説明

自動車の配線構造

【課題】リア側の床上から床下配線してフロント側エンジンルーム内に配線するワイヤハーネスを、効率良く製造できる構成とする。
【解決手段】フロント側エンジンルーム内、中間部床下領域、リア側床上領域にそれぞれ配索されるワイヤハーネスに3分割、または前記中間部床下領域およびリア側床上領域とフロント側エンジンルームに配索されるワイヤハーネスに2分割し、これら分割ワイヤハーネスを接続する接続部材を設けており、前記中間部床下領域のワイヤハーネスは複数車種に配索する共用床下配索ワイヤハーネスとし、該共用床下配索ワイヤハーネスを構成する電線はパイプ内に挿通している一方、前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上領域にそれぞれ配索するワイヤハーネスは各車両毎の専用ワイヤハーネスとし、かつ、前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線および外装材と、前記フロント側およびリア側床上配索ワイヤハーネスの電線および外装材とは、相異可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の配線構造に関し、詳しくは、ハイブリッド自動車または電気自動車において、自動車の前部と後部とに床下配線部を通して連続的に配索するワイヤハーネスを効率良く形成できるようにすると共にコスト低下を図るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車や電気自動車に配索される電力ケーブルの配線構造として、特開2004−224156号公報(特許文献1)で図6(A)、(B)に示す構造が提案されている。該構造は、リア側に搭載されたインバータ100と接続する3本の電力ケーブル(高圧ケーブル)102U、102V、102Wを、リア側(後部)の床上配索領域から中間部の床下配索領域を通し、フロント側(前部)のエンジンルーム内へと連続配線している。
前記各高圧ケーブルは床下配索領域では、金属製の各芯シールドパイプ(保護パイプ)110に通してフロア下方に前方へと配線してフロント側のエンジンルーム内に引き込み、エンジンルーム内に搭載されたモータ101と接続している。リア側の床上配索領域およびフロント側エンジンルームの配索領域では前記3本の電力ケーブル102U、102V、102Wをまとめて可撓性を有する一括シールドチューブ(保護チューブ)120に通している。
なお、前記リア側床上配索領域及びフロント側エンジンルーム内では、シールドチューブに通す場合、コルゲートチューブに通す場合、車種に応じた車両条件で外装材は相違している。
【0003】
前記のように、電力ケーブル102U、102V、102Wをフロア下方の配線領域では剛直な各芯シールドパイプ110にそれぞれ通すことで、電力ケーブル102U、102V、102Wのフロア下方での配線を可能としている。また、エンジンルーム内の配線領域では可撓性を有する一括シールドチューブ120に通すことで、フロア上部スペースを有効利用できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したワイヤハーネスの配索構造では、リア側からフロント側エンジンルーム内へと連続配線する前記電力ケーブル102U、102V、102Wは雰囲気温度と通電値とによりケーブルサイズが決定される。通常は、エンジンルーム内の雰囲気温度に依存してケーブルサイズが決定されることになり、これら電力ケーブルを挿通する前記シールドパイプの放熱性や耐熱性は前記エンジンルームの雰囲気温度に依存して決定されたケーブルサイズに依存している。即ち、フロア下方の配索領域では、雰囲気温度はエンジンルームの雰囲気温度よりも低いため、ケーブルサイズを例えばワンランク下げることが可能になり、それに応じてシールドパイプの放熱性や耐熱性の要求基準を低くすることができる。しかしながら、前記のように、連続してケーブルを配線するため、ケーブルサイズの肥大化につながる場合がある。
【0006】
また、フロア下(以下、床下と称す)の配索領域では、異なる車種であっても床下を自動車の前後方向に配索するだけであるためワイヤハーネスの配索形態は略同等となる。一方、リア側床上およびフロント側エンジンルーム内に配索する領域では車種が相違すれば、ケーブルの配索経路も相違し、該配索経路の相違によって、ケーブルの外装材も相違している。
即ち、リア側床上配索領域およびフロント側エンジンルーム内の配索領域では車種に応じて相違する場合が大きいため、従来は、リア側から床下配索領域を経てフロント側エンジンルーム内に達する連続したワイヤハーネスを各車種毎に夫々組み立てている。そのため、ワイヤハーネスの製造コストが高くなると共に効率よく生産できない問題があった。
【0007】
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたもので、リア側床上配索領域とフロント側エンジンルーム内とを床下配索領域を介して連続させる自動車用のワイヤハーネスにおいて、簡単に組み立てることができると共にコスト低減を図り、かつ、電線サイズの過大化を抑制して、ワイヤハーネスの肥大化を防止することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、自動車のフロント側エンジンルーム内と中間部床下領域とリア側床上領域にワイヤハーネスを連続配索する配線構造であって、
前記フロント側エンジンルーム内、中間部床下領域、リア側床上領域にそれぞれ配索されるワイヤハーネスに3分割、または前記中間部床下領域およびリア側床上領域とフロント側エンジンルームに配索されるワイヤハーネスに2分割し、これら分割ワイヤハーネスを接続する接続部材を設けており、
前記中間部床下領域のワイヤハーネスは複数車種に配索する共用床下配索ワイヤハーネスとし、該共用床下配索ワイヤハーネスを構成する電線はパイプ内に挿通している一方、 前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上領域にそれぞれ配索するワイヤハーネスは各車両毎の専用ワイヤハーネスとし、かつ、
前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線および外装材と、前記フロント側およびリア側床上配索ワイヤハーネスの電線および外装材とは、相違可能としている自動車の配線構造を提供している。
【0009】
前記したパイプに挿通する床下配索ワイヤハーネスは、車種が相違してもワイヤハーネスは床下を配索経路とするため、配索経路を規制する要素が少なく配索経路を共通化できる。よって、パイプの形状も共通化でき、共用ワイヤハーネスとすることができる。このように、床下配索ワイヤハーネスを複数の車種に共用できるようにすると、パイプの形状管理が容易になり、さらに梱包形態を統一することも可能となり、大幅にコスト削減を図ることができる。
【0010】
本発明のワイヤハーネスは、前記従来例と同様な、ハイブリッド自動車または電気自動車において、リア側に搭載するインバータとエンジンルーム内に搭載するモータとを接続する3本の高圧電線または、車両のリア側に搭載するバッテリとエンジンルーム内のインバータとを接続する2本の高圧電線で構成する場合に好適に採用できる。
【0011】
前記共用床下配索ワイヤハーネスは、各電線(高圧ケーブル)毎に1本の金属パイプからなるシールドパイプに挿通している。該共用床下配索ワイヤハーネスでは各電線毎に1本のシールドパイプに挿通しているため、高圧電線が3本である場合には、3本のシールドパイプを平行配線し、これらのシールドパイプを床に支持材を介して取り付けている。一方、前記専用ワイヤハーネスのリア側およびフロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスは、前記共用床下配索ワイヤハーネスとの接続側では外装材中に収容していることが好ましい。
【0012】
前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上配索ワイヤハーネスの前記外装材は、金属線をメッシュ状に編成して形成したシールド編組チューブ、コルゲートチューブ、ゴムブーツ、樹脂製網状チューブ、樹脂製丸チューブ、編組シート、樹脂シートから選択される1種以上である。
前記外装材としては、例えば、シールドパイプに通した共用床下配索ワイヤハーネスと接続する場合、前記金属線をメッシュ状に編成して形成したシールド編組チューブが好適に用いられる。その場合、前記シールドパイプから引き出された複数本の電線を1つの一括シールド編組チューブ内に挿通し、前記複数のシールドパイプの外周を一括シールド編組チューブで覆った状態で金属材を用いて固定して、電気接続することが好ましい。
【0013】
前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上配索ワイヤハーネスは車種に応じた専用ワイヤハーネスとしているため、フロント側エンジンルーム内とリア側の外装材を相違させることが出来ると共に、特定車種と他の車種とでフロント側エンジンルーム内の外装材とリア側の外装材とを入れ替えることもできる。
【0014】
例えば、リア側床上配索ワイヤハーネスの外装材は前記シールド編組チューブとすると共にフロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスの外装材はコルゲートチューブとしてもよい。
また、リア側床上配索ワイヤハーネスにグロメットを外装し、該グロメットに連続して設けたゴムブーツで外装する一方、フロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスはコルゲートチューブで外装すると共に樹脂製網状チューブで外装してもよい。
さらに、リア側床上配索ワイヤハーネスはコルゲートチューブで外装する一方、フロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスにグロメットを外装し、該グロメットに連続して設けたゴムブーツで外装してもよい。
【0015】
前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線の電線径は、フロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスの電線の電線径よりも小さい、あるいは/および前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線の耐熱温度は前記フロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスの電線の耐熱温度よりも低いものであることが好ましい。
これは、エンジンルーム内は雰囲気温度が高いため、エンジンルーム内を配索する電線は床下配索するワイヤハーネスの電線より耐熱温度が高い電線、あるいは/および電線径の大きな電線としている。言い換えると、床下配索するワイヤハーネスの電線は電線サイズを小さくして、該電線を挿通するパイプ径を小さくしている。
このように、本発明では、雰囲気温度が相違することにより、要求される耐熱温度が相違する領域に配線される電線として、少なくとも耐熱温度が相違する異種の電線を接続して連続配線している。これにより、過剰な耐熱温度の電線を配線することで、重量およびコストが高くなる問題を解消している。
【0016】
具体的には、共用床下配索ワイヤハーネスの電線の耐熱温度は80℃以上とし、電線は単芯線、撚線またはエナメル線を絶縁樹脂で被覆したものを用いている。一方、エンジンルーム内に配線する電線は、耐熱温度を120℃以上とし、単芯線ではなく、可撓性のよい撚線とすることが好ましい。
これは床下配索の電線は略直線状に配線するため、比較的剛直となる単芯線もしくはエナメル線を用いてもよく、エンジンルーム内に配線する電線は、屈曲させて配線する箇所が有るため、単芯線ではなく、可撓性のよい撚線とすることが好ましいことによる。
【0017】
前記床下配索する耐熱温度が比較的低い電線として、アルミニウム系金属の単芯線の電線が好適に用いられ、前記エンジンルーム内に配索する耐熱温度が比較的高い電線として、アルミニウム系金属の撚線の電線が好適である。
前記のように床下配線の電線をアルミニウム系金属の単芯線とした電線とすると、軽量化と小スペース化を図ることができる。
前記アルミニウム系金属の単芯線の電線は、従来用いられている銅系金属線の撚線からなる電線に対して、単位長さ当たりの重量が60〜70%低減でき、外径が約20%低減できる。なお、いずれの電線もアルミウム系電線に限定されず、銅線を使用してもよい。
【0018】
リア側床上配線する電線は、フロント側エンジンルームのように高温雰囲気とならないため、床下配索領域と同一の電線を用いてもよい。よって、リア側床上領域と床下配索領域の電線は同一電線を用いてもよい。かつ、同一電線をリア側床上配索領域から床下配索領域に連続させて設け、ワイヤハーネスをフロント側エンジンルーム内に配索する電線群および其の外装材と分けて、前記のように、ワイヤハーネスを2分割としてもよい。
【0019】
前記3分割または2分割したワイヤハーネスの接続部分では、電線同士を接続する必要がある。これら電線同士の接続は、電線の芯線同士の溶接、中間圧着端子を用いた加締め圧着、コネクタを用いた端子接続、ボルト締結、冷間・熱間圧接、ハンダ付けから選択され、かつ、
前記溶接接続は、超音波溶接、摩擦溶接、抵抗溶接、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、高周波溶接、プラズマ溶接のいずれかである。
このように、電線同士を接続できる手段であれば、いずれでも良いが、超音波溶接あるいは抵抗溶接が接続作業が簡単に行えると共に安価にでき、かつ、接続部が肥大化せずスペース的にも有利である。前記分割したワイヤハーネスの電線同士の接続箇所は床下と床上のいずれでも良い。
【発明の効果】
【0020】
前記のように、本発明では、配索経路を同一として配索形態が共用化できる床下配索ワイヤハーネスは複数車種で共用化し、少なくとも、車種が相違すると配索経路が相違するフロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスは車種毎に専用化している。よって、リア側とフロント側エンジンルーム内とを中間床下配索領域を介して連続配索するワイヤハーネスを効率よく製造できると共に製造コストの低減を図ることができる。
かつ、ワイヤハーネスを分割しているため、配索領域の雰囲気温度に応じた電線サイズとすることができ、電線およびワイヤハーネスの肥大化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一実施形態の電線の配線構造を示す説明図である。
【図2】前記実施形態のワイヤハーネスを自動車に配索した状態の概略図である。
【図3】分離したワイヤハーネスの接続状態を示す図面であり、(A)は概略側面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図、(D)は(A)のD−D線断面図である。
【図4】(A)(B)は電線同士の他の接続形態を示す概略図である。
【図5】本発明の第二実施形態を示す説明図である。
【図6】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本実施形態のワイヤハーネスを配索する自動車はハイブリッド自動車であり、図1に示すように、異なる車種のハイブリッド車両A、B、Cに配索するものとしている。
【0023】
図2に示すように、ハイブリッド車両A、B、Cはいずれもリア側の床上に搭載したインバータ1とフロント側のエンジンルーム内に搭載したモータ2とを接続するため、リア側からフロント側にかけて3分割したリア側床上配索ワイヤハーネスW/H−1(以下、リア側ワイヤハーネスW/H−1と略称する)、中間床下配索ワイヤハーネスW/H−2(以下、床下共用ワイヤハーネスW/H−2と略称する)、フロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスW/H−3(以下、フロント側ワイヤハーネスW/H−3と略称する)を配索し、これら3分割したワイヤハーネスを順次接続するものとしている。
【0024】
前記リア側ワイヤハーネスW/H−1とフロント側ワイヤハーネスW/H−3とは相違する車種A、B、C毎に相違させた専用ワイヤハーネスとして製造する一方、前記床下共用ワイヤハーネスW/H−2は複数車種A、B、Cに共用できる共用ワイヤハーネスとしている。
【0025】
前記3分割したワイヤハーネスは、それぞれ3本の高圧電線10(10A、10B、10C)からなる。即ち、リア側ワイヤハーネスW/H−1では電線10A1、10B1、10C1からなる。フロント側ワイヤハーネスW/H−3では電線10A3、10B3、10C3からなる。床下共用ワイヤハーネスW/H−2では電線10A2、10B2、10C2からなる。前記電線は電線10A1、10A2、10A3を順次接続して1回路の電線とし、電線10B1、10B2、10B3を順次接続して1回路の電線とし、電線10C1、10C2、10C3を順次接続して1回路の電線としている。
【0026】
前記リア側ワイヤハーネスW/H−1の電線10A1〜10C1の電線W1、床下共用ワイヤハーネスW/H−2の電線10A2〜10C2の電線W2、前記エンジンルーム内に配索するフロント側ワイヤハーネスW/H−3の電線10A3〜10C3の電線W3は相違させている。
前記電線W1、W2は、80℃以上200℃未満の耐熱温度のアルミニウム系金属からなる単芯線の芯線を絶縁樹脂で被覆している。
一方、エンジンルーム内に配索する電線W3は120℃以上の耐熱温度としたアルミニウム系金属の素線を撚った撚線からなる芯線を絶縁樹脂で被覆している。
本実施形態では、前記電線W1、W2として芯線断面積が12sqの電線を用い、W3として芯線断面積が15sqの電線を用いている。
【0027】
前記床下共用ワイヤハーネスW/H−2を構成する3本の電線10A2〜10C2はそれぞれシールドパイプ11(11A、11B、11C)に挿通させている。前記のように、電線10A2〜10C2の電線径を小さく設定しているため、各シールドパイプ11の径を小さくでき、その分、重量軽減を図ることができる。これら3本のシールドパイプ11は平行配置して、フロア3の下面に支持材(図示せず)で取り付けるものとしている。
前記シールドパイプ11はアルミニウム系金属で形成して軽量化している。
【0028】
この床下配索ワイヤハーネスは複数車種で共用するワイヤハーネスとしているため、共用する車種で障害となるものが存在しない配索経路を取るように、前記シールドパイプ11の形状を設定している。例えば、図1に示すように、フロア3の下方に突出する燃料タンクの設置位置を迂回する迂回箇所11xを各シールドパイプ11に設けている。
【0029】
前記リア側ワイヤハーネスW/H−1の3本の電線10A1〜10C1は、図1に示すように、車両Aでは、金属繊維で編成したシールド編組チューブ6内に3本の電線10A1〜10C1を挿通している。該シールド編組チューブ6の一端は前記床下共用ワイヤハーネスW/H−2の外装材の3本のシールドパイプ11の一端に被せて金属止具で連結固定している。また、該シールド編組チューブ6の他端はアース電線接続用の金属製のアースパイプ7に金属止具で連結固定している。該アースパイプ7の先端から引き出された電線10A1〜10C1はリア側の床上に設置したインバータ1に接続される。
【0030】
前記車種Aでは、フロント側ワイヤハーネスW/H−3の3本の電線10A3〜10C3は、図1に示すように、樹脂成形品からなるコルゲートチューブ8に挿通している。該コルゲートチューブ8は屈曲性に優れているため、エンジンルーム内の狭い配索経路を屈曲しながら配索するのに適している。該コルゲートチューブ8は、その一端側を前記3本の電線10A3〜10C3を集束した外周に締結バンドで締結し、または粘着テープを巻き付けて固定している。該コルゲートチューブ8の他端から前記3本の電線10A3〜10C3が引き出され、前記モータ2と接続される。
【0031】
前記車種Aでは、前記のように、リア側ワイヤハーネスW/H−1とフロント側ワイヤハーネスW/H−3とは専用ワイヤハーネスとして製造する一方、中間の床下共用ワイヤハーネスW/H−2は他の車種(車両B、C)と共用のワイヤハーネスを用いている。
【0032】
前記3分割したワイヤハーネスは、車両Aに配索する前に連続した1つのワイヤハーネスになるように予め接続している。即ち、リア側ワイヤハーネスW/H−1の電線W1の一端と床下共用ワイヤハーネスW/H−2の電線W2の一端、該電線W2の他端とフロント側ワイヤハーネスW/H−3の電線W3の一端とをそれぞれ接続して連続した1回路の電線としている。
なお、分割したワイヤハーネスの接続をコネクタ接続とする場合には、車両Aに配索する時点で、分割したワイヤハーネスをコネクタ接続してもよい。
【0033】
具体的には、図3(A)〜(D)に示すように前記電線W1とW2とは、互いに接続する端末側の絶縁21、31被覆を皮剥ぎして芯線22、32を露出させ、該芯線22、32を重ね合わせて超音波溶接して接続している。
超音波溶接した接続部分13に熱収縮チューブ14を被せて熱収縮させ、露出した接続部分の絶縁を確保している。該熱収縮チューブ14の外周にグロメット19を外嵌している。
【0034】
前記電線W1と電線W2との接続は、図4(A)に示すように、中間圧着端子40を用いてカシメ圧着してもよい。また、図4(B)に示すように、コネクタ(図示せず)を用い、電線W2、電線W1の端末に接続した端子T1、T2を圧着し、これらをそれぞれコネクタに収容してコネクタ同士を嵌合して端子T1、T2同士を接続してもよい。また、ボルト締結により接続してもよい。
さらに、前記実施形態の超音波溶接に代えて、電線W1と電線W2の端末に露出した芯線を重ね合わせて、抵抗溶接、摩擦溶接、アーク溶接、レーザ溶接、電子ビーム溶接、高周波溶接、プラズマ溶接を行ってもよい。かつ、半田塗布して接続してもよい。
電線W2と電線W3の接続も、前記電線W1と電線W2の接続と同様に接続している。
【0035】
図1に示す車両Bでは、リア側ワイヤハーネスW/H−1に樹脂成形品からなるコルゲートチューブ50Aを外装し、さらに、フロア3の貫通穴に装着するグロメット51Aを外装し、該グロメット51Aに連続するゴムブーツ51aをコルゲートチューブ50Aの先端に連続している。フロント側ワイヤハーネスW/H−3は金属繊維からなるシールド編組チューブ60を電線W3に被せると共に、その外周にコルゲートチューブ50Bを被せている。
車両Bでは、前記リア側ワイヤハーネスW/H−1とフロント側ワイヤハーネスW/H−3をそれぞれ専用ワイヤハーネスとして製造し、床下共用ワイヤハーネスW/H−2と前記車両Aと同様に接続して、1つの連続ワイヤハーネスを構成している。
【0036】
図1に示す車両Cでは、リア側ワイヤハーネスW/H−1に樹脂成形品からなるコルゲートチューブ50Cのみを外装している。フロント側ワイヤハーネスW/H−3は前記車両Bのリア側ワイヤハーネスと同様な構成とし、コルゲートチューブ50Dを外装し、さらに、フロア3の貫通穴に装着するグロメット51Bを外装し、該グロメット51Bに連続するゴムブーツ51aをコルゲートチューブ50Dの先端に連続している。
車両Cでは、前記リア側ワイヤハーネスW/H−1とフロント側ワイヤハーネスW/H−3をそれぞれ専用ワイヤハーネスとして製造し、床下共用ワイヤハーネスW/H−2と前記車両Aと同様に接続して、1つの連続ワイヤハーネスを構成している。
【0037】
このように、異なる車両A、B、Cにおいて、床下配索部分で電線W2をシールドパイプ11に挿通する領域では、床下共用ワイヤハーネスW/H−2としているため、新たに設ける必要はない。一方、リア側およびフロント側ワイヤハーネスW/H−1とW/H−3とは、各車両A、B、Cの条件にそれぞれ合わせて新たに専用ワイヤハーネスとして設けている。
【0038】
前記のように、リア側のインバータ1とエンジンルーム側のモータ2とを床下配線領域を通して連続して設けるワイヤハーネスを3分割することにより、床下配線領域はワイヤハーネスの配索経路を容易に統一できるため複数車種で共用化することができる。
この共用ワイヤハーネスとする床下配線領域では、各電線W2をそれぞれシールドパイプ11に挿通しているため、夫々専用品として製造すると、シールドパイプの形状管理が容易でないが、共用化することで形状管理が容易となる。かつ、該共用ワイヤハーネスに用いる部品(クランプ、ステイ等)も共用化でき、さらに、梱包形態も統一することにより、コストの大幅削減を図ることができる。
【0039】
かつ、エンジンルーム内に配線する電線W3からなるフロント側ワイヤハーネスW/H−3と、床下に配線する電線W2からなる床下共用ワイヤハーネスW/H−2とは分離して製造するため、W2とW3とを異種の電線とすることができる。よって、床下配線する電線W2を小径化でき、シールドパイプ11も小径化でき、その分、重量低減を図ることができる。
【0040】
図5に第二実施形態を示す。
第2実施形態では、リア側ワイヤハーネスW/H−1と床下共用ワイヤハーネスW/H−2とは1つのワイヤハーネスW/H−5として形成し、エンジンルーム内に配索するフロント側ワイヤハーネスW/H−3を別ワイヤハーネスとし、ワイヤハーネスを2分割している。
これは、リア側ワイヤハーネスの電線W1と床下共用ワイヤハーネスの電線W2とを連続した電線とできるためである。
このように、リア側床上配索する電線と床下配索する電線とを連続させたワイヤハーネスW/H−5を設けると、電線同士の接続部分を無くすことができる利点がある。
【0041】
本発明は前記実施形態に限定されず、床下配線する電線W2とエンジンルーム内に配線する電線W3とも従来汎用されている銅系金属からなる芯線の電線としてもよい。
また、車両のリア側に搭載するバッテリーとエンジンルーム内のインバータとを2本の電線で接続してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 インバータ
2 モータ
3 フロア
10A1〜10C3 電線
11(11A、11B、11C) シールドパイプ
13 接続部分
W1、W2 電線
W/H−1 リア側ワイヤハーネス
W/H−2 床下共用ワイヤハーネス
W/H−3 フロント側ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロント側エンジンルーム内と中間部床下領域とリア側床上領域にワイヤハーネスを連続配索する配線構造であって、
前記フロント側エンジンルーム内、中間部床下領域、リア側床上領域にそれぞれ配索されるワイヤハーネスに3分割、または前記中間部床下領域およびリア側床上領域とフロント側エンジンルームに配索されるワイヤハーネスに2分割し、これら分割ワイヤハーネスを接続する接続部材を設けており、
前記中間部床下領域のワイヤハーネスは複数車種に配索する共用床下配索ワイヤハーネスとし、該共用床下配索ワイヤハーネスを構成する電線はパイプ内に挿通している一方、 前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上領域にそれぞれ配索するワイヤハーネスは各車両毎の専用ワイヤハーネスとし、かつ、
前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線および外装材と、前記フロント側およびリア側床上配索ワイヤハーネスの電線および外装材とは、相異可能としている自動車の配線構造。
【請求項2】
前記共用床下配索ワイヤハーネスは、各電線毎に1本の金属パイプからなるシールドパイプに挿通している一方、前記専用ワイヤハーネスとなるリア側およびフロント側エンジンルーム内配索ワイヤハーネスは、前記共用床下配索ワイヤハーネスとの接続側では外装材中に収容している請求項1に記載の自動車の配線構造。
【請求項3】
前記フロント側エンジンルーム内およびリア側床上配索ワイヤハーネスの前記外装材は、金属線をメッシュ状に編成して形成したシールド編組チューブ、樹脂成形品のコルゲートチューブ、ゴムブーツ、樹脂製網状チューブ、樹脂製丸チューブ、編組シート、樹脂シートから選択される1種以上である請求項1または請求項2に記載の自動車の配線構造。
【請求項4】
前記共用床下配索ワイヤハーネスの電線は、前記フロント側エンジンルーム内に配索する電線よりも電線径が小さい、又は/および耐熱温度が低い異種の電線である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車の配線構造。
【請求項5】
前記ワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車または電気自動車において、リア側に搭載するインバータとフロント側エンジンルーム内に搭載するモータとを接続する3本の高圧電線または、車両のリア側に搭載するバッテリとフロント側エンジンルーム内のインバータとを接続する2本の高圧電線からなる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−56368(P2012−56368A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199305(P2010−199305)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】