説明

自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具及び自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法

【課題】初心者のドライバーでも正確に自動車の幅を視認できる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具及び自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法を提供することができるようにする。
【解決手段】後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーの表面に着脱可能に設けられたベース部材と、当該ベース部材から上方または/及び下方に向けた突出する位置表示部材とを備え、好ましくは位置表示部材が後写鏡で確認可能な位置であって、且つ位置表示部材が後輪車軸の直上位置にベース部材を取り付け、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーに取り付けた自動車転回若しくは走行時の車幅表示具を後写鏡で視認し、当該自動車転回若しくは走行時の車幅表示具とその近傍の障害物との間隔とを認知することにより、転回若しくは走行時の自車の車幅を知得できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に初心者のドライバーが狭隘な通路や障害物があるような所を安全に自動車で通過したり、転回できるようにするために用いられる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具及び、表示具を用いての自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
初心者のドライバーは、前方を注視して自動車を運転するのが精一杯で、バック走行や車庫入れ、縦列駐車乃至障害物があるような狭隘な通路の通過等が苦手となっている。
その原因としては、運転している自動車の車幅を正確に把握していないことにある。
そこで自動車の大きさ(長さや幅)を表示する場合、前後のバンパーの隅部にポールを立設するようにしたものや、ボンネットやフロントウインドウ部分にマーカーを設けるようにしたものが知られている。
【0003】
しかしながら、バンパーの隅部にポールを立設するようにしたものでは、車の幅を正確に表示しているとはいえず、ハンドルを操作して車を旋回する場合、後述するように、後輪の回転軌跡は前輪が描く回転軌跡の半径より小径となる。
したがって、例えば前輪で障害物をクリアしても後輪の回転半径より出張っている障害物がある場合、自動車はこの障害物に接触してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2000―163225号公報
【特許文献2】実開昭62−123447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点に鑑みて提案されたもので、初心者のドライバーでも正確に自動車の幅を視認できる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具及び自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法を提供することができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具は、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーの表面に着脱可能に設けられたベース部材と、当該ベース部材から上方または/及び下方に向けた突出する位置表示部材とを備えたことを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
また、本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具は、位置表示部材が後写鏡で確認可能な位置であって、且つ位置表示部材が後輪車軸の直上位置にベース部材を取り付けたことも特徴とするものである。
【0007】
本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法は、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーに取り付けた自動車転回若しくは走行時の車幅表示具を後写鏡で視認し、当該自動車転回若しくは走行時の車幅表示具とその近傍の障害物との間隔とを認知することにより、転回若しくは走行時の自車の車幅を知得するようにしたことを最も主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具によれば、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーの表面に着脱可能に設けられたベース部材と、当該ベース部材から上方または/及び下方に向けた突出する位置表示部材とを備えるようにしてあるので、例えば旋回しながら後退若しくは前進するような場合、後写鏡を介してあるいは窓から車幅表示具を視認することで回転半径の小さい後輪の位置を認識できる。
これにより、例えば前輪で障害物をクリアしても後輪の回転半径より出張っている障害物がある場合でも、自動車が障害物に接触してしまうことを未然に防止することができるという利点がある。
【0009】
しかも、上記効果を有する車幅表示具は、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーの表面に着脱可能に設けられたベース部材と、当該ベース部材から上方または/及び下方に向けた突出する位置表示部材とを備えるだけの簡単な構造で済み、安価に実施することができる利点もある。
【0010】
また、車幅表示具を位置表示部材が後写鏡で確認可能な位置であって、且つ位置表示部材が後輪車軸の直上位置にベース部材を取り付けるようにしたものでは、後輪の車軸位置を正確に認識でき、自動車が障害物に接触してしまうことを確実に防止することができる利点がある。
【0011】
本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法によれば、後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーに取り付けた自動車転回若しくは走行時の車幅表示具を後写鏡で視認し、当該自動車転回若しくは走行時の車幅表示具とその近傍の障害物との間隔とを認知することにより、転回若しくは走行時の自車の車幅を知得するようにしてあるので、初心者のドライバーでも、自動車が障害物に接触してしまったり、旋回時等に後輪部分に人が接触したり巻き込んだりすることをなくすことができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具及び自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法の最も好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明にかかる車幅表示具を設けた自動車の側面図であって、図中符号1は自動車を全体的に示す。
この自動車1は、操舵用の前輪2の車軸3と後輪4の車軸5とのホイールベース間Lに左右各2つづつのドア6・7が設けられたキャビン8が形成されており、各前側のドア6にはドアミラー(後写鏡)8が設けられている。
前後の各車輪2・4はそれぞれアーチ状に形成されたタイヤハウス9・10に収納され、各タイヤハウス9・10はボディ(図示せず)とフェンダー11・12に支持されており、後輪4のタイヤハウス10を支持するリアフェンダー12には本発明にかかる車幅表示具13が設けられている。
【0013】
一方、自動車1は一般的に、ホイールベース間Lが長ければ長いほどピッチングが少なくなり乗り心地がよくなることからロングホイールベース化されている。
ホイールベース間Lが長くなればなるほど、後述するように旋回時における前輪2が描く回転半径(走行軌跡)14と後輪4が描く回転半径(走行軌跡)15との差(内輪差)16が大きくなる(図3参照)。
そこで、前輪2が描く回転半径14と後輪4が描く回転半径15の差16の実際を認識するために設けられたものが車幅表示具13であって、この車幅表示具13は、図2に示すように構成されている。
【0014】
図2に示すように車幅表示具13は、後輪4のタイヤハウス10部分のリアフェンダー12の表面に着脱可能に設けられたベース部材16と、当該ベース部材16から上下方向に向けて突出する位置表示部材17とからなる
上記ベース部材16は軟質塩化ビニルやシリコンゴム等の軟質合成樹脂の吸盤18と、吸盤18の中央から円柱状に突出し、位置表示部材19を装着する装着孔20を設けた位置表示部材取り付け部21とからなる。
尚、図中符号22は吸盤18からなるベース部材16を取り外すときに掴み上げる掴み上げ片である。
上記位置表示部材19は、丸棒状に形成され、上半部分には蛍光塗料により複数のボーダー模様23を施すことにより、当該ボーダー模様23が遠目からも目立つようにし、この位置表示部材19の下部が前記ベース部材16の装着孔20に挿入されて固定される。
【0015】
上記のように構成された車幅表示具13を使用する手順を次に説明する。
先ず、車幅表示具13を図1に示すように後輪4のタイヤハウス10部分のリアフェンダー12の表面で、後輪4の車軸5の直上にベース部材16の吸盤18を吸着させ、図4に示すようにドアミラー24で視認できる位置に取り付ける。
斯くして車幅表示具13をリヤフェンダー10に取り付けた自動車1を運転し、図3及び図4に示すように障害物25がある場所にさしかかると、ドアミラー24を介してあるいは窓26から車幅表示具13を視認しながらハンドル27を操作する。
【0016】
このときの自動車1の動きは図3に示すようになる。
すなわち、ハンドル27を、右(反時計回り)に切るとき、後輪4の車軸5の延長線L1と前輪2の左側の車輪2の車軸3の延長線L2との交差する点30を中心とする円が後輪4の走行軌跡15となり、この後輪4の走行軌跡15は左側前輪2の走行軌跡14とは内輪差Sを有する小径なのもとなる。
ちなみに、この図3で理解できるように、ホイールベースLが長くなればなるほど、前輪2と後輪4との内輪差Sが大きくなる。
初心者のドライバーにはこの内輪差Sが十分に認識ないしは体得できない為に、脱輪や接触、巻き込み等の事故が発生する原因となっている。
【0017】
したがって、図4に示すようにドアミラー24に映る車幅表示具13と障害物25の端25aとの隙間(間隔)31を確認しながらハンドル27の操作をする。
つまり、自動車1が前進している場合、ドアミラー24に映る車幅表示具13が障害物25の端25aから隠れてしまうと、障害物25に接触する可能性が高いことからハンドル27を左(時計回り)に切り直して車幅表示具13と障害物25の端25aとの間に隙間31がある状態にする。
逆に、後進、いわゆるバックする場合、ドアミラー24に映る車幅表示具13と障害物25とが重なりあった場合には車幅表示具13が障害物25から離れて障害物25の端25aとの間に隙間31が形成されるようにハンドル27を操作すると、障害物25と自動車1との接触事故を未然に防止することができるのである。
【0018】
尚、上記実施の形態では自動車1を左旋回を例に説明してあるが、右に旋回する場合も略同様にハンドル27を操作することにより、障害物25と自動車1との接触事故を未然に防止することができる。
上記実施の形態ではドアミラー24を介して車幅表示具13と障害物25の端25aとを認識するようにしてあるが、こうしたものに限られず、旋回する側の窓26を開けて車幅表示具13と障害物25の端25aとを目視により直接視認するようにしてもよいことは勿論のことである。
【0019】
また、図5に示すものは、自動車1の車体が鋼板で形成されていることから、上記実施例のベース部材16をゴム磁石32で円盤状に形成するとともに、車幅表示具13の位置表示部材19の下端寄り部分にくびれ部分33を設け、その下方を挿入しやすいように小径34に形成したものである。
因みに、上記実施の形態では車幅表示具13を後輪4の車軸の直上に設置するようにしてあるが、脱輪等を考慮したとき、後輪4の位置を認識できればよいことから、車幅表示具13の設置場所は、図1に示すように後輪4のタイヤハウス10の上方35部分に設置すればよいことになる。
更に実施の形態では、後写鏡をドアミラー24にしてあるが、フェンダーミラー(図示せず)を利用することができるのはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】は本発明にかかる車幅表示具を設けた自動車の側面図である。
【図2】は本発明にかかる車幅表示具の斜視図である。
【図3】は本発明にかかる車幅表示具を設けた自動車の回転軌跡の概略を示す説明図であ る。
【図4】は本発明にかかる車幅表示具を設けた自動車の後写鏡(ドアミラー)に映る車幅 表示具の使用説明図である。
【図5】は本発明にかかる車幅表示具の変形例の分解図である。
【符号の説明】
【0021】
1・・・自動車
2・・・前輪
3・・・前輪の車軸
4・・・後輪
5・・・後輪の車軸
10・・・後輪のタイヤハウス
12・・・後側のフェンダー
13・・・車幅表示具
14・・・前輪が描く半径(走行軌跡)
15・・・後輪が描く半径(走行軌跡)
16・・・ベース部材
19・・・位置表示部
21・・・位置表示部材取り付け部
24・・・ドアミラー(後写鏡)
31・・・隙間(間隔)
S・・・内輪差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーの表面に着脱可能に設けられたベース部材と、当該ベース部材から上方または/及び下方に向けた突出する位置表示具とを備えたことを特徴とする自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具。
【請求項2】
位置表示具が後写鏡で確認可能な位置であって、且つ位置表示具が後輪車軸の直上位置にベース部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の自動車の転回若しくは走行時の車幅表示具。
【請求項3】
後輪のタイヤハウス部分のリアフェンダーに取り付けた自動車転回若しくは走行時の車幅表示具を後写鏡で視認し、当該自動車転回若しくは走行時の車幅表示具とその近傍の障害物との間隔とを認知することにより、転回若しくは走行時の自車の車幅を知得するようにしたことを特徴とする自動車の転回若しくは走行時の車幅知得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−184608(P2009−184608A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28885(P2008−28885)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(508042087)
【Fターム(参考)】