説明

自己復元塗料組成物及びそれを用いた塗膜

【課題】本発明の目的は、高光沢を有し、透明性が高く、長期間使用しても塗膜の割れ又は剥離が発生せず、傷がついてもその傷が残りにくい耐擦傷性に優れた自己復元性塗料組成物及びそれを用いた自己復元塗膜を提供することである。
【解決手段】本発明に係る自己復元塗料組成物は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとを含有する。また、本発明に係る自己復元塗膜は、本発明に係る自己復元塗料組成物とポリイソシアネート化合物とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己復元塗料組成物及びそれを用いた塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、パソコンなどのモバイル機器、自動車のボディ、外装部品などの表面には、高い意匠性が求められ、高光沢及び高平滑性が付与されることが多い。しかし、モバイル機器においては、持ち運ぶ時に、他の物品と接触することによって、表面に擦り傷が発生し、意匠性が損なわれるという問題がある。また、自動車においても、洗車時に擦り傷が発生することがある。特に、高光沢及び高平滑性を付与した表面は、傷が目立ち易く、対策が求められている。
【0003】
そこで、表面の保護を目的として、耐擦傷性を有する塗料を用いて塗膜を形成する対策がとられている。例えば、活性エネルギー線硬化性アクリル系樹脂と、揮発性有機酸と、アルミナ微粒子とを含むハードコート性コーティング組成物が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、アクリルポリオール樹脂とポリイソシアネート化合物とを含む硬化性樹脂組成物の硬化物からなる透明な硬化樹脂層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−139888号公報
【特許文献2】特開2004−223893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1又は特許文献2のように、塗膜の表面硬度を大きくすることで、耐擦傷性を向上させる方法では、塗膜の表面硬度の向上には限界があり、耐擦傷性が十分とはいえない。さらに、表面硬度を大きくする反面で、塗膜が脆くなる傾向にあり、一度傷がつくと、その傷を消失することができないという問題があった。さらに、長期間使用すると、塗膜の割れ又は剥離が発生するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、高光沢を有し、透明性が高く、長期間使用しても塗膜の割れ又は剥離が発生せず、傷が残りにくい耐擦傷性に優れた自己復元性塗料組成物及びそれを用いた塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、塗膜の表面硬さと塗膜の復元性との関係性に着目して、塗膜を硬くして塗膜に傷をつけないようにするのではなく、塗膜に柔軟性を付与して、傷がついても塗膜の柔軟性で、傷を消失して元の状態に戻す自己復元性によって耐擦り傷性を付与することを見出し、本発明を完成するに至った。なお、本明細書において、塗膜に傷がついても塗膜の柔軟性で、傷が消失して元の状態に戻ることを「自己復元性」と定義している。すなわち、本発明に係る自己復元塗料組成物は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る自己復元塗料組成物では、更に、(D)アクリル樹脂を含有することが好ましい。塗料の乾燥性を高めることができる。
【0009】
本発明に係る自己復元塗料組成物では、更に、(D)アクリル樹脂を含有し、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計乾燥質量(A+B)に対する(A)ラクトン変性アクリル樹脂の乾燥質量の比率(A/(A+B))が、27/100以上60/100未満であることが好ましい。塗料の乾燥性を高めることができる。また、自己復元性をより高めることができる。
【0010】
本発明に係る自己復元塗料組成物では、更に、(C)ナノシリカを含有することが好ましい。形成する塗膜の触感を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る自己復元塗膜は、本発明に係る自己復元塗料組成物とポリイソシアネート化合物とを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、高光沢を有し、透明性が高く、長期間使用しても塗膜の割れ又は剥離が発生せず、傷が残りにくい耐擦傷性に優れた自己復元性塗料組成物及びそれを用いた塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0014】
本実施形態に係る自己復元塗料組成物は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとを含有する。
【0015】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂は、ラクトン類で変性したアクリル樹脂であり、分子中に水酸基を含有する。(A)ラクトン変性アクリル樹脂は、自己復元性を付与する役割及び塗膜の物理的強度など基本的な性能を付与する役割をもつ。(A)ラクトン変性アクリル樹脂は、通常、水酸基含有アクリルモノマーにラクトン類を付加したラクトン変性アクリルモノマーと、該ラクトン変性アクリルモノマーと重合可能なその他のモノマーとを共重合して得ることができる。
【0016】
水酸基含有アクリルモノマーは、例えば、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート、4‐ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0017】
ラクトン類は、例えば、β‐メチル‐δ‐バレロラクトン、γ‐バレロラクトン、δ‐バレロラクトン、δ‐カプロラクトン、γ‐カプロラクトン、ε‐カプロラクトン、β‐プロピオラクトン、γ‐ブチロラクトン、γ‐ノナノイックラクトン、δ‐ドデカノラクトンである。また、ラクトンの環炭素原子に、更にアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、フェニル基、ベンジル基などの官能基を結合することができる。
【0018】
水酸基含有アクリルモノマーにラクトン類を付加する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。公知の方法は、例えば、水酸基含有アクリルモノマーにε‐カプロラクトンを触媒の存在下で反応させる方法である。
【0019】
該ラクトン変性アクリルモノマーと重合可能なその他のモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、iso‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、iso‐ブチル(メタ)アクリレート、tert‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルエキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマー、スチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、パラメチルスチレン、クロロスチレンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニルモノマー、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリルアミド、メタクリロニトリルなどの窒素含有ビニル系モノマーである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。
【0020】
また、(A)ラクトン変性アクリル樹脂は、分子中にエーテル結合を有することが好ましい。分子中にエーテル結合を有するラクトン変性アクリル樹脂は、前記ラクトン変性アクリルモノマーと該ラクトン変性アクリルモノマーと重合可能で、かつ、分子中にエーテル結合を有するモノマーとを共重合して得ることができる。分子中にエーテル結合を有するモノマーは、例えば、2‐メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、3‐メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。本実施形態は、モノマーの種類及び重合方法に制限されない。また、(A)ラクトン変性アクリル樹脂として、オリジン電気社製の登録商標プラネットTCクリヤ CF‐100などの市販品を用いることができる。
【0021】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂の数平均分子量は、6000〜25000であることが好ましい。より好ましくは、8000〜15000である。6000未満では、塗膜の強度が不足する場合がある。25000を超えると、塗料の粘度が高くなりすぎて、均一な塗料を得られない場合がある。または、塗膜の平滑性が劣る場合がある。
【0022】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂のガラス転移点は、0〜25℃であることが好ましい。より好ましくは、10〜17℃である。0℃未満では、塗膜が柔らかくなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。また、塗膜の耐熱性が劣る場合がある。25℃を超えると、塗膜が硬くなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。
【0023】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂の水酸基価は、90〜110mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、95〜105mgKOH/gである。90mgKOH/g未満では、塗膜が硬くなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。また、架橋反応点が不足して、塗膜の耐水性及び耐薬品性が劣る場合がある。110mgKOH/gを超えると、塗膜が柔らかくなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。また、架橋反応による硬化収縮が大きく、基材との密着性が劣る場合がある。
【0024】
自己復元塗料組成物は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂を乾燥質量で25〜85質量%含有することが好ましい。より好ましくは、33〜72質量%である。特に好ましくは、50〜60質量%である。25質量%未満では、塗膜の物理的強度が不足する場合がある。また、乾燥性が劣る場合がある。85質量%を超えると、塗膜が硬くなりすぎて、自己復元性及び耐擦傷性が劣る場合がある。
【0025】
(B)ポリカーボネートジオールは、複数のポリカーボネート結合(‐OCOO‐)及び2つの水酸基をもつ化合物である。両末端が水酸基であることが好ましい。(B)ポリカーボネートジオールは、自己復元性、基材との密着性、塗膜の光沢性及び平滑性を付与することを目的として配合する。(B)ポリカーボネートジオールを得る方法は、特に限定されず、公知の方法で得ることができる。公知の方法は、例えば、ジオールと炭酸エステルとのエステル交換反応である。
【0026】
ジオールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,2‐ブタンジオール、1,3‐ブタンジオール、1,4‐ブタンジオール、1,5‐ペンタンジオール、3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール、1,6‐ヘキサンジオールである。また、炭酸エステルは、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートである。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、(B)ポリカーボネートジオールとして、旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラノールT‐5650Jなどの市販品を用いることができる。
【0027】
(B)ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、800〜2000であることが好ましい。より好ましくは、800〜1600である。800未満では、塗膜が柔らかくなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。2000を超えると、相溶性が低下して、塗膜の平滑性が劣る場合がある。また、塗膜の光沢が劣る場合がある。
【0028】
(B)ポリカーボネートジオールの水酸基価は、100〜170mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、130〜150mgKOH/gである。100mgKOH/g未満では、光沢が劣る場合がある。また、架橋反応点が不足して、塗膜の耐水性及び耐薬品性が劣る場合がある。170mgKOH/gを超えると、塗膜が柔らかくなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。また、架橋反応による硬化収縮が大きく、基材への密着性が劣る場合がある。
【0029】
自己復元塗料組成物は、(B)ポリカーボネートジオールを乾燥質量で15〜75質量%含有することが好ましい。より好ましくは、28〜59質量%である。特に好ましくは、40〜50質量%である。15質量%未満では、自己復元性及び耐擦傷性が劣る場合がある。75質量%を超えると、塗膜強度が不足する場合がある。
【0030】
本実施形態に係る自己復元塗料組成物では、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計乾燥質量が、60質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以上である。特に好ましくは、80質量%以上である。65質量%未満では、自己復元性及び耐擦傷性が劣る場合がある。また、塗膜の物理的強度が不足する場合がある。
【0031】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計含有量に対する(A)ラクトン変性アクリル樹脂の含有量の比率(A/(A+B))が、乾燥質量で85/100以下であることが好ましい。より好ましくは、60/100未満である。85/100を超えると、塗膜が硬くなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。
【0032】
本実施形態に係る自己復元塗料組成物では、更に、(D)アクリル樹脂を含有することが好ましい。(D)アクリル樹脂は、塗料の乾燥性を高める役割をもつ。(D)アクリル樹脂は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂で例示した水酸基含有アクリルモノマーの重合体又は該水酸基含有アクリルモノマーとラクトン変性アクリルモノマーと重合可能なその他のモノマーとして例示したモノマーとの共重合体である。
【0033】
本発明者らは、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの割合が所定の割合の時、更に(D)アクリル樹脂を配合することで、乾燥性の向上に加え、自己復元性が向上するという新たな効果を奏することを見出した。本実施形態に係る自己復元塗料組成物では、更に、(D)アクリル樹脂を含有し、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計乾燥質量(A+B)に対する(A)ラクトン変性アクリル樹脂の乾燥質量の比率(A/(A+B))が、27/100以上60/100未満であることが好ましい。より好ましくは、27.8/100以上50/100以下である。特に好ましくは、34.5/100以上42/100以下である。
【0034】
(D)アクリル樹脂の数平均分子量は、4000〜100000であることが好ましい。より好ましくは、6000〜50000である。4000未満では、乾燥性を高める効果が劣る場合がある。100000を超えると、塗料が白濁して、透明性が劣る場合がある。また、塗料の粘度が高くなりすぎて、均一な塗料を得ることができない場合がある。
【0035】
(D)アクリル樹脂のガラス転移点は、40〜60℃である事が好ましい。より好ましくは、50〜55℃である。40℃未満では、乾燥性を高める効果が劣る場合がある。また、自己復元性を高める効果が劣る場合がある。60℃を超えると、塗膜が硬くなりすぎて、自己復元性が劣る場合がある。
【0036】
(D)アクリル樹脂の水酸基価は、60〜80mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、65〜75mgKOH/gである。60mgKOH/g未満では、塗膜が硬くなり、自己復元性が劣る場合がある。80mgKOH/gを超えると、未反応の水酸基によって、乾燥性が劣る場合がある。また、耐水性及び耐薬品性が劣る場合がある。
【0037】
(D)アクリル樹脂を配合することで、乾燥性を高める効果を得るためには、(D)アクリル樹脂を(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの乾燥合計質量100質量部に対して、乾燥質量で5〜15質量部含有することが好ましい。より好ましくは、6〜9質量部である。5質量部未満では、乾燥性を高める効果が劣る場合がある。15質量部を超えると、耐擦傷性が劣る場合がある。特に好ましくは、(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計乾燥質量(A+B)に対する(A)ラクトン変性アクリル樹脂の乾燥質量の比率(A/(A+B))を27/100以上60/100未満とし、かつ、(D)アクリル樹脂を(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの乾燥合計質量100質量部に対して、乾燥質量で5〜13質量部含有する。より好ましくは、5.5〜9質量部含有する。これによって、乾燥性を高める効果に加えて、更に、自己復元性向上の効果を得ることができる。
【0038】
本実施形態に係る自己復元塗料組成物では、更に、(C)ナノシリカを含有することが好ましい。(C)ナノシリカは、形成する塗膜の触感を向上させる役割をもつ。ここで、触感が良好な状態とは、塗膜を指で触った時に、ベタツキ(タック感)、ザラツキなどの抵抗感を受けることがなく、滑らかな状態をいう。一方、触感が悪い状態とは、塗膜を指で触った時に、ベタツキ、ザラツキなどの抵抗感がある状態をいう。
【0039】
(C)ナノシリカとしては、無機の二酸化ケイ素ベースのコアと、反応性を有する水酸基からなるポリアクリレートのシェルとから構成されるコアシェル構造を有する微粒子であることが好ましい。ナノシリカは、分散媒に分散した分散体として利用できる。分散体は、粒度分布がシャープで、微粒子が凝集せずに個々に分散した一次粒子として存在している。
【0040】
(C)ナノシリカの平均粒子径は、1〜100nmであることが好ましい。より好ましくは、2〜40nmである。2nm未満では、凝集によって透明性が劣る場合がある。100nmを超えると、塗膜の表面が凹凸になり、触感が悪くなる場合がある。なお、(C)ナノシリカとして、メルク社製の商品名ティビダ AS‐1010などの市販品を用いることができる。
【0041】
自己復元塗料組成物は、(C)ナノシリカを(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの乾燥合計質量100質量部に対して、乾燥質量で0.5質量部以上含有することが好ましい。より好ましくは、1.0質量部以上である。0.5質量部未満では、触感を高める効果が劣る場合がある。また、(C)ナノシリカの含有量の上限は、2.0質量部とすることが好ましい。より好ましくは、1.5質量部である。2.0質量部を超えると、過剰となり不経済である。
【0042】
本実施形態に係る自己復元塗膜は、本実施形態に係る自己復元塗料組成物とポリイソシアネート化合物とを含有する。ポリイソシアネート化合物は、架橋剤として作用する。ポリイソシアネート化合物は、一分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。これらは、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートである。脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2‐プロピレンジイソシアネート、2,3‐ブチレンジイソシアネート、1,3‐ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4‐トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0044】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3‐イソシアネートメチル‐3,5,5‐トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート,IPDI)、1,3‐シクロペンタンジイソシアネート、1,3‐シクロヘキサンジイソシアネート、1,4‐シクロヘキサンジイソシアネート、メチル‐2,4‐シクロヘキサンジイソシアネート、メチル‐2,6‐シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、1,4‐ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンである。
【0045】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3‐フェニレンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニルジイソシアネート、1,4‐フェニレンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4‐トリレンジイソシアネート、2,6‐トリレンジイソシアネート、4,4’‐トルイジンジイソシアネート、2,4,6‐トリイソシアネートトルエン、1,3,5‐トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’‐ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”‐トリフェニルメタントリイソシアネートである。
【0046】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’‐ジイソシアネート‐1,3‐ジメチルベンゼン、ω,ω’‐ジイソシアネート‐1,4‐ジメチルベンゼン、ω,ω’‐ジイソシアネート‐1,4‐ジエチルベンゼン、1,4‐テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3‐テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0047】
本実施形態では、ポリイソシアネート化合物として、無黄変性の点で、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートを用いることが好ましい。より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートの3量体であって、ビウレット型又はイソシアヌレート型のポリイソシアネートである。特に好ましくは、HDIのイソシアヌレートである。イソシアネート化合物として、市販品を用いることができる。市販品は、例えば、イソシアヌレート型のポリイソシアネートである旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラネート TPA‐100、旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラネート TLA‐100、ビウレット型のポリイソシアネートである旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラネート 24A‐100がある。
【0048】
ポリイソシアネート化合物の含有量は、自己復元塗料組成物が含有する水酸基(‐OH)のモル当量1に対するイソシアネート基(‐NCO)のモル当量が、0.9を超え1.5未満であることが好ましい。より好ましくは、1.0以上1.2以下である。水酸基のモル当量1に対して、イソシアネート基のモル当量が0.9以下では、塗膜強度が劣る場合がある。また、乾燥性が劣る場合がある。水酸基のモル当量1に対して、イソシアネート基のモル当量が1.5以上では、復元性が劣る場合がある。ここで、自己復元塗料組成物が含有する水酸基のモル当量は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールが有する水酸基の合計モル当量である。または、(D)アクリル樹脂を含有する場合には、自己復元塗料が含有する水酸基のモル当量は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂が有する水酸基の合計モル当量である。
【0049】
本実施形態に係る自己復元塗膜を形成する塗料(以降、自己復元塗料という。)は、本実施形態に係る自己復元塗料組成物を主剤とし、ポリイソシアネート化合物を硬化剤とする2液硬化型塗料である。本実施形態に係る自己復元塗膜は、前記主剤と前記硬化剤とを配合し、有機溶剤で塗装に適した固形分濃度に調製した自己復元塗料を、基材上に塗装し、乾燥して形成することができる。
【0050】
有機溶剤は、例えば、ジエチルケトン(3‐ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2‐ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4‐メチル‐2‐ペンタノン)、2‐ヘキサノン、5‐メチル‐2‐ヘキサノン、2‐へプタノン、3‐へプタノン、4‐へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸‐n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸‐3‐メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ‐ブチロラクトン、イソホロン、イソ酪酸ブチルなどのエステル類、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類である。さらに、環境負荷をさらに低減させるために、水系媒体を使用してもよい。水系媒体とは、水及び親水性のある有機溶剤の混合物である。親水性のある有機溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、1‐エチル‐1‐プロパノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、n‐ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、1、4‐ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸‐n‐プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチルなどのエステル類である。本実施形態では、液状溶媒の種類に制限されるものではなく、任意の1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0051】
基材は、特に限定されないが、例えば、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリプロピレン(PP)である。また、前記基材上に、発色層となるベースコートを設け、該ベースコート上に本実施形態に係る自己復元塗膜を設けることができる。ベースコート上に自己復元塗膜を設けることで、ベースコートの凹凸を埋めて、高光沢及び高平滑性を付与することができる。
【0052】
自己復元塗料の塗装方法は、特に限定されず、刷毛塗り法、ローラー塗り法、スプレーガンによる吹付法、ロールコーター法、浸漬法などの公知の方法である。また、乾燥方法は、特に限定されず、例えば、自然乾燥、熱風による強制乾燥である。
【0053】
自己復元塗膜の厚さは、10〜40μmであることが好ましい。より好ましくは、15〜20μmである。10μm未満では、平滑性が劣る場合がある。40μm以上では、不経済である。
【0054】
自己復元塗膜のマルテンス硬さは、1〜30N/mmであることが好ましい。より好ましくは、3〜10N/mmである。マルテンス硬さは圧子を塗膜の表面に押し込んだときの試験荷重と押し込みによって生じたくぼみの表面積との商から求められる塗膜の硬さであり、物体表面の硬度の指標となる。1N/mm未満では、塗膜の表面が柔らかすぎて、自己復元性に劣る場合がある。30N/mmを超えると、塗膜の表面が硬すぎて、自己復元性に劣る場合がある。
【0055】
復元性には、荷重を受けることによって変形するが、荷重を除去すると同時に元に戻り、見かけ上変形していない(傷がついていない)瞬間的な復元性と、荷重を受けることによって変形し、荷重を除去しても変形(傷)が残るが、所定の時間内に変形が元に戻る本明細書でいうところの「自己復元性」とがある。しかし、従来、自己復元性を有する塗膜又はプラスチック基材の復元性の評価において、「復元する」ことの判断が、各個人の主観的判断である場合が多く、その評価方法は確立されていない。そこで、本発明者らは、復元性を評価する方法を確立した。復元性を評価する方法として、まず、大まかに前記の瞬間的な復元性を評価する指標として塑性変形仕事量Wpを用いて区分し、次に、自己復元性を評価する指標として復元率を用いて評価する方法である。この方法によって、復元する速さに関わらず、塗膜の復元性を客観的に評価することができる。復元率は、数1によって求めることができる。
【0056】
(数1)復元率[%]=(d1−d2)/(d1−d0)×100
数1において、d1[μm]は荷重減少終了直後の深さであり、d2[μm]は荷重減少終了後60秒後の深さである。d0[μm]は始点深さである。
【0057】
数1において、荷重減少終了直後の深さd1とは、マルテンス硬さ測定器を用いて、四角錐型のダイヤモンド圧子を20秒かけて最大荷重10mNになるように塗膜の表面に押し込み、そのままの荷重で5秒間保持した後、荷重を減少して60秒かけて圧子を塗膜の表面から離し、塗膜の表面と圧子とが離れた時を荷重減少終了時とし、この荷重減少終了時におけるくぼみの深さである。荷重減少終了後60秒後の深さd2とは、荷重減少終了時から60秒後のくぼみの深さである。始点深さd0とは、荷重をかける前の塗膜表面の高さである。
【0058】
塑性変形仕事量Wpの値が小さいほど、瞬間的な復元性が高く、外部からの影響を受けにくいことを示す。反対に、塑性変形仕事量Wpの値が大きいほど、瞬間的な復元性が低く、外部からの影響を受けやすいことを示す。また、復元率の値が大きいほど、一旦付いた傷が経時によって元に戻る力が大きく、自己復元性が高いことを示す。反対に、復元率の値が小さいほど、一旦付いた傷が経時によって元に戻りにくく、又は元に戻らず、自己復元性が低いことを示す。
【0059】
本実施形態に係る自己復元塗膜の復元率は、30%以上であることが好ましい。より好ましくは、50%以上である。
【0060】
本実施形態に係る自己復元塗膜のヘイズ値は、15%以下であることが好ましい。より好ましくは、8%以下である。ヘイズ値が15%を超えると、透明性が劣る場合がある。また、JIS K 7204:1999「プラスチック‐摩耗輪による摩耗試験方法」に従って、摩耗輪を荷重9.8N及び回転速度60rpmで1000回転させる摩耗試験後のヘイズ値(H2)と摩耗試験前のヘイズ値(H1)との差(ΔH=H2−H1)が、20%未満であることが好ましい。より好ましくは、10%未満であり、特に好ましくは、6%未満である。
【実施例】
【0061】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、添加部数は、固形分換算の値である。
【0062】
(実施例1)
(A)ラクトン変性アクリル樹脂(登録商標プラネットTCクリヤ CF‐100、オリジン電気社製)84.4質量部及び(B)ポリカーボネートジオール(商品名デュラノール T‐5650J、旭化成ケミカルズ社製)15.6質量部を配合した自己復元塗料組成物と、ポリイソシアネート化合物(商品名デュラネート TPA‐100、旭化成ケミカルズ社製)27.4質量部を酢酸エチルで希釈して固形分濃度39.9%の自己復元塗料を調製した。また、(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。この自己復元塗料を、基材(材質:ABS、厚さ1mm)の表面にスプレーガンを用いて、乾燥後の塗膜の厚さが15μmになるように塗装した。得られた塗装面を80℃の乾燥炉で30分静置して乾燥させて自己復元塗膜を形成した。
【0063】
(実施例2)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を71.3質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を28.7質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を26.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0064】
(実施例3)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を60.0質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を40.0質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を25.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0065】
(実施例4)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を50.4質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を49.6質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を24.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0066】
(実施例5)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を41.9質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を58.1質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を23.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0067】
(実施例6)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を34.5質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を65.5質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を23.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂の水酸基及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0068】
(実施例7)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の配合量を27.8質量部及び(B)ポリカーボネートジオールの配合量を72.2質量部に変更し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を22.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂の水酸基及び(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0069】
(実施例8)
実施例1において、(A)ラクトン変性アクリル樹脂(商品名プラネットTCクリヤ CF‐100、オリジン電気社製)36.0質量部、(B)ポリカーボネートジオール(商品名デュラノール T‐5650J、旭化成ケミカルズ社製)64.0質量部及び(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)8.9質量部を配合した自己復元塗料組成物と、ポリイソシアネート化合物(商品名デュラネート TPA‐100、旭化成ケミカルズ社製)24.9質量部を酢酸エチルで希釈して固形分濃度53.2%の自己復元塗料を調製した以外は、実施例1と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0070】
(実施例9)
実施例3において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)7.5質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を26.7質量部に変更した以外は、実施例3と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0071】
(実施例10)
実施例4において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)6.9質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を25.8質量部に変更した以外は、実施例4と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0072】
(実施例11)
実施例5において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)6.5質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を25.0質量部に変更した以外は、実施例5と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0073】
(実施例12)
実施例6において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)6.1質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を24.3質量部に変更した以外は、実施例6と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0074】
(実施例13)
実施例7において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)5.8質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を23.6質量部に変更した以外は、実施例7と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0075】
(実施例14)
実施例3において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)14.7質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を28.0質量部に変更した以外は、実施例3と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0076】
(実施例15)
実施例4において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)13.6質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を27.1質量部に変更した以外は、実施例4と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0077】
(実施例16)
実施例5において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)12.8質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を26.1質量部に変更した以外は、実施例5と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0078】
(実施例17)
実施例6において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)12.0質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を25.4質量部に変更した以外は、実施例6と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0079】
(実施例18)
実施例7において、自己復元塗料組成物に更に、(D)アクリル樹脂(商品名ダイヤナール LR‐1711、三菱レイヨン社製)11.3質量部を配合し、かつ、ポリイソシアネート化合物の配合量を24.6質量部に変更した以外は、実施例7と同様に自己復元塗膜を形成した。(A)ラクトン変性アクリル樹脂、(B)ポリカーボネートジオール及び(D)アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。
【0080】
(実施例19)
実施例8において、自己復元塗料に更に、(C)ナノシリカ(商品名ティビダ AS‐1010、メルク社製)を0.5質量部配合した以外は、実施例8と同様に自己復元塗膜を形成した。(C)ナノシリカの平均粒子径は9nmであった。
【0081】
(実施例20)
実施例19において、(C)ナノシリカの配合量を1.0質量部に変更した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。
【0082】
(実施例21)
実施例19において、(C)ナノシリカの配合量を1.5質量部に変更した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。
【0083】
(実施例22)
実施例19において、(C)ナノシリカの配合量を2.0質量部に変更した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。
【0084】
(比較例1)
(A)ラクトン変性アクリル樹脂(商品名プラネットTCクリヤ CF‐100、オリジン電気社製)100質量部と、ポリイソシアネート化合物(商品名デュラネート TPA‐100、旭化成ケミカルズ社製)72質量部を酢酸エチルで希釈して固形分濃度37.2%の塗料を調製した。ここで、(A)ラクトン変性アクリル樹脂の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。この塗料を、基材(材質:ABS、厚さ1mm)の表面にスプレーガンを用いて、乾燥後の塗膜の厚さが20μmになるように塗装した。得られた塗装面を80℃の乾燥炉で30分静置して乾燥させて塗膜を形成した。
【0085】
(比較例2)
(B)ポリカーボネートジオール(商品名デュラノール T‐5650J、旭化成ケミカルズ社製)100質量部と、ポリイソシアネート化合物(商品名デュラネート TPA‐100、旭化成ケミカルズ社製)32.4質量部を酢酸エチルで希釈して固形分濃度69.1%の塗料を調製した。ここで、(B)ポリカーボネートジオールの水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基とのモル当量比は、1:1であった。この塗料を、基材(材質:ABS、厚さ1mm)の表面にスプレーガンを用いて、乾燥後の塗膜の厚さが20μmになるように塗装した。得られた塗装面を80℃の乾燥炉で30分静置して乾燥させたが、塗膜を形成することができなかった。
【0086】
(参考例1)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、アルミナ粒子(商品名NANOBYK(登録商標)‐3601、ビックケミー・ジャパン社製)0.6質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。アルミナ粒子の平均粒子径は、40nmであった。
【0087】
(参考例2)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、アルミナ粒子(商品名NANOBYK(登録商標)‐3601、ビックケミー・ジャパン社製)0.9質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。アルミナ粒子の平均粒子径は、40nmであった。
【0088】
(参考例3)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、シリカ粒子(商品名NANOBYK(登録商標)‐3650、ビックケミー・ジャパン社製)0.5質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。シリカ粒子の平均粒子径は、20〜25nmであった。
【0089】
(参考例4)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、シリカ粒子(商品名NANOBYK(登録商標)‐3650、ビックケミー・ジャパン社製)0.75質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。シリカ粒子の平均粒子径は、20〜25nmであった。
【0090】
(参考例5)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、酸化亜鉛(商品名NANOBYK(登録商標)‐3821、ビックケミー・ジャパン社製)0.8質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。酸化亜鉛の平均粒子径は、20nmであった。
【0091】
(参考例6)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、酸化亜鉛(商品名NANOBYK(登録商標)‐3821、ビックケミー・ジャパン社製)1.2質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。酸化亜鉛の平均粒子径は、20nmであった。
【0092】
(参考例7)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、シリケート(商品名JC‐21、水澤化学工業社製)0.5質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。シリケートの平均粒子径は、2.0nmであった。
【0093】
(参考例8)
実施例19において、自己復元塗料に(C)ナノシリカ0.5質量部に替えて、ポリエチレン樹脂(商品名ミクロフラットCE‐502、興洋化学社製)0.5質量部を配合した以外は、実施例19と同様に自己復元塗膜を形成した。ポリエチレンの平均粒子径は、10nmであった。
【0094】
得られた実施例及び参考例の自己復元塗膜及び比較例の塗膜の組成を表1に示す。また、得られた実施例の自己復元塗膜及び比較例の塗膜について、次の方法で評価を行った。評価結果を表2〜表4に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
(塗膜の表面硬さ‐マルテンス硬さ)
塗膜の表面硬さをマルテンス硬さとして評価した。マルテンス硬さは、マルテンス硬さ測定器(型式FISCHERSCORPE H100C、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。マルテンス硬さの値は、表2に示す。
【0100】
(瞬間的な復元性評価‐塑性変形仕事量Wp)
塗膜の瞬間的な復元性を塑性変形仕事量Wpで評価した。塑性変形仕事量Wpは、マルテンス硬さ測定器(型式FISCHERSCORPE H100C、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。塑性変形仕事量Wpの値は、表2に示す。
【0101】
(自己復元性評価‐復元率)
塗膜の自己復元性を復元率で評価した。マルテンス硬さ測定器(型式FISCHERSCORPE H100C、フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、塗膜の表面に、四角錐型のダイヤモンド圧子を20秒かけて最大荷重10mNになるように塗膜の表面に押し込み、そのままの荷重で5秒間保持した後、荷重を減少して60秒かけて圧子を塗膜の表面から離したときの復元率を、数1から求めた。復元率の値は、表2に示す。
【0102】
(耐擦傷性評価)
評価対象である実施例の自己復元塗膜又は比較例の塗膜を形成した基材の一つと対照区の塗膜を形成した基材とを横に並べて、両者の塗膜の表面上を真鍮ブラシで50往復した。60秒間静置後、両者の塗膜の表面状態を比較した。対照区として、2液型のアクリルウレタン塗料(商品面 エコネットNS、オリジン電気社製)を基材(材質:ABS、厚さ5mm)の表面にスプレーガンを用いて、乾燥後の塗膜の厚さが20μmになるように塗装し、得られた塗装面を80℃の乾燥炉で30分静置して乾燥させて形成した塗膜を用いた。評価基準は、次のとおりである。評価結果は、表2に示す。
◎:対照区よりも傷が少ない(実用レベル)。
○:対照区と同等である(実用レベル)。
△:対照区よりも若干傷が多いが、実用できる(実用下限レベル)。
×:対照区よりもかなり傷が多く、実用上問題となる(実用不可)。
【0103】
(光沢性評価)
塗膜の光沢性を光沢度で評価した。光沢度は、光沢計(型式 micro‐TRI‐gloss、BYK社製)を用いて測定した。評価結果は、表3に示す。光沢度は、値が大きいほど光沢が高いことを意味する。
【0104】
(透明性評価‐ヘイズ値)
塗膜の透明性を、ヘイズ値(H1)を用いて評価した。ヘイズ値(H1)は、ヘイズメーター(型式NDH 5000、日本電色工業社製)を用いて測定した。H1が15%以下の場合を実用レベルとし、H1が15%を超えた場合を実用不適とした。評価結果は、表3に示す。
【0105】
(耐摩耗性評価)
JIS K 7204:1999「プラスチック‐摩耗輪による摩耗試験方法」に従って行うテーバー摩耗試験前後のヘイズ値を測定し、試験前のヘイズ値(H1)と試験後のヘイズ値(H2)との差(ΔH)を算出し、耐擦傷性を評価した。テーバー摩耗試験は、テーバー摩耗試験機(型式60 RPM テーバー式、東洋精機社製)を用いて、荷重9.8N、回転数60rpmで摩耗輪を塗膜上で1000回転させた。ΔHが20%以下の場合を実用レベルとし、ΔHが20%を超えた場合を実用不適とした。評価結果は、表3に示す。
【0106】
(乾燥性評価)
塗料を基材上に塗装後、前記条件(雰囲気温度80℃)の乾燥炉に入れてから指触乾燥するまでに必要な時間を乾燥性として評価した。なお、指触乾燥とは、塗膜の中央に指先で軽く触れて指先が汚れない状態をいう(JIS K5600‐1‐1:1999)。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表3に示す。
◎:ベタツキがなくなるまでの時間が20分以下である(実用レベル)。
○:ベタツキがなくなるまでの時間が20分を超え60分以下である(実用レベル)。
×:60分を超えても、ベタツキが残っている(実用不適)。
【0107】
(触感評価)
実施例19〜実施例22の塗膜について、(C)ナノシリカを配合したことによる触感を高める効果を確認した。評価方法は、塗膜の表面を指先で触り、感触を実施例8と比較した。また、参考例1〜参考例8について、同様の評価を行った。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表3に示す。
◎:実施例8よりもベタツキ又はザラツキがなく、滑らかである(実用レベル)。
○:実施例8と同等である(実用レベル)。
×:実施例8よりもベタツキ又はザラツキがあり、抵抗感がある(実用不適)。
【0108】
(鉛筆硬度試験)
JIS K−5600−5−4:1999「引っかき硬度:鉛筆法」に準じて試験を行い、傷跡が生じなかった最も硬い鉛筆の硬度で評価を行った。評価結果は、表4に示す。
【0109】
(密着性評価)
JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に準じて、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。評価結果は、表4に示す。
○:0(実用レベル)
×:1〜5(実用不適)
【0110】
(耐湿性評価)
塗膜の表面に、JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に準じて、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、雰囲気温度50℃及び雰囲気湿度95%RHの恒温恒湿槽中に240時間静置後、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。評価結果は、表4に示す。
○:0(実用レベル)
×:1〜5(実用不適)
【0111】
(耐水性評価)
塗膜を形成した基材を40℃の温水に120時間浸漬させた後、温水から取り出して、表面の温水をふき取り、塗膜の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表4に示す。
○:変化なし(実用レベル)。
△:塗膜に膨潤が見られた(実用不適)。
×:塗膜が剥離した(実用不適)。
【0112】
(耐熱性評価)
塗膜の表面に、JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に準じて、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、雰囲気温度80℃及び雰囲気湿度50%RHの恒温槽中に72時間静置後、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。評価結果は、表4に示す。
○:0(実用レベル)
×:1〜5(実用不適)
【0113】
(耐酸性評価)
塗膜を形成した基材を25℃の0.1Nの硫酸に24時間浸漬させた後、取り出して、表面の硫酸をふき取り、塗膜の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表4に示す。
○:変化なし(実用レベル)。
△:塗膜に膨潤が見られた(実用不適)。
×:塗膜が剥離した(実用不適)。
【0114】
(耐アルカリ性評価)
塗膜を形成した基材を55℃の0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬させた後、取り出して、表面の水酸化ナトリウム水溶液をふき取り、塗膜の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表4に示す。
○:変化なし(実用レベル)。
△:塗膜に膨潤が見られた(実用不適)。
×:塗膜が剥離した(実用不適)。
【0115】
(耐アルコール性評価)
平面摩耗試験機(東洋精機社製)を用いて耐アルコール性を評価した。評価条件は、脱脂綿に99.5%エタノールをしみこませ、塗膜上を9.8Nで20往復ラビング後の塗膜の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表4に示す。
◎:変化なし(実用レベル)。
○:若干変化した(実用下限レベル)。
△:50%未満の面積の塗膜が剥離して、基材が見えた(実用不適)。
×:50%以上の面積の塗膜が剥離して、基材が見えた(実用不適)。
【0116】
(耐侯性評価)
サンシャインウェザーメーター試験機(型式 S80B、スガ試験機社製)を用いて、塗膜表面に、光源としてSWOMを用いて78.5W/mで200時間照射した後、塗膜の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。評価結果は、表4に示す。
○:割れ又は剥離及び変色がない(実用レベル)。
×:塗膜の割れ又は剥離が見られた(実用不適)。
【0117】
実施例1〜実施例22の自己復元塗膜は、いずれも、透明性が高く、光沢性及び乾燥性に優れていた。さらに、復元率が高く、擦り傷がついても、傷が元に戻りやすかった。また、長期間使用しても塗膜の割れ又は剥離が発生しないことが確認できた。
【0118】
実施例8〜実施例18は、(D)アクリル樹脂を配合したことによる乾燥性の効果及び自己復元性向上の効果を確認するための実施例である。実施例8〜実施例18は、いずれも乾燥性に優れていた。例えば、実施例9は、実施例3をベースとして、更に(D)アクリル樹脂を配合した実施例であるが、実施例9は実施例3よりも乾燥性に優れていた。実施例8は、塗膜の表面硬さが大きく、かつ、自己復元性に優れていた。実施例10〜実施例13については、対応する実施例である実施例4〜実施例7よりも復元率が上昇し、(D)アクリル樹脂を配合したことによる自己復元性向上の効果が確認できた。例えば、実施例11は、実施例5をベースとして、更に(D)アクリル樹脂を配合した実施例であるが、実施例5の復元率が29.7%であるのに対し、実施例11の復元率が65.3%であり、自己復元性の大幅な向上が確認できた。他方、実施例14〜実施例18では、(D)アクリル樹脂の配合量が多かったため、自己復元性を高める効果が実施例8及び実施例10〜実施例13よりも小さかった。
【0119】
実施例19〜実施例22は、(C)ナノシリカを配合することによる塗膜の触感向上の効果を確認するための実施例であり、いずれも実施例8をベースとして、更に(C)ナノシリカを配合している。実施例19〜実施例22は、いずれも実施例8よりも触感が向上していた。また、(C)ナノシリカの配合量に関わらず、(C)ナノシリカを配合したことに起因する塗膜の表面硬度及び復元率への悪影響はなく、いずれも高い自己復元性を保持していた。
【0120】
比較例1は、(A)ラクトン変性アクリル樹脂だけを含有し、(B)ポリカーボネートジオールを含有しなかったため、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、塗膜に傷がついていた。比較例2は、(B)ポリカーボネートジオールだけを含有し、(A)ラクトン変性アクリル樹脂を含有しなかったため、塗膜の物理的強度が得られず、塗膜にならなかった。
【0121】
参考例1〜参考例8は、(C)ナノシリカに替えて、その他の粒子を配合した参考例である。その他の粒子としてアルミナを配合した参考例1及び参考例2では、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、傷がついていた。その他の粒子としてシリカを配合した参考例3及び参考例4では、平均粒子径が大きかったため、ザラツキを感じ、触感が劣った。また、参考例4では、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、傷がついていた。その他の粒子として酸化亜鉛を配合した参考例5及び参考例6では、テーバー摩耗試験前において透明性が悪く、更に、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、傷がついていた。その他の粒子としてシリケートを配合した参考例7では、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、傷がついていた。その他の粒子としてポリエチレンを配合した参考例8では、テーバー摩耗試験前において透明性が悪く、更に、テーバー摩耗試験後のヘイズ値の上昇量(ΔH)が大きく、傷がついていた。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明に係る自己復元塗膜塑性物は、高光沢を付与し、透明性が高く、長期間使用しても塗膜の割れ又は剥離が発生せず、傷が残りにくい塗膜を形成するため、携帯電話、パソコンなどのモバイル機器、自動車のボディ、外装部品などの表面を保護する塗膜組成物として適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとを含有することを特徴とする自己復元塗料組成物。
【請求項2】
さらに、(D)アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の自己復元塗料組成物。
【請求項3】
さらに、(D)アクリル樹脂を含有し、
(A)ラクトン変性アクリル樹脂と(B)ポリカーボネートジオールとの合計乾燥質量(A+B)に対する(A)ラクトン変性アクリル樹脂の乾燥質量の比率(A/(A+B))が、27/100以上60/100未満であることを特徴とする請求項1に記載の自己復元塗料組成物。
【請求項4】
さらに、(C)ナノシリカを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自己復元塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の自己復元塗料組成物とポリイソシアネート化合物とを含有することを特徴とする自己復元塗膜。

【公開番号】特開2012−97127(P2012−97127A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243108(P2010−243108)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年10月1日 オリジン電気株式會社発行の「オリジン テクニカルジャーナル No.73」に発表
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】