説明

自動車用ドア構造

【課題】通常の使用状態にあってはスイングタイプのドアとして機能し、大きな乗降口を確保しなければならない場合には、前記スイングタイプのドアからスライドタイプのドアに切り換え、スライドドアとして機能する自動車用ドア構造を提供する。
【解決手段】Bピラー4に対してヒンジ結合されたドア3と、前記Bピラー4を車両1のボディ1aに対して着脱する着脱手段7aと、前記Bピラーに一端が軸支され、他端が車両のボディの軸支されたアーム5a、5bと、前記車両外側側面に形成されたガイド溝30と、前記ドア3に設けられ、前記ガイド溝30に案内され前記ドア3の動きを規制する被案内部20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗用車等の車両に好適な自動車用ドア構造に関し、特にスイングタイプとスライドタイプに切り換えることができる自動車用ドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、従来から自動車50のフロントドア51及びリアドア52には、図8に示すような一端部を中心に回動するスイングタイプのドアが用いられている。このスイングタイプのドア構造は、最も一般的なものであり、多くの車両で用いられている。
しかしながら、このフロント・リアスイングタイプのドア構造にあっては、フロント乗降口54とリア乗降口55との間に、車両のフレーム、所謂Bピラー53が存在し、乗降する際の邪魔になっていた。特に、身体が不自由な者の乗降あるいは大きな荷物を持っての乗降を困難なものとしていた。
【0003】
この問題を解決するものとして、例えば、特許文献1に示すようにリアドアをスライドタイプのドア構造になし、リア乗降口を大きな乗降口になすことが知られている。
更に、このフロントスイング・リアスライドタイプのドア構造として、図9に示すようなBピラーレスのフロントスイング・リアスライドタイプのドア構造が知られている。このドア構造は、スイングタイプのフロントドア56とスライドタイプのリアドア57によって形成され、乗降口としては一つの乗降口58が形成されている。
【0004】
このように、前記ドア構造にあっては、フロント乗降口とリア乗降口との間にBピラーが設けられていないため、前記フロントドア56及びリアドア57を開くことにより、より大きな乗降口58を確保することができ、身体が不自由な者あるいは大きな荷物を持つ者であっても容易に乗降することができる。
【特許文献1】特開2002−266554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スライドタイプのドア構造の場合には、前記したように、大きな乗降口を確保することができ、身体が不自由な者あるいは大きな荷物を持つ者の乗降を容易なものとすることができるが、スライドタイプのドアを開くために大きな力を必要とし、子供、女性、身体が不自由者にとって開放操作を困難なものとしていた。
一方、車両の利用状況を調査したところ、大きな乗降口を確保しなければならない場面はさほど多くなく、殆どの場合、スイングタイプのドアの乗降口の大きさで足りるものであった。
【0006】
本発明は、上記情況に鑑みてなされたものであって、通常の使用状態にあってはスイングタイプのドアとして機能し、大きな乗降口を確保しなければならない場合には、前記スイングタイプのドアからスライドタイプのドアに切り換え、スライドドアとして機能する自動車用ドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、本発明にかかる自動車用ドア構造は、Bピラーに対してヒンジ結合されたドアと、前記Bピラーを車両のボディに対して着脱する着脱手段と、前記Bピラーに一端が軸支され、他端が車両のボディの軸支されたアームと、前記車両外側側面に形成されたガイド溝と、前記ドアに設けられ、前記ガイド溝に案内され前記ドアの動きを規制する被案内部とを備えていることを特徴としている。
【0008】
このように、ドアがBピラーに対してヒンジ結合され、通常、前記ドアはスイングタイプのドアとして機能する。
そして、大きな乗降口を確保しなければならない場面においては、Bピラーを車両のボディから取り外すと共に、前記Bピラーに対してヒンジ結合されたドアの被案内部をガイド溝に案内させながらスライドさせる。これによりスライドタイプのドアとして機能させることができる。
したがって、通常の使用状態にあっては、子供、女性、身体が不自由者でも、開放操作を容易に行なうことができ、一方大きな乗降口を確保しなければならない場合には、スライドタイプのドアとして機能させることができるため、より大きな乗降口を確保でき、その要求を満足させることができる。
【0009】
ここで、前記Bピラーを車両のボディに対して着脱する着脱手段は、前記ボディに形成された係止孔と、前記Bピラーの上端面及び下端面に進退可能に形成され、進出状態で前記係止孔に係止される係止突起と、前記係止突起をBピラーの上端面及び下端面の外方に付勢するスプリングと、前記係止突起に一端が連結されたワイヤと、前記ワイヤの他端が連結された、前記Bピラーに回動可能に設けられたハンドルとを備え、前記ハンドルを操作することにより、前記スプリングの反発力に抗して、前記係止突起をワイヤによってBピラー内に後退させ、Bピラーを車両のボディから取り外すことが望ましい。
【0010】
このように、前記ハンドルを操作することにより、前記スプリングの反発力に抗して、前記係止突起をワイヤによってBピラー内に後退させ、前記係止孔と係止突起との係止が解かれ、Bピラーが車両のボディから取外されるように構成されているため、Bピラーが車両のボディから不用意に外れるのを防止することができる。
【0011】
また、前記被案内部は、ドアに進退可能に形成されたローラ部材と、前記ローラ部を後退状態になすスプリングと、前記ローラ部材の取り付けられた部材に一端が連結されたワイヤと、前記ワイヤの他端が連結された、前記Bピラーに回動可能に設けられたハンドルとを備え、前記ハンドルを操作することにより、前記スプリング力に抗して、ローラ部材をワイヤによって突出させ、前記ローラ部材をガイド溝に収容することが望ましい。
このように、ローラ部材はガイド溝に収容され案内されるため、前記ドアを規制しながらスライドさせることができる。
尚、前記ドアはリアドアであることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通常の使用状態にあってはスイングタイプのドアとして機能し、大きな乗降口を確保しなければならない場合には、前記スイングタイプのドアからスライドタイプのドアに切り換え、スライドドアとして機能する自動車用ドア構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる自動車用ドア構造の一実施形態を図1及び図7に基づいて説明する。尚、図1は本発明にかかる自動車用ドア構造の一実施形態を示す概略図、図2は図1に示したリアドアのスイング状態を示した斜視図、図3,4は、リアドアの構造を示す斜視図、図5,6は、リアドアのスライド動作を説明するための斜視図、図7はリアドアがローラ部材とガイド溝によって案内される状態を示した断面図である。
【0014】
まず、図1に基づいて、本発明にかかる自動車用ドア構造の概略を説明する。
図1(a)に示すように、車両1のフロントドア2はスイングタイプのドアであって、フロントドア1の一端部が車両1のボディ1aに対してヒンジ(図示せず)結合され、回動自在に取り付けられている。また、リアドア3は、車両1のBピラー4に対してヒンジ(図示せず)結合され、回動自在に取り付けられている。
したがって、図1(a)に示す状態にあっては、フロントドア2及びリアドア3はともに、スイングタイプのドアとして機能する。即ち、スイングタイプのドアの特徴である小さな操作力で、フロントドア2及びリアドア3を開けることができるため、子供、女性、高齢者にとって操作し易いものになっている。
【0015】
一方、図1(a)に示す状態にあっては、フロントドア2,リアドア3を開放しても、大きな乗降口を得ることができない。そのため、高齢者、あるいは大きな荷物を搬入する際には、リアドア3をスイングタイプからスライドタイプに切り換えられる。この切り換えに際し、Bピラー4の取り外しがなされる。
前記Bピラー4は、図1(a)に示す状態にあって、その上端、下端が車両1のボディ1aに係止、固定されており、前記切り換えは、図1(b)に示すように、Bピラー4を車両1のボディ2aから取り外すことによってなされる。
【0016】
前記Bピラー4の上端部及び下端部は、アーム5a,アーム5bの一端を回動可能に軸支しており、前記アーム5a,アーム5bの他端は、ボディ1aによって回動可能に軸支にされている。
したがって、前記Bピラー4が車両1のボディ1aから取り外されると、図1(b)(c)に示すように、Bピラー4及びリアドア3は、前記アーム5a,5bに保持されながら、アーム5a,アーム5bの他端部を中心に回動し、後方にスライドする。
そして、図1(d)に示すように、最終的にフロントドア2及びリアドア3を開くことにより、Bピラー4が存在しない大きな乗降口Sを形成することができる。
【0017】
このように、本発明は、通常、スイングタイプのドアとして機能し、必要に応じて前記スイングタイプのドアをスライドタイプのドアに切り換え、大きな乗降口を確保できる点に特徴を有するものである。
【0018】
更に、図2乃至図6に基づいて、本発明にかかる自動車用ドア構造の構成について詳述する。尚、フロンドドアはスイングタイプのドアであり、従来のスイングタイプのドアと変らないため、その詳細な説明は省略する。
図2に示しように、リアドア3はその一端がヒンジ6を介して、Bピラー4に連結され、前記Bピラー4に対して回動可能に取り付けられている。
【0019】
また、前記Bピラー4の上端面及び下端面には、図3、4に示すような、進退可能な係止突起7a,7bが形成されている。この係止突起7a,7bは、スプリング8によってBピラー4の上端面及び下端面から突出する方向に付勢され、Bピラー4の上端面及び下端面から突出し、車両1のボディ1aの係止孔(図示せず)に係止されている。
この係止突起7a,7bが車両1のボディ1aの係止孔(図示せず)に係止されている場合には、Bピラー4は車両1のボディ1aに固定され、前記リアドア3は、スイングタイプのドアとして機能する。
【0020】
また、前記係止突起7a,7bの夫々に、一端がハンドル10に連結されワイヤ9a,9bが連結されている。そして、前記ハンドル10を車外側に回す(図3及び図5の矢印方向に回す)ことにより、前記係止突起7a,7bが前記スプリング8の反発力に抗しながら、Bピラー4の内部に後退するように構成されている。
この係止突起7a,7bの後退により、前記係止孔(図示せず)と係止突起7a,7bとの係止が解かれ、前記Bピラー4は車両1のボディ1aから取り外される。
【0021】
更に、前記Bピラー4の上端部及び下端部には、前記したようにアーム5a,5bが取り付けられている。このアーム5a,5bの一端は車両1のボディ1aに回動可能に軸支され、他端はBピラー4に回動可能に軸支されている。
即ち、車両1のボディ1aから取り外されたBピラー4は、その上下端をアーム5a,5bによって保持され、前記ボディ1a側の軸1bを中心に回動するように構成されている。
【0022】
更にまた、リアドア3の車内側面には、リアドア3のスライド時の動きを規制するための被案内部材20が設けられている。
この被案内部材20は、図4に示すように、筐体23と、車両1の後方外側面に形成されたガイド溝30に案内される、筐体23の外部に配置されローラ部材21と、前記ローラ部材21が取り付けられた取付板24と、前記取付板24の端部に設けられ、筐体23の内部に配置された端板25とを備えている。
【0023】
また、前記端板25と筐体23の内面とに接してスプリング22が配置され、前記ローラ部材21を筐体23の内部方向に、常時スプリング力によって付勢している。
更に、前記ローラ部材21の端板25は、一端がハンドル10に連結されたワイヤ12に連結されている。このワイヤ12はローラ26a,26bを介して、ハンドル10に連結されている。
そして、前記ハンドル10を車外側に回すことにより、前記スプリング22の反発力に抗して端板25を移動させ、ローラ部材21をリアドア3(筐体23)の外方へ進出(突出)するように構成されている。
【0024】
また、車両1の外側側面にはガイド溝30が形成され、ローラ部材21を収容し、前記ローラ部材21を案内するように構成されている。即ち、図7に示すように、このガイド溝30の上面には覆板31,31が設けられ、ローラ部材21をガイド溝30内に収容し、取付板24が前記覆板31,31の隙間を移動するように構成されている。
【0025】
また、図5,6に示すように、前記ガイド溝30の前方端30aは開放されており、この前方端30aから前記ローラ部材21を収容できるように構成されている。このリアドア3のスライド動作は、前記ローラ部材21をガイド溝30の前方端30aから収容し、前記ローラ部材21がイド溝30によって案内されながら動作することとなる。
【0026】
次に、リアドア3のスイングタイプからスライドタイプへの切り換え動作について説明する。
先ず、図5に示すように、スイング状態にあるリアドア3において、Bピラー4に形成されたハンドル10を車外側に回すことにより、ワイヤ9a,9bを介して、係止突起7a,7bをBピラー4内に後退させ、係止突起7a,7bと車両1のボディ1aの係止孔との係止状態を解除する。これにより、Bピラー4は車両1のボディ1aから取り外される。
また、前記ハンドル10の回動によって、ローラ部材21がリアドア3(筐体23)から外方に進出(突出)する。
【0027】
そして、前記アーム5によって前記Bピラー4及びリアドア3を保持しながら回動させ、所定角度回動したところで、前記ローラ部材21をガイド溝30内に収容する。
その後は、リアドア3の上下端部はアーム5a,5bに保持され、かつリアドア3の車両後方側部は、ローラ部材21がガイド溝30に案内されながら、リアドア3は車両後方にスライドし、大きな乗降口Sを形成する。
【0028】
一方、スライドタイプからスイングタイプへの切り換えは、前記動作の逆の動作を行なうことになる。即ち、車両1の後方に位置するリアドア3を前方に移動させ、所定の位置で前記ローラ部材21をガイド溝30から外し、前記ハンドル10を元の位置に戻す。
これにより、ローラ部材21はリアドア3に収容され、係止突起7a,7bはスプリング力によりBピラー4の上端面及び下端面から突出した状態になされる。
【0029】
そして、前記Bピラー4及びリアドア3をアーム5によって保持しながら、回動させ、Bピラー4の係止突起7a,7bを車両1のボディ1aの係止孔に係止させ、Bピラー4をボディ1aに固定する。このBピラー4の固定後は、前記リアドア3はスイングタイプのドアとして機能する。
【0030】
以上説明したように、リアドアは、通常スイングタイプのドアとして機能するため、小さな力でドアの開閉を行なうことができ、子供、女性、高齢者にも、容易に操作することができる。
また、Bピラーをリアドアと共に後方にスライドさせるスライドドアに切り換えることにより、スライドドアとして機能するため、大きな乗降口を形成でき、大きな荷物を容易に収納することができ、また身体が不自由な人が容易に乗り降りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明にかかる自動車用ドア構造の一実施形態を示す概略図。
【図2】図1に示したリアドアのスイング状態を示した斜視図。
【図3】リアドアの構造を示す斜視図。
【図4】リアドアの構造を示す斜視図。
【図5】リアドアのスライド動作を説明するための斜視図。
【図6】リアドアのスライド動作を説明するための斜視図。
【図7】図7はリアドアがローラ部材とガイド溝によって案内される状態を示した断面図。
【図8】従来のドア構造を示す側面図。
【図9】従来のドア構造を示す側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 車両
1a ボディ
2 フロントドア
3 リアドア
4 Bピラー
5a アーム
5b アーム
6 ヒンジ
7a 係止突起
7b 係止突起
8 スプリング
9a ワイヤ
9b ワイヤ
10 ハンドル
12 ワイヤ
20 被案内部材
21 ローラ部材
22 スプリング
23 筐体
24 取付板
25 端板
30 ガイド溝
31 覆板
S 乗降口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bピラーに対してヒンジ結合されたドアと、前記Bピラーを車両のボディに対して着脱する着脱手段と、前記Bピラーに一端が軸支され、他端が車両のボディの軸支されたアームと、前記車両外側側面に形成されたガイド溝と、前記ドアに設けられ、前記ガイド溝に案内され前記ドアの動きを規制する被案内部とを備えていることを特徴とする自動車用ドア構造。
【請求項2】
前記Bピラーを車両のボディに対して着脱する着脱手段は、前記ボディに形成された係止孔と、前記Bピラーの上端面及び下端面に進退可能に形成され、進出状態で前記係止孔に係止される係止突起と、前記係止突起をBピラーの上端面及び下端面の外方に付勢するスプリングと、前記係止突起に一端が連結されたワイヤと、前記ワイヤの他端が連結された、前記Bピラーに回動可能に設けられたハンドルとを備え、
前記ハンドルを操作することにより、前記スプリングの反発力に抗して、前記係止突起をワイヤによってBピラー内に後退させ、Bピラーを車両のボディから取り外すことを特徴とする請求項1に記載された自動車用ドア構造。
【請求項3】
前記被案内部は、ドアに進退可能に形成されたローラ部材と、前記ローラ部を後退状態になすスプリングと、前記ローラ部材が取り付けられた部材に一端が連結されたワイヤと、前記ワイヤの他端が連結された、前記Bピラーに回動可能に設けられたハンドルとを備え、
前記ハンドルを操作することにより、前記スプリング力に抗して、ローラ部材をワイヤによって進出させ、前記ローラ部材をガイド溝に収容することを特徴とする請求項1に記載された自動車用ドア構造。
【請求項4】
前記ドアはリアドアであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された自動車用ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−62699(P2009−62699A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229948(P2007−229948)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】