説明

自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法

【課題】正常な代替え品必要としないで、不具合箇所や不具合の状態をより一層簡単に検出できる、自己診断機能を有する電子制御システムを提供する。
【解決手段】 ECU2の制御部4とECU2の外部の負荷3とが接続される。ECU2の入出力端部に制御部4で制御される切り分けスイッチ7が設けられ、この切り分けスイッチ7は制御部4と負荷3とに接続される。制御部4と切り分けスイッチ7との間に負荷3を駆動する駆動部5と過電流を検出する過電流検出部6とが配設される。このとき、制御部4と過電流検出部6とにより自己診断部が構成される。自己診断部が短絡A,Bのい
ずれかを検出したとき、制御部4が切り分けスイッチ7をオフにして、ECU2の内部と外部とを切り分ける。この切り分けにより、短絡が短絡A,Bのいずれであるかを検出す
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電子制御システム等の種々の装置の電子制御システムにおいて、自ら不具合を診断する自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子制御システム等の種々の装置の電子制御システムにおいては、各種センサから入力される信号や他の電子制御装置(ECU)からの通信データに基づいて、ECUの制御部が制御信号を出力し、この制御信号により各種負荷が駆動制御される。このような電子制御システムには、ECUの制御部から診断信号を出力して電子制御システムに不具合が発生しているか否かを検出して電子制御システムが正常に作動しているか否かを自ら診断する自己診断機能を有する電子制御システムが多々知られている。
【0003】
このような自己診断機能を有する従来の電子制御システムとして、通信装置において通信機能の自己診断を各通信モジュール毎に切り分けて高速に行うことのできる電子制御システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の電子制御システムによれば、自己診断に要する時間を短縮することができるとともに、自己診断の効率アップ化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−226785号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の電子制御システムを始め、自己診断機能を有する従来の電子制御システムでは、電子制御システムの不具合自体は検出することが可能であるが、不具合の箇所や不具合の状態については、必ずしも検出することができなかった。そこで、不具合の箇所や不具合の状態の調査は、作業員の手によって行われている場合が多い。このため、不具合の箇所や不具合の状態の調査については、多くの時間とコストが必要とするという問題がある。
【0006】
また、ハーネス等の破損により電源とグランドとの短絡が生じた場合、同じ電源を共用している他の回路や他のECUにもこの短絡による影響が及ぼされる。このため、不具合の箇所を正常な箇所から切り分けることが難しく、前述の調査に更に多くの時間とコストがかかるという問題がある。
【0007】
更に、不具合箇所を切り分けるにあたっては、ハーネスやECU等を交換して正常に復帰するか否かを調査することが多いが、この調査の際には正常なハーネスやECU等の代替え品を準備する必要がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、正常な代替え品必要としないで、不具合箇所や不具合の状態をより一層簡単に検出できる、自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムは
、電子制御部と、前記電子制御部の外部に設けられるとともに前記電子制御部に電気的に接続される電気部材負荷とを有する電子制御システムにおいて、前記電子制御部が、制御部と、入出力端部に配設されるとともに前記制御部によってオン・オフ制御される切り分け用スイッチと、前記制御部と前記切り分け用スイッチとの間または前記制御部に配設されて電子制御システムに発生する不具合を検出する自己診断部とを有し、前記切り分け用スイッチが、前記電子制御システムの通常作動時に前記制御部によってオンされて前記制御部と前記電気部材負荷とを電気的に接続し、前記電子制御システムに不具合発生時に前記制御部によってオフされて前記自己診断部と前記電気部材負荷と電気的に遮断し、前記切り分け用スイッチのオフ時に、前記自己診断部は前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る電子制御システムは、前記電子制御部は前記電気部材負荷を駆動する駆動部を有し、前記自己診断部が前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、前記制御部が、前記自己診断部が前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【0011】
更に、本発明に係る電子制御システムは、前記自己診断部が、前記制御部と前記電気部材負荷との間に流れる過電流を検出する過電流検出部を有し、前記過電流検出部が前記過電流を検出したとき、前記自己診断部が前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、前記制御部が、前記自己診断部が前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【0012】
更に、本発明に係る電子制御システムは、複数のチャンネルを有し、前記複数のチャンネルの各チャンネル毎に、前記電気部材負荷が配設され、前記電子制御部が前記複数のチャンネルの各チャンネル毎に、対応するチャンネルに配設された前記電気部材負荷を駆動する前記駆動部、前記切り分けスイッチ、および自己診断部を有し、前記自己診断部が対応するチャンネルにおける前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、前記制御部が、前記前記複数のチャンネルを共通にオン・オフ制御するかまたは前記前記複数のチャンネルを各チャンネル毎を独立してオン・オフ制御するとともに、前記自己診断部が前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【0013】
更に、本発明に係る電子制御システムは、前記複数のチャンネル毎に配設された各自己診断部は、それぞれ、前記制御部と前記電気部材負荷との間に流れる過電流を検出する過電流検出部を有し、前記過電流検出部が前記過電流を検出したとき、前記自己診断部は前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、前記制御部が、前記自己診断部が前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【0014】
更に、本発明に係る電子制御システムは、本発明の電子制御部であって、互いに電気的に接続された少なくとも2つの電子制御部を有し、前記少なくとも2つの電子制御部のそれぞれの前記制御部が、これらの制御部を制御する制御信号を送信する共通の制御バスに接続されていることを特徴としている。
【0015】
一方、本発明に係る電子制御システムの自己診断方法は、電子制御部と前記電子制御部の外部に設けられるとともに前記電子制御部に電気的に接続される電気部材負荷とを有し、前記電子制御部の自己診断部により電子制御システムの不具合を自己診断する電子制御システムの自己診断方法において、電子制御システムの通常作動時に前記電子制御部内に配設された切り分けスイッチをオンすることにより前記電子制御部の制御部と前記電気部材負荷とを電気的に接続し、前記電子制御部の自己診断部により電子制御システムの不具合が検出されたとき、切り分けスイッチをオフにして前記電子制御部の外部と内部とを切り分けることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法によれば、電子制御部の内部の入出力端部に、電子制御部の制御部4でオン・オフされて電子制御部の内部と外部とを切り分ける切り分け用スイッチを配設している。したがって、制御部により切り分け用スイッチをオフにして電子制御部の内部と外部とを切り分けることができる。これにより、制御部は自己診断機能によりチャンネルで発生した不具合を検出すると、この不具合が電子制御部の内部で発生しているのか、あるいは電子制御部の外部で発生しているのかを識別すること(つまり、不具合の発生箇所を検出すること)が可能となる。
【0017】
その場合、不具合箇所の検出にあたっては、切り分け用スイッチを単にオフするだけであるので、正常箇所と不具合箇所とを切り分けるために、ハーネスや電子制御部等を取り外す必要がなく、電子制御システムが搭載されている装置(例えば、車両)が不具合の起こっている状態のままで、不具合箇所を簡単に検出することができる。
【0018】
また、不具合箇所の検出のためにハーネスや電子制御部等を交換する必要がないので、不具合箇所の検出作業を行う際、正常な代替品を準備しなくても済ませることができる。したがって、不具合箇所の検出作業をスムーズに行うことができ、作業性を向上することが可能となる。
【0019】
更に、電子制御システムが搭載されている装置とこの装置から離れた遠隔地にあるサービスセンターとをワイヤレス通信で接続することにより、遠隔操作で不具合箇所の検出作業を行うことが可能となる。これにより、不具合が発生した装置が位置する現地に最寄りのサービスセンターで不具合部品の交換部品を手配するとともに、この最寄りのサービスセンターから手配した交換部品を現地に発送することができる。したがって、作業の効率化と作業に要する時簡の短縮化を効果的に図ることができる。
【0020】
更に、互いに電気的に接続された複数の電子制御部の各制御部を、それぞれ1つの共通の制御バスで送信される制御信号で制御することで、複数の電子制御部が配設された電子制御システムをトータル的に診断可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第1例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第2例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第3例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第4例を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第5例を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第6例を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第7例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第1例を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、この第1例の自己診断機能を有する電子制御システム1は、電子制御部(ECU)2と、このECU2により制御される電磁弁のソレノイド等の電磁誘導性の負荷3(本発明の電気部材負荷に相当)とを備える。また、ECU2は、制御部4、駆動部5、過電流検出部6、および切り分け用スイッチ7を有している。その場合、負荷3はECU2より接地側;GND側に接続されている。また、駆動部5、過電流検出部6、および切り分け用スイッチ7は、負荷3に対応する1つのチャンネルに設けられるとともに、これらは直列に電気的に接続されている。更に、切り分け用スイッチ7はECU2の内部で駆動部5および過電流検出部6よりECU2の入出力端部側に配設されている。
【0024】
この第1例の電子制御システム1においては、電子制御システム1の正常状態での通常動作時には制御部4が切り分け用スイッチ7にオン信号8を出力することで、切り分け用スイッチ7がオンしている。これにより、電子制御システム1の通常動作時にはECU1と負荷3とが電気的に接続される。切り分け用スイッチ7のオン状態で、制御部4が駆動部5にオン信号を出力すると、駆動部5がオンする。すると、駆動部5が切り分け用スイッチ7を介して負荷3に電流を供給し、負荷3が駆動する。また、切り分け用スイッチ7は制御部4から出力されるオフ信号9によりオフにされるようになっている。
【0025】
このとき、駆動部5の出力が電気的信号(第1例では電圧)であるフィードバック信号10として制御部4へ入力される。また、負荷3に過電流が流れると、過電流検出部6からエラーの電気的信号(第1例では電流)がフィードバック信号11として制御部4へ入力される。
【0026】
そして、図1に示すように、駆動部5に対応するチャンネルにおいてECU2の内部またはECU2の外部のいずれかに、接地(GND接続)による短絡A.Bの不具合が発生
したとする。すると、駆動部5が短絡されるため、制御部4は駆動部5にオン信号を出力しているにもかかわらず、フィードバック信号10により駆動部5から出力(電圧)が発生されていないと判断し、短絡A.B(接地:GND)のいずれかの不具合の発生を検出
する。また、駆動部5が短絡されることで、駆動部5の出力側には過電流が流れる。この過電流が過電流検出部6で検出され、過電流検出部6からエラーのフィードバック信号11が制御部4に入力される。これによっても、制御部4は短絡A.B(接地:GND)の
いずれかの不具合の発生を検出する。このように、電子制御システム1は、駆動部5の出力情報および過電流検出部6からの過電流情報に基づいてこの電子制御システム1の不具合を検出する自己診断機能を有している。そして、この自己診断機能により、制御部4は不具合の発生したチャンネルの駆動部5をオフに制御する。
【0027】
ところで、駆動部5の出力情報および過電流検出部6からの過電流情報のみでは、制御部4は、不具合がECU2内で発生した短絡Aであるのか、あるいはECU2外で発生した短絡Bであるのかを識別することができない。
【0028】
そこで、第1例の電子制御システム1では、ECU2内に切り分け用スイッチ7が配設されている。制御部4は不具合の発生を検出すると、不具合の発生したチャンネルの切り分け用スイッチ7にオフ信号9を出力し、この切り分け用スイッチ7がオフにされる。これにより、このチャンネルにおいてECU2の内部とECU2の外部とが切り分けられる。また、このとき、制御部4は駆動部5をオフにする。
【0029】
いま、不具合がECU2の外部のハーネス12等に発生している短絡BであってECU2の内部に発生している短絡Aでない場合、駆動部5の出力側は短絡(接地)されない。したがって、再び制御部4から駆動部5にオン信号が出力されると、駆動部5が再びオンする。このとき、駆動部5の出力のフィードバック信号10および過電流検出部6からのフィードバック信号11はともに正常な信号に復帰する。これにより、制御部4は、不具合がECU2の外部に発生している短絡Bであることを検出(判断)する。
【0030】
また、不具合がECU2の内部の短絡Aである場合、駆動部5の出力側は依然として短絡された状態となる。すなわち、この場合には駆動部5の出力側は切り分け用スイッチ7のオン・オフに関係なく短絡された状態となり、駆動部5の出力のフィードバック信号10および過電流検出部6からのフィードバック信号11はいずれも異常な信号を維持する。これにより、制御部4は、不具合がECU2の内部に発生している短絡Aであることを検出(判断)する。
【0031】
この第1例の自己診断機能を有する電子制御システム1によれば、ECU2の内部の入出力端部に、ECU2の制御部4でオン・オフされるとともにECU2の内部と外部とを切り分ける切り分け用スイッチ7を配設している。したがって、制御部4により切り分け用スイッチ7をオフにしてECU2の内部と外部とを切り分けることができる。これにより、制御部4は自己診断機能によりチャンネルで発生した短絡A,Bの不具合を検出する
と、この不具合がECU2の内部で発生しているのか、あるいはECU2の外部で発生しているのかを識別すること(つまり、不具合の発生箇所を検出すること)が可能となる。
【0032】
その場合、不具合箇所の検出にあたっては、切り分け用スイッチ7を単にオフするだけであるので、正常箇所と不具合箇所とを切り分けるために、ハーネス12やECU2等を取り外す必要がなく、電子制御システム1が搭載されている装置(例えば、車両)が不具合の起こっている状態のままで、不具合箇所を簡単に検出することができる。
【0033】
また、不具合箇所の検出のためにハーネス12やECU2等を交換する必要がないので、不具合箇所の検出作業を行う際、正常な代替品を準備しなくても済ませることができる。したがって、不具合箇所の検出作業をスムーズに行うことができ、作業性を向上することが可能となる。
【0034】
更に、電子制御システム1が搭載されている装置とこの装置から離れた遠隔地にあるサービスセンターとをワイヤレス通信で接続することにより、遠隔操作で不具合箇所の検出作業を行うことが可能となる。これにより、不具合が発生した装置が位置する現地に最寄りのサービスセンターで不具合部品の交換部品を手配するとともに、この最寄りのサービスセンターから手配した交換部品を現地に発送することができる。したがって、作業の効率化と作業に要する時簡の短縮化を効果的に図ることができる。
【0035】
図2は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第2例を示すブロック図である。なお、以下の実施の形態の各例において、その例より前に説明した例と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0036】
図2に示すように、この第2例の電子制御システム1では、第1例の駆動部5に代えてFET13が配設されているとともに、第1例の過電流検出部6に代えて微小抵抗14およびコンパレータ15が配設されている。FET13は制御部4によって制御されて電源をオン・オフする。また、コンパレータ15は微小抵抗14の前後の電位差を比較して、この電位差が予め設定された閾値より大きいときフィードバック信号11を出力する。なお、符号16は電源であり、また符号17は抵抗である。第2例の電子制御システム1の他の構成は第1例と同じである。
【0037】
この第2例の電子制御システム1においては、前述の第1例と同様に電子制御システム1の通常作動時には、制御部4により切り分け用スイッチ7がオンされる。また、切り分け用スイッチ7のオン状態で、制御部4がFET13にオン信号を出力してFET13がオンすると、電源16がFET13および切り分け用スイッチ7を介して負荷3に電流を供給し、負荷3が駆動する。
【0038】
このとき、FET13の出力が電気的信号(第2例では電圧)であるフィードバック信号10として制御部4へ入力される。また、負荷2へ過電流が流れると、微小抵抗14の電圧降下(つまり、微小抵抗14の前後の電位差)が大きくなり、この大きな電位差がコンパレータ15で閾値と比較される。コンパレータ15は微小抵抗14における電位差が閾値より大きいと判断すると、エラーのフィードバック信号11を出力し、このフィードバック信号11が制御部4へ入力される。すなわち、第1例と同様に、第2例の電子制御システム1も、FET13のフィードバック信号10による出力情報およびコンパレータ15からのフィードバック信号11による過電流情報に基づいてこの電子制御システム1の不具合を検出する自己診断機能を有している。そして、この自己診断機能により、制御部4は不具合の発生したチャンネルのFET13をオフに制御する。
【0039】
そして、図2に示すように、第1例と同様に、FET13に対応するチャンネルにおいてECU2の内部またはECU2の外部のいずれかに短絡A.B(接地:GND)の不具
合が発生したとする。そこで、制御部4がFET13をオフにする。次いで、制御部4は第1例と同様に切り分け用スイッチ7をオフにして、再びFET13をオンする。以後、第1例と同様にして、制御部4は、不具合がECU2の内部に発生している短絡Aであるのか、あるいはECU2の外部に発生している短絡Bであるのかを検出(判断)する。
この第2例の電子制御システム1の他の作用効果は、第1例と同じである。
【0040】
図3は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第3例を示すブロック図である。
前述の第1および第2例では、負荷3はローサイドに接続されているが、図3に示すようにこの第3例の電子制御システム1では、負荷3はECU2より電源16側に接続されている。
【0041】
また、第1例の駆動部5に代えて第2例と同様にFET13が配設されている。この場合、FET13のソース側は接地(GND接続)されているとともに、FET13と電源16との間には抵抗17が設置されている。そして、FET13の出力が電気的信号(第3例では電圧)であるフィードバック信号10として制御部4へ入力される。また、FET13へ過電流が流れると、過電流検出部6からエラーの電気的信号(第3例では電流)がフィードバック信号11として制御部4へ入力される。第3例の電子制御システム1の他の構成は第1例と同じである。
【0042】
この第3例の電子制御システム1においては、前述の第1例と同様に電子制御システム1の通常作動時には、制御部4により切り分け用スイッチ7がオンされる。この切り分け用スイッチ7のオン状態で、制御部4がFET13にオン信号を出力してFET13がオ
ンすると、負荷3が切り分け用スイッチ7、過電流検出部6、およびFET13を介して接地される。すると、電源16が負荷3に電流を供給し、負荷3が駆動する。
【0043】
このとき、FET13の出力が電気的信号(第3例では電圧)であるフィードバック信号10として制御部4へ入力される。また、負荷3へ過電流が流れると、過電流検出部6によりエラーのフィードバック信号11が制御部4へ入力される。すなわち、第1例および第2例と同様に、第3例の電子制御システム1も、FET13のフィードバック信号10による入力情報および過電流検出部6からのフィードバック信号11による過電流情報に基づいてこの電子制御システム1の不具合を検出する自己診断機能を有している。そして、この自己診断機能により、制御部4は不具合の発生したチャンネルのFET13をオフに制御する。
【0044】
そして、図3に示すように、第1例と同様に、FET13に対応するチャンネルにおいてECU2の内部またはECU2の外部のいずれかに短絡C.D(電源接続)の不具合が
発生したとする。そこで、制御部4がFET13をオフにする。次いで、制御部4は第1例と同様に切り分け用スイッチ7をオフにして、再びFET13をオンする。以後、第1例と同様にして、制御部4は、不具合がECU2の内部に発生している短絡Cであるのか、あるいはECU2の外部に発生している短絡Dであるのかを検出(判断)する。
この第3例の電子制御システム1の他の作用効果も、第1例と同じである。
【0045】
図4は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第4例を示すブロック図である。
図4に示すように、この第4例の電子制御システム1では、第1例の駆動部5および過電流検出部6が設けられないとともに、第1例の負荷3に代えてローサイドスイッチ19(本発明の電気部材負荷に相当)が設けられている。その場合、ローサイドスイッチ19はECU2のローサイド(接地側:GND側)に設けられている。このローサイドスイッチ19は、装置の使用者によってオン・オフ操作される。また、制御部4と切り分け用スイッチ7との間がプルアップ抵抗(Pull-up 抵抗)20を介して電源16に接続されている。この第4例の電子制御システム1の他の構成は、第1例と同じである。
【0046】
この第4例の電子制御システム1においては、電子制御システム1の通常作動時に切り分け用スイッチ7がオンするので、ローサイドスイッチ19がオンすると、接地電位(GND電位)の入力信号が制御部4に入力される。すると、制御部4により、入力信号がロー(LOW)であると認識される。つまり、制御部4の入力端子4aの電位がGND電位のロー(LOW)となる。また、ローサイドスイッチ19がオフすると、ECU2内部のプルアップ抵抗20によって制御部4の入力端子4aの電位が電源電圧のハイ(HIGH)となる。
【0047】
ところで、ローサイドスイッチ19に対応するチャンネルにおいてECU2の内部またはECU2の外部のいずれかに、短絡(接地)A.Bの不具合が発生したとする。すると
、制御部4の入力端子4aが短絡されるため、ローサイドスイッチ19がオンしたときと識別できない。そこで、制御部4は前述の各例と同様に切り分け用スイッチ7をオフにする。これにより、ECU2の外部で短絡Bが発生している場合には、プルアップ抵抗20によって制御部4の入力端子4aの電位が電源電圧まで上昇する。これにより、制御部4の入力端子4aの電位がハイ(HIGH)と認識されて、ECU2の外部に短絡Bの不具合が発生していることが認識される。また、切り分け用スイッチ7をオフにしても、制御部4の入力端子4aの電位が接地電位(GND電位)のままで上昇しない場合は、制御部4の入力端子4aの電位がロー(LOW)と認識されて、ECU2の内部に短絡Aの不具合が発生していることが認識される。
この第4例の電子制御システム1の他の作用効果も、第1例と同じである。
【0048】
図5は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第5例を示すブロック図である。
図5に示すように、この第5例の電子制御システム1では、前述の第4例のローサイドスイッチ19に代えてハイサイドスイッチ21(本発明の電気部材負荷に相当)が設けられている。その場合、ハイサイドスイッチ21はECU2のハイサイド(電源側)に設けられている。このハイサイドスイッチ21は、装置の使用者によってオン・オフ操作される。また、制御部4と切り分け用スイッチ7との間がプルダウン抵抗(Pull-down 抵抗)23を介してGNDに接続されている。この第5例の電子制御システム1の他の構成は、第1例と同じである。
【0049】
この第5例の電子制御システム1においては、電子制御システム1の通常作動時に切り分け用スイッチ7がオンするので、ハイサイドスイッチ21がオンすると、電源電圧の入力信号が制御部4に入力される。つまり、制御部4の入力端子4aの電位が電源電圧のハイ(HIGH)となる。また、ハイサイドスイッチ21がオフすると、プルダウン抵抗23によって制御部4の入力端子4aの電位がGNDまで降下する。つまり、制御部4の入力端子4aの電位が接地位置のロー(LOW)と認識される。
【0050】
ところで、ハイサイドスイッチ21に対応するチャンネルにおいてECU2の内部またはECU2の外部のいずれかに短絡(電源接続)C,Dの不具合が発生したとする。する
と、制御部4の入力端子4aが短絡されるため、ハイサイドスイッチ21がオンしたときと識別できない。そこで、制御部4は前述の各例と同様に切り分け用スイッチ7をオフにする。これにより、ECU2の内部で短絡Cが発生している場合には、電源電圧が制御部4に入力される。これにより、制御部4の入力端子4aの電位がハイ(HIGH)と認識されて、ECU2の内部に短絡Cの不具合が発生していることが認識される。また、切り分け用スイッチ7をオフにして制御部4の入力端子4aの電位が接地電位(GND電位)に降下する場合は、制御部4の入力端子4aの電位がロー(LOW)と認識されて、ECU2の外部に短絡Dの不具合が発生していることが認識される。
この第5例の電子制御システム1の他の作用効果も、第1例と同じである。
【0051】
図6は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第6例を示すブロック図である。
前述の図1に示す第1例では1つのチャンネルのみが設けられるものとしているが、図6に示すように、この第6例の電子制御システム1では、複数のチャンネルが設けられる。その場合、各チャンネルに対して、第1例と同様の駆動部5、過電流検出部6、切り分け用スイッチ7、および負荷3が配設されている。なお、図6には駆動部5、過電流検出部6、および切り分け用スイッチ7に対してチャンネルにかかわらず同じ符号を付しているが、駆動部5、過電流検出部6、および切り分け用スイッチ7はチャンネル毎に異なってもよいし、一部または全部のチャンネルにおいて同じでもよい。
そして、各切り分け用スイッチ7は制御部4から同一の信号でオン・オフされるようになっている。
この第6例の電子制御システム1の他の構成は、第1例と同じである。
【0052】
この第6例の電子制御システム1においては、前述の各例と同様に、電子制御システム1の通常作動時は各切り分け用スイッチ7は制御部4から共通の同一の信号でオンにされる。この状態で、例えば図6に示すようにECU2の外部で1つのチャンネルに短絡B(接地;GND接続)が発生したとする。これにより、短絡Bが発生したチャンネルにおいて駆動部5の出力のフィードバック信号10および過電流検出部6からのフィードバック信号11はともに異常信号となるが、他のチャンネルにおいて駆動部5の出力のフィードバック信号10および過電流検出部6からのフィードバック信号11はいずれも正常信号
のままとなる。
【0053】
そして、前述の各例と同様に、各切り分け用スイッチ7がいずれも制御部4から共通の同一の信号でオフにされると、短絡Bが発生したチャンネルの両フィードバック信号10,11がともに正常な信号となる。これにより、短絡Bが発生したチャンネルが識別され
るとともに、短絡BがECU2の外部で発生したことも識別される。
この第6例の電子制御システム1の他の作用効果も、第1例と同じである。
なお、各切り分け用スイッチ7はそれぞれ制御部4から互いに異なる信号でオン・オフされる、つまり独立してオン・オフされるようにすることもできる。
【0054】
図7は本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムの実施の形態の第7例を示すブロック図である。
前述の図1に示す第1例では1つのECU2のみが設けられるものとしているが、図7に示すようにこの第7例の電子制御システム1では、第1例のECU2と他のECU2(本発明の電気部材負荷に相当)と配設されているとともに、各ECU2の各制御部4が1つの共通の制御バス22に接続されている。そして、制御バス22を通して通信される制御信号で各制御部4が制御されるようになっている。
【0055】
第7例の電子制御システム1においても、ECU2の各内部に発生した短絡A(接地)およびECU2の各外部に発生した短絡B(接地)について、制御バス22からの制御信号で各制御部4が制御されることで、第1例と同様に各切り分け用スイッチ7がオン・オフされる。その場合、2つのECU2の各切り分け用スイッチ7に対して、不具合の状況に応じて互いに異なる制御および同一の制御が行われる。これにより、どのECU2の内部または外部に短絡Bが発生しているかを識別することが可能となる。すなわち、複数のECU2が配設された電子制御システム1をトータル的に診断可能となる。
この第7例の電子制御システム1の他の構成および他の作用効果は、第1例と同じである。
【0056】
なお、本発明は前述の例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法は、車両の電子制御システム等の種々の装置の電子制御システムにおいて、自ら不具合を診断する自己診断機能を有する電子制御システムおよび自己診断方法に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…電子制御システム、2…電子制御部(ECU)、3…負荷、4…制御部、4a…入力端子、5…駆動部、6…過電流検出部、7…切り分け用スイッチ、12…ハーネス、13…FET、14…微小抵抗、15…コンパレータ、16…電源、17,18…抵抗、19
…ローサイドスイッチ、20…プルアップ抵抗(Pull-up 抵抗)、21…ハイサイドスイッチ、22…制御バス、23…プルダウン抵抗(Pull-down 抵抗)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御部と、前記電子制御部の外部に設けられるとともに前記電子制御部に電気的に接続される電気部材負荷とを有する電子制御システムにおいて、
前記電子制御部は、制御部と、入出力端部に配設されるとともに前記制御部によってオン・オフ制御される切り分け用スイッチと、前記制御部と前記切り分け用スイッチとの間または前記制御部に配設されて電子制御システムに発生する不具合を検出する自己診断部とを有し、
前記切り分け用スイッチは、前記電子制御システムの通常作動時に前記制御部によってオンされて前記制御部と前記電気部材負荷とを電気的に接続し、前記電子制御システムに不具合発生時に前記制御部によってオフされて前記自己診断部と前記電気部材負荷と電気的に遮断し、
前記切り分け用スイッチのオフ時に、前記自己診断部は前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項2】
前記電子制御部は前記電気部材負荷を駆動する駆動部を有し、
前記自己診断部は前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、
前記制御部は、前記自己診断部が前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする請求項1に記載の自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項3】
前記自己診断部は、前記制御部と前記電気部材負荷との間に流れる過電流を検出する過電流検出部を有し、
前記過電流検出部が前記過電流を検出したとき、前記自己診断部は前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、
前記制御部は、前記自己診断部が前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする請求項1または2に記載の自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項4】
複数のチャンネルを有し、
前記複数のチャンネルの各チャンネル毎に、前記電気部材負荷が配設され、
前記電子制御部は前記複数のチャンネルの各チャンネル毎に、対応するチャンネルに配設された前記電気部材負荷を駆動する前記駆動部、前記切り分けスイッチ、および自己診断部を有し、
前記自己診断部は対応するチャンネルにおける前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出し、
前記制御部は、前記前記複数のチャンネルを共通にオン・オフ制御するかまたは前記前記複数のチャンネルを各チャンネル毎を独立してオン・オフ制御するとともに、前記自己診断部が前記駆動部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする請求項1に記載の自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項5】
前記複数のチャンネル毎に配設された各自己診断部は、それぞれ、前記制御部と前記電気部材負荷との間に流れる過電流を検出する過電流検出部を有し、
前記過電流検出部が前記過電流を検出したとき、前記自己診断部は前記制御部より前記
電気部材負荷側に不具合を検出し、
前記制御部は、前記自己診断部が前記制御部より前記電気部材負荷側に不具合を検出したとき、前記切り分け用スイッチをオフにすることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする請求項1または4に記載の自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項6】
請求項1ないし3に記載の電子制御部であって、互いに電気的に接続された少なくとも2つの電子制御部を有し、
前記少なくとも2つの電子制御部のそれぞれの前記制御部は、これらの制御部を制御する制御信号を送信する共通の制御バスに接続されていることを特徴とする自己診断機能を有する電子制御システム。
【請求項7】
電子制御部と前記電子制御部の外部に設けられるとともに前記電子制御部に電気的に接続される電気部材負荷とを有し、前記電子制御部の自己診断部により電子制御システムの不具合を自己診断する電子制御システムの自己診断方法において、
電子制御システムの通常作動時に前記電子制御部内に配設された切り分けスイッチをオンすることにより前記電子制御部の制御部と前記電気部材負荷とを電気的に接続し、
前記電子制御部の自己診断部により電子制御システムの不具合が検出されたとき、切り分けスイッチをオフにして前記電子制御部の外部と内部とを切り分けることにより、前記自己診断部により前記不具合が前記電子制御部の内部および前記電子制御部の外部のいずれに発生しているかを検出することを特徴とする電子制御システムの自己診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109860(P2012−109860A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258063(P2010−258063)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】