、除氷が完了すると開閉モータ24の駆動により、支軸16を中心として上方に傾動して閉成位置となるよう構成される。開閉モータ24は、制御手段46により駆動され、水皿14の開放位置および閉成位置への到来を切替スイッチ44が検知すると停止するよう制御される。製氷水タンク18は、上方に開口し、外部水源に連結された給水弁WVから製氷水が供給される。そして、製氷運転において、ポンプモータ20を駆動することで、各製氷小室12Aに対応するように設けられた水皿14の噴水孔(図示せず)から製氷小室12Aに製氷水が噴射供給される。製氷室12には、該製氷室12の温度を検知する運転切替手段40が配設され、この運転切替手段40の温度検知結果に基づいて自動製氷機における製氷運転および除氷運転が切替えられる。自動製氷機では、運転切替手段40が、製氷運転において製氷完了温度を検知すると除氷運転に切替えられ、除氷運転において除氷完了温度を検知すると製氷運転に切替えられるよう制御手段46に制御される。
【0020】
前記冷凍機構30は、圧縮機CM、凝縮器CD、この凝縮器CDを冷却する冷却ファンFM、膨張弁EV、および製氷室12の上面に設けられた蒸発器EPが配管で連結されて冷凍回路32が構成されている。冷凍回路32では、製氷運転時に、圧縮機CMで圧縮された冷媒が、凝縮器CDで凝縮液化し、膨張弁EVで減圧され、蒸発器EPに供給され、圧縮機CMに帰還する。この冷媒は、蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換することで該製氷室12を冷却する。また、冷凍機構30は、除氷運転時に圧縮機CMからのホットガスを蒸発器EPに供給するバイパス回路34を備えている。バイパス回路34は、圧縮機CMの出口側と蒸発器EPの入口側とを連結するバイパス管36を有している。バイパス管36の途中には、該バイパス管36の管路を開閉するホットガス弁HVが設けられている。除氷運転では、ホットガス弁HVを開放(ON)することで、バイパス回路34に冷媒が循環され、圧縮機CMからのホットガスが、凝縮器CDおよび膨張弁EVを経ることなく、バイパス管36を介して蒸発器EPに直接供給される。このホットガスは、蒸発器EPで製氷室12との間で熱交換して該製氷室12を加熱する。ホットガス弁HVは、後述する低温モード時を除き、除氷運転時には開放状態を維持するよう設定される。また、製氷運転では、ホットガス弁HVを閉成(OFF)することで、冷凍回路32に冷媒が循環される。
【0021】
前記冷却ファンFMは、製氷運転の開始と同時に駆動し、除氷運転の開始と同時に停止する。冷却ファンFMは、制御手段46によって後述する低温モード、高温モードおよび通常モードの別により異なる回転数となるよう制御される。なお、冷却ファンFMは、通常モードにおける冷却ファンFMの回転数が基準値となっており、制御電圧を変更することで回転数が制御される。
【0022】
図2に示す如く、自動製氷機は、製氷運転に要した製氷時間T1を計時する製氷タイマ42aと、除氷運転に要した除氷時間T2を計時する除氷タイマ42bと、ホットガス弁HVの開放時間および閉成時間を計時する開閉タイマ42c(詳細は後述する)とを有する計時手段42を備えている。製氷時間T1とは、運転切替手段40が除氷完了温度を検知してから製氷完了温度を検知するまでを云い、除氷時間T2とは、運転切替手段40が製氷完了温度を検知してから除氷完了温度を検知するまでを云う。従って、製氷タイマ42aは、運転切替手段40が除氷完了温度を検知して製氷運転が開始されるとカウントを開始し、運転切替手段40が製氷完了温度を検知して製氷運転が完了するとカウントを終了する。一方、除氷タイマ42bは、運転切替手段40が製氷完了温度を検知して除氷が開始されるとカウントを開始し、運転切替手段40が除氷完了温度を検知して除氷運転が完了するとカウントを終了する。
【0023】
制御手段46は、除氷運転完了毎に、製氷タイマ42aおよび除氷タイマ42bの計時結果から除氷時間T2に対する製氷時間T1の比率T1/T2(製氷時間T1および除氷時間T2の比率)を計算し、この比率T1/T2と予め設定された閾値A,Bとを比較して、自動製氷機の設置環境における周囲温度の高低を判定する。そして、この周囲温度の判定結果に基づいて、次回の製氷運転および除氷運転(以下、製氷運転および除氷運転を併せて運転サイクルと云う)における冷凍機構30の動作条件を決定する制御モードが設定されるようになっている。
【0024】
表1は、周囲温度の異なる条件((a) 室温40℃・水温35℃、(b) 室温30℃・水温25℃、(c) 室温10℃・水温5℃、)で、自動製氷機を運転した場合の製氷時間T1、除氷時間T2および比率T1/T2等を示す。前記(a)の条件では、製氷時間T1が30分、除氷時間T2が2分であるため比率T1/T2は15となる。また、前記(b)の条件では、製氷時間T1が20分、除氷時間T2が2分であるため比率T1/T2は10となる。更に、前記(c)の条件では、製氷時間T1が15分、除氷時間T2が5分であるため比率T1/T2は3となる。このように、比率T1/T2は、周囲温度が低いと小さくなり、周囲温度が高いと大きくなる。また、閾値A,Bは、比率T1/T2が閾値A以上、かつ閾値B以下である場合に、通常の設定条件で冷凍機構30を動作させるのに適した周囲温度(以下、通常温度という、実施例では室温25〜35℃・水温15〜30℃)の範囲内となるよう設定されている。実施例では、閾値Aが5、閾値Bが13に設定されている。従って、前記(a)の場合は、比率T1/T2が閾値Bより大きいため、周囲温度は通常温度より高いと判定される。また、前記(b)の場合は、比率T1/T2が閾値A以上、かつ閾値B以下であるため、周囲温度は通常温度範囲内であると判定される。前記(c)の場合は、比率T1/T2が閾値A未満であるため、周囲温度は前記通常温度より低いと判定される。通常温度や閾値A,Bは、自動製氷機の設置環境(寒冷地や温暖地等)や自動製氷機の特性等に合わせて予め設定される。
【0025】
【表1】

【0026】
表2に示す如く、制御手段46は、周囲温度が通常温度より低いと判定した場合、次回の運転サイクルでは冷凍機構30を低温モードで制御し、周囲温度が通常温度より高いと判定した場合、次回の運転サイクルでは冷凍機構30を高温モードで制御し、周囲温度が通常温度範囲内であると判定した場合、次回の運転サイクルでは冷凍機構30を通常モードで制御する。低温モードでは、製氷運転時に冷却ファンFMの回転数が予め設定された基準値に対して低くなる低回転制御(基準値を100%とした場合に例えば80%)が行われると共に、除氷運転の途中でホットガス弁HVが所定時間だけ閉成するホットガス弁HVの開閉制御が行われる。このホットガス弁HVの開閉制御では、除氷運転時に冷却ファンFMを停止した状態で、制御手段46によりホットガス弁HVの開閉が所定回数(実施例では開−閉−開の動作)繰返し行われる。高温モードでは、製氷運転時に冷却ファンFMの回転数が基準値に対して高くなる高回転制御(基準値を100%とした場合に例えば120%)が行われ、除氷運転時のホットガス弁HVの開閉制御は行われない。すなわち、除氷運転時にホットガス弁HVは開放状態を維持する。通常モードでは、製氷運転時における冷却ファンFMの回転を変速する制御は行われず、除氷運転時におけるホットガス弁HVの開閉制御も行われない。すなわち、通常モードでは、冷却ファンFMの回転数は予め設定された基準値となり、除氷運転時にホットガス弁HVは開放状態を維持する。なお、実施例の自動製氷機では、冷却ファンFMおよびホットガス弁HV以外の各機器は、何れの制御モードであっても異なる制御は行われない。
【0027】
【表2】

【0028】
(実施例の作用)
次に、実施例に係る自動製氷機の運転方法の作用について、図3〜図6を参照して説明する。なお、自動製氷機では、除氷時間T2に対する製氷時間T1の比率T1/T2によって周囲温度の高低を判定することで制御モードを決定するため、制御手段46は、製氷運転および除氷運転を経ていない最初の運転サイクルでは周囲温度の高低を判定できず、制御モードを設定できない。そこで、実施例の自動製氷機では、最初の製氷運転時および除氷運転時には通常モードとなるよう設定されている。但し、周囲温度が通常温度より低いことが予測される冬場には低温モードが設定され、周囲温度が通常温度より高いことが予測される夏場には高温モードが設定されるようにしてもよい。
【0029】
先ず、制御モードとして通常モードが設定されている場合について説明する。図3のフローチャートおよび図6に示す如く、製氷運転を開始(ステップS1)すると、圧縮機CM、冷却ファンFMおよび開閉モータ24が駆動(ON)すると共に前記製氷タイマ42aがカウントを開始(ステップS2)する。この際、通常モードが設定されているため、冷却ファンFMの回転数制御は行われず、冷却ファンFMの回転数は基準値(回転数MIDDLE)となる。製氷運転の開始により、冷凍回路32に冷媒が循環され、圧縮機CMで圧縮された冷媒が、凝縮器CDで冷却ファンFMによって凝縮液化され、膨張弁EVで減圧されて蒸発器EPに供給される。そして、蒸発器EP内を循環する冷媒と熱交換を行って製氷室12が強制冷却される。切替スイッチ44が水皿14の閉成位置を検知すると、ポンプモータ20が駆動し水皿14から製氷小室12Aに製氷水が噴射供給され、製氷小室12Aに氷塊Iが生成される。運転切替手段40が製氷完了温度を検知(ステップS3)すると、製氷運転が完了すると共に製氷タイマ42aがカウントを終了(ステップS4)し、除氷運転を開始(ステップS5)する。また、製氷タイマ42aでカウントされた製氷時間T1は、制御手段46の記憶部に記憶される。
【0030】
除氷運転を開始すると、ホットガス弁HVが開放され、冷却ファンFMが停止(OFF)し、開閉モータ24が駆動すると共に除氷タイマ42bがカウントを開始(ステップS6)する。通常モードが設定されているため、ホットガス弁HVの開閉制御は行われず、除氷運転時ホットガス弁HVは開放状態を維持する。除氷運転の開始により、バイパス回路34に冷媒が循環され、圧縮機CMからのホットガスがバイパス管36を介して蒸発器EPに供給される。製氷室12は蒸発器EP内を循環するホットガスと熱交換を行って加熱される。氷塊Iにおける製氷小室12Aとの氷結部分が融解されることで氷塊Iが自重により製氷小室12Aから離脱する。離脱した氷塊Iは、開閉モータ24の駆動により開放位置となっている水皿14上を落下してストッカ38に貯蔵される。運転切替手段40が除氷完了温度を検知(ステップS7)すると、除氷運転が完了すると共に除氷タイマ42bがカウントを終了(ステップS8)する。また、除氷タイマ42bでカウントされた除氷時間T2は、制御手段46の記憶部に記憶される。
【0031】
除氷運転が完了すると、制御手段46が除氷時間T2に対する製氷時間T1の比率T1/T2を計算(ステップS9)し、この比率T1/T2と閾値Aとを比較(ステップS10)する。比率T1/T2が閾値A未満であれば(ステップS10でYes)、制御手段46は、周囲温度が通常温度より低いと判定し、次回の運転サイクルは低温モードで制御される。そして、比率T1/T2が閾値A以上の場合(ステップS10でNo)は、比率T1/T2と閾値Bとを比較(ステップS11)する。比率T1/T2が閾値Bより大きい場合(ステップS11でYes)、制御手段46は、周囲温度が通常温度より高いと判定し、次回の運転サイクルは高温モードで制御される。そして、比率T1/T2が閾値A以上、かつ閾値B以下であれば(ステップS11でNo)、制御手段46は、周囲温度が通常温度範囲内であると判定し、次回の運転サイクルも通常モードで制御される。このように、自動製氷機は、除氷運転完了時に判定される周囲温度の判定結果に基づいて次回の運転サイクルが制御され、次回の運転サイクルにおける除氷運転完了時に判定された周囲温度の判定結果に基づいてその次の運転サイクルが制御される。
【0032】
低温モードが設定されると、次回の運転サイクルでは、図4に示す如く、製氷運転時に冷却ファンFMの低回転制御が行われ、除氷運転時にホットガス弁HVの開閉制御が行われる。冷却ファンFMの低回転制御は、制御電圧を低くすることで冷却ファンFMの回転数を基準値に対して低く(回転数LOW)する。ホットガス弁HVの開閉制御では、除氷運転の途中でホットガス弁HVが所定時間だけ閉成される。先ず、除氷運転が開始されると、前記通常モードと同様に、冷却ファンFMが停止されると共にホットガス弁HVが開放されてバイパス管36を介して蒸発器EPにホットガスが供給される。この際、ホットガス弁HVが開放されると同時に、開閉タイマ42cにより開放時間のカウントが開始される。開閉タイマ42cが所定の開放時間をカウントすると、ホットガス弁HVを閉成してバイパス回路34へのホットガスの供給を停止すると共に、冷却ファンFMの停止状態を維持したまま冷凍回路32にホットガスを循環させる。この際、冷却ファンFMは停止した状態であるため、ホットガスが凝縮器CDで凝縮液化されることはなく、ホットガスにより凝縮器CDの圧力および温度が上昇する。ホットガス弁HVが閉成されると同時に、開閉タイマ42cにより閉成時間のカウントが開始される。開閉タイマ42cが所定の閉成時間をカウントすると、ホットガス弁HVを開放してバイパス回路34にホットガスを循環させる。そして、ホットガス弁HVは、運転切替手段40が除氷完了温度を検知することで閉成される。なお、低温モードにおいて、冷却ファンFMの低回転制御およびホットガス弁HVの開閉制御以外は、通常モードと同様に制御される。
【0033】
高温モードが設定されると、次回の運転サイクルでは、図5に示す如く、製氷運転時に冷却ファンFMの高回転制御が行われる。冷却ファンFMの高回転制御は、制御電圧を高くすることで冷却ファンFMの回転数を基準値に対して高く(回転数HIGH)する。高温モードでは、除氷運転時にホットガス弁HVの開閉制御は行われず、ホットガス弁HVは開放状態を維持する。なお、高温モードにおいて、冷却ファンFMの高回転制御以外は、通常モードと同様に制御される。
【0034】
実施例の自動製氷機の運転方法によれば、製氷時間T1および除氷時間T2の比率T1/T2と閾値A,Bとを比較して周囲温度の高低を判定するので、周囲温度を検知するための温度検知手段を設ける必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、実際の自動製氷機の動作に基づく製氷時間T1および除氷時間T2を用いて周囲温度の高低を判定するため、自動製氷機の運転を自動製氷機の実状に即して制御できる。また、製氷時間T1および除氷時間T2の両方を用いて周囲温度の高低を判定するので、周囲温度の判定に対する機器の老朽化や設置条件による影響を抑制できる。そして、除氷運転完了時に製氷時間T1および除氷時間T2に基づいて周囲温度の高低を判定するから、1回の運転サイクル中に周囲温度の判定結果が変化せず安定した製氷運転および除氷運転を行うことができる。
【0035】
実施例の自動製氷機の運転方法によれば、周囲温度が低いと判定した場合に、製氷運転時に冷却ファンFMを低回転制御するから、冷却ファンFMによる過剰な冷媒温度の低下を抑制できる。また、周囲温度が高いと判定した場合に、製氷運転時に冷却ファンFMを高回転制御するから、冷却ファンFMによって周囲温度に伴う冷媒温度の上昇を抑制できる。すなわち、実施例の運転方法によれば、周囲温度が何れの条件であっても、周囲温度に対応して自動製氷機を効率よく運転することができる。また、実施例の自動製氷機の運転方法によれば、周囲温度が低いと判定した場合に、除氷運転時にホットガス弁HVの開閉制御が行われ、除氷運転の途中でホットガス弁HVが所定時間だけ閉成される。冷却ファンFMを停止した状態でホットガス弁HVを閉成するので、ホットガスが冷凍回路32を循環して凝縮器CDの圧力および温度が上昇し、周囲温度が低い場合に生じ易い凝縮器CD内に滞留する液化冷媒の気化が促される。そして、所定期間経過後にホットガス弁HVを開放することで、バイパス回路34に充分な量のホットガスが循環する。すなわち、蒸発器EPへのホットガスの供給が適切に行われ、蒸発器EPに対して充分なホットガスが供給されるから蒸発器EP全体を均等にバランスよく加熱できる。従って、周囲温度が低い場合であっても効率的な除氷運転を行うことができる。また、実施例の自動製氷機の運転方法によれば、比率T1/T2と閾値Aおよび閾値Bを比較するから、周囲温度が通常温度より低い場合であっても周囲温度が通常温度より高い場合であっても、周囲温度に対応して自動製氷機を効率よく運転できる。
【0036】
(変更例)
本発明は、前述の実施例に限定されず、以下の如く変更することも可能である。
(1) 実施例では、水皿により製氷室を開閉する所謂クローズドセル方式の自動製氷機を例に挙げて説明したが、これに限定されず、オープンセル方式や流下式等、製氷運転および除氷運転を繰返す自動製氷機であれば、前述の運転方法を適用し得る。
(2) 実施例では、周囲温度の判定結果に基づいて冷却ファンの回転数制御およびホットガス弁の開閉制御を行う運転方法を例に挙げて説明したが、これに限定されず、冷却ファンの回転数制御のみ、またはホットガス弁の開閉制御のみを行う運転方法でもよく、製氷機構の動作や、冷凍機構を構成する他の機器を制御する運転方法であってもよい。
(3) 実施例では、2つの閾値が設定され、周囲温度が通常温度より低い場合、通常温度より高い場合および通常温度範囲内である場合を判定する例を挙げて説明したが、これに限定されず、1つの閾値が設定され、周囲温度が通常温度より低い場合または高い場合の何れか一方のみを判定する運転方法でもよい。また、3つ以上の閾値が設定される運転方法であってもよい。
(4) 実施例では、製氷時間および除氷時間を計時する計時手段として製氷タイマ、除氷タイマおよび開閉タイマを例に挙げて説明したが、これに限定されず、製氷時間および除氷時間を1つのタイマで計時してもよく、またマイコン等で読み取るようにしてもよい。
(5) 実施例では、製氷運転中に運転切替手段が製氷完了温度を検知することで、製氷運転が完了して除氷運転に切替えられる自動製氷機を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、特開2008−256246号に開示されたように、単位時間当たりの冷却量を積算し、この値が製氷部に所望する厚みの氷を形成するのに必要な累積冷却量である目標積分値に達することを条件として、製氷運転が完了して除氷運転に切替わる運転方法であってもよい。この場合、製氷運転が開始されてから製氷運転が完了するまでに要する時間が製氷時間となる。また、実施例では、除氷運転中に運転切替手段が除氷完了温度を検知することで、除氷運転が完了して製氷運転に切替わる自動製氷機を例に挙げて説明したが、これに限定されず、除氷運転時に運転切替手段が除氷完了温度を検知することで開閉モータが駆動して水皿が復動し、水皿の閉成位置を切替えスイッチが検知することで除氷運転が完了して製氷運転に切替わる運転方法であってもよい。この場合、除氷運転が開始されてから除氷運転が完了するまでに要する時間が除氷時間となる。この際、除氷運転中であっても、開閉モータが駆動して水皿を上方に傾動させている間は、ホットガス弁を閉成すると共に冷却ファンを駆動させるようにしてもよい。
なお、実施例では、運転切替手段の温度検知に基づいて製氷運転および除氷運転を切替える自動製氷機を例に挙げて説明したが、これに限定されず、製氷水タンク内の水量や、噴水孔付近の水圧等、周囲温度によって製氷時間および除氷時間が変化する運転方法であればよく、温度検知以外の検知手段に基づいて製氷運転および除氷運転を切替える運転方法でもよい。
(6) 実施例では、製氷時間と除氷時間の比率として、除氷時間に対する製氷時間の比率(T1/T2)を用いる例を挙げて説明したが、製氷時間に対する除氷時間の比率(T2/T1)を用いてもよく、また、除氷時間に対する製氷時間を平方した値の比率((T1*T1)/T2)等、製氷時間や除氷時間の累乗を用いてもよい。また、これらの比率に水温、定数その他の要素を勘案した値と閾値とを比較して周囲温度の高低を判定する運転方法であってもよい。
(7) 実施例では、1運転サイクル毎(除氷運転完了時毎)に、製氷時間および除氷時間の比率を計算すると共にこの比率と閾値とを比較する運転方法を例に挙げて説明したが、これに限定されず、該計算および比較を複数の運転サイクル毎に行う運転方法であってもよい。
(8) 実施例では、ホットガス弁の開閉制御として、除氷運転中にホットガス弁が開−閉−開と動作し、ホットガス弁を閉成する期間が1回となる例を挙げて説明したが、除氷運転中にホットガス弁を閉成する期間を2回以上設ける態様であってもよい。
(9) 実施例では、ホットガス弁の開閉制御において、開閉タイマにより開放時間および閉成時間を計時してホットガス弁の開閉を制御する態様を例に挙げて説明したが、これに限定されず、切替スイッチによる水皿の閉成位置の検知や、この切替スイッチと計時手段による計時とを組合わせてホットガス弁の開閉を制御する態様であってもよい。
(10) 実施例では、閾値が5および13に設定された例を挙げて説明したが、これに限定されず、閾値は、自動製氷機の機種や、自動製氷機の設置環境や、季節等に応じて設定すればよい。また、マイコンに閾値を変更できる設定項目を設ける等、自動製氷機の設置状況に応じて変更可能に構成してもよい。
【符号の説明】
【0037】
12 製氷室(製氷部),CM 圧縮機,CD 凝縮器,FM 冷却ファン,EP 蒸発器,
HV ホットガス弁,I 氷塊,T1 製氷時間,T2 除氷時間,T1/T2 比率,
A 閾値,B 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(CM)からの冷媒を凝縮器(CD)を介して蒸発器(EP)へ供給して製氷部(12)を冷却すると共に該製氷部(12)に製氷水を供給して氷塊(I)を生成する製氷運転と、前記製氷運転で製氷部(12)に生成された氷塊(I)を離脱させる除氷運転とを繰返す自動製氷機において、
前記製氷運転に要した製氷時間(T1)および前記除氷運転に要した除氷時間(T2)の比率(T1/T2)と、予め設定された閾値(A,B)とを比較して周囲温度の高低を判定し、
前記周囲温度の判定結果に基づいた運転の制御を行うようにした
ことを特徴とする自動製氷機の運転方法。
【請求項2】
前記判定結果で周囲温度が低いと判定された場合は、製氷運転時に前記凝縮器(CD)を冷却する冷却ファン(FM)の回転数を基準値に対して低くなるよう制御する請求項1記載の自動製氷機の運転方法。
【請求項3】
前記判定結果で周囲温度が高いと判定された場合は、製氷運転時に前記冷却ファン(FM)の回転数を基準値に対して高くなるよう制御する請求項1または2記載の自動製氷機の運転方法。
【請求項4】
前記判定結果で周囲温度が低いと判定された場合は、除氷運転時に開放することで前記圧縮機(CM)からのホットガスを前記蒸発器(EP)に供給するホットガス弁(HV)を閉成する期間を除氷運転中に設けるよう該ホットガス弁(HV)の開閉制御を行う請求項1〜3の何れか一項に記載の自動製氷機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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