説明

自動車のベンチレータ

【課題】中央に通気開口が形成されていて、車体に形成された取付孔に嵌着固定された枠体と、上側基端部が枠体の上部に取り付けられた可撓性シートより成るバタフライバルブと、枠体に一体に固定されていて、該枠体の通気開口に配置されたバルブ受け部とを有する自動車のベンチレータにおいて、そのバタフライバルブが、開位置から閉位置に回動してバルブ受け面に当ったとき、大きな異音が発生することを阻止する。
【解決手段】バタフライバルブ10が開状態から閉位置へ回動するとき、該バタフライバルブ10がバルブ受け面16に少しずつ当接して行くように、当該バルブ受け面16は、その上端17と下端18とを結ぶ直線Lよりも車室外Oの側に向けて突出形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車外から車室内に取り入れられた空気を車室外に排出するための自動車のベンチレータに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したベンチレータを自動車の車体に取り付けることは従来より周知である(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図7は、従来の自動車のベンチレータ3Aの一例を示す斜視図であり、図8は図7のVIII−VIII線断面図であって、ベンチレータ3Aが車体1Aに取り付けられた状態を示す図である。これらの図に示すように、従来のベンチレータ3Aは、中央に通気開口4Aが形成された矩形のダクト状に形成された枠体5Aを有し、その枠体5Aは車体1Aに形成された取付孔8Aに嵌着固定されている。また、枠体5Aの上部には、可撓性シートより成るバタフライバルブ10Aの上側基端部が取り付けられていて、枠体5Aの通気開口4Aには、互いに間隔をあけた複数のバルブ受け部13Aが配置されている。各バルブ受け部13Aは、その上端部と下端部が枠体5Aの上部と下部にそれぞれ一体に固定されていて、枠体5Aとバルブ受け部13Aは、一体に成形された樹脂成形品より成る。
【0004】
枠体5Aが車体1Aに固定された状態で、図8に符号Iを付した側が車室内側となり、符号Oを付した側が車室外側となる。ここで、車室内Iの気圧が車室外Oの気圧以下であるときは、バタフライバルブ10Aは、図8に二点鎖線で示したように、バルブ受け部13Aのバルブ受け面16Aに当接して、枠体5Aの通気開口4Aを閉じた閉位置を占める。このため、車外の泥水や塵埃が車室内Iに侵入することはない。これに対して、車室内Iの気圧が車室外Oの気圧よりも高くなると、バタフライバルブ10Aは、図7に示し、かつ図8に実線で示したように、その上側基端部のまわりを車室外側へ向けて矢印PA方向に回動する。これにより枠体5Aの通気開口4Aが開放され、図8に矢印XAで示したように、車室内Iの空気が通気開口4Aを通して車室外Oに流出する。このようにして、車室内に取り入れられた空気が車室外に排出され、車室内の空気が換気される。車室内Iの気圧が再び車室外Oの気圧以下となれば、バタフライバルブ10Aは、その自重によって矢印PAと反対方向に回動して二点鎖線で示した閉位置を占める。
【0005】
ところで、上述した従来のベンチレータ3Aにおいては、そのバタフライバルブ10Aが、図8に実線で示した開状態から二点鎖線で示した閉位置へ回動したとき、そのバタフライバルブ10Aがバルブ受け面16Aに強く当り、このときの衝撃によって「パシャン」という比較的大きな異音が発生する。特に、車体に回動開閉可能に支持された図示していないドアを勢いよく閉じたとき、瞬間的に車室内の圧力が高まって、バタフライバルブ10Aが急激に開位置に回動し、次いでそのバタフライバルブ10Aが勢いよく閉じてバルブ受け面16Aに当るので、このとき大きな異音が発生し、自動車のユーザに不快感を与えるおそれがあった。
【0006】
そこで、バルブ受け部13Aのバルブ受け面16Aに、例えば不織布や発泡シートなどから成る緩衝材を貼着して、バタフライバルブ10Aが勢いよく閉じたときも、大きな異音が発生しないようにすることが考えられる。ところが、バルブ受け面16Aにこのような緩衝材を貼着すれば、それだけ自動車のコストが上昇する欠点を免れない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−310031号公報
【特許文献2】特開2000−313225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、バルブ受け部のバルブ受け面に緩衝材を貼着しなくとも、バタフライバルブがバルブ受け面に勢いよく当ったとき、大きな異音が発生することを阻止できる自動車のベンチレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、中央に通気開口が形成されていて、車体に形成された取付孔に嵌着固定された枠体と、上側基端部が前記枠体の上部に取り付けられた可撓性シートより成るバタフライバルブと、前記枠体に一体に固定されていて、該枠体の通気開口に配置されたバルブ受け部とを有し、車室内の気圧が車室外の気圧以下であるとき、前記バタフライバルブは、前記バルブ受け部のバルブ受け面に当接して、前記枠体の通気開口を閉じた閉位置を占め、車室内の気圧が車室外の気圧よりも高くなったとき、前記バタフライバルブは、その上側基端部のまわりを車室外側へ回動して枠体の通気開口を開放する自動車のベンチレータにおいて、前記バタフライバルブが開状態から閉位置へ回動するとき、該バタフライバルブが前記バルブ受け面に少しずつ当接して行くように、当該バルブ受け面が、その上端と下端とを結ぶ直線よりも車室外側に向けて突出形成されていることを特徴とするベンチレータを提案する(請求項1)。
【0010】
また、上記ベンチレータにおいて、前記バルブ受け面が、車室外側へ向けて突出した状態に湾曲形成されていると有利である(請求項2)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バルブ受け面が車室外側へ向けて突出形成されているので、バタフライバルブが開位置から閉位置へ回動するとき、そのバタフライバルブは、バルブ受け面に少しずつ当接して行く。このため、バルブ受け面に緩衝材が貼着されてはいないが、バタフライバルブがバルブ受け面に当ったとき、大きな異音が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車の後部を示す外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線拡大断面図である。
【図3】ベンチレータの外観斜視図である。
【図4】図3の矢印IV方向に見たベンチレータの部分拡大斜視図である。
【図5】バタフライバルブが閉じるときの動作を説明した図である。
【図6】バルブ受け面の他の形態を示す図である。
【図7】従来のベンチレータの外観斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線拡大断面図であって、ベンチレータが車体に取り付けられた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1は自動車の後部を示す外観斜視図であり、この図における符号1は、自動車の車体を示し、符号2は車体1の後部に取り付けられたリヤバンパカバーを示している。また、図2は、図1のII−II線拡大断面図であって、この図と図1に示すように、リヤバンパカバー2の内側には、自動車のベンチレータ3が配置されている。また、図3は、このベンチレータ単独の斜視図であり、図4は図3の矢印IV方向に見た拡大斜視図である。
【0015】
図2及び図3に示すように、ベンチレータ3は、中央に通気開口4が形成されたダクト状の枠体5を有し、図に一例として示した枠体5はほぼ矩形に形成されている。また、図2及び図4に示すように、枠体5の外周には、互いに間隔をあけて配置された複数の爪6が突設されている。図2に示すように、枠体5は、車体1の一部を構成するクォータパネル7に形成された取付孔8に嵌着されている。このとき各爪6が、取付孔8の周辺のクォータパネル車内側面に係合して、枠体5がクォータパネル7に固定されている。このようにして、枠体5が、車体1に形成された取付孔8に嵌着固定されているのである。その際、枠体5に貼着された弾性シール材9(図3には示さず)がクォータパネル7の車外側面に圧接してシール性が確保されている。
【0016】
また、ベンチレータ3は、ゴムシート又は樹脂シートなどの可撓性シートより成るバタフライバルブ10を有し、このバタフライバルブ10の上側基端部が枠体5の上部に取り付けられている。本例のベンチレータ3においては、図4に示すように、枠体5の上部に間隔をあけて配置された複数の係止孔11が形成され、その各係止孔11に、バタフライバルブ10の上側基端部に形成された舌片12(図2及び図3も参照)が係入することにより、バタフライバルブ10の上側基端部が枠体5の上部に係止されている。バタフライバルブ10の上側基端部を枠体5の上部に接着剤などによって固定することにより、そのバタフライバルブ10の上側基端部を枠体5の上部に取り付けることもできる。
【0017】
また、枠体5の通気開口4には、互いに間隔をあけて配置された複数のバルブ受け部13が配置され、特に図2に明示するように、その各バルブ受け部13の上端部14と下端部15が枠体5の上部と下部にそれぞれ一体に固定されている。枠体5とバルブ受け部13は、樹脂によって一体に成形された1つの成形品として構成されている。このように、本例のベンチレータ3は、枠体5に一体に固定されていて、その枠体5の通気開口4に配置されたバルブ受け部13を有しているのである。
【0018】
図2に示したクォータパネル7によって、トランクルーム側の車室内Iと、車室外Oに仕切られていて、車室内Iの気圧が車室外Oの気圧以下であるときは、可撓性を有するバタフライバルブ10は、図2に二点鎖線で示したように、バルブ受け部13のバルブ受け面16に当接して、枠体5の通気開口4を閉じた閉位置を占めている。これにより車室外Oから車室内Iに泥水や塵埃が侵入することが阻止される。これに対し、車室内Iに外気が強制的に送り込まれて車室内Iの気圧が車室外Oの気圧よりも高くなると、バタフライバルブ10は、図3及び図2に実線で示したように、その上側基端部のまわりを、車室外Oの側へ向けて矢印P方向に回動して開位置を占める。これにより、枠体5の通気開口4が開放され、車室内Iの空気が、図2に矢印Xで示したように、通気開口4を通して車室外Oに排出される。このようにして、車室内Iの空気が換気されるのである。
【0019】
上述した構成と作用自体は、図7及び図8に示した従来のベンチレータと変わりはない。その際、従来のベンチレータにおいては、先にも説明したように、開位置を占めていたバタフライバルブが急激に閉位置に回動し、そのバタフライバルブがバルブ受け面に強く当ったとき、大きな衝撃音が発生するおそれがあった。この点に関し、本発明者が検討したところ、その原因は主に次の点にあることが判明した。
【0020】
図8に示した従来のバタフライバルブ3Aのバルブ受け面16Aは、その全体に亘って直線状に延びている。このため、図8に実線で示したように開位置にあったバタフライバルブ10Aが、同図に二点鎖線で示した閉位置に回動したとき、バタフライバルブ10Aは、その全体がほぼ同時にバルブ受け面16Aに当る。このため、その衝撃によって大きな異音が発生していたのである。
【0021】
そこで、本例のベンチレータ3においては、図2及び図3に示すように、バルブ受け部13の車室外Oを向いた側の面、すなわちバルブ受け面16が、その上端17と下端18とを結ぶ直線Lよりも車室外Oの側へ向けて突出形成されている。図2及び図3に示した例では、バルブ受け面16が、車室外O側へ向けて突出した状態に湾曲形成されている。
【0022】
図5は、バタフライバルブ10が実線で示した開位置から矢印Yで示したように閉位置に向けて回動するときの様子を示した説明図である。矢印Y方向に回動し始めたバタフライバルブ10は、先ず、図5に破線で示したようにバルブ受け面16に当接し始め、次にそのバタフライバルブ10は一点鎖線で示したようにバルブ受け面16に当接し、次いで当該バタフライバルブ10は、二点鎖線で示した閉位置に回動する。
【0023】
上述のようにバタフライバルブ10が開位置から閉位置へ回動するとき、バルブ受け面16が車室外Oの側に向けて突出しているので、可撓性を有するバタフライバルブ10は、図5に破線、一点鎖線及び二点鎖線で示したように、バルブ受け面16に少しずつ当接して行き、そのバタフライバルブ10が最終的に二点鎖線で示した閉位置に至ったとき、当該バタフライバルブ10はバルブ受け面16の全体に亘って当接する。このように、バタフライバルブ10が開位置から閉位置に回動するとき、そのバタフライバルブ10の全体が同時にバルブ受け面16に当るのではなく、バタフライバルブ10は少しずつ徐々にバルブ受け面16に当って行くので、バタフライバルブ10が閉位置に至るときの衝撃が弱められ、このとき発生する音は極めて小さなものとなる。このため、バルブ受け面16に緩衝材が貼着されてはいないが、バタフライバルブ10がバルブ受け面16に当ったとき、大きな異音が発生することはない。
【0024】
上述のように、本例のベンチレータ3は、そのバタフライバルブ10が開状態から閉位置へ回動するとき、該バタフライバルブ10がバルブ受け面16に少しずつ当接して行くように、当該バルブ受け面16は、その上端17と下端18とを結ぶ直線Lよりも車室外Oの側に向けて突出形成されているのである。その際、そのバルブ受け面16の突出形態は、図2及び図3に示したように湾曲状態であることが好ましいが、これに限定されるものではない。たとえば、バルブ受け面16が、図6の(a)に示したように車室外Oの側に向けて台形状に突出し、或いは図6の(b)に示したように三角形状に突出していてもよい。或いは、図6の(c)に示したように、バルブ受け面16の一部が車室外Oの側に向けて突出していてもよい。
【0025】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、バタフライバルブとバルブ受け部が上下に二段以上設けられているベンチレータなどにも、本発明を支障なく適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 車体
3 ベンチレータ
4 通気開口
5 枠体
8 取付孔
10 バタフライバルブ
13 バルブ受け部
16 バルブ受け面
17 上端
18 下端
I 車室内
L 直線
O 車室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に通気開口が形成されていて、車体に形成された取付孔に嵌着固定された枠体と、上側基端部が前記枠体の上部に取り付けられた可撓性シートより成るバタフライバルブと、前記枠体に一体に固定されていて、該枠体の通気開口に配置されたバルブ受け部とを有し、車室内の気圧が車室外の気圧以下であるとき、前記バタフライバルブは、前記バルブ受け部のバルブ受け面に当接して、前記枠体の通気開口を閉じた閉位置を占め、車室内の気圧が車室外の気圧よりも高くなったとき、前記バタフライバルブは、その上側基端部のまわりを車室外側へ回動して枠体の通気開口を開放する自動車のベンチレータにおいて、前記バタフライバルブが開状態から閉位置へ回動するとき、該バタフライバルブが前記バルブ受け面に少しずつ当接して行くように、当該バルブ受け面が、その上端と下端とを結ぶ直線よりも車室外側に向けて突出形成されていることを特徴とするベンチレータ。
【請求項2】
前記バルブ受け面が、車室外側へ向けて突出した状態に湾曲形成されている請求項1に記載のベンチレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−136194(P2012−136194A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291006(P2010−291006)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】