説明

自然分散性N−ベンゾイルスタウロスポリン組成物

【課題】N−ベンゾイルスタウロスポリンの高い生物学的利用能レベルを有し、生物学的利用能レベルの変動が減少している経口投与用組成物の提供。
【解決手段】コロイド構造、例えば、コロイドまたは類似の構造、例えば、小滴、粒子、ミセル、例えば、膨潤ミセル、マイクロエマルジョンおよび/または凝集体のような自然分散性N−ベンゾイルスタウロスポリン組成物、並びにその調製法、および医療処理での使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は活性作用物質としてUS5,093,330およびその対応特許に開示されたN−ベンゾイルスタウロスポリン(N-benzoyl-staurosporine)を含む新規医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
US5,093,330はコロイド状シリカ、タルクおよびステアリン酸マグネシウムの存在下にデンプン/ラクトース混合物に基く2種の錠剤製剤(実施例52および53)とタルクおよびコロイド状シリカに基くカプセル製剤(実施例54)について具体的に開示している。我々はN−ベンゾイルスタウロスポリンが、一般的には投与に関連して、また特に医薬組成物に関連して、薬物の生物学的利用能と患者間・患者内投与量応答における変動の問題、例えば、US5,093,330に関連する問題を含め、高度に特別な難しさを提示していることを見出した。我々はそれが非常に親油性であり、事実上、水、疑似胃液、および腸液に不溶であることを見出した(溶解性<0.1mg/L)。特に、活性物質のこの異様に低い溶解性は通常とは異なる投与形態の開発を必要とした。
【発明の概要】
【0003】
発明の開示
本発明方法によると、驚くべきことに、N−ベンゾイルスタウロスポリンを含む安定な医薬組成物が、例えば、US5,093,330と関連して、特に興味深い生物学的利用能の特性を有し、対象者間および対象者内の生物学的利用能パラメーターの変動が減少したものとして得られることが今回判明した。これらの新規なN−ベンゾイルスタウロスポリン組成物はこれまでに遭遇した困難に対処し得るか、またはその困難を実質的に低下させることが見出された。本発明による組成物は有効なN−ベンゾイルスタウロスポリンの投与用量を再吸収/生物学的利用能レベルの同時の増加ならびに減少した個々の患者内および患者間の変動を伴い、増量できることが示された。かかる対象者間および対象者内の生物学的利用能変動の減少は、記載した特定の製剤に関して特に見出すことが可能である。さらに詳しくは、これらの組成物は十分に高濃度の溶解したN−ベンゾイルスタウロスポリンを含み、活性作用物質の沈殿を示さずに簡便な経口投与を可能とすることが見出された。このように、本発明は低いN−ベンゾイルスタウロスポリンの投与用量レベルでの有効な治療を達成し得るものであり、個々人に対して一日投与必要量の精密な基準と最適化を可能とする。結果として、望ましくない副作用の発生が減少し、治療の総費用を削減し得る。
【0004】
一側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる経口投与用医薬組成物であって、例えば、質量−時間/容量の単位で曲線下面積(AUC)により定義されるように、経時的血漿濃度の測定により定量した場合、高い生物学的利用能を有する組成物を提供する。
【0005】
他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる生物学的利用能の変動が減少した経口投与用医薬組成物を提供する。好適な態様において、生物学的利用能の変動は自然分散性医薬組成物の形状のN−ベンゾイルスタウロスポリンを提供することにより減少させる。
【0006】
他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリンを、例えば、ミセル前駆体の形状で含んでなる、経腸投与、例えば、経口投与用自然分散性医薬組成物を提供する。
【0007】
本明細書にて使用する用語、自然分散性医薬組成物とは、コロイド構造、例えば、コロイドまたは類似の構造、例えば、小滴、粒子、ミセル、例えば、膨潤ミセル、マイクロエマルジョンおよび/または凝集体などであって、水性媒体に希釈した場合、1000nmまでの、例えば、一般に5nmを超えるコロイド構造を産生し得る系と定義される。かかる系は細かく分割され、かつ第二の成分または相(分散媒体または連続成分もしくは相)の全体に分布した一成分または相(分散成分または相)からなると定義され、例えば、系は分子的に分散した溶液で、その分散した成分または相の平均径が、例えば、200nm未満、例えば、5nmを超えるものから、マクロエマルジョンであって、その分散成分または相の平均径が、例えば、1000nmまでであって、例えば、200nmを超えるものまでである。水性媒体は、例えば、水、例えば、1:10の希釈物、または胃液、例えば、経口投与後の疑似条件であってもよい。コロイド構造は、例えば、コロイドまたは類似の構造、例えば、小滴、粒子および/またはミセルなどは、自然分散性医薬組成物の成分を水性媒体と、例えば、短時間、例えば10秒間、単純に手で振って接触させたときに、自然にまたは実質的に自然に形成されるものである。かかる自然分散性医薬組成物は熱力学的に、例えば、少なくとも15分、または4時間ないし24時間、安定である。一般に、それらは分散した、例えば、コロイド構造、例えば、コロイドまたは類似の構造を含み、標準の光散乱技法により、例えば、マルバーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)3000を用い測定した場合、約200nm未満のサイズであり、好ましくは、それらは平均直径が約150nm未満、典型的には100nm未満、一般に5nmを超える。かかる自然分散性組成物のミセル組成物またはミセル部分は単相であり、かつ、実質的に非不透明、すなわち、光学顕微鏡手段で観察した場合、透明またはオパール色である。
【0008】
あるいは、該自然分散性医薬組成物は同時に水性ミセルとナノ粒子を含んでなる混合物を形成してもよい。かかるナノ粒子はその粒子径が150nmから約1000nm、一般に200〜800nmの範囲である。生成するナノ粒子の量は温度依存性である可能性があるが、それでもなお適切な生物学的利用能の特性が得られ得ることが判明した。
【0009】
本発明は取分け自然分散性医薬組成物に関して記載しているが、当業者には他の系も調製し得ることが明瞭である。
【0010】
他の側面において、本発明は自然分散性経口投与用医薬組成物であって、
1)N−ベンゾイルスタウロスポリン、
2)親水性成分、および
3)界面活性剤
を含んでなる組成物を提供する。
【0011】
さらに他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンを、親水性成分および界面活性剤を含んでなる担体と混合することにより、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能を上昇させる方法を提供する。
【0012】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能を上昇させる医薬組成物であって、
1)N−ベンゾイルスタウロスポリン、
2)親水性成分、および
3)界面活性剤
を含んでなる組成物を提供する。
【0013】
該自然分散性医薬組成物(以下、本発明医薬組成物という用語に包含する)は、好ましくは、コロイド構造、例えば、コロイドまたは類似の構造、例えば、ミセル前駆体の形状である。N−ベンゾイルスタウロスポリンは本明細書にて活性作用物質といい、また、該自然分散性医薬組成物の他の成分は、本明細書ではすべて該自然分散性医薬組成物の担体という。該自然分散性医薬組成物の成分については、Fiedler, H.P. “Lexikon der Hilfsstoffe fuer Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete”(医薬品、化粧品および関連分野の添加物事典), Editio Cantor, D-7960 Aulendorf, 4th revised and expanded edition (1996)(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。
【0014】
本発明によると、N−ベンゾイルスタウロスポリンは該組成物の約20重量%まで存在することができる。好ましくは、活性作用物質は該組成物の1〜15重量%で存在し、例えば、約5〜10%、より好ましくは5%である。
【0015】
親水性成分は、好ましくは、活性作用物質と水との混合において、迅速に水と混合し得るように供給するもので、通常の実験手技により、例えば、種々のクロマトグラフィー方法、例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)により決めることができる。親水性組成物は主たる成分または単独成分、例えば、アルコール、例えば、エタノールを含んでなるか、あるいは、部分的エーテルまたは低級アルカノールから選択し得る共成分を含んでなる。好適な低級アルカノール成分は、エタノール、1,2−プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、例えば、分子量100〜600ダルトンのもの、例えば、ポリエチレングリコール400などである。本発明で存在する場合のエタノールは親水性組成物の60重量%までを含んでなる;好ましくは、20ないし約55重量%、より好ましくは約25ないし約40重量%である。特に好適な部分エーテルは、既知の市販入手可能なものであって、例えば、グリコフロール(テトラヒドロフルフリル・アルコール・ポリエチレングリコールエーテルとしても知られる)である。これらの共成分が存在する場合、例えば、それは親水性成分の他の成分の部分的置換であって、その結果、N−ベンゾイルスタウロスポリン担体の一部として親水性成分の有効性を実質的に損なうものではない。親水性成分はさらにクエン酸トリエチル、トランスクトール(Transcutol)、N−メチルピロリドン、ジメチルイソソルビド、または炭酸プロピレンを含んでなる。
【0016】
本発明の自然分散性医薬組成物に存在する親水性成分の総量は、担体の5〜50重量%、例えば、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは約15〜35重量%を構成し得る。
【0017】
本発明の医薬組成物はさらに少なくとも1種の医薬として許容し得る界面活性剤を含んでなる。本発明にとって有用な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性型、またはその混合物であってもよく、一般に、約3〜20の親水性−親油性バランス(HLB)値を有する。通常、非イオン性界面活性剤は特に10を超えるHLB値、例えば、14〜20を有する非イオン性界面活性剤が好ましい。あるいは、本発明の医薬組成物は界面活性剤の混合物、例えば、第一界面活性剤と、下記掲載の界面活性剤型のいずれかから選択される1種以上の共界面活性剤との混合物を含んでなる系を包含してもよい。取分け好適なのは、高HLB値をもつ界面活性剤と低HLB値をもつ共界面活性剤との特定の組合わせ、例えば、ポリオキシエチレンひまし油誘導体、例えば、クレモホア(Cremophor)RH40(HLB14〜16)、およびエステル転移エトキシ化植物油、例えば、ラブラフィル(Labrafil)M2125CS(HLB3〜4)の組合わせである。
【0018】
取分け好適な高HLB値の界面活性剤、例えば、HLB>10のものは以下のとおりである:
(i)天然または水素化植物油とエチレンオキシドとの反応生成物、すなわち、ポリオキシエチレングリコール化の天然または水素化植物油、例えば、ポリオキシエチレングリコール化の天然または水素化ひまし油。天然または水素化ひまし油は、モル比約1:35ないし約1:60でエチレンオキシドと反応でき、要すれば生成物からポリエチレングリコール成分を除く。かかる界面活性剤の多くが市販入手可能である。商品名クレモホア(CREMOPHOR)として入手し得るポリエチレングリコール水素化ひまし油が取分け適切である(Fiedler, loc. cit., 1, p. 392-395)。取分け適切なのは、クレモホアRH40であり、これは鹸化価約50〜60、酸価約1未満、水分含量(フィッシャー)約2%未満、n60約1.453〜1.457、およびHLB約14〜16を有する;クレモホアRH60は鹸化価約40〜50、酸価約1未満、ヨウ素価約1未満、水分含量(フィッシャー)約4.5〜5.5%、n25約1.453〜1.457、およびHLB約15〜17を有する。このクラスの取分け好適な製品はクレモホアRH40である。さらに好適なのはポリエチレングリコールひまし油、例えば、クレモホアELの商品名で入手可能なものであって、これは分子量(蒸気浸透圧法による)約1630、鹸化価約65〜70、酸価約2、ヨウ素価約28〜32、およびn25約1.471、およびHLB値約12〜14を有する。さらに適切なのは、商品名ニッコール(NIKKOL)(例えば、ニッコールHCO−40およびHCO−60)、マペッグ(MAPEG)(例えば、マペッグCO−40h)、インクロカス(INCROCAS)(例えば、インクロカス40)、およびタガット(TAGAT)、例えば、ポリオキシエチレン−グリセロール脂肪酸エステル、例えば、タガットRH40、およびポリオキシエチレン−グリセロール・トリオレイン酸エステル、例えば、HLB値11.3のタガットTOとして入手し得る種々の界面活性剤である。これらの界面活性剤はさらに Fiedler loc.cit. に記載されている。
【0019】
(ii)ポリオキシエチレン・アルキルエーテルのクラスに属する関連生成物は、商品名ブリジ(BRIJ)として入手可能であり、例えば、HLB値が約16.9のブリジ35である。
【0020】
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えば、商品名ミルジ(MYRJ)として既知市販入手可能な型のポリオキシエチレン・ステアリン酸エステル(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1042-1043)。このクラスの取分け好適な製品はミルジ52であり、n25約1.1、融点約40〜44℃、HLB値約16.9、酸価約0〜1、および鹸化価約25〜35を有する。他の関連製品はポリエトキシ化飽和ヒドロキシ脂肪酸であり、例えば、C18〜C20の飽和ヒドロキシ脂肪酸と、例えば、エチレンオキシドまたはポリエチレングリコールとの反応により製造し得る。本発明にとって適切な例は、既知の市販入手可能なものであって、例えば、ソリュトール(Solutol)の商標名でBASFから入手し得るものである。取分け好ましいのは、ソリュトールHS15であって、これは、例えば、BASF技術説明書MEF151E(1986)から知り得るように、約70重量%のポリエトキシ化12−ヒドロキシステアリン酸エステルと約30重量%の未エステル化ポリエチレングリコール成分とからなる。ソリュトールHS15は水素化値90〜110、鹸化価53〜63、酸価最大1、および最大水分含量0.5重量%を有する。
【0021】
(iv)ポリオキシエチレン−ソルビタン−脂肪酸エステル(ポリソルベートともいう)、商品名トゥイーン(TWEEN)(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1615-1619)として既知の市販入手可能な型のモノ−およびトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリルおよびオレイル・エステルであって、以下の製品を含む:
トゥイーン20[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート]、HLB約16.7
トゥイーン21[ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート]、HLB約13.3
トゥイーン40[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミレート]、HLB約15.6
トゥイーン60[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート]、HLB約14.9
トゥイーン65[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート]、HLB約10.5
トゥイーン80[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート]、HLB約15.0
トゥイーン81[ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート]、HLB約10.0
トゥイーン85[ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート]、HLB約11.0
このクラスの取分け好ましい製品はトゥイーン40およびトゥイーン80である。
【0022】
(v)親水性トコフェロールエステル、例えば、d−アルファ−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル。
【0023】
(vi)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーとブロックコポリマー、例えば、商品名プルロニック(PLURONIC)、エムカリックス(EMKALYX)およびポロキサマー(PLOXAMER)(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1198-1204)として既知の市販入手可能な型のもの。このクラスの取分け好ましい製品はプルロニックF68であり、融点約52℃、分子量約6800〜8975を有する。このクラスのさらに好ましい製品はポロキサマー188であり、HLB値約29を有する。
【0024】
低HLB値、例えば、HLB<10を有する取分け好適な共界面活性剤は以下のとおりである:
(i)ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、商品名スパン(Span)として知られ、市販入手可能なもの、例えば、ソルビタン−モノラウリルエステル(HBL8.6)、−モノパルミチルエステル(HLB6.7)、−モノステアリルエステル(HLB4.7)、−トリステアリルエステル(HLB2.1)、−モノオレイルエステル(HLB4.3)、および−トリオレイルエステル(HLB1.8)を包含する(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1430)。
【0025】
(ii)プロピレングリコール・モノ−およびジ−脂肪酸エステル、例えば、プロピレングリコール・ジカプリレート(商品名ミグリオール(MIGLYOL)840としても知られ、市販入手可能)、プロピレングリコール・ジラウレート、プロピレングリコール・ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール・イソステアレート、プロピレングリコール・ラウレート、プロピレングリコール・リシノレート、プロピレングリコール・ステアレートなど(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1008-1010)。プロピレングリコール・モノCエステルとしてはセフソール(Sefsol)218(ニッコーケミカルズ(Nikko Chemicals))およびカプリオール(Capryol)90(ガッテフォセ(Gattefosse))である。
【0026】
(iii)エステル転移エトキシ化植物油、例えば、種々の天然植物油(例えば、トウモロコシ油、核油、アーモンド油、ピーナッツ油、オリーブ油、大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油およびヤシ油、またはその混合物)と平均分子量200〜800のポリエチレングリコールとを適当な触媒の存在下に(文献、例えば、USP3,288,824に記載の既知手法に従って)反応させることにより得られる油。エステル転移エトキシ化トウモロコシ油が特に好ましい。種々形状のエステル転移エトキシ化植物油が、ラブラフィル(LABRAFIL)の商品名で知られ、市販入手可能である(Fiedler, loc.cit., 2, p. 880)。取分け適切な例は、ラブラフィルM2125CS(トウモロコシ油から得られ、酸価約2未満、鹸化価155〜175、HLB値3〜4、およびヨウ素価90〜110を有する)、およびラブラフィルM1944CS(穀類油から得られ、酸価約2、鹸化価145〜175、およびヨウ素価60〜90を有する)である。ラブラフィルM2130CS(C12〜C18グリセリドとポリエチレングリコールとのエステル転移産物であり、融点約35〜40℃、酸価約2未満、鹸化価185〜200、およびヨウ素価約3未満を有する)も使用することができる。好適なエステル転移エトキシ化植物油はラブラフィルM2125CSであり、例えば、ガッテフォセ(Gattefosse)、セイント−プリースト・セデックス(Saint-Priest Cedex)、フランスから入手し得る。
【0027】
(iv)モノ−、ジ−およびモノ/ジグリセリド、例えば、C〜C10脂肪酸モノ−およびジ−グリセリドとしては、キャップムル(Capmul)MCM、アコライン(Akoline)MCM(カールシャムンス(Karlshamns)会社から)、イムワイター(Imwitor)308およびイムワイター988(HLB値約3.8を有し、コンテンシオ(Contensio)会社から)などであり、特に、カプリール酸またはカプリン酸とグリセロールとのエステル化産物である。このクラスの好適な産物は、例えば、カプリール酸/カプリン酸モノ−およびジ−グリセリドを含んでなるか、または実質的にそれらからなる産物である。6〜10モル%ポリオキシエチレン基を有するC〜C10モノ−およびジ−グリセリド、例えば、ソフチゲン(Softigen)767(コンテンシオ(Contensio)ケミカルズから入手可能)。モノグリセリド、商品名ミバテックス(Myvatex)、ミバプレックス(Myvaplex)、およびミベロール(Myverol)として知られ、市販入手可能な例えば、モノオレエート、グリセロール・モノパルミエートおよびグリセロール・モノステアレート(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1044)、およびアセチル化した、例えば、モノ−およびジ−アセチル化モノグリセリドであって、例えば、商品名ミバセット(Myvacet)として知られる(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1043)。
【0028】
(v)ペンタエリトリオール脂肪酸エステルと、ポリアルキレングリコールエーテルと、ポリアルキレングリコールエーテル、例えば、ペンタエリトリット−ジオレート、−ジステアレート、−モノラウレート、−ポリグリコールエーテル、および−モノステアレート、ならびにペンタエリトリット−脂肪酸エステル(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1158-1160)。
【0029】
(vi)他の適切な界面活性剤としては、グリセロールトリアセテートまたは(1,2,3)−トリアセチンなど(Fiedler, loc.cit., 2, p. 1580);およびステロールとその誘導体などである。
【0030】
さらに、上記の範疇で表し得ないクラスのイオン性界面活性剤は、
(i)ドキュセート(docusate)塩、例えば、ジオクチルスルホコハク酸塩または関連化合物、例えば、ジ−[2−エチルへキシル]−コハク酸塩(Fiedler, loc.cit., 1, p. 500)。
(ii)リン脂質、取分けレシチン(Fiedler, loc.cit., 2, p. 910-912)。本発明組成物での使用に適したレシチンは、特に、ダイズレシチンである。
【0031】
このように、他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリン、およびポリオキシエチレン、例えば、ポリオキシエチレンひまし油、クレモホア(Cremophor)RH40、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ブリジ35、ポリグリセロールおよび関連ポリオール、例えば、ポリソルベート、例えば、トゥイーン20、およびポリアルキレンオキシドコポリマー、例えば、プルロニックからなる群より選択される界面活性剤とを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物を提供する。
【0032】
さらに、なお他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリン、およびHLB値が10を超える界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンひまし油、クレモホア(Cremophor)RH40、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ブリジ35、およびポリソルベート、例えば、トゥイーン20と、HLB値が10未満の共界面活性剤、例えば、エステル転移エトキシ化植物油、例えば、ラブラフィル(Labrafil)M2125CSとを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物を提供する。
【0033】
かかる自然分散性医薬組成物は常套の方法で製剤化し、好ましくは、上記のミセル前駆体の形状とすることができる。
【0034】
本発明医薬組成物に存在する界面活性剤と共界面活性剤の総量は、担体の5〜80重量%、好ましくは10〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%、またさらにより好ましくは30重量%から55重量%を構成し得る。
【0035】
本発明医薬組成物はさらに親油性成分を含んでなることも可能である。これらの組成物はエマルジョンおよび関連の系、例えば、平均粒子径が例えば、5nm〜200nm、例えば、5nm〜100nmのものであって、水性媒体と混合することにより、例えば、水性または油性のマイクロエマルジョン、好ましくは水性マイクロエマルジョンとすることができるものである。好ましくは、該親油性成分は10未満の低HLB値、例えば、8までのHLB値により特徴づけることができる。該親油性成分は脂肪酸トリグリセリド、好ましくは、中鎖脂肪酸トリグリセリドを含んでなる。取分け適切な中鎖脂肪酸トリグリセリドは中性油、例えば、中性植物油、取分け、分溜したヤシ油であって、カプテックス(Captex)、ミリトール(Myritol)、キャップムル(Capmul)、ネオビー(Neobee)およびマゾール(Mazol)の商品名で知られ、市販入手可能なものである;ミグリオール(Miglyol)812が最も好ましい。ミグリオール812は分溜したヤシ油であって、カプリル酸−カプリン酸トリグリセリドを含んでなり、分子量=約520ダルトンを有する。脂肪酸組成物:C最大約3%、C約50〜65%、C10約30〜45%、C12最大5%;酸価=約0.1;鹸化価約330〜345;ヨウ素価=最大1。ミグリオール812はヒュルス(Huels)会社から入手し得る。その他の適切なトリグリセリドは、好ましくは、C8−10またはC12−20脂肪酸トリグリセリドの混合物、取分けC16−18脂肪酸トリグリセリドの混合物を含んでなる。該トリグリセリドの脂肪酸成分は飽和および不飽和脂肪酸残基両方を含んでなる。しかし、好ましくは、それらは主に不飽和脂肪酸残基、取分けC18不飽和脂肪酸残基からなる。適切には、該トリグリセリドは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%のC18不飽和脂肪酸(例えば、リノレン酸、リノレイン酸、およびオレイン酸)トリグリセリドを含んでなる。適切には、該トリグリセリドは20重量%未満、例えば、約15重量%または10重量%以下の飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸およびステアリン酸)トリグリセリドを含んでなる。
【0036】
親油性成分はGB2,257,359またはWO94/09211(その内容は出典明示により本明細書の一部とする)に記載のように一般に得られるエステル転移生成物を含んでなる。その他の特に適切なトリグリセリドはトウモロコシ油とグリセロールからの精製したエステル転移生成物であるが、以後、トウモロコシ油・グリセロールといい、GB2,257,359またはWO94/09211の記述に従い生産される。
【0037】
このように、他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリン、およびHLB値が10を超える界面活性剤と、親油性成分としての脂肪酸トリグリセリドとを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物を提供する。自然分散性医薬組成物に存在する場合、親油性成分の総量は、担体の5〜85重量%、例えば、10〜85重量%、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは約20〜約50重量%を構成し得る。
【0038】
従って、さらに他の側面において、本発明はN−ベンゾイルスタウロスポリンと、ポリオキシエチレンひまし油、例えば、クレモホア(Cremophor)RH40、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ブリジ35、およびポリソルベート、例えば、トゥイーン20からなる群より選択される界面活性剤、および脂肪酸グリセリド、例えば、分溜したヤシ油、例えば、ミグリオール810および812、トウモロコシ油グリセリド、およびそれぞれアセチル化したモノ−またはジ−グリセリドからなる群より選択される親油性成分を含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物を提供する。
【0039】
かかる自然分散性医薬組成物は常套の方法で製剤化可能であり、好ましくは上記のミセル前駆体の形状とすることができる。
【0040】
要すれば、本発明の医薬組成物はさらに添加物または成分を含んでいてもよく、例えば、濃厚化剤、懸濁剤、固化剤、並びに抗酸化剤、例えば、トコフェロール、アスコルビルパルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、抗微生物剤、酵素阻害剤、安定化剤、保存剤などである。これら添加物または成分を使用する場合のその総量は、該自然分散性医薬組成物総重量の約0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%を構成し得る。該自然分散性医薬組成物は甘味剤または矯味剤を組成物の総重量に基き、約2.5または5重量%までの量で含んでもよい。
【0041】
このように、さらに他の側面において、本発明は以下の成分を含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物を提供する:
(a)20重量%までのN−ベンゾイルスタウロスポリン、
(b)5〜50重量%の親水性成分、
(c)5〜80重量%の界面活性剤または界面活性剤混合物、
(d)5〜85重量%の親油性成分、および
(e)0.05〜5重量%の添加物。
【0042】
当然のことながら、ミセル前駆体の形状にある本発明の医薬組成物は、上記のように、それ自体、すなわち、水性媒体による希釈前、または水性媒体による希釈後、水性ミセル溶液(恐らくナノ粒子を含んでなる)、油性または水性エマルジョン、好ましくはマイクロエマルジョンの形状で存在するので、従って、かかる系に特有の構造的特徴を示すことが可能となる。
【0043】
医薬製剤、例えば、以下の例における製剤は、標準的な安定性試験により示されるように良好な安定性特性を示し、例えば、1年、2年または3年までの、また、さらに長期の貯蔵安定性を示す。本発明の医薬製剤は1日以上もの間安定な水性マイクロエマルジョンまたは水性ミセルを生じる。
【0044】
本発明の医薬組成物は経口投与において取分け有利な性質を示す。例えば、生物学的利用能の変動が減少し、利用能レベルが高まっているということは、標準的な生物学的利用能試験において、例えば、0時ないし48時間での質量−時間/容量単位の血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC)と、また、質量/容量単位で血漿中に観察される最高濃度と定義されるCmax平均とを測定することによって得られる。本発明の組成物、例えば実施例に示した組成物のかかる生物薬剤の性質は通常の方法で、例えば、ラットまたはイヌ、例えば、ビーグル犬における標準的な動物試験、または臨床治験において確定することができる。典型的には、絶食したビーグル犬を8頭までの群、例えば、6〜8頭を用いて、血中薬物レベルを、例えば、蛍光検出でのHPLC法により、または、例えば、特異的モノクローナル抗体を用いるELISAにより検出することができる。典型的には、例えば、25mgまたは50mg用量の、例えば、50mg用量の活性作用物質を投与することができる。例えば、代表的なAUC/用量値(h×nmol/L)/(mg/kg)は、製剤Aについては960ないし1700、製剤Bについては380ないし1760、また製剤Cについては840ないし1970の範囲である。代表的なCmax/用量値(nmol/L)/(mg/kg)は、製剤Aについては130ないし310、製剤Bについては60ないし280、また製剤Cについては140ないし310の範囲である。
【0045】
一側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物であって、絶食したビーグル犬に1用量(mg/kg)投与したとき、AUC(0〜48)/用量値((h×nmol/L)/(mg/kg))が2000まで、例えば、380ないし2000、例えば、840ないし2000を示す組成物を提供する。
【0046】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物であって、絶食したビーグル犬に1用量(mg/kg)投与したとき、Cmax/用量値((nmol/L)/(mg/kg))が310まで、例えば、60ないし310、例えば、140ないし310を示す組成物を提供する。
【0047】
薬物動態パラメーター、例えば、吸収および血中レベルもまた驚くほど予測し易くなり、不規則な吸収を伴う投与の問題は除き得るか、縮小し得る。本発明の組成物は患者間または患者内の用量応答の変動を減少させることが判明した。一般に、生物学的利用能の変動は、製剤Aについては約10%、製剤Bについては約17%、また製剤Cについては約14%である。
【0048】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる経口投与用医薬組成物であって、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能の変動が20%未満、例えば、5%ないし17%、例えば、10%ないし17%を示す組成物を提供する。
【0049】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能を上昇させるか、または生物学的利用能レベルの変動を減少させる方法を提供するが、当該方法は本発明の組成物を絶食したビーグル犬に経口投与することを含んでなり、その場合、N−ベンゾイルスタウロスポリンは、絶食したビーグル犬に1用量(mg/kg)投与したとき、2000まで、例えば、380ないし2000、例えば、840ないし2000のAUC(0〜48)/用量値((h×nmol/L)/(mg/kg))を示す。
【0050】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能を上昇させるか、または生物学的利用能レベルの変動を減少させる方法を提供するが、当該方法は本発明の組成物を絶食したビーグル犬に経口投与することを含んでなり、その場合、N−ベンゾイルスタウロスポリンは、絶食したビーグル犬に1用量(mg/kg)投与したとき、310まで、例えば、60ないし310、例えば、140ないし310のCmax/用量値((nmol/L)/(mg/kg))を示す。
【0051】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能を上昇させるか、または生物学的利用能レベルの変動を減少させる方法を提供するが、当該方法は本発明の組成物を絶食したビーグル犬に経口投与することを含んでなり、例えば、その場合生物学的利用能の変動が20%未満、例えば、5%ないし17%、例えば、10%ないし17%である。
【0052】
さらに、本発明の医薬組成物は、胃腸管に存在する界面活性物質、例えば、胆汁塩の存在により有効である。すなわち、本発明の医薬組成物は、かかる界面活性物資を含んでなる水性系に自然に分散し得るものであり、その結果、インサイチュで安定な水性マイクロエマルジョンまたは水性ミセル系を提供し得る。経口投与による本発明医薬組成物の機能は、ある特定の時点で、または所定の個体にとって胆汁塩の相対的有無と実質的に関わりがないか、および/またはそれによって損なわれることがない。
【0053】
他の側面において、本発明は上記定義の自然分散性医薬組成物の製造法を提供し、その方法は親水性成分と界面活性剤(および要すれば追加の成分)を緊密な混合物とし、それに活性作用物質、すなわち、N−ベンゾイルスタウロスポリンを添加することを含んでなる。要すれば、該組成物を単位投与形状に、例えば、軟質または硬質ゼラチンカプセルに被包形成することにより、調合することが可能である。選択肢として、さらになる成分または添加物、取分け親水性共成分、例えば、エタノールを2つの成分と、または活性作用物質の添加と共にまたは添加後に混合することができる。例えば、該組成物においてエタノールを使用することは本質的ではないが、エタノールはさらなる便益を与えるものであり、例えば、該組成物を軟質ゼラチン被包形状に製造する場合、特に有利であることが判明した。この利点は貯蔵性が改善されること、特に、被包処理後に活性作用物質が沈殿するという危険性が緩和されるということである。このように、保存安定性は親水性成分の追加成分としてエタノールまたは他のかかる共成分を採用することにより延長し得る。
【0054】
本発明医薬組成物すべてについてその用途は標準的臨床試験、例えば、活性作用物質の同等血中レベルを与える活性作用物質投与量の既知表示により観察し得る;例えば、一日当たり25mgないし300mgの範囲の投与量を用い、好ましくは100mgないし225mg、例えば、120mgないし225mg、例えば、150mgの活性作用物質を75kgの哺乳動物、例えば、成人、および標準的動物モデルに投与する。該組成物が提供する活性作用物質の医薬品プロフィール、例えば、生物学的利用能の増大および生物学的利用能変動の減少は、例えば、上記のように、標準の動物試験において、また臨床治験において観察し得る。
【0055】
他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンによる治療に際し、患者に対するN−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能レベルを上昇させるか、または生物学的利用能レベルの変動を減少させる方法を提供するが、当該方法は本発明組成物を経口投与することを含んでなる。
【0056】
さらに他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの経口投与に適した、例えば、その生物学的利用能レベルを上昇させ、また、生物学的利用能レベルの変動を減少させる医薬の製造におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの使用を提供する。
【0057】
さらに他の側面において、本発明は、N−ベンゾイルスタウロスポリンの生物学的利用能レベルを上昇させ、また、生物学的利用能レベルの変動を減少させる医薬の製造におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの使用を提供する。
【0058】
本発明医薬組成物は、好ましくは、例えば、該組成物を経口投与可能なカプセル殻に充填することにより単位投与形状に調合する。該カプセル殻は軟質または硬質カプセル殻でもよい。本発明医薬組成物が単位投与形状にある場合、各単位投与体は25mgないし100mgの活性作用物質、好ましくは25mg〜75mgの活性作用物質、例えば、25mgまたは50mgを適宜含んでいる。かかる単位投与形状は、特定の治療目的、治療成分などに左右されるが、一日1〜5回投与するのが適当である。しかし、本発明医薬組成物は、所望により、飲料溶液の形状でもよく、また水または他の水性系を含ませて飲用に適した製剤としてもよい。
【0059】
本発明の医薬組成物は、取分けUS5,093,330(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に記載された症状の治療および予防に有用である。最も顕著なことは、これらの組成物がタンパク質キナーゼC(PKC)阻害の結果として高い抗増殖活性と抗腫瘍活性を示すことであり、この活性は癌治療にとって非常に有用である。さらに、PKCに対するその高度に選択的な強い阻害性は、同様の耐容性療法を受けている患者にとってすぐれた臨床成果(すなわち、疾患進行の遅延または抑制)となって現われる。有力な適用は種々の充実性腫瘍、より具体的には例えば、乳癌、結腸癌、卵巣癌および白血病などである。さらに、PKC活性により影響を受ける可能性のある種々の他の徴候、例えば、現在採用される癌化学療法および一般的には炎症性疾患における大きな問題の一つである多剤耐性(MDR)などが、これらの組成物により有効に治療可能である。
【0060】
このように、他の側面において、本発明は、本発明による分散性医薬組成物をかかる治療を必要とする対象に投与することを含んでなる治療法を提供する。
【0061】
以下に、本発明組成物を実施例により説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1〜4
微粒子の測定は、散乱角度90°、温度20℃で測定した分散粒子の平均サイズ測定(直径)を含め、マルバーン・ゼータサイザー(Malvern Zetasizer)3000を用い実施した。担体は成分を互いに混合することにより調製した。活性作用物質N−ベンゾイルスタウロスポリンを次いで攪拌下に該担体に溶解する。記載した組成物1〜4のいずれについても相分離または沈殿は観察されず、澄明であり、それが維持される。
【表1】

【0063】
実施例5
以下の3種の製剤A、BおよびC(硬質ゼラチンカプセルに充填)にて投与したN−ベンゾイルスタウロスポリンの薬物動態パラメーターと血漿中プロフィールを分析した:
A:クレモホアとPEG含有マイクロエマルジョンのプレ濃縮物
B:クレモホアとラブラフィル含有マイクロエマルジョンのプレ濃縮物
C:ソリュトール含有マイクロエマルジョンのプレ濃縮物
【0064】
ツーブロック・ラテン方陣計画法を用い、N−ベンゾイルスタウロスポリンを収容する各製剤A、BまたはCの2種の硬質ゼラチンカプセルを、オス・ビーグル犬(3〜5才、10〜14kg)8頭それぞれの喉の奥に入れた。次いで、脱イオン水20mLにより喉を洗い込み、呑み込ませた。各動物に与えた名目50mgの用量は、実用量3.5から4.9mg/kg体重の間に相当する(表2参照)。イヌは投与に先立ち少なくとも15時間絶食としたが、実験を通して自由に水道水に近づき得た。経口投与後約6時間目(6.0〜6.3時間の範囲)に、各動物に約350gのペレットを与えた。血液(3mL)を頭部静脈から、抗凝固剤としてのLi−ヘパリン(少なくとも血液1mL当たり15I.U.のヘパリン)を容れた5mL容ポリスチレンチューブに、以下の時点で採取した:投与後、0(=投与前)、0.15、0.5、0.75、1、1.5、2、4、6、8、12、24、30、36、および48時間目。ヘパリン添加血液サンプルを採血後30分以内に遠心分離(約2150g、10分、約4℃)し、上清の血漿はさらに日光の露出を避けるために濃褐色の普通のポリスチレンチューブに採取した。血漿サンプルは凍結し、分析継続中−18℃以下に保存した。血漿中のN−ベンゾイルスタウロスポリン濃度は蛍光検出によるHPLC法により定量した。
【0065】
薬物動態パラメーターのCmax(血漿中に観察された最高濃度);tmax(Cmaxに達するまでの時間);およびAUC(0〜48時間)(0〜48時間の血漿中濃度−時間曲線下面積、線形台形則により計算するが、その際の濃度は定量限界(LOQ)以下を‘ゼロ’とした)を表2に掲載する。製剤A、BまたはCとして50mgの単回用量経口投与後、イヌ1〜8頭におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの個々の血漿中濃度および平均(N=6)濃度を図1、2、および3にそれぞれ示す(ただし、Tは投与後の時間を示し、Mは平均濃度を示す)。No.2およびNo.6のイヌは適切な投与量を適切に摂取したかどうか疑問があったために、平均値の計算から除いた。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】製剤Aとして50mgの単回用量経口投与後、イヌ1〜8頭におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの個々の血漿中濃度および平均(N=6)濃度を図1に示す(ただし、Tは投与後の時間を示し、Mは平均濃度を示す)。
【図2】製剤Bとして50mgの単回用量経口投与後、イヌ1〜8頭におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの個々の血漿中濃度および平均(N=6)濃度を図2に示す(ただし、Tは投与後の時間を示し、Mは平均濃度を示す)。
【図3】製剤Cとして50mgの単回用量経口投与後、イヌ1〜8頭におけるN−ベンゾイルスタウロスポリンの個々の血漿中濃度および平均(N=6)濃度を図3に示す(ただし、Tは投与後の時間を示し、Mは平均濃度を示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ベンゾイルスタウロスポリンを含んでなる自然分散性経口投与用医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111763(P2012−111763A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−816(P2012−816)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2000−599363(P2000−599363)の分割
【原出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】