説明

自動車用フロアーマット及びその製造方法並びに突起形成装置

【課題】 吸音性に優れて十分な静粛性を確保できると共に、敷設下地面に対して優れた防滑性を発揮できる自動車用フロアーマット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 この発明の自動車用フロアーマットは、表皮材層29の下面側に不織布層32が積層一体化された自動車用フロアーマットにおいて、前記不織布層32の下面に、樹脂からなる多数個の防滑用突起3が相互に間隔をあけて突設されると共に、前記不織布層32の内部における前記防滑用突起3が形成された対応位置に樹脂が含浸固着された含浸樹脂部6が前記防滑用突起3に連接して形成されていることを特徴とする。この発明の製造方法は、マット本体を不織布層を上側にして配置し、不織布層の上に突起形成用キャビティーを備えた成形型を載置した状態でキャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車室内における例えば運転者や同乗者の足元に敷いて用いられる自動車用フロアーマット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車室内のフロアーには予め不織布やパイルカーペット等の繊維敷物が敷設されているが、この繊維敷物の汚れを防止すること等を目的として、この繊維敷物の上に更に取り外し可能なフロアーマットを載置することが広く行われている。このフロアーマットに、足で踏む、蹴る等の外力が加わると、フロアーマットは位置ずれを生じる。このような位置ずれを生じると、使用者が滑ったりすることが懸念されるのみならず、位置ずれによってフロアーマットがアクセル、ブレーキ等に覆いかぶさるようなことがあると、運転を行う上で支障を来すことから、この自動車用フロアーマットには位置ずれを生じないことが強く要請されている。
【0003】
このような位置ずれを防止するために、従来の自動車用フロアーマットでは、マットの裏面に積層された熱可塑性エラストマーからなる裏打ち材の下面に多数個の防滑用突起(熱可塑性エラストマーからなる)を設けることが行われていた(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年、自動車室内の静粛性を高めるために、自動車用フロアーマットには優れた吸音性を備えていることが強く求められるようになってきている。前記熱可塑性エラストマーからなる裏打ち材を積層した構成では、吸音効果が殆ど得られないことから、近年ではカーペット地等の表皮材の裏面側に不織布を貼り合わせた構成のものが用いられるようになってきている(特許文献2参照)。この構成によれば、騒音等の音は不織布層を通過する際に吸音されるので、十分な吸音効果が得られる。
【特許文献1】登録実用新案公報第3031429号公報
【特許文献2】特開2002−200687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような表皮材の裏面側に単に不織布を貼り合わせた構成では、敷設下地面に対する滑り防止性が殆ど得られないという問題があった。特に敷設下地面がパイルカーペットであるような場合には容易に滑りを生じてしまう。勿論、フロアーマットの裏面に合成樹脂製の防滑用突起を多数個突設すれば、滑り防止性能を付与できることが期待できるが、従来においては不織布に合成樹脂製の突起を直接に固定する技術はなかったのが実状である。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、吸音性に優れて十分な静粛性を確保できると共に、敷設下地面に対して優れた防滑性を発揮できる自動車用フロアーマット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化され、該不織布層の下面に、樹脂からなる多数個の防滑用突起が相互に間隔をあけて突設されると共に、前記不織布層の内部における前記防滑用突起が形成された対応位置に樹脂が含浸固着された含浸樹脂部が前記防滑用突起に連接して形成されていることを特徴とする自動車用フロアーマット。
【0009】
[2]前記防滑用突起の高さが3〜10mmの範囲に設定されている前項1に記載の自動車用フロアーマット。
【0010】
[3]前記含浸樹脂部の総形成面積は、前記不織布層下面の面積に対して10〜70%の範囲に設定されている前項1または2に記載の自動車用フロアーマット。
【0011】
[4]表皮材層の裏面側に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を該不織布層を上側にして配置し、前記不織布層の上に突起形成用キャビティーを備えた成形型を載置した状態で成形型の突起形成用キャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することによって、前記マット本体の不織布層の上に熱可塑性樹脂からなる防滑用突起を突設すると共に前記不織布層の内部に熱可塑性樹脂が含浸固着した含浸樹脂部を前記防滑用突起に連接させて形成することを特徴とする自動車用フロアーマットの製造方法。
【0012】
[5]突起形成用キャビティーが形成された板状の成形型が複数個帯状に連結された帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体に巻き付けられてなる上側エンドレスキャタピラと、該上側エンドレスキャタピラの下方位置に配置された下側エンドレスキャタピラとの間に、表皮材層の裏面側に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を該不織布層を上側にして前記両キャタピラと接触状態に挿通配置せしめ、この状態で前記成形型の突起形成用キャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することによって、前記マット本体の不織布層の上に熱可塑性樹脂からなる防滑用突起を突設すると共に前記不織布層の内部に熱可塑性樹脂が含浸固着した含浸樹脂部を前記防滑用突起に連接させて形成する突起形成工程と、
前記軸体を回転させて前記キャタピラを移動させることによって上下両キャタピラに挟まれた前記マット本体を所定距離移動させるマット送り工程とを包含することを特徴とする自動車用フロアーマットの製造方法。
【0013】
[6]前記成形型として、空冷式または水冷式の冷却成形金型を用いる前項4または5に記載の自動車用フロアーマットの製造方法。
【0014】
[7]突起形成用キャビティー及び該キャビティーに連通する注入孔を備えた板状の成形型が複数個帯状に連結された帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体に巻き付けられてなる上側エンドレスキャタピラと、互いに離間して配置された一対の軸体に帯状体が巻き付けられてなる下側エンドレスキャタピラと、下面に多数の注入ノズルが突設された樹脂注入装置とを備え、前記下側エンドレスキャタピラは、前記上側エンドレスキャタピラの下方位置に間隔をあけて配置されていることを特徴とする突起形成装置。
【0015】
[8]前記樹脂注入装置が前記上側エンドレスキャタピラの内部空間内に配置され、この内部空間において上下駆動し得るものとなされている前項7に記載の突起形成装置。
【発明の効果】
【0016】
[1]の発明では、含浸樹脂部は、不織布層内部における絡み合い状態にある構成繊維間の空隙に含浸されたものとなるので、含浸樹脂部は不織布層内部に強固に固着される。この不織布層内部の含浸樹脂部と防滑用突起とが連接して一体形成されているので、防滑用突起が不織布に対して強固に固定される。しかして、この防滑用突起のスパイク効果等によって敷設下地面に対して優れた防滑性が発揮されるから、このマットは敷設下地面に対してずれ移動を生じることがない。また、含浸樹脂部は不織布層の一部(防滑用突起が形成された対応位置)に設けられているので、不織布による吸音作用が十分に発揮され得て優れた吸音性能が確保される。
【0017】
[2]の発明では、防滑用突起の高さが3〜10mmの範囲に設定されているから、マットとして軽量性を十分に確保しつつ優れた防滑性を得ることができる。
【0018】
[3]の発明では、含浸樹脂部の総形成面積は、不織布層下面の面積に対して10〜70%の範囲に設定されているから、優れた防滑性を維持しつつ吸音性をさらに向上させることができる。
【0019】
[4]の発明では、成形型の突起形成用キャビティー内に溶融熱可塑性樹脂を注入することで不織布層にも熱可塑性樹脂を含浸させることができて、この不織布層内部の含浸樹脂部と防滑用突起とを連接して一体形成することができ、これにより防滑用突起が不織布層に対して強固に固定されたマットを製造することができる。得られたマットは、不織布層の存在によって十分な吸音性を確保できると共に、防滑用突起のスパイク効果等によって敷設下地面に対して優れた防滑性を発揮できる。
【0020】
[5]の発明では、成形型の突起形成用キャビティー内に溶融熱可塑性樹脂を注入することで不織布層にも熱可塑性樹脂を含浸させることができて、この不織布層内部の含浸樹脂部と防滑用突起とを連接して一体形成することができ、これにより防滑用突起が不織布層に対して強固に固定されたマットを製造することができる。また、上側エンドレスキャタピラは、マット送り機構であると共に成形型による突起形成機能をも有しているので、マット送りした後直ちに突起形成を行うことができ、これにより製造効率を格段に向上させることができる。こうして得られたマットは、不織布層の存在によって十分な吸音性を確保できると共に、防滑用突起のスパイク効果等によって敷設下地面に対して優れた防滑性を発揮できる。
【0021】
[6]の発明では、成形型として、空冷式または水冷式の冷却成形金型を用いるので、防滑用突起の賦形固化を十分に行うことができて所望形状の防滑用突起を精度高く形成することができる。
【0022】
[7]の発明では、樹脂注入装置の注入ノズルから成形型の突起形成用キャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することで、マット本体の不織布層の上に熱可塑性樹脂からなる防滑用突起を突設すると共に不織布層の内部に樹脂が含浸固着した含浸樹脂部を防滑用突起に連接させて一体形成することができ、これにより防滑用突起が不織布層に対して強固に固定されたマットを製造することができる。また、上側エンドレスキャタピラは、マット送り機構であると共に成形型による突起形成機能をも有しており、マット送りした後直ちに突起形成を行うことができるので、高い製造効率でマットを製造することができる。
【0023】
[8]の発明では、樹脂注入装置が上側エンドレスキャタピラの内部空間内に配置され、この内部空間において上下駆動し得るものとなされているから、突起形成装置としての設備スペースを低減できると共に、樹脂注入操作のために樹脂注入装置を成形型の上にセットするのに要する時間が非常に短くて済み製造効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の一実施形態に係る自動車用フロアーマット(1)を図1、2に示す。この自動車用フロアーマット(1)は、通気性を有するマット本体(2)の裏面(図面では上面)に、樹脂からなる多数個の防滑用突起(3)…が相互に間隔をあけて突設されたものからなる。前記マット本体(2)は、カーペット基材(30)の表側にパイル(31)が植設されて表皮材層(29)が形成されると共に該カーペット基材(30)の裏側に通気性接着層(33)を介して不織布層(32)が積層一体化されてなるパイルカーペットである。前記不織布層(32)の内部における前記防滑用突起(3)…が形成された対応位置に樹脂が含浸固着された含浸樹脂部(6)…が形成され、該含浸樹脂部(6)は前記防滑用突起(3)に連接して一体的に形成されている(図2参照)。
【0025】
前記自動車用フロアーマット(1)では、防滑用突起(3)および不織布層(32)内部の含浸樹脂部(6)が連接して一体形成されているので、防滑用突起(3)…がマットに対して強固に固定されるものとなる。しかして、マット(1)に強固に固定された防滑用突起(3)…のスパイク効果等によって敷設下地面に対して優れた防滑性を発揮するから、マット(1)の敷設下地面に対するずれ移動を十分に防止することができる。
【0026】
また、マット(1)の下側に不織布層(32)が配置されているので、下側から侵入してくる外部騒音等を十分に吸音できる。また、接着層(33)は通気性を有しているので、窓等を介して車室内に侵入した騒音や室内で発生した音は、この通気性接着層(33)を通って不織布層(32)に到達してこの不織布層(32)において吸音される。こうして自動車内において十分な静粛性が確保される。
【0027】
上記構成に係る自動車用フロアーマット(1)は、例えば次のような製造方法で製造される。
【0028】
まず、本製造方法で用いる突起形成装置(9)について説明する。図3において、(10)は上側エンドレスキャタピラ、(15)は下側エンドレスキャタピラ、(16)は樹脂注入装置、(18)は樹脂タンク、(20)は上下駆動装置である。
【0029】
前記上側エンドレスキャタピラ(上側エンドレスベルト)(10)は、突起形成用キャビテイー(12)…及び注入孔(13)…が形成された板状の成形型(11)が複数個帯状に連結されてなる帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体(14A)(14A)に巻き付けられた構成からなる。前記突起形成用キャビテイー(12)…は前記成形型(11)の外面側に形成される一方、前記注入孔(13)…は前記成形型(11)の内面側に形成され、前記突起形成用キャビテイー(12)と前記注入孔(13)とは連通されている(図3、4参照)。前記成形型(11)は、水冷式の冷却成形金型である。前記軸体(14A)は、図示しない駆動装置によって回転駆動制御(回転開始・回転停止の制御)されるものとなされている。
【0030】
前記下側エンドレスキャタピラ(下側エンドレスベルト)(15)は、板状体が複数個帯状に連結されてなる帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体(14B)(14B)に巻き付けられた構成からなる。この下側エンドレスキャタピラ(15)は、前記上側エンドレスキャタピラ(10)の直下位置に所定間隔をあけて配置されている。前記軸体(14B)も、図示しない駆動装置によって回転駆動制御(回転開始・回転停止の制御)されるものとなされている。
【0031】
前記樹脂注入装置(16)は、前記上側エンドレスキャタピラ(10)の内部空間内に配置されており、上下駆動装置(20)により該内部空間内において上下駆動させることができる。この樹脂注入装置(16)の下面には多数の注入ノズル(17)…が形成されている(図4参照)。前記注入ノズル(17)…は、前記樹脂注入装置(16)の内部空間に連通接続され、該内部空間はフレキシブルホース(19)を介して樹脂タンク(18)に接続されており、必要な際に樹脂タンク(18)内の溶融状態の熱可塑性樹脂をフレキシブルホース(19)、樹脂注入装置(16)の内部空間を介して注入ノズル(17)から吐出することができる。
【0032】
しかして、図3、4に示すように、前記上側エンドレスキャタピラ(10)と前記下側エンドレスキャタピラ(15)との間に、表皮材層(29)の裏面側に不織布層(32)が積層一体化されてなるマット本体(2)を該不織布層(32)を上側にしてこれらキャタピラ(10)(15)と接触状態に挿通配置せしめる。前記マット本体(2)は、カーペット基材(30)の表側にパイル(31)が植設されてなる表皮材層(29)の裏側に通気性接着層(33)を介して不織布層(32)が積層一体化されたものである。
【0033】
次いで、前記上下駆動装置(20)を駆動させることによって前記樹脂注入装置(16)を下降移動させる。この時、前記樹脂注入装置(16)下面の注入ノズル(17)の先端が、前記上側エンドレスキャタピラ(10)の成形型(11)の上面(内面)の注入孔(13)内に入り込む位置まで下降移動させる(図4参照)(樹脂注入装置下降移動工程)。
【0034】
次いで、前記樹脂タンク(18)からフレキシブルホース(19)を介して前記樹脂注入装置(16)内に溶融熱可塑性樹脂を供給することによって前記樹脂注入装置(16)下面の注入ノズル(17)から溶融熱可塑性樹脂を吐出せしめて前記成形型(11)の注入孔(13)内に溶融熱可塑性樹脂を所定量注入する。注入された溶融熱可塑性樹脂は、マット本体(2)の不織布層(32)内に含浸して固着して含浸樹脂部(6)を形成すると共に、成形型(11)の突起形成用キャビティー(12)内にも充填されてここで冷却固化されて前記不織布層(32)の上に防滑用突起(3)を形成する。この時、前記不織布層(32)内の含浸樹脂部(6)と防滑用突起(3)とを連接させて一体形成することができる(突起形成工程)。
【0035】
次に、前記上下駆動装置(20)を駆動させることによって前記樹脂注入装置(16)を上昇移動させる。この時、前記樹脂注入装置(16)下面の注入ノズル(17)の先端が、前記上側エンドレスキャタピラ(10)の成形型(11)の上面(内面)の注入孔(13)内から上方に向けて離脱する位置まで上昇移動させる(樹脂注入装置上昇移動工程)。
【0036】
しかる後、前記上側エンドレスキャタピラ(10)及び下側エンドレスキャタピラ(15)を成形型(11)1枚分だけ図面左方向に移動させることによってマット本体(2)も同様に図面左方向に移動させる(マット送り工程)。この時、前記防滑用突起(3)の形成に関与した成形型(11)は成形型1枚分だけ図面左方向に移動するが、この成形型(11)とマット本体(2)とは依然として当接状態にあり、形成された前記防滑用突起(3)は該成形型(11)との接触状態が保持されてさらに冷却固化されて十分に賦形される。
【0037】
成形型(11)及びマット本体(2)が成形型1枚分だけ図面左方向に移動したことで、前記樹脂注入装置(16)の直下位置には、隣の成形型(11)及び防滑用突起が未だ形成されていないマット本体(2)が配置される。以下、前記同様にして、樹脂注入装置(16)を下降移動させた後、樹脂注入装置(16)の直下位置の成形型(11)の注入孔(13)内に溶融熱可塑性樹脂を所定量注入することによって、マット本体(2)の新たな位置に不織布層(32)内の含浸樹脂部(6)と防滑用突起(3)とを連接して一体形成する。以下、前記樹脂注入装置上昇移動工程、前記マット送り工程、前記樹脂注入装置下降移動工程、前記突起形成工程をこの順に繰り返すことによって、マット本体(2)の不織布層(32)の上に防滑用突起(3)…を順次突設していくことができる。得られたマットを所定長さで裁断したのち必要に応じて縁処理等を行うことによって本発明の自動車用フロアーマット(1)を得ることができる。
【0038】
この発明において、前記防滑用突起(3)の高さ(t)は3〜10mmの範囲に設定されるのが好ましい。3mm以上であることで敷設下地面の繊維間への防滑用突起(3)の侵入程度が十分なものとなって優れた防滑性が得られると共に、10mm以下であることで防滑用突起(3)の目付量を抑制し得てマットとしての軽量性を十分に確保することができる。
【0039】
また、前記防滑用突起(3)の配置密度は、100cm2 当たり10〜200個とするのが好ましい。100cm2 当たり10個以上とすることで十分な防滑性を確保できると共に200個以下とすることで防滑用突起(3)の目付量を抑制し得てマットとしての軽量性を十分に確保することができる。
【0040】
また、前記防滑用突起(3)の形状は特に限定されない。例えば、円柱形状、円錐形状、円錐台形状等を採用しても良いし、図2に示すような円錐台形状の突起土台(4)に径小の先端突起(5)が突設された2段形状を採用しても良いし、或いは3段以上の多段形状を採用しても良い。
【0041】
前記不織布層(32)において含浸樹脂部(6)…の総形成面積(平面視での総形成面積)は、前記不織布層(32)下面の面積に対して10〜70%の範囲に設定されるのが好ましい。70%以下であることで不織布層(32)中の空隙量を十分に確保し得て十分な吸音性能を得ることができると共に、10%以上であることで防滑用突起(3)の配置密度を大きくできて優れた防滑性を確保できる。中でも、15〜50%の範囲に設定されるのが特に好ましい。
【0042】
この発明において、防滑用突起(3)及び含浸樹脂部(6)の構成材料としては、熱可塑性樹脂(ゴムも含む)等が用いられる。前記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体樹脂)、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)エラストマー、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)エラストマー、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン)エラストマー、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。
【0043】
前記不織布(32)としては、特に限定されずにどのようなものでも用いることができ、例えばニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。前記不織布(32)を構成する繊維の種類は、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維等が挙げられる。
【0044】
前記表皮材層(29)としては、その表面にパイルを有しても良いし、パイルを有しないものであっても良い。パイルを有するものとしては、例えばカーペット基材(編布地、織布地等)(30)の表面にパイル(31)が植設されたもの等が挙げられる。また、パイルを有しないものとしては、例えばニードルパンチ不織布等が挙げられる。
【0045】
前記接着樹脂層(33)の構成材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂)、SBRラテックス等が挙げられる。
【0046】
この発明の自動車用フロアーマット(1)は、例えば自動車室内における運転者や同乗者の足元に敷いて用いられるフロアーマットとして、あるいは自動車の荷台マットや荷室マット等として用いられる。
【実施例】
【0047】
次に、この発明の具体的実施例について説明する。
【0048】
<実施例1>
まず、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなるカーペット基材(30)にナイロン糸からなるパイル(31)がタフトされてなるタフトカーペット原反(表皮材層)(29)の裏面に、SBRラテックスエマルジョン接着剤(通気性接着層)(33)を塗布した後、該塗布面にPET繊維製ニードルパンチ不織布(32)を重ね合わせて加熱乾燥することによって、マット本体(2)を得た。
【0049】
前記マット本体(2)を不織布層(32)を上側にして図3に示す突起形成装置(9)の上下両キャタピラ(10)(15)の間にこれらと接触状態に挿通配置せしめた。また、樹脂タンク(18)内にはポリアミド系エラストマーを充填し、190℃に加温してポリアミド系エラストマーを溶融状態とした。以下、前項で説明した樹脂注入装置下降移動工程、突起形成工程、樹脂注入装置上昇移動工程、マット送り工程をこの順に繰り返すことによって、マット本体(2)の不織布層(32)の上に防滑用突起(3)…を順次突設した。得られたマットを所定長さで裁断したのちオーバーロック加工による縁処理を施すことによって自動車用フロアーマット(1)を得た。
【0050】
得られたフロアーマット(1)において、防滑用突起(3)の高さ(t)は5mmであった。また、含浸樹脂部(6)の総形成面積(平面視での形成面積)は、不織布層(32)下面の面積に対して15%であった。
【0051】
得られたフロアーマット(1)の防滑用突起(3)は、マット本体(2)に対して十分な接合強度で接合一体化されており、実使用でも離脱することがなくて十分な耐久性を備えていた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動車用フロアーマットを示す裏面側斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線の断面図である。
【図3】この発明の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【図4】樹脂注入装置を下降移動させて注入ノズルを成形型の注入孔内に配置せしめた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…自動車用フロアーマット
2…マット本体
3…防滑用突起
6…含浸樹脂部
9…突起形成装置
10…上側エンドレスキャタピラ
11…成形型
12…突起形成用キャビティー
13…注入孔
14…軸体
15…下側エンドレスキャタピラ
16…樹脂注入装置
17…注入ノズル
29…表皮材層
32…不織布層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材層の下面側に不織布層が積層一体化され、該不織布層の下面に、樹脂からなる多数個の防滑用突起が相互に間隔をあけて突設されると共に、前記不織布層の内部における前記防滑用突起が形成された対応位置に樹脂が含浸固着された含浸樹脂部が前記防滑用突起に連接して形成されていることを特徴とする自動車用フロアーマット。
【請求項2】
前記防滑用突起の高さが3〜10mmの範囲に設定されている請求項1に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項3】
前記含浸樹脂部の総形成面積は、前記不織布層下面の面積に対して10〜70%の範囲に設定されている請求項1または2に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項4】
表皮材層の裏面側に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を該不織布層を上側にして配置し、前記不織布層の上に突起形成用キャビティーを備えた成形型を載置した状態で成形型の突起形成用キャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することによって、前記マット本体の不織布層の上に熱可塑性樹脂からなる防滑用突起を突設すると共に前記不織布層の内部に熱可塑性樹脂が含浸固着した含浸樹脂部を前記防滑用突起に連接させて形成することを特徴とする自動車用フロアーマットの製造方法。
【請求項5】
突起形成用キャビティーが形成された板状の成形型が複数個帯状に連結された帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体に巻き付けられてなる上側エンドレスキャタピラと、該上側エンドレスキャタピラの下方位置に配置された下側エンドレスキャタピラとの間に、表皮材層の裏面側に不織布層が積層一体化されてなるマット本体を該不織布層を上側にして前記両キャタピラと接触状態に挿通配置せしめ、この状態で前記成形型の突起形成用キャビティー内に溶融した熱可塑性樹脂を注入することによって、前記マット本体の不織布層の上に熱可塑性樹脂からなる防滑用突起を突設すると共に前記不織布層の内部に熱可塑性樹脂が含浸固着した含浸樹脂部を前記防滑用突起に連接させて形成する突起形成工程と、
前記軸体を回転させて前記キャタピラを移動させることによって上下両キャタピラに挟まれた前記マット本体を所定距離移動させるマット送り工程とを包含することを特徴とする自動車用フロアーマットの製造方法。
【請求項6】
前記成形型として、空冷式または水冷式の冷却成形金型を用いる請求項4または5に記載の自動車用フロアーマットの製造方法。
【請求項7】
突起形成用キャビティー及び該キャビティーに連通する注入孔を備えた板状の成形型が複数個帯状に連結された帯状体が、互いに離間して配置された一対の軸体に巻き付けられてなる上側エンドレスキャタピラと、
互いに離間して配置された一対の軸体に帯状体が巻き付けられてなる下側エンドレスキャタピラと、
下面に多数の注入ノズルが突設された樹脂注入装置とを備え、
前記下側エンドレスキャタピラは、前記上側エンドレスキャタピラの下方位置に間隔をあけて配置されていることを特徴とする突起形成装置。
【請求項8】
前記樹脂注入装置が前記上側エンドレスキャタピラの内部空間内に配置され、この内部空間において上下駆動し得るものとなされている請求項7に記載の突起形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240595(P2006−240595A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62819(P2005−62819)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000120696)永大化工株式会社 (22)
【Fターム(参考)】