説明

自動車用空気調和装置及びその運転制御方法

【課題】外気の状態とOFF時間をモニタリングすることで、長時間OFFに起きる液冷媒の圧縮を低速起動にて行い圧縮機内部にダメージの少ない自動車用空気調和装置を提供すること。
【解決手段】温度検出手段24の情報がTd℃以下でかつ、圧縮機11のOFF時間がtd秒以上の場合には、回転数検出装置23の検出結果がNd以下になるまで圧縮機11をONしない制御を行うことで、td秒間に圧縮機11内に溜まった液冷媒を回転数Nd回転以下で緩やかに起動するため、圧縮機内部にダメージを与えず、信頼性の高い自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の空気調和装置に関するものであり、特に車両走行中に発生の可能性のある圧縮機内での液冷媒の圧縮時の起動制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車用の空気調和装置における圧縮機内での液冷媒の圧縮時の起動制御については、車両が停車し放置された後の起動に関するものであった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図4は特許文献1に示された従来の自動車用空気調和装置の圧縮機の起動制御のフローチャートを示したものである。本文献はエンジン始動後の圧縮機の起動に対し、各種判定を行い、最終的には予め定めた基準回転数以下にて圧縮機を起動させることにより圧縮機内に溜まった液冷媒を安全に排出し、液圧縮音の発生防止や液圧縮起動の繰り返しによる圧縮機内部のロック等の防止等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−186785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の方法では車両の起動直後に発生する液冷媒の圧縮における各種課題は解決可能であるが、特に冬季等の低外気時には車両の走行中であっても通常のエアコン制御にて圧縮機が長時間OFFする場合があり、そのような場合には車室内とエンジンルーム内の温度差により、液冷媒が圧縮機内に戻り、次の起動時に液冷媒にて起動する場合があり、圧縮機は前記従来例と同様のダメージを受ける場合があるという課題を有していた。
【0006】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、車両走行時に発生する可能性のある、圧縮機の長時間OFF後の起動において発生する液冷媒の圧縮によって圧縮機が受けるダメージを軽減し、圧縮機の内部部品の機能に影響を与えない自動車用空気調和装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の自動車用空気調和装置は、エンジンの回転動力によって駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、によって構成される冷凍サイクルシステムと、前記冷凍サイクルシステムの運転制御を行う制御部と、を備え、前記制御部には、外気温度と、前記エンジンの回転数と、前記圧縮機のON/OFF情報と、が入力され、前記制御部は、前記外気温度が所定の温度以下の場合でかつ前記圧縮機が所定期間以上OFFの場合に、前記エンジンの回転数が所定の回転数以下になるまでの間は前記圧縮機を起動しないように制御するとしたものである。
【0008】
これにより、車両運転時に長時間OFFが発生した後の圧縮機の起動により発生する液冷媒の圧縮を抑制することが可能となり、圧縮機内部にダメージを与えない、自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【0009】
これらによって、車両運転時に長時間OFFが発生した後の圧縮機の起動により発生する液冷媒の圧縮を抑制することが可能となり、圧縮機内部にダメージを与えない、自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成により、車両運転時に長時間OFFが発生した後の圧縮機の起動により発生する液冷媒の圧縮を抑制することが可能となり、圧縮機内部にダメージを与えない、自動車用の空気調和装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す空気調和装置の構成図
【図2】本発明の実施形態を示す制御のフローチャート
【図3】本発明の第二の実施形態を示す空気調和装置の構成図
【図4】従来の実施形態を示す制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、エンジンの回転動力によって駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、によって構成される冷凍サイクルシステムと、前記冷凍サイクルシステムの運転制御を行う制御部と、を備えた自動車用空気調和装置であって、前記制御部には、外気温度と、前記エンジンの回転数と、前記圧縮機のON/OFF情報と、が入力され、前記制御部は、前記外気温度が所定の温度以下の場合でかつ前記圧縮機が所定期間以上OFFの場合に、前記エンジンの回転数が所定の回転数以下になるまでの間は前記圧縮機を起動しないように制御することを特徴としている。
【0013】
これにより、車両運転時に長時間OFFが発生した後の圧縮機の起動により発生する液冷媒の圧縮を抑制することが可能となり、圧縮機内部にダメージを与えない、自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明において、制御部に入力される前記圧縮機のON/OFF情報は、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度の単位時間当たりの変化量に基づいて得られるとしたもので、圧縮機のON/OFF情報を簡単な方法で得ることができる。
【0015】
また、第3の発明は、エンジンの回転動力によって駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、によって構成される冷凍サイクルシステムと、を備えた自動車用空気調和装置の運転制御方法であって、外気温度を検出するステップと、前記圧縮機のOFF時間を検出するステップと、前記エンジンの回転数を検出するステップと、外気温度と、前記圧縮機のOFF時間と、前記エンジンの回転数と、に基づいて前記圧縮機の起動を行うステップと、を含むとしたものである。
【0016】
これにより、車両運転時に長時間OFFが発生した後の圧縮機の起動により発生する液冷媒の圧縮を抑制することが可能となり、圧縮機内部にダメージを与えない、自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明による自動車用空気調和装置の全体の構成を示している。圧縮機11は
エンジン1を駆動源として、プーリ及びベルトからなる動力伝達手段により電磁クラッチ11aを介して駆動される。電磁クラッチ11aはベルトにより駆動されるプーリ(図示せず)と圧縮機11の駆動軸に連結されるアマチュア(図示せず)およびマグネットコイル(図示せず)により構成されている。前記マグネットコイルは制御部(制御装置20)に電気的に接続され、制御装置20からの通電信号によりマグネットコイルに通電されることによって前記アマチュアがプーリに吸引されエンジン1の出力が圧縮機11に伝達され作動する。
【0019】
更に前記エンジン1の回転情報は回転数検出手段23により制御装置20に電気的に接続されている。
【0020】
次に凝縮器12は圧縮機11により吐出された高温高圧冷媒を凝縮用送風機(図示せず)により大気と熱交換して凝縮する熱交換器であり、凝縮器12により凝縮された冷媒はレシーバ13に流出され、ここで気液を分離して液冷媒を蓄える。凝縮器全面には現在の外気温の情報を取得するための温度検出手段24を備えており、空気調和装置の制御のために制御装置20と電気的に接続されている。
【0021】
最後に膨張弁14はレシーバ13によって流入された冷媒を減圧する弁であり、減圧後に蒸発器15に冷媒を流入させ、車室内の空気と熱交換することにより車内の空気調和を行っている。
【0022】
次に以上の構成による車両用空気調和装置の動作を図2を用いて説明する。ステップ100にて温度検出手段24からの情報を判断し、低外気状態かを判定する。次にステップ110では制御装置20において、エアコンがOFFされている時間が所定以上の期間かどうかを判定する。最後にステップ120にてエアコンが復帰直前のエンジンの回転数を回転数検出装置23の情報に基づいて判定するものである。
【0023】
ここで、温度検出手段24の情報がTd℃以下でかつ、制御装置20の起動情報に基づく信号によってOFF時間がtd秒以上と判定された場合には、回転数検出装置23の検出結果がNd以下になるまで圧縮機をONしない制御としている。なお、温度検出手段24からの信号及び圧縮機のON/OFF情報の少なくとも1つが上記条件を満足しない場合には、通常通り圧縮機11を再復帰させるようにしている。
【0024】
以上のように構成することで、温度検出手段24の情報がTd℃以下でかつ、制御装置20の起動情報に基づく信号によって、OFF時間がtd秒以上と判定された場合には、回転数検出装置23の検出結果がNd以下になるまで圧縮機をONしない制御としているため、td秒間に圧縮機11内に溜まった液冷媒は、圧縮機11が回転数Nd回転以下で緩やかに起動するため、圧縮機内部にダメージを与えず、信頼性の高い自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【0025】
(実施の形態2)
図3は本発明の第2を実施例を示す空気調和装置の構成図である。各部品の構成は図1に示す第1の実施例と同じであるが、圧縮機11から凝縮器12の間に圧縮機11の吐出冷媒の温度を検知する第2の温度検出手段25を備えている点が異なる。この第2の温度検出手段25は、制御装置20と電気的に接続されている。
【0026】
以上のように構成することにより第2の温度検出装置25は圧縮機11の吐出冷媒の温度を検知しているため、第2の温度検出装置25の情報が単位時間当たりに上昇傾向にあれば圧縮機11がON状態、降下傾向にあればOFF状態であることを判定できる。従って、制御装置20ではその累積結果を判定することにより圧縮機11のOFF時間を計算
することが可能となる。このため、OFF時間td秒間に圧縮機11内に溜まった液冷媒は、圧縮機11が回転数Nd回転以下で緩やかに起動するため、圧縮機内部にダメージを与えず、信頼性の高い自動車用の空気調和装置を提供することが可能となる。
【0027】
なお、圧縮機11の運転ON/OFF時間の判定のためには、制御装置20がマグネットコイルに出すOFF信号の累積時間を検出するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかる自動車用空気調和装置は、車両走行時に発生する可能性のある、圧縮機の長時間OFF後の起動において発生する液冷媒の圧縮によって圧縮機が受けるダメージを軽減することができるので、様々な状態で運転される車両等にも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
11 圧縮機
12 凝縮器
13 レシーバ
14 膨張弁
15 蒸発器
20 制御装置
23 回転数検出装置
24 温度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転動力によって駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、によって構成される冷凍サイクルシステムと、
前記冷凍サイクルシステムの運転制御を行う制御部と、
を備えた自動車用空気調和装置であって、
前記制御部には、外気温度と、前記エンジンの回転数と、前記圧縮機のON/OFF情報と、が入力され、
前記制御部は、前記外気温度が所定の温度以下の場合でかつ前記圧縮機が所定期間以上OFFの場合に、前記エンジンの回転数が所定の回転数以下になるまでの間は前記圧縮機を起動しないように制御することを特徴とする自動車用空気調和装置。
【請求項2】
前記制御部に入力される前記圧縮機のON/OFF情報は、前記圧縮機から吐出される冷媒の温度の単位時間当たりの変化量に基づいて得られることを特徴とする請求項1に記載の自動車用空気調和装置。
【請求項3】
エンジンの回転動力によって駆動される圧縮機と、前記圧縮機から吐出された高温高圧冷媒を凝縮させる凝縮器と、膨張弁と、前記膨張弁によって膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器と、によって構成される冷凍サイクルシステムと、
を備えた自動車用空気調和装置の運転制御方法であって、
外気温度を検出するステップと、
前記圧縮機のOFF時間を検出するステップと、
前記エンジンの回転数を検出するステップと、
外気温度と、前記圧縮機のOFF時間と、前記エンジンの回転数と、に基づいて前記圧縮機の起動を行うステップと、
を含む自動車用空気調和装置の運転制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate