説明

自動車、オートバイ、または航空車両等の工業デザインのためのCADベースのスタイリングプロセスにおける機能的CAEデータの統合のための方法およびシステム

【課題】実世界対象物についての美観および機能設計プロセスを統合するためのコンピュータ支援システムを提供する。
【解決手段】システムは、a)対象物の美的表現を定義するモジュール、b)CAEシミュレーションモジュールの近似モデルデータの供給を受け、美的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するモジュール、c)品質値をユーザに伝える物理信号を発行するインターフェース、d)得られた品質値を考慮して、美観設計プロセスで対象物の美的表現のパラメータ記述を変更するモジュールを備える。尚、c’)デザインの一組の変化についての品質値感度分析を実行する為、美的表現のパラメータ記述を変更し、該デザイン変化について、近似モデルを使用して品質値を抽出するモジュール、d’)デザインの美的表現のパラメータ記述の異なる変更の品質値の感度をユーザに伝える物理信号を発行するインターフェースを備えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実世界の対象物について美観設計プロセスおよび機能的設計プロセスを統合するための、コンピュータ支援システムおよび方法を提案する。
【背景技術】
【0002】
工業(産業)デザイン、たとえば自動車のデザインにおいて、美的なスタイリング(美的なデザイン)は、機能的な要件(機能的デザイン)および、動的安定性、空気力学、数値流体力学(CFD(computational fluid dynamics))、構造安定性等のCAE(コンピュータ支援エンジニアリング(Computer Aided Engineering))からの性能指標に結びつけられなければならない。設計(デザイン)プロセス全体において、機能的な制約が、初期の概念設計を定義するのに使用されることが多く、該設計は、その後、たとえば設計者の芸術的な嗜好および(または)ブランドデザイン要件全体に基づいて、何らかの美的要件に従って設計者によって形作られる。従来より、美観設計の段階は、クレーモデル(clay model,模型)を含み、これは、今日においてはCADモデル、対話型の没入型ディスプレイ(interactive immersive 1 display、下記の非特許文献1を参照)および仮想クレーシステム(virtual clay system、下記の非特許文献2を参照)によって強化される。美観設計段階後に、再び、機能的要件が、最終的なデザインおよび形状を変更することができる。
【0003】
しかしながら、多分に、両方のプロセス(美観設計および機能設計)は、異なるグループの人々(すなわち、デザイナーとエンジニア)によって切り離され、かつ取り扱われている。
【0004】
一般に、表現(representation)、すなわち対象物のパラメータ記述(parametric description)は、美観設計プロセスおよび機能設計プロセスについて異なっている。
【0005】
図1は、この既知のアプローチを概念的に示し、ここで、F1〜F3は任意選択である。
【0006】
当該分野の最新の状態を述べると、代理モデル(surrogate model)ないしメタモデル(meta-model)の使用が、美観設計段階を採用しない設計最適化の分野において以前から提案されている(たとえば、下記の非特許文献3、および特許文献1、2(後述する参考文献4、5、6)を参照)。
【0007】
しかしながら、より詳細には後述されるように、このパテントで推奨されるフレームワークでは、代理モデルは、美的デザインと機能的デザインの間の緊密な結合を可能にするために、美観設計段階に埋め込まれる。
【0008】
F.Cirakらによる文献”Integrated modeling, finite-element analysis and engineering design for thin-shell structures using subdivision”(Division of Engineering and Applied Science, California Institute of Technology, Pasadena, CA 91125, USA, 2002年3月20日にオンライン上で利用可能)は、自動車および航空産業において見られるように、薄型でフレキシブルな構造の、形状モデリング(geometric modeling)および機械的シミュレーションを記述する。統一化されたフレームワークにおけるモデリング、シミュレーションおよび設計のための基礎として、細分化曲面(subdivision surfaces)の使用が記述されている。
【0009】
Z.Yangらによる文献”Haptic function evaluation of multi-material part design”(Computer-Aided Design, Volume 37, Issue 7 (June 2005), ISSN;0010-4485)は、工業および概念デザインについて、触覚的(haptic)形状モデリングを記述する。多材料(multi-material)部品についての製品デザインの合成された形状モデリングおよび触覚的機能評価の実時間の触覚的インターフェースが記述される。
【0010】
これらの文献に対し、本発明は、美的デザインの、コンピュータ支援エンジニアリング(CAE)の計算を近似するメタモデルとの組み合わせを開示する。このような計算として、CFDおよび(または)FEM手法が存在しうる。美的プロセスおよびCAEプロセスの統合は、所与のデザインの異なる表現に対して作用するので、メタモデルの統合は、些細なものではない。メタモデルは、第3の表現を追加することとなる。
【0011】
本発明は、対象物の機能的最適化と緊密に結合した状態での、該対象物の美的最適化を可能にする方法を提供する。これら2つのプロセスは、従来では、対象物の機能的最適化が非常に複雑であり時間のかかるプロセスであるという理由で、分離されていた。ここで、美的最適化は、継続的およびコンスタントなプロセスであり、本発明は、これら両方のプロセスを、縦続形式で統合することを教示する。
【0012】
(美に関する)設計者は、対象物の美的外観をコンスタントに変更する必要があり、また、該設計者は、該対象物の美的外観を変更するたびにその後の機能的性能値の計算の完了(このプロセスは、たとえば、数値流体力学(CFD)を使用する)を待たなければならないとき、自身の作業を遅らせることとなる。さらに、該計算の結果を待つことは、非常に時間のかかる設計プロセスとなってしまう。
【0013】
しかしながら、本発明は、CAE計算を速やかに近似して、現在の変化についての即時のフィードバックを設計者に与えることを可能にするコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)シミュレーションの近似モデルを使用することによって、この問題を解決する。また、機能的な品質値に関してより良好な機能性を提供する、設計上の決定に対する代替の情報を設計者に提供することを可能にする。
【0014】
本発明は、近似モデルに基づいて、機能設計上の効果についての直接的なフィードバックを行うことを可能にしつつ、美的尺度に従う対象物の継続的なモデリングプロセスを可能にする。
【0015】
簡単に述べれば、本発明は3つのモデルで作用し、1つは、美観設計プロセスのためのものであり、1つは、機能的な品質値に従って実行される機能的な変更のためのものであり、1つは、“メタモデル”、すなわち機能的モデルの近似モデルであり、これは、完全な機能的計算を実際に実行することなく、機能的モデルに対して実行される変更を速やかに近似することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】P. O'B Holt, J. M Ritchie, P. N. Day, J. E. L. Simmons, G. Robinson, G. T. Russell, and F. M. Ng. Immersive Virtual Reality In Cable and Pipe Routing: Design Metaphors and Cognitive Ergonomics. ASME Journal of Computing and Information Science in Engineering, 4(3), 161-170, 2004.
【非特許文献2】SensAble Technologies. 3D Touch-enabled Modeling for Product Design, Digital Content Creation (DCC) & Fine Arts. http://www.sensable.com/industries-design-model.htm
【非特許文献3】Yaochu Jin, Markus Olhofer and Bernhard Sendhoff. A Framework for Evolutionary Optimisation with Approximate Fitness Functions. IEEE Transactions on Evolutionary Computation, 6(5), pages 481-494, 2002.
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP 1205877 A1 “Approximate fitness functions” of Honda Research Institute Europe GmbH
【特許文献2】EP 1557788 A1 “Reduction of fitness evaluations using clustering technique and neural network ensembles” of Honda Research Institute Europe GmbH
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、美観設計プロセスおよび機能設計プロセス間を緊密に結合することを可能にするプロセスを提案し、これにより、物理的要件および美的要件を同時に満たす、実世界対象物を設計するための効率的で包括的なアプローチを達成することである。たとえば、本発明を用いて、自動車、オートバイおよび航空機を設計するとき、該物理的要件は、たとえば重量および/または抵抗を最小にすることでありうる。
【0019】
こうして、本発明はまた、美的な実世界対象物の製造を可能にし、これにより、物理的エンティティで表現されることのできる機能的基準を満たすことができる。
【0020】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成され、従属請求項は、本発明の主要なアイデアをさらに発展させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の側面は、実世界の対象物の現在の美的デザイン(aesthetic design)の機能的品質についての直接のフィードバックを設計者に提供し、これにより、美的かつ機能的な実世界対象物の設計プロセスを改良すると共に製造を容易にする方法に関する。
【0022】
該方法は、以下のステップを含む:
a)美観設計プロセス(aesthetic design process)からの対象物の表現(すなわち、パラメータ記述(parametric description))を与えること(たとえば、CADデータ)、
b)上記の与えられた表現から、機能設計プロセスの物理的要件に基づいて品質値を導出すること(人工的なコンピューティングユニットによって計算される)、
c)(たとえば、触覚的、視覚的、または聴覚的な)物理信号をユーザに発行すること、ここで、該物理信号は、該ユーザに、該品質値を伝えるものである、
d)機能的品質値を考慮して、設計者の美的要件に従い、該表現のパラメータが異なるものとなるよう、該対象物を変更すること、
e)ステップb)〜d)を、終了条件を満たすまで繰り返すこと。
【0023】
本発明はまた、付加的または代替的な以下のステップを含む方法を提案する:
−美観設計プロセスからの対象物の表現(すなわち、パラメータ記述)を与えること(たとえば、CADデータ)、
−上記の与えられた表現から、機能設計プロセスの物理的要件に基づいて品質値を導出すること、
−機能設計プロセスの物理的要件に基づいて抽出された上記品質値を最小/最大にするように、該対象物をわずかに変更する、計算による最適化プロセスを呼び出すこと、
−物理信号をユーザに発行すること、ここで、該物理信号は、該ユーザに、改良された品質値を達成するための該デザインの修正方法(どのようにデザインを修正するか)を該ユーザに伝えるものであり、あるいは、該物理信号は、改良された品質値を有する少なくとも1つの代替のデザインを該ユーザに伝えるものである、
−機能的品質値を考慮して、設計者の美的要件に従い、該表現のパラメータが異なるものとなるよう、該対象物を変更すること、
−ステップb)〜d)を、終了条件を満たすまで繰り返すこと。
【0024】
本方法は、さらに、付加的または代替的な以下のステップを含むことができる:
−上記の終了条件が満たされたときに存在する該対象物の表現(すなわち、パラメータ記述)に基づいて、実世界対象物を構築すること。
【0025】
本方法は、さらに、以下のステップを含むことができる:
a)物理的対象物(物体)の美的表現を定義すること、
b)該対象物の美的表現の機能的表現への変換を実行すること、
c)CAEシミュレーションの近似モデルを使用して、該機能的表現のパラメータ記述を入力として用い、機能的品質値を計算すること、
d)物理信号をユーザに発行すること、ここで、該物理信号は、該ユーザに、該品質値を伝えるものである、
e)ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた機能的品質値を考慮して、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更すること、
f)ステップb)〜d)を、終了条件が満たされるまで繰り返すこと。
【0026】
本方法は、付加的または代替的に、以下のステップのうちの少なくとも1つを含むことができる:
−CAEシミュレーションの近似モデルを使用して、美的表現のパラメータ記述を入力として用い、機能的品質値を計算すること、
−デザインの一組の変化(variations)についての品質値の感度分析(sensitivity analysis)を実行するために、上記美的表現のパラメータ記述を変更し、該デザインのこれらの変化について、近似モデルを使用して品質値を抽出すること、
−物理信号をユーザに発行すること、ここで、該物理信号は、該デザインの美的表現のパラメータ記述の異なる変更についての該品質値の感度を該ユーザに伝えるものである、
−ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた感度分析を考慮して、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更すること。
【0027】
本方法は、付加的または代替的に、以下のステップのうちの少なくとも1つを含むことができる:
−最適化プロセス中にコスト関数としてCAEシミュレーションの近似モデルを使用し、改良された品質値を備える少なくとも1つの修正済みデザインを生成するために、該最適化プロセスを実行すること、
−物理信号をユーザに発行することであって、該物理信号は、改良された品質値を達成するための該デザインを修正する方法をユーザに伝えるものであること、
−ユーザインターフェースからの入力に応じて、該最適化プロセスの結果を考慮して、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更すること。
【0028】
該デザインの美的表現は、CADデータに基づくことができ、該最適化プロセスは、たとえば自由形状変形(FFD,free form deformation)(後述の参考文献8を参照)またはNURBS(後述の参考文献7を参照)のような、様々な機能的表現に基づいて実行されることができる。
【0029】
第1のプロセスおよび付加的な最適化ループを含む第2のプロセスにおいて必要とされる美的デザインの機能的品質の抽出は、設計者が、該対象物の機能的品質の直接的かつ実時間のフィードバックを受け取ることができるように、非常に高速でなければならない(彼自身の美的判断とは別に)。現在のCAE方法は、この高速のフィードバックを可能とするものではなく、よって、モデルが、CAE計算の機能的近似を表現するものとして採用されなければならない。このようなモデル(これは、機能設計の最適化において、代理(surrogate)、メタモデル、または代理モデルと呼ばれている(後述の参考文献4を参照))の例は、ニューラルネットワーク、クリギング(ガウス)(Kriging(Gaussian))モデル、応答曲面モデル、多項式モデル(polynomial model)である。美観設計プロセスに先立って生成された利用可能なCAEデータに基づいて(これは、美観設計プロセス中にコンスタントに更新されることもできる)、モデルは、たとえばニューラルネットワーク学習または数理統計(mathematical statistics)等の手法を使用して生成される。そのようなモデルは、その後、コストの高いCAE計算を置換することができる。該モデルは非常に高速であり、設計者と直接的な対話で実時間で使用することができる。該モデルは、たとえばCADデータのような美的な対象物表現を入力として直接的に受け取ることができ、または、それ自身のモデルに依存した表現を使用することができる。後者の場合、美的表現からモデル表現への変換を含まなければならない。
【0030】
ステップd)は、デザインの美的外観を変更するために行われることができる。
【0031】
上記の物理信号は、視覚的な標示および(または)触覚的(haptic)なフィードバックであることができる。
【0032】
本発明はまた、コンピューティングデバイス上で実行され、上記の先行するクレームのいずれかに従う方法を実現する、コンピュータソフトウェアプログラム製品に関する。
【0033】
本発明は、さらに、実世界の対象物を設計するためのコンピュータ支援システムに関し、該システムは、以下のものを備えることができる。
【0034】
a)美観設計プロセスからの対象物の表現(すなわち、パラメータ記述)を提供するモジュール(たとえば、CADデータ)、
b)機能設計プロセスの物理的要件に基づいて、上記の与えられた表現から品質値を導出するモジュール、
c)物理信号をユーザに発行するインターフェースであって、該物理信号は、該品質値を該ユーザに伝えるものである、
d)機能的品質値を考慮に入れて、設計者の美的要件に従い、該表現のパラメータが異なるものとなるよう、該対象物を変更する修正インターフェース。
【0035】
最後に、本発明は、実世界の対象物を設計するためのコンピュータ支援システムに関し、該システムは、以下のものを備える。
【0036】
a)美観設計プロセスからの対象物の表現(すなわち、パラメータ記述)を提供するモジュール(たとえば、CADデータ)、
b)機能設計プロセスの物理的要件に基づいて、上記の与えられた表現から品質値を導出するモジュール、
c)上記の機能設計プロセスの物理的要件に基づいて導出された品質値を最小化/最大化するよう該対象物をわずかに変更する、計算的な(computational)最適化プロセスを実行するモジュール、
c)物理信号をユーザに発行するインターフェースであって、該物理信号は、改良された品質値を達成するための該デザインを修正する方法をユーザに伝えるものであり、または、該物理信号は、改良された品質値を有する少なくとも1つの代替のデザインをユーザに伝えるものである、
d)機能的品質値を考慮に入れて、設計者の美的要件に従い、表現のパラメータが異なるものとなるよう、該対象物を変更する修正ユーザインターフェース。
【0037】
さらなる側面において、本発明は、物理的な対象物(物体)について、美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するためのコンピュータ支援システムに関し、該システムは、以下を備えることができる:
a)物理的対象物の美的表現を定義するコンピュータモジュール(computerized module)、
b)該対象物の美的表現の機能的表現への変換を定義するコンピュータモジュール、
c)CAEシミュレーションモジュールの近似モデルデータが供給され、機能的表現のパラメータ記述を入力として使用して機能的品質値を計算する計算モジュール、
d)物理信号をユーザに発行するインターフェースであって、該物理信号は、該品質値を該ユーザに伝えるものである、
e)ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた機能的品質値を考慮に入れて、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を変更するコンピュータモジュール。
【0038】
該システムは、付加的または代替的に、以下のうちの少なくとも1つを備えることができる:
−デザインの一組の変化についての品質値の感度分析を実行するために、該美的表現のパラメータ記述を変更し、該デザインのこれらの変化について、近似モデルを使用して該品質値を導出するモジュール、
−物理信号をユーザに発行するインターフェースであって、該物理信号は、該デザインの美的表現のパラメータ記述の異なる変更についての該品質値の感度をユーザに伝えるものである、
−ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた感度分析を考慮して、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を変更する、コンピュータモジュール。
【0039】
該システムは、付加的または代替的に、以下のうちの少なくとも1つを備えることができる:
−最適化処理中にコスト関数としてCAEシミュレーションモジュールの近似モデルを使用して、改良された品質値を備える少なくとも1つの修正済みデザインを生成する最適化モジュールと、
−物理信号をユーザに発行するインターフェースであって、該物理信号は、改良された品質値を達成するための該デザインを修正する方法をユーザに伝えるものである、
−ユーザインターフェースからの入力に応じて、該最適化プロセスの結果を考慮に入れて、美観設計プロセスにおいて該対象物の美的表現のパラメータ記述を変更する、コンピュータモジュール。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して説明され、ここで、同じ参照符号は、同じ要素(エレメント)または機能的に類似したエレメントを示す。明細書において「一実施形態」または単に「実施形態」は、該実施形態と共に記述される特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。明細書中の様々な箇所に「一実施形態」という用語が現れるが、これは、すべて同じ実施形態を参照しなければならないというものではない。
【0041】
以降に続く詳細な説明の一部は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作のアルゴリズムおよびシンボル(記号)的表現で提示される。これらのアルゴリズム的な記述および表現は、当該データ処理分野の当業者によって使用される手段であり、該分野の他の当業者に対して、その作業の本質を最も効果的に伝えるものである。アルゴリズムは、ここでは、一般的に、所望の結果へと導くステップ(命令)の首尾一貫したシーケンスと考えることができる。これらのステップは、物理量の物理的な操作を必要とするものである。通常、必ずしも必要ないけれども、これらの量は、記憶されることのできる電気的、磁気的、もしくは光学的な信号の形態を取り、転送され、組み合わされ、比較され、もしくは操作(manipulate)される。主として共通に利用するために、便宜上、ビット、値、要素(エレメント)、シンボル(記号)、文字、用語、数等として、これらの信号が適宜参照される。さらに、便宜上、普遍性を損なうことなく、モジュールやコードとして、物理量の物理的な操作を必要とするステップの所定の配列が参照される。
【0042】
しかしながら、これらおよび類似の用語のすべては、適切な物理量に関連づけられるべきであり、これらの量に適用される便利なラベルにすぎない。以下の議論から明らかなように、別途具体的に述べられない限り、記述全体を通して、「処理(processing)」、「計算(computing)」、「計算、算出(calculating)」、「算出、判断(determining)」、「表示(displaying)」等の用語を利用した説明は、コンピュータシステムのメモリ、レジスタ、または他の情報記憶装置、転送、表示装置内において物理的(電子的)な量として表現されるデータを操作および変換する、コンピュータシステムまたは同様の電子計算デバイス(コンピューティングデバイス)のアクションおよびプロセスを参照する点を理解されたい。
【0043】
本発明の或る側面は、ここではアルゴリズムの形態で記述される処理ステップおよび命令を含む。本発明の処理ステップおよび命令は、ソフトウェア、ファームウェアないしハードウェアで具現化されることができ、ソフトウェアで具現化されるときには、様々なオペレーティングシステムによって使用される様々なプラットフォーム上に常駐して操作されるようダウンロードされることができる。
【0044】
本発明はまた、ここで述べる操作を実行するための装置に関する。この装置は、必要とされる目的のために特定的に構成されてもよいし、あるいは、コンピュータに記憶されるコンピュータプログラムによって選択的に起動され、もしくは再構成される汎用コンピュータであってもよい。このようなコンピュータプログラムを、コンピュータ可読記憶媒体に記憶することができるが、該記憶媒体として、たとえば、フロッピーディスク、光ディスク、CD−ROM、磁気光ディスク、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気または光カードを含む任意の種類のディスク、特定用途向けIC(ASIC)、あるいは、電子的な命令を記憶するのに適した任意の種類の媒体があり、それぞれは、コンピュータシステムのバスに接続されるが、これらの媒体に限定されるものではない。さらに、当該明細書で参照されるコンピュータは、単一のプロセッサを含むことができ、あるいは、計算能力増大のために複数プロセッサの設計を採用するアーキテクチャのものでもよい。
【0045】
ここで提示されるアルゴリズムおよび表示は、本来的に、特別のコンピュータや装置に関連するものではない。様々な汎用システムを、ここで記述する教示に従って、プログラムと共に用いることができ、あるいは、必要な方法ステップを実行するのに、より特化した装置を構成する方が、便利かもしれない。これらのシステムの多様性に必要な構成は、以下の記述から明らかとなろう。さらに、本発明は、特定のプログラミング言語を参照して記述されるものではない。様々なプログラミング言語を用いて、ここで記述される本発明の教示を実現することができ、また、特定の言語に対する何らかの参照は、本発明の実施可能要件およびベストモードの開示のために提供される。
【0046】
さらに、当該明細書で使用される言語は、主に、読みやすさおよび教示的な目的で選択されており、進歩的な主題を概説したり制限したりするのに選択されたものではない。このように、本発明の開示は、本発明の範囲について、例示的なものを意図しており、制限されるものではなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲において述べられる。
【0047】
本発明によるさらなる特徴、目的および有利な点は、添付の図面と共に、以下の本発明の実施形態の詳細な説明を読むことにより当業者には自明となろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】既知の設計システムのモジュールの一般的なビューを示す図。
【図2a】機能的品質値のみがユーザに伝えられる場合の、本発明に従う設計システムの第1の実施形態のモジュールの一般的なビューを示す図。
【図2b】付加的な最適化ループが実行され、代替のデザインまたはデザインについての方向性(direction)がユーザに伝えられる場合の、図2aのシステムの修正版を示す図。
【図2c】図2bの最適化モジュールP1の詳細を示す図。
【図3】事前(a priori)に利用可能な機能データでのモデルの訓練(正確な機能的近似を目標とする)を示す図であり、これは、図2aおよび図2bで示すプロセスと共に使用される。
【図4】設計プロセス中に生成されたデータでのモデルのさらなる訓練(正確な機能的近似を目標とする)を示す図であり、これは、図2aおよび図2bに示されるプロセスと共に使用される。
【図5】モデルの事前の訓練およびオンラインでの訓練(図3および図4)の組み合わせを示す図。
【図6a】機能的品質の推定および(または)機能的最適化の結果をインターフェースを介してユーザに伝えることの例を示し、ここでは、美的デザインの品質指標を表示することを示す図。
【図6b】機能的品質の推定および(または)機能的最適化の結果をインターフェースを介してユーザに伝えることの例を示し、ここでは、美観設計プロセスのための好ましい方向性および好ましくない方向性(機能的品質値に従う)のカラー符号化を示す図。
【図6c】機能的品質の推定および(または)機能的最適化の結果をインターフェースを介してユーザに伝えることの例を示し、ここでは、美観設計プロセスの好ましい方向性および好ましくない方向性(機能的品質値に従う)の触覚的(haptic)符号化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
まとめると、本発明は、コンピュータに基づく(CAD、対話型の没入型ディスプレイ、仮想クレーシステム)美観設計段階を、少なくとも部分的に、たとえばCAEシステムからの機能設計プロセスと併合することを提案する。これにより、プロセス全体をより効率的なものとすることができ、美観設計プロセスをより包括的なものとすることができる。すなわち、美観設計プロセスが完了した後では、スタイリングに何の変更も行われない。また、機能的要件の統合をより容易なものとし、結果として、より包括的なものとすることができる。両方のプロセスのこのような緊密な統合を可能にして、上記のような利点を実現するため、主に、2つの問題を解決しなければならない。第1に、CAE解析に必要な計算時間(たとえば、数値流体力学(CFD)による空気力学パラメータや、動的安定性)に起因して、美的ベースの設計プロセス中(すなわち、スタイリストが、デザインの形状をコンスタントに変更している間)での機能的性能指標に基づくCAEのオンライン計算を行うことができない。形状毎の品質指標を継続的に計算することは不可能である。第2に、形状毎の性能指標が利用可能でも(すなわち、上記第1の問題が解決しても)、強い技術的バックグラウンドを必ずしも持たない者がこの情報を最も効率的に使用するやり方で、スタイリストにこの情報をどう伝えることができるか、である。
【0050】
以下、本発明の詳細を説明する。上記述べた問題は、以下のような方法で解決される。時間上の制約を回避するため、モデルM1が、真のCAE計算の代わりに、美観設計プロセス中で使用される。このモデルは、従来の設計最適化中の代理モデルと類似の目的に寄与するものである。様々な異なるモデル構造を考えることができ、例として、ニューラルネットワーク、応答曲面モデル、多項式モデル、クリギング(ガウス)モデルがある。これらのモデルは、CAE計算の機能を近似する。モデルの応答時間が非常に高速なので、図2aに示されるように、該モデルを、現在の形状(shape)についての設計者に対する即時のフィードバックとして、設計プロセス中で使用することができる。
【0051】
さらに、該モデルを品質の尺度(指標)として使用することで、高速の最適化プロセスを実行することができ(図2bのプロセスP1によって示される)、これは、設計者に、現在の形状についての品質のフィードバックを与えるだけでなく、より良好な機能的品質を備える代替の類似の形状(すなわち、CFDのようなCAE計算に関して)および将来の変更に対する現在の形状の感度(sensitivity)についての情報(たとえば、図6bに示されるインターフェースによって符号化される)を与える。
【0052】
一般に、対象物の様々な表現(すなわち、そのパラメータ記述(parametric description))を、美観設計プロセス、機能設計プロセス、およびモデルについて使用する。異なるプロセスを併合するとき、これらの表現間のインターフェースが必要とされる。美観設計プロセスに適した表現は、通常、設計者によって使用される計算ツールによって決定され、標準的なツールおよび関連表現は、CADデータである。機能的表現は、低次元でなければならず、また、流体力学(fluid dynamics)のようなCAEシステムの場合にはデザインの計算的な変更に適したものでなければならない。ほとんどのCAEシステムが、計算のために、計算グリッドないしメッシュに依拠しており、機能的表現は、CAEソルバ(solver)の計算グリッドを適応可能なものであるか、もしくは、現在の機能的表現に基づく機能設計プロセス中に自動的に新しいグリッド/メッシュを生成するのに適したものでなければならない。NURBS(後述する参考文献7を参照)および自由形状変形(FFD,後述する参考文献8を参照)の表現が、非常に適した機能的表現として示されている。モデル表現は、通常、低次元の機能的表現である、STL表現(後述する参考文献9を参照)のようなユニバーサルな表現を、該3つの種類の表現間で切り換えるために使用することができる。
【0053】
したがって、本発明の典型的な実施形態では、モデルは、入力として、パラメータ化された形状(形状のパラメータ)、たとえば、NURBS表現または自由形状変形(FFD(free form deformation)表現の制御点(文献7、8を参照)を受け取り、あるいは、代替的にCAD表現を受け取る。モデルの出力は、デザインを機能的に特徴付けるのに使用される1つまたは複数の品質指標/品質値となる(たとえば、自動車のシャーシの空気力学(aerodynamics)についての抵抗係数)。
【0054】
設計者に情報を戻す手法についての第2の問題は、いくつかの方法で解決することができる。図2aの場合では、すなわち、現在のデザインについての品質値を計算する場合には、たとえばカラーコード(赤は良好でない性能を表し、緑は良好な性能を表す、または、図6aのような性能カラム(メータ)であり、その高さが品質値に相当する)を使用して、視覚的に、該品質値を設計者に対して表示することができる。図2bの代替形状が利用可能な場合では、より高度なインターフェースが提案される。
【0055】
第1に、有望な方向(direction)を、現在の形状および最適化プロセスP1で生成された形状から計算することができ、これらの方向をカラーコード化(符号化)して、現在のデザイン(図6b)の後ろ(左の図)または現在のデザイン上(右の図)に表示することができる。たとえば、デザインが赤色であるところの、形状に対して垂直方向の変更は、回避されるべきであり、デザインが緑色(または青色)であるところの、現在の形状に対して垂直方向の変更は、機能的性能を増大する可能性が高い、ことを示す。さらに、形状情報を、図6cに示すような、より適切なやり方で設計者に伝達することができる。デジタル設計プロセスについて仮想現実(virtual reality)または拡張現実(augmented reality)の環境において設計者によって使用されるコントローラに対する触覚力(haptic force)のフィードバックを、インターフェースとして使用することができる。この力は、機能的な面から所望なものであり、かつ元の(オリジナルの)形状および最適化プロセスP1で計算された形状から抽出された方向には、コントローラで設計者が誘起する変化(variations,変形)を生じさせることができる。さらに、機能的に不所望な方向へのデザインの変化を、その方向におけるコントローラの抵抗を増すことによって困難なものとすることができる。
【0056】
図3および図4は、モデルM1(あるいは、複数のモデルのアンサンブルを使用する場合には、該複数のモデル)を、美観設計プロセスが開始する前に利用可能なデータ(図3)、または、美観設計プロセス中に生成されたデータ(図4)を用いて改良する付加的な方法を記述する。後者のケースでは、両方のプロセスが非同期に実行することが重要である。一般に、美観設計プロセスは、CFD計算(1つの計算について数時間を必要とする)よりも高速に形状を変更する(図のA2およびA3によって示される)ので、“美観設計ループ”は、CFD計算が実行していている間に進行しなければならない。夜間に、週末に、あるいは他の制約に起因して、同時点において、美観設計プロセスが停止し、いくつかのCFD計算が、実験計画法または最適化手法のデザインを使用して可能となりうる。この情報を、モデルM1にフィードバックする。
【0057】
アプリケーションの領域
本発明は、任意の実世界の対象物のデザインにおけるアプリケーション(適用業務)に適用可能であるが、とりわけ、陸上の、航空上の、海上の車両、自動車のデザイン、オートバイのデザイン、航空機のデザイン、船舶のデザイン、家具のデザイン、工業デザインに適用可能である。
【0058】
用語解説
CAD(computer aided design)
コンピュータ支援設計のことである。
CAE(computer aided engineering)
コンピュータ支援エンジニアリングのことである。
CFD(computational fluid dynamics)
数値流体力学のことである。
美観設計(aesthetic design)
対象物が、設計者の芸術的な嗜好および(または)何らかのブランドの仕様(たとえば、自動車のデザイン、家具のデザイン)に従って形作られる、設計者を必要とするプロセスを示す。
機能設計(functional design)
実験(コンピュータによる実験を含む)によって提供される、何らかの目的となる物理的な品質の指標(尺度)に従い、対象物が形作られるプロセス。
美的表現(aesthetic representation)
美観設計プロセス中に人間の設計者によって生じる変化(variations)に最も適した、対象物のパラメータ記述(たとえば、CADデータまたはデジタルクレーデータ(digital clay data))
機能的表現(functional representation)
対象物の物理的な品質の指標を決定するのに最も適切な、および(または)、最適化プロセス中にコンピュータプログラムによって行われる変化(variations)に最も適切な、対象物のパラメータ記述(たとえば、自由形状変形(文献8)またはNURBD(文献7))。
モデル表現(model representation)
特定のモデル(たとえば、ニューラルネットワーク)に基づく、対象物の物理的な品質の指標を決定するのに最も適切な、対象物のパラメータ記述。この表現は、多くは、機能的表現の低次元バージョンである。
【0059】
参考文献

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[4] Yaochu Jin, Markus Olhofer and Bernhard Sendhoff. A Framework for Evolutionary Optimisation with Approximate Fitness Functions. IEEE Transactions on Evolutionary Computation, 6(5), pages 481-494, 2002.

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[6] EP 1557788 A1 “Reduction of fitness evaluations using clustering technique and neural network ensembles” of Honda Research Institute Europe GmbH

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[9] Lars Graening, Stefan Menzel, Martina Hasenjager, Thomas Bihrer, Markus Olhofer and Bernhard Sendhoff. Knowledge Extraction from Aerodynamic Design Data and its Application to 3D Turbine Blade Geometries. In Journal of Mathematical Modelling and Algorithms, 7(4), 329-350, 2008.

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Fehmi Cirak, Michael J. Scott, Erik K. Antonsson, Michael Ortiz, Peter Schroder, Integrated modeling, finite-element analysis, and engineering design for thin-shell structures using subdivision, Computer-Aided Design, Volume 34, Issue 2, February 2002, Pages 137-148, ISSN 0010-4485, DOI: 10.1016/S0010-4485(01)00061-6.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実世界の対象物についての、コンピュータによる美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するための方法であって、
a)実世界の対象物の美的表現を定義するステップと、
b)CAEシミュレーションの近似モデルを使用して、前記美的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するステップと、
c)ユーザに前記品質値を伝える物理信号を該ユーザに発行するステップと、
d)ユーザインターフェースからの入力に応じて、前記機能的品質値を考慮し、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更するステップと、
e)前記ステップb)からd)を、終了条件が満たされるまで繰り返すステップと、
を含む方法。
【請求項2】
実世界の対象物についての、コンピュータによる美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するための方法であって、
a)実世界の対象物の美的表現を定義するステップと、
b)CAEシミュレーションの近似モデルを使用して、前記美的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するステップと、
c)デザイン上の一組の変化についての品質値の感度分析を実行するため、前記美的表現のパラメータ記述を変更し、該デザイン上のこれらの変化について、前記近似モデルを使用して品質値を導出するステップと、
c)前記デザインの美的表現のパラメータ記述の異なる変更についての前記品質値の感度をユーザに伝える物理信号を、該ユーザに発行するステップと、
d)ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた前記感度分析を考慮して、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更するステップと、
e)前記ステップb)からd)を、終了条件が満たされるまで繰り返すステップと、
を含む方法。
【請求項3】
前記美的表現からモデル表現への変換が行われ、前記近似モデルは、前記対象物の前記モデル表現のパラメータ記述を入力として受け取る、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
実世界の対象物についての、コンピュータによる美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するための方法であって、
a)実世界の対象物の美的表現を定義するステップと、
b)前記対象物の美的表現から機能的表現への変換を定義するステップと、
b)CAEシミュレーションの近似モデルを使用して、前記機能的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するステップと、
c)最適化プロセス中にCAEシミュレーションの該近似モデルをコスト関数として使用して、改良された品質値を備える少なくとも1つの修正済みデザインを生成するよう、該最適化プロセスを実行するステップと、
d)改良された品質値を達成するための、該デザインを修正する方法をユーザに伝える物理信号を、該ユーザに発行するステップと、
e)ユーザインターフェースからの入力に応じて、前記最適化プロセスの結果を考慮して、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の美的表現のパラメータ記述を自動的に変更するステップと、
f)前記ステップc)からd)を、終了条件を満たすまで繰り返すステップと、
を含む方法。
【請求項5】
前記機能的表現からモデル表現への変換が実行され、前記近似モデルは、前記対象物の前記モデル表現のパラメータ記述を入力として受け取る、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザに伝えられるのに最も適した前記物理信号を導出するため、前記機能的表現から前記美的表現への変換が実行される、
請求項2または4に記載の方法。
【請求項7】
さらに、
前記終了条件が満たされたときに存在する前記美的表現または前記機能的表現に基づいて、前記実世界の対象物を構築するステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デザインの初期の前記美的表現は、CADデータに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デザインの前記機能的表現は、自由形状変形(FFD)に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記デザインの前記機能的表現は、NURBS表現に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記物理信号は、視覚的な標示および(または)触覚的フィードバックである、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
モデル表現、機能的表現、および美的表現のうちの任意の表現のパラメータ記述を、前記デザインの機能的品質値に関連づける、事前に利用可能なデータを使用して、前記近似モデルは導出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記近似モデルは、CAEシミュレーションから非同期に生成されたデータを使用することにより、前記統合化された設計プロセス中に更新され、または新たに導出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記近似モデルは、ニューラルネットワークである、
請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記近似モデルは、クリギング(ガウス)モデルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記最適化は、進化戦略(evolution strategy)で実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記対象物の美的表現の機能的表現への変換を実行すること、および(または)該変換を設計することを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記実世界の対象物は、物体である、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
自動車、オートバイ、または航空車両を設計するために請求項1に従う方法の使用。
【請求項20】
実世界の対象物についての美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するためのコンピュータ支援システムであって、
a)実世界の対象物の美的表現を定義するコンピュータモジュールと、
b)CAEシミュレーションモジュールの近似モデルデータの供給を受けて、前記美的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するコンピュータモジュールと、
c)前記品質値をユーザに伝える物理信号を、該ユーザに発行するインターフェースと、
d)ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた前記機能的品質値を考慮して、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の美的表現のパラメータ記述を変更するコンピュータモジュールと、
を備えるシステム。
【請求項21】
実世界の対象物についての美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するためのコンピュータ支援システムであって、
a)実世界の対象物の美的表現をユーザが定義することを可能にするコンピュータモジュールと、
b)CAEシミュレーションモジュールの近似モデルデータの供給を受けて、機能的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するコンピュータモジュールと、
c)デザインの一組の変化についての品質値の感度分析を実行するため、前記美的表現のパラメータ記述を変更し、該デザインの変化について、前記近似モデルを使用して品質値を導出するモジュールと、
c)前記デザインの前記美的表現のパラメータ記述の異なる変更についての前記品質値の感度をユーザに伝える物理信号を、該ユーザに発行するインターフェースと、
d)ユーザインターフェースからの入力に応じて、得られた前記感度分析を考慮して、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の前記美的表現のパラメータ記述を変更する、コンピュータモジュールと、
を備えるシステム。
【請求項22】
実世界の対象物についての美観設計プロセスおよび機能設計プロセスを統合するためのコンピュータ支援システムであって、
a)実世界の対象物の美的表現をユーザが定義することを可能にするコンピュータモジュールと、
b)前記対象物の美的表現から機能的表現への変換を定義するコンピュータモジュールと、
b)CAEシミュレーションモジュールの近似モデルデータの供給を受けて、前記機能的表現のパラメータ記述を入力として用いて機能的品質値を計算するコンピュータモジュールと、
c)最適化プロセス中に前記CAEシミュレーションモジュールの近似モデルをコスト関数として用いて、改良された品質値を備える少なくとも1つの修正済みデザインを生成する最適化モジュールと、
d)改良された品質値を達成するための前記デザインを修正する方法をユーザに伝える物理信号を、該ユーザに発行するインターフェースと、
e)ユーザインターフェースからの入力に応じて、前記最適化プロセスの結果を考慮して、前記美観設計プロセスにおいて前記対象物の前記美的表現のパラメータ記述を変更するコンピュータモジュールと、
を備えるシステム。
【請求項23】
前記対象物の前記美的表現の機能的表現への変換を定義するコンピュータモジュールを備える、請求項20または21に記載のシステム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6c】
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【図6a】
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【図6b】
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【公開番号】特開2011−40054(P2011−40054A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−151185(P2010−151185)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(503113186)ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー (50)
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
【Fターム(参考)】