説明

自動販売機

【課題】電磁弁よりの異音を抑制し、低コストで信頼性の高い圧縮機の運転ができる自動販売機を提供する。
【解決手段】圧縮機と、庫外に設け凝縮器電磁弁を介した凝縮器と、膨張手段と、冷媒の分配器と、該分配器より冷却器入口電磁弁と逆止弁を介した複数の庫内熱交換器と、冷媒の合流器と、にて冷却循環回路を構成するとともに、圧縮機と庫内熱交換器入口側との間を加熱器電磁弁を介して配管接続し、かつ、庫内熱交換器出口側と分配器との間を第2膨張手段を介して接続することにより、前記庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う加熱冷却循環回路を構成し、ヒートポンプ運転を行う時は、当該庫内熱交換器に接続している加熱器電磁弁を開成するとともに、当該庫内熱交換器に接続している冷却器入口電磁弁も開成して運転することにより異音を抑制させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶、ビン、パック、ペットボトル等の容器に入れた飲料等の商品を冷媒回路にて冷却または加熱して販売に供する自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の地球温暖化に対して二酸化炭素の排出量削減が課題となっており、自動販売機も省エネ型が開発されている。その1方式として従来は排熱していた凝縮器の熱を庫内の加熱に利用するヒートポンプ方式の自動販売機が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された自動販売機は、図7にて示すように、冷媒を圧縮する圧縮機11zと、庫外に設け冷媒を凝縮する凝縮器12zと、凝縮器12zへの冷媒の通路を開閉する電磁弁19zと、凝縮器12zより冷媒を分配する分配部64zを介して二方に分岐し、電磁弁15Az,15Bzを介して冷媒を膨張させるキャピラリチューブ(膨張手段)16Az,16Bzと、冷媒を蒸発させる熱交換器(庫内熱交換器)8Az、8Bzと、熱交換器8Azより電磁弁20zを介する配管と熱交換器8Bzからの出口配管が合流部67zで合流して圧縮機11zに戻る冷却循環回路を構成している。さらに、圧縮機11zと熱交換器8Azとを電磁弁17azを介して接続するホットガスバイパス管路(配管)と、熱交換器8Azと凝縮器12zとを電磁弁18zを介して接続する配管とにより、熱交換器8Azを凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う加熱冷却循環回路が構成されている。
【0004】
また、電磁弁15Az,15Bzは,図8で示されるような通常低コスト型の直動型電磁弁80が使用される。直動型電磁弁80は、同図で示すように電磁弁本体81の内部に円筒形状のシリンダ81aを有し、シリンダ81aの側部端面側に入口部81b、下面に出口部81cが連結しており、出口部81cの上面周縁部には円錐台形状に弁座81dが形成されている。シリンダ81a内部には、弁座81dと当接する球状の弁体82、弁体82と持着して重力およびバネ84で弁体82を付勢するスプール83が挿入されている。スプール83には、鉄製のアーマチャー85が連結され、アーマチャー85の上部周縁側にソレノイド86が取設されている。
【0005】
ソレノイド86が無通電状態のときは、図8(a)で示すようにバネ84とスプール83の重力にて弁体82を弁座81dに当接させることにより、入口部81bと出口部81cの連通を封止している。ソレノイド86が通電状態のときは、図8(b)で示すようにアーマチャー85がソレノイド86の磁力により上方へ吸引移動されるので、弁体82と弁座81dの間に隙間が形成され、入口部81bと出口部81cが連通され、冷媒が通過可能となる。
【0006】
かかる構成で、図7にて熱交換器8Azを凝縮器として作用させ、熱交換器8Bzを蒸発器として作用させてヒートポンプ運転を行うには、電磁弁15Bz、17az、18zを開成(ON)し、電磁弁15Az、19z、20zを閉止(OFF)する。このときの冷媒は図中の太線で示すように回路内を流れ、圧縮機11zで圧縮されて高温高圧の冷媒となり、電磁弁17azを介して庫内熱交換器8Azにて凝縮し、庫内を加熱する。そして、庫内熱交換器8Azにて凝縮した冷媒は、電磁弁18zを介して凝縮器12zでさらに凝縮し、分岐点64z、電磁弁15Bzを経由して膨張手段16Bzにて膨張して低温低圧の冷媒となり、庫内熱交換器8Bzにて蒸発し、庫内を冷却する。庫内熱交換器8Bzにて蒸発した冷媒は、合流部67zを介して圧縮機11zへ戻る。
【0007】
【特許文献1】特開平5−233941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この種の自動販売機は、庫内の熱交換器一個につき一個のキャピラリチューブを必要とするので、コストアップとなる。そこで、図9に示すようにキャピラリチューブ16Az、16Bzの代わりに凝縮器12zと分岐点64zとの間にキャピラリチューブ16Czを接続することにより、一個のキャピラリチューブで兼用することが可能である。
【0009】
かかる構成にて、熱交換器8Azを凝縮器として作用させ、熱交換器8Bzを蒸発器として作用させてヒートポンプ運転を行うには、電磁弁15Bz、17az、18zを開成(ON)し、電磁弁15Az、19z、20zを閉止(OFF)する。このときの冷媒は、図中の太線で示すように回路内を流れ、圧縮機11zで圧縮されて高温高圧の冷媒となり、電磁弁17azを介して熱交換器8Azにて凝縮し、庫内を加熱する。そして、熱交換器8Azにて凝縮した冷媒は、電磁弁18zを介して凝縮器12zでさらに凝縮され、キャピラリチューブ16Czにて膨張して低温低圧の冷媒となり、分岐点64z、電磁弁15Bzを経由して熱交換器8Bzにて蒸発し、庫内を冷却する。熱交換器8Bzにて蒸発した冷媒は、合流部67zを介して圧縮機11zへ戻る。
【0010】
しかしながら、ヒートポンプ運転中には図9に示すように庫内熱交換器8Azの入口側配管の圧力をP、分岐部64zの圧力をPとすると、閉止をしている電磁弁15Azの出口側には高圧のPが印加され、入口側には低圧のPが印加される。この逆圧により図8(b)と同じ態様で弁体82が押し上げられ、弁座81dとの間に隙間が形成される。隙間が形成されると出口側と入口側が連通をして同圧となるため、再び弁体82が弁座81と当接をして通路を閉鎖する。すると、再び、逆圧が形成されるので弁体82を押し上げ、押し戻すという振動が繰りかえされる。この現象は、ヒートポンプ運転中継続し、弁体82が弁座81に衝突する際の耳障りな音(以下、異音という)を発生し続けるという虞があった。これを防ぐために逆圧に強い大型の電磁弁を使用することが考えられるが、それではコストが上昇をする。また、電磁弁の出口側と入口側に微細管のバイパス管を接続して、逆圧を抑制することも考えられるが、意図しない冷媒の流れができるため、エネルギーロス(消費電力の増大)という課題が発生する。
【0011】
また、電磁弁15Azと分岐部64zとの間に逆止弁を接続して、逆圧を抑制することも考えられるが、逆止弁には若干の冷媒の漏れが生じ、漏れの発生時には、電磁弁15Azに逆圧が印加されるので、頻度は低減するものの異音は発生を続ける。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みて、上記の課題を解決して、電磁弁よりの異音を抑制し、低コストで信頼性の高い圧縮機の運転ができる自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る自動販売機は、冷却加熱兼用の商品収納庫を有し、冷却加熱の運転モードにより選択的に商品収納庫を冷却もしくは加熱する自動販売機であって、冷媒を圧縮する圧縮機と、庫外に設け凝縮器電磁弁を介して冷媒を凝縮する凝縮器と、冷媒を膨張させる膨張手段と、膨張手段より膨張した冷媒を分配する分配器と、庫内に設け前記分配器より冷却器入口電磁弁と逆止弁を介して冷媒を蒸発する複数の庫内熱交換器と、蒸発した冷媒を冷却器出口電磁弁を介して合流する合流器と、にて冷却循環回路を構成するとともに、前記冷却循環回路に、前記圧縮機と前記庫内熱交換器入口側との間を加熱器電磁弁を介して配管接続し、かつ、前記庫内熱交換器出口側と前記分配器との間を第2膨張手段を介して配管接続することにより、前記庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う加熱冷却循環回路を構成し、前記圧縮機、前記凝縮器電磁弁、前記冷却器入口電磁弁、前記冷却器出口電磁弁、前記加熱器電磁弁を制御する制御装置を有する自動販売機において、前記制御装置は、前記庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う時は、当該庫内熱交換器に接続している加熱器電磁弁を開成するとともに、当該庫内熱交換器に接続している冷却器入口電磁弁も開成して運転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1の自動販売機は、庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う時は、当該庫内熱交換器に接続している加熱器電磁弁を開成するとともに、当該庫内熱交換器に接続している冷却器入口電磁弁も開成して運転することにより、冷却器入口電磁弁に発生する逆圧を激減させて、電磁弁からの異音の発生を低コストで抑制することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る自動販売機の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
まず、本発明の実施例に係る自動販売機について説明する。なお、図1は本発明の実施例に係る自動販売機を示す斜視図、図2は図1に示した自動販売機の断面図であり、図3は冷媒回路図である。図4は制御装置のブロック図を示し、図5は3室を全て冷却する冷却運転における冷媒の流れを示す回路図であり、図6は1室を冷却し、2室を加熱するヒートポンプ運転における冷媒の流れを示す回路図である。
【0017】
これら図において、自動販売機は、前面が開口した直方状の断熱体として形成された本体キャビネット10と、その前面に設けられた外扉20および内扉30と、本体キャビネット10の内部を上下2段に底板11にて区画形成し、上部を例えば2つの断熱仕切板40wによって仕切られた3つの独立した商品収納庫40a、40b、40cと、下部に商品収納庫40a、40b、40cを冷却もしくは加熱する冷却/加熱ユニット60を収納する機械室50と、外扉20の内側に配設され、商品収納庫40a、40b、40c内の温度センサTa、Tb、Tcにより自動販売機の冷却、加熱運転などを制御する制御手段90と、を有して構成されている。
【0018】
より詳細に説明すると、外扉20は、本体キャビネット10の前面開口を開閉するためのものであり、図には明示していないが、この外扉20の前面には、販売する商品の見本を展示する商品展示室、販売する商品を選択するための選択ボタン、貨幣を投入するための貨幣投入口、払い出された商品を取り出すための商品取出口21等々、商品の販売に必要となる構成が配置してある。
【0019】
内扉30は、商品収納庫40a、40b、40cの前面を開閉し、内部の商品を保温するものであり、上下2段に分割され内部に断熱体を有する箱型形状の構造体である。上側の内扉30aは、一端を外扉20に枢軸し、他端を外扉20に係着して、外扉20の開放と同時に上側の内扉30aを開放させて、商品の補充を容易にするものである。下側の内扉30bは、一端を本体キャビネット10に枢軸し、他端を本体キャビネット10に不図示の掛金にて掛着して、外扉20を開放したときには、閉止した状態であり、商品収納庫40a、40b、40c内の冷気もしくは暖気が流出することを防ぎ、メンテナンス時など必要に応じて開放できるものである。
【0020】
商品収納庫40a、40b、40cは、缶入り飲料やペットボトル入り飲料等の商品を所望の温度に維持した状態で収容するためのものであり、その収納庫の容量は商品収納庫40a、40c、40bの順番に大きな態様で配分されている。本実施例は、商品収納庫40aを冷却専用とし、商品収納庫40b、40cを冷却加熱兼用としている。その商品収納庫40a、40b、40cには、それぞれ、商品を上下方向に沿って並ぶ態様で収納し、販売信号により1個ずつ商品を排出するための商品搬出機構を備えた商品収納ラックR、排出された商品Sを内扉30bに取設された搬出扉31を介して外扉の販売口21へ搬出する商品搬出シュート42を有している。
【0021】
冷却/加熱ユニット60は、機械室50内に圧縮機61、凝縮器62、膨張器(膨張手段)63、第2の膨張器79、アキュムレータ69、補助熱交換器76を取設し、底板11を跨いで庫内に庫内熱交換器65a、65b、65cを有して各機器を冷媒配管で接続されることにより構成されている。冷却/加熱ユニット60は、冷却加熱の運転モードに応じて、庫内に冷風または温風を循環させて商品収納ラックR内の商品Sを冷却または加熱するものである。
【0022】
冷却加熱用の圧縮機61は、冷媒を圧縮して回路内を循環させるためのもので、冷却運転時には、蒸発温度が約−10℃、凝縮温度が約40℃で使用され、加熱運転時には、蒸発温度が約−10℃、凝縮温度が約70℃で使用される。
【0023】
凝縮器62は、フィンチューブ型の熱交換器であり、冷却運転時に不要な凝縮熱を排出するためのものである。凝縮器62の後部にはファン62fが取設され、ファン62fは機械室50の前面開口部より空気を吸入し、凝縮器62による凝縮熱を吸入するとともに、圧縮機61の排熱を吸収して、機械室50の背面開口部へ排気するためのものである。
【0024】
膨張器63は、冷却運転時に通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものであり、たとえばキャピラリ、温度膨張弁、電子膨張弁である。
【0025】
分流器64は、膨張器63で断熱膨張させられた冷媒を庫内熱交換器65a、65b、65cに分配するためのものである。
【0026】
庫内熱交換器65a、65b、65cは、商品収納庫40aを冷却するためのものであり、庫内熱交換器65b、65cは、商品収納庫40b、40cを加熱する庫内熱交換器を兼用している。また、庫内熱交換器65a、65b、65cは、各商品収納庫の下部に取設され、風胴67で囲繞され、その後方にファン65fが取設され、その後方にダクト67dが取設されている。商品収納庫内の冷却と加熱は、庫内熱交換器65a、65b、65cにより冷却もしくは加熱された空気を商品収納庫内の商品Sに送風し、図2中の矢印で示すようにダクト67dより循環回収することで行われる。
【0027】
アキュムレータ69は、庫内熱交換器65a、65b、65cから蒸発された冷媒を流入し、気液分離させて液冷媒を貯留し、気体冷媒を圧縮機61に戻すための密閉した容器である。また、アキュムレータ69は、回路の冷媒循環に余った冷媒を貯留するための容器でもある。
【0028】
補助熱交換器76は、フィンチューブ型の熱交換器であり、加熱運転時に不要な凝縮熱を排出するためのものである。
【0029】
膨張器79は、加熱運転時に通過する冷媒を減圧して断熱膨張させるものであり、たとえばキャピラリ、温度膨張弁、電子膨張弁である。
【0030】
ヒータ66b、66cは庫内熱交換器65b、65cの前方に取設され、商品収納庫40b、40cの加熱の補助を行うものである。
【0031】
庫内温センサTa、Tb、Tcは、商品収納庫40a、40b、40c内の風胴67の上面に取設され、商品収納庫40a、40b、40cの庫内温度を検知するためのものである。
【0032】
凝縮器電磁弁68は、圧縮機61と凝縮器62間の冷媒通路を開閉するものであり、加熱器電磁弁68b、68cは、圧縮機61と庫内熱交換器65b、65c間の圧縮された冷媒の通路を開閉するものである。冷却器入口電磁弁70a,70b,70cは分流器64と庫内熱交換器65a、65b、65c間の膨張された冷媒の通路を開閉するものであり、冷却器出口電磁弁72b,72cは、庫内熱交換器65b、65cと圧縮機61と間の蒸発された冷媒の通路を開閉するものである。これらの電磁弁は、すべて図8に示されるような直動型電磁弁の構造である。
【0033】
冷却/加熱ユニット60の冷媒回路構成について図3を用いて詳述する。冷媒回路構成は、庫内を冷却のみを行う冷却循環回路60Aと庫内の冷却加熱を同時に行う(ヒートポンプ運転を行う)加熱冷却循環回路60Bを有している。なお、図中の点線の囲いは、商品収納庫40a、40b、40cを模式的に示している。
【0034】
冷却循環回路60Aは、圧縮機61、凝縮器電磁弁68、凝縮器62、膨張器63を経由して、分流器64に接続し、分流器64より冷却器入口電磁弁70a、70b、70cと逆止弁71b、71cを経由して(冷却器入口電磁弁70aの出口側には逆止弁71はない)庫内熱交換器65a、65b、65cに接続され、庫内熱交換器65aからの配管と、庫内熱交換器65b、65cからの冷却器出口電磁弁72b、72cを介した配管とを集合器67にて集合した後アキュムレータ69を経由して圧縮機61に戻る回路である。
【0035】
一方、加熱冷却循環回路60Bには、冷却循環回路60Aに加えて、圧縮機61より凝縮器電磁弁68と並列接続され加熱器電磁弁68b、68cに接続する加熱弁入口配管168b、168cと、加熱器電磁弁68b、68cより逆止弁71b,71cと庫内熱交換器65b、65c入口側との間をそれぞれ結合させる加熱弁出口配管165b、165cと、庫内熱交換器65b、65c出口側と逆止弁71,71を介して結合し補助熱交換器76と接続する配管と、補助熱交換器76より膨張器79を経由して分配器64へ接続する配管とが設けられている。
【0036】
しかして、加熱冷却循環回路60Bは、圧縮機61から加熱器電磁弁68b、68cを介し庫内熱交換器65c、65bに接続され、庫内熱交換器65c、65bから逆止弁71,71を介して補助熱交換器76、膨張器79を経由して分配器64に接続され、分流器64から冷却器入口電磁弁70aを介して庫内熱交換器65aに接続され、集合器67、アキュムレータ69を経由して圧縮機61に戻る回路である。
【0037】
冷媒は、臨界圧力内で使用する冷媒、例えばフロン冷媒でR134aを使用している。また、臨界圧力外で使用する冷媒、例えば二酸化炭素冷媒でもよい。
【0038】
制御手段90は、商品収納庫40a、40b、40cを冷却加熱の運転モードにより冷却もしくは加熱の制御をするものである。図4に示すように内部にCPU、メモリを有し、運転モード設定SW91の設定により決まる冷却加熱の運転モードに応じて冷媒回路の電磁弁開閉などの制御を行う。運転モードは、商品収納庫40a、40b、40cの冷却もしくは加熱の運転をC、Hで示すものであり、商品収納庫の左側から(40a、40b、40c)順に、例えば、すべてが冷却の場合にはCCCモード、左の商品収納庫のみが加熱の場合にはHCCモードなどと記す。また、制御手段90は、庫内温センサTa、Tb、Tcにより検知した温度により、圧縮機61、凝縮器電磁弁68、冷却器入口電磁弁70a、70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72c、加熱器電磁弁68b、68cなどを制御し、庫内を一定温度範囲内でON・OFF制御するサーモサイクル運転により庫内温度を適温に維持する。
【0039】
かかる構成で運転モード設定SW91の操作により運転モードをCCCモードに設定すると、制御手段90は凝縮器電磁弁68、冷却器入口電磁弁70a、70b、70c、冷却器出口電磁弁72b、72cを開成し、加熱器電磁弁68b、68cを閉止する。図5の太線で示すように圧縮機61で圧縮された高温冷媒は、凝縮器62にて凝縮され液体となり、膨張器63で膨張して低温の気液二相流となり、分流器64で三方に分流された後庫内熱交換器65a、65b、65cに流入する。流入した冷媒は、庫内熱交換器65a、65b、65cで蒸発し、商品収納庫40a、40b、40cを冷却し、蒸発した冷媒は集合器67で集合して液冷媒を貯留するアキュムレータ69を介して気液分離させて圧縮機61に戻る。なお、この冷却は、制御装置90にて庫内温度センサTa、Tb、Tcによるサーモサイクル運転により庫内温度が適温に制御される。
【0040】
次に、運転モード設定SW91の操作により運転モードを左側の1室を冷却し、中、右側の2室を加熱するCHHモードに設定すると、制御手段90は、加熱器電磁弁68b、68c、冷却器入口電磁弁70a、70b、70cを開成し、凝縮器電磁弁68、冷却器出口電磁弁72b、72cを閉止する。図6の太線で示すように圧縮機61で圧縮された高温冷媒は、加熱弁入口配管168b,168c、加熱器電磁弁68b、68c、加熱弁出口配管165b,165cを経由して庫内熱交換器65b、65cに流入する。庫内熱交換器65b、65cに流入した冷媒は凝縮し、商品収納庫40b、40cを加熱し、逆止弁71,71を介して集合し、補助熱交換器76でさらに凝縮して膨張器79に流入する。膨張器79に流入した冷媒は、膨張して低温低圧の気液二相流となり分流器64、冷却器入口電磁弁70aを経由して庫内熱交換器65aに流入する。庫内熱交換器65aに流入した冷媒は、庫内熱交換器65aで蒸発して商品収納庫40aを冷却し、集合器67、アキュムレータ69を経由して圧縮機61に戻る。このヒートポンプ運転も前述のようにサーモサイクル運転で庫内が適温に維持される。
【0041】
しかして、図6に示すように、圧縮機61で圧縮した冷媒が流れる庫内熱交換器65b、65cの入口側の高圧圧力をP、Pとし、膨張器79で膨張した冷媒が流れる分流器64の出口の低圧圧力をP、Pとすると、庫内熱交換器65b、65cの入口側と分流器64の出口側との間にP−P、P−Pの圧力差が発生するので、冷媒は、逆止弁71b、71c、冷却器入口電磁弁70b、70cに流れようとする。この冷媒の流れは、逆止弁71b、71cで阻止されるものの、一部が漏れ冷媒となるが、冷却器入口電磁弁70b、70cが開成しているので、冷却器入口電磁弁70b、70cの出入口間の逆圧は激減し、極めて遅い流れとなる。この漏れ流量は全体の冷媒循環量と比較して極めて少量であるため、冷却加熱性能には、事実上影響を与えることはない。しかも、冷却器入口電磁弁70b、70cが開成しているので、電磁弁の弁体82は常に弁座81dと離間して固定している結果、振動をして異音を発生することがない。
【0042】
このように、庫内熱交換器65b、65cを凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う時は、当該庫内熱交換器65b、65cに接続している加熱器電磁弁68b、68cを開成するとともに、当該庫内熱交換器65b、65cに接続している冷却器入口電磁弁71b、71cも開成して運転することにより、冷却器入口電磁弁71b、71cに発生する逆圧を激減させ、冷却器入口電磁弁71b、71cからの異音の発生を抑制することが出来る。しかも、小型の直動型電磁弁で冷媒回路を構成できるので、低コストで信頼性の高い圧縮機の運転ができる。
【0043】
なお、上述の説明は、冷却加熱の運転モードをCHHモードで説明をしたが、加熱を1室の商品収納庫で行うCCHモード、CHCモードでも同様な効果が得られる。また、上述の説明は、2室の商品収納庫を冷却加熱兼用とした自動販売機で説明をしたが、1室のみの商品収納庫を冷却加熱兼用とした自動販売機でも同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る自動販売機は、缶、ビン、パック、ペットボトル等の容器に入れた飲料等の商品を冷媒回路にて冷却または加熱するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例に係る自動販売機を示す斜視図である。
【図2】図1に示した自動販売機の断面図である。
【図3】本発明の実施例に係る冷媒回路図である。
【図4】制御装置のブロック図である。
【図5】3室を全て冷却する冷却単独運転における冷媒の流れを示す回路図である。
【図6】1室を冷却し、2室を加熱するヒートポンプ運転における冷媒の流れを示す回路図である。
【図7】従来例に係る冷媒回路図である。
【図8】直動型電磁弁の構成図を示し、(a)はソレノイドの無通電時、(b)はソレノイドの通電時の状態である。
【図9】従来例に係る別の冷媒回路図である。
【符号の説明】
【0046】
10 本体キャビネット
20 外扉
30 内扉
40a、40b、40c 商品収納庫
60 冷却/加熱ユニット
61 圧縮機
62 凝縮器
63、79 膨張器
64 分流器
65a、65b、65c 庫内熱交換器
68 凝縮器電磁弁
68a、68b 加熱器電磁弁
70a、70b、70c 冷却器入口電磁弁
72b、72c 冷却器出口電磁弁
80 直動型電磁弁
81a 弁座
82 弁体
83 スプール
84 バネ
90 制御装置
91 運転モード選択SW
165b、165c 加熱弁出口配管
168b、168c 加熱弁入口配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却加熱兼用の商品収納庫を有し、冷却加熱の運転モードにより選択的に商品収納庫を冷却もしくは加熱する自動販売機であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、庫外に設け凝縮器電磁弁を介して冷媒を凝縮する凝縮器と、冷媒を膨張させる膨張手段と、膨張手段より膨張した冷媒を分配する分配器と、庫内に設け前記分配器より冷却器入口電磁弁と逆止弁を介して冷媒を蒸発する複数の庫内熱交換器と、蒸発した冷媒を冷却器出口電磁弁を介して合流する合流器と、にて冷却循環回路を構成するとともに、
前記冷却循環回路に、前記圧縮機と前記庫内熱交換器入口側との間を加熱器電磁弁を介して配管接続し、かつ、前記庫内熱交換器出口側と前記分配器との間を第2膨張手段を介して配管接続することにより、前記庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う加熱冷却循環回路を構成し、
前記圧縮機、前記凝縮器電磁弁、前記冷却器入口電磁弁、前記冷却器出口電磁弁、前記加熱器電磁弁を制御する制御装置を有する自動販売機において、
前記制御装置は、前記庫内熱交換器を凝縮器として作用させてヒートポンプ運転を行う時は、当該庫内熱交換器に接続している加熱器電磁弁を開成するとともに、当該庫内熱交換器に接続している冷却器入口電磁弁も開成して運転することを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−165143(P2010−165143A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6342(P2009−6342)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】