説明

自動販売機

【課題】缶飲料などの商品を加温または冷却して販売する自動販売機に関し、高く安定した圧縮機への吸入冷媒ガス温度で加温システムを運転でき、消費電力量が大幅に削減できると共に、加温能力および効率を低下させることなく、加温による販売商品の劣化を防止できる自動販売機を提供する。
【解決手段】少なくとも圧縮機14と、加温用凝縮器15と、前段冷却器として作用する庫外熱交換器17と、後段冷却器18と、加温用キャピラリチューブ16を備えた加温システム19を有し、庫内下部に設置された加温用凝縮器15により、庫内下部の空気を加温すると同時に、庫内上部に設置された後段冷却器18と、庫内上部の空気を熱交換させることで、加温能力および効率を低下させることなく、加温による販売商品の劣化を防止することができると共に、消費電力量を大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶飲料などの商品を加温または冷却して販売する自動販売機において、特にその加温システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護が叫ばれる中、自動販売機業界においてもトップランナー制の導入に伴い、省エネルギー化が進んでいる。
【0003】
自動販売機の省エネルギー化技術としては、特に加温による消費電力量の削減が有効であり、ヒータを使わず、加温効率がヒータの値である1以上のヒートポンプ加温システムを用いることにより、省エネルギー化を図る技術が提案されている。また、筆者らは、外気の熱を利用して加温する簡便な構成を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら従来の自動販売機の加温システムを説明する。
【0005】
図5は、特許文献1に記載された従来の自動販売機の側面から見た概略構成図である。
【0006】
図5に示すように、従来の自動販売機は、圧縮機1と、凝縮器2と、第一の膨張弁3と、第二の膨張弁4と、第一の蒸発器5と、第二の蒸発器6と、圧縮機1と凝縮器2と第一の膨張弁3と第二の膨張弁4と第一の蒸発器5と第二の蒸発器6とを環状に接続する加温システム配管とからなる加温システムを備えている。
【0007】
ここで、第一の蒸発器5と第二の蒸発器6は並列に接続されており、第一の膨張弁3と第二の膨張弁4の開閉により、冷媒が供給される。
【0008】
また、第一の蒸発器5は商品収納庫7の区画外に設置され、第二の蒸発器6は商品収納庫7の上部に設置されると共に、凝縮器2は商品収納庫7の下部に設置されている。
【0009】
さらに、商品収納庫7の高さ方向略中央に凝縮器2に連結するダクト8と、第二の蒸発器6に連結するダクト9のそれぞれの吸込み口が設けられている。
【0010】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0011】
まず、商品収納庫7に商品が投入された直後には、第二の膨張弁4を全閉し、圧縮機1より吐出された冷媒は、凝縮器2で商品収納庫7内の空気と熱交換して凝縮液化した後、第一の膨張弁3で減圧され、第一の蒸発器5へ供給される。そして、第一の蒸発器5で外気と熱交換して蒸発気化した後、圧縮機1へ帰還する。
【0012】
次に、商品収納庫7内の商品が所定の温度を上回ると、第一の膨張弁3を全閉し、圧縮機1より吐出された冷媒は、凝縮器2を経て、第二の膨張弁4で減圧され、第二の蒸発器6へ供給される。そして、第二の蒸発器6で商品収納庫7内の空気と熱交換して蒸発した後、圧縮機1へ帰還する。
【0013】
このとき、凝縮器2へは、図5の実線矢印で示したように、商品収納庫7の略中央に設けられたダクト8の吸込み口から、商品収納庫7下部の空気が循環供給される。また、第二の蒸発器6へは、図5の点線矢印で示したように、商品収納庫7の略中央に設けられたダクト9の吸込み口から、商品収納庫7上部の空気が循環供給される。
【特許文献1】特開2004−33198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図6は、従来の自動販売機の冷媒のモリエル線図であり、横軸に冷媒のエンタルピーh、縦軸に冷媒の圧力Pを示している。第一の蒸発器5を使用して加温する場合は、abcdaで示されたように冷媒は状態変化を行う。そして、このときの加温能力はbcとなる。
【0015】
一方、第二の蒸発器6を使用して加温する場合は、凝縮器2で加温された空気の一部も自然対流により、商品収納庫7上部へ流入し、第二の蒸発器6で冷却されるため、加温能力ecと冷却能力dfが相殺されることとなり、実際の加温能力はbeとなる。
【0016】
すなわち、上記従来の構成では、ヒータを用いるよりも効率よく商品を加温することができると共に、商品収納庫7内上部を冷却することで、商品が長時間加温されることにより劣化するのを防止することができるものの、加温能力が低下し、効率が悪くなるという課題を有していた。
【0017】
また、上記従来の構成では、圧縮機への吸入冷媒ガス温度が周囲温度近傍までしか上がらず、特に蒸発温度と外気温度との差が小さくなる低外気温時には、過熱度が十分に取れず、圧縮機への液戻りが発生する可能性があり、システム効率が悪化すると共に、圧縮機が故障する可能性も高くなるという課題を有していた。
【0018】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、高くかつ安定した圧縮機への吸入冷媒ガス温度で加温システムを運転でき、消費電力量が大幅に削減できると共に、加温能力および効率を低下させることなく、加温による販売商品の劣化を防止できる自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記従来の課題を解決するために、本発明の自動販売機は、前段冷却器と後段冷却器の二段に分割された冷却器を備えた加温システムを有し、凝縮器で商品収納庫内の空気を加温すると同時に、後段冷却器で商品収納庫内の空気を冷却するものである。
【0020】
これによって、前段冷却器で蒸発気化した冷媒を、後段冷却器で商品収納庫内の空気と熱交換させ、さらに温度を上げることができるので、高くかつ安定した圧縮機への吸入冷媒ガス温度で加温システムを運転できると共に、商品が長時間加温されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動販売機は、冷却器を二段に分割し、後段冷却器で商品収納庫内の空気と熱交換することで、加温能力および効率を低下させることなく、加温による販売商品の劣化を防止することができると共に、圧縮機の信頼性を確保しつつ、消費電力量を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
請求項1に記載の発明は、商品を収納するホット/コールド切替室を有する自動販売機において、少なくとも圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、前段冷却器と後段冷却器の二段に分割された冷却器を備え、前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張機構と前記冷却器とを環状に接続する加温システム配管とを備えた加温システムを有し、前記凝縮器で前記ホット/コールド切替室内の空気を加温すると同時に、前記後段冷却器で前記ホット/コールド切替室内の空気を冷却することにより、前記前段冷却器で外気温度近傍まで昇温された冷媒を、前記後段冷却器でさらに温度を上げることができるので、高くかつ安定した前記圧縮機への吸入冷媒ガス温度で加温システムを運転することができ、システム効率の低下を抑制し、消費電力量を大幅に削減することができると共に、圧縮機の信頼性を確保できる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、商品を収納する区画の外に前段冷却器を設置し、ホット/コールド切替室内上部に後段冷却器を設置すると共に、前記後段冷却器よりも下部に位置するように前記ホット/コールド切替室内に凝縮器を設置したことにより、前記後段冷却器で前記ホット/コールド切替室内上部の空気を冷却することができるので、商品が長時間加温されることにより劣化することを防止できる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、ホット/コールド切替室内の高さ方向略中央に還流風路を設けると共に、凝縮器に連結するダクトの吸込み口が前記ホット/コールド切替室内背面の高さ方向略中央に位置するように配設されたことにより、効果的に前記ホット/コールド切替室内の温度領域を区切ることができ、前記ホット/コールド切替室内下部の商品のみを加温することができるので、省エネルギー化が図れる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、加温システムが、ホット/コールド切替室を冷却する場合、圧縮機から吐出された冷媒を前段冷却器に流して凝縮させ、凝縮した冷媒を凝縮器で蒸発させた後、圧縮機に還流させるように流路を切り替える流路切替バルブを備えたことにより、前記ホット/コールド切替室を前記加温システムで冷却できると共に、凝縮器の内容積を低減することができるので、冷媒の過凝縮による冷媒不足を防止し、冷却システム効率の低下を防止することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、圧縮機を能力可変可能としたことにより、商品投入時には前記圧縮機を高能力で運転し、短時間で商品を所定温度に到達させることができると共に、安定時には前記圧縮機を低能力で運転し、省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、冷媒としてR600aを用い、ホット/コールド切替室内を加温する場合の常用の蒸発温度を−10〜10℃とすると共に、凝縮温度を60〜80℃としたことにより、前記圧縮機の吐出冷媒ガス温度の上昇を抑制しながら、効率よく加温商品を所定の温度に保温することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、加温システムとは独立して、少なくとも商品を収納する室内に設置された冷却用蒸発器と、商品を収納する区画の外に設置された凝縮器と、圧縮機と、膨張機構と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張機構と前記冷却用蒸発器とを環状に接続する冷却システム配管とを備えた冷却専用システムを有したことにより、前記加温システムとは独立して、冷却能力が最適に設計された冷却システムを用いて商品収納庫を効率良く冷却することができるので、省エネルギー化を図ることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、加温システムの前段冷却器と冷却専用システムの凝縮器とを一体に構成したことにより、前記凝縮器の廃熱を利用して、前記前段冷却器に発生する結露を抑制することができると共に、省スペース化が図れる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における自動販売機の冷媒回路図である。
【0032】
図1において、本発明の自動販売機は、第一のホット/コールド切替室11、第二のホット/コールド切替室12、コールド専用室13からなる商品収納庫を備え、圧縮機14、第一のホット/コールド切替室11内下部に設置された加温用凝縮器15、膨張機構としての加温用キャピラリチューブ16、商品収納庫の外に設置された庫外熱交換器17、第一のホット/コールド切替室11内上部に設置された後段冷却器18とからなり第一のホット/コールド切替室11の加温を行う加温システム19を有すると共に、圧縮機20、庫外熱交換器17、第一のホット/コールド切替室11内下部に設置された冷却用蒸発器21、第二のホット/コールド切替室12内下部に設置された冷却用蒸発器22、コールド専用室13内下部に設置された冷却用蒸発器23、それぞれの冷却用蒸発器21、22、23に直列に接続される膨張機構としてのキャピラリチューブ24、25、26、それぞれのキャピラリチューブ24、25、26に直列に接続される電磁弁27、28、29とからなり商品収納庫11、12、13の冷却を行う冷却専用システム30を有する。
【0033】
ここで、庫外熱交換器17は、2パスのフィンチューブ熱交換器で構成され、それぞれの冷媒配管は、加温システム19、冷却専用システム30と連結している。加温システム19と連結する冷媒配管は、前段冷却器として作用し、冷却専用システム30と連結する冷媒配管は、凝縮器として作用する。
【0034】
また、冷却用蒸発器21、22、23は、それぞれ並列に接続されている。
【0035】
さらに、第一のホット/コールド切替室11内には、庫内下部の空気を循環させる送風ファン31、庫内上部の空気を循環させる送風ファン32、第二のホット/コールド切替室12内には、庫内の空気を循環させる送風ファン33、コールド専用室13内には、庫内の空気を循環させる送風ファン34、庫外熱交換器17の傍には、外気を庫外熱交換器17に導く送風ファン35が備えられている。
【0036】
また、圧縮機14はインバータ圧縮機であり、運転回転数を変化させることにより能力可変可能となっている。
【0037】
ここで、加温システム19と冷却専用システム30には、冷媒として自然冷媒の一種である炭化水素系のR600a(イソブタン)が封入されている。
【0038】
また、第二のホット/コールド切替室12内には加温ヒータ36が備えられ、第二のホット/コールド切替室12を加温する場合には、加温ヒータ36が用いられる。
【0039】
なお、本実施の形態においては、第一のホット/コールド切替室11のみを加温システム19により加温する構成としたが、当然ながら、第二のホット/コールド切替室12も加温システム19により加温する構成としても良い。その場合、第二のホット/コールド切替室12内にも、加温システム19に接続する凝縮器、後段冷却器等が設置されることとなる。
【0040】
次に、図2は、本実施の形態における自動販売機の側面から見た概略構成図である。
【0041】
図2において、第一のホット/コールド切替室11内の高さ方向略中央には、還流風路37が設けられると共に、第一のホット/コールド切替室11内背面の高さ方向略中央には、加温用凝縮器15および冷却用蒸発器21に連結するダクト38の吸込み口が設けられている。
【0042】
ここで、還流風路37は庫内の循環空気が優先的に流れるように形成されていれば良く、例えば、本実施の形態における還流風路37は、商品が収納されるコラムの途中に設けられた図示しないダンパーによって、隣接する商品同士に隙間を設けることで形成されている。
【0043】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作、作用を説明する。
【0044】
まず、第一のホット/コールド切替室11を冷却する場合について説明する。
【0045】
第一のホット/コールド切替室11内を冷却する場合は、加温システム19は稼動させず、冷却専用システム30により冷却を行う。
【0046】
圧縮機20より吐出された冷媒は、庫外熱交換器17に流入し、送風ファン35によって導かれた外気と熱交換して凝縮液化する。その後、庫外熱交換器17から出た液冷媒は、キャピラリチューブ24によって減圧され、冷却用蒸発器21に流入する。そして、送風ファン31によって導かれたホット/コールド切替室11内の空気と熱交換して蒸発気化した後、圧縮機20に還流する。
【0047】
ここで、ホット/コールド切替室11内の空気は、図2において実線矢印で示したように、庫内下部の空気が還流風路37を経て、ダクト38を通り、冷却用蒸発器21に導かれ、冷却される。そして、その冷却された空気が庫内下部を循環し、庫内下部の商品を冷却していく。
【0048】
第二のホット/コールド切替室12、コールド専用室13をそれぞれ冷却する場合についても、同様の動作を行う。なお、それぞれの冷却用蒸発器21、22、23には、商品収納庫内の温度に応じて、電磁弁27、28、29の開閉により、選択的に冷媒が流される。
【0049】
ここで、キャピラリチューブ24、25、26はそれぞれ蒸発温度が−20〜−15℃程度となるように設計されている。
【0050】
次に、第一のホット/コールド切替室11内を加温する場合は、冷却専用システム30の電磁弁27を閉じ、冷却用蒸発器21には冷媒が流れないようにし、加温システム19を稼動する。
【0051】
圧縮機14より吐出された冷媒は、加温用凝縮器15に流入し、送風ファン31によって導かれたホット/コールド切替室11内の空気と熱交換して凝縮液化する。そして、加温用キャピラリチューブ16によって減圧され後、庫外熱交換器17に流入する。そして、送風ファン35によって導かれた外気と熱交換して蒸発気化し、外気温度近傍まで昇温される。その後、後段冷却器18に流入し、送風ファン32によって導かれたホット/コールド切替室11内の空気と熱交換してさらに温度を上げ、圧縮機14に還流する。
【0052】
ここで、加温用キャピラリチューブ16は、常用の蒸発温度が−10〜10℃、凝縮温度が60〜80℃となるように設計されている。
【0053】
次に、ホット/コールド切替室11内の空気は、図2において実線矢印で示したように、庫内下部の空気が還流風路37を経て、ダクト38を通り、加温用凝縮器15に導かれ、加温される。そして、その加温された空気が庫内下部を循環し、庫内下部の商品が加温されることとなる。
【0054】
一方、庫内上部の空気は、図2において点線矢印で示したように、還流風路37を経て、後段冷却器18に導かれ、冷却される。そして、その冷却された空気が庫内上部を循環し、庫内上部の商品が冷却されることとなり、長時間加温されることにより、商品が劣化することを防止することができる。
【0055】
図3は、本実施の形態における自動販売機の冷媒のモリエル線図であり、横軸に冷媒のエンタルピーh、縦軸に冷媒の圧力Pを示している。
【0056】
仮に、後段冷却器18を使用せずに、庫外熱交換器17で冷媒が蒸発気化した後、直接圧縮機14へ還流した場合、abcdaで示されたように冷媒は状態変化を行う。そして、このときの加温能力はbcとなる。
【0057】
一方、本実施の形態のように後段冷却器18を用いることにより、gibcdagで示されたように冷媒は状態変化を行う。すなわち、庫外熱交換器17で蒸発気化した冷媒は、後段冷却器18でさらに温度が上げられる。これにより、外気温度と蒸発温度の差が小さくなる低外気温時でも、高くかつ安定した圧縮機14への吸入冷媒ガス温度で加温システム19を運転することができる。
【0058】
しかしながら、吸入冷媒ガス温度を上げると、図3からもわかるように、圧縮機14からの吐出冷媒ガス温度は上昇するが、本実施の形態では、冷媒として効率の良いR600aを使用しているので、吐出冷媒ガス温度の上昇を比較的小さく抑制することができる。
【0059】
また、従来の自動販売機同様、加温用凝縮器15で加温された空気の一部も自然対流により、庫内上部へ流入し、後段冷却器18で冷却されるため、加温能力と冷却能力が相殺されることとなるが、吸入冷媒ガス温度を上げたことで増加した加温能力と相殺されることになるため、実際の加温能力は低下しない。すなわち、図3において、加温能力ibと冷却能力agが相殺され、実際の加温能力は、後段冷却器18を使用しない場合と同様にbcとなる。
【0060】
なお、前段冷却器としての庫外熱交換器17は冷媒を蒸発させるために用いられ、後段冷却器18は主として過熱度を大きく取るために用いられるが、庫外熱交換器17の能力が不足している場合には、後段冷却器18で冷媒を蒸発させてもよい。ただし、この場合、図3の点aが左に移動することになるため、加温能力が低下し、効率は悪化するので、庫外熱交換器17で十分に蒸発気化できるように設計することが望ましい。
【0061】
以上のように本実施の形態においては、冷却器を二段に分割し、後段冷却器18で、第一のホット/コールド切替室11内上部の空気と熱交換することにより、高くかつ安定した圧縮機14への吸入ガス温度で加温システム19を運転することができるので、システム効率の低下を抑制し、消費電力量を大幅に削減することができると共に、商品が長時間加温されることにより劣化するのを防止することができる。さらには、圧縮機の信頼性も確保できる。
【0062】
また、還流風路37により、第一のホット/コールド切替室11内の温度領域を上下に区切ることにより、効果的に庫内下部の商品のみを冷却もしくは加温することができるので、省エネルギー化が図れる。
【0063】
さらに、圧縮機14をインバータ圧縮機としたことにより、商品投入時には圧縮機14を高能力で運転し、短時間で商品を所定温度に到達させることができると共に、安定時には圧縮機14を低能力で運転し、省エネルギー化を図ることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、コールド専用室13や第二のホット/コールド切替室12の冷却時の廃熱を利用して第一のホット/コールド切替室11を加温するのではなく、加温システム19とは独立した冷却専用システム30を備えたことによって、加温システム19と冷却専用システム30をそれぞれ単独で稼動することができるので、効率よく冷却および加温を行うことができる。
【0065】
さらに、加温システム19の前段冷却器と冷却専用システム30の凝縮器を一体に構成した庫外熱交換器17を備えたことにより、冷却専用システム30の凝縮器の廃熱を利用して、加温システム19の前段冷却器で発生する結露を抑制することができると共に、省スペース化が図れる。
【0066】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における自動販売機の冷媒回路図である。
【0067】
図4において、本発明の自動販売機は、第一のホット/コールド切替室11、第二のホット/コールド切替室12、コールド専用室13からなる商品収納庫を備え、圧縮機14、第一のホット/コールド切替室11内下部に設置された庫内熱交換器41、膨張機構としての加温用キャピラリチューブ42、冷却用キャピラリチューブ43、商品収納庫の外に設置された庫外熱交換器17、第一のホット/コールド切替室11内上部に設置された後段冷却器18、冷却時と加温時に冷媒流路を切り替える四方切替弁44とからなり、第一のホット/コールド切替室11の加温と冷却を専用に行う加温システム45を有すると共に、圧縮機20、第二のホット/コールド切替室12内下部に設置された冷却用蒸発器22、コールド専用室13内下部に設置された冷却用蒸発器23、冷却用蒸発器22、23のそれぞれに直列に接続される膨張機構としてのキャピラリチューブ25、26、冷媒を流す冷却用蒸発器を切り替える三方切替弁46とからなり、第二のホット/コールド切替室12とコールド専用室13を専用に冷却する冷却専用システム47を有する。
【0068】
ここで、庫外熱交換器17は、2パスのフィンチューブ熱交換器で構成され、それぞれの冷媒配管は、加温システム45、冷却専用システム47と連結している。加温システム45と連結する冷媒配管は、加温時は前段冷却器として、冷却時は凝縮器として作用し、冷却専用システム30と連結する冷媒配管は、凝縮器として作用する。
【0069】
また、庫内熱交換器41と庫外熱交換器17は2本の並列する配管で結ばれており、一方は加温用キャピラリチューブ42と加温用逆止弁48が直列に接続され、他方は冷却用キャピラリチューブ43と冷却用逆止弁49が直列に接続されている。
【0070】
ここで、加温用逆止弁48は加温用キャピラリチューブ42から庫外熱交換器17に冷媒が流れる方向を正方向とし、加温用キャピラリチューブ42から庫外熱交換器17へ向かう逆方向には流れないように設置される。また、冷却用逆止弁49は庫外熱交換器17から冷却用キャピラリチューブ43へ冷媒が流れる方向を正方向とし、冷却用キャピラリチューブ43から庫外熱交換器17へ向かう逆方向には流れないように設置される。
【0071】
さらに、庫外熱交換器17と後段冷却器18は、四方切替弁44に対して並列に接続されると共に、後段冷却器18に繋がる冷媒配管には電磁弁50、四方切替弁44から庫外熱交換器17および後段冷却器18に分岐する途中には加温用逆止弁51が設けられている。
【0072】
また、冷却用蒸発器22、23はそれぞれ並列に接続されている。
【0073】
さらに、第一のホット/コールド切替室11内には、庫内下部の空気を循環させる送風ファン31、庫内上部の空気を循環させる送風ファン32、第二のホット/コールド切替室12内には、庫内の空気を循環させる送風ファン33、コールド専用室13内には、庫内の空気を循環させる送風ファン34、庫外熱交換器17の傍には、外気を庫外熱交換器17に送る送風ファン35が備えられている。
【0074】
また、圧縮機14はインバータ圧縮機であり、運転回転数を変化させることにより能力可変可能となっている。
【0075】
ここで、加温システム45と冷却専用システム47には、冷媒として自然冷媒の一種である炭化水素系のR600a(イソブタン)が封入されている。
【0076】
また、第二のホット/コールド切替室12内には加温ヒータ36が備えられ、第二のホット/コールド切替室12を加温する場合には、加温ヒータ36が用いられる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、第一のホット/コールド切替室11のみを加温システム45により加温する構成としたが、当然ながら、第二のホット/コールド切替室12も加温システム45により加温する構成としても良い。その場合、第二のホット/コールド切替室12内にも、加温システム45に接続する庫内熱交換器、後段冷却器等が設置されることとなる。
【0078】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作、作用を説明する。
【0079】
なお、第二のホット/コールド切替室12およびコールド専用室13を冷却する場合の動作、作用は実施の形態1と同様なので省略する。なお、実施の形態1において、冷媒を流す冷却用蒸発器を切り替えるのに電磁弁を使用したが、本実施の形態においては、消費電力量を小さくできることから三方切替弁46を使用した。
【0080】
まず、第一のホット/コールド切替室11を加温する場合は、圧縮機14から吐出された冷媒は四方切替弁44で流路を切り替えられ、庫内熱交換器41へ流入し、送風ファン31によって導かれた庫内下部の空気と熱交換して凝縮液化する。そして、庫内熱交換器41から出た液冷媒は、加温用キャピラリチューブ42によって減圧される。ここで、加温用キャピラリチューブ42は常用の蒸発温度が−10〜10℃、凝縮温度が60〜80℃となるように設計されている。そして、減圧された冷媒は、庫外熱交換器17に流入し、送風ファン35によって導かれた外気と熱交換して蒸発気化して、外気温度近傍まで昇温される。その後、開放された電磁弁50を通過し、後段冷却器18に流入する。後段冷却器18では、送風ファン32によって導かれた庫内上部の空気と熱交換し、さらに温度が上昇した状態で圧縮機14へ還流する。
【0081】
なお、庫外熱交換器17から四方切替弁44を経て圧縮機14へ還流する流路には、加温用逆止弁51が設けられ、庫外熱交換器17から圧縮機14へは冷媒が流れないようになっている。
【0082】
次に、第一のホット/コールド切替室11を冷却する場合は、圧縮機14から吐出された冷媒は四方切替弁44で流路を切り替えられ、加温用逆止弁51を正方向に流れ、庫外熱交換器17に流入する。なお、電磁弁50は閉じられ、後段冷却器18には冷媒が流れないようになっている。庫外熱交換器17に流入した冷媒は、送風ファン35によって導かれた外気と熱交換して凝縮液化した後、冷却用キャピラリチューブ43により減圧される。ここで、冷却用キャピラリチューブ43は常用の蒸発温度が−20〜−15℃となるように設計されている。そして、減圧された冷媒は、庫内熱交換器41に流入し、送風ファン31によって導かれた庫内下部の空気と熱交換して蒸発気化した後、四方切替弁44を経て圧縮機14へ還流する。
【0083】
以上のように本実施の形態においては、加温システム45により第一のホット/コールド切替室11の冷却および加温が行えるようにしたことで、冷却専用システム47の圧縮機20をランクダウンできると共に、第一のホット/コールド切替室11とは独立して、第二のホット/コールド切替室12とコールド専用室13を効率よく冷却することできる。
【0084】
さらに、第一のホット/コールド切替室11を冷却する場合に、後段冷却器18を冷媒が通過しない構成としたことにより、凝縮器としての内容積が低減され、冷媒の過凝縮による冷媒不足を防止、冷却時のシステム効率が低下することを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかる自動販売機は、後段冷却器で加温時の商品収納庫内の空気と熱交換することで、高くかつ安定した圧縮機への吸入冷媒ガス温度でシステムを運転することができるので、庫外に蒸発器を持つヒートポンプ機器ならあらゆる機器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施の形態1における自動販売機の冷媒回路図
【図2】同実施の形態における自動販売機の側面から見た概略構成図
【図3】同実施の形態における自動販売機の冷媒のモリエル線図
【図4】本発明の実施の形態2における自動販売機の冷媒回路図
【図5】従来の自動販売機の側面から見た概略構成図
【図6】従来の自動販売機の冷媒のモリエル線図
【符号の説明】
【0087】
11 第一のホット/コールド切替室
12 第二のホット/コールド切替室
13 コールド専用室
14 圧縮機
15 加温用凝縮器
16 加温用キャピラリチューブ
17 庫外熱交換器
18 後段冷却器
19 加温システム
20 圧縮機
21、22、23 冷却用蒸発器
24、25、26 キャピラリチューブ
30 冷却専用システム
37 還流風路
38 ダクト
42 加温用キャピラリチューブ
43 冷却用キャピラリチューブ
44 四方切替弁
45 加温システム
47 冷却専用システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を収納するホット/コールド切替室を有する自動販売機において、少なくとも圧縮機と、凝縮器と、膨張機構と、前段冷却器と後段冷却器の二段に分割された冷却器を備え、前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張機構と前記冷却器とを環状に接続する加温システム配管とを備えた加温システムを有し、前記凝縮器で前記ホット/コールド切替室内の空気を加温すると同時に、前記後段冷却器で前記ホット/コールド切替室内の空気を冷却する自動販売機。
【請求項2】
商品を収納する区画の外に前段冷却器を設置し、ホット/コールド切替室内上部に後段冷却器を設置すると共に、前記後段冷却器よりも下部に位置するように前記ホット/コールド切替室内に凝縮器を設置した請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
ホット/コールド切替室内の高さ方向略中央に還流風路を設けると共に、凝縮器に連結するダクトの吸込み口が前記ホット/コールド切替室内背面の高さ方向略中央に位置するように配設された請求項1または2に記載の自動販売機。
【請求項4】
ホット/コールド切替室を冷却する場合、圧縮機から吐出された冷媒を前段冷却器に流して凝縮させ、凝縮した冷媒を凝縮器で蒸発させた後、圧縮機に還流させるように流路を切り替える流路切替バルブを備えた加温システムを有した請求項1から3のいずれか一項に記載の自動販売機。
【請求項5】
能力可変可能な圧縮機を用いた請求項1から4のいずれか一項に記載の自動販売機。
【請求項6】
冷媒としてR600aを用い、ホット/コールド切替室内を加温する場合の常用の蒸発温度を−10〜10℃とすると共に、凝縮温度を60〜80℃とした請求項1から5のいずれか一項に記載の自動販売機。
【請求項7】
加温システムとは独立して、少なくとも商品を収納する室内に設置された冷却用蒸発器と、商品を収納する区画の外に設置された凝縮器と、圧縮機と、膨張機構と、前記圧縮機と前記凝縮器と前記膨張機構と前記蒸発器とを環状に接続する冷却システム配管とを備えた冷却専用システムを有した請求項1から6のいずれか一項に記載の自動販売機。
【請求項8】
加温システムの前段冷却器と冷却専用システムの凝縮器とを一体に構成した請求項7に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−40656(P2008−40656A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−212025(P2006−212025)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】