説明

自動車座席用の背もたれ

【課題】 自動車座席用の背もたれを提供する。
【解決手段】 自動車座席用の背もたれであって、案内機構によって高さ調節可能なヘッドレストと、背もたれの上側領域に設けられ、背もたれに固定接続された横方向ストラットとを備え、案内機構が、横方向ストラットに固定して取り付けられた案内デバイスを備えて、案内要素を案内し、案内要素が、ヘッドレストに取り付けられて、ヘッドレストに組み込まれた背もたれが、案内機構(22)が、横方向ストラット(18)に固定された第1の係止部品(51)と、ヘッドレスト(4)に固定された第2の係止部品(52)とを備える係止ユニット(50)を割り当てられ、2つの係止部品(51、52)が、掛金と穴の原理に従って相互作用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車座席用の背もたれに関する。この背もたれは、案内機構によって高さ調節可能なヘッドレストと、背もたれの上側領域に設けられ、背もたれに固定接続された横方向ストラットとを備える。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)に、調節可能な受取部と相互作用する掛止ロッドによって手動で高さ調節可能なヘッドレストが開示されている。このために、ヘッドレストを支持する車両座席の背もたれには2つの案内ロッドが備えられている。案内ロッドの一端は、それぞれ背もたれに固定して設けられ、案内ロッドの他端は、ヨーク部品によって互いに接続されている。ここで、前記ヘッドレストが手動で高さ調節されるとき、このヘッドレストは案内ロッドに沿って摺動する。しかし、この場合、ヘッドレストの下側領域に2つの穴があり、それらの穴からヘッドレストの案内ロッドが突き出てくるという問題がある。さらに、ヘッドレストの掛止位置に応じて、様々な長さの案内ロッド区域が目に見える。したがって、見た目に申し分ない解決策とはならない。
【0003】
(特許文献2)により、さらなるヘッドレストが知られている。このヘッドレストには、追加のアームが設けられる。前記アームがそれぞれロッドを保持し、ロッドには軸受が設けられ、ヘッドレストの移動中に前記軸受がロッドに沿って摺動する。これは、構造的に複雑な解決策となる。
【0004】
さらに、当該タイプの自動車座席用の背もたれは、本出願人による先行の(特許文献3)(未公開)により既に知られている。この特許出願では、ヘッドレストの高さ調節に関して、見た目に申し分ない解決策が提案されている。しかし、この特許出願では、自動調節の可能性しか提示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ実用新案第20 2009 013 635 U1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第32 23 649 C2号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願第10 2010 060 076.8号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、ヘッドレストをさらに手動でも調節できる当該タイプの背もたれを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって実現される。それによれば、ヘッドレストの案内機構が、横方向ストラットに固定された第1の係止部品と、ヘッドレストに固定された第2の係止部品とを備える係止ユニットを割り当てられ、2つの係止部品が、掛金と穴の原理に従って相互作用する。したがって、一体化されたヘッドレストの外観により見た目の良い解決策となる当該タイプの背もたれに関して、ヘッドレストを手動で調節する手段も設けられる。前記調節手段は、構造的に単純であるにも関わらず見た目に魅力的なものである。
【0008】
背もたれの横方向ストラットに固定して取り付けられた案内機構の案内デバイスは、好ましくは軸受、特に滑り軸受として設計される。かつ/または、案内デバイスによって案内され、ヘッドレストに取り付けられた案内要素は、案内ロッドとして設計される。これは高い安定性を保証する。
【0009】
2つの案内デバイスの使用によって、ヘッドレストを特に確実に案内することができる。ヘッドレストの左側と右側の両方に案内デバイスを設けることによって、ヘッドレストのねじれをより一層防止することができる。
【0010】
既知の解決策とは異なり、当該タイプの背もたれの場合、案内デバイス、すなわち軸受は、背もたれの横方向ストラットに固定して取り付けられる。ヘッドレストが前記軸受を取り囲み、ヘッドレストの上端位置と下端位置の両方で、前記軸受がヘッドレストによって完全に覆われるようにする。この場合、ヘッドレストは、固定して取り付けられた案内要素、すなわち案内ロッドを備え、ヘッドレストが調節されるとき、これらの案内ロッドが軸受によって案内される。これにより、魅力的な視覚的外観に加え、それぞれの軸受と案内ロッドの間の距離が短いため、ヘッドレストに作用するレバーアームのサイズが小さくなることにより、ヘッドレストの安定性をより高めることも同時に可能になる。合致して相互作用する2つの特別に配置された係止部品を備える本発明による係止ユニットによって、ヘッドレストが手動の高さ調節手段を備える場合でさえ、当該タイプの背もたれの利点が保たれる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、係止ユニットを構成する2つの係止部品の一方が、掛止プレートとして設計される。そのような掛止プレートは、1つの穴、または好ましくは2つ以上の穴を有し、その係止部品と相互作用する相補的な係止部品の掛金を収容する。この場合、掛止プレートとして設計された係止部品は、好ましくは背もたれの横方向ストラットに取り付けられて、係止の安定性を高める。
【0012】
本発明の同様に好ましい実施形態では、係止ユニットを構成する2つの係止部品の一方が、くし状部として設計される。そのようなくし状部は複数の掛金を備え、したがって、ヘッドレストを簡単に調節できると同時に、前記係止部品と相互作用する相補的な係止部品と確実に係止できるようになる。
【0013】
くし状部が案内要素、すなわち案内ロッドに平行に延びている場合、ヘッドレストを手動で高さ調節する際の一連の移動が単純化される。この場合、ヘッドレストの手動調節中、くし状部は単純な方法でヘッドレストの移動方向へ移動され、相補的な係止部品によってヘッドレストの所望の最終位置に係止される。
【0014】
回転可能に取り付けられたくし状部にスライダを割り当てることによって、ヘッドレストの手動高さ調節の特に簡便な操作が可能になる。スライダが移動されることによってくし状部が回転され、その結果、係止ユニットが係止または係止解除される。
【0015】
特にヘッドレストの外側に取り付けられた押しボタンキーにより、スライダの操作が特に簡便となる。したがって、ヘッドレストの手動高さ調節の際、まず押しボタンキーが押され、それによりスライダが作動され、くし状部が回転されて最初の係止位置から外れ、その結果、係止ユニットが係止解除される。したがって、押しボタンキーが押されている限り、ヘッドレストの単純な手動高さ調節が可能である。押しボタンキーが解放されると、くし状部はその最初の係止位置に回転して戻り、したがって係止ユニットは新たな所望のヘッドレスト位置に係止される。
【0016】
くし状部に、特にばねによって、機械的なプレストレスをかけることによって、操作がさらに単純化される。これにより、くし状部を作動させるのに必要な力が減少する。
【0017】
横方向ストラットと背もたれを、特に軽金属鋳物の形態で、一部品として設計することによって、特に軽量であり、しかも経済的に製造することができる背もたれが実現される。
【0018】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、図面を参照してより詳細に述べる以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】高さ調節可能なヘッドレストを備える当該タイプの背もたれの上側区域の斜視図である。
【図2】ヘッドレストの内部にある高さ調節用の案内機構を示す図1と同様の図である。
【図3】手動で高さ調節可能なヘッドレストと、係止状態での係止デバイスとを示す、本発明による背もたれの上側区域の斜視図である。
【図4】係止状態での係止デバイスの詳細図である。
【図5】係止解除状態での係止デバイスを示す図3と同様の図である。
【図6】係止解除状態での係止デバイスの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
様々な図に、背もたれ2の上端部を含む車両座席1の一部分を示す。背もたれ2に、ヘッドレスト4が高さ調節可能に取り付けられている。好ましくは、ヘッドレスト4はさらに車両の長手方向にも調節可能である。
【0021】
背もたれ2は背もたれ支持体5を備え、背もたれ支持体5は、クッション部分8、9によって覆われている。同様に、ヘッドレスト4もクッション6によって覆われている。弓形部分12を有する支持構造10が、背もたれ支持部5から延び出ている。弓形部分12は、実質的にU字形に設計されており、支持構造10の座席背もたれ部分14の上縁部と共に間隙15を画定する。好ましくは、背もたれ支持体5および支持構造10は、特に軽金属鋳物の形態で、弓形部分12と一部片で形成される。
【0022】
背もたれ2の上端部で、弓形部分12は横方向ストラット18を備え、横方向ストラット18は、支持構造10を介して背もたれ支持体5に固定接続される。横方向ストラット18は、自動車の横方向に延在する。図1から、横方向ストラット18がヘッドレスト4の内部に延びていることが分かる。したがって、ヘッドレストのクッションは、ヘッドレストの上端と下端の間に広がる。このために、ヘッドレストの内部にスロット20が設けられている。横方向ストラット18は、横方向に、クッション部分8によって外側から覆われる。
【0023】
ヘッドレスト4の高さ調節は、2つの案内デバイス24、25を備える案内機構22によって行うことができるようになっている。2つの案内デバイス24、25は、特に滑り軸受として設計され、横方向ストラット18に固定接続され、例えば横方向ストラット18に溶接される。案内デバイス24、25内で、特に案内ロッド28、29として設計された案内要素が、高さ調節可能に案内される。案内ロッド28、29の端部は、ヘッドレストの上部40aおよび下部40bに内側で固定される。このために、前記ヘッドレストの上部40aおよび下部40bがフレーム40を形成して、ヘッドレスト4の内部に支持構造を構成する。
【0024】
ここで、ヘッドレスト4は、使用者が手動で調節することができる。この場合、使用者が望むヘッドレスト4の高さ調節位置は、係止ユニット50によって固定される。係止ユニット50は第1の係止部品51を備える。第1の係止部品51は、横方向ストラット18に固定され、掛止プレートとして設計される。掛止プレートは、縦に並んだ複数の穴または凹部(図示せず)を備える。前記穴または凹部は、くし状部として設計された第2の係止部品52の掛金を選択的に受け取るように設けられる。前記くし状部52は、ヘッドレスト4の支持構造10の下側に回転可能に固定される。くし状部は複数の掛金を備え、それらの掛金は図4および図6で最も良く見ることができる。くし状部52の掛金はすべて互いに等間隔であり、前記間隔は、掛止プレート51の凹部または穴の間隔に正確に対応している。これらの掛金によって複数の位置が画定され、そこでくし状部52が掛止プレート51に係止される。
【0025】
ここで、くし状部52には、ばね(図示せず)によって機械的なプレストレスがかけられている。さらに、スライダ53が設けられており、スライダ53の一端がくし状部52の脚部に作用する。スライダ53の他端は、ヘッドレスト4のフレーム40の側部領域に向けられている。前記端部は、フレーム40の側部領域で、機械的な押しボタンキー54まで延びている。図3および図4は、係止ユニット50を係止状態で示す。
【0026】
この状態から使用者が上記の押しボタンキー54を押すと、スライダ53がくし状部52に向けて移動される。スライダ53は、回転可能なくし状部52の底部に関節式に接続されているので、前記作動時にくし状部52が枢動されて、掛止プレート51との係止位置から外れる。したがって、スライダ53がくし状部52の底部を回転させることによって、くし状部52の掛金が枢動して、掛止プレート51の穴または凹部(図示せず)から外れる。したがって、ヘッドレスト4は係止されていない状態となり、このとき、使用者が望む位置に移動させることができる。図5および図6は、係止ユニット50を係止解除状態で示す。
【0027】
使用者が望む位置にヘッドレスト4が達した後、使用者は押しボタンキー54を解放する。その結果、ばねによるプレストレスにより、くし状部52は再び係止位置に枢動して戻る。使用者が選択した位置が係止位置に正確には対応していない場合、すなわちくし状部52の掛金が掛止プレート51の2つの凹部または穴の間にちょうど位置する場合には、使用者がヘッドレスト4を上方向または下方向にわずかに移動させるだけで、くし状部52の機械的なプレストレスによって係止ユニット50の一番近い係止位置に達する。
【0028】
ヘッドレスト4が背もたれ2の固定支持構造10に直接支持されていることで、案内要素28、29に対する負荷が軽減される。したがって、従来のヘッドレストの場合よりも薄く、高い費用対効果で、かつ軽量に案内要素28、29を設計することができる。
【0029】
ヘッドレスト4に作用する力は、案内要素28、29によって、案内デバイス24、25および横方向ストラット18を介して、背もたれの支持構造10に加えられる。案内デバイス24、25によって行われる案内によって、ヘッドレスト4に負荷を加えるときに案内要素28、29によって構成されるレバーアームのサイズがかなり小さくなる。
【0030】
掛止プレート51とともにくし状部52を使用することで、係止ユニット50の所望の係止位置で、掛金と穴の組合せが複数得られる。これにより、ヘッドレスト4の望ましくない高さ調節について、安定性が特に高くなる。
【符号の説明】
【0031】
1 車両座席
2 背もたれ
4 ヘッドレスト
5 背もたれ支持体
6 クッション
8、9 クッション部分
10 支持構造
12 弓形部分
14 座席背もたれ部分
15 間隙
18 横方向ストラット
20 スロット
22 案内機構
24、25 案内デバイス
28、29 案内要素
40 フレーム
40a ヘッドレストの上部
40b ヘッドレストの下部
50 係止ユニット
51 第1の係止部品
52 第2の係止部品
53 スライダ
54 押しボタンキー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車座席用の背もたれであって、案内機構によって高さ調節可能なヘッドレストと、前記背もたれの上側領域に設けられ、前記背もたれに固定接続された横方向ストラットとを備え、前記案内機構が、前記横方向ストラットに固定して取り付けられた案内デバイスを備えて、案内要素を案内し、前記案内要素が、前記ヘッドレストに取り付けられて、前記ヘッドレストに組み込まれた背もたれにおいて、前記案内機構(22)が、前記横方向ストラット(18)に固定された第1の係止部品(51)と、前記ヘッドレスト(4)に固定された第2の係止部品(52)とを備える係止ユニット(50)を割り当てられ、前記2つの係止部品(51、52)が、掛金と穴の原理に従って相互作用することを特徴とする背もたれ。
【請求項2】
前記案内デバイス(24、25)が、軸受、特に滑り軸受として設計され、かつ/または前記案内要素(28、29)が、案内ロッドとして設計される請求項1に記載の背もたれ。
【請求項3】
2つの軸受にそれぞれ1つの案内ロッドが設けられる請求項2に記載の背もたれ。
【請求項4】
係止部品、特に前記横方向ストラットに固定された係止部品が、掛止プレートとして設計される請求項1〜3のいずれか一項に記載の背もたれ。
【請求項5】
係止部品、特に前記ヘッドレストに固定された係止部品が、くし状部として設計される請求項1〜4のいずれか一項に記載の背もたれ。
【請求項6】
前記くし状部が回転可能に設計される請求項5に記載の背もたれ。
【請求項7】
前記くし状部が、前記くし状部を回転させるためのスライダ(53)を割り当てられる請求項6に記載の背もたれ。
【請求項8】
特に前記ヘッドレストの外側に取り付けられた押しボタンキー(54)によって前記スライダを作動させることができる請求項7に記載の背もたれ。
【請求項9】
特にばねによって前記くし状部に機械的なプレストレスがかけられる請求項5〜8のいずれか一項に記載の背もたれ。
【請求項10】
特に軽金属鋳物の形態で一部品として設計される請求項1〜9のいずれか一項に記載の背もたれ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91486(P2013−91486A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228033(P2012−228033)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】