説明

自動車モール用材料及び自動車モール

【課題】 軽量性、耐候性、金属接着性、異形押出し性に優れ、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーと共押出し異形成形を行なって高い層間接着性を得ることが可能な自動車モール用材料を提供する。
【解決手段】 融点が100℃以上、メルトフローレートが0.1〜10g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)100重量部に対して、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)1〜40重量部を配合した重合体組成物からなる自動車モール材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形押出し成形性に優れた自動車モール用材料及びそれを使用した自動車モールに関する。とくには熱可塑性ポリオレフィンエラストマーをリップ材料とする自動車モールの本体材料として有用な、異形共押出し性、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーとの接着性に優れた自動車モール用材料及びそれを使用した自動車モールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サイドモール、ウィンドシールドモール、ルーフモールのような自動車モールにおいては、カーボンブラックを配合した黒色の軟質塩化ビニル樹脂(PVC)が多用されていた。しかしながら軟質塩化ビニル樹脂においては、樹脂に配合されている液状可塑剤が経時的に表面に進出してくるため、表面が変色したり、低温での耐衝撃性が低下したりするという欠点を有している。加えて、燃費改善に向けた軽量化の動き、環境問題を考慮した材料のリサイクル化あるいは焼却時の腐食性ガス発生防止などの要望から、PVC系材料からオレフィン系重合体材料への変換が強く求められるようになってきた。
【0003】
このようなPVC代替材料として、柔軟で耐熱性の優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、TPOと略称することがある)の使用が考えられるが、金属芯材に対する接着性が乏しく、また耐スクラッチ性、光沢などにも劣るため、使用部位によっては単味で使用するには問題がある。しかしながら自動車の塗装面を傷つけないようにするためにモール本体の側端部に設けられるリップ材料としては魅力的な材料である。
【0004】
またモールは、生産性の点から異形押出しによって製造するのが最も経済的であるが、上記のようにTPOをリップ材料として使用する場合には、モール芯材として軽量性、耐候性、金属接着性等に優れると共に、TPOと異形共押出しして、TPOとの層間接着性に優れていることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、軽量性、耐候性、金属接着性、異形押出し性に優れ、TPOと共押出し異形成形を行なっても高い層間接着性を得ることが可能な自動車モール用材料及びそれを使用した自動車モールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明によれば、不飽和カルボン酸含量が0.1〜9重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーであって、その融点が100℃以上、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.1〜10g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)100重量部に対して、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)を1〜40重量部の割合で配合した重合体組成物からなる自動車モール用材料が提供される。
【0007】
本発明によればまた、上記材料を使用した自動車モール、とりわけTPOをリップ材料として用い、上記材料を本体材料とする自動車モールが提供される。このような自動車モールは、好ましくは、上記材料とTPOの異形共押出しによって製造される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軽量性、耐候性、金属接着性、異形押出し性等に優れ、TPOと共押出し異形成形を行なっても層間接着性の高い自動車モール用材料を得ることができる。したがってTPOと異形共押出しによって製造されるモール、とくにTPOをリップ材として上記重合体組成物をモール本体材とするモールに好適に使用することができる。具体的には、サイドモール、ウィンドシールドモール、ベルトラインモール、ルーフモール、バンパーモール、グラスチャンネルなどに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の自動車モール用重合体組成物に配合されるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)は、不飽和カルボン酸含量は0.1〜9重量%、とくに4〜8重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーであって、示差走査熱量測定に基づく融点が100℃以上、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999、以下同じ)が0.1〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分のものである。成分(A)としてアイオノマーを使用する場合には、その中和度が50%以下、とくに40%以下のものを使用するのが好ましい。上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体はまた、エチレンと不飽和カルボン酸の二元共重合体のみならず、融点が上記範囲を満足する限り他の単量体成分が共重合された多元共重合体であってもよいが、この場合は他の単量体成分の含有量は10重量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記共重合体における不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができるが、とくに好ましいのは、アクリル酸又はメタクリル酸である。また上記他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルのような不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素などを例示することができる。とくに好適な他の単量体は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。
【0011】
上記共重合体のアイオノマーとしては、カチオンがリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属などの金属カチオンのものが好ましい。アイオノマーとしては、これら金属カチオンを2種以上含むものであってもよく、さらに有機アミン、例えば、n−へキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、メタキシレンジアミンなどで錯化合物を形成しているものであってもよい。
【0012】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン、不飽和カルボン酸、場合によりさらに他の単量体を、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。またそのアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体に相当する金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0013】
本発明の自動車モール用重合体組成物に配合されるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)は、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの低結晶性又は非晶性のランダム共重合体であり、X線による結晶化度が40%以下(0〜40%)、好ましくは30%以下のものである。このような共重合体は、エチレン含量が30〜95モル%、好ましくは40〜90モル%、密度(ASTM D1505に準拠し、アニールなしで密度勾配管により測定)が850〜900kg/m、好ましくは855〜895kg/m、ASTM D3418に基づく融点が100℃以下であるか又は融点を有しないものが好ましい。該共重合体における炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、4−メチル−1−ペンテンなど炭素数20以下のものが、単独であるいは2種以上混合して使用される。
【0014】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜50g/10分、とくに0.2〜20g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0015】
このようなランダム共重合体(D)は、バナジウム触媒成分と有機アルミニウム化合物成分からなる触媒系あるいはメタロセン触媒成分とアルミノオキサンとからなる触媒系を用い、炭化水素溶媒中でエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンをランダム共重合することによって得ることができる。
【0016】
本発明の自動車モール用重合体組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)を必須成分として含有するものであり、本発明の自動車モール用重合体組成物における各成分の配合割合は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)100重量部に対して、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)を1〜40重量部、好ましくは1〜30重量部である。このような配合組成とすることで、軽量性、耐候性、金属接着性、異形押出し性、TPO接着性柔軟性、機械的強度、耐熱性、加工性、ウレタンシーラント接着性等に優れた自動車モールを得ることができる。
【0017】
[他の任意配合成分]
本発明の自動車外装部品用重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、他の重合体や添加剤を配合することができる。例えば上記重合体組成物の耐熱性を一層高めるために、α−オレフィン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体を配合することができる。このような共重合体は、α−オレフィンとグリシジル(メタ)アクリレート二元共重合体のみならず、さらにビニルエステル又は不飽和カルボン酸エステルなどの他の単量体を含有する多元共重合体であってもよい。該共重合体におけるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどの炭素数2〜8程度のα−オレフィンを挙げることができるが、とくにエチレンであることが好ましい。これら他の単量体の具体例としては、成分(A)におけるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体における他の単量体としてすでに例示したものを挙げることができるが、とくに不飽和カルボン酸エステルやビニルエステルなどの不飽和エステルが好ましい。
【0018】
上記共重合体としては、α−オレフィン含量が50〜99重量%、とくに60〜98重量%、グリシジル(メタ)アクリレート含量が1〜30重量%、とくに2〜25重量%、不飽和エステル含量が0〜40重量%、好ましくは0〜30重量%の範囲で共重合されているものが好ましい。また上記共重合体がエチレン共重合体である場合には、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜50g/10分、とくに0.5〜30g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0019】
このような共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体あるいはグラフト共重合体のいずれであってもよいが、ハンドリングの点でランダム共重合体を使用するのが好ましい。このようなランダム共重合体は、例えば、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0020】
本発明の自動車外装部品用重合体組成物に任意に配合できる添加剤として、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤、無機充填剤、繊維強化材などを挙げることができる。
【0021】
上記添加剤においては、とりわけ長期の屋外使用に耐えるためには、酸化防止剤、光安定剤及び紫外線吸収剤から選ばれる少なくとも1種を配合することが望ましい。酸化防止剤としては、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどで代表されるヒンダードフェノール系酸化防止剤、光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートなどで代表されるヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどで代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤や2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどで代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好適に使用できる。これらの効果的な添加量はそれぞれ0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0022】
上記添加剤として使用可能な顔料の例としては、酸化チタン、亜鉛華、弁柄、群青、紺青、アゾ顔料、ニトロソ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料など、また無機充填剤としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、けいそう土、雲母粉、アスベスト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、シリカ、アルミナ、アスベスチ、グラファイト、ウィスカー、金属粉、ガラス球、シラスバルーン、カーボンブラック、ガラス繊維、カーボン繊維などを例示することができる。とくにカーボンブラックは、自動車用モールの耐候性及び寸法安定性を高めるために有用な添加剤である。カーボンブラックは、例えば樹脂成分100重量部当り、0.1〜20重量部、とくに0.2〜10重量部の割合で配合することが望ましい。この配合によって、83℃サンシャインウェザロ試験(雨有り)で2000時間後においてもクラックを発生しない重合体組成物を容易に得ることができる。
【0023】
本発明の自動車モール用重合体組成物を調製するには、上記(A)、(B)場合により他の任意配合成分を、同時にあるいは逐次的にドライブレンド及び/又はメルトブレンドすればよい。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレンダーなどの各種ミキサーあるいはブレンダーを使用することができる。またメルトブレンドには、1軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの混練装置を使用することができる。
【0024】
本発明の上記重合体組成物は、自動車モールの少なくとも一部に使用される。自動車外装部品としては、例えば、サイドモール、ウィンドシールドモール、ベルトラインモール、ルーフモール、バンパーモール、ドアウィンドウ水切り、グラスチャンネル、ウェザーストリップなどのモール類を挙げることができる。このような自動車モールは、上記重合体組成物のみで構成されていてもよく、他の材料からなる層と複合して構成されていてもよい。例えば、ステンレス、亜鉛メッキ鋼板などの金属芯材上の少なくとも一部に上記重合体組成物の層が被覆されて形成されていてもよい。また上記重合体組成物からなる層と他の熱可塑性重合体からなる層から構成されていてもよい。このような複合層から構成される自動車用モールの場合は、上記重合体組成物層をモールディング本体として使用してもよくあるいは表皮層として使用してもよい。
【0025】
前記金属芯材への被覆においては、上記重合体組成物は金属芯材上に直接被覆されていてもよく、また適当な接着剤を介して被覆されていてもよい。このような目的に使用される接着剤として、例えばエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のような熱可塑性樹脂タイプ、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シランカップリング剤系材料のような熱硬化性樹脂タイプのものを例示することができる。金属芯材と上記モールディング材料との層間接着力の信頼性を高めるためには、このような接着剤の使用が好ましい。
【0026】
また本発明の自動車モールにおいて、前記重合体組成物層と別の層を形成することができる熱可塑性重合体としては、熱可塑性樹脂あるいは熱可塑性エラストマーなどを例示することができる。より具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(A)成分として紹介したようなあるいは(A)成分よりさらに不飽和カルボン酸含量の大きいエチレン・不飽和カルボン酸共重合体やそのアイオノマーなどのエチレン・極性モノマー共重合体、ナイロン、ポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチックなどを例示することができる。また熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー(TPO)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、スチレン系エラストマーなどを例示することができる。これらの中では、良好な層間接着性が得られるところから、エチレン・極性モノマー共重合体、TPOあるいはTPOと(A)成分として紹介したようなあるいは(A)成分よりさらに不飽和カルボン酸含量の大きいアイオノマーとの任意割合の組成物の使用が好ましい。
【0027】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、オレフィン系共重合ゴムとオレフィン系プラスチックを必須成分とし、少なくともオレフィン共重合体ゴム成分が部分的にあるいは高度に架橋されているものであって、エラストマー的性質を有するものである。
【0028】
上記オレフィン共重合ゴムは、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・1−ブテン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴムのようなオレフィンを主体とする非晶性ないし低結晶性の共重合体であって、過酸化物によって架橋できるものが好ましく、とくにエチレンを主成分とするエチレン・αーオレフィン共重合ゴム、とりわけエチレン・プロピレン共重合ゴムやエチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴムが好適である。上記エチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴムにおけるポリエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジビニルベンゼンなどを例示することができる。
【0029】
上記過酸化物架橋型オレフィン共重合ゴムとして好適なエチレン・プロピレン共重合ゴムやエチレン・プロピレン・ポリエン共重合ゴムにおいては、エチレンとプロピレンの重合比率は、エチレン/プロピレンがモル比で50/50〜90/10、とくに55/45〜85/15のものが好ましい。またポリエンの含有量としては、共重合ゴムの沃素価が16以下となるような割合で存在しているものを使用するのが好ましい。共重合ゴムとしてはまた、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が10〜180、とくに40〜120程度のものが望ましい。
【0030】
オレフィン系熱可塑性エラストマーを構成するオレフィン系プラスチック成分としては、1種又はそれ以上のオレフィンから種々の製法で製造される高結晶性の重合体もしくは共重合体であって、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの重合体もしくは共重合体を挙げることができる。これらの中では、過酸化物分解型プラスチック、例えばポリプロピレン(少量の他のオレフィンとの共重合体を含む)と、ポリエチレン、とくに直鎖低密度ポリエチレンとから選ぶのが好ましく、とくにポリプロピレンを少なくとも一成分とするものが好ましい。
【0031】
オレフィン系熱可塑性エラストマーには、任意にポリイソブチレン、ブチルゴム、アタクチックポリプロピレン、プロピレンが主成分のプロピレン・エチレン共重合ゴムのような過酸化物分解型ゴムや鉱物油のような柔軟化剤が含まれていてもよい。この熱可塑性エラストマーの典型的な製法は、上記各成分に有機過酸化物を加え、動的に架橋する方法であり、このようにして得られる部分架橋物をそのままあるいはさらに結晶性オレフィン系プラスチックをブレンドした形で用いることができる。より具体的には、エチレン・α―オレフィン共重合ゴム100〜20重量部、オレフィン系プラスチックス0〜80重量部、過酸化物非架橋型ゴムと柔軟化剤の合計0〜100重量部からなる混合物を過酸化物の存在下に動的に架橋することによって得られる部分架橋ゴム組成物100〜30重量部とオレフィン系プラスチックス0〜70重量部とからなる混合物であって、最終混合物中100重量部当たりのオレフィン系プラスチックス成分が5〜70重量部となるように調製されたものを使用することができる。
【0032】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは上記製法に限定されるものではなく、例えば部分架橋したエチレン・α―オレフィン共重合ゴムとオレフィン系プラスチックスを単純にブレンドしたタイプのものであってもよい。またさらに、無水マレイン酸のようなもので変性されたものであってもよい。
【0033】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、230℃、10kg荷重におけるメルトフローレートが0.1〜100g/10分、とくに0.5〜70g/10分程度のものを使用することが望ましい。またショアA硬度が45〜90、とくに50〜85程度のものを使用するのが好ましい。
【0034】
このような熱可塑性エラストマーとして、例えばミラストマー、サーモラン、サントプレン、住友TPE、グドマー、アクティマー、レオストマー、トリニティー、P.E.R、AMZELなどの商品名で市販されているものを使用することができ、これらは市場から容易に入手することができる。
【0035】
これらの熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーからなる層を設ける場合には、本発明の上記重合体組成物の層との熱融着性を高めるために、(A)成分として紹介したようなあるいはそれより不飽和カルボン酸含量の大きいエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を少量、例えば熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーに対して30重量%位まで配合することができる。このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、例えば成分(A)や(B)として紹介したものであって、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分のものを挙げることができる。
【0036】
上記のような自動車モールにおいてはまた、上記のような重合体組成物層、あるいはこれと他の材料層とからなるモール本体(任意に表皮層を有する)を形成し、その側端部に柔軟性樹脂からなるリップ部を設けてもよい。リップ部材料としては、上記モール本体材料より柔軟な材料であり、また上記重合体組成物と溶融接着性が優れ、しかも共押出可能な材料が好ましく、例えば、上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン・不飽和エステル共重合体を挙げることができる。
【0037】
上記リップ部材料として使用可能なエチレン・不飽和エステル共重合体として具体的には、エチレンと、酢酸ビニル、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチルのような不飽和カルボン酸エステルなどの不飽和エステルとの共重合体であって、不飽和エステル含量が1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%のものを例示することができる。かかるエチレン・不飽和エステル共重合体としてはまた、樹脂組成物(E)層との熱融着性を高めるために、アクリル酸やメタクリル酸が少量、例えば10重量%以下程度共重合されたものを使用してもよい。エチレン・不飽和エステル共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜100g/10分、とくに0.2〜50g/10分のものが好ましい。このようなエチレン・不飽和エステル共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0038】
上記リップ材料となるオレフィン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン・不飽和エステル共重合体においても、本発明の自動車モール用重合体組成物の層との熱融着性を高めるために、エチレン・アクリル酸共重合体やエチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を配合することができる。このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが、0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜50g/10分のものを挙げることができる。このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の配合量は、リップ材料として充分な柔軟性を維持する範囲内で決められるべきものであり、例えば全体の30重量%以下程度とされる。
【0039】
上記重合体組成物の層と別の層を形成する熱可塑性重合体の層やリップ材料にはまた、上記重合体組成物に添加することが可能なカーボンブラックやその他任意配合成分を同様に配合することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の自動車外装部品用重合体組成物の具体例を示す。尚、実施例で用いた原料及び物性評価方法は以下の通りである。
【0041】
1.原料
[成分A]
A−1:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量5重量%、MFR2g/10分、融点104℃)
[成分B]
B−1:非晶性エチレン・プロピレンランダム共重合体(密度870kg/m、MFR8.1g/10分、結晶化度0%)
[その他成分C]
C−1:カーボンブラックマスターバッチ[商品名:CMB561(三井・デュポンポリケミカル(株)製)]
【0042】
2.物性評価方法
(1)メルトフローレート(MFR):JIS K7210−1999準拠(190℃、2160g荷重)
(2)曲げ剛性率:JIS K7106準拠(オルゼン式)
(3)引張試験(破断点強度、伸び):JIS K6760準拠(2号ダンベル)
(4)硬度(ショアA):JIS K7215(23℃)
【0043】
(5)耐熱試験:
JIS規格2号ダンベルを100℃に設定したオーブン中に吊り下げ、100時間後、変形及び重量の変化を観察する。
○:形状、重量の変化が1%未満
×:形状、重量の変化が1%以上
8)TPO接着性
二色成形用金型を用いて、TPO(商品名ミラストマー(三井化学(株)製)、ショアA硬度70)と実施例又は比較例の重合体組成物との二色成形品を作成し、接着面の薄利試験を行った。
○:材料破壊
×:界面剥離
【0044】
[実施例1]
前述した原料A−1、B−1及びC−1を表1に示す割合で混合してスクリュー式単軸押出機(スクリュー径40mm、ダルメージスクリュー、L/D=28)に供給し、バレル温度200℃、スクリュー回転数50min−1の条件下に溶融混練した。得られたブレンド物について上述の各種物性を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
実施例1において、B−1を配合しなかった以外は、実施例1と同様にしてブレンド物を製造した。得られたブレンド物について上述の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸含量が0.1〜9重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーであって、その融点が100℃以上、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(JIS K7210−1999)が0.1〜10g/10分のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A)100重量部に対して、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)を1〜40重量部の割合で配合した重合体組成物からなる自動車モール用材料。
【請求項2】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(B)が、エチレン含量が30〜95モル%、X線による結晶化度が40%以下、密度が850〜900kg/mのものである請求項1記載の自動車モール用材料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動車モール用材料を用いた自動車モール。
【請求項4】
請求項1又は2記載の自動車モール用材料を芯材とし、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーをリップ材とする請求項3記載の自動車モール。
【請求項5】
異形共押出しにより成形されてなる請求項4記載の自動車モール。

【公開番号】特開2006−1348(P2006−1348A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178109(P2004−178109)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】