自動車用放電ランプ
【課題】光源として1個の発光管を反射鏡の光軸に沿って前後動させることによってロービーム配光とハイビーム配光とを切り替えるように構成した自動車用放電ランプにおいては、ハイビーム照射時に発光管の下半部に照射された光はシールド板によって遮蔽されて利用されないため、ハイビーム配光の照射面積が狭くなって暗く感じられるという問題があった。
【解決手段】発光管の下半部を取り囲む位置に三次元曲面を含む反射体を配置しておき、前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあってハイビームを発生させるときに、前記発光部から下方に放射された光を前記三次元曲面を含む反射体でロービームが形成されるように前記凹面反射鏡の方向に反射させて、前記ハイビームにロービームを重ね合わせて照射することにより照射面積の広いハイビーム配光を得る。
【解決手段】発光管の下半部を取り囲む位置に三次元曲面を含む反射体を配置しておき、前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあってハイビームを発生させるときに、前記発光部から下方に放射された光を前記三次元曲面を含む反射体でロービームが形成されるように前記凹面反射鏡の方向に反射させて、前記ハイビームにロービームを重ね合わせて照射することにより照射面積の広いハイビーム配光を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に自動車の前照灯用の光源として1個の発光管を反射鏡の光軸に沿って前後動させることによってロービーム(すれ違い用ビーム)配光とハイビーム(走行用ビーム)配光とを切り替えるように構成した、自動車用放電ランプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、H4型と称される自動車用ハロゲン電球に対応して、HIDランプ(高光度放電ランプ)を用いた自動車用放電ランプが実用化されている。
【0003】
H4型と称される自動車用ハロゲン電球は、一般的に図7Aに示すように、口金71を備えた石英バルブ72内の中心軸上にロービーム配光を得るための白熱フィラメント73とハイビーム配光を得るための白熱フィラメント74とを前後に配列し、かつ前記白熱フィラメント73と白熱フィラメント74の境界部から前記白熱フィラメント73の周囲下半部を覆うシールド板75を設けた構造となっている。前記石英バルブ72の内部にはアルゴンのような不活性ガスとともに適量のハロゲンが封入されている。かかる構造のハロゲン電球を凹面反射鏡に装着して前記白熱フィラメント73を点灯すると図7Bのようなロービーム配光が得られ、前記白熱フィラメント74を点灯すると図7Cのようなハイビーム配光が得られる。このハロゲン電球の特長は、白熱フィラメント74を点灯した場合に該白熱フィラメント74から放射された光は遮蔽物がないため全て有効に利用されるので、照射面積の広いハイビーム配光が得られるという点にある。
【0004】
これに対して、前記H4型のハロゲン電球に対応する、HIDランプを用いた自動車用放電ランプは、例えば特許第3763036号公報や特開2006−147427号公報に開示されているように、一般的に次のような構造となっている。すなわち、図8A乃至図8Cに示すように、1個の発光管81とその外管82を一体化したバーナー83を口金84に対して前後動可能に取り付けるとともに、バーナーの周囲下半部に略半円筒状のシールド板85を設置した構造となっている。86は前記バーナーの前端部に配置したトップキャップである。また、前記シールド板85の口金84側の端部にはスリット87が設けてある。このスリット87は前記バーナー83の前後動に連動するシャッター88によって開閉されるようになっている。かかる構造の放電ランプを凹面反射鏡に装着して前記発光管81を点灯した場合、図8Bに示すように前記発光管81が前方の位置Aにあるときは図8Dのようなロービーム配光が得られ、図8Cに示すように前記発光管81を後方の位置Bに移動させたときは図8Eのようなハイビーム配光が得られる。なお、前記スリット87は、前記発光管81が位置Aにあるときは前記シャッター88によって閉じられており、発光管81が位置Bにあるときは開いている。したがって、前記スリット87から外部に照射された光はハイビーム配光の形成に寄与する。
【0005】
しかしながら、前記のような従来の自動車用放電ランプにおいては、1個の発光管を反射鏡の光軸に沿って異なった位置に移動させることによりロービーム配光とハイビーム配光を得るようになっているため、前記ハロゲン電球のように一方の光源(白熱フィラメント)のみをシールド板で取り囲む構造を採用することはできない。そこで、発光管の周囲下半部全体に亘ってシールド板を設けて、ロービーム配光を得ることを優先させ、ハイビーム配光をある程度犠牲にするような遮光制御を行っている。このため、ロービーム配光は図8Dのようにハロゲン電球の場合と同様に広い照射面積となるが、ハイビーム配光は図8Eのように照射面積がせまくなってしまい、明るさの点でもの足りなく感じられる。シールド板の一部にスリットを設けてハイビーム配光を補足する手段を採った場合でも大きな改善は得られない。
【特許文献1】特許第3763036号公報
【特許文献2】特開2006−147427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はH4型の自動車用ハロゲン電球に対応する、HIDランプを用いた自動車用放電ランプであって、ロービーム配光の照射面積ばかりでなく、ハイビーム配光の照射面積を広くして、何れの配光においても十分な明るさが得られるようにした自動車用放電ランプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するために、水平方向の光軸を有する凹面反射鏡に装着される自動車用放電ランプを次のように構成する。すなわち、中央に発光部を有し両端にシール部を有していてその長手方向の中心軸を前記凹面反射鏡の光軸に一致させて配置した発光管と、前記発光管の発光部から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム配光を形成することとなる前記光軸の前方の位置から、ハイビーム配光を形成することとなる前記光軸の後方の位置に前記発光部の位置を移動させ得るように、前記発光管を前後動可能に保持する口金と、前記発光管の下半部を取り囲む位置に配置されていて前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあるときに該発光部から下方に放射された光をロービーム配光が形成されることとなる反射鏡面の方向に反射させる三次元曲面を含む光線反射体と、を備えた構成にすることを特徴とする。つまり、発光管の下半部を取り囲む位置に三次元曲面を含む光線反射体を設置しておき、発光管の発光部が凹面反射鏡の光軸の後方にあるとき即ちハイビーム配光を形成することとなる場合に、前記発光部から下方に放射された光を、前記三次元曲面を含む光線反射体によってロービーム配光が形成されることとなる反射鏡面の方向に反射させるように構成してある。かかる構成によって、ハイビーム配光が形成されているときに、従来はシールド板によって遮蔽されて無駄になっていた発光部から下方に放射される光を、三次元曲面を含む光線反射体で反射させてロービームをも発生させ、これをハイビームと一緒に照射することにより照射面積の広い配光が得られるようにしたものである。
【0008】
また、本発明では、前記三次元曲面を含む光線反射体は、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダーに設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記ガラスシリンダーの一部を三次元曲面に成形加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより、三次元曲面を含む光線反射体を形成したことを特徴とする
【0010】
さらに、前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属蒸着膜であることを特徴としている。
【0011】
なお、前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体は金属板であってもよい。
【0012】
また、前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板で形成されており、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダーの内部に固定されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、発光管の外側にガラスシリンダーを設けずに、前記三次元曲面を含む光線反射体を金属板又は耐熱性樹脂で形成したうえ、これを外部に露出した状態で前記口金に固定した構造を採用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、1個の発光管の発光部を反射鏡の光軸に沿って前後動させることによってロービーム配光とハイビーム配光とを切り替えるように構成した自動車用放電ランプにおいて、ハイビーム配光のときに、本来はシールド板によって遮蔽されて無駄になる光を、三次元曲面を含む光線反射体によって凹面反射鏡に当ててロービームを発生させ、これをハイビームと一緒にして照射するようにしたので、広い照射面積のハイビーム配光が得られる。
【実施例1】
【0015】
図1A乃至図1Cは本発明に係る自動車用放電ランプの最も典型的は実施例を示すもので、図中、11は放電ランプの発光管であって、中央に発光部12を有し両端にシール部13を有していて、その長手方向の中心軸を図示していない凹面反射鏡の光軸X−Xに一致させて配置する。14は前記発光管11を前記凹面反射鏡の底部に保持する口金である。この口金14は、前記発光管11の発光部12から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム(配光)を形成することとなる前記光軸X−Xの前方の位置Aから、ハイビーム(配光)を形成することとなる前記光軸X−Xの後方の位置Bに前記発光部12の位置を移動させ得るように、前記発光管11を前後動可能に保持する。15は前記発光管11の下半部を取り囲む位置に配置された三次元曲面を含む光線反射体である。この光線反射体15は、前記発光管11の発光部12が前記光軸X−Xの後方の位置Bにあるとき、つまりハイビームが発生されているときに、前記発光部12から下方に放射された光を前記凹面反射鏡の方向に反射させてロービームを発生させ、これを前記ハイビームと一緒に照射させることにより、前記ハイビームの照射面積を広げる作用をする。
【0016】
この実施例では、前記三次元曲面を含む光線反射体15は、発光管11の外側に該発光管11の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダー16に設けられている。このガラスシリンダー16は、従来発光管11のシール部13に一体的に固定されていた外管とは異なって、前記発光管11の前後動とは関係なく口金14に独立して固定されている。前記反射体15は、前記ガラスシリンダー16の一部を加熱成形などの手段によって三次元曲面に加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより構成してある。前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体は金属蒸着膜でもよいし、プレス加工した金属板であってもよい。かかる光線反射体15は、発光管11の周囲方向に対しては図1BのE1で示す範囲に形成され、発光管11の長手方向に対しては図1CのLで示す範囲に形成される。前記ガラスシリンダー16の口金14側の下半部のうち前記光線反射体15が形成されていない部分17はスリットと同様の役割を果たす。なお、18はガラスシリンダー16の先端部に装着したトップキャップである。
【0017】
図2は図1に示した実施例の変形例を示すもので、ガラスシリンダー16の口金14側の下半部全体にわたって光線反射体15を形成した構成としてある。かかる構成では発光管11の発光部12が前記光軸X−Xの後方の位置Bにあるとき、つまりハイビームが発生されているときに、前記発光部12から下方に放射された光がスリットを通してハイビーム配光を補足することはないが、前記三次元曲面を含む光線反射体によってロービームが補足されるため、ハイビーム配光時の照射面積を広くすることができる。
【0018】
図3Aは図1A乃至図1Cに示した実施例において、発光管11の発光部12が凹面反射鏡の光軸X−Xの前方の位置Aにある状態を示している。この状態では、発光部12から上方に放射された光は、図3Bに示すように凹面反射鏡19によって反射されてロービームが形成される。図3Cはロービーム配光の形状を示したものである。また、この状態で発光部12から下方に放射された光は、図3Aに示すように三次元曲面を含む光線反射体15によって主として口金14の方向に向けてE2の範囲に反射される。この範囲の光はロービームの形成に何ら影響を与えない。
【0019】
これに対して、図4Aは図1A乃至図1Cに示した実施例において、発光管11の発光部12が凹面反射鏡の光軸X−Xの後方の位置Bにある状態を示している。この状態では、発光部12から上方に放射された光は、図4Bに示すように凹面反射鏡19によって反射されてハイビームが形成される。また、この状態で発光部12から下方に放射された光は、図4Aに示すように三次元曲面を含む光線反射体15によって主としてE3の範囲に反射される。この範囲に照射された光は図4Bのように凹面反射鏡19によって反射されてロービームを形成する。そしてこのロービームは前記ハイビーム一緒になって照射されることになるため、ハイビーム発生時の配光パターンは図4Cに示すように広い範囲のものとなる。
【0020】
尚、本発明で記載する自動車は四輪車、二輪車等を含み、又、自転車、電車、航空機、船舶などの乗物用光源としても利用する事が出来る。
【実施例2】
【0021】
図5は本発明の別の実施例を示すもので、三次元曲面を含む光線反射体15を金属板で形成したうえ、これを、発光管11の外側に該発光管11の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダー16の内部に固定した構成としてある。光線反射体15はガラスシリンダー16に設けた孔にカシメ付けることにより、あるいは耐熱性接着剤を用いて固定することができる。この構成の利点はガラスシリンダー16の変形加工を要しないことと、必要な反射特性を有する光線反射体を備えたガラスシリンダーを交換できることである。
【実施例3】
【0022】
図6は本発明の更に別の実施例を示すもので、三次元曲面を含む光線反射体15を金属板又は耐熱性樹脂で形成したうえ、これを外部に露出した状態で前記口金14に固定した構成としてある。かかる構成の利点はガラスシリンダーを省略して部品点数を少なくできることである。
【0023】
なお、本発明においては、発光管11はシール部13に固定される外管なしで前記口金14に保持されていることを特徴とする。このような構成によって、より小さい駆動力によって発光管11を前後動させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、主に自動車の前照灯用の光源として、産業上、広く利用する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明に係る自動車用放電ランプの斜視図
【図1B】本発明に係る自動車用放電ランプの正面図
【図1C】本発明に係る自動車用放電ランプの一部切断側面図
【図2】図1A乃至図1Cに示す自動車用放電ランプの一部変形例の斜視図
【図3A】図1Cにおいて発光管がロービームを発生させる位置にあるときの三次元曲面反射体からの反射光の光路図
【図3B】図1Cにおいて発光管がロービームを発生させる位置にあるときの凹面反射鏡からの反射光の光路図
【図3C】図3Bに示すようなロービームの照射面の配光パターン図
【図4A】図1Cにおいて発光管がハイビームを発生させる位置にあるときの三次元曲面反射体からの反射光の光路図
【図4B】図1Cにおいて発光管がハイビームを発生させる位置にあるときの凹面反射鏡からの反射光の光路図
【図4C】図4Bに示すようなハイビームの照射面の配光パターン図
【図5】本発明の第2実施例の斜視図
【図6】本発明の第3実施例の斜視図
【図7A】従来のH4型ハロゲン電球の斜視図
【図7B】図7Aのハロゲン電球におけるロービーム照射面の配光パターン図
【図7C】図7Aのハロゲン電球におけるハイビーム照射面の配光パターン図
【図8A】H4型ハロゲン電球に対応する従来の自動車用放電ランプの斜視図
【図8B】図8Aに示す放電ランプでロービームを発生させる状態の側面図
【図8C】図8Aに示す放電ランプでハイビームを発生させる状態の側面図
【図8D】図8Bに示す放電ランプからロービームを発生させたときの配光パターン図
【図8E】図8Cに示す放電ランプからハイビームを発生させたときの配光パターン図
【符号の説明】
【0026】
11: 発光管
12: 発光部
13: シール部
14: 口金
15: 光線反射体
16: ガラスシリンダー
18: トップキャップ
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に自動車の前照灯用の光源として1個の発光管を反射鏡の光軸に沿って前後動させることによってロービーム(すれ違い用ビーム)配光とハイビーム(走行用ビーム)配光とを切り替えるように構成した、自動車用放電ランプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、H4型と称される自動車用ハロゲン電球に対応して、HIDランプ(高光度放電ランプ)を用いた自動車用放電ランプが実用化されている。
【0003】
H4型と称される自動車用ハロゲン電球は、一般的に図7Aに示すように、口金71を備えた石英バルブ72内の中心軸上にロービーム配光を得るための白熱フィラメント73とハイビーム配光を得るための白熱フィラメント74とを前後に配列し、かつ前記白熱フィラメント73と白熱フィラメント74の境界部から前記白熱フィラメント73の周囲下半部を覆うシールド板75を設けた構造となっている。前記石英バルブ72の内部にはアルゴンのような不活性ガスとともに適量のハロゲンが封入されている。かかる構造のハロゲン電球を凹面反射鏡に装着して前記白熱フィラメント73を点灯すると図7Bのようなロービーム配光が得られ、前記白熱フィラメント74を点灯すると図7Cのようなハイビーム配光が得られる。このハロゲン電球の特長は、白熱フィラメント74を点灯した場合に該白熱フィラメント74から放射された光は遮蔽物がないため全て有効に利用されるので、照射面積の広いハイビーム配光が得られるという点にある。
【0004】
これに対して、前記H4型のハロゲン電球に対応する、HIDランプを用いた自動車用放電ランプは、例えば特許第3763036号公報や特開2006−147427号公報に開示されているように、一般的に次のような構造となっている。すなわち、図8A乃至図8Cに示すように、1個の発光管81とその外管82を一体化したバーナー83を口金84に対して前後動可能に取り付けるとともに、バーナーの周囲下半部に略半円筒状のシールド板85を設置した構造となっている。86は前記バーナーの前端部に配置したトップキャップである。また、前記シールド板85の口金84側の端部にはスリット87が設けてある。このスリット87は前記バーナー83の前後動に連動するシャッター88によって開閉されるようになっている。かかる構造の放電ランプを凹面反射鏡に装着して前記発光管81を点灯した場合、図8Bに示すように前記発光管81が前方の位置Aにあるときは図8Dのようなロービーム配光が得られ、図8Cに示すように前記発光管81を後方の位置Bに移動させたときは図8Eのようなハイビーム配光が得られる。なお、前記スリット87は、前記発光管81が位置Aにあるときは前記シャッター88によって閉じられており、発光管81が位置Bにあるときは開いている。したがって、前記スリット87から外部に照射された光はハイビーム配光の形成に寄与する。
【0005】
しかしながら、前記のような従来の自動車用放電ランプにおいては、1個の発光管を反射鏡の光軸に沿って異なった位置に移動させることによりロービーム配光とハイビーム配光を得るようになっているため、前記ハロゲン電球のように一方の光源(白熱フィラメント)のみをシールド板で取り囲む構造を採用することはできない。そこで、発光管の周囲下半部全体に亘ってシールド板を設けて、ロービーム配光を得ることを優先させ、ハイビーム配光をある程度犠牲にするような遮光制御を行っている。このため、ロービーム配光は図8Dのようにハロゲン電球の場合と同様に広い照射面積となるが、ハイビーム配光は図8Eのように照射面積がせまくなってしまい、明るさの点でもの足りなく感じられる。シールド板の一部にスリットを設けてハイビーム配光を補足する手段を採った場合でも大きな改善は得られない。
【特許文献1】特許第3763036号公報
【特許文献2】特開2006−147427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はH4型の自動車用ハロゲン電球に対応する、HIDランプを用いた自動車用放電ランプであって、ロービーム配光の照射面積ばかりでなく、ハイビーム配光の照射面積を広くして、何れの配光においても十分な明るさが得られるようにした自動車用放電ランプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するために、水平方向の光軸を有する凹面反射鏡に装着される自動車用放電ランプを次のように構成する。すなわち、中央に発光部を有し両端にシール部を有していてその長手方向の中心軸を前記凹面反射鏡の光軸に一致させて配置した発光管と、前記発光管の発光部から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム配光を形成することとなる前記光軸の前方の位置から、ハイビーム配光を形成することとなる前記光軸の後方の位置に前記発光部の位置を移動させ得るように、前記発光管を前後動可能に保持する口金と、前記発光管の下半部を取り囲む位置に配置されていて前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあるときに該発光部から下方に放射された光をロービーム配光が形成されることとなる反射鏡面の方向に反射させる三次元曲面を含む光線反射体と、を備えた構成にすることを特徴とする。つまり、発光管の下半部を取り囲む位置に三次元曲面を含む光線反射体を設置しておき、発光管の発光部が凹面反射鏡の光軸の後方にあるとき即ちハイビーム配光を形成することとなる場合に、前記発光部から下方に放射された光を、前記三次元曲面を含む光線反射体によってロービーム配光が形成されることとなる反射鏡面の方向に反射させるように構成してある。かかる構成によって、ハイビーム配光が形成されているときに、従来はシールド板によって遮蔽されて無駄になっていた発光部から下方に放射される光を、三次元曲面を含む光線反射体で反射させてロービームをも発生させ、これをハイビームと一緒に照射することにより照射面積の広い配光が得られるようにしたものである。
【0008】
また、本発明では、前記三次元曲面を含む光線反射体は、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダーに設けられていることを特徴とする。
【0009】
さらに、前記ガラスシリンダーの一部を三次元曲面に成形加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより、三次元曲面を含む光線反射体を形成したことを特徴とする
【0010】
さらに、前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属蒸着膜であることを特徴としている。
【0011】
なお、前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体は金属板であってもよい。
【0012】
また、前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板で形成されており、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダーの内部に固定されていることを特徴とする。
【0013】
さらに、発光管の外側にガラスシリンダーを設けずに、前記三次元曲面を含む光線反射体を金属板又は耐熱性樹脂で形成したうえ、これを外部に露出した状態で前記口金に固定した構造を採用することもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、1個の発光管の発光部を反射鏡の光軸に沿って前後動させることによってロービーム配光とハイビーム配光とを切り替えるように構成した自動車用放電ランプにおいて、ハイビーム配光のときに、本来はシールド板によって遮蔽されて無駄になる光を、三次元曲面を含む光線反射体によって凹面反射鏡に当ててロービームを発生させ、これをハイビームと一緒にして照射するようにしたので、広い照射面積のハイビーム配光が得られる。
【実施例1】
【0015】
図1A乃至図1Cは本発明に係る自動車用放電ランプの最も典型的は実施例を示すもので、図中、11は放電ランプの発光管であって、中央に発光部12を有し両端にシール部13を有していて、その長手方向の中心軸を図示していない凹面反射鏡の光軸X−Xに一致させて配置する。14は前記発光管11を前記凹面反射鏡の底部に保持する口金である。この口金14は、前記発光管11の発光部12から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム(配光)を形成することとなる前記光軸X−Xの前方の位置Aから、ハイビーム(配光)を形成することとなる前記光軸X−Xの後方の位置Bに前記発光部12の位置を移動させ得るように、前記発光管11を前後動可能に保持する。15は前記発光管11の下半部を取り囲む位置に配置された三次元曲面を含む光線反射体である。この光線反射体15は、前記発光管11の発光部12が前記光軸X−Xの後方の位置Bにあるとき、つまりハイビームが発生されているときに、前記発光部12から下方に放射された光を前記凹面反射鏡の方向に反射させてロービームを発生させ、これを前記ハイビームと一緒に照射させることにより、前記ハイビームの照射面積を広げる作用をする。
【0016】
この実施例では、前記三次元曲面を含む光線反射体15は、発光管11の外側に該発光管11の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダー16に設けられている。このガラスシリンダー16は、従来発光管11のシール部13に一体的に固定されていた外管とは異なって、前記発光管11の前後動とは関係なく口金14に独立して固定されている。前記反射体15は、前記ガラスシリンダー16の一部を加熱成形などの手段によって三次元曲面に加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより構成してある。前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体は金属蒸着膜でもよいし、プレス加工した金属板であってもよい。かかる光線反射体15は、発光管11の周囲方向に対しては図1BのE1で示す範囲に形成され、発光管11の長手方向に対しては図1CのLで示す範囲に形成される。前記ガラスシリンダー16の口金14側の下半部のうち前記光線反射体15が形成されていない部分17はスリットと同様の役割を果たす。なお、18はガラスシリンダー16の先端部に装着したトップキャップである。
【0017】
図2は図1に示した実施例の変形例を示すもので、ガラスシリンダー16の口金14側の下半部全体にわたって光線反射体15を形成した構成としてある。かかる構成では発光管11の発光部12が前記光軸X−Xの後方の位置Bにあるとき、つまりハイビームが発生されているときに、前記発光部12から下方に放射された光がスリットを通してハイビーム配光を補足することはないが、前記三次元曲面を含む光線反射体によってロービームが補足されるため、ハイビーム配光時の照射面積を広くすることができる。
【0018】
図3Aは図1A乃至図1Cに示した実施例において、発光管11の発光部12が凹面反射鏡の光軸X−Xの前方の位置Aにある状態を示している。この状態では、発光部12から上方に放射された光は、図3Bに示すように凹面反射鏡19によって反射されてロービームが形成される。図3Cはロービーム配光の形状を示したものである。また、この状態で発光部12から下方に放射された光は、図3Aに示すように三次元曲面を含む光線反射体15によって主として口金14の方向に向けてE2の範囲に反射される。この範囲の光はロービームの形成に何ら影響を与えない。
【0019】
これに対して、図4Aは図1A乃至図1Cに示した実施例において、発光管11の発光部12が凹面反射鏡の光軸X−Xの後方の位置Bにある状態を示している。この状態では、発光部12から上方に放射された光は、図4Bに示すように凹面反射鏡19によって反射されてハイビームが形成される。また、この状態で発光部12から下方に放射された光は、図4Aに示すように三次元曲面を含む光線反射体15によって主としてE3の範囲に反射される。この範囲に照射された光は図4Bのように凹面反射鏡19によって反射されてロービームを形成する。そしてこのロービームは前記ハイビーム一緒になって照射されることになるため、ハイビーム発生時の配光パターンは図4Cに示すように広い範囲のものとなる。
【0020】
尚、本発明で記載する自動車は四輪車、二輪車等を含み、又、自転車、電車、航空機、船舶などの乗物用光源としても利用する事が出来る。
【実施例2】
【0021】
図5は本発明の別の実施例を示すもので、三次元曲面を含む光線反射体15を金属板で形成したうえ、これを、発光管11の外側に該発光管11の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダー16の内部に固定した構成としてある。光線反射体15はガラスシリンダー16に設けた孔にカシメ付けることにより、あるいは耐熱性接着剤を用いて固定することができる。この構成の利点はガラスシリンダー16の変形加工を要しないことと、必要な反射特性を有する光線反射体を備えたガラスシリンダーを交換できることである。
【実施例3】
【0022】
図6は本発明の更に別の実施例を示すもので、三次元曲面を含む光線反射体15を金属板又は耐熱性樹脂で形成したうえ、これを外部に露出した状態で前記口金14に固定した構成としてある。かかる構成の利点はガラスシリンダーを省略して部品点数を少なくできることである。
【0023】
なお、本発明においては、発光管11はシール部13に固定される外管なしで前記口金14に保持されていることを特徴とする。このような構成によって、より小さい駆動力によって発光管11を前後動させることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、主に自動車の前照灯用の光源として、産業上、広く利用する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明に係る自動車用放電ランプの斜視図
【図1B】本発明に係る自動車用放電ランプの正面図
【図1C】本発明に係る自動車用放電ランプの一部切断側面図
【図2】図1A乃至図1Cに示す自動車用放電ランプの一部変形例の斜視図
【図3A】図1Cにおいて発光管がロービームを発生させる位置にあるときの三次元曲面反射体からの反射光の光路図
【図3B】図1Cにおいて発光管がロービームを発生させる位置にあるときの凹面反射鏡からの反射光の光路図
【図3C】図3Bに示すようなロービームの照射面の配光パターン図
【図4A】図1Cにおいて発光管がハイビームを発生させる位置にあるときの三次元曲面反射体からの反射光の光路図
【図4B】図1Cにおいて発光管がハイビームを発生させる位置にあるときの凹面反射鏡からの反射光の光路図
【図4C】図4Bに示すようなハイビームの照射面の配光パターン図
【図5】本発明の第2実施例の斜視図
【図6】本発明の第3実施例の斜視図
【図7A】従来のH4型ハロゲン電球の斜視図
【図7B】図7Aのハロゲン電球におけるロービーム照射面の配光パターン図
【図7C】図7Aのハロゲン電球におけるハイビーム照射面の配光パターン図
【図8A】H4型ハロゲン電球に対応する従来の自動車用放電ランプの斜視図
【図8B】図8Aに示す放電ランプでロービームを発生させる状態の側面図
【図8C】図8Aに示す放電ランプでハイビームを発生させる状態の側面図
【図8D】図8Bに示す放電ランプからロービームを発生させたときの配光パターン図
【図8E】図8Cに示す放電ランプからハイビームを発生させたときの配光パターン図
【符号の説明】
【0026】
11: 発光管
12: 発光部
13: シール部
14: 口金
15: 光線反射体
16: ガラスシリンダー
18: トップキャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の光軸を有する凹面反射鏡に装着される自動車用放電ランプであって、中央に発光部を有し両端にシール部を有していてその長手方向の中心軸を前記凹面反射鏡の光軸に一致させて配置した発光管と、前記発光管の発光部から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム配光を形成することとなる前記光軸の前方の位置から、ハイビーム配光を形成することとなる前記光軸の後方の位置に前記発光部の位置を移動させ得るように、前記発光管を前後動可能に保持する口金と、前記発光管の下半部を取り囲む位置に配置されていて、前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあるときに該発光部から下方に放射された光をロービーム配光が形成されるように前記凹面反射鏡の方向に反射させる三次元曲面を含む光線反射体と、を備えたことを特徴とする自動車用放電ランプ。
【請求項2】
前記三次元曲面を含む光線反射体は、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダーに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項3】
ガラスシリンダーの一部を三次元曲面に成形加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより、三次元曲面を含む光線反射体を形成したことを特徴とする請求項2に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項4】
前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属蒸着膜である請求項3に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項5】
前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属板である請求項3に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項6】
前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板で形成されており、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダーの内部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項7】
前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板又は耐熱性樹脂で形成されており、外部に露出した状態で前記口金に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項8】
前記発光管はシール部に固定される外管なしで前記口金に保持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の自動車用放電ランプ。
【請求項1】
水平方向の光軸を有する凹面反射鏡に装着される自動車用放電ランプであって、中央に発光部を有し両端にシール部を有していてその長手方向の中心軸を前記凹面反射鏡の光軸に一致させて配置した発光管と、前記発光管の発光部から放射された光が前記凹面反射鏡で反射されてロービーム配光を形成することとなる前記光軸の前方の位置から、ハイビーム配光を形成することとなる前記光軸の後方の位置に前記発光部の位置を移動させ得るように、前記発光管を前後動可能に保持する口金と、前記発光管の下半部を取り囲む位置に配置されていて、前記発光管の発光部が前記光軸の後方の位置にあるときに該発光部から下方に放射された光をロービーム配光が形成されるように前記凹面反射鏡の方向に反射させる三次元曲面を含む光線反射体と、を備えたことを特徴とする自動車用放電ランプ。
【請求項2】
前記三次元曲面を含む光線反射体は、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に設置したガラスシリンダーに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項3】
ガラスシリンダーの一部を三次元曲面に成形加工し、該三次元曲面の部分に光線反射体を付着させることにより、三次元曲面を含む光線反射体を形成したことを特徴とする請求項2に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項4】
前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属蒸着膜である請求項3に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項5】
前記三次元曲面の部分に付着させる光線反射体が金属板である請求項3に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項6】
前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板で形成されており、発光管の外側に該発光管の中心軸と同軸的に配置したガラスシリンダーの内部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項7】
前記三次元曲面を含む光線反射体は金属板又は耐熱性樹脂で形成されており、外部に露出した状態で前記口金に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項8】
前記発光管はシール部に固定される外管なしで前記口金に保持されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の自動車用放電ランプ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【公開番号】特開2009−117062(P2009−117062A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285994(P2007−285994)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]