説明

自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法

本発明は、分子状酸素含有ガスの存在下におけるパラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法を提供し、前記方法は(a)前記パラフィン系炭化水素含有供給原料および前記分子状酸素含有ガスを含む予熱された混合供給流を供給し、(b)次いで前記予熱された混合供給流を希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも400℃の温度まで予熱して少なくとも10容量%の希釈剤を含む混合希釈供給流を生成させ、更に(c)前記混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与えることからなっている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はオレフィンの製造方法に関するものである。特に本発明は、自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法に関するものである。
【0002】
自熱クラッキングは、炭化水素供給物を酸素と混合すると共に自熱クラッキング触媒上に通過させるオレフィンへのルートである。自熱クラッキング触媒は、可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持することができる。燃焼は触媒表面にて開始されると共に、反応体をプロセス温度まで上昇させる共に吸熱クラッキング法を行うのに必要とされる熱は現場で発生される。一般に、炭化水素供給物および分子状酸素を支持触媒に通過させてオレフィン生成物を生成させる。典型的には触媒は少なくとも1種の白金族金属を含み、たとえば白金を含む。自熱クラッキング法は欧州特許第332289号B明細書;欧州特許第529793号B明細書;欧州特許出願公開第0709446号A明細書および国際公開第00/14035号パンフレットに記載されている。
【0003】
追加の供給物成分を自熱クラッカーに通過させることも知られている。適する追加供給物成分はたとえば水素および水蒸気を包含する。たとえば水素は典型的には、これが酸素と優先的に反応して、炭化水素供給物の自熱クラッキングに必要な熱を発生するので供給され、より価値ある炭化水素供給物を燃焼させて前記熱を発生させる要件を減少させる。
【0004】
今回、炭化水素の自熱クラッキングは予備混合されかつ予熱された炭化水素および分子状酸素供給物を触媒との接触に先立ち適する予熱希釈剤で希釈することにより有利に操作しうることを突き止めた。
【0005】
従って第一面にて本発明は、分子状酸素含有ガスの存在下におけるパラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法を提供し、この方法は、
(a)前記パラフィン系炭化水素含有供給原料および前記分子状酸素含有ガスを含む予熱された混合供給流を供給し、
(b)次いで前記予熱された混合供給流を希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも400℃の温度まで予熱して、少なくとも10容量%の希釈剤を含む混合希釈供給流を生成させ、更に
(c)前記混合希釈供給流を可燃性の正常な燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与える
ことを特徴とする。
【0006】
本発明の方法における工程(a)は、パラフィン系炭化水素含有供給原料と分子状酸素含有ガスとを含む混合された予熱供給流を与えることからなっている。予熱された混合供給流は任意適する方法により製造しうるが、特に可燃性限界が一層顕著である圧力にて好ましくは次の工程;
(i)前記パラフィン系炭化水素含有供給原料と前記分子状酸素含有ガスとを別々に予熱し、
(ii)予熱されたパラフィン系炭化水素含有供給原料と予熱された分子状酸素含有ガスとを混合して前記予熱された混合供給流を生成させる
ことにより製造される。
【0007】
パラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスは、互いに混合する前に、任意適する温度まで予熱することができる。有利には、1つもしくはそれ以上の熱交換器を用いてパラフィン系炭化水素含有供給原料と分子状酸素含有ガスとを混合に先立ち予熱することができる。一般に、行いうる予熱の量は、予熱混合供給流が混合物の自己着火温度未満となる温度に限定される。これは一般に、混合供給流が触媒と接触する際に得られる反応温度より顕著に低い。
【0008】
典型的には、パラフィン系炭化水素含有供給原料を300℃未満まで予熱する。
【0009】
典型的には、分子状酸素含有ガスを150℃未満、好ましくは100℃未満まで予熱する。
【0010】
典型的には、予熱混合供給流は300℃未満の温度となる。
【0011】
好ましくは、予熱混合供給流は、炭化水素から二酸化炭素および水への完全燃焼に必要とされるパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの化学量論比の5〜16倍、好ましくは5〜13.5倍、より好ましくは6〜10倍のパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの比にて、パラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスを含む。
【0012】
水素(分子状水素)を本発明の方法に、予熱混合流の成分(パラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスをも含む)として同時供給することができる。好適には水素と分子状酸素含有ガスとのモル比は0.2〜4の範囲、好ましくは1〜3の範囲である。好ましくは水素を、分子状酸素含有ガスとの混合前に、パラフィン系炭化水素含有供給流原料と予備混合して予熱混合供給流を生成させる。
【0013】
本発明の方法における工程(b)においては、混合供給流を希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも400℃の温度まで予熱して、少なくとも10容量%の希釈剤を含む希釈混合希釈流を生成させる。
【0014】
熱交換器を用いて、混合に先立ち希釈剤を予熱することができる。
【0015】
典型的には希釈混合供給流は20〜70容量%、たとえば40〜50容量%の希釈剤を含む。
【0016】
希釈剤は少なくとも600℃、たとえば少なくとも700℃まで予熱することができる。
【0017】
好ましくは、生成される希釈混合供給流は少なくとも400℃、たとえば少なくとも500℃の温度である。
【0018】
希釈剤は単一の材料とすることができ、或いは材料の混合物で構成することもできる。
【0019】
希釈剤は、水素、分子状酸素およびパラフィン系炭化水素以外の少なくとも80容量%(たとえば少なくとも90容量%)の材料(以下、希釈剤材料と称する)を含み、ただしパラフィン系炭化水素含有供給原料が少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含む場合は希釈剤材料もメタンを含むことができる。
【0020】
好適希釈剤材料は本発明の方法にて不活性である材料である。メタンは少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素(たとえばエタンおよびプロパン)よりも反応性が顕著に低いので、本発明のプロセスを少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含むパラフィン系炭化水素含有供給原料を用いて行う場合、メタンの変換率(存在する場合)は比較的低い。従って、たとえメタンが使用条件下で完全に不活性でないにせよ、メタンの変換率は典型的には工程(c)にて触媒と接触させるメタンの10%未満である。
【0021】
代案としてまたは任意の不活性材料および/またはメタンに加え、希釈剤材料は、オレフィンを生成するのに非反応性である材料(水素および分子状酸素以外)とすることができる。ここで用いる「オレフィンを生成するのに非反応性である材料」とは、自熱クラッキングプロセスにて化学変化を受けうる希釈材料を意味し、従って不活性でないが、この種の変化からの「直接的」生成物はオレフィンでない。その例は一酸化炭素である。
【0022】
特に好ましくは、希釈剤は少なくとも80容量%、好ましくは少なくとも90容量%の水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、不活性ガス(たとえばヘリウム、ネオン、アルゴンもしくは窒素)、メタン(パラフィン系炭化水素含有供給原料が少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含む場合)、またはその混合物を含む。
【0023】
たとえばメタンおよび一酸化炭素は、工程(c)の自熱クラッキングプロセスから副生物として得ることができる。
【0024】
希釈剤は、希釈混合供給流が触媒と接触する直前に、特に100ミリ秒以内に混合供給流と混合される。好ましくは、希釈混合供給流を、希釈剤が予熱混合供給流と混合される50ミリ秒以内に、より好ましくは10ミリ秒以内に触媒と接触させる。疑念を回避するため、この時間は希釈剤と予熱混合供給流との最初の接触の時点から測定される。
【0025】
触媒との混合および急速な接触は、触媒床の表面および/または触媒ホルダーに比較的近接位置する希釈剤の適する供給源を与えることにより達成される。
【0026】
希釈剤は、任意適する混合装置を用いて混合供給流と混合することができる。使用しうるこの種の1つの装置は、エッチングされた金属構造の層の拡散結合により形成される拡散結合ブロックである。この種の構造体は熱交換用途につき公知であり、一般にたとえば「インダストリアル・ミクロチャンネル・デバイシス−現在の立場」、ピョア・L.M.およびランボールド、S.O.;ミクロチャンネルス・アンド・ミニチャンネルスに関する第1国際会議・ロンチェスター、NY、2003年4月に記載されている。
【0027】
希釈剤を導入する好適方法は、触媒の頂部表面に近接分配された少なくとも4個の出口を有するスパージャ(または触媒ホルダー)の使用である。
【0028】
その高い温度のためおよび希釈剤の導入位置(触媒の直前かつパラフィン系炭化水素含有供給流と分子状酸素含有ガスとの混合の後)のため、希釈剤を有利に使用して、炭化水素(パラフィン系炭化水素含有供給原料の主成分であるパラフィン系炭化水素)またはメタン以外の他の炭化水素の所定量を本発明の方法に導入することができる。ここで希釈剤は更に、パラフィン系炭化水素含有供給原料(たとえばジエン、たとえばブタジエンおよび/または「重質」炭化水素)の主成分であるパラフィン系炭化水素またはメタン以外の炭化水素を20容量%まで含むこともでき、これらは一般に室温および圧力にて液体である炭化水素である。
【0029】
本発明の方法はこの種の炭化水素を高温度における反応に供給することを可能にし、たとえば重質炭化水素を液体として供給する困難性を減少させる。
【0030】
更に希釈剤を使用して所定量の水素を高温度にて反応に供給することもでき、従って希釈剤は20容量%までの水素を含むことができる。
【0031】
代案として、希釈剤における炭化水素もしくは水素の不存在下に、希釈剤は20容量%までの分子状酸素を含むこともできる。
【0032】
最も好適な希釈剤は水蒸気、たとえば20〜100容量%、好ましくは50〜100容量%の水蒸気を含む。
【0033】
水蒸気は、触媒における熱分解性炭素の形成およびクラッキング反応におけるアセチレンの形成を阻止するという追加利点を有する。
【0034】
1具体例において、水蒸気を含む予熱希釈剤は、水蒸気(水)を生成すべく反応する水素および分子状酸素を含む流れを供給すると共に、流れを所要の予熱温度まで加熱するのに必要な熱を発生させることにより生成することができる。
【0035】
代案具体例においては、水蒸気を含む予熱希釈剤は、メタン(および必要に応じ水素)を含む流れを供給すると共にこれを分子状酸素と反応させて、水蒸気(水)と二酸化炭素と必要に応じ未反応メタンとを含む高温流れを生成することができ、その少なくとも幾分かを予熱希釈剤として使用する。
【0036】
水素および分子状酸素もしくは水蒸気から生成される水蒸気、メタンおよび分子状酸素から生成される二酸化炭素および任意の未反応メタンを含む高温流は典型的には先ず最初に400℃よりずっと高い温度であり、従って希釈剤流に必要な温度よりもずっと高い。この流れは熱交換により冷却することができ、および/または希釈して所望温度の希釈剤流を生成させることもできる。流れが熱交換により冷却される場合、除去される熱はプロセスへの他の供給物、たとえばパラフィン系炭化水素含有供給原料および/または分子状酸素含有ガスのための予熱として使用することができる。
【0037】
好ましくは水蒸気を希釈剤として使用する場合、水蒸気の少なくとも幾分かを下流のプロセス工程から、たとえば自熱クラッキングプロセスからの反応生成物を冷却すべく使用する急冷から得ることができる。
【0038】
一般に、希釈剤による混合供給流の希釈は比較的低いパラフィン系炭化水素含有供給原料の分圧(全圧力と比較)にて操作することを可能にし、これは向上した選択率をもたらしうる。パラフィン系炭化水素含有供給原料の一層低い分圧は更に生成物流における生成物の減少した分圧をもたらし、これは更に生成物流にて生ずる更なる反応をも減少させ、従って生成物流のための急冷要件を減少させる。希釈剤による混合供給流の希釈は更に一層高い流速の使用を可能にし、これは液体パラフィン系炭化水素含有流を触媒に容易に供給することを可能にする。
【0039】
高温希釈剤の使用は、低温希釈剤の添加と比較して、混合供給流の加熱要件を減少させる。混合希釈供給流が触媒と接触する直前における混合希釈供給流を生成させるべく混合(炭化水素と分子状酸素含有)供給流と混合される高温希釈剤の使用は、著量の熱を反応混合物に導入することを可能にすると共に、高温希釈剤が混合プロセスにおける早期(混合希釈供給流の滞留時間は特定供給流のための着火遅延時間を超えうる場合)に導入される場合と比較して、可燃性問題を顕著に減少させ、より高温度の混合希釈供給物を得ることを可能にする。混合希釈供給流が触媒と接触する直前の高温希釈剤の混合は、更に混合流からの熱損失のための機会をも減少させて、熱導入の効率を向上させる。反応温度より高い時点で希釈剤を供給する場合、高温希釈剤の供給は、燃焼させてクラッキング用の熱を発生させるべき供給物の量の減少をもたらし(希釈剤の不存在下と比較)、更に得られるオレフィンの収率における顕著な増大をもたらしうる。1具体例において、本方法はこの方法に同時供給される水素なしに、或いは通常必要とされるよりも減少した水素(水素は予熱混合供給流を介しおよび/または希釈剤の1部として供給される)を用いて操作することもできる。
【0040】
高温希釈剤の使用は更に、自熱クラッキング反応の始動および遮断にも利点を有する。始動に際し、高温希釈剤を反応体の前に触媒に導入して、触媒を希釈剤の温度まで予熱させることができる。各反応体を導入する際、触媒は反応温度まで急速に加熱され、これは典型的には触媒の出口にて600〜1200℃の範囲である。触媒は既に各反応体の導入に先立ち高温希釈剤の使用から一層高温度にあるので、反応の開始時点で触媒にわたる熱ストレスが減少する。
【0041】
同様に、遮断に際し触媒にわたる熱ストレスは高温希釈剤を使用することにより必要に応じたとえばパージガス単独でなく窒素のようなパージガスを用いて減少させることもできる。
【0042】
本発明の工程(c)においては、混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与える。
【0043】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒は一般に第VIII族金属をその触媒成分として含む。適する第VIII族金属は白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムおよびイリジウムを包含する。ロジウムおよびより詳細には白金およびパラジウムが好適である。典型的な第VIII族金属の充填量は、触媒の全乾燥重量に対し0.01〜100重量%、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。
【0044】
反応は好適には600〜1200℃の範囲、好ましくは850〜1050℃、特に好ましくは900〜1000℃の範囲の触媒出口温度にて行うことができる。
【0045】
本発明の方法は、液体およびガス状パラフィン系炭化水素の両者をオレフィンまで変換すべく使用することができる。適する液体炭化水素はナフサ、ガス油、減圧ガス油およびその混合物を包含する。適するガス状炭化水素はエタン、プロパン、ブタンおよびその混合物を包含する。
【0046】
ガス状炭化水素を変換させるべく使用する場合、本発明の方法は好ましくは少なくとも5barg(混合希釈供給流の全圧力)の高められた圧力、特に好ましくは10〜40bargの範囲、たとえば10〜30bargの範囲で操作される。ガス状炭化水素を変換させるべく使用する場合、本発明の方法は好ましくはパラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスの混合希釈供給流における2bargより大、たとえば5〜25bargの範囲、有利には10〜18bargの範囲の分圧にて操作される。
【0047】
液体炭化水素を変換させるべく使用する場合、本発明の方法は好ましくは少なくとも1barg(混合希釈供給流の全圧)の高められた圧力、特に好ましくは1〜5bargの範囲にて操作される。液体炭化水素を変換させるべく使用する場合、本発明の方法は好ましくは0.5bargより大、たとえば0.5〜4bargの範囲の混合希釈流におけるパラフィン系炭化水素含有供給原料および分子状酸素含有ガスの分圧にて操作される。
【0048】
任意適する分子状酸素含有ガスを使用することができる。好適には分子状酸素含有ガスは分子状酸素、空気および/またはその混合物である。分子状酸素含有ガスは、たとえば窒素もしくはアルゴンのような不活性ガスと混合することができる。
【0049】
混合希釈供給流は、触媒上に圧力依存性であると共に典型的には10,000h−1barg−1より大、好ましくは20,000h−1barg−1より大、特に好ましくは100,000h−1barg−1より大のガス空時速度にて通過させる。たとえば20bargの圧力にて、ガス空時速度は特に好ましくは2,000,000h−1より大である。しかしながら、最適ガス空時速度は供給物組成の性質に依存することが了解されよう。
【0050】
反応生成物は好ましくは、これらが自熱クラッカーから典型的には適する急冷タワーにて出現する際に、水で急冷される。
【0051】
更なる反応が生ずるのを回避するため、一般に生成物流を形成の100ミリ秒以内、好ましくは形成の50ミリ秒以内、特に好ましくは形成の20ミリ秒以内に750〜600℃まで冷却する。前記したように、本発明の方法による希釈剤の使用は、希釈剤の不存在下における反応と比較し、生成物流にて更なる反応が生ずる速度を減少させる。従って本発明は、直接的急冷を排除すると共にこれを一層「慣用」の熱回収システム(たとえば廃棄物加熱ボイラー)で置換する能力を与える。
【0052】
急冷が存在すると共に自熱クラッキングプロセスを5〜20bargの分圧にて操作する場合、一般に生成物を急冷すると共に温度を形成の20ミリ秒以内に750〜600℃の範囲まで冷却する。
【0053】
急冷が存在すると共に自熱クラッキングプロセスを20bargより大の分圧にて操作する場合、生成物を急冷すると共に温度を形成の10ミリ秒以内に750〜600℃の範囲まで冷却する。
【0054】
オレフィンに加え、炭化水素生成物流は未反応パラフィン系炭化水素、水素、一酸化炭素、メタンおよび少量のアセチレン、芳香族物質および二酸化炭素を含むことができ、これらは所望のオレフィンから分離する必要がある。
【0055】
第VIII族触媒を用いる場合、これは好ましくは触媒促進剤と組み合わせて使用される。促進剤は第IIIA、IVAおよび/またはVA族金属とすることができる。好ましくは促進剤は遷移金属とすることができる。遷移金属プロモータは、第VIII族遷移金属触媒成分として用いうるものとは異なる金属である。
【0056】
好適第IIIA族金属はAl、Ga、InおよびTlを包含する。これらのうちGaおよびInが好適である。好適第IVA族金属はGe、SnおよびPbを包含する。これらのうちGeおよびSnが好適である。好適第VA族金属はSbである。第VIIIB族金属と第IIIA、IVAもしくはVA族金属との原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。
【0057】
遷移金属系列における適する金属は周期律表第IB〜第VIII族における金属を包含する。特に周期律表第IB、IIB、VIB、VIIBおよびVIII族から選択される遷移金属が好適である。この種の金属の例はCr、Mo、W、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、CdおよびHgを包含する。好適遷移金属プロモータはMo、Rh、Ru、Ir、Pt、CuおよびZnである。第VIII族金属と遷移金属プロモータとの原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。
【0058】
好ましくは触媒は1種のみのプロモータを含む。このプロモータは第IIIA、第IVA、第VB族および遷移金属系列から選択される。たとえば触媒はロジウム、白金およびパラジウムから選択される金属、並びにGa、In、Sn、Ge、Ag、AuもしくはCuよりなる群から選択されるプロモータを含むことができる。この種の触媒の好適例はPt/Ga、Pt/In、Pt/Sn、Pt/Ge、Pt/Cu、Pd/Sn、Pd/Ge、Pd/CuおよびRh/Snを包含する。Rh、PtもしくはPdは触媒の全重量に対し0.01〜5.0重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%を含むことができる。Rh、PtもしくはPdと第IIIA、第IVAもしくは遷移金属プロモータとの原子比は1:0.1〜50.0、好ましくは1:0.1〜12.0とすることができる。たとえばRh、PtもしくはPdとSnとの原子比は1:0.1〜50、好ましくは1:0.1〜12.0、より好ましくは1:0.2〜3.0、特に好ましくは1:0.5〜1.5とすることができる。PtもしくはPdとGeとの原子比は他方において1:0.1〜50、好ましくは1:0.1〜12.0、より好ましくは1:0.5〜8.0とすることができる。PtもしくはPdとCuとの原子比は1:0.1〜3.0、好ましくは1:0.2〜2.0、より好ましくは1:0.5〜1.5とすることができる。
【0059】
代案としてプロモータは第IIIA、第IVAおよび遷移金属系列から選択される少なくとも2種の金属を含むことができる。たとえば触媒が白金を含む場合、白金は遷移金属系列からの2種の金属、たとえばパラジウムおよび銅で促進することができる。この種のPt/Pd/Cu触媒はパラジウムを乾燥触媒の全重量に対し0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.01〜1重量%の量にて含むことができる。PtとPdとの原子比は1:0.1〜10.0、好ましくは1:0.5〜8.0、より好ましくは1:1.0〜5.0とすることができる。白金と銅との原子比は好ましくは1:0.1〜3.0、より好ましくは1:0.2〜2.0、特に好ましくは1:0.5〜1.5である。
【0060】
触媒が白金を含む場合、これは代案として1種の遷移金属および周期律表第IIIA族もしくは第IVA族から選択される他の金属で促進することができる。この種の触媒において、パラジウムを触媒の全重量に対し0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%の量で存在させることができる。PtとPdとの原子比は1:0.1〜10.0、好ましくは1:0.5〜8.0、より好ましくは1:1.0〜5.0とすることができる。Ptと第IIIAもしくは第IVA族金属との原子比は1:0.1〜60、好ましくは1:0.1〜50とすることができる。第IIIA族もしくは第IVA族金属はSnもしくはGe、特に好ましくはSnである。
【0061】
疑念を回避するため、触媒における第VIII族金属およびプロモータは、たとえば金属として或いはたとえば酸化物のような金属化合物の形態など任意の形態で存在させることができる。
【0062】
触媒は未支持とすることができ、たとえば金属ガーゼの形態としうるが、好ましくは支持される。任意適する支持体材料、たとえばセラミックもしくは金属支持体を使用しうるが、セラミック支持体が一般に好適である。セラミック支持体を使用する場合、セラミック支持体の組成は酸化物もしくは酸化物の組合せとすることができ、これはたとえば600〜1200℃の間の高温度にて安定である。支持体材料は好ましくは低い熱膨張係数を有し、高温度における相分離に対し耐性である。
【0063】
適するセラミック支持体はコルデライト、リチウムアルミニウムシリケート(LAS)、アルミナ(α−Al)、イットリア安定化ジルコニア、アルミナチタネート、ニアスコンおよびカルシウムジルコニルホスフェートを包含する。セラミック支持体は、たとえばγ−Alで洗浄被覆することができる。
【0064】
好ましくは支持体はフォームもしくは蜂巣状モノリスの形態である。
【0065】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒は、当業界にて公知の任意の方法により作成することができる。たとえばゲル法および湿潤含浸技術を用いることができる。典型的には、支持体に金属を含む1種もしくはそれ以上の溶液を含浸させ、乾燥させ、次いで空気中で焼成する。支持体には1つもしくはそれ以上の工程で含浸させることができる。好ましくは複数の含浸工程が用いられる。支持体は好ましくは乾燥されると共に各含浸の間で焼成され、次いで最終焼成に好ましくは空気中でかけられる。次いで焼成された支持体を、たとえば水素雰囲気中での熱処理により還元することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子状酸素含有ガスの存在下におけるパラフィン系炭化水素含有供給原料の自熱クラッキングによるオレフィンの製造方法において、
(a)前記パラフィン系炭化水素含有供給原料および前記分子状酸素含有ガスを含む予熱された混合供給流を供給し、
(b)次いで前記予熱された混合供給流を希釈剤と混合し、前記希釈剤を少なくとも400℃の温度まで予熱して、少なくとも10容量%の希釈剤を含む混合希釈供給流を生成させ、更に
(c)前記混合希釈供給流を可燃性の正常燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒と接触させて、オレフィンを含む炭化水素生成物流を与え、
混合希釈供給流を希釈剤が予熱混合供給流と混合される100ミリ秒以内に触媒と接触させることを特徴とするオレフィンの製造方法。
【請求項2】
予熱混合供給流がパラフィン系炭化水素含有供給原料と分子状酸素含有ガスとを、炭化水素を二酸化炭素および水まで完全燃焼するのに要する炭化水素と分子状酸素含有ガスとの化学量論比の5〜16倍のパラフィン系炭化水素と分子状酸素含有ガスとの比にてパラフィン系炭化水素含有供給流および分子状酸素含有ガスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合希釈供給流が20〜70容量%、たとえば40〜50容量%の希釈剤を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
希釈剤が、オレフィンを生成させるには非反応性である水素および分子状酸素以外の少なくとも80容量%不活性材料を含み、パラフィン系炭化水素含有供給原料が少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素(メタン)を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
希釈剤が水蒸気と一酸化炭素と二酸化炭素と、たとえばヘリウム、アルゴンもしくは窒素のような不活性ガスとメタン(パラフィン系炭化水素含有供給原料が少なくとも2個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素を含む場合)またはその混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
希釈剤が水蒸気を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
混合希釈供給流を、希釈剤が予熱混合供給流と混合される10ミリ秒以内に触媒と接触させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
希釈剤が、メタンまたはパラフィン系炭化水素含有供給原料の主成分である炭化水素以外の20容量%までの炭化水素をも含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
可燃性の燃料リッチ限界を超えて燃焼を支持しうる触媒が、一般に第VIII族金属をその触媒成分として含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
パラフィン系炭化水素含有供給原料がエタン、プロパン、ブタンもしくはその混合物を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−528464(P2008−528464A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551729(P2007−551729)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/GB2005/005005
【国際公開番号】WO2006/077368
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(505229003)イネオス ヨーロッパ リミテッド (20)
【Fターム(参考)】