説明

自動車用放電ランプ

【課題】配光制御用の遮光体を装着した自動車用放電ランプに関し、特に前記遮光体を配光特性の変更などの目的で容易に着脱・交換することができるようにした自動車用放電ランプを提供する。
【解決手段】自動車用放電ランプにおいて、発光管61の側部に該発光管と並行して配置された外部リード柱64と、前記発光管の他方のピンチシール部63bの末端と前記外部リード柱の末端とを支持してなり、前記他方のピンチシール部から導出された外部リード線65bに電気的に接続された第1の電気接点と、前記外部リード柱の末端に電気的に接続された第2の電気接点とを有する口金66(コネクタ)と、前記発光管と前記外部リード柱とを覆って前記口金(コネクタ)に固定されたアウター管68と、前記アウター管に密着させて且つ当該アウター管に対して着脱可能に装着された配光制御用の遮光体69と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ自体に配光制御用の遮光体を装着した自動車用放電ランプに関し、特に前記遮光体を配光特性の変更などの目的で容易に着脱・交換することができるようにした自動車用放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用ランプにおいて、ランプ自体に配光制御用の遮光体を取り付けることは良く知られている。例えば、米国特許第1,446,925号明細書には、図1及び図2に示すように、ランプ上半部を覆うシェル11とランプ前面を覆うディスク12とからなる配光制御用の遮光体13をコイルスプリング14で白熱電球15の管球に直接に取り付ける構造が開示されている。白熱電球15は点灯時における管球温度が比較的低いので、このように遮光体13を直接に管球に取り付けることが可能である。
【0003】
しかし、自動車用ランプが放電ランプ、特にメタルハライドランプのような高圧放電ランプである場合は、ランプ点灯時に発光管温度が極めて高くなるため、遮光体を直接に発光管に取り付けると遮光体が早期に熱劣化してしまうのみならず、発光管の温度分布が不均一になりランプ特性も低下してしまうという問題が生じる。
【0004】
そこで、実用新案登録第3090796号公報には、図3に示すように、発光管(=放電管)31を取り囲むアウター管(=紫外線カットガラス管)32に遮光体33を密着固定させた構造が提案されている。かかる構造にすれば遮光体33を直接に発光管に取り付ける場合に比較して前記のような問題は緩和されるはずである。しかし、実際には前記の構造においてもなお次のような問題があることが判明した。第1に、後述する理由から、発光管31を取り囲むアウター管32はできる限り発光管31に近接させてあるため、ランプ点灯中はアウター管32も相当に高温となり、遮光体33の熱劣化やランプ特性への悪影響を招くという問題を完全には解決することができない。第2に、遮光体33はアウター管32に密着固定させてあるため、同一ランプにおいて配光特性を変更したい場合に遮光体33を交換することはできない。
【0005】
このため、特開2005−138815号公報では、図4に示すように、発光管41を取り囲むアウター管42の外周に遮光体43を、空隙44を介して着脱可能に配置する構造が提案された。かかる構造においてはアウター管42と遮光体43との間に空隙44が存在するので、遮光体43の熱劣化やランプ特性への悪影響を防止することができる。また同一ランプにおいて配光特性を変更したい場合は遮光体43を交換することもできる。しかしながら、この構造においては、アウター管42と遮光体43との間の空隙44が大きすぎると正確な配光制御が困難となり、前記空隙44が小さすぎると遮光体の熱劣化やランプ特性への悪影響を招くという欠点がある。また、遮光体43を交換する際にアウター管42の外側に出ているリード線45などを傷つけやすいという欠点もある。
【0006】
なお、前記0004で記載したように、発光管を取り囲むアウター管をできる限り発光管に近接させる考え方は、例えば特開2004−119397号公報に開示されている。これは、放電ランプの発光効率を高めるために発光管とアウター管との最小間隙を8mm以下、特に2mm以下にするというもので、かかる理由から、これまでの自動車用放電ランプは発光管の部分のみをアウター管(シュラウドチューブ)で取り囲み、リード線の類はアウター管の外側に露出させてあった。
【0007】
ただし、特開平5−325895号公報に開示されているように、図5の如く発光管51と共にリード線52、53の類もアウター管54で覆った構造の自動車用ランプも知られてはいたが、かかるランプにおいてアウター管54の直径をどの程度まで大きくすることができるかについては何ら検証されていなかったため、配光制御用の遮光体55、56はアウター管54内部の発光管51の両端部付近に設置されていた。かかるランプでは、配光特性を変更したい場合に遮光体55、56を交換することができないことは明らかである。
【0008】
一方、特開2009−123509号公報は、自動車前照灯用メタルハライドランプにおいて、発光管とこれを取り囲むアウター管(シュラウドチューブ)内面との間隔を、2mmを超え9.5mm以下に選択できることを開示している。このことは、これまで発光管のみを取り囲んでいたアウター管(シュラウドチューブ)を前記特開平5−325895のように、発光管と共にリード線の類をも覆う構造としたうえ、アウター管の外周に配光制御用の遮光体を装着できる可能性を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第1,446,925号明細書
【特許文献2】実用新案登録第3090796号公報
【特許文献3】特開2005−138815号公報
【特許文献4】特開2004−119397号公報
【特許文献5】特開平5−325895号公報
【特許文献6】特開2009−123509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、自動車用放電ランプにおいて、配光制御用の遮光体を容易に着脱・交換することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来アウター管の外側に出ていたリード線の類を全て発光管と共にアウター管で覆ってしまったうえ、該アウター管の外側に配光制御用の遮光体をアウター管に密着させて且つ該アウター管に対して着脱自在に装着する。なお、かかる手段は、自動車用放電ランプにおいて、発光管を取り囲むアウター管の直径はランプ特性を損なわずにどの程度まで大きくすることができるのか、また、その許容範囲においてアウター管の外側に遮光体を設けることにより必要な配光制御ができるのか等についての検証なくして着想に至るものではない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動車用放電ランプは、発光管を取り囲むアウター管の直径はランプ特性を損なわずにどの程度まで大きくすることができるのか、また、その許容範囲においてアウター管の外側に遮光体を設けることにより必要な配光制御ができるのか等についての検証に基づいてなされているので、放電ランプ自体に直接遮光体を取り付けても遮光体が熱劣化したり、ランプ特性が悪影響を受けるようなことはない。また、同一ランプにおいて配光特性を変更したい場合は、遮光体を交換することにより容易に変更できるという利点がある。なお、前記遮光体は、自動車に放電ランプを装着した場合に振動などによって容易に脱落してしまわないことが必要であるとともに、配光特性を変更したい場合には簡単に取り外せることが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】白熱電球に遮光体を取り付けた従来の自動車用ランプの説明図である。
【図2】図1の従来技術で用いる遮光体の斜視図である。
【図3】遮光体を備えた従来の自動車用放電ランプの説明図である。
【図4】遮光体を備えた従来の自動車用放電ランプの説明図である。
【図5】遮光体を備えた従来の自動車用放電ランプの説明図である。
【図6】本発明に係る自動車用放電ランプの一部切欠側面図である。
【図7】本発明に係る自動車用放電ランプの側面図である。
【図8】本発明に係る自動車用放電ランプにおいて遮光体を取り外す場合の一実施例を示す説明図である。
【図9】図8の実施例に使用する遮光体取り外し用の冶具の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
自動車用放電ランプとして使用される高圧放電ランプに配光制御用の遮光体を直接密着させて着脱・交換可能にするという目的を、遮光体の熱劣化やランプ特性の低下を招くことなく実現させた。
【実施例1】
【0015】
図6は、本発明に係る自動車用放電ランプの一部切欠き側面図、図7は一部を切り欠いていない側面図である。これらの図において、61はランプの最も重要な部分である発光管を示している。この発光管61は、石英ガラスで形成された球状部62の両側の管状部に、それぞれ電極と金属箔と外部リード線の接続体を気密に封止してなるピンチシール部63a、63bを形成するとともに、前記球状部62に希ガスと金属ハロゲン化物を封入して構成されている。また、64は前記発光管61の一方のピンチシール部63aから導出された外部リード線65aと電気的に接続されていて、前記発光管61の側部に該発光管61と並行して配置された外部リード柱である。さらに、66は前記発光管61の他方のピンチシール部63bの末端と前記外部リード柱64の末端とを支持してなり、前記他方のピンチシール部63bから導出された外部リード線65bに電気的に接続された第1の電気接点67aと、前記外部リード柱64の末端に電気的に接続された第2の電気接点67bとを有する口金(コネクタ)である。
また、68は前記発光管61と前記外部リード線65a並びに外部リード柱64とを覆って前記口金(コネクタ)66に固定されたアウター管である。さらに、69は前記アウター管68に密着させて且つ当該アウター管68に対して着脱自在に装着された配光制御用の遮光体である。
【0016】
前記の構成において、配光制御用の遮光体69を放電ランプのアウター管68に対して密着させて且つ着脱自在に装着するには、例えば次のような構成を採用する。先ず前記アウター管68の末端部を、口金(コネクタ)66の上端に形成又は固定された筒状のホルダー70の内部に該ホルダー70と間隙をおいて挿入・固定しておく。また、前記配光制御用の遮光体69は前記アウター管68の外周に密着する形状にしておく。そして、当該配光制御用の遮光体69の末端部を、前記アウター管68と前記ホルダー70との間隙に挿入する。この場合、遮光体69の末端部の挿入代が大きければ放電ランプの使用中に遮光体69が抜け出てくるようなことは殆どないが、車両の振動などを考慮して次のような係止構造を採用することが望ましい。
【0017】
たとえば、図6に示すように、前記配光制御用の遮光体69の基部外側に凸部を形成するとともに、前記ホルダー70の内壁に前記凸部が嵌る凹部を形成した係止構造71とする。これに代えて、遮光体69の側に凹部や透孔を設け、ホルダー70の側に凸部を形成した係止構造としてもよい。また、これらと同じような構成をアウター管と遮光体との間に形成してもよい。
【実施例2】
【0018】
前記の様な係止構造を用いた場合、遮光体69がアウター管68に密接していることと相俟って遮光体69を取り外しにくくなる。そこで、図8に示すように、遮光体69を取り外すための冶具80を使用すると簡単に取り外すことができる。この冶具80は例えば図9に示すような形状・構造のものが適当である。これは先端部に左右一対の椀状腕81a、81bを有し、これら椀状腕81a、81bの中央部に遮光体69の基部近くに形成された切欠部82に当接する突起部81cが形成してある。この冶具80を使用する場合は、図8に示すように冶具80の椀状腕(図には表れていない)を遮光体69の切欠部82を通してアウター管68の外周に当接させるとともに、突起部81cを前記切欠部82に当接させてホルダー70のコーナー部に斜めに配置する。そして冶具80の末端部を下方に押し下げることにより、テコの原理で遮光体69を上方に移動させることができる。遮光体69の切欠部82や冶具80の先端部の形状は遮光体69を上方に移動させることができるものであれば適宜変更することができる。
【実施例3】
【0019】
本発明は、先にも述べたとおり、特開2009−123509号公報に開示されているような自動車前照灯用メタルハライドランプに適用した場合において特に有効である。すなわち、発光管とこれを取り囲むアウター管の内面との間隔を、2mmを超え9.5mm以下に選択する自動車用ランプでは、アウター管により発光管と共にリード線の類をも覆う構造とすることが容易であるから、アウター管の外周に配光制御用の遮光体を密着させて且つ着脱自在に装着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
配光制御用の遮光体として様々なタイプのものを使用することにより、放電ランプの種類を増やすことなく、多くの種類の自動車用放電ランプを提供することができる。
【符号の説明】
【0021】
61 発光管
62 球状部
63a、63b ピンチシール部
64 外部リード柱
65a、65b 外部リード線
66 口金
67a、67b 電気接点
68 アウター管
69 遮光体
70 ホルダー
80 冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラスで形成された球状部両側の管状部に、それぞれ電極と金属箔と外部リード線の接続体を気密に封止してなるピンチシール部を形成するとともに、前記球状部に希ガスと金属ハロゲン化物を封入してなる発光管と、
前記発光管の一方のピンチシール部から導出された外部リード線と電気的に接続されていて、前記発光管の側部に該発光管と並行して配置された外部リード柱と、
前記発光管の他方のピンチシール部の末端と前記外部リード柱の末端とを支持してなり、前記他方のピンチシール部から導出された外部リード線に電気的に接続された第1の電気接点と、前記外部リード柱の末端に電気的に接続された第2の電気接点とを有する口金(コネクタ)と、
前記発光管と前記外部リード柱とを覆って前記口金(コネクタ)に固定されたアウター管と、
前記アウター管に密着させて且つ当該アウター管に対して着脱可能に装着された配光制御用の遮光体と、
を備えたことを特徴とする自動車用放電ランプ。
【請求項2】
前記アウター管の末端部は、口金(コネクタ)の上端に形成又は固定された筒状のホルダーの内部に該ホルダーと間隙をおいて挿入され固定されており、前記配光制御用の遮光体は前記アウター管の外周に密着する形状を有しており、当該配光制御用の遮光体の末端部は、前記アウター管と前記ホルダーとの間隙に挿入され係止されていることを特徴とする自動車用放電ランプ。
【請求項3】
前記配光制御用の遮光体の前記アウター管に対する着脱可能な手段が、前記配光制御用の遮光体の基部と前記ホルダーとの間に形成された係止構造を伴って構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項4】
前記配光制御用の遮光体の前記アウター管に対する着脱可能な手段が、前記配光制御用の遮光体の基部と前記アウター管の側面に形成された係止構造を伴って構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項5】
前記アウター管に密着して装着された配光制御用の遮光体の基部近辺に、当該遮光体を取り外すための冶具の当接部が形成してあることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の自動車用放電ランプ。
【請求項6】
遮光体を取り外すための冶具は、先端部に左右一対の椀状腕を有するとともに、これら椀状腕の中央部に、前記遮光体の末端部近くに形成された切欠部に当接する突起部を有しており、当該冶具の前記椀状腕を前記遮光体の切欠部を通して放電ランプのアウター管の外周に当接させるとともに、前記冶具の突起部を前記遮光体の切欠部に当接させたうえ、冶具の末端部を下方に押し下げることにより、テコの原理で前記遮光体を前記アウター管の上方に移動させることを特徴とする請求項5記載の自動車用ランプ。
【請求項7】
発光管とこれを取り囲むアウター管の内面との間隔が、2mmを超え9.5mm以下に選択されていることを請求項1乃至請求項6の何れかに記載の自動車用放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−81927(P2011−81927A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231052(P2009−231052)
【出願日】平成21年10月3日(2009.10.3)
【出願人】(391021226)株式会社カーメイト (100)
【Fターム(参考)】