説明

自動販売機

【課題】独立した冷却システムと冷却加温システムを備えた自動販売機で、冷却システムの庫内冷却効率と冷却加温システムの庫内加温効率を向上させるように機械室内の機能部品を配置した自動販売機を提供する。
【解決手段】機械室52内に庫内を冷却および加温する冷却加温サイクルに接続された第1圧縮機53と第1熱交換器54と冷媒の流路を切替える流路切替弁55と、庫内を冷却する冷却サイクルに接続された第2圧縮機56と凝縮器57を備え、機械室52内の前方に第1熱交換器54と凝縮器57を隣接配置し、機械室52内の後方に第1圧縮機53と第2圧縮機56を横並びに配置し、前記機械室52の前方に前記流路切替弁55を横並びにして配置し、そのソレノイド部66を一体に配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は缶・びん入り飲料商品などの商品を冷却もしくは加温して販売する自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動販売機は省エネを目的に冷却加温するシステムが提案されている。(特許文献1参照)
図5は、特許文献1に記載された従来の自動販売機の冷媒回路図を示すものである。図に示すように、自動販売機の庫内は3つに分割され、冷却専用庫(以下左室という)、冷却加温庫B(以下中室という)、冷却加温庫C(以下右室という)にそれぞれ対応して、後に詳述する利用側ユニット1A(特定利用側ユニット)、利用側ユニット1B及び利用側ユニット1Cが設けられ、各ユニットにはそれぞれ送風機が設けられている。自動販売機の庫外側には、熱源側ユニット2及び送風機20が設けられている。そして、これら熱源側ユニット2、利用側ユニット1A〜1Cにて自動販売機の冷却加温装置が構成される。
【0003】
次に、冷媒回路について説明する。前記熱源側ユニット2は、圧縮機18と熱源側熱交換器19と気液分離器21などから構成されると共に、前記利用側ユニット1A、1B及び1Cは、前記利用側熱交換器12A、12B及び12Cを有している。そして、熱源側熱交換器19を圧縮機18の冷媒吐出管3と冷媒吸込管4とに切換弁5A、5Bを分岐接続する一方、熱源側ユニット2と利用側ユニット1A、1B、1Cとを接続するユニット間配管6を冷媒吐出管3と分岐接続された高圧ガス管7と、冷媒吸込管4と分岐接続された低圧ガス管8と、液管9とで構成している。
【0004】
そして、利用側ユニット1Aの利用側熱交換器12Aは、低圧ガス管8と接続されると共に、液管9には電動膨張弁等の冷媒流量制御弁14を介して接続されている。また、利用側ユニット1B、1Cの利用側熱交換器12B、12Cは、高圧ガス管7と低圧ガス管8とにそれぞれ切換弁10A、10B、11A、11Bを介して分岐接続され、液管9には電動式膨張弁等の冷媒流量制御弁15、16を介して接続されている。
【0005】
尚、電動式膨張弁等の冷媒流量制御弁17を液管9に介在させている。また、左室は冷却のみ行うため、利用側ユニット1Aには利用側ユニット1B、1Cの如き切換弁10A、10B、11A、11Bは設けていないが、切換弁を冷媒吐出管3と冷媒吸込管4とに分岐接続して、加温も可能としても良い。更に、左室を加温専用庫としても良く、その場合には当然に利用側熱交換器12Aは高圧ガス管7に接続されることになる。
【0006】
ここで、従来例の各熱交換器の容量は、利用側熱交換器12Bの容量を1とした場合、利用側熱交換器12Cの容量が2、利用側熱交換器12Aの容量が3、熱源側熱交換器19の容量は6となるように設定されている。
【0007】
次に、図6は、特許文献1に記載された従来の自動販売機の制御装置の構成図を示すものである。図6に示すように、制御装置Cは、汎用マイクロコンピュータ22により構成されており、入力側には商品の選択ボタンと、左室、中室、右室のそれぞれに取り付けられる温度検出手段としての温度センサ23A、23B、23Cが接続されている。また、マイクロコンピュータ22の出力側には、各切換弁5A、5B、10A、10B、11A、11Bと、各冷媒流量制御弁14、15、16と、冷媒流量制御弁17と、圧縮機18、各送風機、及び各商品搬出装置が接続されている。
【0008】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作を説明する。
【0009】
まず、左室、中室、右室の全てを冷却庫として商品を冷却する場合について説明する。前記温度センサ23A、23B、23Cが検出した温度が冷却設定温度以上であった場合、前記マイクロコンピュータ22は、熱源側熱交換器19の冷媒吐出管3の切換弁5Aを開き、冷媒吸込管4の切換弁5Bを閉じ、且つ、利用側熱交換器12B、12Cの高圧ガス管7の切換弁10A、11Aを閉じ、低圧ガス管8の切換弁10B、11Bを開く。
【0010】
これにより、圧縮機18から吐出された冷媒は、冷媒吐出管3、切換弁5A、熱源側熱交換器19と順次流れてここで凝縮液化した後、冷媒流量制御弁17及び液管9を経て、各利用側ユニット1A、1B、1Cの冷媒流量制御弁14、15、16に分配され、ここで減圧される。
【0011】
尚、このときマイクロコンピュータ22は、冷媒流量制御弁17は全開とすると共に、冷媒流量制御弁14、15、16は温度センサ23A、23B、23Cの出力に基づいて絞り量が調節される。然る後、各冷媒流量制御弁14、15、16を経た冷媒は、各利用側熱交換器12A、12B、12Cに流入して蒸発気化した後、利用側熱交換器12B、12Cからは、切換弁10B、11Bを経て低圧ガス管8に入り、利用側熱交換器12Aからはそのまま低圧ガス管8に入る。そして、低圧ガス管8で合流した冷媒は、冷媒吸込管4、気液分離器21を順次経て圧縮機18に吸い込まれる。
【0012】
このように、この場合には熱源側熱交換器19は凝縮器として作用し、全利用側熱交換器12A、12B、12Cは蒸発器として作用するので、左室、中室、右室の全てが同時に冷却されることになる。また、前述の如く熱源側熱交換器19の容量は、全利用側熱交換器12A〜12Cの容量の総和に略等しくなるので、蒸発器として作用する利用側熱交換器12A、12B、12Cからの排熱は、熱源側熱交換器19にて十分に放散できる。次に、左室及び中室を冷却する一方、右室は加温する場合について説明する。
【0013】
例えば前記温度センサ23A、23Bが検出した温度が冷却設定温度以上である場合、マイクロコンピュータ22は熱源側熱交換器19の切換弁5Aを開くと共に、切換弁5Bを閉じ、且つ、冷却する利用側熱交換器12Bの切換弁10Aを閉じ、切換弁10Bは開き、且つ、加温する利用側熱交換器12Cの切換弁11Aを開き、切換弁11Bは閉じる。
【0014】
これにより、圧縮機18から吐出された冷媒の一部は冷媒吐出管3、切換弁34Aを順次経て、熱源側熱交換器19に流れると共に、残りの冷媒は高圧ガス管7を経て、加温する利用側ユニット1Cの切換弁11Aから利用側熱交換器12Cへと流入する。
【0015】
そして、この利用側熱交換器12Cと熱源側熱交換器19にて凝縮液化される。これら熱交換器12C、19で凝縮液化された冷媒は、液管9を経て利用側ユニット1A、1Bの冷媒流量制御弁14、15で減圧された後、それぞれの利用側熱交換器12A、12Bに流入して蒸発気化する。
【0016】
尚、マイクロコンピュータ22は、冷媒流量制御弁16及び冷媒流量制御弁17を全開とすると共に、冷媒流量制御弁14、15は、温度センサ23A、23Bの出力に基づいて調節する。
【0017】
利用側熱交換器12Aを経た冷媒は低圧ガス管8に、また、利用側熱交換器12Bを経た冷媒は切換弁10Bを経た後低圧ガス管8に流入して合流し、冷媒吸込管4、気液分離
機21を順次経て圧縮機18に吸い込まれる。このように、この場合には利用側熱交換器12Cは凝縮器として作用するので、右室は加温され、蒸発器として作用する利用側熱交換器12A、12Bにて左室及び中室は冷却されることになる。
【0018】
係る冷却加温同時運転時、利用側ユニット1Cの冷媒流量制御弁16が全開して冷媒圧力損失が生じないようにしているが、液管9内の液冷媒圧力がアンバランスと成らないように、マイクロコンピュータ22は冷媒流量制御弁17で圧力調整する。
【0019】
このように、利用側ユニット1Cでは利用側ユニット1A及び1Bの冷却時に生じる排熱を利用して右室の加温を行うことができるため、効率的に熱回収及び利用を行うことができ、効率の良い運転を行うことができる。そのため、電気ヒータだけで加温を行っていた従来の自動販売機と比して、電力消費量を減少させることができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0020】
次に、左室を冷却すると共に、中室、右室は加温する場合について説明する。
【0021】
温度センサ23Aが検出した温度が冷却設定温度以上である場合、前記マイクロコンピュータ22は熱源側熱交換器19の切換弁5A及び5Bを閉じ、且つ、加温する利用側熱交換器12Bの切換弁10Aを開き、切換弁10Bを閉じ、利用側熱交換器12Cの切換弁11Aを開き、切換弁11Bを閉じる。
【0022】
これにより、圧縮機18から吐出された冷媒は冷媒吐出管3、高圧ガス管7を経て加温する各利用側ユニット1B、1Cの各切換弁10A、11Aから各利用側熱交換器12B、12Cへと流入し、これら利用側熱交換器12B、12Cで凝縮液化されるようになる。そして、これら利用側熱交換器12B、12Cで凝縮液化された冷媒は、液管38を経て利用側ユニット1Aの冷媒流量制御弁14で減圧された後、利用側熱交換器12Aで蒸発気化される。
【0023】
尚、マイクロコンピュータ22は冷媒流量制御弁15、16及び冷媒流量制御弁17を全開とすると共に、冷媒流量制御弁14は温度センサ23Aの出力に基づいて調節する。
【0024】
利用側熱交換器12Aを経た冷媒は低圧ガス管8に流入し、冷媒吸込管4、気液分離器21を順次経て圧縮機18に吸い込まれる。このように、この場合には凝縮器として作用する利用側熱交換器12B、12Cで中室、右室が加温され、蒸発器として作用する利用側熱交換器12Aで左室が冷却されるようになる。
【0025】
以上の如く、利用側ユニット1B、1Cによる加温は、利用側ユニット1Aの冷却時に生じる排熱を利用して行われるため、効率的に熱回収及び利用を行うことができ、効率の良い運転を行うことができる。
【0026】
ここで、従来例における各利用側熱交換器12A、12B、12Cのそれぞれの容量は、前述の如く利用側熱交換器12Aの容量(比率3)=利用側熱交換器12Bの容量(比率1)+利用側熱交換器12Cの容量(比率2)とされている。これにより、利用側熱交換器12Aが蒸発器として作用する際の排熱を全て利用して利用側熱交換器12B、12Cを加温することができるため、熱源側熱交換器19を使用して排熱処理する必要がなくなり、無駄のない熱回収による効率の良い運転を行うことができる。
【0027】
従って、この場合にも電気ヒータだけで加温を行っていた従来の自動販売機と比して、電力消費量を削減することができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0028】
ここで、外気の熱を利用して冷却加温するこの種のヒートポンプにおいては、圧縮機18と熱源側熱交換器19を同一の風路内に設置して放熱ファン24で同時に熱交換するものが知られている。そして、熱源側熱交換器19を凝縮器として作用させる場合は、圧縮機18と熱源側熱交換器19を同時に空冷できるので都合が良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2001−84447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
しかしながら、庫内を加温運転する場合に、熱源側熱交換器19を蒸発器として作用させるので、圧縮機18の周りの周囲温度は通常外気温度に近いため、高温の圧縮機外郭からの放熱作用のため、圧縮機はかなり温度が低下している。加温運転時には、この圧縮機からの放熱作用は、圧縮機から吐出される冷媒ガスの温度を低下させるために室内側に運ばれる熱量を減少させ室内側での熱交換器の温度を低下させ、その熱交換される熱量を減少させていた。
【0031】
上記従来の構成では、1つの圧縮機と庫内外に備えた熱交換器への冷媒流路を切替えることで冷却、加温運転を行うため、圧縮機と熱源側熱交換器が放熱ファンで同時に空冷あるいは熱交換されるため、加温運転時においても圧縮機に風が当たることになり、圧縮機から放熱する分だけ加温能力が低下して効率が低下する。
【0032】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、自動販売機の狭い機械室の中に2つの独立した冷却サイクルと冷却加温サイクルを構成し、冷却サイクルとしての圧縮機と、冷却加温サイクルの圧縮機とを効率よく適正に配置し、その他の構成部品の熱交換器や蒸発皿などを凝縮能力や蒸発能力を高めるように機械室内に配置して、冷却若しくは加温用の圧縮機からの放熱作用を抑制して、室内側に運ばれる熱量を維持させ室内側での熱交換器の温度を適温に維持し、加温効率を高めることができる自動販売機を提供することを目的とする。
【0033】
また本発明は、冷温切替のための流路切替弁が増えることによる、サービス性の悪化、ハーネス処理等の作業性の悪化、配管接触やソレノイド付け間違い等の品質劣化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0034】
上記従来の課題を解決するために、本発明の自動販売機は、機械室内に庫内を冷却および加温する冷却加温装置に接続された第1圧縮機と第1熱交換器と冷媒の流路を切替える複数の流路切替弁と、庫内を冷却する冷凍サイクルに接続された第2圧縮機と凝縮器とを備え、前記機械室内の前方に前記第1熱交換器と前記凝縮器を隣接配置し、前記機械室内の後方に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機を横並びに配置し、前記機械室に前記複数の流路切替弁を並べて配置し、前記複数の流路切替弁を動作させるソレノイド部を一体に配置したものである。
【0035】
これによって、機械室内のスペースを有効に活用することができ、冷却室用と冷却加温用室を独立した冷却加温サイクルで冷却または加温するので効率よく庫内適温化を図ることが出来るとともに、サービス時にユニットを取り出さずに流路切替弁の交換が出来、また、ソレノイド部が一体であるため、ハーネス処理等の作業性を簡略化でき、配管固定もやりやすく、作業性が向上でき、配管接触やソレノイドの付け間違いによる品質劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の自動販売機は冷却加温システムの加温効率を高め、サービス性と品質を向上させた自動販売機とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1の自動販売機の正面図
【図2】同実施の形態の自動販売機の縦断面図
【図3】同実施の形態の自動販売機の機械室の平面図
【図4】同実施の形態の自動販売機の機械室の要部斜視図
【図5】従来の自動販売機の冷媒回路図
【図6】従来の自動販売機の制御装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0038】
請求項1に記載の発明は、複数の庫内に区画して、前記庫内に投入された商品を冷却または加温する商品収納庫と、前記商品収納庫と区画壁によって上下方向に区画形成された機械室を備えた自動販売機において、前記機械室内には前記庫内を冷却および加温する冷却加温装置に接続された第1圧縮機と第1熱交換器と冷媒の流路を切替える複数の流路切替弁と、前記庫内を冷却する冷凍サイクルに接続された第2圧縮機と凝縮器とを備え、前記機械室内の前方に前記第1熱交換器と前記凝縮器を隣接配置し、前記機械室内の後方に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機を横並びに配置し、前記機械室に前記複数の流路切替弁を並べて配置し、前記複数の流路切替弁を動作させるソレノイド部を一体に配置したものであり、機械室内のスペースを有効に活用することができ、冷却室用と冷却加温用室を独立した冷却加温サイクルで冷却または加温するので効率よく庫内適温化を図ることが出来るとともに、サービス性と品質を向上することができる。
【0039】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、流路切替弁は、機械室の前方に集約配置するものであり、サービス時にユニットを引き出さずに前方より流路切替弁を交換できることからサービス性を高めることができる。
【0040】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、複数の流路切替弁を動作させるソレノイド部をブラケットに一体に配置したものであり、一体にする際、ハーネス処理をまとめることでユニット製作におけるハーネス処理等の作業性を簡略化でき、また、一体で固定することにより、流路切替弁に繋がる配管を一括して固定できるため、配管接触やソレノイドの付け間違いによる品質劣化を抑制することができる。
【0041】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、冷却加温システムの冷媒として可燃性冷媒を適用するものであり、効率よく庫内適温化を図ることが出来き、消費電力量をさらに削減することができる。
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0043】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における自動販売機の正面図、図2は同実施の形態の自動販売機の縦断面図である。図3は同実施の形態の自動販売機の機械室の平面図である。図4は同実施の形態の自動販売機の機械室の要部斜視図である。
【0044】
図1において、自動販売機30は缶飲料商品を冷却あるいは加温販売するものであり、
前面に開口した断熱箱体からなる本体31と、この本体31に一側を回動自在に枢支された開閉自在の前面扉32とから構成されている。前面扉32の下部には販売口33が配置されている。
【0045】
この前面扉32の後方には、前面に断熱扉(図示しない)を有する商品収納庫34が本体31内に形成されている。この商品収納庫34内は図1のように、内部に断熱材が充填された区画壁35と36により左右3室に区画されており、区画壁35の左側に冷却庫37が形成され、区画壁35と区画壁36間に位置した中央に冷却と加温のいずれかを選択して切り替え可能な冷却加温庫38が形成され、区画壁36の右側にも冷却と加温のいずれかを選択して切り替え可能な冷却加温庫39が形成されている。
【0046】
またそれぞれ室内には収納棚40が商品収納庫34の上部に吊下げられており、商品41が内部に収納されている。そして収納棚40の下部には選択された商品を搬出する搬出装置42が配置され、1個ずつ商品41を下方に落下させる。搬出装置42の下方には販売口33に向かって傾斜したシュート43が配置されており、各収納棚40から排出された商品41は、このシュート43上に落下し、転動して販売口33に導かれるものである。
【0047】
シュート43の下側には冷却庫37、冷却加温庫38、39にそれぞれ対応して冷却室44、冷却加温室45、46が備えられている。冷却室44内には蒸発器47、冷却加温室45内には蒸発器48、加温時に通電して加温室とする電気ヒータ49を備えている。また冷却加温室46内には室内熱交換器50と、加温時に室内熱交換器50の補助として通電可能な補助電気ヒータ64を備えている。また各室にはそれぞれ庫内ファン(図示しない)があり、強制送風して庫内を強制的に循環させ、各室それぞれに備えた庫内センサー(図示しない)によって庫内を適温に制御する。
【0048】
本体31の下方には、商品収納庫34の下部に備えた区画壁51によって区画された機械室52を形成している。
【0049】
機械室52は、室内熱交換器50と環状に接続される第1圧縮機53と第1熱交換器54と冷媒の流路を切替える流路切替弁55などで構成された冷却加温サイクル、また蒸発器47、48と環状に接続される第2圧縮機56と凝縮器57と蒸発器47、48への冷媒の流路を切替える三方弁58などで構成された冷却サイクルとなっている。流路切替弁55は4つの切替弁で構成されており、冷却加温庫39が冷却される時、冷媒流路として開かれる高圧側冷却用切替弁55aと低圧側冷却用切替弁55bを備え、冷却加温庫39が加温される時、冷媒流路として開かれる高圧側加温用切替弁55cと低圧側加温用切替弁55dを備えている。
【0050】
図3のように第1熱交換器54と凝縮器57はフィンチューブ式の熱交換器で、共通のフィンチューブを貫通させてお互いに前後方向に重ねて形成した一体型の熱交換器いわゆるカスケード式熱交換器59として形成されている。図のように機械室52内の前方、すなわち自動販売機30の前面扉32側で、左右方向でほぼ中央位置にカスケード式熱交換器59が配置し、機械室52内の後方には第1圧縮機53と第2圧縮機56が横並びに配置されている。第2圧縮機56はカスケード式熱交換器59のほぼ真後ろの位置に設置している。第1圧縮機53の前方でカスケード式熱交換器59の横方向にはスペースが形成されていて、この部分に流路切替弁55が側面に対して横並びに配置し、第1圧縮機53と第1熱交換器54と室内熱交換器50を環状に接続する配管系や減圧手段などが集約されている。
【0051】
また冷却庫37、冷却加温庫38、39で発生した除霜水を回収して溜める蒸発皿60
がカスケード式熱交換器59の側部に配置し、機械室52の両側部に蒸発皿60と、流路切替弁55やその他の配管系などが配置し、その間にカスケード式熱交換器59が配置する構成となっている。蒸発皿60は機械室52の前方から後方に向かって形成され略矩形状に形成されている。具体的には第2圧縮機56の側部まで延びて配置している。このため、流路切替弁55の故障時には前面扉32を開放すればユニットを引き出さずに前方に引き出せるように形成されているので作業性が向上する。
【0052】
またカスケード式熱交換器59の後方に2個のファン61(自動販売機30を前から見た場合、左ファン61a、右ファン61b)が近接配置し、機械室52の前面から空気を強制的に吸い込み、カスケード式熱交換器59を介して機械室52内に空気を取り込んでいる。ファン61と、第1圧縮機53と第2圧縮機56の間には空気を案内するガイド部材62が形成され、ガイド部材62はファン61からの空気が蒸発皿60に直接案内されるように、ファン61と、第1圧縮機53と第2圧縮機56の間を仕切るように形成されている。
【0053】
蒸発皿60の後方には三方弁58が配置している。第1圧縮機53と第2圧縮機56にはそれぞれ自然冷媒が封入される第1封入パイプと第2封入パイプが機械室52前方に向かって形成され、それぞれのパイプには第1接続パイプ53bと第2接続パイプ56bとが接続されて、機械室52後方に向かうように曲げて設置されている。
【0054】
このため、市場に設置された自動販売機30の冷媒廃棄や回収作業を行うとき、機械室52を外して作業する必要が無く、自動販売機30の後方からそのまま作業できるので、冷媒廃棄、回収作業を容易にできる。
【0055】
また図4のように流路切替弁55の上部は流路切替弁55を駆動するための脱着可能なソレノイド66がソレノイドブラケット67に横並びに配置されている。ここで、ソレノイド66を設置するときはひとつの流路切替弁55aとソレノイド66aを固定すると全てのソレノイド66と流路切替弁55が各々の対応するものに接続される。このため、作業時にソレノイド66の付け間違いを防止でき、また、ハーネス処理を容易に行え、作業性を向上できる。また、ソレノイドブラケット67をユニットベース上にビス等で完全固定することで流路切替弁55とそれに繋がる配管系を完全固定できるので配管接触等の品質劣化を防ぐことができる。
【0056】
以上のように構成された自動販売機について、以下その動作、作用を説明する。
【0057】
まず、冷却庫37、冷却加温庫38、39がすべて冷却庫として商品を冷却する場合、すなわち冷却加温庫39は、高圧側冷却用切替弁55aと低圧側冷却用切替弁55bが開放され、他の切替弁55c、55dが閉じた状態でカスケード式熱交換器59として組み込まれた第1熱交換器54が凝縮器として、室内熱交換器50が蒸発器として作用し、冷却庫39として形成される。
【0058】
機械室52内に備えた2個のファン61(61a、61b)は外気温度と圧縮機のON/OFFによって制御される。具体的には外気温度が25℃以上の場合、第1圧縮機53と第2圧縮機56のどちらか一方が駆動している時は左右ファン61a、61b共に駆動し、どちらの圧縮機も停止している時は右ファン61bのみ低速で駆動させている。これは第1圧縮機53側の冷却加温サイクル側に封入されている冷媒が可燃性を有する自然冷媒(たとえばイソブタンやプロパン)であり、第2圧縮機56側の冷却サイクルの冷媒も同様であり、万一、冷媒が漏れても機械室52内に滞留しないように右ファン61bを駆動させて滞留を防止し機械室52外へ冷媒を排出するためである。
【0059】
またファン61は第2圧縮機56が駆動している時は、左右ファン61共に高速で駆動させている。すなわち左ファン61aと右ファン61bは外気温と圧縮機のON/OFFによって入力電圧を24Vと17Vに個別に切替え可能で一定速で駆動させる。
【0060】
また外気温度が10〜25℃の場合では、ファン61は電圧17Vで低速で駆動している。この温度帯ではファン61を電圧24Vかけて駆動させる必要は無く低速駆動させることで消費電力量を低減することができる。どちらの圧縮機もOFFのときは上記記載と同様に冷媒が漏れたときの機械室52内に滞留して着火源になるのを防止するために、一方のファンのみを駆動させて強制排出している。
【0061】
また10℃以下の低外気温時には圧縮機の駆動に関係なく常に2つのファン61のうちの右ファン61bのみを電圧17Vで低速で駆動させている。これは冷却加温サイクル側凝縮能力過多となって、凝縮器となる第1熱交換器54内に液冷媒が滞留してしまい、冷媒循環量不足となって冷却庫39が適温に冷えないため、カスケード式熱交換器59の熱交換効率を低減させるために圧縮機のON/OFFにかかわらず右ファン61bのみを低回転で駆動する制御として庫内の冷却性能を維持している。
【0062】
そして上記条件でファン61を駆動させて、機械室52の前方から強制的に取り入れた空気はカスケード式熱交換器59を通って、冷媒の過熱を取り除き、ファン61から吐出された空気はすべてガイド部材62によって蒸発皿60の方へガイドされる。蒸発皿60へ案内された空気は蒸発皿60の後方へ延びる壁面60aが風路構成の一部となって空気を機械室52の後方すなわち第2圧縮機56へ導くように形成されるので、第2圧縮機56を冷却することができる。これによって蒸発皿60内の水の蒸発性能を向上させることができる。またファン61から吐出される空気はすべて直接蒸発皿60に導かれるとしたが、ガイド部材62の一部に開口部62aを第2圧縮機56の前方に位置する部分に形成して、一部の空気が直接案内されるようにしてもよい。これによって高外気温時に第2圧縮機56の温度が上昇しすぎて保護装置が働き駆動が停止するのを防止することが出来る。
【0063】
基本的には第1圧縮機52、第2圧縮機56にはファン61によって強制対流しないように空気を導かない構成とし、圧縮機の放熱作用を促進しないようにしている。これは上記にも述べたが可燃性冷媒を使用し、かつ性能が確保できる程度に冷媒封入量を削減しているので、圧縮機の放熱作用によって冷媒が圧縮機内のオイルに溶け込んで循環する冷媒ガス量が低減しないようにするためである。
【0064】
次に庫内設定が冷却庫37、冷却加温庫38が加温庫38とし、冷却加温庫39が冷却庫39として切替えられて場合、すなわち加温庫38は三方弁58によって蒸発器48に冷媒が循環しないように切替えて電気ヒータ49を通電し設定した場合もファン61の制御は上記の設定と同じように駆動する。
【0065】
この場合も、10℃以下の低外気で冷却庫39の凝縮能力が過多となって庫内が冷えないため、第1熱交換器53の熱交換効率を低減するために右ファン61bのみを低回転で駆動し、これによって冷却庫39の冷却性能を維持している。
【0066】
次に冷却加温庫39が加温庫39に設定された場合の、冷却加温システム制御と加温庫39の室内熱交換器50近傍に備えた補助電気ヒータ64の制御を外気温度別に説明する。
【0067】
外気温度が25℃以上の場合は冷却加温サイクルの運転を停止し、補助電気ヒータ64のみで加温庫39内の商品を適温に加温する。外気温度25℃以上になると蒸発器として
作用する第1熱交換器54の蒸発圧力が高くなり、第1圧縮機53の吸入圧力も高くなってしまう傾向がある。このため第1圧縮機53の運転を停止して、圧縮機の信頼性を確保している。
【0068】
また冷却庫37、38の冷却性能を確保するために左右ファン61a、61bは24Vの電圧をかけて高速回転させている。これによって凝縮器57の熱交換効率を高めて冷却性能を確保している。
【0069】
外気温度10〜25℃では第1圧縮機53を駆動し、高圧側加温用切替弁55cと低圧側加温用切替弁55dが開放され、他の切替弁55a、55bが閉じた状態でカスケード式熱交換器59として一体化された第1熱交換器54が蒸発器として、室内熱交換器50が凝縮器として作用させて商品を加温している。このとき補助電気ヒータ64は停止して冷却加温システムのみで庫内を加温制御している。
【0070】
また第1熱交換器54が凝縮器57の排熱回収の向上を高めるために左右ファン61a、61bともに駆動させている。この時はファン61を低電圧で回転し効率よく駆動させている。またこの温度帯の時期では補助電気ヒータ64に通電しないので、消費電力量を大幅に低減することが出来る。
【0071】
外気温度が10℃以下の低外気温時は、冷却加温システムによる加温と補助電気ヒータ64の通電により庫内を加温制御している。特に商品が外から新しく投入された時は、商品温度もほぼ外気温と同等の温度なので急速に加温する必要がある。このため補助電気ヒータ64を通電することで、初期時の加温性能を高める。
【0072】
また第1圧縮機53をインバータ圧縮機とすることで、商品投入時には高速回転で第1圧縮機53を駆動し補助電気ヒータ64も連続通電することで、商品をはやく適温にすることができるので販売機会を増やすことができる。商品が適温に加温され販売待機状態の間は電気ヒータ64をOFFし、第1圧縮機53を低速回転で駆動することで効率よく加温状態を保持しながら消費電力量を低減することができる。
【0073】
またこの外気温度帯でもファン61は低速回転で駆動し、カスケード式熱交換器59の効率を高めている。つまりファン61は常にどちらか一方のファンを回転させ、かつ外気温度に応じて入力電圧値を切替えて駆動しているので、第1の作用効果として可燃性冷媒の漏れによる滞留防止をし、第2の作用効果としてカスケード式熱交換器の能力を操作して、冷却加温システムの冷却加温庫39の冷却あるいは加温性能を維持することができる。
【0074】
そして上記条件でファン61を駆動させて、機械室52の前方から強制的に取り入れた空気はカスケード式熱交換器59を通って、冷媒の過熱を取り除き、ファン61から吐出された空気はすべてガイド部材62によって蒸発皿60の方へガイドされる。蒸発皿60へ案内された空気は蒸発皿60の後方へ延びる壁面60aが風路構成の一部となって空気を機械室52の後方すなわち第2圧縮機56へ導くように形成されるので、第2圧縮機56を冷却することができる。これによって蒸発皿60内の水の蒸発性能を向上させることができる。
【0075】
またファン61から吐出される空気はすべて直接蒸発皿60に導かれるとしたが、ガイド部材62の一部に開口部62aを第2圧縮機56の前方に位置する部分に形成して、一部の空気が直接案内されるようにしてもよい。これによって高外気温時に第2圧縮機56の温度が上昇しすぎて保護装置が働き駆動が停止するのを防止することが出来る。
【0076】
基本的には第1圧縮機52、第2圧縮機56にはファン61によって強制対流しないように空気を導かない構成とし、圧縮機の放熱作用を促進しないようにしている。これは上記にも述べたが可燃性冷媒を使用し、かつ性能が確保できる程度に冷媒封入量を削減しているので、圧縮機の放熱作用によって冷媒が圧縮機内のオイルに溶け込んで循環する冷媒ガス量が低減しないようにするためである。
【0077】
特に第1圧縮機53の方熱作用をできるだけ低減し、庫内側に運ばれる熱量を維持させ庫内側の室内熱交換器50の温度を適温に維持するために第1圧縮機53の上面、側面すべてを樹脂製のケース65で囲って空気対流による方熱作用を低減すれば、さらに加温効率を高めることができる。またケース65で囲うことでさらに、圧縮機内での冷媒がオイルに溶け込む量を低減することができ、冷媒の循環量を高めることができ、可燃性防止のため少冷媒化をさらに実現することが出来る。
【0078】
また、機械室内の後方に第1圧縮機53と第2圧縮機56を横並びに配置し、機械室52に複数の流路切替弁55を並べて配置し、複数の流路切替弁55を動作させるソレノイド66を一体に配置したものであり、機械室内のスペースを有効に活用することができ、冷却室用と冷却加温用室を独立した冷却加温サイクルで冷却または加温するので効率よく庫内適温化を図ることが出来るとともに、サービス性と品質を向上することができる。
【0079】
また、流路切替弁55は、機械室52の前方に集約配置するものであり、サービス時にユニットを引き出さずに前方より流路切替弁55を交換できることからサービス性を高めることができる。
【0080】
また、複数の流路切替弁55を動作させるソレノイド66をブラケット67に一体に配置したものであり、一体にする際、ハーネス処理をまとめることでユニット製作におけるハーネス処理等の作業性を簡略化でき、また、一体で固定することにより、流路切替弁に繋がる配管を一括して固定できるため、配管接触やソレノイドの付け間違いによる品質劣化を抑制することができる。
【0081】
また、冷却加温システムの冷媒として可燃性冷媒を適用するものであり、効率よく庫内適温化を図ることが出来き、消費電力量をさらに削減することができる。
【0082】
したがって、冷却加温サイクルの構成部品と冷却サイクルの構成部品を上記のように機械室内に配置することで冷却加温サイクルの加温効率を高め、同時に冷却サイクルの冷却効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように本発明にかかる自動販売機は、冷却加温システムの加温効率を高め、可燃性冷媒の少量化を図り、サービス性、作業性に優れているので、カップ自動販売機にも適用できる。
【符号の説明】
【0084】
30 自動販売機
37 冷却庫
38、39 冷却加温庫
47、48 蒸発器
50 室内熱交換器
52 機械室
53 第1圧縮機
54 第1熱交換器
55 流路切替弁
56 第2圧縮機
57 凝縮器
59 カスケード式熱交換器
66 ソレノイド
67 ソレノイドブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の庫内に区画して、前記庫内に投入された商品を冷却または加温する商品収納庫と、前記商品収納庫と区画壁によって上下方向に区画形成された機械室を備えた自動販売機において、前記機械室内には前記庫内を冷却および加温する冷却加温装置に接続された第1圧縮機と第1熱交換器と冷媒の流路を切替える複数の流路切替弁と、前記庫内を冷却する冷凍サイクルに接続された第2圧縮機と凝縮器とを備え、前記機械室内の前方に前記第1熱交換器と前記凝縮器を隣接配置し、前記機械室内の後方に前記第1圧縮機と前記第2圧縮機を横並びに配置し、前記機械室に前記複数の流路切替弁を並べて配置し、前記複数の流路切替弁を動作させるソレノイド部を一体に配置したことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
流路切替弁は、機械室の前方に集約配置することを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
複数の流路切替弁を動作させるソレノイド部をブラケットに一体に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動販売機
【請求項4】
冷却加温システムの冷媒として可燃性冷媒を適用することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−250589(P2010−250589A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99829(P2009−99829)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】