説明

自己発火/ブースター組成物

たとえば自己発火および/またはブースター組成物12として使用される新規な組成物であって、セルロースアセテートブチレート、ニトログアニジン、過塩素酸カリウムのような過塩素酸金属塩、燃焼の間に三酸化モリブデンを遊離する第一の添加物、および、ガス生成システムの中で使用される公知の燃料から選ばれた第二の添加物を含む組成物。この新規な組成物は、たとえばガス生成装置10内に含まれる。ガス生成装置10は、エアバッグインフレーター10またはシートベルトアセンブリ150のようなシステム、またはより広義の乗り物乗員保護システム200内のガス生成システム内に含まれることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2006年12月15日に出願された米国仮出願番号60/875,300の利益を要求する。
【0002】
技術分野
本発明は、一般にガス生成システムに関し、たとえば自動車の拘束システムのためのガス生成装置中で使用される自己発火およびブースター組成物に関する。
【0003】
本発明の背景
本発明は自己発火組成物に関し、発火の際に、自己発火組成物と燃焼可能な連絡関係にあるガス生成組成物を安全に発火するのに必要なフレームフロントと圧力フロントを提供する自己発火組成物に関する。当該技術分野において知られているように、ガス生成装置には、所望のしきい値温度に反応して点火する自己発火組成物が典型的に提供される。その結果、ガス生成組成物はたとえば溶融する前に点火され、それにより安全に主ガス生成組成物に点火し、一旦ガス生成組成物が燃焼を始めた後に爆発をする可能性を禁止ないし防止する。
【0004】
進行中の挑戦は、その生産に要求される構成要素を低減することによりガス生成装置の製造を単純化することである。例えば、乗り物乗員保護システム中で使用される多くのガス生成装置では、いくつかの個別の組成物が対応する個別の機能に役立つように提供される。これらの組成物は、燃焼する際に、エアバッグまたはシートベルトプリテンショナーのような付随する拘束装置を操作するために十分な量のガスの生成物を提供するために、主ガス生成組成物をしばしば含んでいる。ブースター組成物は主ガス生成組成物の燃焼に先立ってガス生成装置内の圧力および熱を上げるために利用され、それにより主ガス生成組成物の受理可能な燃焼のためにインフレーター内における好ましい状況を形成する。もちろん、燃焼の際に他の組成物の安全な燃焼を提供するために使用される他の組成物は自己発火性組成物である。自己発火組成物は、例えば主ガス生成組成物の融点より低い温度で発火するように設計されている。それにより爆発反応とは対照的な、主ガス生成組成物の制御された燃焼を保証する。
【0005】
ガス生成組成物として、セルロースアセテートブチレート(CAB)、ニトログアニジン(NQ)および過塩素酸カリウム(KP)を含む組成物の使用が知られている。これらの組成物は燃焼の際に比較的大量のガス、および比較的少量の固体を生成する。しかしながら、発火温度は摂氏500度以上である。DOTおよびBAM急熱テストに暴露された時、この組成物を利用するシートベルトプリテンショナーは分解する。それでも、比較的安いコストと多量のガス生成のために、この組成物は望ましいものであった。したがって、CAB組成物の点火および燃焼を安定させ、たとえばシートベルト装置において使用される、より小さなマイクロガス生成装置に役立つようにすることは、当該技術分野における技術革新である。
【0006】
発明の要約
上記の課題および他の課題は、過塩素酸カリウムのような過塩素酸金属塩から選ばれた第一の酸化剤を組成物の約10−90重量パーセントで含み、CABとNQの燃料成分を一緒にして組成物の約10−90重量パーセントで含む、自己発火/ブースター組成物を含むガス生成システムにより解決される。本発明においては、第一の添加物である三酸化モリブデンが、組成物の合計の約0.1−3重量%で提供される。あるいは、燃焼の間に同じ相対的なモル/重量の三酸化モリブデンを遊離する任意の化合物も、第一の添加物として提供されることができる。これらとしては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、燐モリブデン酸、燐モリブデン酸アンモニウムおよび燐モリブデン酸ナトリウムがあげられる。5−アミノテトラゾールである第二の添加物は、組成物の合計の約0.1−5重量%で提供される。別法として、アゾール化合物の金属塩、並びにたとえばアミノテトラゾール、テトラゾール、5−ニトロテトラゾール、5−ニトロアミノテトラゾール、およびビテトラゾールのようなアゾール化合物をはじめとする任意のアゾールに基づいた燃料が、同じ有効な重量パーセント範囲で、あるいは同じ有効なモル量の範囲で含まれることができる。別法として、1,2,4−トリアゾール−5−オンまたは3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、並びにこれらの化合物の金属塩をはじめとするトリアゾールに基づいた化合物も、単独で、またはテトラゾールに基づいた化合物とともに、同じ有効な重量パーセント範囲で、あるいは同じ有効なモル量の範囲で含まれることができる。別法として、グアニジン硝酸塩、アミノグアニジン硝酸塩、トリアミノグアニジン硝酸塩、ニトログアニジン、ジシアンジアミド、トリアザロン、ニトロトリアザロンおよびそれらの混合物も、単独で、またはテトラゾールに基づいた化合物および/またはトリアゾールに基づいた化合物とともに、全体として約0.1から5重量%の重量%範囲で、あるいはアゾールに基づいた第二の添加剤と同じ有効なモル量の範囲で含まれることができる。
【0007】
本発明においてはさらに、自己発火システムを組込むガス生成装置および乗り物乗員保護システムも提供される。当該技術分野において公知のシートベルト装置に本明細書に記載された組成物を組み込んだものもさらに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明にかかるインフレーターの概略的な構造を示す横断面の側面図である。
【図2】図2は、本発明にかかるガス生成組成物を含む例示的な乗り物乗員拘束装置の概要の表現である。
【0009】
詳細な説明
主燃料成分はセルロースアセテートブチレート(CAB)およびニトログアニジン(NQ)を含んで提供される。主燃料は、ガス生成組成物の約10−90重量%で提供される。主燃料の燃料成分はそれぞれ、主燃料の重量に対して約5−95重量%で一般に提供されることができる。三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、燐モリブデン酸、燐モリブデン酸アンモニウムおよび燐モリブデン酸ナトリウムから選ばれた第一の添加物は、約0.1−3重量パーセント(wt%)で提供される。別法として、同じ相対的なモル量の三酸化モリブデンを遊離する任意の構成要素が提供されることができる。
【0010】
第二の添加物は、5−アミノテトラゾールのようなテトラゾール類;カリウム5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の金属塩;5,5’−ビス−1H−テトラゾールのシアンモニウム塩ようなアゾール類の非金属塩:5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の硝酸塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体;ジカリウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の金属塩;モノアンモニウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の非金属塩;1,2,4−トリアゾール−5−オンまたは3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、およびそれらの化合物の金属塩をはじめとする、トリアゾールに基づく化合物;ジシアンジアミドのようなグアニジン類;グアニジン硝酸塩のようなグアニジン類の塩;ニトログアニジンのようなグアニジン類のニトロ誘導体;アゾジカルボンアミドのようなアゾアミド類;アゾジカルボンアミジン二硝酸塩のようなアゾアミド類の硝酸塩;またそれらの混合物、をはじめとする1つ以上の第二の燃料から選択される。第二の燃料は、主燃料の共燃料としてこのシステム内で使用することができる。第2の添加物は約0.1−5重量%を構成する。
【0011】
酸化剤成分は過塩素酸カリウムのような過塩素酸金属塩から選ばれ、組成物の約10−90重量%で含まれる。
【0012】
本発明の組成物は、アルドリッチまたはフィッシャーケミカル社のような既知のサプライヤによって提供される成分から形成される。組成物は粒状の形で提供され、既知の方法で乾燥混合され圧縮されるか、または当該技術分野において公知の方法で混合されることができる。本発明の組成物は、典型的にはエアバッグ装置、乗員保護システム、または安全ベルト装置に見られるガス生成装置、または乗り物乗員保護システムのようなガス生成システムにおいて使用されることができる。これらの製造は公知であり、または当業者により理解されるものである。
【0013】
図1の中で示されるように、例示的なインフレーターまたはガス生成システム10は、デュアルチャンバー設計を組込み、本明細書に記載されたようにして形成された自己発火性組成物/ブースター組成物を含むようにされる。これらは公知のようにして製造することができる。一般に、本明細書に記載されたように形成されたガス生成物質12を含むインフレーターは、公知の技術により製造されることができる。米国特許6,422,601、6,805,377、6,659,500、6,749,219および6,752,421は、典型的なエアバッグインフレーター設計を例証し、これらは参照され本明細書の一部として組み込まれる。
【0014】
図2を参照する。上記の例示的なインフレーターまたはガス生成システム10は、エアバッグシステムまたは乗り物乗員保護システム200内に組み込まれることができる。エアバッグシステム200は少なくとも1つのエアバッグ202、および本発明のガス生成物質組成物12を含むインフレーター10を含み、該インフレーターはエアバッグの内部と流体連絡可能にエアバッグ202と組み合わされる。エアバッグシステム200は、衝突センサー210を含むか、またはこれと接続される。衝突センサー210は既知のクラッシュセンサーアルゴリズムを含み、衝突の場合に例えばエアバッグインフレーター10の活性化によってエアバッグシステム200の起動の信号を送る。
【0015】
図2を参照する。エアバッグシステム200は、安全ベルトアセンブリー150のような追加の要素を含む、より広範な、より包括的な乗り物乗員拘束システム180に組み入れられることができる。図2は、そのような拘束システムの1つの典型的な実施態様の概略図を示す。安全ベルトアセンブリー150は、安全ベルトハウジング152および、ハウジング152から伸びる安全ベルト100を含む。安全ベルトリトラクタメカニズム154(例えば、ばね式のメカニズム)は、ベルトの端部分に連結されることができる。さらに、衝突の際にリトラクタメカニズムを始動させるために、ガス生成組成物/自己発火組成物12を含む安全ベルトプリテンショナー156がベルトリトラクターメカニズム154に連結されることができる。本発明の安全ベルト実施態様と共に使用されることができる典型的なシートベルトリトラクタメカニズムは、米国特許番号5,743,480、5,553,803、5,667,161、5,451,008、4,558,832および4,597,546に開示されている。これらの特許は参照され、本明細書の一部として組み込まれる。本発明の安全ベルトの実施態様が組み合わされることができる典型的なプリテンショナーの例は、米国特許番号6,505,790および6,419,177に開示されている。これらの特許は参照され、本明細書の一部として組み込まれる。
【0016】
安全ベルトアセンブリ150は、例えばプリテンショナーに組み入れられた火工品イグナイタ(図示せず)の起動によって、ベルトプリテンショナー156の起動の信号を生成する既知のクラッシュセンサーアルゴリズムを含む、衝突センサ158(例えば慣性センサあるいは加速度計)を含むことができる。先に参照され、本明細書の一部として組み込まれた米国特許番号6,505,790および6,419,177は、そのような方法で始動するプリテンショナーの例を提供する。
【0017】
安全ベルトアセンブリ150、エアバッグシステム200、およびより広範な乗り物乗員保護システム180が例示されるが、本発明により意図されるガス生成システムはこれらに限定されるものではない。
【0018】
本明細書の記載は本発明の実施態様の詳細な説明に過ぎず、開示された実施態様について種々の変更が、本明細書の記載に基づいて、本発明の範囲を逸脱することなく行える。したがって、本明細書の記載は本発明の範囲を何ら制限しない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載、およびその等価物により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物;
合計の組成物の約10−90重量%で提供される、セルロースアセテートブチレートおよびニトログアニジンを含む第一の燃料、
合計の組成物の約10−90重量%で提供される、1以上の過塩素酸金属塩を含む酸化剤、
合計の組成物の約0.1−3重量%で提供される、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、燐モリブデン酸、燐モリブデン酸アンモニウムおよび燐モリブデン酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの成分を含む第一の添加剤、および
合計の組成物の約0.1−5重量%で提供される、5−アミノテトラゾールのようなテトラゾール類;カリウム5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の金属塩;5,5’−ビス−1H−テトラゾールのジアンモニウム塩のようなアゾール類の非金属塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の硝酸塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体;ジカリウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の金属塩;モノアンモニウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の非金属塩;1,2,4−トリアゾール−5−オンまたは3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、およびそれらの化合物の金属塩をはじめとする、トリアゾールに基づく化合物;ジシアンジアミドのようなグアニジン類;グアニジン硝酸塩のようなグアニジン類の塩;ニトログアニジンのようなグアニジン類のニトロ誘導体;アゾジカルボンアミドのようなアゾアミド類;アゾジカルボンアミジン二硝酸塩のようなアゾアミド類の硝酸塩;およびそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤を含む第二の添加剤。
【請求項2】
請求項1記載の組成物を含む、ガス生成システム。
【請求項3】
請求項1記載の組成物を含む、乗り物乗員保護システム。
【請求項4】
前記の過塩素酸金属塩が過塩素酸カリウムである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
組成物の合計重量に基づいて、セルロースアセテートブチレートおよびニトログアニジンを合計で約10−90重量%、過塩素酸カリウムを約10−90重量%、三酸化モリブデンを約0.1−3重量%、5−アミノテトラゾールを約0.1−5重量%含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
セルロースアセテートブチレートおよびニトログアニジンがそれぞれ第一の燃料の重量の約5−95重量%で提供される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
以下を含む組成物;
セルロースアセテートブチレートおよびニトログアニジンを含む第一の燃料、
1以上の過塩素酸金属塩を含む酸化剤、
三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、燐モリブデン酸、燐モリブデン酸アンモニウムおよび燐モリブデン酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1つの成分を含む第一の添加剤、および
第二の燃料から選ばれる少なくとも1つの添加剤を含む第二の添加剤。
【請求項8】
過塩素酸カリウムを含む、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
組成物の合計重量に基づいて、前記第一の燃料が約10−90重量%で提供され、前記酸化剤が約10−90重量%で提供され、前記第一の添加剤が約0.1−3重量%で提供され、前記第二の添加剤が約0.1−5重量%で提供される、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
前記第二の添加剤が、5−アミノテトラゾールのようなテトラゾール類;カリウム5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の金属塩;5,5’−ビス−1H−テトラゾールのジアンモニウム塩のようなアゾール類の非金属塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類の硝酸塩;5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体;ジカリウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の金属塩;モノアンモニウム 5−アミノテトラゾールのようなアゾール類のニトロアミン誘導体の非金属塩;1,2,4−トリアゾール−5−オンまたは3−ニトロ−1,2,4−トリアゾール−5−オン、およびそれらの化合物の金属塩をはじめとする、トリアゾールに基づく化合物;ジシアンジアミドのようなグアニジン類;グアニジン硝酸塩のようなグアニジン類の塩;ニトログアニジンのようなグアニジン類のニトロ誘導体;アゾジカルボンアミドのようなアゾアミド類;アゾジカルボンアミジン二硝酸塩のようなアゾアミド類の硝酸塩;およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7記載の組成物。
【請求項11】
以下を含む組成物;
セルロースアセテートブチレートおよびニトログアニジンを含む第一の燃料、
1以上の過塩素酸金属塩を含む酸化剤、
燃焼中に三酸化モリブデンを遊離する化合物を含む第一の添加剤、および
第二の燃料から選ばれた少なくとも1つの添加剤を含む第二の添加剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513186(P2010−513186A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541423(P2009−541423)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/025892
【国際公開番号】WO2008/076441
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(507000143)ティー ケー ホールディングス インク (18)
【Fターム(参考)】