説明

自動車用車体カバー

【課題】 自動車用車体カバーにおいて、資材のコスト以外の作業の人件費や再塗装コストなどを低減できるようにする。
【解決手段】 車体を覆う基布層と、この基布層における車体とは反対側に積層されたフィルム層とを有した積層体2にて構成されるとともに、自動車の窓に対応する部分が、積層体2に代えて透光性フィルム3にて構成されており、車体全体を覆うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用車体カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
国内工場で生産された後や外国から輸入された後の出荷されるまでの間において、すべての自動車を屋内保管することは実質的に不可能である。このため生産・輸入後の自動車は、一般に屋外にて保管されている。
【0003】
その間において、製品の品位を低下させないように、車体の表面を保護する必要がある。このため、たとえば特許文献1には、車体をマスキングして保護するための、粘着性を付与したフィルムが提案されている。
【特許文献1】特開2000−38558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着性を有したフィルムで車体をマスキングする際には、このフィルムを車体に貼り付ける作業が必要になる。しかも、そのときにシワが発生しないようにしなければならず、1台の自動車への貼り付け作業のために2名以上の作業者が必要になる。シワが発生すると、屋外保管しているために、そのシワと車体との隙間に雨水や砂や埃が入り込み、車体の塗装面に傷がついてしまう。また、従来においては一般に車体のボンネットと天井のみしかフィルムを貼り付けておらず、車体全体を覆っていないので、塗装面に少なからず傷がつく。
【0005】
塗装面に傷がつくと再塗装などが必要となるため、コストのうえでは、フィルム資材単体のコストだけでなく、「マスキングフィルムの費用+貼り付けのための作業の人件費+再塗装などの再整備の費用」といった各種のコストの累積となる。このためトータルコストの低減が課題となっている。
【0006】
そこで本発明は、このような課題を解決し、自動車用車体カバーにおいて、資材のコスト以外の作業の人件費や再塗装コストなどを低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明の自動車用車体カバーは、車体を覆う基布層と、この基布層における車体とは反対側に積層されたフィルム層とを有した積層体にて構成されるとともに、自動車の窓に対応する部分が、前記積層体に代えて透光性フィルムにて構成されており、車体全体を覆うものであることを特徴とする。
【0008】
本発明のもう一つの自動車用車体カバーは、車体を覆う第1の基布層と、この第1の基布層における車体とは反対側に積層されたフィルム層と、このフィルム層における第1の基布層とは反対側に積層された第2の基布層とを有した積層体にて構成されるとともに、自動車の窓に対応する部分が、前記積層体に代えて透光性フィルムにて構成されており、車体全体を覆うものであることを特徴とする。
【0009】
これらの構成であると、基布層によって車体に柔軟に接触することで、塗装面に傷が発生することを防止できるうえに、フィルム層によって雨水などに対する防水効果を得ることができ、車体全体を覆うものであることから車体全体の塗装面における傷の発生を効果的に防止することができる。また自動車の車体全体にカバーを被せるだけでよく、従来のマスキングフィルムのような車体への貼り付け作業が必要でない利点がある。しかも、再塗装などの再整備も不要である。しかも、窓に対応する部分が透光性フィルムにて構成されていることから、視界を確保することができて、カバーをかけたまま自動車を走行させることができる。
【0010】
本発明によれば、上記において、基布層がオレフィン系樹脂を含む布帛にて形成されており、フィルム層および窓部の透光性フィルムがオレフィン系樹脂含むフィルムにて形成されていることが好適である。
【0011】
このような構成であると、基布層とフィルム層と透光性フィルムとがいずれもオレフィン系樹脂を含む材料にて形成されているため、車体カバーを柔軟なものとすることができ、このため布帛にて覆われる車体の塗装面に傷がつきにくく、また車体カバーを使用しないときに折り畳んだ際に透光性フィルムにシワが発生しにくく、したがって視界が悪くなりにくいという利点がある。さらに、基布層とフィルム層との両者を容易に一体化することができるのみならず、基布層とフィルム層とが積層された積層体と透光性フィルムとを容易に接合することができ、しかも車体を覆うカバーを車体に沿った形状に形成するときなどにおける積層体どうしの接合も容易である。
【0012】
本発明によれば、上記において、基布層が不織布にて形成されていることが好適である。
このような構成であると、基布層を織物や編物で構成する場合に比べて安価に構成することができる。
【0013】
本発明によれば、上記において、接着剤を用いずに基布層にフィルム層が直接に貼り付けられて積層されていることが好適である。
このような構成であると、接着剤の溶剤などが塗装面に悪影響を及ぼすおそれがないという利点がある。また上記のように基布層とフィルム層とがともにオレフィン系樹脂を含む材料にて形成されている場合は、接着剤を用いずに熱接着などによって容易に基布層にフィルム層を貼り付けることができる。
【0014】
本発明によれば、上記において、積層体どうし、および、または、積層体と透光性フィルムとが、オレフィン系樹脂どうしの熱接着によって、車体に沿った形状に形成されていることが好適である。
【0015】
このような構成であると、オレフィン系樹脂どうしの熱接着によって簡単に接着一体化することができ、車体カバーを容易に車体に沿った形状に形成することができる。
【0016】
本発明によれば、上記において、自動車のドアに対応した部分に乗降のための開閉部が形成されていることが好適である。
【0017】
このような構成であると、カバーを掛けたまま車内に乗り込むことができるとともに、窓に対応する部分が透光性フィルムにて構成されているためカバーを掛けたまま自動車を運転して走行させることができる。
【0018】
本発明によれば、上記において、開閉部は、ドアに対応した形状の開閉シートが、開閉部の周囲の部分に対してファスナーにて連結されたものであることが好適である。
このような構成であると、開閉部を容易に開閉することができる。
【0019】
本発明によれば、上記において、開閉シートは、ファスナーによる周囲の部分との連結が解かれたときに、車体カバーにおける開閉部以外の箇所に保持可能とされていることが好適である。
【0020】
このような構成であると、カバーを掛けたまま自動車を運転して走行させるためにこの自動車に乗り降するときに、開閉シートが邪魔にならないという利点がある。
【0021】
本発明によれば、上記において、自動車のフェンダーの部分において積層体をフェンダーの縁に沿ったアーチ形に保持するための芯材が設けられていることが好適である。
【0022】
このような構成であると、カバーはフェンダーの縁に沿ったアーチ形に保持されるためにタイヤに触れることがなく、したがってカバーを掛けたまま支障なく自動車を走行させることができる。
【0023】
本発明によれば、上記において、基布層とフィルム層との少なくともいずれかが、耐候剤と紫外線反射性顔料との少なくともいずれかを含有するものであることが好適である。
このような構成であると、フィルム層のみならず基布層についても、気象条件や紫外線による劣化を防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明の自動車用車体カバーによると、基布層によって車体に柔軟に接触することで塗装面に傷が発生することを防止できるうえに、フィルム層によって雨水などに対する防水効果を得ることができる。また車体に被せるだけで車体全体を覆うものであることから車体全体の塗装面における傷の発生を効果的に防止することができる。このため、コストのうえでは、「カバーを構成する資材の費用+貼り付けのための作業の人件費+再塗装などの再整備の費用」といったトータルコストの低減を行うことができる。また使い捨てでなく、複数回以上の再使用が可能であるため、その点でもコストの低減を図ることができる。しかも、窓に対応する部分が透光性フィルムにて構成されていることから、視界を確保することができて、カバーをかけたまま自動車を走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1および図2は、本発明の実施の形態の車体カバー1によって自動車の車体の全体を覆った状態を示す。車体カバー1は、大半の部分が積層体2によって構成されているとともに、自動車のフロントウィンドウとリヤウィンドウとに対応する部分は、透光性フィルム3によって構成されている。
【0026】
図3は、車体カバー1の断面構造の一例を示す。ここで、4は、車体すなわちその塗装面を示す。積層体2は、車体4を覆う補強兼緩衝層としての基布層5と、基布層5における車体4とは反対側の面に積層された防水層としてのフィルム層6とが一体化された構成である。
【0027】
図4は、車体カバー1の断面構造の他の例を示す。ここでは、積層体2は、車体4を覆う緩衝層としての第1の基布層5Aと、第1の基布層5における車体4とは反対側の面に積層された防水層としてのフィルム層6と、フィルム層6における第1の基布層5Aとは反対側に積層された補強層としての第2の基布層5Bとが一体化された構成が採用されている。
【0028】
基布層5、5A、5Bは、布帛、すなわち織物、編物、不織布などによって構成されている。これらの布帛は、合成繊維や天然繊維などによる長繊維や短繊維によって構成することができる。車体カバー1が所定の性能を有したうえで、その取扱い性が良好であるためには、その目付は、12〜200g/mであることが好ましく、30〜100g/mであることがいっそう好ましい。具体的な繊維としては、芯部にポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する)を配するとともに鞘部にポリエチレン(以下、「PE」と略称する)を配した断面構造のPET/PE芯鞘型繊維や、芯部にポリプロピレン(以下、「PP」と略称する)を配するとともに鞘部にPEを配した断面構造のPP/PE芯鞘型繊維や、PET/PPサイドバイサイド型繊維や、PP単相繊維や、PET単相繊維や、ナイロン繊維や、綿や、レーヨンや、パルプなどを挙げることができる。
【0029】
積層体2が図3に示す2層構造である場合は、基布層5は、車体4の塗装面を傷付けないための緩衝作用と、積層体2の強度を担う作用とを発揮することが求められ、それに対応した物性を有することが望ましい。基布層5は、フィルム層6と積層一体化されるものであり、このためオレフィン系樹脂を含むものであることが好適であるが、それに限定されるものではない。
【0030】
積層体2が図4に示す3層構造である場合には、第1の基布層5Aは、より緩衝性の高いものを用いることができる。この場合に、緩衝性を重視すると引張・引裂強度などの機械的強度が不足することがあるため、第2の基布層5Bによる補強を行う。第2の基布層5Bは、柔軟性よりも機械的強度に優れたものを用いるが、後述のように透光性フィルム3と熱接着されるものであり、このためオレフィン系樹脂を含むものであることが望ましい。これに対し第1の基布層5Aは、フィルム層6と積層一体化されるものであるためオレフィン系樹脂を含むものであることが好適であるが、それに限定されるものではない。
【0031】
特に積層体2が図3に示すように単一の基布層5とフィルム層6とを積層したものである場合は、布帛にて形成された基布層5の表面には、意匠性や車種識別性を付与する目的で、印刷を行うことが好適である。そして、その印刷面にフィルム層6を積層することで、印刷インクの堅牢度を保持することができる。
【0032】
フィルム層6は、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、PPなどによって形成することができる。その厚みは、10〜200μm程度とすることができるが、防水性や柔軟性を考慮すると30〜100μmであることが好ましい。フィルム層6も、後述の理由によって、オレフィン系樹脂を含むものであることが好適である。
【0033】
図3に示す2層構造の場合において、積層体2を構成するためにフィルム層6を基布層5に積層するための手法としては、基布層5に樹脂を直接押出しラミネートさせて直接貼り付けるか、接着剤を用いて接着することなどが挙げられる。なかでも、押出しラミネートさせて直接貼り付けるものが、接着剤を用いる場合のように溶剤などが車体4の塗装面に悪影響を及ぼすというおそれがない利点がある。このとき、上述のように基布層5とフィルム層6とがともにオレフィン系樹脂を含むものであると、接着剤を用いることなしに、熱接着によって容易に両者の貼り合せを行うことができる。しかも、オレフィン系樹脂を含むことで車体カバー1を柔軟なものとすることができて、この車体カバー1にて覆われる車体の塗装面に傷がつきにくいようにすることができる。図4に示す3層構造の場合は、第1の基布層5Aと第2の基布層5Bとの間にフィルム層6のための樹脂を押出しするか、両者5A、5Bの間にフィルム層6を挟み込んで一体化させる。
【0034】
フィルム層6を構成する各樹脂は、透光性を有するものであるが、意匠性や車種識別性を付与する目的で顔料により着色することもできる。またフィルム層6には、耐候剤や、白色顔料などの紫外線反射性顔料などを含有させることが好適である。このようなものであると、屋外に置かれる自動車に用いられるときに、フィルム層6そして基布層5が気象条件や紫外線により劣化することを防止できる。基布層5、5A、5Bに同様の処理を施すこともできる。
【0035】
透光性フィルム3は、上述のような自動車のフロントウィンドウやリヤウィンドウなどの、車体カバー1における自動車の窓に対応する部分に設けられている。この透光性フィルム3は、単層フィルムや積層フィルムによって構成することができ、たとえば、PE単層フィルム、PP単層フィルム、PET/PEドライラミネートフィルム、ナイロン/PEドライラミネートフィルム、PP/PEドライラミネートフィルム、PE/PE共押出フィルムなどによって構成することができる。延伸フィルム、未延伸フィルムのいずれも利用することができる。この透光性フィルム3も、フィルム層6や第2の基布層5Bとの熱接着のために、オレフィン系樹脂を含むものであることが好適である。
【0036】
車体カバー1を装着したときの車内からの外部の視認性を向上させるために、透光性フィルム3に、窓ガラスに対して粘着性を有するフィルムを全面もしくは部分的に使用することができる。このようなものであると、窓ガラスとフィルム3との密着性を向上させて上記の視認性を増大させることができる。
【0037】
図3に示すように、積層体2のフィルム層6と透光性フィルム3とは、それらの縁部どうしが熱接着部7によって互いに接着一体化されている。同様に、図4に示すように、積層体2の第2の基布層5Bと透光性フィルム3との縁部どうしを熱接着部7によって互いに接着一体化させることができる。熱接着の手法しては、加熱接着、高周波接着、超音波接着などが挙げられる。このとき、上述のようにフィルム層6あるいは第2の基布層5Bと透光性フィルム3とがともにオレフィン系樹脂を含むものであると、熱接着によって容易に両者を接着することができる。熱接着部7を連続的に形成することで、止水効果を発揮することができる。
【0038】
車体カバー1は、上述のように積層体2と透光性フィルム3とが熱接着されるほかに、積層体2どうしが熱接着されることで、自動車の車体に沿った適当な形状に形成されている。図1および図2において、8は、積層部2どうしの熱接着部で、積層体2が適当な形状に裁断されたうえで、その端縁部どうしが重ねられて熱接着されたものである。この熱接着部8も、これを連続的に形成することで、止水効果を発揮することができる。
【0039】
上記のように自動車の車体に沿った形状に形成されている車体カバー1は、自動車の車体の底部において開口した構成となっている。図示のように、この開口を縛ってカバー1を車体に保持させるための紐9を設けることが好適である。この紐9は、ゴム紐などによって構成され、縫製などによって車体カバー1に取り付けることができる。たとえば、上記開口における車体の一方の側部に対応した部分と他方の側部に対応した部分とにそれぞれ紐9を取り付け、いずれか一方の側部に取り付けられた紐9を車体よりも下側に這わせて他方の側部に到達させ、そこで他方の側部に取り付けられた紐9に結び付けることで、カバー1を車体に保持させることができる。このように紐9どうしを結び付けると、一方の側部に取り付けられた紐9は、車体の底部に接することになるため、この紐9は、耐熱性を有する素材を使用したものが好適である。また車体よりも下側に這わせるときの作業効率を考慮して、重量のあるものを使用することが好適である。車種識別性を付与するなどの目的で、紐9に着色を施すこともできる。
【0040】
紐9を設けることと同様の目的で、車体カバー1における上述の開口の縁部にはゴム紐10が通されている。これにより、カバー1を車体に装着したときに開口を絞ることによる保持機能を付与することができる。
【0041】
図5、図1、図2に示すように、車体カバー1における、自動車の特に運転席のドア11に対応した部分に、自動車への乗降の際に開口させることができる開閉部12が設けられている。この開閉部12は、積層体2によってドア11に対応した形状に形成された開閉シート13を有し、この開閉シート13は、車体カバー1における開閉部12の周囲の部分に対してファスナー14にて連結されることができるように構成されている。詳しくは、図4に示すように、開閉シート13は、自動車におけるドア11が設けられている部分の天井の位置で車体カバー1に連続するように設けられており、それ以外の部分ではファスナー14によって開閉できるように構成されている。ファスナー14は、車体4すなわち塗装面を傷つけないように、軟質樹脂などによって形成されている。
【0042】
図4はファスナー14による開閉シート13の連結を解いて開閉部12を開いた状態を示す。このとき、開閉シート13は、図示のように、折り畳んだうえで、車体カバー1における自動車の屋根に対応した部分に、面ファスナーなどを用いて保持することができる。
【0043】
図示のように開閉部12の開閉シート13を開いたときに、それによって形成される開口の周縁で車体カバー1が浮き上がったり位置ずれを起こしたりしないように、その周縁部に、積層体2によって引掛り部15を形成している。この引掛り部15は、自動車におけるドア11の周囲の枠部16に引掛けられることで、上記した車体カバー1の浮き上がりや位置ずれを防止可能である。
【0044】
図1、図2、図5において、18は自動車のタイヤである。車体カバー1において、19は、自動車におけるタイヤ18の周囲のフェンダーの部分を覆うフェンダーカバー部である。フェンダーカバー部19は、積層体2によって構成されるとともに、タイヤ18の回転を阻害しないように、すなわちタイヤ18に接触しないように、フェンダーの縁に沿ったアーチ形に形成されている。
【0045】
図6は、フェンダーカバー部19の要部を示す。図示のように、フェンダーカバー部19には、このフェンダーカバー部19をフェンダーの縁に沿ったアーチ形に形状保持するための芯材20が設けられている。芯材20は、たとえば厚手のクロスを二重にしたものによって構成され、縫製などによって積層体2と一体化されている。芯材20として、樹脂成形品などを用いることもできる。この芯材20を自動車のフェンダーの縁に引掛けるようにして装着することで、前述のようにフェンダーカバー部19がタイヤ18に接触することを防止可能である。なお、フェンダーカバー部19にはゴム紐10は通されていない。
【0046】
本発明の車体カバー1は、上記した構成であり、基布層5、5Aによって車体に柔軟に接触することで塗装面に傷が発生することを防止できるうえに、フィルム層6によって雨水などに対する防水効果を得ることができ、車体全体を覆うものであることから車体全体の塗装面における傷の発生を効果的に防止することができる。
【0047】
また、開閉部12を有するため車体カバー1を掛けたまま車内に乗り込むことができ、窓に対応する部分が透光性フィルム3にて構成されていることから、視界すなわち外部の視認性を確保することができて、車体カバー1を掛けたまま自動車を運転して走行させることができる。このとき、車体カバー1におけるフェンダーカバー部19に芯材20が設けられているため、フェンダーカバー部19は自動車のフェンダーに沿ったアーチ形に保持され、このためタイヤ18との接触が効果的に防止される。したがって、この点によっても、車体カバー1を掛けたまま支障なく自動車を運転して走行させることができる。
【0048】
このような自動車の走行は、屋外における保管位置の変更の際などの短い距離だけであるので、車体カバー1を掛けたままであっても何ら問題は生じない。このとき、図4に示すように開閉シート13を開いたうえで折り畳んで屋根の部分に保持しておくことで、運転中もその保持状態を保つことができ、運転終了後の自動車から降りたときに初めて元通りに開閉シート13を閉じればよい。このようにすれば、運転中に、運転席の側部の視界を確保することができる。
【0049】
自動車の助手席側は、外部の視認性があまり要求されないため、透光性フィルム3を用いずに積層体2だけで構成することが可能である。しかし、必要に応じて、図7に示すようにその側窓部に対応する部分を透光性フィルム3にて構成すれば、視認性を向上させることができる。
【0050】
このように本発明の車体カバー1によれば、自動車の車体全体にカバー1を被せるだけでよく、従来のマスキングフィルムのような車体への貼り付け作業が必要でない利点がある。しかも、再塗装などの再整備も不要である。このため、コストのうえでは、「カバー1を構成するフィルム資材の費用+貼り付けのための作業の人件費+再塗装などの再整備の費用」といったトータルコストの低減を行うことが可能である。また使い捨てでなく、複数回以上の再使用が可能であるため、その点でもコストの低減を図ることができる。
【0051】
車体カバー1の具体例について説明する。積層体2を構成する基布層5、5A、5Bは、たとえばユニチカ社製の商品名「エルベス」(芯PET/鞘PEの芯鞘型繊維を用いた不織布)であって目付50g/mのものを用いることができ、これに厚さ40μmのPEフィルムを押出しラミネートしてフィルム層6を形成することができる。フィルム層6のPEフィルムには、耐候剤および白色顔料を添加することができる。透光性フィルム3には、たとえば厚さ100μm程度の、PEフィルムやPE/PEラミネートフィルムやPET/PEラミネートフィルムなどを用いることができる。各部の接着方法としては高周波熱接着を適用することができ、フェンダーカバー部19の芯材20にはPP織物を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態の車体カバーを自動車に被せた状態を示す、自動車前方からの斜視図である。
【図2】同状態を示す自動車後方からの斜視図である。
【図3】同車体カバーの断面構造の一例を示す図である。
【図4】同車体カバーの断面構造の他の例を示す図である。
【図5】同車体カバーにおける自動車のドアに対応した開閉部を開いた状態を示す図である。
【図6】同車体カバーにおけるフェンダーカバー部を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態の車体カバーを自動車に被せた状態を示す、自動車後方からの斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 車体カバー
2 積層体
3 透光性フィルム
4 車体
5 基布層
6 フィルム層
7 熱接着部
8 熱接着部
13 開閉シート
19 フェンダーカバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用車体カバーであって、車体を覆う基布層と、この基布層における車体とは反対側に積層されたフィルム層とを有した積層体にて構成されるとともに、自動車の窓に対応する部分が、前記積層体に代えて透光性フィルムにて構成されており、車体全体を覆うものであることを特徴とする自動車用車体カバー。
【請求項2】
自動車用車体カバーであって、車体を覆う第1の基布層と、この第1の基布層における車体とは反対側に積層されたフィルム層と、このフィルム層における第1の基布層とは反対側に積層された第2の基布層とを有した積層体にて構成されるとともに、自動車の窓に対応する部分が、前記積層体に代えて透光性フィルムにて構成されており、車体全体を覆うものであることを特徴とする自動車用車体カバー。
【請求項3】
基布層がオレフィン系樹脂を含む布帛にて形成されており、フィルム層および窓部の透光性フィルムがオレフィン系樹脂含むフィルムにて形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の自動車用車体カバー。
【請求項4】
基布層が不織布にて形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の自動車用車体カバー。
【請求項5】
接着剤を用いずに基布層とフィルム層とが直接に貼り付けられて積層されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の自動車用車体カバー。
【請求項6】
オレフィン系樹脂どうしの熱接着によって、積層体どうし、および、または、積層体と透光性フィルムとが熱接着されることによって、車体に沿った形状に形成されていることを特徴とする請求項3記載の自動車用車体カバー。
【請求項7】
自動車のドアに対応した部分に乗降のための開閉部が形成されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の自動車用車体カバー。
【請求項8】
開閉部は、ドアに対応した形状の開閉シートが、開閉部の周囲の部分に対してファスナーにて連結されたものであることを特徴とする請求項7記載の自動車用車体カバー。
【請求項9】
開閉シートは、ファスナーによる周囲の部分との連結が解かれたときに、車体カバーにおける開閉部以外の箇所に保持可能とされていることを特徴とする請求項8記載の自動車用車体カバー。
【請求項10】
自動車のフェンダーの部分において積層体をフェンダーの縁に沿ったアーチ形に保持するための芯材が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の自動車用車体カバー。
【請求項11】
基布層とフィルム層との少なくともいずれかが、耐候剤と紫外線反射性顔料との少なくともいずれかを含有するものであることを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の自動車用車体カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−90913(P2007−90913A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278974(P2005−278974)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(592197315)ユニチカ通商株式会社 (84)
【Fターム(参考)】