自動車用排気管
【課題】スペースの増加もなく、排気ガスによる昇温までの時間をこれまでよりも短縮した自動車用排気管を提供する。
【解決手段】自動車用排気管1の排気管本体10の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体20を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。金属の薄板(1〜3mm)からなる円筒体20を所定距離離間させて配設、円筒体20は排気管本体10の内側に配設されるため、排気管本体10に断熱材を巻装したり、排気管と排気管本体10とさらに外側の管との2重管構造としたときのようなスペース増を招くことはない。
【解決手段】自動車用排気管1の排気管本体10の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体20を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。金属の薄板(1〜3mm)からなる円筒体20を所定距離離間させて配設、円筒体20は排気管本体10の内側に配設されるため、排気管本体10に断熱材を巻装したり、排気管と排気管本体10とさらに外側の管との2重管構造としたときのようなスペース増を招くことはない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用排気管に関し、特にその断熱性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車エンジンの排気ガスは、排気管を通って触媒コンバータに送られ、触媒コンバータで大気汚染物質を除去した後にマフラーから大気中に放出される。触媒コンバータでは、触媒を活性化温度まで短時間で昇温させる観点から、流入してくる排気ガスの温度が高いことが望まれている。そのため、排気ガスがエンジンから触媒コンバータに至るまでの間の温度低下を防ぐために、排気管の断熱が行われている。また、排気ガスを再度吸気側に送る熱回収機構の配管でも、エンジンの急速暖機を行うために同様の断熱が行われている。
【0003】
排気管の断熱構造としては排気管に断熱材を巻装することが一般的であるが、断熱性能を高めようとすると断熱材も厚くなり、スペース増となる。また、排気管と外管との間に空気層を介在させた二重管構造も知られており、例えば特許文献1では、金属線材を排気管に螺旋状に巻き付けてスペーサとし、外管を被嵌している。本出願人も先に、特許文献2において、排気管の外周面に任意の間隔でリング状のスペーサを固着し、金属箔の内面にガラスクロスを接合した可撓性の外管を装着することを提案している。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の2重管構造では、排気管並びに金属線材やスペーサがある程度の熱容量を持つため、排気ガスの熱が排気管や金属線材、スペーサ等に吸収され、排気ガスの温度低下を招いている。そのため、排気ガスが排気管内に流入し始めると、急激に排気ガス温度が低下する。その後、排気管および金属線材、スペーサ等が温まるにつれて排気ガス温度も徐々に上昇し、ある程度の時間を要してから、排気ガスの温度が一定となる。しかしながら、排気管およびその周辺の材料の熱容量が大きいほど、排気ガス温度が一定になる時間は長く、また、一定となった排気ガス温度(到達温度)も、低い値となってしまう。さらに、空間的にも、2重構造にすることで外管の分だけスペース増となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−228055号公報
【特許文献2】特開2004−285849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景に鑑み、スペースの増加もなく、排気ガスによる昇温までの時間をこれまでよりも短縮し、到達温度も高く保てる自動車用排気管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、下記の自動車用排気管を提供する。
(1)排気管本体の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。
(2)排気管本体と円筒体との間隔が1〜30mmであることを特徴とする上記(1)記載の自動車用排気管。
(3)両端面かどちらか一方の端面において、排気管本体と円筒体との隙間が閉塞されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の自動車用排気管。
(4)排気管本体の内壁に、円筒体に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
(5)円筒体の外周面に、排気管本体の内壁に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
(6)円筒体の内壁に、該円筒体を閉塞しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車用排気管では、排気管本体の内部に挿入した円筒体が金属薄板からなり、その熱容量が小さいため、内部を流れる排気ガスの熱により、容易にその円筒体の温度が上昇し、排気ガスと円筒体の温度差が小さくなり、排気ガスから円筒体への放熱が抑えられる。そのため、排気管本体のみからなる場合に比べて、昇温に要する時間が大幅に短縮される。このような効果は、排気管本体の内壁に、排気管本体に接しない厚さで断熱材を付設することにより更に向上する。しかも、円筒体、更には断熱材を排気管本体の内部に挿入しただけであるため、スペース増にもならない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の自動車用排気管を示す断面図である。
【図2】円筒体の開口形状の例を示す平面図である。
【図3】本発明の自動車用排気管の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の自動車用排気管の更に他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の自動車用排気管の更に他の例を示す断面図である。
【図6】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】試験2の結果を示すグラフである。
【図10】試験3において、板厚0.1mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図11】試験3において、板厚0.4mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図12】試験3において、板厚0.8mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図13】試験3において、板厚1.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図14】試験3において、板厚1.5mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図15】試験3において、板厚2.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図16】試験3において、板厚3.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図17】試験3において、板厚3.5mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図18】試験3において、板厚5.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図19】試験3において、板厚10.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図20】試験4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動車用排気管について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の自動車用排気管1を示す断面図であるが、図示されるように、本来の排気管である排気管本体10の内部に、金属の薄板(1〜3mm)からなる円筒体20を所定距離離間させて配設したものである。円筒体20は排気管本体10の内側に配設されるため、排気管本体10に断熱材を巻装したり、排気管と排気管本体10とさらに外側の管との2重管構造としたときのようなスペース増を招くことはない。
【0012】
円筒体20は、熱容量が小さく、排気ガスによる劣化も少なく、また安価であることなどからアルミニウム製、鉄製、チタン製またはステンレス製であることが好ましい。また、板厚は、熱容量を小さくするためには薄い方が好ましく、3mm以下が好ましいが、薄すぎると強度が低下するため0.1mm以上が好ましい。厚さ3mmを超えると温度上昇がほとんどなく断熱されない。3mm以下から2mmを超えた範囲では緩やかに昇温しており断熱効果が現れている。2mm以下1mmまでの範囲では、昇温速度がより上昇し、断熱効果が早く現れる。1mm以下0.8mmを超えるまでの範囲ではより昇温に要する時間が短くなり、0.8mm以下、0.4mmを超えるまでの範囲、0.4mm以下0.2mmを超えるまでの範囲、0.2mm以下、0.1mmまでの範囲の順番で昇温速度が向上する。
【0013】
排気管はエンジン周りの取り回しのために湾曲されることが多いが、本発明の自動車用排気管1では排気管本体10に円筒体20を挿入した状態で湾曲するため、円筒体20が薄すぎると湾曲した際に引っ張られて破れるおそれがある。
【0014】
排気管本体10と円筒体20との間隔は1〜30mmが好ましく、排気管本体10の管径に応じて適宜選択される。排気ガスは円筒体20の内部を流通し、排気管本体10と円筒体20との隙間には空気層が形成されて断熱に寄与するが、間隔が30mmより大きくなると空気層の対流が起こって断熱性能が低下する。一方、1mmより間隔が小さくなると空気層が少なくなり、同様に断熱性能が低下する。
【0015】
また、円筒体20に開口を形成することにより、熱容量を更に低減することができる。その際の開口率、即ち円筒体20の面積に対する開口の総面積の割合は大きい方が円筒体全体としての密度が小さくなり、熱容量が小さくなる。しかし、開口率が大きくなるほど、空気層内の空気と高温排気ガスとの熱交換が起きて、空気層と円筒体が形成する開部空間との区別がなくなり、断熱性を重視する場合に不利となる。また、開口率が大きくなるほど、円筒体全体としての強度も低下する。そのため、開口率は95%以下とする。好ましい開口率は55%以下である。
【0016】
このような開口率を満足する限り、開口の形状には制限はなく、例えば図2に示すような種々の形状の開口21を形成することができる。また、開口21は無定形であってもよい。但し、個々の開口21が大きくなると、排気ガスが開口21を通じて排気管本体10に接するようになるため、小さな開口21が多数形成されている方が好ましい。
【0017】
尚、開口21が形成された円筒体20を製造するには、開口21が開けられた金属薄板(1〜3mm)を円筒状に丸め、長手方向の両端同士を突き合わせて溶接すればよい。開口21が開けられた金属薄板(1〜3mm)として、金属線を網目状に編んだメッシュメタルやエキスパンドメタル、パンチングメタルと呼ばれる市販品を使用することもできる。
【0018】
上記の自動車用排気管1を製造するには、円筒体20を適当な箇所で局所的に拡径したり、円筒体20の外周面に適当な間隔でリング状のスペーサを固定しておき、排気管本体10に挿通させればよい。また、両端部において、排気管本体10と円筒体20との隙間は、開放したままでもよいが、スペーサで閉塞することにより、隙間開放部分からの輻射および対流による伝熱を防止することができる。
【0019】
また、上記の自動車用排気管1には、図3に示すように、その内壁に円筒体20と接しない厚さで断熱材30を付設することもできる。断熱材30を付設することにより、排気管本体10を通じて外部に放出される熱が少なくなり、より断熱性能に優れるようになる。但し、排気管本体10と円筒体20との隙間が無くなると、両者の間に形成される空気層による断熱効果が発現しなくなる。好ましくは、排気管本体10と円筒体20との間隔の5〜95%となる厚さが好ましい。
【0020】
断熱材30は無機材料からなることが好ましく、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウール等の無機繊維を無機バインダー、あるいは少量の有機バインダーで結着したものを使用できる。また、ケイ酸カルシウム、マイクロポーラス、ナノ粒子材等を含有してもよい。更に、断熱材30の密度は、断熱性能から10〜300kg/m3が好ましい。尚、断熱材30と排気管本体10の内壁との接合は、適当な接着剤を用いることもできるし、断熱材30が円筒体の場合は接着剤を用いることなく、排気管本体10に内挿してもよい。後者の場合、接着剤由来のアウトガスの発生が無く、好ましい。
【0021】
更に、上記の自動車用排気管1には、図4に示すように、円筒体20の外周面に、排気管本体10の内壁に接しない厚さで断熱材30を付設してもよい。具体的には、断熱材30は、上記と同様に、排気管本体10と円筒体20との間隔の5〜95%となる厚さにすることが好ましい。
【0022】
更に、上記の自動車用排気管1には、図5に示すように、円筒体20の内壁に、円筒体20を閉塞しない厚さで断熱材30を付設してもよい。具体的には、断熱材30は、円筒体20の内径の5〜95%となる厚さにすることが好ましい。
【実施例】
【0023】
(試験1)
下記の条件にて、円筒体の中を流れるガス温度の時間変化をシミュレーションした。
・円筒体:板厚0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.2mm、3.5mm、5.0mm、7.5mm、10.0mmのステンレス管、開口なし、外径38.1mm
・外気温:25℃
・ガス温度:450℃
【0024】
シミュレーション結果を図6〜8に示すが、円筒体が薄くなるほど昇温速度が高くなっており、これは熱容量が小さい方が好ましいことを示している。特に板厚が3mm以下で好ましい結果が得られている。
【0025】
(試験2)
(A)円筒体(外径38.1mm、板厚1.2mmのステンレス管、開口率0%)のみ、(B)図1に示すように、円筒体(板厚0.4mmのステンレス製パンチングメタル管、開口率32.6%、外径38.1mm)を付設したもの、(C)図4に示すように(B)と同様の円筒体を付設し、更に円筒体の外周面に断熱材(厚さ3mm、密度200kg/m3のガラス繊維製)を付設したもの、(D)図3に示すように(B)と同様の円筒体を付設したものを用意した。
【0026】
そして、夫々に500℃の加熱空気を流通させ、出口温度を測定し、外気温(25℃一定)との差を求めた。流通時間は100秒間であり、その間の変化を図9に示す。本発明に従う(B)〜(D)は、排気管本体のみ(A)に比べて昇温速度が高まるのがわかる。また、円筒体に加えて断熱材を付設した(C)、(D)では特に昇温速度が速くなっている。
【0027】
(試験3)
円筒体の径が変わった場合のガス温度の時間変化を調べ、その結果を図10〜図19に示した。即ち、排気管本体として、直径48.6mm、101.6mm、216.3mmの3種類を用意し、それぞれの内側に厚さ0.1mm、0.4mm、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、3.0mm、3.5mm、5.0mm、10.0mmの円筒体を用意し、温度450℃のガスを円筒体に流し、出口での温度を測定した。その結果、図示されるように、厚さ3mmを超えると各径の配管で時間に伴う温度変化が全く無い結果となり断熱効果がないことが確認された。
【0028】
(試験4)
図5に示すように、円筒体(板厚0.4mmのステンレス製パンチングメタル管、開口率32.6%、外径38.1mm)の内壁に断熱材(厚さ3mm、密度200kg/m3のガラス繊維製)を付設し、排気管本体(内径46.2mm、板厚1.2mmのステンレス管)と同軸に配置した。そして、試験2と同様にして出口温度を測定し、外気温度(25℃)との温度差を求めた。結果を図20に示すが、図中のプロット(E)が円筒体の内壁に断熱材を付設した結果である。また、比較のために、試験2におけるプロット(A)〜(D)も示してある。
【0029】
図示されるように、円筒体の内壁に断熱材を付設した(E)は、(C)、(D)に比べてさらに昇温速度が速くなっている。
【符号の説明】
【0030】
1 自動車用排気管
10 排気管本体
20 円筒体
21 開口
30 断熱材
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用排気管に関し、特にその断熱性能を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車エンジンの排気ガスは、排気管を通って触媒コンバータに送られ、触媒コンバータで大気汚染物質を除去した後にマフラーから大気中に放出される。触媒コンバータでは、触媒を活性化温度まで短時間で昇温させる観点から、流入してくる排気ガスの温度が高いことが望まれている。そのため、排気ガスがエンジンから触媒コンバータに至るまでの間の温度低下を防ぐために、排気管の断熱が行われている。また、排気ガスを再度吸気側に送る熱回収機構の配管でも、エンジンの急速暖機を行うために同様の断熱が行われている。
【0003】
排気管の断熱構造としては排気管に断熱材を巻装することが一般的であるが、断熱性能を高めようとすると断熱材も厚くなり、スペース増となる。また、排気管と外管との間に空気層を介在させた二重管構造も知られており、例えば特許文献1では、金属線材を排気管に螺旋状に巻き付けてスペーサとし、外管を被嵌している。本出願人も先に、特許文献2において、排気管の外周面に任意の間隔でリング状のスペーサを固着し、金属箔の内面にガラスクロスを接合した可撓性の外管を装着することを提案している。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の2重管構造では、排気管並びに金属線材やスペーサがある程度の熱容量を持つため、排気ガスの熱が排気管や金属線材、スペーサ等に吸収され、排気ガスの温度低下を招いている。そのため、排気ガスが排気管内に流入し始めると、急激に排気ガス温度が低下する。その後、排気管および金属線材、スペーサ等が温まるにつれて排気ガス温度も徐々に上昇し、ある程度の時間を要してから、排気ガスの温度が一定となる。しかしながら、排気管およびその周辺の材料の熱容量が大きいほど、排気ガス温度が一定になる時間は長く、また、一定となった排気ガス温度(到達温度)も、低い値となってしまう。さらに、空間的にも、2重構造にすることで外管の分だけスペース増となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−228055号公報
【特許文献2】特開2004−285849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景に鑑み、スペースの増加もなく、排気ガスによる昇温までの時間をこれまでよりも短縮し、到達温度も高く保てる自動車用排気管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、下記の自動車用排気管を提供する。
(1)排気管本体の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。
(2)排気管本体と円筒体との間隔が1〜30mmであることを特徴とする上記(1)記載の自動車用排気管。
(3)両端面かどちらか一方の端面において、排気管本体と円筒体との隙間が閉塞されていることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の自動車用排気管。
(4)排気管本体の内壁に、円筒体に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
(5)円筒体の外周面に、排気管本体の内壁に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
(6)円筒体の内壁に、該円筒体を閉塞しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車用排気管では、排気管本体の内部に挿入した円筒体が金属薄板からなり、その熱容量が小さいため、内部を流れる排気ガスの熱により、容易にその円筒体の温度が上昇し、排気ガスと円筒体の温度差が小さくなり、排気ガスから円筒体への放熱が抑えられる。そのため、排気管本体のみからなる場合に比べて、昇温に要する時間が大幅に短縮される。このような効果は、排気管本体の内壁に、排気管本体に接しない厚さで断熱材を付設することにより更に向上する。しかも、円筒体、更には断熱材を排気管本体の内部に挿入しただけであるため、スペース増にもならない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の自動車用排気管を示す断面図である。
【図2】円筒体の開口形状の例を示す平面図である。
【図3】本発明の自動車用排気管の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明の自動車用排気管の更に他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の自動車用排気管の更に他の例を示す断面図である。
【図6】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図7】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】試験1のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図9】試験2の結果を示すグラフである。
【図10】試験3において、板厚0.1mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図11】試験3において、板厚0.4mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図12】試験3において、板厚0.8mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図13】試験3において、板厚1.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図14】試験3において、板厚1.5mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図15】試験3において、板厚2.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図16】試験3において、板厚3.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図17】試験3において、板厚3.5mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図18】試験3において、板厚5.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図19】試験3において、板厚10.0mmの円筒体を用いた結果を示すグラフである。
【図20】試験4の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の自動車用排気管について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の自動車用排気管1を示す断面図であるが、図示されるように、本来の排気管である排気管本体10の内部に、金属の薄板(1〜3mm)からなる円筒体20を所定距離離間させて配設したものである。円筒体20は排気管本体10の内側に配設されるため、排気管本体10に断熱材を巻装したり、排気管と排気管本体10とさらに外側の管との2重管構造としたときのようなスペース増を招くことはない。
【0012】
円筒体20は、熱容量が小さく、排気ガスによる劣化も少なく、また安価であることなどからアルミニウム製、鉄製、チタン製またはステンレス製であることが好ましい。また、板厚は、熱容量を小さくするためには薄い方が好ましく、3mm以下が好ましいが、薄すぎると強度が低下するため0.1mm以上が好ましい。厚さ3mmを超えると温度上昇がほとんどなく断熱されない。3mm以下から2mmを超えた範囲では緩やかに昇温しており断熱効果が現れている。2mm以下1mmまでの範囲では、昇温速度がより上昇し、断熱効果が早く現れる。1mm以下0.8mmを超えるまでの範囲ではより昇温に要する時間が短くなり、0.8mm以下、0.4mmを超えるまでの範囲、0.4mm以下0.2mmを超えるまでの範囲、0.2mm以下、0.1mmまでの範囲の順番で昇温速度が向上する。
【0013】
排気管はエンジン周りの取り回しのために湾曲されることが多いが、本発明の自動車用排気管1では排気管本体10に円筒体20を挿入した状態で湾曲するため、円筒体20が薄すぎると湾曲した際に引っ張られて破れるおそれがある。
【0014】
排気管本体10と円筒体20との間隔は1〜30mmが好ましく、排気管本体10の管径に応じて適宜選択される。排気ガスは円筒体20の内部を流通し、排気管本体10と円筒体20との隙間には空気層が形成されて断熱に寄与するが、間隔が30mmより大きくなると空気層の対流が起こって断熱性能が低下する。一方、1mmより間隔が小さくなると空気層が少なくなり、同様に断熱性能が低下する。
【0015】
また、円筒体20に開口を形成することにより、熱容量を更に低減することができる。その際の開口率、即ち円筒体20の面積に対する開口の総面積の割合は大きい方が円筒体全体としての密度が小さくなり、熱容量が小さくなる。しかし、開口率が大きくなるほど、空気層内の空気と高温排気ガスとの熱交換が起きて、空気層と円筒体が形成する開部空間との区別がなくなり、断熱性を重視する場合に不利となる。また、開口率が大きくなるほど、円筒体全体としての強度も低下する。そのため、開口率は95%以下とする。好ましい開口率は55%以下である。
【0016】
このような開口率を満足する限り、開口の形状には制限はなく、例えば図2に示すような種々の形状の開口21を形成することができる。また、開口21は無定形であってもよい。但し、個々の開口21が大きくなると、排気ガスが開口21を通じて排気管本体10に接するようになるため、小さな開口21が多数形成されている方が好ましい。
【0017】
尚、開口21が形成された円筒体20を製造するには、開口21が開けられた金属薄板(1〜3mm)を円筒状に丸め、長手方向の両端同士を突き合わせて溶接すればよい。開口21が開けられた金属薄板(1〜3mm)として、金属線を網目状に編んだメッシュメタルやエキスパンドメタル、パンチングメタルと呼ばれる市販品を使用することもできる。
【0018】
上記の自動車用排気管1を製造するには、円筒体20を適当な箇所で局所的に拡径したり、円筒体20の外周面に適当な間隔でリング状のスペーサを固定しておき、排気管本体10に挿通させればよい。また、両端部において、排気管本体10と円筒体20との隙間は、開放したままでもよいが、スペーサで閉塞することにより、隙間開放部分からの輻射および対流による伝熱を防止することができる。
【0019】
また、上記の自動車用排気管1には、図3に示すように、その内壁に円筒体20と接しない厚さで断熱材30を付設することもできる。断熱材30を付設することにより、排気管本体10を通じて外部に放出される熱が少なくなり、より断熱性能に優れるようになる。但し、排気管本体10と円筒体20との隙間が無くなると、両者の間に形成される空気層による断熱効果が発現しなくなる。好ましくは、排気管本体10と円筒体20との間隔の5〜95%となる厚さが好ましい。
【0020】
断熱材30は無機材料からなることが好ましく、ガラス繊維やシリカ繊維、アルミナ繊維、ロックウール等の無機繊維を無機バインダー、あるいは少量の有機バインダーで結着したものを使用できる。また、ケイ酸カルシウム、マイクロポーラス、ナノ粒子材等を含有してもよい。更に、断熱材30の密度は、断熱性能から10〜300kg/m3が好ましい。尚、断熱材30と排気管本体10の内壁との接合は、適当な接着剤を用いることもできるし、断熱材30が円筒体の場合は接着剤を用いることなく、排気管本体10に内挿してもよい。後者の場合、接着剤由来のアウトガスの発生が無く、好ましい。
【0021】
更に、上記の自動車用排気管1には、図4に示すように、円筒体20の外周面に、排気管本体10の内壁に接しない厚さで断熱材30を付設してもよい。具体的には、断熱材30は、上記と同様に、排気管本体10と円筒体20との間隔の5〜95%となる厚さにすることが好ましい。
【0022】
更に、上記の自動車用排気管1には、図5に示すように、円筒体20の内壁に、円筒体20を閉塞しない厚さで断熱材30を付設してもよい。具体的には、断熱材30は、円筒体20の内径の5〜95%となる厚さにすることが好ましい。
【実施例】
【0023】
(試験1)
下記の条件にて、円筒体の中を流れるガス温度の時間変化をシミュレーションした。
・円筒体:板厚0.1mm、0.2mm、0.4mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.2mm、3.5mm、5.0mm、7.5mm、10.0mmのステンレス管、開口なし、外径38.1mm
・外気温:25℃
・ガス温度:450℃
【0024】
シミュレーション結果を図6〜8に示すが、円筒体が薄くなるほど昇温速度が高くなっており、これは熱容量が小さい方が好ましいことを示している。特に板厚が3mm以下で好ましい結果が得られている。
【0025】
(試験2)
(A)円筒体(外径38.1mm、板厚1.2mmのステンレス管、開口率0%)のみ、(B)図1に示すように、円筒体(板厚0.4mmのステンレス製パンチングメタル管、開口率32.6%、外径38.1mm)を付設したもの、(C)図4に示すように(B)と同様の円筒体を付設し、更に円筒体の外周面に断熱材(厚さ3mm、密度200kg/m3のガラス繊維製)を付設したもの、(D)図3に示すように(B)と同様の円筒体を付設したものを用意した。
【0026】
そして、夫々に500℃の加熱空気を流通させ、出口温度を測定し、外気温(25℃一定)との差を求めた。流通時間は100秒間であり、その間の変化を図9に示す。本発明に従う(B)〜(D)は、排気管本体のみ(A)に比べて昇温速度が高まるのがわかる。また、円筒体に加えて断熱材を付設した(C)、(D)では特に昇温速度が速くなっている。
【0027】
(試験3)
円筒体の径が変わった場合のガス温度の時間変化を調べ、その結果を図10〜図19に示した。即ち、排気管本体として、直径48.6mm、101.6mm、216.3mmの3種類を用意し、それぞれの内側に厚さ0.1mm、0.4mm、0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、3.0mm、3.5mm、5.0mm、10.0mmの円筒体を用意し、温度450℃のガスを円筒体に流し、出口での温度を測定した。その結果、図示されるように、厚さ3mmを超えると各径の配管で時間に伴う温度変化が全く無い結果となり断熱効果がないことが確認された。
【0028】
(試験4)
図5に示すように、円筒体(板厚0.4mmのステンレス製パンチングメタル管、開口率32.6%、外径38.1mm)の内壁に断熱材(厚さ3mm、密度200kg/m3のガラス繊維製)を付設し、排気管本体(内径46.2mm、板厚1.2mmのステンレス管)と同軸に配置した。そして、試験2と同様にして出口温度を測定し、外気温度(25℃)との温度差を求めた。結果を図20に示すが、図中のプロット(E)が円筒体の内壁に断熱材を付設した結果である。また、比較のために、試験2におけるプロット(A)〜(D)も示してある。
【0029】
図示されるように、円筒体の内壁に断熱材を付設した(E)は、(C)、(D)に比べてさらに昇温速度が速くなっている。
【符号の説明】
【0030】
1 自動車用排気管
10 排気管本体
20 円筒体
21 開口
30 断熱材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管本体の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。
【請求項2】
排気管本体と円筒体との間隔が1〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の自動車用排気管。
【請求項3】
両端面またはどちらか一方の端面において、排気管本体と円筒体との隙間が閉塞されていることを特徴とする請求項1または2記載の自動車用排気管。
【請求項4】
円筒体の外周面に、円筒体の内壁に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【請求項5】
排気管本体の内壁に、円筒体に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【請求項6】
円筒体の内壁に、該円筒体を閉塞しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【請求項1】
排気管本体の内部に、開口率95%以下の割合で開口が形成されており板厚が3mm以下の金属製円筒体を挿入したことを特徴とする自動車用排気管。
【請求項2】
排気管本体と円筒体との間隔が1〜30mmであることを特徴とする請求項1記載の自動車用排気管。
【請求項3】
両端面またはどちらか一方の端面において、排気管本体と円筒体との隙間が閉塞されていることを特徴とする請求項1または2記載の自動車用排気管。
【請求項4】
円筒体の外周面に、円筒体の内壁に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【請求項5】
排気管本体の内壁に、円筒体に接しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【請求項6】
円筒体の内壁に、該円筒体を閉塞しない厚さで断熱材が付設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車用排気管。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−64192(P2011−64192A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81803(P2010−81803)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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