説明

自動車外装メタリック塗料用金属顔料

【課題】本発明の目的は、自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができる自動車外装メタリック塗料用金属顔料を提供することにある。
【解決手段】本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、金属粒子と、その表面に吸着したカップリング剤とを含み、該カップリング剤は、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のボディや外装部品などの自動車外装の塗装に用いられる高級メタリック塗料、自動車外装補修用メタリック塗料、等の高級メタリック塗料に使用される金属顔料、すなわち自動車外装メタリック塗料用金属顔料およびその製造方法ならびに該金属顔料を含んだ自動車外装メタリック塗料およびその塗料が塗布された自動車ボディまたは自動車外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム顔料に代表される金属顔料を配合した塗料を用いてメタリック感を有する意匠を提供するには、金属顔料の選定が重要であり、これは金属顔料の粒度や物理的な形状の違い、または金属顔料の有する固有の光沢などによって色調が左右されるためである。しかしながら、同一の金属顔料を配合した塗料であっても、その金属顔料の塗料中での分散状態や、金属顔料がフレーク状である場合にはその配向性の状態等によって最終的なメタリック塗膜の仕上がり外観が影響されることはよく知られている。
【0003】
メタリック塗料を用いた塗膜の外観は、金属感のある独特な仕上がり状態によるものであるが、一般的には金属光沢のより優れた外観が意匠的に好まれる。この強い金属光沢の発現のためには、金属顔料は塗料中での分散状態に偏りがなく、またフレーク状の金属顔料においては塗膜内での層状の平行配列が重要である。これらの状態が悪い場合、すなわち、たとえば金属顔料の分散状態に偏りがある場合は、塗膜を巨視的に観察すると、メタリックムラが視認されたり、所定の金属光沢感が得られないなどの問題が生じる。
【0004】
特に、自動車の外装用に用いられるメタリック塗料(自動車外装メタリック塗料)においては、高級な意匠性が求められ、大きな視野で外観を視認すること、言い換えると非常に広範な面積を観察することから、その塗装仕上がりの均一性に欠けたメタリックムラが生じると意匠価値が損なわれる。
【0005】
このメタリックムラの問題を改善する方法として、特開2003−147270号公報(特許文献1)には、自動車ボディや部品、家電用、工業用高級メタリック塗料分野において反射ムラを抑制するアルミニウム顔料が提案されている。また、特開2005−240013号公報(特許文献2)には、フレーク状アルミニウム粉の表面に制御された特定量の樹脂を形成したアルミニウム顔料を含有する塗料組成物により自動車のボディ用やバンパー用さらには部品用、補修用の自動車ベースコート用に使用されるメタリック塗料組成物が提案され、当該アルミニウム顔料が極めて優れた配向性を示し、高い光輝性と粒子感の小さい塗膜を与えることが開示されている。
【0006】
また、特開2003−301132号公報(特許文献3)は、特定のカップリング剤で撥水処理された光輝性顔料を含有する光輝性水性色材組成物、特にそのような組成物として筆記具用水性インキ組成物を提案している。さらに、特開2006−328278号公報(特許文献4)は、特定のカップリング剤で鱗片状ガラスの表面を処理した光輝性顔料を含有した油性インキ組成物、特にグラビアインキ、フレキソインキ等の印刷用インキを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−147270号公報
【特許文献2】特開2005−240013号公報
【特許文献3】特開2003−301132号公報
【特許文献4】特開2006−328278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メタリックムラの問題を改善する方法として、特許文献1の提案では、特に高い光輝感を有する塗膜のメタリックムラについては必ずしもそれを有効に抑制することができない。また、特許文献2の提案では、アルミニウム粉末表面に樹脂を形成する方法であるため本来のアルミニウム粉末の反射率を反映する塗膜を得ることはできない。
【0009】
さらに、特許文献3は、筆記具用インキに関するものであり、筆跡という自動車ボディと比較すれば非常に狭い範囲の面積についての着色剤による発色性と光輝性顔料による光輝性との両立を課題としており、自動車ボディのような非常に広範な面積のメタリックムラの防止を課題とするものではなく、またその解決手段を何等示唆するものでもない。また、特許文献4は、印刷用インキに関するものであり、インキ中に光輝性顔料が沈降した場合でも溶剤中に容易に再分散させることができる印刷用インキの開発を課題としており、上記特許文献3と同様に、自動車ボディのような非常に広範な面積のメタリックムラの防止を課題とするものではなく、またその解決手段を何等示唆するものでもない。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができる自動車外装メタリック塗料用金属顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、金属粒子の表面を処理することが有効であるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより金属粒子の表面を処理する各種薬剤の中でも特定のカップリング剤を使用することが最も有効であるとの知見が得られた。本発明は、この知見に基づき、完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、金属粒子と、その表面に吸着したカップリング剤とを含み、該カップリング剤は、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤であることを特徴とする。
【0013】
ここで、上記金属粒子と上記カップリング剤との構成比は、上記金属粒子100質量部に対して上記カップリング剤が0.01〜10質量部であることが好ましい。また、上記金属粒子は、その表面に脂肪族アミンが吸着していることが好ましく、アルミニウム粒子であることが好ましい。
【0014】
また、上記チタネート系カップリング剤は、炭素数8以上の炭化水素基を含むことが好ましく、上記アルミネート系カップリング剤は、下記式で表わされる化合物(ただし式中Rは炭素数8以上の炭化水素基を示す)であることが好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
さらに、上記チタネート系カップリング剤は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートであることが好ましく、上記アルミネート系カップリング剤は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
【0017】
【化2】

【0018】
また、本発明は、上記の自動車外装メタリック塗料用金属顔料の製造方法であって、上記金属粒子と上記カップリング剤とを混合状態で混練りする工程、または上記金属粒子を有機溶媒中に分散させた分散液に上記カップリング剤を添加しながら攪拌する工程を含む、製造方法に関する。
【0019】
また、本発明は、上記の自動車外装メタリック塗料用金属顔料を含んでなる自動車外装メタリック塗料に関し、その自動車外装メタリック塗料が塗布された自動車ボディまたは自動車外装部品にも関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、上記のような構成を有することにより、自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料について、さらに詳細に説明する。
【0022】
<自動車外装メタリック塗料用金属顔料>
本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、金属粒子と、その表面に吸着したカップリング剤とを含み、該カップリング剤は、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤であることを特徴とする。
【0023】
ここで、本発明でいう自動車とは、乗用車、ワゴン、トラック、バス等をはじめ、バイク、鉄道車両、航空機等、広範囲のものを含む概念である。
【0024】
<金属粒子>
本発明で用いられる金属粒子としては、従来公知の金属粒子をいずれも用いることができ、特に限定されるものではない。たとえば、金属粒子を構成する金属種としては、アルミニウム、亜鉛、銅、ブロンズ、ニッケル、チタン、ステンレスなど、およびそれらの金属の合金が挙げられる。これらの金属粒子の中でも、アルミニウム粒子は金属光沢に優れ、安価な上に比重が小さいため扱いやすく、特に好適である。以下、金属粒子としてアルミニウム粒子を用いる場合について詳細に述べる。
【0025】
まず、このようなアルミニウム粒子の形状は、特に限定されず、たとえば、粒状、板状、塊状、フレーク状(鱗片状)、などの種々の形状を採用し得るが、塗膜に優れた金属光沢感を与えるためには、フレーク状であることが好ましい。また、アルミニウム粒子の平均粒径は、通常1〜100μm程度が好ましく、より好ましくは3〜60μmである。アルミニウム粒子の平均粒径が1μm未満の場合には、製造工程での取り扱いが難しく、しかも凝集しやすくなる傾向があり、また該平均粒径が100μmを超えると、塗料として使用したときに塗膜表面が荒れて、好ましい意匠を実現できない場合がある。
【0026】
また、このようなアルミニウム粒子の形状がフレーク状である場合、その平均厚みは、特に限定されるものではないが、0.005μm以上であることが好ましく、特に0.02μm以上であることがより好ましい。また、該平均厚みは、5μm以下であることが好ましく、特に3μm以下であることがより好ましい。該平均厚みが0.005μm未満の場合には、製造工程での取り扱いが難しく、しかも凝集しやすくなる傾向があり、また該平均厚みが5μmを超えると、塗膜の粒子感(凹凸)が目立ったり、隠蔽力が不足して、好ましい意匠を実現できない場合がある。
【0027】
上記のようなアルミニウム粒子の平均粒径は、レーザー回折法などの公知の粒度分布測定法により測定された粒度分布より体積平均を算出して求めることができる。また、平均厚みについては、アルミニウム粒子の隠蔽力と密度とにより算出することができる。
【0028】
また、本発明においては、アルミニウム粒子として上記のようにその形状がフレーク状のものを用いることができるが、このようなフレーク状のアルミニウム粒子は、たとえば、原料となるアルミニウム粉末をボールミル等により磨砕することにより得ることができる。
【0029】
このようにして得られたアルミニウム粒子の表面には、磨砕時に添加する磨砕助剤が吸着していてもよい。磨砕助剤としては、たとえばオレイン酸やステアリン酸などの脂肪酸の他、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコール、エステル化合物などが挙げられる。これらはアルミニウム粒子表面の不必要な酸化を抑制し、光沢を改善する効果を有する。磨砕助剤の吸着量は、アルミニウム粒子100質量部に対し0.001〜2質量部であることが好ましい。2質量部以下である場合、表面光沢の低下が少ない上、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤による被覆が付着しやすい点で有利である。一方、0.001質量部未満では、上記のような効果を期待できなくなる。
【0030】
なお、磨砕助剤として脂肪族アミンを用いる場合、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤がアルミニウム粒子表面に吸着しやすいという好適な効果が示される。この場合、脂肪族アミンは、アルミニウム粒子の表面に吸着した状態で存在するが、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤はこの脂肪族アミン上に吸着していてもよいし、脂肪族アミンと置換してアルミニウム粒子の表面に直接吸着していてもよい。なお、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤が脂肪族アミン上に吸着する場合であっても、本発明においてはこれらのカップリング剤が金属粒子の表面に吸着するという表現を採用するものとする。また、上記ではアルミニウム粒子を例示しているが、アルミニウム粒子以外の金属粒子においても、脂肪族アミンは同様の優れた効果を示す。したがって、本発明の金属顔料の好適な態様として、金属粒子の表面に脂肪族アミンが吸着している態様を挙げることができる。
【0031】
このような脂肪族アミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよく、1種または2種以上を用いることができる。脂肪族アミンの具体例としては、たとえばオクチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、N−メチルジオクチルアミン、N−メチルジラウリルアミン、N−メチルジトリデシルアミン、N−メチルジステアリルアミン、N−メチルジオレイルアミン、N,N−ジメチルラウリルアミン、N,N−ジメチルミリスチルアミン、N,N−ジメチルパルミチルアミン、N,N−ジメチルベヘニルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルオレイルアミンなどを例示できる。
【0032】
<カップリング剤>
本発明のカップリング剤は、金属粒子の表面(または脂肪族アミン上)に吸着しており、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤であることを特徴とする。ここで、チタネート系カップリング剤とは、一般に有機系材料と無機系材料とを化学的に結び付ける作用を有するものとして知られるようなカップリング剤であって、構成元素としてチタンを含むものであり、アルミネート系カップリング剤とは、同様のカップリング剤であって、構成元素としてアルミニウムを含むものをいう。
【0033】
このように本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、金属粒子の表面に特定のカップリング剤が吸着していることを特徴としており、これにより自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができるという優れた効果が示される。このようなカップリング剤は、上記で述べた従来技術のように筆記具用インキや印刷インキにおいて金属粒子の表面に適用して用いることは知られていたが、自動車ボディのような非常に広範な面積のメタリックムラを防止するという作用を奏することは、本発明者の研究によりはじめて明らかにされたものであり、従来において全く知られていなかった効果である。このようなカップリング剤が、なぜこのような優れた効果を示すのかその詳細なメカニズムは解明されていないものの、恐らく、該カップリング剤が金属粒子の表面に吸着することにより、金属粒子は塗料中で極めて均一に分散することができるため、塗膜中においても金属粒子の配列性が向上し、以って自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができるものと考えられる。
【0034】
なお、金属粒子表面には、たとえば上記のような磨砕工程で用いられる磨砕助剤の酸化物等の変質物が存在し、この変質物が金属粒子の塗料中における均一な分散を阻害する作用を奏すると考えられる。本発明のカップリング剤には、このような変質物を置換して金属粒子表面に吸着する作用や、このような変質物を被覆して金属粒子上に存在し得る作用が存するものと考えられ、これにより上記のような優れた効果が示されるものと考えられる。
【0035】
ここで、本発明において、カップリング剤が金属粒子の表面に吸着するとは、金属粒子の表面と接するようにして吸着する場合を含むとともに、金属粒子表面に存在する脂肪族アミンや上記変質物等の他の物質上に吸着する(または他の物質を被覆して存在する)場合をも含むものとする。なお、本発明において、カップリング剤が金属粒子の表面等に吸着していることは、たとえばカップリング剤を金属粒子に吸着させた前後の金属粒子をそれぞれ粉体化し、その粉体化した金属粒子を円筒型錠剤成型器を用いて高圧で圧縮することにより表面が平滑な円盤型錠剤試料を作り、その試料表面における水との接触角を測定することにより確認することができる。すなわち、カップリング剤を吸着した金属粒子の試料表面における水との接触角が、カップリング剤が吸着していない金属粒子の試料表面の該接触角より増大することにより、カップリング剤が吸着していることを推測することができる。なお、このような試料の作製は特に限定されることはないが、たとえば円筒型錠剤成型器として島津ジーエルシー社製の「ハンドプレスSSP−10A」(商品名)を用い、それに粉体化した金属粒子を0.3g充填し、600N/cm2の圧力でプレスすることにより、直径13mmで厚み1mmのコイン状の試料を作製することができる。そして、このコイン状の試料を用いて、接触角計(商品名:「固液界面解析装置DM−300」、協和界面科学社製)により、水との接触角を求めることができる。
【0036】
本発明で用いられるカップリング剤の具体例を示すと、まずチタネート系カップリング剤としては従来公知のものを広く使用でき、アルキルチタネートのような炭化水素基を有するものが例示できる。より具体的には、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等を例示できる。
【0037】
特に、チタネート系カップリング剤の疎水基として含まれる炭化水素基が炭素数(C)8以上のものであることが好ましく、さらに炭素数(C)18以上のものであることがより好ましい。
【0038】
市販されている商品では、上記炭化水素基が炭素数(C)8である味の素ファインテクノ(株)製の「プレンアクトKR 41B」(商品名)および上記炭化水素基が炭素数(C)18である味の素ファインテクノ(株)製の「プレンアクトKR TTS」(商品名)が例示される。
【0039】
また、チタネート系カップリング剤としてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを使用すると、メタリックムラを抑制する効果が特に高く、好適な例として挙げることができる。なぜイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを使用するとメタリックムラの抑制効果が特に優れるのか、その理由は定かではないが、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートの疎水基側に含まれる直鎖状の炭化水素鎖の鎖長が長いため、該カップリング剤が吸着した金属粒子の表面の疎水性が強くなるからではないかと推察される。
【0040】
一方、アルミネート系カップリング剤としては、従来公知のものを広く使用でき特に限定されるものではないが、たとえば下記式で示すような構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0041】
【化3】

【0042】
式中、Rは、飽和または不飽和の炭化水素基を表わす。上記式で示されるようなアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを特に好適な例として挙げることができる。
【0043】
また、上記式中のRで示される炭化水素基は、炭素数(C)が8以上であることが好ましく、さらには炭素数(C)が18以上であることがより好ましい。この炭素数(C)が18以上のアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートを使用することがメタリックムラの抑制効果が特に高い点で好ましい。
【0044】
市販されている商品としては、上記Rの炭化水素基が炭素数(C)18である下記構造式を有する味の素ファインテクノ(株)製の「プレンアクトAL−M」(商品名)を例示することができる。
【0045】
【化4】

【0046】
上記Rの炭化水素基が炭素数(C)18であるアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが、なぜメタリックムラの抑制効果に特に優れるのか、その理由は定かではないが、そのアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートの疎水基側に含まれる炭化水素鎖の鎖長が長いため、該カップリング剤が吸着した金属粒子の表面の疎水性が強くなるからではないかと推察される。
【0047】
しかし、たとえば上記Rの炭化水素基が炭素数(C)2であるエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートなどの炭素数が小さいものの使用を否定するものではなく、これらも本発明の効果を奏することができる。
【0048】
本発明において、上記金属粒子と上記カップリング剤との構成比は、上記金属粒子100質量部に対して上記カップリング剤が0.01〜10質量部であることが好ましい。金属粒子の比表面積にもよるが、さらに好ましくは、上記金属粒子100質量部に対して上記カップリング剤が0.1〜5質量部である。
【0049】
該カップリング剤の構成比が0.01質量部未満であると、金属粒子の塗膜内での配列性を向上させる効果が発現しにくく、また10質量部を超えても特に効果が向上することがなく、塗膜の密着性を損なう場合がある。
【0050】
なお、本発明において、「チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤」とは、これら両カップリング剤の内いずれか一方のみを使用してもよいし、両者を併用して使用してもよいことを示し、また各カップリング剤に含まれる種々のカップリング剤化合物はそれぞれ単独で用いることができるとともに2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。2種以上のカップリング剤化合物を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲内に含まれることが好ましい。
【0051】
<自動車外装メタリック塗料用金属顔料の製造方法>
本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、上記のチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を金属粒子の表面に吸着させることにより製造される。具体的な方法としては、特に限定はされないが、たとえば、金属粒子としてアルミニウム粒子を用いる場合は、原料アルミニウム粉末をボールミルなどを用いてフレーク状アルミニウム粒子に磨砕する過程において、磨砕助剤として上記カップリング剤を用いることにより、アルミニウム粒子とカップリング剤とを混合状態で混練りすることによって、アルミニウム粒子表面にチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を吸着させることができる。
【0052】
またあるいは、原料アルミニウム粉末をフレーク状アルミニウム粒子に加工した後に、アルミニウム粒子と有機溶剤とを配合してペーストとし、そのペースト中にチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を加えて、アルミニウム粒子とカップリング剤とを混合状態で混練りすることにより、アルミニウム粒子表面にチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を吸着させることができる。
【0053】
さらに、アルミニウム粒子を有機溶媒中に分散させた分散液にチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を添加しながら攪拌することにより、アルミニウム粒子表面にチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤を吸着させることもできる。
【0054】
チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤をアルミニウム粒子表面に吸着させる温度範囲は特に限定されないが、10℃〜150℃の範囲で行なうことが好ましく、さらに好ましくは40℃〜100℃である。この温度が10℃未満の場合、アルミニウム粒子表面にカップリング剤が吸着する速度が遅くなる場合がある。一方、この温度が150℃を超えても特に効果は向上しないことから、良好な工程管理を行なうことができる150℃以下の温度で実施することが好ましい。
【0055】
また、アルミニウム粒子表面にカップリング剤を吸着させる処理工程の時間は特に限定されず、吸着させる際の温度条件によりもよるが、30分〜8時間の範囲で行なうことが好ましく、より好ましくは1時間〜5時間である。その時間が8時間を超えても吸着量にはあまり差がなく、8時間以内で行なうのが生産性の点で有利である。一方、その時間が30分未満であると、カップリング剤を十分に吸着させることができない場合がある。なお、吸着を安定化させるために、カップリング剤を吸着させる工程後に一定の温度(たとえば50℃)で長時間(たとえば1週間程度)エージングを行なってもよい。
【0056】
また、上記において用いるアルミニウム粒子は、それ自体が水性塗料用に用いることができるように水との反応による水素ガスの発生を抑止する処理を施してあってもよい。このような水素ガスの発生を抑止する方法は、特に限定されず従来公知の方法を採用することができ、たとえばアルミニウム粒子の表面を有機リン酸による被膜や、モリブデン酸被膜などで被覆する方法を採用することができる。
【0057】
また、本発明の効果を妨げない範囲であれば、アルミニウム粒子表面に耐薬品性を付与するために重合反応により形成された樹脂被膜を有することもできる。この場合は、樹脂被膜上にカップリング剤が吸着するものと考えられるが、このような場合であっても、該カップリング剤は金属粒子の表面に吸着するという表現に含まれるものとする。
【0058】
なお、一般的に上記のボールミルを用いて磨砕することによって得られるアルミニウム粒子の表面には、その磨砕工程に由来する変質物(たとえば磨砕助剤が酸化された化合物)が存在するが、特に極性基を有する変質物はアルミニウム粒子の分散安定性に不利に影響することがある。しかし、本発明によるチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤は、このような変質物と置換してアルミニウム粒子表面に吸着するか、またはアルミニウム粒子表面に存在する変質物上に吸着したりまたはその変質物を被覆するため、アルミニウム粒子の分散安定性を向上させる。このようにして、アルミニウム粒子は塗料中で極めて均一に分散したものとなるため、塗膜中においてもその配列性が向上し、以って自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができるという優れた効果が示されるものと考えられる。
【0059】
なお、上記においては、金属粒子としてアルミニウム粒子を用いる場合を例示したが、上記の製造方法は、アルミニウム粒子以外の金属粒子に対しても広く適用できるものである。すなわち、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料の製造方法は、金属粒子表面にカップリング剤を吸着させる工程として、金属粒子とカップリング剤とを混合状態で混練りする工程、または金属粒子を有機溶媒中に分散させた分散液にカップリング剤を添加しながら攪拌する工程を含むことを特徴とするものである。
【0060】
<自動車外装メタリック塗料>
本発明は、上記の自動車外装メタリック塗料用金属顔料を含んでなる自動車外装メタリック塗料にも関する。このような自動車外装メタリック塗料は、自動車の外装用に用いられるメタリック塗料であり、補修用塗料も含まれる。
【0061】
本発明の自動車外装メタリック塗料において、配合される金属顔料の量は樹脂成分(固形分)100質量部あたり0.1〜50質量部、より好ましくは1〜30質量部とすることが好適である。金属顔料の量が0.1質量部未満では目的とする意匠性が得られず、50質量部を超えると塗膜の鮮映性が低下する場合がある。なお、上記の範囲内であれば、本発明の金属顔料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0062】
本発明の自動車外装メタリック塗料に配合される樹脂成分は、従来公知のものが使用でき、特に限定されないが、たとえば熱硬化型アクリル樹脂/メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂/CAB(Cellulose Acetate Butyrate)/メラミン樹脂、熱硬化型ポリエステル(アルキド)樹脂/メラミン樹脂、熱硬化型ポリエステル(アルキド)/CAB/メラミン樹脂、イソシアネート硬化型ウレタン樹脂/常温硬化型アクリル樹脂、水希釈型アクリルエマルジョン/メラミン樹脂等を例示することができ、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、顔料分散剤、消泡剤、沈降防止剤、硬化触媒等の添加剤や、他の着色顔料、マイカ、着色マイカ、異種の着色アルミニウム顔料等を本発明の効果を妨げない範囲内、たとえば0.1〜5質量%程度の量で配合することができる。
【0063】
<自動車ボディ/自動車外装部品>
本発明は、上記自動車外装メタリック塗料が塗布(塗装)された自動車ボディまたは自動車外装部品にも関する。ここで、自動車外装部品としては、たとえばバンパー、各種スポイラー、アンテナ等を挙げることができる。
【0064】
本発明の自動車ボディおよび自動車外装部品は、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料を含んだ自動車外装メタリック塗料が塗布されたことにより、メタリックムラが防止されたものである。
【0065】
なお、自動車外装メタリック塗料を用いて自動車ボディまたは自動車外装部品を塗布または塗装する方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。そのような塗装方法としては、たとえば、エアスプレー塗装、静電エアスプレー塗装、ベル型静電スプレー塗装等を挙げることができる。
【0066】
このように、本発明は、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料を含んだ自動車外装メタリック塗料を自動車ボディまたは自動車外装部品に塗布または塗装することにより、自動車ボディまたは自動車外装部品にメタリックムラが発生することを防止する方法を提供するものである。換言すれば、金属粒子をチタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤で処理することにより金属顔料を製造する工程、該金属顔料を用いてメタリック塗料を調製する工程、該メタリック塗料を自動車ボディまたは自動車外装部品に塗布または塗装する工程、を含むメタリックムラ防止方法を提供するものである。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の実施例および比較例においては、金属粒子としてアルミニウム粒子を用いているが、アルミニウム粒子以外の金属粒子を用いた場合であっても、同様の結果を得ることができる。なお、以下において「%」の表記は、特に断りのない限り質量%を示す。
【0068】
<水性塗料の調製>
<レオロジーコントロール剤(組成物1)の調製>
15.0質量部のポリアマイド系レオロジーコントロール剤(楠本化成(株)製、商品名「ディスパロンAQ600」)、5.0質量部のブチルセロソルブ、および80.0質量部のイオン交換水を1時間攪拌混合してレオロジーコントロール剤(組成物1)を調製した。
【0069】
<樹脂溶液(組成物2)の調製>
40.6質量部のアクリルコポリマー(Neuplex社製、商品名「Setaqua 6802」)、24.5質量部のポリウレタンディスパージョンA(Bayer Material Science製、商品名「Bayhydrol XP2621」)、6.0質量部のポリウレタンディスパージョンB(Bayer Material Science製、商品名「Bayhydrol PT241」)、2.8質量部のメラミン樹脂溶液(三井サイテック社製、商品名「Cymel327」)、7.7質量部のブチルセロソルブ、0.4質量部の消泡レベリング剤(楠本化成(株)製、商品名「AQ7120」)、および18.0質量部のイオン交換水を混合し、30分間攪拌することにより樹脂溶液(組成物2)を調製した。
【0070】
<メタリックベース(組成物3)の調製>
不揮発分が10質量部となる、後述の実施例または比較例で各作製した金属顔料(アルミニウム顔料)を含むアルミニウムペーストに、分散剤(楠本化成(株)製、商品名「AQ320」)1.0質量部とブチルセロソルブを加えて30.00質量部とし10分間攪拌混合することによりメタリックベース(組成物3)を調製した。
【0071】
<自動車外装メタリック塗料の調製>
上記樹脂溶液(組成物2)200.0質量部に上記メタリックベース(組成物3)25.6質量部を加えて10分間攪拌混合する。次に、レオロジーコントロール剤(組成物1)25.0質量部を徐々に加えた後、さらに10分間攪拌混合する。その後、該混合物のpHが8.3±0.1となるように10%ジメチルエタノールアミン水溶液を加え、さらに10分間攪拌混合する。最後に、粘度が基準値(ブルックフィールド型粘度計(東機産業(株)、商品名「TV−10M」)によりM3スピンドルを使用して60rpmでの計測値が500〜600mPa・sec)になるように適量のイオン交換水を加え、10分間以上攪拌混合することにより、自動車外装メタリック塗料を調製した。
【0072】
<クリアーコート用塗料の調製>
51.2質量部のポリアクリレート(Bayer Material Science製、商品名「Desmophen A870BA」)、0.5質量部の添加剤A(Borchers社製、商品名「Baysilone Paint Additive OL17」の10%キシレン溶液)、0.5質量部の添加剤B(Monsanto社製、「Modaflow」の1%キシレン溶液)、5.3質量部の添加剤C(Ciba Spezialitatenchemie Lampertheim社製、商品名「Tinuvin292」の10%キシレン溶液)、10.7質量部の添加剤D(Ciba Spezialitatenchemie Lampertheim社製、商品名「Tinuvin1130」の10%キシレン溶液)、10.0質量部の希釈溶剤A(1−メトキシプロピルアセテート:ソルベントナフサ=1:1)、および2.2質量部の希釈溶剤B(ブチルグリコールアセテート)を30分間攪拌混合する。その後、該混合物に、イソシアヌレート(住化バイエルウレタン社製、商品名「スミジュールN3300」)と混合溶剤(ブチルアセテート:ソルベントナフサ=1:1)とを、9:1で希釈したもの19.5質量部を加え、30分間混合攪拌を行なうことにより、クリアーコート用塗料を調製した。
【0073】
<塗装条件>
中塗り塗装を施した0.3×200×300mmブリキ板(日本ルートサービス(株)製、商品名「P−32板」)に対して、エアースプレーガン ワイダーW−101(アネスト岩田(株))を備えたテストパネル用自動塗装装置レシコーター(関西ペイント(株))にて、上記の各塗料を塗装した。
【0074】
塗装条件は、室内温度22±1℃、室内相対湿度50±5%RHの塗装室内において、
レシプロケーター速度:19m/分
コンベア移動速度:0.9m/分
吹き付け距離:18cm
霧化圧力:0.4MPa
という条件下、自動車外装メタリック塗料により乾燥膜厚が19±1μmとなるように塗装した後、80℃で5分間フラッシュオフを行ない、その後さらにクリアーコート用塗料を乾燥膜厚が30±3μmとなるように塗装を行なった。焼付け条件は、130℃で30分間行なった。
【0075】
<色調およびメタリックムラの測定>
上記の塗装条件で塗装された塗装板を特開2009−069138号公報に示される方法にて測定できるメタリックムラ測定装置(東洋アルミニウム(株)製)にて、ハイライト明度L値とメタリックムラVA値の計測を実施した。計測は、塗装板の中央部領域を対象とし、以下の条件で実施した。
【0076】
計測条件:
(光学幾何条件と測定値)
塗装板の法線を0度とし、入射角−45度、受光角40度で、L*(CIELAB1976明度)を測定した。
【0077】
(測定間隔および測色)
縦×横=200mm×300mmである塗装板の座標上で、縦軸方向に35mm間隔で4行、および横軸方向に35mm間隔で7列の測定箇所(縦軸と横軸が交差する点)を選定した。そして、各測定箇所において、入射光軸と法線と受光光軸とを含む平面を測定面として6方位設定することにより測色を実施した。なお、6方位の測定面は各測定箇所において法線を共通とし、互いに60°を有して交差するように設定した。
【0078】
(L値)
縦4行×横7列×6方向=168個の上記L*を平均し、その平均値で塗膜の光輝感を示した。平均値が高いものほど、光輝感に優れていることを示す。
【0079】
(VA値)
縦4行×横7列×6方向の計測で得たメタリックムラの大きさを示し、その数値が大きいほどムラが大きいことを示す。
【0080】
(SN比)
上記L値をこのVA値の平方根で除したSN比をアルミニウム顔料の配向特性品質として算出した。このSN比は塗膜の光輝感を示すL値をメタリックムラの指標で除することによってL値の価値を判断したものである。分母であるメタリックムラの要素は小さければ小さい程、即ちメタリックムラが小さい程、そして分子のL値が高ければ高い程、メタリックムラに比して塗膜の光輝感がより優れることになる。すなわち、SN比が大きいほど、アルミニウム顔料の配向特性品質がよく、メタリック塗膜の光輝感が優れていることを示す。
【0081】
<実施例1〜6と比較例1〜2>
<実施例1>
直径500mm、長さ180mmの円筒状ボールミルの中に、磨砕メディアとして直径が1.2mmの鋼球を40kg、平均粒子径が7.3μmの原料アルミニウム粉末を1000g、有機溶媒としてミネラルスピリットを5リットル、磨砕助剤としてラウリルアミンを80g、それぞれ投入し、回転数40rpm(臨界回転数の2/3)で8時間磨砕することにより、表面に脂肪族アミンであるラウリルアミンが吸着した金属粒子(アルミニウム粒子)を得た。
【0082】
磨砕工程終了後、ボールミル内のアルミニウム粒子を含むスラリーをミネラルスピリットで洗い出し、150メッシュ、350メッシュ、400メッシュの振動スクリーンに順次かけ、通過したスラリーをパンフィルターで固液分離した。その後得られたアルミニウム粒子を含むフィルターケーキから1000g(不揮発分、すなわちアルミニウム分が85%)をニーダーミキサー内に移し、アルミネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ(株)製、商品名「プレンアクトAL−M」、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、有効成分99%以上)17.00gをミネラルスピリット30gに溶解して加え、温度調整ジャケット付きミキサーで10℃〜20℃においてアルミニウム粒子とカップリング剤とを混合状態で10分間混練りした。これにより、アルミニウム粒子100質量部に対し、該カップリング剤2.0質量部が加えられたことになる。
【0083】
その後、温度調整ジャケットに温水を通して30分間かけてミキサーを加温し、内容物の実態温度を80〜85℃の範囲に調整した。その後、混練を1時間30分間継続した。次に、温度調整ジャケットに冷却水を通して混練物が20℃以下になるまで30分間かけて冷却し、加熱によって揮発した配合溶剤量を補うためにミネラルスピリットを加えて、不揮発分が75%となるように調整した。その後、内容物をミキサーから取り出して保管用金属容器に充填した。さらにこれを50℃に予め調整した恒温室で150時間加温することにより、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料である、アルミネート系カップリング剤がアルミニウム粒子表面に吸着したアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。
【0084】
なお、得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。この平均粒径は、粒度分布計(装置名:マイクロトラック粒度分布計HRA、型番:9320−X100、会社名:日機装(株))により測定した。以下、実施例2〜6および比較例1〜2においても同様である。
【0085】
<実施例2>
実施例1で用いたアルミネート系カップリング剤の量を8.50gとする以外は、全て実施例1と同様にして本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料であるアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。
【0086】
<実施例3>
実施例1で用いたアルミネート系カップリング剤の量を0.85gとする以外は、全て実施例1と同様にして本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料であるアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。
【0087】
<実施例4>
実施例1で用いたアルミネート系カップリング剤に代えてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ(株)製、商品名「プレンアクトKR TTS」、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、有効成分80%以上)を17.00g用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料であるアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。
【0088】
<実施例5>
実施例1で用いたアルミネート系カップリング剤に代えてチタネート系カップリング剤(味の素ファインテクノ(株)製、商品名「プレンアクトKR 41B」、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、有効成分80%以上)を17.00g用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料であるアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。
【0089】
<実施例6>
磨砕助剤として実施例1で用いたラウリルアミンに代えてオレイン酸を80g用い、かつ粉砕時間を10時間とする以外は、全て実施例1と同様にして本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料であるアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.7μmであった。
【0090】
<比較例1>
実施例1において、アルミネート系カップリング剤を添加しないことを除き、他は全て実施例1と同様にして、カップリング剤がアルミニウム粒子の表面に吸着していないアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.5μmであった。
【0091】
<比較例2>
実施例6において、アルミネート系カップリング剤を添加しないことを除き、他は全て実施例6と同様にして、カップリング剤がアルミニウム粒子の表面に吸着していないアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを得た。得られたアルミニウム顔料の平均粒径(D50)は22.7μmであった。
【0092】
<評価>
各実施例と各比較例のアルミニウム顔料を含むアルミニウムペーストを用いて、上記の通りの条件で自動車外装メタリック塗料を作製し、同じく上記の通りの塗装条件にて自動車外装メタリック塗料およびクリアーコート用塗料を塗装することにより、塗装板を作製した。
【0093】
そして、各塗装板について、上記の方法によりL値、VA値、SN比を求め、評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1より明らかなように、実施例1〜6の各VA値は全て2.0未満であり、比較例1〜2の各VA値よりも小さく、メタリックムラが防止されていることが確認できた。また、SN比においても、実施例1〜6は、全て比較例1〜2よりも大きな値を示し、アルミニウム顔料の配向特性品質が良好であり、光輝感に優れていることが確認できた。
【0096】
したがって、本発明の自動車外装メタリック塗料用金属顔料は、光輝感に優れるとともに、自動車ボディのような非常に広範な面積部分に生じるメタリックムラを防止することができるという優れた効果を有していることは明らかである。
【0097】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0098】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と、その表面に吸着したカップリング剤とを含み、
前記カップリング剤は、チタネート系カップリング剤および/またはアルミネート系カップリング剤である、自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項2】
前記金属粒子と前記カップリング剤との構成比は、前記金属粒子100質量部に対して前記カップリング剤が0.01〜10質量部である、請求項1に記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項3】
前記金属粒子は、その表面に脂肪族アミンが吸着している、請求項1または2に記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項4】
前記金属粒子は、アルミニウム粒子である、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項5】
前記チタネート系カップリング剤は、炭素数8以上の炭化水素基を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項6】
前記アルミネート系カップリング剤は、下記式で表わされる(ただし式中Rは炭素数8以上の炭化水素基を示す)、請求項1〜5のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【化1】

【請求項7】
前記チタネート系カップリング剤は、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートである、請求項1〜6のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【請求項8】
前記アルミネート系カップリング剤は、下記式で表わされる、請求項1〜7のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料。
【化2】

【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料の製造方法であって、
前記金属粒子と前記カップリング剤とを混合状態で混練りする工程、または
前記金属粒子を有機溶媒中に分散させた分散液に前記カップリング剤を添加しながら攪拌する工程を含む、自動車外装メタリック塗料用金属顔料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の自動車外装メタリック塗料用金属顔料を含んでなる自動車外装メタリック塗料。
【請求項11】
請求項10記載の自動車外装メタリック塗料が塗布された自動車ボディまたは自動車外装部品。

【公開番号】特開2012−1598(P2012−1598A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136202(P2010−136202)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】