自動車用軽量フロアーマット
【課題】 軽量で、滑り防止性に優れ、水切りの良い、しかも環境に対して優しい自動車用フロアーマットを提供することを課題とするものである。【解決手段】単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用した上層カーペットと、単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用したカットパイルカーペットを使用した滑り止め層をポリエチレン樹脂フィルムで貼り合わせ、さらに前記滑り止め層のカットパイルカーペットのパイル長さを５ｍｍ以下にすることにより、軽量で、滑り防止性に優れ、水切りも良い自動車用フロアーマットが可能であることを見出し本発明に到達した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に配置して使用する自動車用フロアーマットに係る技術である。
【背景技術】
【０００２】
従来から、自動車内においては、靴などに付着した土、砂、泥、砂利、或いは雨水などが自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットに付着して、自動車室内が汚れるのを防止するために、自動車用フロアーマットが敷かれている。
【０００３】
この自動車用フロアーマットとして、特許文献１において開示されているように、カーペットなどの表面材と、この表面材を支持する合成樹脂やゴムなどの裏材とからなるものが知られている。このようなフロアーマットにおいては、裏材によって耐久性が付与されるとともに、裏材に突起物を多数設けることにより、滑り止めの効果を付与するものである。
【０００４】
しかし、この従来の自動車用フロアーマットにおける合成樹脂やゴムからなる滑り止め層は１ｍ２あたり１，２００〜１，５００ｇと重いため、自動車室内に配置した場合には自動車の燃費が悪くなり、結果として環境に対して多大な負荷をかけることになる。また、使用済みのフロアーマットの表面材と裏材とを分離することが困難なため、焼却処分するか産業廃棄物として廃棄処分することになるが、焼却処分すると有害ガスを発生させる可能性があり、また、産業廃棄物として廃棄処分する場合では場所に限りがあり、廃棄処分できたとしても水質汚染を発生させるなど、様々な形で環境に対して多大な負荷をかけるものであった。
【０００５】
さらに、この従来の自動車用フロアーマットは合成樹脂やゴムからなり、その裏面に突起物が設けられ、前記従来の自動車用フロアーマットをタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットの上に配置した場合、本来ならば人が踏み込むことによって、パイル内に突起物がくい込んで滑りを止める働きをする筈であったが、近年では自動車内装材の外観品位に高品位が求められ、前記のタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが細い糸を使った高密度商品になってきたために、突起物がくい込みにくくなってきている。このため、合成樹脂製やゴムの裏材を有する自動車用フロアーマットが滑りやすく、さらに自動車用フロアーマット が滑りだすと、床に配置された上記タフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットとの接触部位が突起物の頂点のみとなりやすく、却って接触面積が減少するため、滑りが助長されることが事故に繋がる可能性もある。
【０００６】
一方、従来の自動車用フロアーマットの上層カーペットは自動車の床に敷設されたカーペットと同様の、タフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが使用されているが、このパイルに使われている糸を構成する単糸の繊度が１０デシテックス以上、３０デシテックス以下であり、自動車用フロアーマットのタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットの表面は細い糸が密集した状態にあり、雨の日や水に関する作業の後などには、靴底に付いた水分が自動車室内に持ち込まれ、自動車用フロアーマットの表面に付着し保有された状態になっている。また、その付着した水分を取り除くためには、車外で自動車用フロアーマットを振り切るだけでは取り除けず、水洗いしても乾燥に時間を要し、濡れたままの状態で放置する事が多く、その結果自動車室内の快適性が失われていた。
【特許文献１】特公平４−８５６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は前記の問題点、１、環境に負荷をかける重量、２、事故に繋がる滑り易さ、３、快適性を損なう水切り性、を解決するためになされたものであり、軽量で、滑り防止性に優れ、水切り性の良い、しかも環境に対して優しい自動車用フロアーマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【０００９】
［１］上層カーペットと滑り止め層と接着層からなる自動車用フロアーマットにおいて、前記滑り止め層を重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットで構成し、それぞれのカーペットのパイル面を外面にして接着層で貼り合わせたことを特徴とする自動車用フロアーマット。
【００１０】
［２］前記滑り止め層を構成するカーペットが、単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用し、カーペットのパイル長さが５ｍｍ以下のカットパイルからなる前項［１］記載の自動車用フロアーマット。
【００１１】
［３］前記上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したカーペットからなる前項［１］または［２］記載の自動車用フロアーマット。
【００１２】
［４］前記接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムからなる前項［１］乃至［３］記載の自動車用フロアーマット。
【発明の効果】
【００１３】
［１］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットは滑り止め層に重量のある合成樹脂やゴムに代えて繊維からなる重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットを使用したことにより、従来のフロアーマットよりも非常に軽量な自動車用フロアーマットにすることができる。自動車の燃費が悪くなることは無く、環境に対する負荷の小さい自動車用フロアーマットである。
【００１４】
［２］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する滑り止め層のカーペットパイルの単糸繊度を２０〜６０デシテックスの太い糸にしたことと、カーペットのパイルの長さを５ｍｍ以下のカットパイルにすることにより、自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットを構成する繊維に前記滑り止め層のカーペットパイルが引っ掛かり、摩擦抵抗が高くなり滑り防止性が向上した自動車用フロアーマットとなる。
【００１５】
［３］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したことにより、上層カーペットのパイル間にできる、水分が保持されたまま取り除きにくい原因となる小さな隙間が大きくなることから、水分が保持されず、移動しやすくなることによって、優れた水切り性を発揮することができる。雨の日や水に関する作業の後などに、靴底に付いた水分が自動車室内に持ち込まれても、車外で振り切るだけで簡単に水分を取り除くことができる。また、自動車用フロアーマットを水洗いした場合もすばやく水を切ることが出来る自動車用フロアーマットとなる。
【００１６】
［４］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムで構成したことにより、表面に付着した水分の自動車の床面への透水を防ぎ、前記上層カーペット部分での水切り性により好適な自動車用フロアーマットとなる、また接着層としてポリエチレン樹脂フィルムを使用しているので、自動車用フロアーマットを焼却する場合には、有害ガスを発生しないため、環境に対して好適な自動車用フロアーマットとなる。
【００１７】
更に、上層カーペットと、滑り止め層のカーペットを構成する繊維が再生利用可能なポリエステル繊維にする事により、自動車用フロアーマットの大部分を再度利用することができ、より環境に対する負荷の小さい自動車用フロアーマットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下この発明に係わる自動車用フロアーマットの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態の自動車用フロアーマットは、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に配置して使用する自動車用フロアーマットである。図１は、本実施形態の自動車用フロアーマットの一部を拡大して示す模式的断面図である。（１）は上層カーペット、（２）は滑り止め層、（３）は上層カーペットのパイル、（４）は滑り止め層カーペットのパイル、（５）、（９）はポリエステル不織布、（６）、（８）はラテックス層、（７）は接着層である。
【００１９】
前記上層カーペット（１）はタフテッドカーペット機により製織されたタフテッドカーペットからなるものである。
【００２０】
本実施形態では、上層カーペットのパイル（３）として、ポリエステルフィラメント糸が用いられている。ポリエステルは他のカーペット用途のウールやナイロン等の素材より素材の持つ含有水分率が低く、水切り性が要求されるパイルに適している。
【００２１】
また、前記上層カーペットのパイル（３）は単糸繊度が２０〜６０デシテックスの糸が用いられている。一般的な自動車用フロアーマットは単糸繊度が５〜１５デシテックスの糸が使われるが、それよりも太い単糸繊度２０〜６０デシテックスの糸を使用することにより、水分が保持される糸と糸の間の微小な隙間の数を減少させ水分を取り除き易くし、水切り性の良好なパイルを形成している。さらに好ましい単糸繊度は４０〜６０デシテックスである。
【００２２】
また、前記上層カーペット（１）のパイルはカットパイルで構成されている。パイル先端をカットして開放することにより水切り性の良好なパイルを形成している。
【００２３】
この上層カーペット（１）の態様としては、例えば、タフテッドカーペット、緞通、フックカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどを使用することができるが、意匠性、経済性からタフテッドカーペットが好ましい。
【００２４】
なお、上層カーペット（１）における繊維の脱落を防止するために、上層カーペット（１）の下面にスチレン−ブタジエンゴム等のラテックス層（６）を設けて繊維を固定しパイル抜けを防止する。
【００２５】
本実施形態では、前記滑り止め層（２）はタフテッドカーペット機により製織されたタフテッドカーペットからなるものである。
【００２６】
また、滑り止め層のカーペットのパイル（４）として、ポリエステルフィラメント糸が用いられ、重量が４００ｇ／ｍ２以下と軽量
なカーペットを形成している。さらに好ましい重量は３００〜４００／ｍ２である。
【００２７】
また、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）は単糸繊度が２０〜６０デシテックスの糸が用いられ、パイルの長さを５ｍｍ以下で形成している。このパイルを構成する繊維の太さと短さの効果が相俟って、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）が剛性のある立毛状態となり、本発明の自動車用フロアーマットを自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に前記滑り止め層（２）を当接するように配置すると、パイル繊維の先端部が前記タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットを構成するパイルに引っ掛かり、摩擦抵抗が高くなる結果として、滑り防止性が向上する。さらに好ましい単糸繊度は４０〜６０デシテックス、前記パイルの長さは３〜５ｍｍがよい。
【００２８】
さらに、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）はカットパイルで構成されている。パイル先端をカットすることにより自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットとの接触面積を増やし滑り防止性に良好なパイルを形成している。
【００２９】
この滑り止め層（２）のカーペットの態様としては、例えば、タフテッドカーペット、緞通、フックカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどを使用することができるが、意匠性、経済性からタフテッドカーペットが好ましい。
【００３０】
なお、滑り止め層（２）のカーペットにおける繊維の脱落を防止するために、滑り止め層（２）のカーペットの裏面にスチレン−ブタジエンゴム等のラテックス層（８）を設けて繊維を固定しパイル抜けを防止する。
【００３１】
さらに、本実施形態では、本発明の自動車用フロアーマットは構成する上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維として、共にポリエステルフィラメント糸を使用することにより、処分時の焼却の際に有害ガスが発生しない。また、前記上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットに使用するポリエステルフィラメント糸に再生ポリエステルを使用すれば、さらに環境に考慮した自動車用フロアーマットとなる。
【００３２】
本実施形態では、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）との一体化は、Ｔダイ型押出し機により、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融するポリエチレン樹脂フィルム（７）を、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）との間に押し出し圧着冷却により一体化する。前記ポリエチレン樹脂フィルム（７）の塗布量を３００ｇ／ｍ２以上で形成すれば、良好な止水性を発揮し、自動車の床面への透水を防ぎ、水切り性が向上することになる。ポリエチレン樹脂をＴダイ型押出し機で押出す加工方法は接着性、水切り性において自動車用フロアーマットとして好適な一体化方法である。前記ポリエチレン樹脂フィルム（７）の塗布量は４００〜５００ｇ／ｍ２が好ましい。
【００３３】
また、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）を一体化する方法として、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融する熱溶融シートを、上層カーペット１と滑り止め層２の間に配置し、前記熱溶融シートのみを融着できる温度で熱処理する方法がある。勿論、止水性を発揮する厚みのあるシートが必要である。
【００３４】
使用する前記熱溶融シートは自動車用フロアーマットを焼却する場合には、有害ガスを発生しないポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂からなるのが好ましい。
【００３５】
なお、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）とを一体化した場合、その周縁部が見苦しかったり、繊維の脱落が生じる場合があるため、オーバーロックミシンを使った、糸による縁取り加工（オーバーロック加工）によりその周縁部を覆い隠したり、布または樹脂製のテープによる縁取り加工（テープロック加工）によりその周縁部を覆い隠すのが好ましい。なお、オーバーロック加工に使用する糸はナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、或いは再生したポリエステルを使用することが好ましく、またテープロック加工に使用するテープはナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、或いは再生したポリエステル樹脂を使用することにより、環境に対して好適な自動車用フロアーマットとなる。
【実施例】
【００３６】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００３７】
（実施例１）上層カーペットとして、単糸繊度が４０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸を、タフティングカットパイル機にて、ポリエステル繊維からなる不織布（重量：１００ｇ／ｍ２）に１／１０ゲージ（ヨコ密度：３９本／１０ｃｍ）、３０ステッチ（タテ密度：３０本／１０ｃｍ）、パイル長８ｍｍでタフティングをおこない、カットパイルが形成されたタフテッドカーペット（パイル重量：６００ｇ／ｍ２）を用意した。なお、カーペットの裏面にはフィラメント糸の脱落を抑制するために、乾燥質量：１００ｇ／ｍ２のスチレン−ブタジエンゴムラテックスを塗布した。
【００３８】
他方、滑り止め層２のカーペットとして、単糸繊度が４０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸を、タフティングカットパイル機にて、ポリエステル繊維からなる不織布（重量：１００ｇ／ｍ２）に１／１０ゲージ（ヨコ密度：３９本／１０ｃｍ）、３０ステッチ（タテ密度：３０本／１０ｃｍ）、パイル長３ｍｍでタフティングをおこない、カットパイル（パイル長さが３ｍｍ）が形成されたタフテッドカーペット（パイル重量：３００ｇ／ｍ２）を用意した。なお、カーペットの裏面にはフィラメント糸の脱落を抑制するために乾燥質量：１００ｇ／ｍ２のスチレン−ブタジエンｍ２ゴムラテックスを塗布した。
【００３９】
次いで、前記上層カーペット（ラテクックス塗布側）と滑り止め層のカーペット（ラテクックス塗布側）との間に、Ｔダイ型押出し機より押し出したポリエチレン樹脂フィルムを供給し、このポリエチレン樹脂フィルムを介して前記上層カーペットと滑り止め層とを一体化した。このポリエチレン樹脂フィルムの塗布量は４００ｇ／ｍ２であった。次いで、この一体化物を自動車用フロアーマットの大きさに裁断し、ポリエステルからなる糸でオーバーロック加工を施して、重量１，７００ｇ／ｍ２の自動車用フロアーマットを製造した。
【００４０】
（実施例２）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が２０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４１】
（実施例３）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が６０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４２】
（比較例１）滑り止め層としてカーペットの代わりに合成樹脂からなる１，７００ｇ／ｍ２のシートを使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４３】
（比較例２）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が１０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４４】
（比較例３）滑り止め層のカーペットにおいて、パイル長さを１０ｍｍにしたこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４５】
（比較例４）上層カーペットにおいて、単糸繊度が１０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４６】
上記のようにして得られた各自動車用フロアーマットに対して下記評価法に基づいて滑り防止性、水切り性を調べた。その結果を表に示す。
【００４７】
（滑り防止性試験）実施例１〜３及び比較例１〜４の自動車用フロアーマット（１００ｍｍ×１４０ｍｍ）のそれぞれを、自動車の床に敷設された一般的なニードルパンチカーペット上に、自動車用フロアーマットの裏材とが当接するように載置した。次いで、自動車用フロアーマットの表面材上に１ｋｇの荷重を加えた状態で、自動車用フロアーマットをニードルパンチ不織布の表面に対して水平方向に引張り速度１００ｍｍ／分で引っ張り、自動車用フロアーマットを滑らせた時の静摩擦抵抗力を測定した。この結果は表１に示す通りであった。なお、この静摩擦抵抗力は５回測定した値の平均値である。実際の自動車室内に自動車用フロアーマットを配置した場合を想定し、静摩擦抵抗力２５Ｎ以上を滑らない滑り防止性に優れた自動車用フロアーマットと判定した。
【００４８】
（水切り性能試験）
実施例１〜３及び比較例１〜４の自動車用フロアーマット（250ｍｍ×250ｍｍ）のそれぞれを試料とし、試験片を標準状態で試料重量測定後、浸漬用容器中に試料パイル面を上向きに水平になるように置き、試料表面の中心に水200ｍｌ（Ａ）をかける。その後、1分後に引き上げ、引き上げた後の浸漬用容器に残った残水量を量る（Ｂ）。次に測定用容器の上方に製品を縦方向に吊り下げて３０分後に容器に溜まった水量を量る（Ｃ）。そして以下の式にて水切り性を求める。４０％以下を水切り性に優れた自動車用フロアーマットと判定した。
（Ａ−Ｂ）−Ｃ
水切り性（％）＝ ―――――――×100
（Ａ−Ｂ）
Ａ ：浸水前の水量ml
Ｂ ：1分間浸水後の浸漬用容器に残った残水量ml
Ｃ ：３０分後の測定用容器に溜まった水量ml
【００４９】
【表１】
【００５０】
表１から明らかなように、実施例１〜３で示される本発明の自動車用フロアーマットは軽量で、静摩擦抵抗力が大きく、滑りにくいことがわかった。また、実施例１〜３で示される自動車用フロアーマットは水切り性能に優れた自動車用フロアーマットであることがわかった。
【００５１】
これに対し、比較例１は非常に重量のある自動車用フロアーマットとなり、比較例１〜３では滑り防止性が確保できず、比較例４においては良好な水切り性能を得ることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の一実施形態に係わる自動車用フロアーマットの概略断面図である。
【符号の説明】
【００５３】
１………上層カーペット２………滑り止め層３………上層カーペットのパイル４………滑り止め層のカーペットのパイル５、９…ポリエステル不織布６、８…ラテックス層７………接着層
【技術分野】
【０００１】
本発明は、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に配置して使用する自動車用フロアーマットに係る技術である。
【背景技術】
【０００２】
従来から、自動車内においては、靴などに付着した土、砂、泥、砂利、或いは雨水などが自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットに付着して、自動車室内が汚れるのを防止するために、自動車用フロアーマットが敷かれている。
【０００３】
この自動車用フロアーマットとして、特許文献１において開示されているように、カーペットなどの表面材と、この表面材を支持する合成樹脂やゴムなどの裏材とからなるものが知られている。このようなフロアーマットにおいては、裏材によって耐久性が付与されるとともに、裏材に突起物を多数設けることにより、滑り止めの効果を付与するものである。
【０００４】
しかし、この従来の自動車用フロアーマットにおける合成樹脂やゴムからなる滑り止め層は１ｍ２あたり１，２００〜１，５００ｇと重いため、自動車室内に配置した場合には自動車の燃費が悪くなり、結果として環境に対して多大な負荷をかけることになる。また、使用済みのフロアーマットの表面材と裏材とを分離することが困難なため、焼却処分するか産業廃棄物として廃棄処分することになるが、焼却処分すると有害ガスを発生させる可能性があり、また、産業廃棄物として廃棄処分する場合では場所に限りがあり、廃棄処分できたとしても水質汚染を発生させるなど、様々な形で環境に対して多大な負荷をかけるものであった。
【０００５】
さらに、この従来の自動車用フロアーマットは合成樹脂やゴムからなり、その裏面に突起物が設けられ、前記従来の自動車用フロアーマットをタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットの上に配置した場合、本来ならば人が踏み込むことによって、パイル内に突起物がくい込んで滑りを止める働きをする筈であったが、近年では自動車内装材の外観品位に高品位が求められ、前記のタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが細い糸を使った高密度商品になってきたために、突起物がくい込みにくくなってきている。このため、合成樹脂製やゴムの裏材を有する自動車用フロアーマットが滑りやすく、さらに自動車用フロアーマット が滑りだすと、床に配置された上記タフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットとの接触部位が突起物の頂点のみとなりやすく、却って接触面積が減少するため、滑りが助長されることが事故に繋がる可能性もある。
【０００６】
一方、従来の自動車用フロアーマットの上層カーペットは自動車の床に敷設されたカーペットと同様の、タフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが使用されているが、このパイルに使われている糸を構成する単糸の繊度が１０デシテックス以上、３０デシテックス以下であり、自動車用フロアーマットのタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットの表面は細い糸が密集した状態にあり、雨の日や水に関する作業の後などには、靴底に付いた水分が自動車室内に持ち込まれ、自動車用フロアーマットの表面に付着し保有された状態になっている。また、その付着した水分を取り除くためには、車外で自動車用フロアーマットを振り切るだけでは取り除けず、水洗いしても乾燥に時間を要し、濡れたままの状態で放置する事が多く、その結果自動車室内の快適性が失われていた。
【特許文献１】特公平４−８５６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は前記の問題点、１、環境に負荷をかける重量、２、事故に繋がる滑り易さ、３、快適性を損なう水切り性、を解決するためになされたものであり、軽量で、滑り防止性に優れ、水切り性の良い、しかも環境に対して優しい自動車用フロアーマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【０００９】
［１］上層カーペットと滑り止め層と接着層からなる自動車用フロアーマットにおいて、前記滑り止め層を重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットで構成し、それぞれのカーペットのパイル面を外面にして接着層で貼り合わせたことを特徴とする自動車用フロアーマット。
【００１０】
［２］前記滑り止め層を構成するカーペットが、単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用し、カーペットのパイル長さが５ｍｍ以下のカットパイルからなる前項［１］記載の自動車用フロアーマット。
【００１１】
［３］前記上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したカーペットからなる前項［１］または［２］記載の自動車用フロアーマット。
【００１２】
［４］前記接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムからなる前項［１］乃至［３］記載の自動車用フロアーマット。
【発明の効果】
【００１３】
［１］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットは滑り止め層に重量のある合成樹脂やゴムに代えて繊維からなる重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットを使用したことにより、従来のフロアーマットよりも非常に軽量な自動車用フロアーマットにすることができる。自動車の燃費が悪くなることは無く、環境に対する負荷の小さい自動車用フロアーマットである。
【００１４】
［２］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する滑り止め層のカーペットパイルの単糸繊度を２０〜６０デシテックスの太い糸にしたことと、カーペットのパイルの長さを５ｍｍ以下のカットパイルにすることにより、自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットを構成する繊維に前記滑り止め層のカーペットパイルが引っ掛かり、摩擦抵抗が高くなり滑り防止性が向上した自動車用フロアーマットとなる。
【００１５】
［３］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したことにより、上層カーペットのパイル間にできる、水分が保持されたまま取り除きにくい原因となる小さな隙間が大きくなることから、水分が保持されず、移動しやすくなることによって、優れた水切り性を発揮することができる。雨の日や水に関する作業の後などに、靴底に付いた水分が自動車室内に持ち込まれても、車外で振り切るだけで簡単に水分を取り除くことができる。また、自動車用フロアーマットを水洗いした場合もすばやく水を切ることが出来る自動車用フロアーマットとなる。
【００１６】
［４］の発明によれば、本発明の自動車用フロアーマットを構成する接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムで構成したことにより、表面に付着した水分の自動車の床面への透水を防ぎ、前記上層カーペット部分での水切り性により好適な自動車用フロアーマットとなる、また接着層としてポリエチレン樹脂フィルムを使用しているので、自動車用フロアーマットを焼却する場合には、有害ガスを発生しないため、環境に対して好適な自動車用フロアーマットとなる。
【００１７】
更に、上層カーペットと、滑り止め層のカーペットを構成する繊維が再生利用可能なポリエステル繊維にする事により、自動車用フロアーマットの大部分を再度利用することができ、より環境に対する負荷の小さい自動車用フロアーマットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１８】
以下この発明に係わる自動車用フロアーマットの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態の自動車用フロアーマットは、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に配置して使用する自動車用フロアーマットである。図１は、本実施形態の自動車用フロアーマットの一部を拡大して示す模式的断面図である。（１）は上層カーペット、（２）は滑り止め層、（３）は上層カーペットのパイル、（４）は滑り止め層カーペットのパイル、（５）、（９）はポリエステル不織布、（６）、（８）はラテックス層、（７）は接着層である。
【００１９】
前記上層カーペット（１）はタフテッドカーペット機により製織されたタフテッドカーペットからなるものである。
【００２０】
本実施形態では、上層カーペットのパイル（３）として、ポリエステルフィラメント糸が用いられている。ポリエステルは他のカーペット用途のウールやナイロン等の素材より素材の持つ含有水分率が低く、水切り性が要求されるパイルに適している。
【００２１】
また、前記上層カーペットのパイル（３）は単糸繊度が２０〜６０デシテックスの糸が用いられている。一般的な自動車用フロアーマットは単糸繊度が５〜１５デシテックスの糸が使われるが、それよりも太い単糸繊度２０〜６０デシテックスの糸を使用することにより、水分が保持される糸と糸の間の微小な隙間の数を減少させ水分を取り除き易くし、水切り性の良好なパイルを形成している。さらに好ましい単糸繊度は４０〜６０デシテックスである。
【００２２】
また、前記上層カーペット（１）のパイルはカットパイルで構成されている。パイル先端をカットして開放することにより水切り性の良好なパイルを形成している。
【００２３】
この上層カーペット（１）の態様としては、例えば、タフテッドカーペット、緞通、フックカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどを使用することができるが、意匠性、経済性からタフテッドカーペットが好ましい。
【００２４】
なお、上層カーペット（１）における繊維の脱落を防止するために、上層カーペット（１）の下面にスチレン−ブタジエンゴム等のラテックス層（６）を設けて繊維を固定しパイル抜けを防止する。
【００２５】
本実施形態では、前記滑り止め層（２）はタフテッドカーペット機により製織されたタフテッドカーペットからなるものである。
【００２６】
また、滑り止め層のカーペットのパイル（４）として、ポリエステルフィラメント糸が用いられ、重量が４００ｇ／ｍ２以下と軽量
なカーペットを形成している。さらに好ましい重量は３００〜４００／ｍ２である。
【００２７】
また、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）は単糸繊度が２０〜６０デシテックスの糸が用いられ、パイルの長さを５ｍｍ以下で形成している。このパイルを構成する繊維の太さと短さの効果が相俟って、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）が剛性のある立毛状態となり、本発明の自動車用フロアーマットを自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に前記滑り止め層（２）を当接するように配置すると、パイル繊維の先端部が前記タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットを構成するパイルに引っ掛かり、摩擦抵抗が高くなる結果として、滑り防止性が向上する。さらに好ましい単糸繊度は４０〜６０デシテックス、前記パイルの長さは３〜５ｍｍがよい。
【００２８】
さらに、前記滑り止め層のカーペットのパイル（４）はカットパイルで構成されている。パイル先端をカットすることにより自動車の床に予め施設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットとの接触面積を増やし滑り防止性に良好なパイルを形成している。
【００２９】
この滑り止め層（２）のカーペットの態様としては、例えば、タフテッドカーペット、緞通、フックカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどを使用することができるが、意匠性、経済性からタフテッドカーペットが好ましい。
【００３０】
なお、滑り止め層（２）のカーペットにおける繊維の脱落を防止するために、滑り止め層（２）のカーペットの裏面にスチレン−ブタジエンゴム等のラテックス層（８）を設けて繊維を固定しパイル抜けを防止する。
【００３１】
さらに、本実施形態では、本発明の自動車用フロアーマットは構成する上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維として、共にポリエステルフィラメント糸を使用することにより、処分時の焼却の際に有害ガスが発生しない。また、前記上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットに使用するポリエステルフィラメント糸に再生ポリエステルを使用すれば、さらに環境に考慮した自動車用フロアーマットとなる。
【００３２】
本実施形態では、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）との一体化は、Ｔダイ型押出し機により、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融するポリエチレン樹脂フィルム（７）を、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）との間に押し出し圧着冷却により一体化する。前記ポリエチレン樹脂フィルム（７）の塗布量を３００ｇ／ｍ２以上で形成すれば、良好な止水性を発揮し、自動車の床面への透水を防ぎ、水切り性が向上することになる。ポリエチレン樹脂をＴダイ型押出し機で押出す加工方法は接着性、水切り性において自動車用フロアーマットとして好適な一体化方法である。前記ポリエチレン樹脂フィルム（７）の塗布量は４００〜５００ｇ／ｍ２が好ましい。
【００３３】
また、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）を一体化する方法として、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）のカーペットを構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融する熱溶融シートを、上層カーペット１と滑り止め層２の間に配置し、前記熱溶融シートのみを融着できる温度で熱処理する方法がある。勿論、止水性を発揮する厚みのあるシートが必要である。
【００３４】
使用する前記熱溶融シートは自動車用フロアーマットを焼却する場合には、有害ガスを発生しないポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂からなるのが好ましい。
【００３５】
なお、上層カーペット（１）と滑り止め層（２）とを一体化した場合、その周縁部が見苦しかったり、繊維の脱落が生じる場合があるため、オーバーロックミシンを使った、糸による縁取り加工（オーバーロック加工）によりその周縁部を覆い隠したり、布または樹脂製のテープによる縁取り加工（テープロック加工）によりその周縁部を覆い隠すのが好ましい。なお、オーバーロック加工に使用する糸はナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、或いは再生したポリエステルを使用することが好ましく、またテープロック加工に使用するテープはナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、或いは再生したポリエステル樹脂を使用することにより、環境に対して好適な自動車用フロアーマットとなる。
【実施例】
【００３６】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【００３７】
（実施例１）上層カーペットとして、単糸繊度が４０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸を、タフティングカットパイル機にて、ポリエステル繊維からなる不織布（重量：１００ｇ／ｍ２）に１／１０ゲージ（ヨコ密度：３９本／１０ｃｍ）、３０ステッチ（タテ密度：３０本／１０ｃｍ）、パイル長８ｍｍでタフティングをおこない、カットパイルが形成されたタフテッドカーペット（パイル重量：６００ｇ／ｍ２）を用意した。なお、カーペットの裏面にはフィラメント糸の脱落を抑制するために、乾燥質量：１００ｇ／ｍ２のスチレン−ブタジエンゴムラテックスを塗布した。
【００３８】
他方、滑り止め層２のカーペットとして、単糸繊度が４０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸を、タフティングカットパイル機にて、ポリエステル繊維からなる不織布（重量：１００ｇ／ｍ２）に１／１０ゲージ（ヨコ密度：３９本／１０ｃｍ）、３０ステッチ（タテ密度：３０本／１０ｃｍ）、パイル長３ｍｍでタフティングをおこない、カットパイル（パイル長さが３ｍｍ）が形成されたタフテッドカーペット（パイル重量：３００ｇ／ｍ２）を用意した。なお、カーペットの裏面にはフィラメント糸の脱落を抑制するために乾燥質量：１００ｇ／ｍ２のスチレン−ブタジエンｍ２ゴムラテックスを塗布した。
【００３９】
次いで、前記上層カーペット（ラテクックス塗布側）と滑り止め層のカーペット（ラテクックス塗布側）との間に、Ｔダイ型押出し機より押し出したポリエチレン樹脂フィルムを供給し、このポリエチレン樹脂フィルムを介して前記上層カーペットと滑り止め層とを一体化した。このポリエチレン樹脂フィルムの塗布量は４００ｇ／ｍ２であった。次いで、この一体化物を自動車用フロアーマットの大きさに裁断し、ポリエステルからなる糸でオーバーロック加工を施して、重量１，７００ｇ／ｍ２の自動車用フロアーマットを製造した。
【００４０】
（実施例２）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が２０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４１】
（実施例３）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が６０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４２】
（比較例１）滑り止め層としてカーペットの代わりに合成樹脂からなる１，７００ｇ／ｍ２のシートを使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４３】
（比較例２）滑り止め層のカーペットにおいて、単糸繊度が１０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４４】
（比較例３）滑り止め層のカーペットにおいて、パイル長さを１０ｍｍにしたこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４５】
（比較例４）上層カーペットにおいて、単糸繊度が１０デシテックスのフィラメントで構成される繊度２４００デシテックスのポリエステル糸からなるフィラメント糸を使用したこと以外は実施例１と全く同様にして、自動車用フロアーマットを製造した。
【００４６】
上記のようにして得られた各自動車用フロアーマットに対して下記評価法に基づいて滑り防止性、水切り性を調べた。その結果を表に示す。
【００４７】
（滑り防止性試験）実施例１〜３及び比較例１〜４の自動車用フロアーマット（１００ｍｍ×１４０ｍｍ）のそれぞれを、自動車の床に敷設された一般的なニードルパンチカーペット上に、自動車用フロアーマットの裏材とが当接するように載置した。次いで、自動車用フロアーマットの表面材上に１ｋｇの荷重を加えた状態で、自動車用フロアーマットをニードルパンチ不織布の表面に対して水平方向に引張り速度１００ｍｍ／分で引っ張り、自動車用フロアーマットを滑らせた時の静摩擦抵抗力を測定した。この結果は表１に示す通りであった。なお、この静摩擦抵抗力は５回測定した値の平均値である。実際の自動車室内に自動車用フロアーマットを配置した場合を想定し、静摩擦抵抗力２５Ｎ以上を滑らない滑り防止性に優れた自動車用フロアーマットと判定した。
【００４８】
（水切り性能試験）
実施例１〜３及び比較例１〜４の自動車用フロアーマット（250ｍｍ×250ｍｍ）のそれぞれを試料とし、試験片を標準状態で試料重量測定後、浸漬用容器中に試料パイル面を上向きに水平になるように置き、試料表面の中心に水200ｍｌ（Ａ）をかける。その後、1分後に引き上げ、引き上げた後の浸漬用容器に残った残水量を量る（Ｂ）。次に測定用容器の上方に製品を縦方向に吊り下げて３０分後に容器に溜まった水量を量る（Ｃ）。そして以下の式にて水切り性を求める。４０％以下を水切り性に優れた自動車用フロアーマットと判定した。
（Ａ−Ｂ）−Ｃ
水切り性（％）＝ ―――――――×100
（Ａ−Ｂ）
Ａ ：浸水前の水量ml
Ｂ ：1分間浸水後の浸漬用容器に残った残水量ml
Ｃ ：３０分後の測定用容器に溜まった水量ml
【００４９】
【表１】
【００５０】
表１から明らかなように、実施例１〜３で示される本発明の自動車用フロアーマットは軽量で、静摩擦抵抗力が大きく、滑りにくいことがわかった。また、実施例１〜３で示される自動車用フロアーマットは水切り性能に優れた自動車用フロアーマットであることがわかった。
【００５１】
これに対し、比較例１は非常に重量のある自動車用フロアーマットとなり、比較例１〜３では滑り防止性が確保できず、比較例４においては良好な水切り性能を得ることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】本発明の一実施形態に係わる自動車用フロアーマットの概略断面図である。
【符号の説明】
【００５３】
１………上層カーペット２………滑り止め層３………上層カーペットのパイル４………滑り止め層のカーペットのパイル５、９…ポリエステル不織布６、８…ラテックス層７………接着層
【特許請求の範囲】
【請求項１】
上層カーペットと滑り止め層と接着層からなる自動車用フロアーマットにおいて、前記滑り止め層を重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットで構成し、それぞれのカーペットのパイル面を外面にして接着層で貼り合わせたことを特徴とする自動車用フロアーマット。
【請求項２】
前記滑り止め層を構成するカーペットに、単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用し、カーペットのパイル長さが５ｍｍ以下のカットパイルである請求項１に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項３】
前記上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したカーペットからなる請求項１又は２に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項４】
前記接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムである請求項１乃至３に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項１】
上層カーペットと滑り止め層と接着層からなる自動車用フロアーマットにおいて、前記滑り止め層を重量が４００ｇ／ｍ２以下の軽量なカーペットで構成し、それぞれのカーペットのパイル面を外面にして接着層で貼り合わせたことを特徴とする自動車用フロアーマット。
【請求項２】
前記滑り止め層を構成するカーペットに、単糸繊度が２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸を使用し、カーペットのパイル長さが５ｍｍ以下のカットパイルである請求項１に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項３】
前記上層カーペットの単糸繊度を２０〜６０デシテックスのポリエステルフィラメント糸で構成したカーペットからなる請求項１又は２に記載の自動車用フロアーマット。
【請求項４】
前記接着層が止水性のある３００ｇ／ｍ２以上のポリエチレン樹脂フィルムである請求項１乃至３に記載の自動車用フロアーマット。
【図１】
【公開番号】特開２００６−２９８１２４（Ｐ２００６−２９８１２４Ａ）
【公開日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−１２１９２４（Ｐ２００５−１２１９２４）
【出願日】平成１７年４月２０日（２００５．４．２０）
【出願人】（３９００１４４８７）住江織物株式会社 (294)
【出願人】（５０１３９５５３５）原田繊維株式会社 (7)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年４月２０日（２００５．４．２０）
【出願人】（３９００１４４８７）住江織物株式会社 (294)
【出願人】（５０１３９５５３５）原田繊維株式会社 (7)
【Ｆターム（参考）】
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