説明

自己発電型個人認証システム

【課題】個人認証装置の利用者によるドアノブ等の操作により発電された電気エネルギーを蓄積することにより、外部電源を不要とし、長時間動作が可能でかつ操作性の良い自己発電型個人認証システムを実現する。
【解決手段】ドアノブの回転エネルギーを発電機に伝達して発電し、個人認証システムに設けた蓄電器に電気エネルギーを蓄える。個人認証装置自身が動作するために必要となるエネルギーを、利用者によるドアノブ等の操作部材の回転から生成して蓄積し、長時間にわたって個人認証装置の利用を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉操作を動力源とした、自己発電型個人認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個人認証システムには、商用電源等に接続され常時個人認証装置に電力を供給する電源ユニットが不可欠である。したがって、個人認証システムを設置する際には個人認証装置本体の他に電源ユニットを設置しなければならないため、設置スペースが大きくなり設置工事も煩雑であった。これに対し、自己発電ユニット等の簡便な電源が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1では、キャビネットの引手部操作により発電し、その電気エネルギーを個人認証装置へ供給することで、従来の電源ユニットを省略可能にしている。
【0004】
また、個人認証システムとは異なるが、特許文献2ではドアノブを回した時の回転エネルギーや、ドア開閉時の回転エネルギー、太陽光発電で得られた電気エネルギー等を電気錠へ供給することで、電源ユニットを省略可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-138515号公報
【特許文献2】特開2009-162009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、キャビネット利用者が引手部の操作開始した時点で発電が開始され、その電力によって個人認証装置が動作を始めるので、引手部の操作と認証操作を必ず同時に行う必要があり、両手が塞がってしまう等により操作性の点で支障がある。また、引手部の操作終了後は個人認証装置の電源が落ちてしまうため、引手部の操作を行わない間は個人認証装置の状態やいたずら等の個人認証装置の環境状態を確認することが出来ないという欠点がある。
【0007】
また、上記特許文献2は、操作時に電気錠のみが施錠/解錠されるもので、このままでは個人認証装置を駆動する電源に利用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、利用者により操作される変位可能な操作部材と、該操作部材により発電を行う自己発電ユニットと、該自己発電ユニットの電力により作動する個人認証装置を有する自己発電型個人認証システムにおいて、前記個人認証システムは、前記自己発電ユニットの電力を蓄積する蓄電器を有することを特徴とする。
【0009】
また、自己発電ユニットと前記個人認証装置は電気ケーブルにより接続され、前記蓄電器は、前記個人認証装置と前記自己発電ユニットを結ぶ電気的接続経路の少なくとも一箇所に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、蓄電器は、個人認証装置に電力を供給する主蓄電器と、主蓄電器の電気エネルギーが消費されたときに、前記個人認証装置に電力を供給する補助蓄電器を有することを特徴とする。
【0011】
また、操作部材は機密エリアに入室するドアのドアノブであることを特徴とする。
【0012】
また、自己発電ユニットは前記ドアに内蔵されていることを特徴とする。
【0013】
また、自己発電ユニットは機密エリアに入室するドアの前面の床に設けた床発電ユニットからなることを特徴とする。
【0014】
また、ドアはさらに、前記個人認証装置により開閉制御される、ドアを施錠する電気錠を有することを特徴とする。
【0015】
また、蓄電器の電気容量を操作部材の非操作時間帯にも自然放電により電気エネルギーが消尽されない電気容量としたことを特徴とする。
【0016】
さらに、自己発電ユニットは、発電機と、フライホイールを有する発電機の伝達軸と、前記操作部材の回動を前記発電機の伝達軸に伝達する伝達軸と、前記両伝達軸の間に設けられたラチェット機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、利用者により操作される変位可能な操作部材と、該操作部材により発電を行う自己発電ユニットと、該自己発電ユニットの電力により作動する個人認証装置を有する自己発電型個人認証システムにおいて、前記個人認証装置は、前記自己発電ユニットの電力を蓄積する蓄電器を有することにより、格別な商用電源等の外部電源との接続が不要となる。また蓄電器を内蔵することにより、操作部材を操作しなくても一定時間は電源供給が可能であるため、個人認証装置の状態を常時把握出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1の個人認証システムを示す正面図である。
【図2】本発明の実施例1の自己発電ユニットを示す模式図である。
【図3】本発明の実施例1の個人認証システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例1実施形態の個人認証装置の外観を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例1の運用例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例1の個人認証装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例1の自己発電ユニットのラチェット機構の模式図である。
【図8】図7のB部拡大図である。
【図9】本発明の実施例2の個人認証システムを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を各実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施形態のドアの正面図を示したものである。設備建物の壁体8には利用者を特定する個人認証装置1が取付けられている。また、利用者が出入りする機密エリアである室内に入室するドア2が開閉可能に取付けられている。ドア2には、回転エネルギーを発生させる回動可能な操作部材であるドアノブ3、ドア2を自動的に閉めるドアクローザ4、ドアノブ3に連結された自己発電ユニット5および電気錠6が設けられている。個人認証装置1と自己発電ユニット5、電気錠6はケーブル7で接続され、電気錠6の施錠/解錠は個人認証装置1からの電気信号で行われる。個人認証装置は退室時チェックのため室内にも設けることができる。
【0021】
図2は、ドアノブ3の回転エネルギーにより発電する機構を示したものである。ドアノブ3を矢印A方向に回動することにより、回転エネルギーが伝達軸13、歯車12、歯車14、伝達軸15を介して発電機22へと伝達されて行く。ドアノブ3をA方向に回した時の回転エネルギーを発電機22側に高速で伝えるため、歯車12と歯車14に増速ギア比を設けておりここでは4対1に設定している。更に、ドアノブ3およびこれに連結された伝達軸13は所定角度のみ回動可能であり歯車12と歯車14の回転速度がずれ、または歯車12が停止するため、歯車12と歯車14の間にラチェット機構を設ける。これにより発電機22側の歯車14の回転が速い場合は、その回転を妨げないようにしている。
【0022】
図7、図8に示す通り、ラチェット機構は歯車12外周に設けた歯30と、歯30を歯車12に回動自在に軸支する固定軸31と、歯30を歯車12の中央方向へ付勢する引張バネ32で構成されている。歯車12が停止している時や回転が遅い時、又はA方向と逆回転になった場合、引張バネ32により、歯30が固定軸31を支点にして内側に閉じられるため、次の歯車14の歯33と接触せず、回転を妨げることはない。また、歯車12の回転開始直後は、遠心力により歯30が固定軸31を支点に外側に開いて歯車14の歯33と噛み合い歯車14に回転エネルギーを伝達する。これにより、ドアノブをA方向に回した時の回転エネルギーのみを歯車14に伝達する。
【0023】
また、図2において、歯車14と発電機22との間には、僅かな回転エネルギーを長時間発電機22に伝えるため大きな慣性質量を持つフライホイール21が設けられている。歯車14は、常に一定方向に回転し続け、同方向への回転エネルギーのみを伝達する。これによりドアノブ3操作の度に発生する回転エネルギーは、伝達軸13、歯車12、歯車14より伝達軸15を通して発電機22の軸を回し、発電を行う。
【0024】
図3に示す通り、個人認証装置1には主蓄電器47及び、補助蓄電器48が内蔵されている。発電機22で生成された電気エネルギーは、個人認証装置1に内蔵された主蓄電器47及び補助蓄電器48に蓄えられ、主蓄電器47から個人認証装置1の制御部46、およびドア2の電気錠6へと電源が供給される。主蓄電器47の出力は5W程度の小容量のものが用いられ、夜間等の操作されない放電時間帯にも電気エネルギーが消尽しないように考慮している。蓄電器は微少発電電力を蓄電する事が可能なコンデンサ等を用いることができる。
【0025】
主蓄電器47、補助蓄電器48は、個人認証装置1と自己発電ユニット5を接続する電気的接続経路の少なくとも1箇所に設ければよい。従って発電ユニット5内に設けてもよく、電気ケーブル7の中間に設ける事もできる。
【0026】
図4は、個人認証装置の構成を示したものである。認証操作手順や装置状態等のメッセージを表示する表示部40、各種設定や確認およびID入力に使用するキー入力部41、指静脈等の生体情報により個人認証を行う個人情報読取部42、電気エネルギーを保存する主蓄電器47、主蓄電器47の容量が無くなった時に操作や入室動作をバックアップする補助蓄電器48が設けられている。
【0027】
図5に、本発明の運用例のフローチャートを示す。ここでは、特定の部屋への入退室を管理する個人認証装置1として生体認証装置を用いた例を挙げる。まず、ステップS100で、入室を目的とする利用者は個人認証装置1が動作可能状態であるかを確認する。動作可能か否かは表示部40のメッセージ等で確認出来る。次にS101で生体認証操作を行う。この場合キー入力部41からキーを入力するか、ICカード等の読み取り操作をしても良い。次に生体認証データを読み取り、登録済のデータと照合を行い、個人を確定する。
【0028】
S102で利用者が認証操作者本人と確定されれば、利用者はS103でドアノブ3を回動して入室する。この時の回動動作で自己発電ユニット5により発電され、個人認証装置1の主蓄電器47、補助蓄電器48に蓄電される。もし、個人認証装置1が動作可能でなかった場合は、ドアノブ操作103ステップによりドアノブ3を回動操作させ、蓄電させることによって認証操作を行うことが出来る。また、退出時も同様にドアノブ3の操作により発電、蓄電が行われる。入退室が頻繁に行われている間は、S103のドアノブ操作103により常時発電、蓄電が行われる。
【0029】
図6は、個人認証装置1の構成を示すブロック図であり、メッセージを表示する表示部40、情報を入力するテンキー部41、生体情報を読み取る生体認証読み取り部42、カード情報を読み取るICカード読み取り部43、上位と通信を行う上位通信I/F部44、電気錠を駆動する電気錠駆動部45が、制御部46に接続され制御されている。ICカード読み取り部43、上位通信I/F部44は省略することもできる。
【0030】
制御部46には、内蔵された主蓄電器47から電源を供給する。蓄電器容量が少なくなった場合は、切替え器49により自動的に補助蓄電器48に切り替え、個人認証装置1自身の動作電源を確保する。
【0031】
本発明の個人認証装置1は、電源を自分で管理可能であるため、装置自身の状態管理や、外部からのいたずら操作等の環境状態を把握でき、ログ機能により自己の操作履歴を上位通信I/F部44経由で上位装置に通知することが出来る。さらに、ドア通過時には、蓄電器に電気エネルギーがあるため直ちに個人認証動作を行うことができ、認証操作に続いてドアノブ操作を行うという動作手順で、円滑な入退室が可能となる。また、外部商用電源等との接続がなく、取り付け工事の簡素化が可能である。
【実施例2】
【0032】
図9に、本発明の実施例2の個人認証システムを示す。図において50は圧電素子等から構成される床発電ユニットを示す。床発電ユニット50は、個人認証装置1の利用者がドアの前に立つとき、床発電ユニット50が一定荷重で踏見込まれることによる機械的操作による圧縮力を電気エネルギーに変換するものである。発電された電気エネルギーは、実施例と同様の構造を持つ個人認証装置1に給電されて、主蓄電器47、補助蓄電器48に蓄電される。この場合は、発電ユニット自体の構成を実施例1よりも単純化することが可能である。またドアのような可動部分に発電ユニットを設ける必要がないため、故障の少ない電力供給が可能である。さらに発電ユニットの構成にもよるが、より大きな動作ストロークをもち十分な発電エネルギーを得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 個人認証装置
2 ドア
3 ドアノブ
5 自己発電ユニット
6 電気錠
7 電気ケーブル
12 歯車
13 伝達軸
14 歯車
15 伝達軸
21 フライホイール
22 発電機
30 歯
31 固定軸
32 引張バネ
47 主蓄電器
48 補助蓄電器
50 床発電ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者により操作される変位可能な操作部材と、該操作部材により発電を行う自己発電ユニットと、該自己発電ユニットの電力により作動する個人認証装置を有する自己発電型個人認証システムにおいて、
前記個人認証システムは、前記自己発電ユニットの電力を蓄積する蓄電器を有することを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項2】
請求項1において、前記自己発電ユニットと前記個人認証装置は電気ケーブルにより接続され、前記蓄電器は、前記個人認証装置と前記自己発電ユニットを結ぶ電気的接続経路の少なくとも一箇所に設けられることを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記蓄電器は、個人認証装置に電力を供給する主蓄電器と、主蓄電器の電気エネルギーが消費されたときに、前記個人認証装置に電力を供給する補助蓄電器を有することを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記操作部材は機密エリアに入室するドアのドアノブであることを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項5】
請求項4項において、前記自己発電ユニットは前記ドアに内蔵されていることを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記自己発電ユニットは機密エリアに入室するドアの前面の床に設けた床発電ユニットからなることを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかにおいて、前記ドアはさらに、前記個人認証装置により開閉制御される、ドアを施錠する電気錠を有することを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項8】
請求項1において、前記蓄電器の電気容量を操作部材の非操作時間帯にも自然放電により電気エネルギーが消尽されない電気容量としたことを特徴とする自己発電型個人認証システム。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項において、前記自己発電ユニットは、発電機と、フライホイールを有する発電機の伝達軸と、前記操作部材の回動を前記発電機の伝達軸に伝達する伝達軸と、前記両伝達軸の間に設けられたラチェット機構を有することを特徴とする自己発電型個人認証システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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