説明

自動車用電線および該自動車用電線の電線色決定方法

【課題】自動車に配線している電線のメンテナンスを容易にする。
【解決手段】自動車に配索される部位毎に電線群を集束して組み立てたワイヤハーネスを複数備え、異なるワイヤハーネスに属する電線端末に接続した端子同士がコネクタ内で嵌合接続され、このコネクタ接続された電線端末が機器に接続される補器コネクタに接続されて1つの回路を構成する複数の電線は、その電線色を同一としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電線および該自動車用電線の電線色決定方法に関し、特に、電線のコネクタ接続作業性およびメンテナス作業性を高めるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、1台の自動車には数百本の電線が配線されており、これら電線は、自動車の所要部位毎にワイヤハーネスとしてまとめて組み立てられている。これらワイヤハーネスのうち、エンジンハーネス、エンジンルームハーネス、カウルハーネス、インパネハーネス等の大型ワイヤハーネスは、少ない場合でも30本〜50本で、通常は100〜300本の電線からなる。
【0003】
これらのワイヤハーネスは、多数本の電線を集束してテープ巻き等で集束し、あるいはコルゲートチューブ等に通して予め集束している。これらワイヤハーネスの電線の端末には1または複数のコネクタを取り付けている。
前記のように組み立てられたワイヤハーネスは自動車の組み立てラインにおいて、それぞれ所要部位に配索して車体にクランプを介して固定し、ワイヤハーネスの電線の端末に取り付けたコネクタを他のワイヤハーネスのコネクタと接続したり、あるいは自動車に搭載する機器に直接接続している。
【0004】
前記ワイヤハーネスとして集束される多数本の電線は、それぞれ端末に接続した端子をコネクタのキャビテイ(端子収容室)に挿入しており、その際、作業員が、設計したキャビテイ以外のキャビティに端子を間違えて挿入し、コネクタ接続される電線同士に誤結が発生する恐れがある。そのため、1つのコネクタの多数のキャビティに挿入する複数の電線は電線色を相違させ、ワイヤハーネス組立作業台に各コネクタの配列表を作業者が見える位置に配置し、配列表で各キャビティに挿入する電線色を指定している。
このように、自動車用の電線はコネクタでの誤結発生を防止するために電線色を相違させている。
【0005】
自動車に搭載する機器の増加に伴い、電線本数が増加し、これらの電線に接続するコネクタもキャビティの個数が40極等の大型コネクタが増加している。よって、自動車用の電線の電線色は多数になっている。例えば、電線の芯線に被覆する絶縁被覆の色を赤、青、黄、緑、黒…等の一色のみからなる無地の地色の電線、さらに、これら多数の地色に軸線方向のストライプやドットを設けた電線等、電線色が46色程度と多数になっている。
【0006】
しかしながら、電線色が多種類になると、電線の製造コストが大幅にアップする問題がある。また、細径電線の場合、ストライプの幅と地色の幅とが同一幅となり、どちらが地色か不明となりやすく、また、ストライプおよび地色とも細幅となるため、その色が何色かも見分けにくくなり、作業者の負担が増加している等の問題もある。
一方、電線色を減少すると多極コネクタには同一色の電線が複数本接続されることにより、誤結が発生しやすくなる。
【0007】
前記問題を解決するため、本出願人は、特開2003−281949号公報や特開2002−367440号公報において、自動車用電線の電線色を減少するために、コネクタに接続する電線の配列パターンの設定方法等を提供している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−281949号公報
【特許文献2】特開2002−367440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1、2で提供したコネクタへ接続する電線の配列パターンに従えば、電線色を17色以下、さらには13色以下まで減少することができる。
しかしながら、前記特許文献1、2はコネクタでの誤結防止を目的として、コネクタのキャビテイに挿入する電線をキャビテイの配列に応じて電線色を設定しているため、電線端末の端子同士がコネクタを介して接続される一対の電線の電線色が相違する恐れもある。
例えば、バックランプに接続する電源回路を、インストルメントパネルハーネスに属する赤色の電線とフロアハーネスに属する青色の電線とをコネクタ接続し、該フロアハーネスの青色の電線とリアハーネスの黒色の電線とをコネクタ接続し、該リアハーネスの黒色電線の端末に接続した補器コネクタをバックランプに接続する場合がある。
【0010】
このように、一つの電源回路を形成するために順次コネクタ接続する3本電線が、赤色電線、青色電線、黒色電線と電線色が相違すると、メンテナンス時に作業性が悪くなり、ミスが発生する恐れがあるため作業時に細心の注意を払う必要があり、作業性が悪くなる。例えば、前記バックランプに接続する電源回路に故障が発生した場合、該電源回路を構成する電線の電線色が相違するため、多数本の電線中から当該電源回路の電線を探すのにコネクタの電線色の配列表を見ながら確認する必要があり作業性が悪くなる。
【0011】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、メンテナンス時に作業性がよく、ミスが発生しないように電線色を設定することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、自動車に配索される部位毎に電線群を集束して組み立てたワイヤハーネスを複数備え、異なるワイヤハーネスに属する電線端末に接続した端子同士がコネクタ内で嵌合接続され、このコネクタ接続された電線端末が機器に接続される補器コネクタに接続されて1つの連続した回路を形成する複数の電線は、その電線色を同一としていることを特徴とする自動車用電線を提供している。
【0013】
前記電線端末の端子同士を接続するコネクタ(以下、「W to Wコネクタ」と称す)を介して接続する前記ワイヤハーネスは、インストルメントパネルハーネス、エンジンルームハーネス、フロアパネルハーネス、リアハーネス、ドアハーネス、ルーフハーネスから選択される2つ以上のワイヤハーネスである。
【0014】
即ち、前記バックランプの電源回路を形成するために「W to Wコネクタ」を介して順次接続するインストリメントパネルハーネスに属する電線、フロアハーネスに属する電線およびリアハーネスに属する電線の電線色は同一電線色、例えば、赤色電線色としている。
また、前記バックランプの信号回路を形成するためにコネクタを介して接続する複数の電線の電線色は緑色としている。
さらに、前記バックランプのアース回路を形成するために「W to Wコネクタ」を介して接続する複数の電線の電線色は白色としている。
即ち、1つの機器コネクタに接続する異なる回路の電線は互いに異なる電線色としているが、各1つの回路を形成するためにコネクタ接続して連続させる電線は同一電線色としている。
【0015】
このように、本来は1本の電線で連続して形成できる1回路の電線が、配索領域が長いため、異なるワイヤハーネスに属す電線同士を「W to Wコネクタ」で接続して形成する場合は、これら連続した1回路を形成する電線を同一電線色とすることで、メンテナンス作業が容易となり、ミスの発生を抑制、防止することができる。
【0016】
また、同一のワイヤハーネスに属し、スプライス接続される複数の電線同士およびジョイントコネクタで接続される複数の電線同士は、これら接続される電線サイズが同一の場合、電線色は同一としていることが好ましい。
これらスプライス接続で互いに導通される複数の電線は、どの電線に接続しても誤結にならない。同様に、ジョイントコネクタで接続して互いに導通される複数の電線も、どの電線に接続しても誤結にならない。よって、これらの電線同士は同一電線色としてスプライス接続作業やジョイントコネクタによる接続作業を容易とし、かつ、一台の自動車用に配線する電線の電線色を低減できるようにしている。
【0017】
さらに、一台の自動車に配線されるアース回路を形成する全電線はすべて同一色とし、電源回路及び信号回路を形成する電線の電線色と相違させていることが好ましい。
例えば、アース回路を形成する電線は、全て白色あるいは白色と黒色とのストライプとし、該アース回路の電線の電線色は、電源回路および信号回路の電線の電線色としていない。
このように、アース回路の電線色を特定することで、メンテナンス作業を更に容易にすることができる。
【0018】
一台の自動車に配索される全電線の電源回路および信号回路を形成する電線色は、シールド線およびツイスト線からなる特殊電線および電線色が電線規格で定められている回路の電線を除き、ストライプやドットが無い地色のみとし、該地色を13色以下としていることが好ましい。アース回路の電線も同一色としているため、アース回路の電線を含めると14色以下とする。
【0019】
前記シールド電線、通信回路用の一対の電線を捩らせて形成するツイスト電線等の特殊電線は、前記電線色を特定する一般電線と異なるコネクタに接続されるため、電線色が相違しても、メンテナンス時に誤結が発生する恐れがないため、電線色を特定する必要はない。また、エアバック回路等に接続される電線等を含めて電線色が規定されている場合は、当然に規定された電線色としている。
【0020】
前記のように、電線同士の接続形態に応じ、「W to Wコネクタ」で接続される電線を同一電線色とし、また、同一サイズの電線で、かつ、スプライス接続、ジョイントコネクタ接続する電線同士は同一電線色とすることで、一台の自動車に配線する電線(アース回路の電線を除き)の電線色を前記のように地色のみの13色以下まで低減することができる。
また、アース回路の電線を地色のみあるいはストライプ入りとした場合でも、アース回路の電線色は同一電線色とすると、該アース回路の電線を含めて、一台の自動車に配線する電線色を14色以下にすることができる。
【0021】
1つのコネクタの複数のキャビティに接続される複数の電線のうち、下記(1)〜(5)の条件に該当する電線同士は互いに電線色を異ならせている。
(1)電線サイズが同一の電線
(2)挿入するコネクタのキャビテイが同一列の隣接するキャビティに挿入される電線
(3)スプライス接続されている電線で、かつ、電線サイズが同一であると共に行き先の補器コネクタが異なる電線
(4)行き先の補器コネクタが同一の電線
(5)一つの仮結束ハーネスを構成する電線
【0022】
前記のように、メンテナンス作業を容易としながらミスが発生しないように、電線の接続形態に応じて電線色を特定し、前記特許文献1、2で規定したコネクタのキャビテイへの配列パターンで電線色を設定しない場合、1つのコネクタに接続する複数の電線には同一電線色の電線が存在しやすい状況となる。さらに、電線色はアース回路の電線を含めて14色以下とすると、さらに、1つのコネクタに接続する複数の電線に同一電線色が発生しやすい。
よって、前記(1)〜(5)の条件に該当する電線同士は電線色を相違させて、コネクタを介して誤結が発生しないようにしている。
【0023】
前記(1)の電線サイズが同一で、かつ、同一電線色の場合は、電線色が相違するように、電線色を変えている。前記電線サイズは電線規格でランク付けされており、前記のように、同一ランクの電線、好ましくは、電線サイズのランクが2ランクしか相違していない電線も、コネクタへの挿入ミスが発生しやすくなるため、異なる電線色としている。
【0024】
コネクタが比較的大型である場合、該コネクタは水平方向に多数のキャビテイを並列していると共に、該列を上下に設けた段にキャビテイを設けている。このような大型コネクタでは同一電線色の電線が接続される可能性が高くなる。
その場合、前記(2)に記載のように、少なくとも同一列の隣接するキャビテイには電線サイズが相違しても同一電線色の電線を挿入しない設定とし、電線色を相違させている。好ましくは、同一電線色の電線は2個のキャビテイを隔てた位置とし、同一列で連続する3個のキャビテイには異なる電線色の電線を挿入する設定としている。さらに、列方向および段方向で対称位置にある電線の電線色を変えることが好ましい。
【0025】
また、前記のように、互いにスプライス接続されている複数の同一サイズの電線同士は同一電線色としているが、この同一サイズで同一色としたスプライス接続された電線が異なる補器コネクタに接続される場合は、例外として、前記(3)に記載のように、スプライス接続される電線の電線色を変えている。
なお、行き先が一つの補器コネクタに接続されるスプライスした電線は、該電線を挿入するキャビテイを変えて同一電線色としてもよい。
【0026】
前記(4)に記載のように、行き先の機器コネクタが同一である複数の電線は電線色を変えている。即ち、前記のように一つのランプに接続する電源回路の電線、信号回路の電線、アース回路の電線は相互に電線色を変えて、配線間違いが発生しないようにしている。
言い換えれば、行き先の機器コネクタが、ランプとスイッチのように相違する機器に接続される場合には、電線色は同一としてもよい。
【0027】
ワイヤハーネスは、電線端末にコネクタを接続した仮結束ハーネスを束ねて本結束してワイヤハーネスを形成している。前記(5)に記載のように、この仮結束ハーネスを形成する電線の端末に接続する1つのコネクタには同一電線色の電線を接続しないようにして、誤結発生を防止している。
【0028】
第2の発明として、前記自動車用電線の電線色の決定方法を提供している。
該電線色の決定方法は、
最初に、前記補器コネクタに接続する電線の電線色を決定し、
ついで、前記電線色を決定した電線の端子とコネクタを介して端子同士を接続する電線は前記電線色と同一に設定し、
ついで、前記一つのコネクタの複数のキャビティに接続される電線のうち、同一電線色となる電線は予め設定したルールに従って電線の色を調整することを特徴とする。
【0029】
前記最初に電線色を決定する補器コネクタは、回路の上流端の補器コネクタ、あるいは該上流端の補器コネクタよりも極数が多い下流端の補器コネクタとし、
前記ルールを適用している。
【0030】
前記のように、本発明では、まず、機器に接続される補器コネクタに接続する電線の電線色を決定する。1つの補器コネクタに接続する電線色は相互に相違させ、機器に直接接続する補器コネクタでの配線ミスを無くしている。
具体的には、例えば、電源側からみて行き先となる最下流の電線の電線色を最初に決定し、該電線と「W to Wコネクタ」で接続されていく複数の電線は同一電線色とする。
次に、前記のように電線色を決定した複数の電線を1つのコネクタに接続すると、同一電線色の電線が発生する場合、少なくとも、同一列の隣接するキャビテイ以外のキャビテイに挿入する配列パターンとしている。
【発明の効果】
【0031】
前記のように、本発明の自動車用電線では、順次「W to Wコネクタ」で接続して1つの連続した回路を形成する複数の電線は同一電線色としているため、メンテナンスを容易としながらミスの発生を確実に防止することができる。
かつ、1台の自動車に配線する全電線の電源回路および信号回路の電線色を地色のみの13色以下にでき、かつ、アース回路の電線を同一色とすると14色以下にでき、メンテナンス時に電線の識別を容易としながら、電線製造コストを低下することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態を示す全体図である。
【図2】図1のコネクタおよび該コネクタに接続する電線色を示す図面である。
【図3】コネクタで接続される電線を示す図面である。
【図4】(A)はスプライス接続される電線を示す図面、(B)はジョイントコネクタで接続される電線を示す図面である。
【図5】コネクタのキャビテイに挿入する電線の電線色を相違させる範囲を示す図面である。
【図6】電線色を決定する手順を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1にインストルメントパネルハーネス1(以下、インパネハーネスと略す)とエンジンルームハーネス2とを「W to Wコネクタ」からなる大型の雌雄コネクタ3(3A、3B)で接続している。即ち、インストルメントパネルハーネス1の端末に接続したコネクタ3Aと、エンジンルームハーネス2の端末に接続したコネクタ3Bとを接続している。これらコネクタ3(3A、3B)は図2に示すように、それぞれ水平方向の上段の列に10極のキャビテイ3a〜3jを備え、下段の列に11極のキャビテイ3k〜3uを備え、合計21のキャビテイ数を有する。
【0034】
前記インパネハーネス1の多数本の電線を集束した幹線1aの一端側の端末は前記コネクタ3Aと接続している。該幹線1aの他端末に第1補器コネクタ11、幹線1aから分岐する支線1bの端末に第2補器コネクタ12、支線1cに第3補器コネクタ13、支線1dに第4補記コネクタ14を接続している。
前記第1〜第4補器コネクタ11〜14はそれぞれ機器に設けたコネクタ収容部に直接嵌合するコネクタである。
なお、インパネハーネス1には図示していないが、エンジンルームハーネス2と接続すると共に、フロアハーネス、ドアハーネス、ルーフハーネスとも接続する多数の電線があり、これらの電線の図示は省略している。
【0035】
前記インパネハーネス1のコネクタ3を介して接続するエンジンルームハーネス2の幹線2aの一端末にコネクタ3Bを接続し、幹線2aの他端末は分岐し、分岐した支線2b、2cとし、夫々第5補器コネクタ15、第6補器コネクタ16を接続し、かつ、幹線2aから分岐した支線2dに第7補器コネクタ17、支線2eに第8補器コネクタ18を接続している。
【0036】
前記コネクタ3(3A、3B)及び、第1補器コネクタ11、第2補器コネクタ12、第5補器コネクタ15、第7補器コネクタ17に接続する電線wの電線色は図1に示す通りとしている。他の補器コネクタの電線色の図示は省略している。
前記雌雄嵌合するコネクタ3Aと3Bのそれぞれのキャビテイに挿入する電線は、いずれも図2に示す電線色とし、コネクタ3Aと3Bの対応するキャビテイに接続する電線は同一電線色としている。
【0037】
前記インパネハーネス1の端末に接続している第1補器コネクタ11は自動車に搭載するジャンクションボックス(図示せず)に設けたコネクタ収容部に嵌合するコネクタであり、該第1補器コネクタ11に接続される複数の電線wは電源回路、信号回路、アース回路の電線となる。
該インパネハーネス1の第1補器コネクタ11と前記「W to Wコネクタ」のコネクタ3を介して接続するエンジンルームハーネス2の電線端末に接続する第5補器コネクタ15〜第8補器コネクタ18は、自動車の前端に装着するヘッドランプ、スモールランプ、これらを駆動制御するスイッチ等の機器である。
【0038】
前記エンジンルームハーネス2に接続した第5補器コネクタ15と、前記インパネハーネス1に接続した第1補器コネクタ11とを接続する電線wについて図3を参照して説明する。
エンジンルームハーネス2の第5補器コネクタ15に接続する赤色電線色の電線w1は電源回路の電線であり、該電線w1の他端末に接続したオス端子T1と、インパネハーネス1の第1補器コネクタ11に接続する赤色電線色の電源回路の電線w2の端末に接続したメス端子T2とをコネクタ3A、3Bを雌雄嵌合接続している。
このように、インパネハーネス1とエンジンルームハーネス2で「W to Wコネクタ」のコネクタ3を介して接続する電線w1とw2は同一の地色のみの電線色としている。
なお、前記第5補器コネクタ15に接続する青色電線色の電線w3はアース回路の電線であり、コネクタ3を用いて第1補器コネクタ11とは接続していない。
【0039】
エンジンルームハーネス2の他の第6補器コネクタ16〜第8補器コネクタ18に接続した電線wと、インパネハーネス1の補器コネクタに接続した電線wも前記「W to Wコネクタ」のコネクタ3を介して接続する電源回路の電線同士は地色のみの同一電線色としている。
また、エンジンルームハーネス2の他の補器コネクタに信号回路の電線が挿入され、該信号回路がインパネハーネス1の補器コネクタに接続された電線と前記コネクタ3を介して接続する場合は、同一電線色の電線同士をそれぞれ接続している。
かつ、前記第5補器コネクタ15に接続するアース回路の電線w3を含めて、他の補器コネクタに接続するアース回路の電線は全て青色の電線色としている。
【0040】
本実施形態で示す前記第1〜第8補器コネクタ11〜18は2極〜8極で、これら補器コネクタに接続する電線本数は図示のように6本であり、一つの補器コネクタに接続する電線wの電線色の地色は異ならせ、補器コネクタのキャビテイへの挿入ミスが発生しないようにしている。
【0041】
本実施形態では、1台の自動車に配線する全電線の電源回路および信号回路の電線色は、無地の地色のみでストライプやドットを設けおらず、地色のみの13色以下とし、かつ、アース電線の電線色は全て同一地色のみの同一の電線色としているため、アース電線を含めると地色のみ14色以下としている。よって、前記極数が21極のコネクタ3では同一電線色の電線が存在することとなり、コネクタ3のキャビテイへの挿入ミスが発生しないようにする必要がある。
なお、前記実施形態ではアース回路の電線も地色のみからなる同一電線色としているが、全アース回路の電線は同一色としながら、地色とストライプを入れ、あるいは地色にドットを入れて、アース回路の電線を同一電線色としてもよい。
コネクタの各キャビテイと挿入する電線の誤結発生を防止するため、前記した従来と同様に配列表を設けて、電線色で指示して作業性を高めている。
【0042】
前記コネクタ3では、図2に示すように水平方向に並列する上段列3Uに同一のオレンジの電線色の電線w10、w11が存在する。この同一電線色の電線w10とw11とは7個のキャビテイを間に挟んで離した位置のキャビテイ3bと3jに挿入している。
下段列3Dにピンク色の電線w12とw13、赤色の電線w14とw15、緑色の電線w16とw17とが存在する。これら同一電線色の電線同士は、下段列3Dにおいて、2個以上のキャビテイをあけた位置に挿入している。
このように、大型のコネクタ3に接続する同一電線色の電線が存在する場合、同一列において少なくとも2個のキャビテイをあけて接続位置を設定している。
【0043】
前記のように、電線色については下記のルールとしている。
(1)「W to Wコネクタ」のコネクタで接続される電線端末が補器コネクタに接続される電線は、同一電線色とする。
(2)1台の自動車に配線する一般電線(1つの芯線に絶縁被覆層を設けた丸電線)のうち、電源回路および信号回路の電線は地色のみと、該地色は13色以下としている。
(3)一般電線以外のシールド電線及び信号回路に用いられるツイスト電線の電線色、およびアース回路の電線は前記地色のみの13色以下の色限定に含めない。
(4)1台の自動車に配線するアース回路の電線は全て同一電線色とする。
【0044】
さらに、前記図1には示されていないが、下記のルール(5)(6)を定めている。
(5)同一のワイヤハーネスに属し、図4(A)に示すスプライス接続される複数の同一電線サイズの電線w20〜w23を同一の電線色とする。よって、スプライス接続される複数の電線w20〜w23の内、1本の電線が前記(1)のルールで赤色電線であれば、他の電線w21〜w23は全て赤色電線となる。
同様に、同一のワイヤハーネスに属し、図4(B)に示すように、ジョイントコネクタ30で接続する同一電線サイズの電線w30〜w34も電線色は同一としている。
(6)1つのコネクタに接続する電線のうち、下記の条件に該当する同一電線色の電線は、コネクタのキャビテイへの挿入ミスを防止するため、前記(1)〜(5)のルールから外して、電線色を異ならせる。
(a)電線サイズが同一の電線および、電線サイズが2ランク以下しか相違していない場合。
(b)挿入するコネクタのキャビテイが同一列で隣接する場合および1個のキャビテイを隔てて位置する場合。
具体的には、図5に示すコネクタ35のキャビテイ35Cにおいて、中央のキャビテイ35Coに挿入する電線w40に対してから1つのキャビテイをあけた位置のキャビテイ35Cの電線は電線色を相違させている。
さらに、前記電線w40と上下左右対称位置の図中斜線で示す範囲のキャビテイに挿入する電線も同一電線色の電線は不可とし、電線色を異ならせる。
(c)スプライス接続されている電線で、かつ、電線サイズが同一であると共に行き先の補器コネクタが異なる電線
(d)行き先の補器コネクタが同一の電線である場合。
(e)一つの仮結束ハーネスを構成する電線である場合。
【0045】
前記した電線色の決定方法は、下記の手順で行っている。
基本的には、回路上で上流側となる補器コネクタに接続する電線の電線色を決定し、
ついで、前記電線色を決定した電線端末に接続する端子を「W to Wコネクタ」で接続する電線は同一電線色とし、
ついで、1つのコネクタの複数のキャビティに接続される電線のうち、同一電線色となる電線は、予め設定したルールに従って電線色を異ならせる調整を行う。
前記予め設定したルールとは前記(a)〜(e)のルールである。
【0046】
前記図1に示す実施形態における具体的な手順を図6に示す。
最初のステップ#1で、インパネハーネス1の第1補器コネクタ11に接続する各電線wの電線色を14色の中から異なる電線色で決定する。
次のステップ#2で、前記第1補器コネクタ11で電線色を決定した電線とコネクタ3を介してW to Wで接続する電線の色を同一電線色として決定する。
次ぎのステップ#3で、コネクタ3の多数のキャビテイに接続する電線に同一電線色の電線があるか否かをみる。
同一電線色がない場合は、ステップ#4に進み、インパネハーネス1の電線の電線色の決定が終了する。
同一電線色の電線がある場合は、ステップ#5となり、前記したルール(a)〜(e)のうちのルール(b)に従って、同一電線色の電線を挿入するコネクタ3のキャビテイを設定する。これにより、ルール(a)〜(e)に該当する電線が無いため、コネクタ3に接続する全電線は電線色を変更せずに、ステップ#6に進みインパネハーネス1を構成する全電線の電線色を決定する。
ついで、該インパネハーネス1のコネクタ3Aと接続するエンジンルールハーネス2の電線色を検討する。
ステップ#7では、コネクタ3Bに接続し、コネクタ3Aに接続したインパネハーネス1の電線とにW to Wで接続する電線の電線色は、インパネハーネス1の電線と同一電線色とする。
それに伴い、これら電線の他端に接続するエンジンルームハーネス側の補器コネクタに接続する電線の電線色がステップ#8で決定する。
【0047】
前記実施形態では、インパネハーネスとエンジンルールハーネスとを接続しているが、自動車のバックランプの場合等では、インパネハーネスをフロアハーネスと接続し、該フロアハーネスをリアハーネスと接続し、リアハーネスの端末の補器コネクタをバックランプに接続している。
このような場合は、前記と同様な手順で、まず、インパネハーネスの電線群の電線の電線色をそれぞれ決定し、ついで、フロアハーネスの電線群の電線の電線色をそれぞれ決定し、最後に、リアハーネスの電線群の電線の電線色をそれぞれ決定している。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態に限定されないが、少なくとも「W to Wコネクタ」で端子同士を嵌合接続する電線同士は同一電線色としている。
【符号の説明】
【0049】
1 インストルメントパネルハーネス
2 エンジンルールハーネス
3 コネクタ
11〜18 第1補器コネクタ〜第8補器コネクタ
w 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に配索される部位毎に電線群を集束して組み立てたワイヤハーネスを複数備え、異なるワイヤハーネスに属する電線端末に接続した端子同士がコネクタ内で嵌合接続され、このコネクタ接続された電線端末が機器に接続される補器コネクタに接続されて1つの回路を構成する複数の電線は、その電線色を同一としていることを特徴とするの自動車用電線。
【請求項2】
前記電線端末の端子同士がコネクタ接続される前記ワイヤハーネスは、インストルメントパネルハーネス、エンジンルームハーネス、フロアパネルハーネス、リアハーネス、ドアハーネス、ルーフハーネスから選択される2つ以上のワイヤハーネスである請求項1に記載の自動車用電線。
【請求項3】
一つのワイヤハーネスに属し、互いにスプライス接続される複数の電線およびジョイントコネクタで互いに接続される複数の電線で、かつ電線サイズが同一の電線は電線色を同一としている請求項1または請求項2に記載の自動車用電線。
【請求項4】
一台の自動車に配線されるアース回路を形成する全電線はすべて同一色とし、電源回路及び信号回路を形成する電線の電線色と相違させている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用電線
【請求項5】
一台の自動車に配索される全電線の電源回路および信号回路を形成する電線色は、シールド線およびツイスト線からなる特殊電線および電線色が電線規格で定められている回路の電線を除き、ストライプやドットが無い地色のみとし、該地色を13色以下としている請求項4に記載の自動車用電線。
【請求項6】
1つのコネクタの複数のキャビティに接続される複数の電線のうち、下記(1)〜(5)の条件に該当する電線同士は互いに電線色を異ならせている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用電線。
(1)電線サイズが同一の電線
(2)挿入するコネクタのキャビテイが同一列の隣接するキャビティに挿入される電線
(3)スプライス接続されている電線で、かつ、電線サイズが同一であると共に行き先の補器コネクタが異なる電線
(4)行き先の補器コネクタが同一の電線
(5)一つの仮結束ハーネスを構成する電線
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の自動車用電線の電線色の決定方法であって、
最初に、前記補器コネクタに接続する電線の電線色を決定し、
ついで、前記電線色を決定した電線の端子とコネクタを介して端子同士を接続する電線は前記電線色と同一に設定し、
ついで、前記一つのコネクタの複数のキャビティに接続される電線のうち、同一電線色となる電線は予め設定したルールに従って電線の色を調整することを特徴とする自動車用電線の電線色決定方法。
【請求項8】
前記最初に電線色を決定する補器コネクタは、回路の上流端の補器コネクタ、あるいは該上流端の補器コネクタよりも極数が多い下流端の補器コネクタとしている請求項7に記載の自動車用電線の電線色決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−282766(P2010−282766A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133546(P2009−133546)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】