説明

自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法

【課題】 高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄を新設の壁高欄と取替える改良方法を提供する。
【解決手段】 高架橋の路版側端部2の老朽化した壁高欄4から走行路線を中央に寄せ、工事領域5を確保し、老朽化した壁高欄4の取替用の新設のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を工事領域5と走行路線6の境界に短尺のアンカーボルト10a仮設し、工事領域への走行車両の突入を防護し、老朽化した壁高欄4を路版側端部2の表面上で切断撤去した後、仮設した壁高欄3を取替用として路版側端部2に移動してアンカープレート9と長尺のアンカーボルト10bにより路版1bと一体化する自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4の改良方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車道路、例えば高速道路、の高架橋の路版側端部の老朽化した防護柵である壁高欄の改良方法に関し、特に老朽化した壁高欄に替えて強度の高い新しい壁高欄を設置するための壁高欄の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車道路の、例えば高速道路の、高架橋では、路版側端部には、路肩の側部に車が路線から誤って逸脱して道路から外に飛び出さないように、ガードフェンスなどの防護柵として壁高欄が設けられている。しかし、これらの自動車道路の建設してから数十年経過した道路橋や高架橋では、老朽化した壁高欄が走行車両の衝突に十分に耐えられなかったり、あるいは、高架橋の周辺に住宅が増えて来ると、高架橋から交通騒音が漏れてきて、これら高架橋周辺の住環境を害するようになってきている。
【0003】
そこで、従来の年数を経た古い自動車道路の高架橋では、老朽化した防護柵である壁高欄を新しい壁高欄に取り替え、さらに、その取り替えた壁高欄の上に遮音壁を連続的に設けて沿道の環境を守っている。しかしながら、高速道路の防護柵である壁高欄において、走行車両が衝突した際に受ける安全基準が定められているが、年数を経た古い高速道路では、この安全基準を満足しない壁高欄が生じている。
【0004】
ところで、従来、このような防護柵としての壁高欄はコンクリートの現場打ちにより形成する方法で実施されてきたが、その他の方法として、工場生産したプレキャストしたコンクリートブロックの壁高欄を路版側端部に施工して形成する方法が実施されている。すなわち、この既設のコンクリートブロックの壁高欄を施工する方法には、例えば中央分離帯用の防護柵としてアンカーボルトで路版に固定する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。また、防護柵としてのコンクリートブロックの下部に電機ケーブルを配線し得る収容部を設けて中央分離帯用として防護柵を敷設する方法がある(特許文献2参照)。
【0005】
このように、これらの多くの防護柵である壁高欄は中央分離帯に敷設するためのものであった。ところで、近年は、高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄などの防護柵を補修し、あるいは取り替え、さらに遮音壁を追加するなどが要求されるようになってきた。この場合、これまでのコンクリートブロックの施工方法は主として新設の高架橋における壁高欄であり、高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の取替えによる場合でも、この新設による場合に準じて、老朽化した壁高欄を取り壊し、新規の壁高欄を従来法により設置し、必要により遮音壁をその上に取付ける方法であった。
【0006】
【特許文献1】実開昭63−130507号公報
【特許文献2】特開平7−317030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高速道路の年数を経た古い高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の強度を高め、さらに遮音壁を壁高欄の上に設けるなどの改良工事を行う場合、老朽化して壁高欄を作り替える必要がある。すなわち、従来の工法のコンクリートの現場打ちによる方法では、既設のコンクリートからなる壁高欄を補強する方法であるために、老朽化した壁高欄の壁面上にコンクリートを増厚し、さらに壁高欄中の鉄筋を増筋し、さらに高架橋の路版側端部の鉄筋との間に増筋した壁高欄の鉄筋を掛け渡して係止することにより強度を増す必要があった。このためには、路版側端部の床版から鉄筋をはつり出し、さらに増筋のために配筋する施工が必要であった。また、老朽化した壁高欄を取り壊して新規に現場打ちするためには、古い路版側端部の上部の部分を取り壊して鉄筋をはつり出し、このはつり出した鉄筋に新しい壁高欄用の鉄筋を繋ぎ、そこにコンクリートを現場打ちする必要があった。しかし、このように増筋して厚さを増す方法は、工数が増えるため、手間ひまとコストの掛かる方法であった。
【0008】
さらに、国道や高速道路などの高架橋の下方には、通常の道路や電車などの鉄道が並走している場合が多くある。このような高架橋の下方を走行する自動車や電車の安全を図るため、工事する場所の高架橋の走行路線を路版中央側に寄せて工事領域から走行路線を遠ざけ、国道や高速道路などの高架橋を走行する車が誤って工事領域に進入して突き切り、高架橋の下方を並走する道路や鉄道路線に落下しないようにしている。このように安全を図ることで、国道や高速道路などの高架橋を走行する自動車の走行を止めることなく、工事を進めるのが通常である。
【0009】
しかし、そのためには工事期間中は走行路線を路版側端部側の工事領域から反対の路版中央側に寄せて走行路線を狭める規制を行う必要があり、工事領域との境界を明確に維持するために、工事終了後に取り外し得る仮設の防護壁を路線規制の境界に設置する。したがって、この仮設する防護壁は一時的なものである。このため、撤去しやすいように仮設の防護壁が軽量であったりすると、上述のように、この仮設の防護壁に運転操作を誤った走行車両が突っ込み、仮設の防護壁を突き切って高架橋から下方の並走する道路や電車の軌道に落下して大事故となる恐れがある。そこで、従来は仮設でありながら、仮設の防護壁を路版にアンカーボルトで取付け緊締していた。このために工期が余分に掛かり、また工事の完了後は仮設の防護壁は不要として廃棄処分していたので無駄なコストを生じていた。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高速道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄を走行車両に対する耐衝撃性が高く、剛性に優れた壁高欄に取り替え、あるいは現在の高速道路の基準に則った肉厚の壁高欄に取り替え、必要により壁高欄の上に嵩上げした遮音壁を設置可能とするなどの方法におけるもので、これはプレキャストコンクリートブロックの壁高欄からなる防護壁を工事作業区域と車両の通行用車線との間に仮設して設置することで、走行路線に車両の走行を許しながら、走行車両の操作ミスによる工事区域への突入を仮設の防護壁で防ぎ、安全に工事を施工しうるものとし、老朽化した壁高欄の取り外し工事を迅速化することにより工事期間の短縮を図り、さらに工事終了後に仮設した防護壁を廃棄する無駄をなくし、これを取替用の壁高欄に再利用することにより資材コストの低減を図って、古い高架橋の老朽化した壁高欄を改良した壁高欄へ取り替える方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、先ず、高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄からの工事領域を確保するために、走行路線を路版の道路中央側に寄せて路線幅を縮小し、工事領域の幅を確保する。次いで、工事領域と縮小した走行路線の境界に、老朽化した壁高欄の取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄を路版にアンカーボルトにより固定して仮設し、この工事領域への走行車両の突入を防護する。このように壁高欄を仮設が終了すると、高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄を路版側端部の表面上で切断して路版側端部から撤去する。この老朽化した壁高欄を切断撤去した跡の路版側端部に、先に工事区域と走行路線の境界に仮設したプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄からアンカーボルトを取り外して、取替用の壁高欄として路版側端部に移動して設置する。この設置では、アンカープレートとアンカーボルトにより路版側端部の路版および路版下部の橋梁に固定して一体化し、高速道路などの自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄を改良する方法である。
【0012】
請求項2の発明では、上記の方法で使用する取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄は、老朽化した壁高欄と合同の形状の壁高欄からなることを特徴とする請求項1の手段の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法である。この手段では、取替用の壁高欄を老朽化した壁高欄と同じ大きさで同じ素材かなるものとすることで、老朽化した工事区域の前後の区域のまだ取り替える必要のない古い壁高欄との連続性を保つものとする。
【0013】
請求項3の発明では、上記の方法で使用する取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄は、老朽化した壁高欄よりも重量を有する大型の壁高欄からなることを特徴とする請求項1の手段の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法である。すなわち、順次に老朽化した壁高欄を元のものよりも新しく従って剛性の高い壁高欄と取替えて行く計画の下では、取替用の壁高欄は、元の壁高欄に比して肉厚で重量が重い大型のものとすることで、より一層に走行車両の突入を防護するものとする。
【0014】
請求項4の発明では、上記の方法で使用する大型の取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる大型の壁高欄は、その走行路線側の側壁面が水平面からの角度が52〜58°の緩傾斜側壁面で、かつ、壁高欄の下面から205〜215mmの高さになるに連れて、その厚みを走行路線側から140〜150mm減少した下部側壁面と、その下部壁面に上方に続く水平面からの角度が81〜87°の急傾斜側壁面とした上部側壁面とからなり、さらに、この壁高欄の長手方向の両端面は垂直壁面からなり、しかも、壁高欄の高さが850〜1050mmであることを特徴とする請求項3の手段の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法である。
【0015】
この場合も上記の手段と同様に、順次に老朽化した壁高欄を元のものよりも剛性の高いものと取替えて行く計画の下では、取替用の壁高欄は、より大型で重量が重いものとして上記の走行車両の突入を防護するものとする。しかも、その形状は下面が幅広で、上面が幅狭で、走行路線側へ緩傾斜面で拡がる下部側壁面を有するもので、誤って車が斜めから衝突して乗り上げても、出来るだけ元の走行路線側へ戻す作用を有する緩傾斜面の形状となっている。
【0016】
請求項5の発明では、上記の取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄を仮設する方法で、仮設時に壁高欄の下面に摩擦増進および振動防止用のゴム板を挟持して路版上に設置し、取替用の壁高欄から路版にアンカーボルトを挿通して仮止めするものとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項の手段の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法である。この方法では、走行路線を通る走行車両の振動により仮設時の壁高欄が振動して仮締めのアンカーボルトが緩むことを抑制している。しかし、仮設した壁高欄を移動して路版側端部にアンカープレートとアンカーボルトで設置する際には、仮締めではなく、規格の締め付け力で締結するので、ゴム板は格別に使用する必要はない。
【0017】
請求項6の発明では、路版側端部の老朽化した壁高欄の撤去終了後に、仮設した取替用の壁高欄を路版側端部に移動して、アンカープレートとアンカーボルトにより路版の橋梁に一体化する方法は、路版側端部の側の壁高欄の垂直側壁面の下部と高架橋の路版側端部の路版との間にアンカープレートを配設してボルトで係止し、一方、走行路線の側の壁高欄の側壁面からアンカーボルトを路版の下部の橋梁にまで挿通して係止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項の手段の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法である。この場合、路版側端部の側をアンカープレートにより、走行路線の側を路版の下部の橋梁まで通したアンカーボルトにより壁高欄を路版に係止して一体化するので、元の老朽化した壁高欄の取付け強度に劣ることなく係止できる。この場合、走行路線側に下方の緩傾斜側壁面を有する壁高欄では、この下方の緩傾斜側壁面の壁面から路版にアンカーボルトを挿通して橋梁に係止することで締結強度を一層高めることができる。
【0018】
これらの方法に使用する壁高欄3のうち、上記の大型とした肉厚の壁高欄3aについて説明する。図3に示すように、この大型の壁高欄3aは、幅が下面14で440〜600mm、上面15で250〜395mm、垂直な側壁面11bの高さが900〜1000mm、長手方向の長さが250〜350mmのプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3aである。壁高欄3aの下部側壁面の緩傾斜側壁面12と上部壁面の急傾斜側壁面13のうち、下部壁面の緩傾斜側壁面12は下面14の水平面に対して55°の角度を有し、下面14から180mmの高さで終わり、その180mmの高さ部分の幅は下面14の端部から路版側端部の側に125mm減少している。さらに上部壁面の急傾斜側壁面13は下面14の水平面に対して84°の角度を有して上面15で終わり、その上面15の幅は、高さ900mmの壁高欄3の場合、70mmであり、1000mmの壁高欄3の場合、80mmである。従って、走行車両がこの壁高欄3aに斜めから衝突すると、下部壁面の緩傾斜側壁面12に走行車両の前輪が乗り上げても、上部壁面の急傾斜側壁面13には、乗り上げにくいので、走行車両には走行路線側へ戻される力が作用する。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明の手段として、高速道路の古い高架橋の路版側端部に設置の老朽化した壁高欄の改良方法において、高速道路の基準に則った形状と大きさおよび重量からなる取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄を工事領域と路線幅を狭めた走行路線の境界にアンカーボルトにより仮設し、工事中の走行車両および工事領域を防護し、かつ、老朽化した壁高欄の高架橋の路版側端部からの撤去終了とともに、仮設の壁高欄を上記の境界から高架橋の路版側端部に移動して、アンカープレートおよびアンカーボルトにより固定設置することで、従来の方法の高架橋の路版部分も含めて工事する方法に比して、迅速かつ低コストで壁高欄を高架橋の路版側端部に設置でき、さらに壁高欄の仮設時には走行する自動車の振動をゴム板で吸収し、摩擦を増進して仮設壁高欄と取り付けたアンカーボルトが振動により緩むことを防ぎ、上記のように老朽化した壁高欄を撤去した後に仮設から移動した壁高欄を高架橋の路版側端部の橋梁とアンカープレートおよびアンカーボルトにより一体的に係止するものとしたことで、プレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄の取替えを迅速および安価に実施できるなど、本願の方法は従来にない優れた効果を奏する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願の発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
高速道路などの自動車道は建設から長年月経過すると、高架橋1の路版側端部2のコンクリートからなる壁高欄4が老朽化してくる。このように壁高欄4が老朽化した場合、この老朽化した壁高欄4を取替える改良工事を行うこととなる。この場合、図1に示すように、高架橋1の路版側端部2の走行路線6の路版中央側7に工事領域5を確保するために、高架橋1の路版側端部2の路側帯の側から路版中央側7に走行路線6を寄せて、走行路線6の幅を縮小する。次いで、この確保した工事領域5と縮小した走行路線6との境界8に沿って、走行路線6を走行する車が工事領域5に浸入しないようにガードを設ける必要がある。そこで、本発明の手段では、老朽化した壁高欄4と取替えるための路版側端部2に設置するための新しいプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を上記のガードとして境界8に予め仮設する。この仮設では、アンカーボルト10として短尺の約10cmの長さのアンカーボルト10aを壁高欄3に予め設けられた孔から下方の路版1bに挿通して一時的に係止し、工事領域5へ走行路線6から走行車両が運転を誤って突入することを防護する。
【0021】
このように工事領域5と狭めた走行路線6との境界8に取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を仮設した上で、老朽化したコンクリートからなる壁高欄4を高架橋1の路版側端部2の路版1bの表面上で切断撤去する作業を実施する。次いで撤去作業終了後、上記の境界8に一時的に仮設したプレキャストコンクリートブロックの壁高欄3の孔から短尺のアンカーボルト10aを抜き去り、この孔は工事終了後に舗装で埋め戻す。次いで、図2に示すように、この壁高欄3を取替用として老朽化した壁高欄4を切断撤去した跡の路版側端部2に移動して載置する。次いで、載置した壁高欄3の外壁面の垂直壁面16と路版下部の高架橋1の橋梁1aとの間にアンカープレート9を渡してボルト9aおよびボルト9bで締め付け、さらに長尺のアンカーボルト10bにより壁高欄3と橋梁1aを一体化して固定する。この場合、高架橋1の近くに住宅街が存在し、遮音を必要とする場所では、この壁高欄3の上に遮音壁19を立設するものとする。この場合、遮音壁19の高さは、例えば路版1bから3000mmとする。この図1および図2に示すプレキャストコンクリートブロックの壁高欄3は、従来の形状の老朽化した壁高欄4よりも肉厚の大型のものとして例示している。しかし、この実施の形態では、大型のものと限るものではない。
【0022】
第2の実施の形態では、自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4の改良方法において、上記における取替用の新しいプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3は、図5に示すように、元の老朽化した壁高欄4と大きさおよび形状を全く同じ大きさおよび形状からなる壁高欄3とする。この場合も上記したと同様に、高架橋1の路版側端部2の走行路線6の路版中央側7に工事領域5を確保するために、高架橋1の路版側端部2の路側帯の側から路版中央側7に走行路線6を寄せて、取替用の新しいプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を境界8に一時的に短尺のアンカーボルト10aを挿通して仮設する。この場合は、取替用の壁高欄3を老朽化した壁高欄4と同じ大きさで同じ形状の素材からなるものとすることで、老朽化した壁高欄4の工事区域の前後に続くまだ取替えを必要としない区域の古い壁高欄4と連続的に同一のものとすることで、違和感のないものとすることができる。
【0023】
図5に示すように工事領域5を確保した後、老朽化した壁高欄4を路面高さで切断して撤去した後、図6に示すように仮設から取り外した取替用の新しい壁高欄3を路版側端部2に移動して載置する。次いで、壁高欄3を路版側端部2に固定するために、載置した壁高欄3の外壁面の垂直壁面16と高架橋1の路版側端部2の橋梁1aとの間にアンカープレート9を渡してボルト9aおよびボルト9bで締め付け固定し、さらに長尺のアンカーボルト10bを路版1bに挿通して、壁高欄3と橋梁1aを一体化して固定する。
【0024】
さらに、第3の実施の形態では、自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4の改良方法において、図3に示すように、取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を老朽化した壁高欄4よりも大型の壁高欄3aからなるものとする方法である。この場合、順次に老朽化した壁高欄4を元のものよりも大型の剛性の高い壁高欄3aと取替える計画の下で実施する。取替用の壁高欄3は、大型の厚みのある壁高欄3aからなる重量の重いものとし、従来の肉薄の老朽化した壁高欄4よりも走行車両の突入を一層に防護することができる。したがって、突っ込んできた走行車両が路版側端部2から高架橋1外に飛び出して高架橋1の下方に落下することのないものとする。この場合も、上記したように、高架橋1の路版側端部2の走行路線6の路版中央側7に工事領域5を拡大して確保するため、高架橋1の路版側端部2の路側帯の側から路版中央側7に走行路線6を寄せて走行路線6の幅を縮小する。次いで、この確保した工事領域5と縮小した走行路線6との境界8に沿って、走行路線6を走行する車両が工事領域5に浸入しないように、老朽化した壁高欄4と取替えるための路版側端部2に使用する新しいプレキャストコンクリートブロックからなる大型の壁高欄3aを仮設する。この仮設では、上記したと同様に短尺のアンカーボルト10aを壁高欄3aに予め設けられた孔から路版1bに挿通して一時的に係止し、工事領域5へ走行路線6から走行車両が運転を誤って突入することを防護するものとする。
【0025】
この場合も、上記した図1および図2で示したと同様に図3および図4に示す方法で、仮設時には短尺のアンカーボルト10aにより路版1bに固定して仮設し、老朽化した壁高欄4の撤去終了後に、仮設から取り外した壁高欄3を路版側端部2に移動して載置し、路版側端部2に固定するために、載置した壁高欄3の外壁面の垂直壁面16と路版下部の高架橋1の橋梁1aとの間にアンカープレート9を渡して両者をボルト9aおよびボルト9bで締め付ける。さらに新しい長尺のアンカーボルト10bにより壁高欄3の路版中央側7寄りの部分と下部の高架橋1の路版1bを一体化して固定する。この設置する壁高欄3は大型の壁高欄3aであり、図1および図2に示すものに比して、それらの凡そ2倍の重さのある図3および図4に示す形状のものである。これらの大きさは、次の実施の形態で示されるものである。
【0026】
すなわち、この実施の形態では、自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4の改良方法において、図1〜図4に見られるように、自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4の改良方法において、取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる、上記の図3に示す、大型の壁高欄3aの形状は、走行路線6側の側壁面11aがその下部壁面を角度52〜58°の緩傾斜側壁面12とその上部に続く急傾斜側壁面13からなる。この緩傾斜側壁面12は、下面14から205〜215mmの高さ位置になるにしたがって、路版側端部2の側と走行路線6の側の厚さが走行路線側から徐々に路版側端部2に140〜150mm減少している。さらに、図4に示すように、走行路線6側の側壁面11aは緩傾斜側壁面12からなる下部壁面から上方に継続して角度81〜87°からなる急傾斜側壁面13の上部壁面から形成されている。さらに、路版側端部2側の側壁面11bを垂直壁面16からなるものとしている。さらに高さ900〜1000mmの垂直の長手方向端面17を有する。
【0027】
この図3および図4に示す場合も、上記の手段と同様に、順次に老朽化した壁高欄4を元のものよりも剛性の高いものと取替えて行く計画において、取替用の壁高欄3は元のものよりも大型で重量が重いものとして走行車両の突入による突破を一層に防護するものとしている。しかも、この壁高欄3の形状は、図3に示すように、下面14が幅広であり、上面15が幅狭であり、さらに走行路線6の側へ緩傾斜側壁面12で下方になるにしたがって拡大する下部の側壁面11aを有しているので、運転を誤って走行車両が斜めからこの壁高欄4に衝突して緩傾斜側壁面12に乗り上げたとしても、元の走行路線6の側へ戻す作用が走行車両に作用する形状となっている。
【0028】
さらに、この他の実施の形態について説明する。この形態は、上記した自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4を改良する際に、取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3を工事領域5と、狭めた走行路線6との境界8に仮設する際の壁高欄3の仮設方法におけるものである。すなわち、この方法は、図1、図3あるいは図5に見られるように、壁高欄3を仮設する際に、壁高欄3の下面14(図3で示す。)にゴム板18を挟持して境界8の路版1bの上に設置する方法である。このように、ゴム板18を仮設した壁高欄3の下面に設置することで、壁高欄3と路版1bの表面の間の摩擦を増進して、たとえアンカーボルト10aが緩んでも壁高欄3を移動し難くしている。さらに、走行路線6を走行する走行車両の発する振動が壁高欄3に路版1bから伝達されることを防止している。このようにすることで、壁高欄3が路版1bの振動に共振して振動することによりアンカーボルト10aが緩んで路面上を移動しないようにしている。すなわち、安全を図るため、境界8の路版1bに設けた孔に仮設の壁高欄3からアンカーボルト10aを挿通して壁高欄3を仮止めし、仮設の壁高欄3の移動を防止して走行路線6の一層の安全を図っている。
【0029】
さらに、他の実施の形態について説明する。この形態は、上記の自動車道路の高架橋1の路版側端部2の老朽化した壁高欄4を新しい取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄3と取替える改良方法におけるもので、路版側端部2の老朽化した壁高欄4を撤去し、仮設した取替用の壁高欄3の仮止め用の短尺のアンカーボルト10aを抜いて外し、壁高欄3を路版側端部2の設置位置に移動して設置する方法におけるものである。すなわち、壁高欄3を路版側端部2の設置位置に移動して設置し、次いで、壁高欄3を路版1bの下部の橋梁1aにアンカープレート9と長尺のアンカーボルト10bにより一体化する。このために、路版側端部2側の壁高欄3の垂直壁面16の下部と路版側端部2の側壁との間にアンカープレート9を配設し、アンカープレート9の上部と壁高欄3の垂直壁面16の下部との間にボルト9aを挿通して両者を固定する。さらにアンカープレート9と路版側端部2の側壁との間にボルト9bを挿通して両者を係止する。この場合、図2に示す場合は、高架橋1の路版1bの下部に鉄骨などの橋梁1aを有する場合は、この橋梁1aの側端部にアンカープレート9の下端部を伸ばし、ボルト9bでアンカープレート9の下部を橋梁1aに係止する。一方、図4に示すように高架橋1の路版1bの下部に鉄骨などの橋梁1aが露出していない場合は、アンカープレート9の下部を路版側端部2の側部にボルト9bで係止する。さらに、これらの壁高欄3の走行路線6側の緩傾斜側壁面12などの壁部を長尺のアンカーボルト10bを下部の路版1bに挿通して係止する。この場合も、図2に示すように高架橋1の路版1bの下部に鉄骨などの橋梁1aを有する場合は、長尺のアンカーボルト10bをこの橋梁1aに係止し、図4に示すように高架橋1の路版1bの下部に露出した橋梁のない場合は、下部の路版1bに長尺のアンカーボルト10bを係止する。これらのアンカープレート9とボルト9aおよびボルト9bによる係止と長尺のアンカーボルト10bによる係止により、壁高欄3を路版側端部2に緊締して設置する。
【0030】
これら上記の方法に使用する壁高欄3のうち、上記の第3の実施の形態の老朽化した壁高欄4よりも大型の壁高欄3aについてさらに説明する。この大型の壁高欄3aは、図1に示す壁高欄3aでは、路版側端部2の側と走行路線6の側の厚さが下面14で445mm、上面15で250mm、高さが900mmである。一方、図3に示す壁高欄3aでは、路版側端部2の側と走行路線6の側の厚さが下面14で600mm、上面15で395mm、高さが1000mmである。これらの壁高欄3の長さは、図1の壁高欄3a、図3の壁高欄3a共に、2500〜3500mmのプレキャストコンクリートブロックの壁高欄3aである。これらの壁高欄3aの緩傾斜側壁面12からなる下部壁面と急傾斜側壁面13からなる上部壁面のうち、下部壁面の緩傾斜側壁面12は下面の水平面に対して55°の角度を有し、下面から180mmの高さで終わり、その180mmの高さ部分での幅は下面の路版中央側7の端部から路版側端部2の方へ幅を125mm減少している。さらに上部壁面の急傾斜側壁面13は下面の水平面に対して84°の角度を有して上面15で終わり、その上面15の幅は、図1の高さ900mmの壁高欄3aで路版中央側7の上端部から路版側端部2の上端部の方へ70mm減少しており、図3に示す最も大型の高さ1000mmである壁高欄3aで路版中央側7の上端部から路版側端部2の上端部の方へ80mm減少している。このように、この大型の壁高欄3aは大方で重量が大きい上に、大型の壁高欄3aの路版中央側7の下部壁面は緩傾斜側壁面12となっているので、上記したように、走行車両がこの壁高欄3aに斜めから衝突すると、下部壁面の緩傾斜側壁面12に車の前輪が乗り上げても上部壁面の急傾斜側壁面13には傾斜が急すぎて乗り上げし難い。そこで、この大型の壁高欄3aと衝突した車には、走行路線6側へ戻す力が作用して無事に走行路線6へ戻るので、事故を出来るだけ防ぐことができる。さらに車が正面から壁高欄3aに衝突しても、壁高欄3aは大型であるので重量があり、したがって路版側端部2の外へ容易には落下することなく、したがって高架橋1の下部を走行する電車や車があっても、これらを巻き込む事故の発生も未然に防止される。
【0031】
さらに、上記の大型の壁高欄3aは、路版側端部2に設置したときの強度をより一層高めるために、壁高欄3aの長手方向に開孔されたPC鋼棒連結孔20にPC鋼棒を挿通し、このPC鋼棒に引っ張り力を与えて端部を壁高欄3aに定着させ、壁高欄3aプレストレスを掛けたものとして強度を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の取替用の新設の大型の壁高欄を仮設した高架橋の側面図である。
【図2】本発明の図1に示す新設の大型の壁高欄を設置した高架橋の側面図である。
【図3】本発明の取替用の新設のさらに大型の壁高欄を仮設した高架橋の側面図である。
【図4】本発明の図3に示す新設のさらに大型の壁高欄を設置した高架橋の側面図である。
【図5】本発明の元と同形状の取替用の新設の壁高欄を仮設した高架橋の側面図である。
【図6】本発明の図5に示す元と同形状の新設の壁高欄を設置した高架橋の側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 高架橋
1a 橋梁
1b 路版
2 路版側端部
3 壁高欄
3a 大型の壁高欄
4 老朽化した壁高欄
5 工事領域
6 走行路線
7 路版中央側
8 境界
9 アンカープレート
9a ボルト
9b ボルト
10a (短尺の)アンカーボルト
10b (長尺の)アンカーボルト
11 側壁面
11a 側壁面
11b 側壁面
12 緩傾斜側壁面
13 急傾斜側壁面
14 下面
15 上面
16 垂直壁面
17 長手方向端面
18 ゴム板
19 遮音壁
20 PC鋼棒連結孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄からの走行路線を道路中央に寄せて路線幅を縮小して路版側端部からの工事領域を確保し、該工事領域と該縮小した走行路線の境界に取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄を路版にアンカーボルトにより固定して仮設し、該工事領域への走行車両の突入を防護し、老朽化した壁高欄を路版側端部の表面上で切断撤去した後、該仮設した取替用の壁高欄からアンカーボルトを取り外して該取替用の壁高欄を路版側端部に移動し、移動した取替用の壁高欄を路版側端部にアンカープレートとアンカーボルトにより固定して一体化することを特徴とする自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。
【請求項2】
上記方法で使用する取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄は、老朽化した壁高欄と合同の形状の壁高欄からなることを特徴とする請求項1に記載の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。
【請求項3】
上記方法で使用する取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄は、老朽化した壁高欄よりも重量を有する大型の壁高欄からなることを特徴とする請求項1に記載の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。
【請求項4】
上記方法で使用する大型の取替用の壁高欄は、その走行路線側の側壁面が水平面からの角度52〜58°の緩傾斜側壁面で下端から205〜215mmの高さになるに連れて厚みを走行路線側から140〜150mm減少した下部側壁面と該下部側壁面に上方に続く水平面からの角度81〜87°の急傾斜側壁面の上部側壁面からなり、走行路線と反対側の側壁面が垂直側壁面からなり、かつ、壁高欄の長手方向の両端面からなり、高さが850〜1050mmであることを特徴とする請求項3に記載の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。
【請求項5】
上記における取替用のプレキャストコンクリートブロックからなる壁高欄の仮設方法は、仮設時に壁高欄の下面に摩擦増進および振動防止用のゴム板を挟持して路版上に設置し、取替用の壁高欄から路版にアンカーボルトを挿通して仮止めするものとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。
【請求項6】
路版側端部に移動した取替用の壁高欄のアンカープレートとアンカーボルトにより路版側端部に一体化する方法は、路版側端部の側の壁高欄の垂直側壁面の下部と路版側端部の路版との間にアンカープレートを配設してボルトで係止し、一方、走行路線の側の壁高欄の側壁面からアンカーボルトを路版に挿通して係止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車道路の高架橋の路版側端部の老朽化した壁高欄の改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−2259(P2008−2259A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−53555(P2007−53555)
【出願日】平成19年3月3日(2007.3.3)
【出願人】(000161817)ケイコン株式会社 (37)
【Fターム(参考)】