説明

自動車用雪止め装置

【課題】自動車の屋根のカーブや車幅に違いがあっても、これらに影響されることなく自動車の屋根にぴったりと沿わせて簡単かつ確実に装着することができる、構造簡単で装着容易な自動車用雪止め装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも自動車の屋根への取り付け面2と、この取り付け面2から略垂直に立ち上がる雪止め面3とを備えた所定長さの可撓性樹脂体1からなり、該可撓性樹脂体1の内部には、複数個の永久磁石4を可撓性樹脂体1の長手方向に沿って埋め込むとともに、該永久磁石4の上側には、所定の厚さからなる弾性板5を、その板面が取り付け面2側に向いた状態で可撓性樹脂体1の長手方向に沿って埋め込んだ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の屋根に積もった雪が走行中にフロントガラス側へ滑落しないようにするための自動車用雪止め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
寒冷地では、屋外に駐停車している自動車の屋根に雪が降り積もることが往々にして起こる。積雪量が少ない場合にはそれほど問題になることはないが、ある程度以上に積もった場合、屋根に積もった雪を除雪することなしにそのまま車を使用すると、エンジン熱や室内暖房熱によって屋根と接した面の雪が溶けて滑りやすくなり、積もった雪が走行中にフロントガラス側へ滑落することがある。このように、屋根に積もった雪がフロントガラス側へ滑落すると、走行中の運転者の視界を妨げたり運転者を驚かせたりし、場合によっては事故を誘発するおそれがある。
【0003】
そこで、従来より上記問題を解決するための雪止め装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の雪止め装置は、自動車の屋根幅に等しい長さとされ、かつ、その前面が傾斜面で後面が略垂直面とされた断面逆V字形のケースからなり、この断面逆V字形をしたケース内に、霜取り用のシートを傾斜面下縁のスリット部から引き出し・巻き取り自在に内装するとともに、ケースの左右両端部には、断面逆V字形をしたケースを自動車の屋根側縁に取り付けて固定するための金具を設けたものである。
【0004】
【特許文献1】特開平9−240286号公報(全ページ、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の雪止め装置は、屋根に積もった雪が走行中にフロントガラス側へ滑落することを防止できるとともに、駐停車時に霜取り用シートを引き出してフロントガラスを覆うことにより、フロントガラスに霜が凍結することを防止できるという優れた効果を奏することができるものである。
【0006】
しかしながら、上記従来の雪止め装置の場合、断面逆V字形になるケースは合成樹脂の一体成形品からなり、しかもその内部には霜取り用シートとその構成部品が組み込まれている関係で、ケース自体を自由に曲げることは不可能である。このため、車種によってはケースの下面を自動車の屋根のカーブに沿わせることができない場合がある。また、断面逆V字形になるケースを自動車の屋根に取り付けるには、ケースの左右両端部の金具を自動車の屋根側縁に固定する必要があるが、自動車の車幅は車種によって様々であり、車幅が合わないと取り付けることができない。したがって、あらゆるカーブの屋根、あらゆる車幅の自動車に対応させるには、屋根のカーブと車幅の異なる車種毎に雪止め装置を製造し、用意しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、自動車の屋根のカーブや車幅に違いがあっても、これらに影響されることなく自動車の屋根にぴったりと沿わせて簡単かつ確実に装着することができる、構造簡単で装着容易な自動車用雪止め装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の自動車用雪止め装置は、少なくとも自動車の屋根への取り付け面と、この取り付け面から略垂直に立ち上がる雪止め面とを備えた所定長さの可撓性樹脂体からなり、該可撓性樹脂体の内部には、複数個の永久磁石を可撓性樹脂体の長手方向に沿って埋め込むとともに、該永久磁石の上側には、所定の厚さからなる弾性板を、その板面が取り付け面側に向いた状態で可撓性樹脂体の長手方向に沿って埋め込んだものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成になる本発明の自動車用雪止め装置によれば、可撓性樹脂体の内部に永久磁石が埋め込まれているので、この永久磁石の磁力によって可撓性樹脂体の取り付け面を自動車の屋根に吸着固定することができ、屋根に積もった雪がフロントガラス側へ滑り落ちようとしても、取り付け面から略垂直に立ち上がる雪止め面によって押しとどめ、滑落を防止することができる。
【0010】
そして、装置全体を可撓性樹脂体で構成したので、どのようなカーブからなる自動車の屋根であっても、屋根面のカーブに沿わせてぴったりと吸着固定することができる。このため、車種によって屋根のカーブが異なっていても、これに影響されることなくすべての自動車に対して簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0011】
また、内部に埋め込んだ磁石の磁力によって自動車の屋根面に吸着固定されるので、前述した特許文献1に記載の雪止め装置のように自動車の屋根側縁に固定するための金具を可撓性樹脂体の左右両端部に設ける必要がない。このため、自動車の車幅に関係なくどのような車幅の自動車であっても簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0012】
また、可撓性樹脂体中に弾性板を埋め込んでいるので、この弾性板の作用によって可撓性樹脂体は自動車の屋根面と垂直な方向(上下方向)へのみ自由に曲がることができるようになり、屋根面と平行な方向(前後方向)へは簡単に折れ曲がるようなことがなくなる。このため、屋根面への装着の際、可撓性樹脂体を自動車の車幅方向に沿って直線状に真っ直ぐに吸着固定することができ、さらに、吸着固定後においても、車の前後方向に簡単に折れ曲がるようなことがなく、常に車幅方向に沿わせておくことができるので、雪止め効果を確実に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1、図2に本発明に係る自動車用雪止め装置の一実施の形態を示す。
この実施の形態に係る自動車用雪止め装置は、その全体が自動車の車幅よりも短い所定長さ(例えば500mm)の可撓性樹脂体1で構成されており、自由に曲がることができるようになっている。この可撓性樹脂体1の素材としては、例えばシリコン樹脂(シリコンゴム)などを用いればよい。
【0014】
図示例の場合、可撓性樹脂体1は、その断面形状を略直角三角形状とされており、直角に交わる2面のうちの下側の面が自動車の屋根に接する取り付け面2とされ、この取り付け面2に対して垂直に立ち上がる面が雪止め面3とされている。なお、図示例の場合、取り付け面2の幅は約28mm、雪止め面3の高さは約15mmとした。
【0015】
可撓性樹脂体1の内部には、取り付け面2と向き合うように、複数個(図示例では19個)の永久磁石4が取り付け面2と僅かな距離(例えば0.8mm)を置いて可撓性樹脂体1の長手方向に沿って所定の間隔で一列に埋め込まれている。この永久磁石4は、その磁力によって可撓性樹脂体1を自動車の屋根に吸着固定させるためのものである。図示例では、直径10mm、厚さ2mm、表面磁束密度2000ガウスのネオジウム磁石を用いた。なお、左右両端部に位置する3個の永久磁石4はそれぞれその間隔を詰めて埋め込まれており、可撓性樹脂体1が自動車の屋根に吸着固定された際に、屋根面から簡単に剥がれることがないように工夫されている。
【0016】
さらに、可撓性樹脂体1の内部には、前記一列に並べて埋め込まれた永久磁石4の上側に位置して、所定の厚さからなる弾性板5が、永久磁石4を覆うように、その板面を取り付け面2側に向けた状態で可撓性樹脂体1の全長にわたって埋め込まれている。この弾性板5を埋め込むことにより、可撓性樹脂1の全体を自動車の屋根のカーブにぴったりと沿わせて曲げることができるようにするとともに、屋根面と平行な方向、すなわち車の前後方向には可撓性樹脂体1が簡単に折れ曲がることがないようにしたものである。図示例の場合、この弾性板5としては、長さ496mm、幅25mm、厚さ0.3mmのステンレス製薄板を用いた。なお、この弾性板5としては金属板に限らず、適当な弾性を有する限りプラスチック板であってもよい。特に、弾性板5として磁性体を用いた場合には、弾性体5を永久磁石4の発する磁束の磁気通路として利用することができるので、発生する磁力をより強めることができる。
【0017】
上記構成になる雪止め装置は、次のようにして使用される。
先ず、使用開始に際しては、図3に示すように、可撓性樹脂体1を、自動車11の屋根12のフロントガラス13寄りの位置に、その取り付け面2を下に、かつ、雪止め面3を車の後方側に向けた状態で、車幅方向に沿って載置する。可撓性樹脂体1を屋根12上に載置すると、可撓性樹脂体1はその内部に埋め込んだ永久磁石4の磁力によって屋根面に吸着固定される。
【0018】
このとき、可撓性樹脂体1中に埋め込んだ弾性板5の作用によって、可撓性樹脂体1は自動車の屋根面と垂直な方向(上下方向)へのみ自由に曲がることができる。このため、可撓性樹脂体1は屋根12のカーブにぴったりと沿って曲がると同時に、屋根面と平行な方向、すなわち車の前後方向へは折れ曲がることがないので、車幅方向に沿って直線状に真っ直ぐに載置固定することができる。また、特許文献1に記載の雪止め装置のように雪止め装置を自動車の屋根側縁に固定するための金具を可撓性樹脂体1の左右両端部に設ける必要がないので、自動車の車幅に関係なくどのような車幅の自動車であっても簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0019】
上記のようにした本発明の雪止め装置を設置した状態で、例えば屋外に長時間駐車し、その間に屋根12に雪が降り積もり、この積もった雪を除雪することなしにそのままの状態で車を使用すると、走行する間にエンジン熱や室内暖房熱によって屋根と接した面の雪が溶け、屋根から滑り落ちやすくなる。このような状態でブレーキをかけたり、急停車すると、積もった雪がフロントガラス13側へ滑り落ちようとする。しかし、図3のように本発明の雪止め装置を取り付けていると、フロントガラス13側へ滑落しようとする雪は、屋根12に吸着固定された可撓性樹脂体1の雪止め面3によって押しとどめられ、フロントガラス13側へ滑落するようなことがなくなる。このため、滑落してくる雪によって運転者の視界が突然妨げられたり、あるいは運転者を驚かせたりするようなことがなくなり、雪の滑落に伴う事故の発生を防止することができる。
【0020】
また、本発明の雪止め装置は、永久磁石の磁力によって自動車の屋根に吸着固定しているので、可撓性樹脂体1の端部を掴んで引き剥がすように持ち上げていくだけで、何らの治具や道具を必要とすることなしに取り外すことができる。したがって、雪止め装置が不要の場合や不要の季節には、本発明の雪止め装置を取り外して車のトランク等に収納保管しておき、必要になったら取り出して取り付けるようにすればよい。このため、その使い勝手が極めて良い。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、可撓性樹脂体1としてシリコン樹脂を、永久磁石4としてネオジウム磁石を、また弾性板5としてステンレス薄板を用いたが、同様な作用効果をなす部材であれば他の部材であっても採用することができる。
【0022】
また、永久磁石4を一列に並べて配置したが、2列あるいはそれ以上の複数列に並べてもよいし、千鳥状に並べてもよいものである。何個の永久磁石を用いてどのような配置で並べるかは、要求される雪止め装置としての仕様に応じて決定すればよい。
【0023】
また、可撓性樹脂体1の断面形状を略直角三角形状とした場合の例を示したが、この断面形状に限られるものではなく、少なくとも自動車11の屋根12への取り付け面2と、この取り付け面2から略垂直に立ち上がる雪止め面3とを備える限り、それ以外の断面形状(例えば、四角形断面、台形断面、その他の多角形断面など)であってもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る自動車用雪止め装置の一実施の形態を示すもので、(a)は全体構造を示す斜視図、(b)は(a)中のb−b位置における拡大断面図である。
【図2】(a)は上記実施の形態に係る雪止め装置の正面図、(b)はその平面図、(c)はその側面図、(d)は(b)中のd−d矢視拡大断面図である。
【図3】上記実施の形態に係る雪止め装置の使用説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 可撓性樹脂体
2 取り付け面
3 雪止め面
4 永久磁石
5 弾性板
11 自動車
12 屋根
13 フロントガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自動車の屋根への取り付け面と、この取り付け面から略垂直に立ち上がる雪止め面とを備えた所定長さの可撓性樹脂体からなり、該可撓性樹脂体の内部には、複数個の永久磁石が可撓性樹脂体の長手方向に沿って埋め込まれているとともに、該永久磁石の上側には、所定の厚さからなる弾性板がその板面を取り付け面側に向けた状態で可撓性樹脂体の長手方向に沿って埋め込まれていることを特徴とする自動車用雪止め装置。
【請求項2】
前記可撓性樹脂体の断面形状が略直角三角形状になることを特徴とする請求項1記載の自動車用雪止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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