説明

自動車の換気構造

【課題】走行風の進入により室内の換気機能が低下するのを防止できる自動車の換気構造を提供する。
【解決手段】車室Aを構成する車体1の後端下部(ロアバックパネル)7に形成され、該車室A内の空気を車外に排出する換気口7aと、前記車体1の後端下部7に該換気口7aを後方から覆うように配設されたリヤバンパ11とを備えた自動車の換気構造であって、前記換気口7aの車幅方向内側に、前記後端下部7とリヤバンパ11との隙間sを遮蔽する遮蔽板12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の後端下部に形成された換気口と、該後端下部に換気口を後方から覆うように配設されたリヤバンパとを備えた自動車の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車では、車室内の換気を行うことにより、窓ガラスが曇るのを抑制する場合がある。例えば、特許文献1では、車体の後端下部に配置されたテールエンドメンバの車幅方向両端部に通気口を形成し、該左,右の通気口に室内から室外への空気の流れのみを許容するベンチレータを配設し、前記テールエンドメンバに前記左,右の通気口を後方から覆うようにリヤバンパを配設した換気構造を採用している。
【特許文献1】特開2005−75082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来の換気構造では、走行中に車体の床下を流れる走行風が、テールエンドメンバとリヤバンパとの間に進入してベンチレータを押圧して塞いでしまう場合がある。その結果、室内の換気機能が低下し、窓ガラスが曇り易くなるという問題が生じる。
【0004】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、走行風の進入により室内の換気機能が低下するのを防止できる自動車の換気構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車室を構成する車体の後端下部に形成され、該車室内の空気を車外に排出する換気口と、前記車体の後端下部に該換気口を後方から覆うように配設されたリヤバンパとを備えた自動車の換気構造であって、前記換気口の車幅方向内側に、前記後端下部とリヤバンパとの間を遮蔽する遮蔽板を設けたことを特徴としている。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の自動車の換気構造において、前記遮蔽板は、後輪の少なくとも後側部分を覆うフェンダライナに一体的に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明に係る換気構造によれば、換気口の車幅方向内側に、車体の後端下部とリヤバンパとの間を遮蔽する遮蔽板を設けたので、車体の床下を流れる走行風が車体とリヤバンパとの間に進入しても、遮蔽板が換気口に流入するのを阻止することとなり、室内の換気機能を確保でき、窓ガラスが曇るのを抑制できる。
【0008】
請求項2の発明では、遮蔽板をフェンダライナに一体的に設けたので、フェンダライナの組み付けと同時に遮蔽板を組み付けることができ、組み付けを容易に行うことができる。また遮蔽板を新たに設けことによる部品点数の増加を防止でき、コストの上昇を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態による自動車の換気構造を説明するための図であり、図1は車両後方から見た後部車体の斜視図、図2は後部車体の側面図、図3は後部車体の背面図、図4はフェンダライナ及びリヤバンパの分解斜視図である。なお、本実施形態の説明のなかで前後,左右という場合は、車両後方から見た場合の前後,左右を意味する。
【0011】
図において、1は自動車の後部車体を示しており、該後部車体1は、リヤドア開口1aの後縁部を形成する左,右のクォータパネル2,2と、該左,右のクォータパネル2の上端部間を接続するルーフパネル3と、下端間を接続するリヤフロアパネル4とで車室Aを形成した概略構造を有する。
【0012】
前記左,右のクォータパネル2の下端部には、後輪5の上方を覆うリヤフェンダ6,6が接続されている。また左,右のクォータパネル2の後縁面には、テールランプ取付け孔2a,2aが形成されている。
【0013】
また前記左,右のクォータパネル2の後端下部には、車幅方向に延びるロアバックパネル7が接続されている。これにより、後部車体1の後端面には、左,右のクォータパネル2,ルーフパネル3,及びロアバックパネル7により囲まれたバックドア開口1bが形成されている。該バックドア開口1bには、これを開閉するバックドア8が配設されている。
【0014】
前記左,右のリヤフェンダ6には、前記後輪5の後側部分を覆う樹脂製のフェンダライナ10,10が取り付けられている。
【0015】
前記後部車体1のロアバックパネル(後端下部)7の左,右側端部には、それぞれ上下一対の換気口7aが形成されている。該換気口7aは、車室A内の空気を車外に排出するものであり、車内側に突出するよう角筒状に形成されている。
【0016】
前記左,右の各換気口7aには、車室Aから車外への空気の流れのみを許容し、逆流を阻止するリード弁型の逆止弁(不図示)が配置されている。
【0017】
前記ロアバックパネル7には、前記左,右の各換気口7aを後方から覆うようにリヤバンパ11が配設されている。該リヤバンパ11は、前記ロアバックパネル7との間に所定の隙間sを設けて配置され、該ロアバックパネル7,クォータパネル2に取り付けられている。なお、9は、ロアバックパネル7に接続されたバンパ取付けブラケットである。
【0018】
前記リヤバンパ11の上縁11aは、ロアバックパネル7の上縁7b,つまりバックドア開口1bの下縁に一致するよう形成され、下縁11bは、ロアバックパネル7の下縁7cより下方に位置するよう形成されている。これにより、後方から見ると、ロアバックパネル7及び左,右のフェンダライナ10は、リヤバンパ11により隠れており、かつ該リヤバンパ11の下縁11bはリヤフロアパネル4より下方に位置している。
【0019】
そして前記左,右の各換気口7aの車幅方向内側には、前記ロアバックパネル7とリヤバンパ11との間の隙間sを遮蔽する左,右の遮蔽板12,12が配設されている。
【0020】
前記遮蔽板12は、前記フェンダライナ10に、該フェンダライナ10の内縁に続いて後方に屈曲して延びるよう一体に形成されており、前記左,右の換気口7aの内側近傍に位置している。
【0021】
詳細には、前記左,右の遮蔽板12は、ロアバックパネル7の下面に当接するよう後方に延びる第1遮蔽部12aと、該第1遮蔽部12aからロアバックパネル7の後面及びリヤバンパ11の内側面に当接するよう上方に延びる第2遮蔽部12bとを有する。
【0022】
本実施形態の換気構造によれば、ロアバックパネル7に形成された左,右の各換気口7aの車幅方向内側に、ロアバックパネル7とリヤバンパ11との隙間sを遮蔽する遮蔽板12を配置したので、後部車体1のリヤフロアパネル4の下方を後方に流れる走行風aがロアバックパネル7とリヤバンパ11との隙間sに進入しても、前記左,右の遮蔽板12が換気口7aに流入するのを阻止することとなる。その結果、車室A内の換気機能を確保でき、窓ガラスが曇るのを回避できる。特に、本実施形態では、リヤバンパ11がリヤフロアパネル4及びロアバックパネル7より下方に突出していることから、該リヤバンパ11により走行風aが巻き上げられて隙間sに進入し易くなっており、このような構造の場合に有効である。
【0023】
また前記走行風aの換気口7aへの流入を阻止できるので、走行風aとともに巻き上げられた埃や雨水等が換気口7aから車室A内に進入するのを確実に防止できる。
【0024】
さらに前記左,右の遮蔽板12により、走行風aの隙間sへの流入量が減少することから、それだけ空力性能を向上できる。
【0025】
本実施形態では、前記遮蔽板12をフェンダライナ10に一体に形成したので、フェンダライナ10の組み付けと同時に遮蔽板12を組み付けることができ、組み付けを容易に行うことができる。この場合、リヤバンパ11はフェンダライナ10,遮蔽板12を取り付けた後に取り付けることとなる。
【0026】
また前記遮蔽板12を新たに設けことによる部品点数の増加を防止でき、コストの上昇を抑制できる。
【0027】
図5(a)及び(b)は、本実施形態の遮蔽板による換気効果を確認するために行った実験結果を示す図である。
【0028】
この実験は、左,右の各換気口の内側にそれぞれ遮蔽板を配置した本実施例車両と、遮蔽板を配置していない比較車両とを用いて行った。それぞれの車両を、大気温度が−5度の中を車速120km/hで走行させ、フロントガラス20,左,右のフロント窓ガラス21及び左,右のリヤ窓ガラス22の曇り状況を調べた。また室内には電動ファンにより若干量の空気を足元に供給した。
【0029】
その結果、比較車両の場合は、フロントガラス20の上縁部に若干の曇り(図中、斜線部分)が生じ、左,右のフロント窓ガラス21の上部に前後に広がる曇りが生じた。
【0030】
一方、本実施例車両の場合は、フロントガラス20には全く曇りが生じておらず、左,右のフロント窓ガラス21の後上端部に若干の曇りが生じた程度であった。なお、左,右のリヤ窓ガラスについては両方の車両とも全面が曇っていた。このように本実施例車両は、比較車両に比べて換気性能が向上していることが分かる。
【0031】
また、各車両の換気口の圧力を測定したところ、比較車両では+2.2mmAgと正圧となっており、室内空気の換気が不十分である。これに対して本実施例車両の場合は、−3.5mmAgと負圧となっており、室内空気の換気が十分に行われていることが分かる。
【0032】
なお、前記実施形態では、遮蔽板12をフェンダライナ10に一体に形成した場合を例に説明したが、本発明は、遮蔽板を別体に形成してもよく、この場合には、フェンダライナ,ロアバックパネル,もしくはリヤバンパに取り付けることとなる。
【0033】
また前記遮蔽板の形状についても各種の変形例が考えられ、例えば、換気口の内側及び上,下側を囲むように形成してもよく、要は換気口の内側のロアバックパネルとリヤバンパとの間を遮蔽する形状であれば何れの形状でも採用できる。
【0034】
さらに前記実施形態では、換気口をロアバックパネルに形成した場合を説明したが、本発明は左,右のクォータパネルに形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態による換気構造が採用された後部車体の斜視図である。
【図2】前記後部車体の側面図である。
【図3】前記後部車体の背面図である。
【図4】前記後部車体に配置されたフェンダライナ及びリヤバンパの分解斜視図である。
【図5】前記実施形態の換気効果を確認するための行った実験結果の図である。
【符号の説明】
【0036】
1 後部車体
5 後輪
7 ロアバックパネル(後端下部)
7a 換気口
10 フェンダライナ
11 リヤバンパ
12 遮蔽板
A 車室
s 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室を構成する車体の後端下部に形成され、該車室内の空気を車外に排出する換気口と、前記車体の後端下部に該換気口を後方から覆うように配設されたリヤバンパとを備えた自動車の換気構造であって、
前記換気口の車幅方向内側に、前記後端下部とリヤバンパとの間を遮蔽する遮蔽板を設けたことを特徴とする自動車の換気構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車の換気構造において、
前記遮蔽板は、後輪の少なくとも後側部分を覆うフェンダライナに一体的に設けられていることを特徴とする自動車の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−6314(P2010−6314A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170569(P2008−170569)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】