説明

自動車内装の装飾に使用される再生可能な原材料から調製されるPVC組成物

本発明は、組成物中の再生可能な炭素の組成物中の全炭素に対する数の比が30%以上となるように製造された新規PVC樹脂組成物に関する。前記組成物は、自動車内装部品の製造に使用することができ、従ってこの使用に必要なすべての要求を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物の全炭素に対する組成物の再生可能な炭素の比が30%以上となるような、PVC樹脂を主成分とする新規組成物に関する。この組成物は、自動車内部の部品の製造に使用されることが意図されており、従って、この用途に必要なすべての要求を満たす。
【背景技術】
【0002】
PVC樹脂は、機械的性質、耐薬品性、および耐候性などの良好な物理的性質を有するが、これらの費用は依然として比較的高くない。このことが、PVC樹脂を主成分とする半剛性または可撓性の組成物が、乗物の乗員室の特定の部品、例えばダッシュボードまたはドアパネルの外層の製造に最も頻繁に使用されることの理由である。そしてこの外層は「スキン」と呼ばれている。
【0003】
現在、費用削減の傾向のため、製造元はこの樹脂層の厚さを減少させながら、耐熱老化、UV抵抗性などのあらゆる分野にわたる性能に関する要求を増加させている。乗物の乗員から見えなくなるようにエアバックカバー(一体型エアバッグ)を覆い隠すことにあるもう1つの傾向から、粒子を飛び散らすことなく従来−35℃から+80℃の間である温度で非常に短時間で開放できるようにするため、機械的性質に関する要求が非常に高くなっている。さらに、この層は、柔らかい外観を構造に与えるためのポリウレタン発泡体でできた別の層を通常は覆う。このPU発泡体が存在するために、PVC材料の耐老化性が大きく低下する。従って、自動車内装に使用されるPVC樹脂を主成分とする層は、高性能材料である。
【0004】
これらの性能は、多くの多様な添加剤を加えることによって得られる、最も多くの重量を占めるのは可塑剤であり、これによって特に可撓性および耐寒性が得られる。自動車内装への使用が意図されたPVC系組成物は、石油起源のアルコールから調製されるために再生可能起源の炭素を非常にわずかしか含有しない可塑剤を使用して従来は調製されている。これらのアルコール類は、石油留分の水蒸気分解または接触分解によって得られる。
【0005】
これらの材料を使用すると、これらの耐用年数を終えたときの分解または焼却の間に温室効果が増加する。さらに、世界中の石油資源が減少すると、これらの原材料の供給源も徐々に使いつくされるようになる。
【0006】
逆に、バイオマス由来の原材料は、環境への影響が少ない。植物性材料は、要求に応じてほぼ世界中で大量に栽培することができ、再生可能であるという利点も有する。
【0007】
従って、化石起源の原材料に依存せず、その代わりに再生可能起源の原材料を使用する合成方法および新規組成物が必要と思われる。
【0008】
今日、消費者は、環境に対してより安全で清浄であるという評判を有する植物起源の製品に対する関心が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、自動車の乗員室中での使用が意図された新規組成物であって、再生可能起源の材料をできる限り高い含有率で含有し、そのため組成物を構成する炭素の少なくとも30%が再生可能起源である組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明者らは、組成物の全重量に対する重量で、以下の化合物:
50から80の間のK値を有する1種類以上のPVC樹脂40%から60%と;
1種類以上の可塑剤30%から50%と;
1種類以上の添加剤5%から20%とを含有し、
前記化合物の少なくとも1つが再生可能起源であり、そのため組成物の炭素の少なくとも30%が再生可能起源の炭素である、新規化合物を開発した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
表現「組成物の炭素の30%が再生可能起源の炭素である」は、本発明の意味では、数を基準として30%であると理解されたい。
【0012】
本発明者らは、このような組成物が再生可能起源であるだけでなく、自動車市場における使用に必要なすべての規格に適合することを示した。
【0013】
表現「再生可能起源の化合物」は、本発明の意味では、再生可能起源の炭素を含み、植物性または動物性原材料から得られる可塑剤、添加剤、および/またはPVC樹脂を意味すると理解されたい。
【0014】
実際、化石材料から誘導される材料とは異なり、再生可能な原材料を構成する材料は14Cを含有する。生物(動物または植物)から得られるすべての炭素サンプルは実際には3つの同位元素の混合物である:12C(約98.892%である。)、13C(約1.108%)、および14C(微量:1.2×10−12%)。生体組織の14C/12C比は、大気における比と同じである。環境中では、14Cは主として2つの形態で存在する:無機形態、即ち二酸化炭素(CO)の形態、および有機形態、即ち有機分子中で一体となった炭素の形態である。
【0015】
生物中では、炭素は絶えず環境と交換されるため、14C/12C比は代謝によって一定に維持される。14Cの比率は大気中で実質的に一定であるため、生物はこの12Cを吸収するのと同様に14Cを吸収するので、生存中は生物内でも実質的に一定となる。平均の14C/12Cは1.2×10−12である。
【0016】
12Cは安定であり、即ち特定のサンプル中の12C原子数は時間が経過しても一定である。14C自体は放射性であり(生物の炭素1gごとに十分な14C同位元素を含有しているので1分当たり13.6個の崩壊が起こる。)、サンプル中のこのような原子の数は以下の法則:
n=no・exp(−at)
により時間(t)とともに減少し、式中:
noは、起点(生物、動物、または植物が死んだ時点)における14Cの数であり、
nは、時間t後に残存する14C原子の数であり、
aは、崩壊定数(または放射性崩壊定数)であり;これは半減期と関連している。
【0017】
半減期(または半減期間)は、特定の化学種の放射性核または不安定粒子が任意の数から崩壊によって半分に減少するまでの時間であり;半減期T1/2は崩壊定数と式aT1/2=ln2によって関連している。14Cの半減期は5730年である。
【0018】
14Cの半減期(T1/2)を考慮すると、植物原材料の抽出から化合物の製造まで、さらにはこの使用終了まで、14C含有率が実質的に一定であると見なされる。
【0019】
本出願人は、化合物が、炭素の全質量中に再生可能起源のCを少なくとも30質量%を含有する、好ましくは炭素の全質量中に再生可能起源のCを少なくとも40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、95質量%、または98質量%含有する場合に、この化合物が再生可能な原材料から誘導されると見なす。
【0020】
言い換えると、化合物が、14Cを少なくとも0.3×10−10質量%、14Cを最大0.98×10−10質量%含有する場合に、この化合物は再生可能な原材料から誘導されている。
【0021】
現在のところ、サンプルの14C含有率を測定するための少なくとも2つの異なる技術が存在する:
液体シンチレーション分光法による:この方法は、14Cの崩壊から誘導される「β」粒子を計数することにある。質量が既知(12C原子数が既知)のサンプルから誘導されるβ線をある時間測定する。この「放射能」は、14C原子の数に比例するので、これより求めることができる。サンプル中に存在する14Cはβ線を放出し、これが液体シンチラント(シンチレーター)と接触するとフォトンを発生する。これらのフォトンは種々のエネルギー(0から156keVの間)を有し、14Cスペクトルと呼ばれるものを形成する。この方法の2つの変形によると、この分析は、適切な吸収剤溶液中で炭素系サンプルによってあらかじめ発生したCO、または炭素系サンプルからベンゼンへの事前の変換後のベンゼンのいずれかに関する。
【0022】
質量分析による:サンプルを黒鉛またはCOガスまで還元し質量分析計中で分析する。この技術では加速器および質量分析計を使用して、14Cイオンを12Cイオンから分離し、それによって2つの同位元素の比が求められる。
【0023】
材料の14C含有率を測定するためのこれらすべての方法は、ASTM D 6866規格(特にD6866−06)およびASTM D 7026規格(特に7026−04)に明確に記載されている。
【0024】
本発明の化合物の場合に好ましくは使用される測定方法は、ASTM D6866−06規格に記載される質量分析(「加速器質量分析」)である。
【0025】
従って、本発明による組成物自体は、組成物の炭素の全質量に対して14Cを少なくとも30質量%含むという点において、再生可能起源の組成物として記載することができる。
【0026】
本発明による組成物は、50から80の間のK値を有する1種類以上のPVC樹脂を40%から60%含む。50から80の間のK値を有するPVC樹脂は、懸濁液中のプロセスによって得ることができるが、エマルジョンまたはバルクで製造されたPVCを使用することもできる。
【0027】
好ましくは、本発明による組成物中に使用されるPVC樹脂も再生可能起源である。
【0028】
再生可能起源のPVCを得る方法の1つを以下に説明する。
【0029】
本発明による組成物中に使用することができる再生可能起源のPVCを得る方法の1つを以下に説明する。
【0030】
この方法は、第1のステップにおいて、エタノールを得るためのバイオマスの発酵を含み、エタノールを脱水してエチレンを得るステップ、エチレンから塩化ビニルモノマー(VCM)の変換、次にエマルジョン中でのVCMからPVCの合成を含む。これらのステップを以下に詳細に説明する。
【0031】
再生可能起源のPVCを得るための方法の第1のステップは、エタノールを生成するために少なくとも1種類の植物性材料を発酵させることを含む。この植物性材料は、特に糖類、デンプン、およびこれらを含有する植物抽出物から特に選択することができ、特にビート、サトウキビ、小麦、大麦、モロコシ、またはトウモロコシなどの穀物用植物、ならびにジャガイモを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。またはバイオマス(セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの混合物)であってもよい。次にエタノールは、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を使用する発酵によって得られる。使用される植物性材料は、発酵ステップの前には一般に加水分解された形態である。この事前の加水分解ステップによって、例えば、グルコースに変換するためのデンプンの糖化、またはスクロースからグルコースへの変換が可能となる。
【0032】
これらの発酵方法は当業者には周知である。これらの方法は、例えば、1種類以上の酵母の存在下での植物性材料の発酵、続いてより濃縮された水溶液の形態でエタノールを回収することが可能となる蒸留、次に、エタノールのモル濃度をさらに増加させるためのさらなる処理を含む。
【0033】
本発明による方法の第2のステップにおいては、発酵によって得られたエタノールは、第1の反応器中で脱水されて、エチレンと水との混合物が得られる。アルコールは第1の反応器の上部に注入されることが好ましい。この脱水ステップは、特にγ−アルミナを主成分とすることができる触媒の存在下で一般に行われる。エタノールの脱水に適した触媒の一例は、特に、EUROSUPPORTより商品名ESM 110(登録商標)で販売されている。これは、わずかな残留NaO(通常0.04%)を含有するドープされていない三葉型アルミナである。当業者であれば、この脱水ステップに最適な運転条件を選択することができる。例えば、液体エタノールの体積流量の触媒体積に対する比が1h−1であり、触媒床の平均温度が400℃であると、98%程度のエチレン選択性でエタノールがほぼ完全に変換されることが示された。
【0034】
本発明の方法のこのステップで得られたエチレンは、直接塩素化によって、または酸素および塩酸を使用したオキシ塩素化によって、ジクロロエタンに変換される。次にこのジクロロエタンは、塩化ビニルモノマーを形成するために、約500℃における分解ステップが行われる。
【0035】
直接塩素化ステップは以下の反応で表すことができる:
+Cl→CCl
オキシ塩素化ステップは以下の反応で表すことができる:
1/2+2HCl→CCl+HCl
分解ステップは以下の反応で表すことができる:
(CHCl)→CHCHCl+HCl
【0036】
オキシ塩素化ステップで生成したすべての塩酸がオキシ塩素化ステップで再利用され、ジクロロエタンの量および塩酸の量の外部との出入りがない場合、VCM製造ユニットは「バランスがとれている」といわれる。
【0037】
直接塩素化ステップ中、ジクロロエタンはエチレンと塩素との間の発熱反応によって合成される。生成したジクロロエタンは反応媒体として一般に使用される。反応温度は一般に50から120℃の間であり、圧力は大気圧から5barまでを変動することができる。この反応は金属塩化物、特に塩化第二鉄によって一般に触媒されるが、塩化アルミニウム、塩化銅、および塩化アンチモンを使用することもできる。
【0038】
直接塩素化反応のジクロロエタン収率は一般に99%を超える。この反応では、他の塩素化炭化水素、特に1,1,2−トリクロロエタンおよび塩化エチルも1%未満で生成する。酸素、または場合によりジメチルホルムアミドを主成分とする阻害剤を使用することで、置換反応による塩素化副生成物、特に1,1,2−トリクロロエタンの形成を減少させることができる。
【0039】
直接塩素化ステップは、低温または高温のいずれにおいても行うことができる。
【0040】
低温直接塩素化は、ジクロロエタンの沸点よりも低温、即ち一般に70℃未満の温度で行われる。反応器から出た液体ジクロロエタンは、触媒を除去するために一般に洗浄する必要があり、従って水分を含むジクロロエタンが得られ、分解ステップ前に乾燥および蒸留が必要となる。
【0041】
低温直接塩素化では、高温直接塩素化よりもわずかに少ない副生成物が得られるが、ジクロロエタンを蒸留する必要があるため、より多くのエネルギーを必要とする。反応終了時の1,1,2−トリクロロエタンの濃度は、一般に300から800重量ppmの間である。
【0042】
高温直接塩素化は、ジクロロエタンの沸点よりも高温、即ち一般に90℃を超える温度で行われる。ジクロロエタンは蒸気の形態で反応器を離れる。従って、あらかじめ洗浄または蒸留を行うことなく分解ステップに直接送ることができる。さらに、ジクロロエタンの形成によって放出されるエネルギーは蒸発エネルギーの6倍に等しいので、例えば低温直接塩素化、オキシ塩素化から得られるジクロロエタン、または場合により分解中に変換されず再循環されるジクロロエタンを精製するためにエネルギーを回収することができる。
【0043】
高温直接塩素化中、ジクロロエタンは蒸気の形態で生成されるので、反応器中に触媒が蓄積する。反応終了時の1,1,2−トリクロロエタンの濃度は一般に1000から3000重量ppmの間である。
【0044】
オキシ塩素化ステップは、エチレン、酸素、および塩酸をともに反応させてジクロロエタンおよび水を形成するステップである。この反応は、塩化第二銅を主として含有する触媒の存在下、220℃から250℃の間の温度および2から6bargで変動する圧力において一般に行われる。反応は固定床中または流動床中で行うことができる。流動床反応器は、良好な温度均一性を有し、より低い温度および圧力における運転が可能である。この反応は非常に発熱性であり、望ましくない副生成物の形成を最小限にするために温度を制御することが重要である。反応熱は、蒸気を発生させるために低温の表面上で冷却することによって回収することができる。
【0045】
塩化第二銅に加えて、触媒は塩化カリウムなどの他の成分を含有することができる。塩化カリウムが存在することによって触媒全体の活性は低下するが、直接酸化反応の反応速度の低下に対して大きな影響を有する。従ってカリウムを使用することによって、エチレンからジクロロエタンへの変換の反応の選択性を改善することができる。
【0046】
反応中に使用される塩酸は、ジクロロエタンの分解から、およびVCMの精製から回収することができるが、好適な純度の乾燥気体の塩酸の外部供給源を使用することもできる。
【0047】
酸素源は、周囲空気、酸素、またはこれら2つの混合物であってよい。空気システムは、塩酸の高変換率を実現するために化学量論量よりもわずかに過剰で空気およびエチレンを導入することが必要となるが、これによって塩素化副生成物の形成が増加し、排気ガスがより多い量で生成する。酸素システムは、エチレンを大過剰で必要とし、より低い温度で運転することが可能となり、副生成物および排気ガスが顕著に減少するような収率が得られる。しかし、空気から酸素を生成することは、エネルギーに関してより費用がかかる。
【0048】
オキシ塩素化反応の生成物は、低下する温度レベルにおいて冷却および凝縮することによって、不活性ガス流から分離される。吸着または吸収によって不活性ガス混合物から残留ジクロロエタンをさらに分離することが有用となり得る。
【0049】
冷却および凝縮の後、ジクロロエタン、および他の塩素化有機炭化水素の大部分は水に対する溶解性が低いため、水およびジクロロエタン、ならびにその他の塩素化有機炭化水素は自然に2相に分離する。
【0050】
直接塩素化ステップおよび/またはオキシ塩素化ステップの後、ジクロロエタンに対して、塩化ビニルモノマーを形成するための分解ステップが行われる。
【0051】
分解ステップ中に使用されるジクロロエタンは、VCM精製ステップ、または外部の供給源から得られてもよい。
【0052】
供給源がなんであろうと、分解中に行われる熱分解ステップは、微量の不純物によって阻害または付着が生じやすくなるため、ジクロロエタンは精製する必要がある。
【0053】
ジクロロエタンの精製は以下の作業からなることができる:
微量の塩酸、触媒、ならびにクロラールおよび2−クロロエタノールなどのある種の水溶性有機化合物を除去するための、水および苛性生成物による洗浄。この作業は、特に低温直接塩素化が使用される場合の直接塩素化ステップと一体化されることが多い;
水、ならびにクロロホルム、塩化エチル、および四塩化炭素などのジクロロエタンより低い沸点を有する塩素化副生成物を除去するための、1つまたは2つのカラム中での軽質留分の蒸留;ジクロロエタンの一部は、共沸混合物が存在するために軽質留分とともに失われる;
ジクロロエタンよりも高い沸点を有する塩素化副生成物、特に1,1,2−トリクロロエタンおよびC化合物を除去するための、重質留分の蒸留;純粋な乾燥ジクロロエタンがカラム上部から回収される;
さらにジクロロエタンを回収するため、水を軽質留分から除去するため、または他の塩素化プロセスの供給原料として使用する留分を分離するための、例えば蒸留による、または化学反応による、重質または軽質留分を精製するための他の作業;ならびに
蒸留を使用してジクロロエタンから分離することが困難な軽質生成物を重質生成物に変換するための塩素化反応。
【0054】
ジクロロエタン精製ステップの後、ジクロロエタンからの塩化ビニルモノマーの生成が分解反応によって行われ、続いて生成したガスを冷却するステップが行われる。分解は、一般に400から500℃の間の温度に加熱された加熱炉中、一般に25から30barの間の圧力で行われる。加熱炉中の滞留時間は典型的には5から20秒の間である。
【0055】
加熱炉のコークスおよび付着物の形成を減少させるため、加熱炉に供給されるジクロロエタンの純度は好ましくは99.5%を超える。塩化水素による設備の腐食を防止するために、ジクロロエタンは乾燥も必要となる。
【0056】
加熱炉は一般にガス燃焼式である。
【0057】
ジクロロエタンは50から65%の間の変換率でVCMに変換される。VCMに関する選択率は一般に98から99%である。
【0058】
タールおよび重質副生成物の形成を減少させるために、熱分解生成物の急速な冷却が重要である。低温のジクロロエタンは一般に冷却媒体として機能する。
【0059】
冷却後、熱分解生成物は、塩酸、未変換のジクロロエタン、塩化ビニル、ならびに1,1,1−トリクロロエタン、クロロホルム、および四塩化炭素などの軽質または重質副生成物を分離し回収するために、分別装置に一般に送られる。ジクロロエタンは、VCMにさらに変換させるために分解ユニットに戻すことができ、塩酸は、オキシ塩素化ステップが使用される場合には、オキシ塩素化反応器に送ることができる。
【0060】
追加のステップにおいて、VCMは、懸濁液中のプロセスによって50から80の間のK値を有するPVCに変換されるが、エマルジョンまたはバルクで製造されたPVCを使用することもできる。
【0061】
好ましい一実施形態では、再生可能起源の可塑剤の石油起源の可塑剤に対する重量比は1.5以上である。
【0062】
別の一実施形態では、組成物のすべての可塑剤が再生可能起源である。
【0063】
本発明により使用できる可塑剤の中で、標準的な可塑剤としては、アゼラート類、トリメリタート類、セバカート類、アジパート類、フタラート類、シトラート類、ベンゾアート類、タラート(tallate)類、グルタラート類、フマラート類、マレアート類、オレアート類、パルミタート類、およびアセタート類の群から選択されるものとして挙げることができ、これらの可塑剤は石油起源の場合も再生可能起源の場合もある。
【0064】
再生可能起源の可塑剤の例としては、再生可能起源であることが好ましいカルボン酸と、バイオマス由来が必須であるアルコール類とのエステル化によって得られる化合物を挙げることができる。例えば、トリメリット酸トリ(n−オクチル)とも呼ばれるトリメリット酸トリオクチル、特にPolyntより商品名ジプラスト(Diplast)TM8(登録商標)で販売される製品を挙げることができ、CAS番号:89−04−3を有し、トリメリット酸とヤシ油由来のオクタノールとのエステル化によって得られる。
【0065】
この可塑剤は、化合物に優れた低温特性を付与し、従って一体型エアバッグの要求を満たすことができるので、好ましい。
【0066】
再生可能起源である、即ちトリメリット酸とヤシ油由来のオクタノールとのエステル化によって得られるトリメリット酸トリオクチルは、非常に良好なPVC樹脂との相溶性を有し、即ちPVC樹脂と混合した後で可塑剤の浸出が全く観察されず、低温においてPVC樹脂に対する非常に良好な吸収が示される。
【0067】
再生可能起源の可塑剤として、イソソルビド型のグリーン可塑剤を挙げることもできる。
【0068】
グリセロールから誘導される植物起源の他のエステル類を使用することができ、例えば水素化ヒマシ油の完全アセチル化モノグリセリド、特にDaniscoより商品名ソフト’n’セーフ(Soft’n’Safe)(登録商標)で販売される製品が挙げられ、CAS番号:736150−63−3を有する。
【0069】
本発明の主題である組成物は、一部が石油起源であり、一部が部分的または完全に再生可能起源である可塑剤の混合物を含むことができる。
【0070】
本発明による組成物は添加剤を5から20%含む。ビニル樹脂を主成分とする組成物中に一般に使用される添加剤の中では、有機カルボン酸金属塩類、有機リン酸類、ゼオライト類、ハイドロタルサイト類、エポキシド化合物、β−ジケトン類、多価アルコール類、リン含有、硫黄含有、またはフェノール系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、およびオキサニリド誘導体、シアノアクリラート類、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、過塩素酸塩類、およびその他の金属系無機化合物、潤滑剤、例えば有機ワックス、脂肪アルコール類、脂肪酸類、エステル類、金属塩類、フィラー、例えばチョークおよびタルク、発泡剤、例えばアゾジカルボンアミド類、ならびにカーボンブラックおよび銅フタロシアニン類などの顔料を挙げることができる。
【0071】
再生可能起源の添加剤の例として、エポキシ化ダイズ油、ポリエチレンワックスなどの有機ワックス、脂肪アルコール類、ステアリン酸などの脂肪酸類、およびエステル類などのこの潤滑特性のために使用される化合物を挙げることができる。植物または動物起源の顔料、麻などの天然起源の強化用繊維、アクリル酸ブチル80重量%とメタクリル酸メチル20重量%とを含むものなどの加工助剤、ブチルアクリリック(butyl acrylic)を85から90重量%、メタクリル酸メチルを5から10重量%、およびブタジエンを5から10重量%含むアクリル型の衝撃改質剤、グリセロール、ソルビトール、およびエリスリトールなどのポリオール型の再生可能な炭素を主成分とする安定剤を挙げることもできる。
【0072】
従って、本発明の1種類以上の化合物が再生可能起源である場合、本発明の組成物は、再生可能起源の炭素を最大80%、好ましくは最大90%、非常に好ましくは最大98%含むことができる。
【0073】
好ましくは、本発明による組成物は乾燥粉末の形態であり、可塑剤は前記粉末中に完全に吸収されている。本発明による粉末の流動性を改善するために1種類以上の添加剤を加えることができ、これによって優れた流動性を有する微細な粒度の非ケーキング性生成物を得ることができる。組成物の全重量に対して好ましくは1から10重量%、好ましくは3から8重量%の間で流動剤(flowability agent)が加えられ、この流動剤は、乳化重合の従来技術によって、またはマイクロサスペンジョン重合の従来技術によって好ましくは得られるPVC樹脂である。マイクロサスペンジョン重合法によって得られる樹脂は、特にFR2309569に記載されている。
【0074】
好ましくは、本発明による組成物は粉末形態であり、この粉末を構成する粒子は、50から500μmの間、好ましくは100から200μmの間の平均サイズを有する。
【0075】
従って、この組成物は、回転成形による加工に特に適している。
【0076】
PVC樹脂中への可塑剤の吸収を改善するために、好ましくは以下の様式で加熱パウダーブレンダーが使用される:
吸収能力を増加させるためにPVC樹脂をパウダーブレンダー中で加熱する;
流動化させるために可塑剤を別に加熱する;
樹脂中に拡散するのに十分な時間をかけて可塑剤をブレンダー中にゆっくりと投入する;
得られた混合物を別のジャケット付きパウダーブレンダー中で冷却する。
【0077】
本発明は、自動車の乗員室の部品用、特にエアバッグが取り付けられたダッシュボード用の複合スキンまたは複合構造の層を得るための本発明による組成物の使用であって、前記層の外面がエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、PVC、またはアクリル樹脂を主成分とする組成物から選択される被覆で覆われている、使用にも関する。
【0078】
本発明の別の主題は、自動車の乗員室の部品用、特にエアバッグが取り付けられたダッシュボードの用の複合スキンまたは複合構造の層を得る方法であって、本発明による組成物を金型中に堆積するステップと、続いて、複合スキンまたは複合構造の層を得るために、前記組成物を加熱する第2のステップとを含む、方法である。
【0079】
本発明は、前述の定義の組成物を含む複合スキンまたは複合構造の層にも関する。
【0080】
本発明は以下の実施例によっても説明される。本発明がこれらの実施例に限定されるものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0081】
コンパウンドとも呼ばれる典型的な配合物を、以下に示す配合により乾式混合することによって調製した。乾式混合法は、当産業において周知の方法を使用してPVC樹脂粉末を種々の粉末または液体の添加剤(可塑剤、安定剤、顔料など)と混合することにある。典型的には、PVC樹脂は、液体および固体の添加剤とジャケット付き反応器中で、約140℃の最高温度に到達する加熱および混合サイクル中に混合される。次に得られた混合物は同じ反応器または別の反応器中で冷却される。
【0082】
配合(重量%)
懸濁液のPVC樹脂 46
エマルジョンのPVC樹脂 5
エポキシ化ダイズ油 2.6
カルシウム/亜鉛安定剤 1.3
過塩素酸ナトリウム 0.3
ステアリン酸亜鉛 0.1
UV吸収剤(ベンゾトリアゾール型) 0.1
ナトリウムゼオライト(A) 1.0
可塑剤(表1に記載) 44
【0083】
使用される可塑剤または可塑剤混合物に応じて、組成物A0、A1、A2、A3、およびA4が得られる。
【0084】
【表1】

【0085】
組成物A1、A2、およびA3は本発明による組成物である。組成物A0は比較例となる。
【0086】
次に得られた粉末からスキンを作製した。粉末300gをあらかじめ230℃に加熱した金型中に入れる。20秒後、金型をひっくり返して過剰の粉末を除去する。良好なゲル化を確実にするために、この組立体全体を40秒間オーブンに戻す。次に組立体全体を23℃の水浴中に浸漬する。約1mmの厚さを有するスキンが得られる。
【0087】
このコンパウンドの種々の特徴を以下の方法で評価する:
粉末の流動性は、2mmの直径の孔を有する砂時計に満たすことによって測定する。孔を開放したときに、粉末の流動性が求められる:砂時計から粉末が完全に流れ出る場合は「流動する」、流れ出ない場合は「流動しない」。
【0088】
IRHD硬度は、ASTM D1415規格に準拠して試験する。70から80の間の値が、自動車用途において要求される仕様に適合する。
【0089】
フォギングは、DIN 75201a規格に準拠して測定する。85%を超える値が、自動車用途において要求される仕様に適合する。
【0090】
耐寒性は、ガラス転移温度(T)の値から評価する。ガラス転移温度は動的機械分析(DMA)によって測定する。この温度が低いほど、耐寒性が優れている。−20℃未満のTで、最低温度において独立したエアバッグを開くのに十分な抵抗性が一般に保証される。一体型エアバッグの場合は少なくとも−35℃未満のTが必要となる。
【0091】
耐熱老化性は、ポリウレタンフォーム(厚さ2cm、ポリオールとイソシアネートとの間の反応によって得られるバイエル(Bayer)IF02Hフォーム)の下層と、PVCスキンの上層とを含むサンプルを堆積することによって測定する。上層の初期の色を、CIE Lab測定スケールに準拠して分光光度計によって測定する。この試験に使用されるサンプルは灰色である。この組立体を、120℃にサーモスタットで制御されたオーブンに500時間入れる。次に、老化後の色を測定し、色の変化から耐熱老化性を評価することができる。変化デルタE(DE)は、以下の式1に従って、3つの成分L、a、およびbの3つの変化の自乗の合計の平方根をとることによって計算される:
【0092】
【数1】

【0093】
典型的には、4未満の値が、自動車用途において要求される仕様に適合する。
【0094】
再生可能な炭素の%値は、ASTM D6866規格に準拠して測定される。
【0095】
以下に示す結果から、再生可能起源のトリメリタートを主成分とする本発明により得られる配合物が、自動車用途において要求される仕様に適合し、石油起源のトリメリタートを主成分とするサンプルとは異なり、30%を超える再生可能な炭素含有率を有することが分かる。
【0096】
【表2】

【実施例2】
【0097】
実施例1と同じ方法で、以下の配合に従ってコンパウンドを乾式混合により調製した。
【0098】
配合(重量%)
懸濁液のPVC樹脂 49
エマルジョンのPVC樹脂 5
エポキシ化ダイズ油 2.7
カルシウム/亜鉛安定剤 1.3
過塩素酸ナトリウム 0.3
ステアリン酸亜鉛 0.1
UV吸収剤(ベンゾトリアゾール型)0.1
ナトリウムゼオライト(A) 1.1
可塑剤(表3に記載) 40
【0099】
使用した可塑剤の種類により、組成物B0およびB1が得られる。
【0100】
【表3】

【0101】
組成物B1は本発明による組成物である。組成物B0は比較例となる。
【0102】
以下に示す結果から、Daniscoより商品名ソフト’n’セーフで販売される再生可能起源の可塑剤を主成分として本発明により得られた配合物B1が、独立したエアバッグまたはドアパネルの自動車用途において要求される仕様に適合し、石油起源のトリメリタートを主成分とするサンプルB0とは異なり、30%をはるかに超える再生可能な炭素含有率を有することが分かる。
【0103】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対する重量を基準として以下の化合物:
再生可能起源の50から80の間のK値を有する1種類以上のPVC樹脂40%から60%と;
1種類以上の可塑剤30%から50%と;
1種類以上の添加剤5%から20%とを含有し、
前記化合物の1種類以上が再生可能起源であり、そのため組成物の炭素の少なくとも30%が再生可能起源の炭素である、組成物。
【請求項2】
再生可能起源の可塑剤の石油起源の可塑剤に対する重量比が1.5以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物の可塑剤すべてが再生可能起源であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
再生可能起源の炭素を最大80%、好ましくは最大90%、非常に好ましくは最大98%ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
トリメリット酸トリオクチルを可塑剤として含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
完全水素化ヒマシ油の完全アセチル化モノグリセリドを可塑剤として含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
添加剤が、有機カルボン酸金属塩類、有機リン酸類、ゼオライト類、ハイドロタルサイト類、エポキシド化合物類、β−ジケトン類、多価アルコール類、リン含有、硫黄含有、またはフェノール系の酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、過塩素酸塩類、金属系無機化合物、潤滑剤、フィラー、発泡剤、顔料、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
自動車の乗員室の部品用、特にエアバッグが取り付けられたダッシュボード用の複合スキンまたは複合構造の層を得るための請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記層の外面が、好ましくはエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、PVC、またはアクリル樹脂を主成分とする組成物から選択される被覆で覆われている、使用。
【請求項9】
自動車の乗員室の部品用、特にエアバッグが取り付けられたダッシュボード用の複合スキンまたは複合構造の層を得る方法であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を金型中に堆積するステップと、続いて、複合スキンまたは複合構造の層を得るために、前記組成物を加熱する第2のステップとを含む、方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を含む、複合スキンまたは複合構造の層。

【公表番号】特表2011−522082(P2011−522082A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511066(P2011−511066)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050986
【国際公開番号】WO2009/156642
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】