説明

自由にアクセス可能な検査ボリュームを持つMR撮像システム

本発明は、磁気共鳴撮像システム1に関する。このシステムは、検査ボリューム21内の一様な、安定した磁場を生成する主磁石と、少なくとも1つの進行モードにおいて上記検査ボリューム21の軸に沿って進行するRF波を誘導するRF導波管19と、上記検査ボリューム21に配置される患者の体10にRFパルスを送信し、及び/又は上記体からMR信号を受信する少なくとも1つのRFアンテナ9であって、上記RFアンテナ9が、上記RF導波管19の上記少なくとも1つの進行モードに結合するよう構成され、上記検査ボリューム21が自由にアクセス可能であるよう、上記RFアンテナ9は、上記撮像システムに配置される、少なくとも1つのRFアンテナと、RFパルスの時間的連続性を制御する制御ユニット15と、上記受信されるMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニット17とを有する。更に、本発明は、MR撮像システム1のためのRFアンテナ9に関し、上記RFアンテナ9が、少なくとも1つのリセス23を持つ電気導電的プレート22により形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴(MR)撮像の分野に関する。本発明は、進行するRF波を導くRF導波管と、RF導波管の少なくとも1つの進行モードに結合するよう構成される少なくとも1つのRFアンテナとを有するMR撮像システムに関する。更に、本発明は一般に、MRシステムに関するRFアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
特に医療診断の分野において、2次元又は3次元画像を形成するために磁場及び核スピンの間の相互作用を利用する画像形成MR法が、今日では広く使われている。なぜなら、軟組織の撮像に関して、これらが多くの点で他の撮像方法より優れており、電離放射線を必要とせず、通常侵襲的でないからである。
【0003】
一般のMR方法によれば、検査される患者の体は、強い、一様な磁場において構成される。磁場の方向は、同時に、測定のベースとなる座標系の軸(通常z軸)を規定する。磁場は、印加される磁場強度に基づき、個別の核スピンに関する異なるエネルギー準位を生み出す。このスピンは、規定された周波数、いわゆるラーモア周波数又はMR周波数の交番電磁場(RF場)の印可により、励起されることができる(スピン共鳴)。巨視的な視点からは、個別の核スピンの分布は、適切な周波数の電磁パルス(RFパルス)の印加により平衡状態から偏向されることができる全体の磁化を生み出す。一方、磁場は、z軸に垂直に延在する。その結果、磁化が、z軸の周りで歳差運動を実行する。
【0004】
磁化の変動は、磁化の変動がz軸に垂直な方向で測定されるようにMRデバイスの検査ボリュームにおいて構成され、及び方向付けられる受信RFアンテナを用いて検出されることができる。
【0005】
体における空間分解能を実現するため、3つの主軸に沿って延在する線形傾斜磁場が、一様な磁場に重畳される。これは、スピン共鳴周波数の線形空間依存をもたらす。すると受信アンテナにおいて受信される信号は、体における異なる位置に関連付けられることができる異なる周波数の要素を含む。受信アンテナを介して得られる信号データは、空間周波数領域に対応し、k空間データと呼ばれる。k空間データは通常、異なる位相エンコードで取得される複数のラインを含む。各ラインは、複数のサンプルを集めることによりデジタル化される。k空間データのセットは、例えばフーリエ変換を用いてMR画像に変換される。
【0006】
近年、MR撮像システムの設計において、2つの強い傾向が見られる。1つは、高い磁場強度(3テスラ以上)で作動するMR撮像システムの臨床的必要性及び臨床的受容性が、明らかになったことである。他方は、MRシステムの検査ボリュームの寸法(インナーボア直径)が、着実に増加していることである。
【0007】
Brunnerら(Nature、457巻、2009、994-998頁)は、高磁場MR撮像に関する進行波手法を提案した。検査される患者は、RF導波管内に配置される。このRF導波管は、少なくとも1つの進行モードにおいて、長手方向ボア軸に沿って進行するRF波を誘導するのに使用される。進行するRF波は、MR撮像装置の検査ボリュームを通り伝搬し、磁気共鳴を励起及び検出するのに用いられる。この概念の基本的な利点は、優れたRF範囲と、検査ボリュームにわたり高次のRF一様性とを可能にする点にある。このため、進行波MR撮像は、医療MR撮像に利用可能な最高の磁場強度及びより大きなボア直径の同時採用を容易にする可能性を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、斯かる進行波を用いるMR撮像は、新しいタイプのRFアンテナを必要とする。検査される体のニアフィールドに結合する代わりに、進行波アンテナは、RF導波管の進行モードに結合しなければならない。既知の手法では、MR撮像装置の円筒状ボアのオープンエンドに配置される円形分極されたパッチアンテナが用いられる。この構成の問題は、それがインナーボアに対するオープンアクセスを不可能にする点にある。これは、患者の監視及び患者のアクセスしやすさにとって致命的であり、両者は、MR撮像及びMR誘導医療介入において特に重要である。
【0009】
上記から、改良されたMR撮像システムに関する必要性が容易に理解される。結果的に本発明の目的は、大きな及び容易にアクセス可能なインナーボアを持つMR撮像システムを提供することである。更に、MR撮像システムは、高い主磁場強度での高品質MR撮像を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、検査ボリューム内の一様な、安定した磁場を生成する主磁石を有するMR撮像システムが開示される。このMRシステムは、少なくとも1つの進行モードにおいて上記検査ボリュームの軸に沿って進行するRF波を誘導するRF導波管を更に有する。更に、このシステムは、上記検査ボリュームに配置される患者の体にRFパルスを送信し、及び/又は上記体からMR信号を受信する少なくとも1つのRFアンテナを有する。上記RFアンテナが、上記RF導波管の上記少なくとも1つの進行モードに結合するよう構成される。上記検査ボリュームが自由にアクセス可能であるよう、上記RFアンテナは、上記撮像システムに配置される。即ち、検査ボリュームを有する磁石のインナーボアは、アクセス可能なように開かれている。更に、このシステムは、RFパルスの時間的連続性を制御する制御ユニットと、上記受信されるMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを有する。
【0011】
このMR撮像システムは、上述した進行波概念を用いる。進行波概念は、ワイドボア磁石システムを用いて高磁場強度で高品質なMR撮像を可能にする。従来の進行波手法において、進行波が、検査される患者から離れて生成及び検出されることができるという事実を利用するため、RFアンテナは、磁石ボアのオープンエンドで検査ボリュームの外側に配置される。しかしながら、磁石のインナーボアに対する開かれたアクセスは、こうして妨害される。本発明によれば、対照的に、RF導波管の進行モードに結合するRFアンテナは、検査ボリュームが自由にアクセス可能であるように、検査ボリューム内に配置されるか、又はRFアンテナは、検査ボリュームの外側に、例えば磁石ボアのオープンエンドに対して何らかの距離を開けて配置される。その結果、磁石のインナーボアがRFアンテナにより何ら妨害されない。
【0012】
結果として、本発明のMR撮像システムは、従来の構成を越える実質的な利点である、検査ボリュームに対する完全なアクセスを可能にする。更に、RF一様性の改善は、本発明による検査ボリューム内にRFアンテナを配置することにより、例えば(マルチエレメント)RFアンテナの対応するように最適化された設計を用いることにより、実現されることができる。インボアアンテナは、それ自体がマルチエレメントデバイスである必要はない。
【0013】
従来技術と比較して、本発明のMR撮像システムは、磁石ボア内により多くの空間を提供する。これは、介入的な用途にとって有利であり、患者フレンドリーな設計を可能にする。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、RFアンテナは、MR撮像システムの患者テーブルの下に配置される又は患者テーブルに一体化される。オプションで、RFアンテナは、システムのグラジエントコイルのリセス又はシステムのRFシールドに配置されることができるか、又は、システムRFシールド又はグラジエントコイル自体に一体化されることができる。結果として、本発明によるMR撮像システムにおいて、検査される体のニアフィールドに結合する従来のヘッド又はボディRFアンテナが、完全に除かれることができる。これらの従来のRFアンテナ、典型的にはバードケージ又はTEM(横断電磁気)共振器は、患者の体を接近して囲み、これにより、磁石ボア内の自由空間を限定する。自由なボア直径の増加は、患者の体にRFパルスを送信及び/又は体からRF信号を受信するRFアンテナを、患者テーブルに又は患者テーブルの下に、RFシールド又はグラジエントコイルのリセスに配置することにより、又はRFアンテナをRFシールド及び/又はグラジエントコイルに一体化することにより、実現される。進行波手法を用いて、及び3Tを越える磁場強度のための直角位相ボディコイルといった従来のボリューム送信機を省略することで、自由なボア直径が明らかに増加されることが出来る点に留意されたい。この理由は、従来の(ニアフィールド)送信機が、3Tを越える磁場強度において所望される一様な励起を生み出さない点にある。
【0015】
好ましくは、本発明によるMR撮像システムの少なくとも1つのRFアンテナは、電気導電的プレートにより形成される。このプレートにおいて、少なくとも1つのリセスがオープンであるままにされる。リセスは、例えば、スロット形状とすることができる。一般に、スロット線アンテナが用いられることができる。これは、例えば、金属プレートにおけるスリット、細長く切られた金属枠(キャビティバックドスリット)、細長く切られた導波路構造、上述した可能なデザインのいずれかにおける複数のスリットを用いるアンテナアレイ、又は所望の関心領域における所望の磁場形状の生成のための曲がった又は任意の形状のスリットとして実現されることができる。
【0016】
リセス(又は、スリット)のエッジでの電磁場分布が、RF導波管に結合される電磁放射線の放出をもたらす。進行波送信及び/又は受信RFアンテナは、導電性プレート内の細長いスロット形状のリセスのアレイにより実現されることができる。斯かるRFアンテナが、ディスクリート(discreet)チューニングコンデンサを必ずしも必要とするわけではない。MR共鳴周波数へのチューニングは、適切な容量性又は低損失誘電負荷を用いて及び/又は幾何学的な設計により実現されることができる。導電性プレート内のスロット形状のリセスの構成は、検査ボリューム内のRF範囲及び一様性の最適化を可能にする。導電性プレートは、検査ボリュームにおいて利用可能な最大の空間に関してMRシステムに最適に適合するよう、MR磁石システムのインナーボアの湾曲を整合させて、例えばカーブさせることができる。
【0017】
少なくとも1つのリセスがオープンであるままにされる電気導電的プレートにより形成される前述のRFアンテナが、少なくとも1つの進行モードにおいて検査ボリュームの軸に沿って進行するRF波を誘導するRF導波管の存在を必ずしも必要とするわけではない点に留意されたい。スロット線アンテナの適切な空間及び電気特性を選択することにより、このアンテナは、追加的なRF導波管の存在なしに従来のMR撮像システムにおいて用いられることができる。結果的に、斯かるスロット線アンテナは、従来のRFアンテナを置換するために用いられることができる。しかしながら、また、従来のRFアンテナとの組み合わせも可能である点に留意されたい。
【0018】
このため、本発明は、RFアンテナが少なくとも1つのリセスを有する電気導電的プレートにより形成されるMR撮像システムに関するRFアンテナにも関する。本発明は、検査ボリューム内の一様な、安定した磁場を生成する主磁石を有するMR撮像システムにも関する。このシステムは更に、上記検査ボリュームに配置される患者の体にRFパルスを送信し、及び/又は上記体からMR信号を受信する少なくとも1つのRFアンテナであって、上記RFアンテナが、少なくとも1つのリセスを有する電気導電性プレートにより形成される、少なくとも1つのRFアンテナを有する。更に、このシステムは、RFパルスの時間的連続性を制御する制御ユニットと、上記受信されるMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを有する。この場合、進行波がボアにおいてラーモア周波数で伝搬することができないものとして規定される従来のMR撮像システムが、使用されることができる。即ち、進行波概念は、この場合オプションである。にもかかわらず、進行波手法と組み合わせて、少なくとも1つのリセスを有する電気導電的プレートにより形成されるRFアンテナに関する記載を通して説明されたすべての概念は、進行波がボアにおいてラーモア周波数で伝搬することができないものとして規定される従来のMR撮像システムにおいて用いられることができる。
【0019】
一般に、インボア送信/受信スロット線共振器アレイが用いられることができる。結果的に、コンデンサのような、ディスクリートチューニング要素がわずかしか必要ない又は全く必要ないスロット線構造のアレイから成るアンテナパターンが提供されることができる。全体のRF電流は、ディスクリートストリップに沿う代わりに、幅広い分散された表面にわたり流れる。この表面は、容量性又は低損失誘電負荷、機械的なチューニング、又は例えば(PIN)ダイオードを用いる電気チューニングを介してチューニングされることができる。これらの方法の組合せも可能である。
【0020】
スロット線概念は、従来のニアフィールドコイル要素と組み合わせられることができ、RFシステム及びグラジエントコイルの設計自由度を増加させる。スロット線アンテナは、従来の相互結合ボリューム共振器又はマルチ送信コイルアレイとして駆動されることができる。MRシステムにおいてボディコイルを置換する他に、スロット線アンテナは、例えば頭撮像に関する表面(TxRx)(送信/受信)アレイコイル又は挿入ボリュームコイルとして用いられることもできる。
【0021】
これは、MRシステムがより低価格で提供されることができるという利点を持つ。スロット線アンテナが、わずかな量の空間だけを必要とするので、これは結果として、例えば介入的な用途及び患者フレンドリーなデザインのためのMRシステムのボア(即ち検査ボリューム)におけるより多くの空間を生じさせる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、ジオメトリ、即ち少なくとも1つのリセスの形状、サイズ及び/又は位置は、可変である。これは、例えば機械的に実現されることができる。このため、導電性プレートは、互いに対して相対的に移動可能である複数のプレートセクションを有することができる。代替的に、導電性プレートの少なくとも1つのリセスは、上述したように、リセスの有効なジオメトリを修正するため、1つ又は複数の切り替え可能なPINダイオード及び/又は1つ又は複数のコンデンサにより架橋されることができる。RFアンテナのこの変動は、検査ボリューム内のRF場分布を最適化するためだけでなく、チューニング目的のために用いられることができる。これは、RFシミングと呼ばれる。
【0023】
マルチエレメント送信システムを形成する1つ以上のスロットを用いて、所与の関心領域における改良されたRF範囲、改良された一様性及び/又は改良された、即ち低減された比吸収率(SAR)が生じるよう、スロットの位置、サイズ及び形状が選択されることができる。
【0024】
本発明の追加的な実施形態によれば、MRシステムが、上記検査ボリューム内の異なる空間方向において切り替えられた傾斜磁場を生成する複数のグラジエントコイルを更に有し、上記グラジエントコイルが、上記検査ボリュームを少なくとも部分的に囲む湾曲した体上又は体内に構成される電気導体を有し、上記RFアンテナの導電性プレートは、上記湾曲した体の湾曲に整合する態様で曲げられ、上記RFアンテナが、上記湾曲した体に隣接して配置される。この実施形態において、MR撮像システムのグラジエントコイルは、検査ボリュームを少なくとも部分的に囲む湾曲した、例えば円筒状の体上又は体内に構成される電気導体を有する。この場合、RFアンテナは、グラジエントコイルの形状に対応して形づくられ、磁石のインナーボア内の最大自由空間を得るため、グラジエントコイルに隣接して構成される。すでに上述した様に、RFアンテナは例えば、グラジエントコイルのボディに形成されるリセスに配置されることができる。こうして磁石ボアに対する増加されたオープンアクセスが提供される。
【0025】
好ましくは、湾曲したグラジエントコイルボディが、検査ボリュームの軸に沿って分割(又は、部分的に分割)される。導電性プレートにおけるリセスは本実施形態において、グラジエントコイルボディの分割された部分の間のギャップに沿って延びる円周スロットとして形成されることができる。双極子のような特性を持つRFアンテナがこうして得られる。この場合、双極子軸は、磁石ボアの長手方向軸に垂直な長手軸と平行する。
【0026】
本発明の追加的な実施形態によれば、RFアンテナは、非ディスクリート要素だけを用いて、RF周波数へとチューニングされる。このチューニングは、静的な又は動的に実現可能なチューニングとすることができる。これは例えば、リセスのサイズを変化させる機械的に可動する要素を用いて上述したように行われる。しかしながら、一般に、所与の周波数に関するスロット線構造がコンデンサといった任意のディスクリート要素を用いることなしに実現される場合、斯かるスロット線アンテナの製造コストはかなり低く保たれる。更に、電気要素の故障のリスクは、最小化される。スロット線構造のアンテナ特性を変化させることは、(上述したように)構造の空間寸法を変化させることにより、又は構造に誘電物質を提供することにより実現されることができる。例えば、アンテナは、誘電物質内部に又はこの上に個別にロードされることができる。このアンテナは、金属とは別の物質から、例えば人工磁気導体(AMC)から又はカーボンナノチューブから製造されることもできる。
【0027】
本発明の追加的な実施形態によれば、アンテナのスロット線アレイ構造は、局所表面受信コイルと組み合わせられることができる。また、より低い周波数でチューニングされる送信又は受信コイルとの組合せが可能である。この場合、1つのコイルは、例えばフッ素MR撮像に関して使用され、他のコイルは、陽子MR撮像に関して用いられることができる。更に、スロット線アンテナ、ダイポールアンテナ、TEMアンテナ、パッチアンテナ及びループ要素は、MRシステムの最適化されたRF送信又は受信能力を得るため、適切な態様で混合されることができる。これは、マルチ共鳴励起パターン、アクティブシミングに関するPINダイオードを用いるアクティブスリット長チューニング、及び更に上述したように円筒状ボアの可変誘電負荷によるRFシミングと組み合わせられることができる。
【0028】
本発明の追加的な実施形態によれば、RFアンテナは指向性アンテナである。この場合、指向性アンテナは、検査ボリュームの方へ向けられる指向性アンテナ特性を有する。
【0029】
従来の(ボディ)コイルが、サンプルの反応的なニアフィールドに結合し、従って、サンプル損失によりロードされる間、伝搬波励起アンテナは、MRシステムの円筒状導波管のモードに結合する。従来のMRコイルが、極めて高い磁場で円筒状導電ボア内部でのニアフィールドレジームにおいて作動されるが、MR周波数が導波管のカットオフ周波数以下であればすぐに、シリンダー自体が導波管として機能する。電磁気エネルギーは、進行波によりシリンダーを通り運搬される。所与の円筒状ボアのカットオフ周波数は、誘電負荷によりかなり低下されることができる。
【0030】
最初は波伝搬を許可しないボアにおいて進行波励起を実現するため、シリンダーの表面上又は患者支持部に下において、高誘電率の物質での誘電充填が適用されることができる。患者の体の存在は、追加的な誘電負荷効果によりカットオフ周波数を更に減らす。検査ボリュームが自由にアクセス可能であるよう、例えば検査ボリュームを含むMRボアの外側で撮像システムに配置される指向性RFアンテナを用いることにより、進行波が、MRシステムの検査ボリューム内部で励起される。
【0031】
メインビームの方向におけるゲインより実質的に大きなアンテナゲインを持つことで、指向性アンテナのアレイは、ボアにおける所与のB場に関して必要とされるRF増幅器パワーを下げるのに用いられることができる。更に、指向性アンテナ特性は、斯かるMRIシステムの励起条件を調整することを可能にする。
【0032】
更に、斯かるアンテナシステムは、ボアに一体化されるか、又は磁石のエッジに配置されることもできる。アンテナ要素は例えば、なおボアに対する自由なアクセスを可能にするスキャナのサービス端部に配置されることができる。これは、システムをコンパクトに保ちつつ、ボア直径における重要な増加を提供することができる。
【0033】
本発明の追加的な実施形態によれば、RFアンテナは、検査ボリュームの方へ向けられるアンテナ特性を提供する周期的アンテナ構造を有する。
【0034】
本発明の実施形態によれば、MRシステムは、斯かるアンテナにより最適化された送信及び受信能力を提供する利点を持つRFアンテナのフェーズドアレイを有することができる。結果的に、検査ボリュームにおける励起場が、外部アンテナ設計により形成されることができる。
【0035】
本発明の追加的な実施形態によれば、RFアンテナは、ヤギタイプのアンテナ又は螺旋状に構造化されたアンテナである。更に、このアンテナは、ダイポール及び/又は4分の1波長線路構造アンテナとすることができる。
【0036】
斯かる指向性アンテナの追加的な利点は、これらのアンテナが、任意のコンデンサなしに、より簡単でより安価なアンテナ構造を有するということである。アンテナサイズは、例えば誘電物質内部又はこの上にアンテナを個別にロードすることにより、所望の態様で構成されることができる。進行/伝搬モード励起及び従来のニアフィールド励起の組合せを実現するため、従来のRFアンテナを持つ進行波アンテナ構成の組合せが可能である点に留意されたい。例えば、フェーズロックモードにおいて、進行モードアンテナは、「ベース」分極目的で用いられることができ、例えばTEM又はストリップラインアンテナといった局所アンテナが、例えばRFシミングといった追加的な目的で用いられることができる。更に、RFシミングは、円筒状ボアの可変誘電負荷により可能である。
【0037】
本発明の追加的な実施形態によれば、共振受動アンテナ構造が、進行波伝搬を容易にするため、検査ボリュームの近くで用いられることができる。例えば、進行波アンテナ構成を駆動するのに必要とされるパワーを減らすことを可能にする局所的に強化されたBを提供するため、スロット又は双極子が、共振構造として患者テーブルにおいて用いられることができる。
【0038】
本発明の追加的な実施形態によれば、進行波アンテナは、MR磁石のカバーの下に隠されることができるか、又はMRシステムのグラジエントコイルに一体化されることさえできる。
【0039】
本発明の追加的な実施形態によれば、RFアンテナが、検査ボリュームの外側に配置され、MR磁石自体の外側にさえ配置される場合に、RF波の不必要な反射を回避するため、MR磁石を囲むRF室だけでなく、MR磁石自体が、RF吸収特性を持つ。
【0040】
外部進行波アンテナは、アンテナ自体の上に又はアンテナの近くに配置される増幅器と共に駆動されることができる。これは、コンパクトなアンテナ構造を可能にする。
【0041】
本発明の更に別の好ましい実施形態によれば、RF導波管は、検査ボリュームを囲むオープンエンドの管により形成される。この管は、MR撮像システムの磁石ボアを規定する。この管は、円形又は楕円形状を持つことができる。MR周波数が管の寸法により決定されるカットオフ周波数を越える場合、この管は導波管として機能する。これは、高い磁場強度及び大きなインナーボア直径の場合である。ボア内で生成されるRF場の電磁気エネルギーは、進行波により管を通り運搬される。例えば磁石のインナーボアに沿って並ぶ電気導電的スクリーン又はメッシュは、本発明による導波管として用いられることができる。
【0042】
この管は、選択された進行モードにおいて進行するRF波の誘導を可能にするため、電気導電的パターン構造を有することができる。電気導電的パターンは、導波管内の電流経路を決定する。望ましくないより高次のモードの伝搬は、こうして抑制されることができる。
【0043】
本発明の更に追加的な好ましい実施形態によれば、MR撮像システムは、体の限定された領域からMR信号を受信する、検査ボリューム内に配置される少なくとも1つの表面アンテナを有する。こうして、進行波RF励起は、例えば、検査される体のニアフィールドに結合する、従来の(調整可能な)RF表面コイルのアレイを用いて、MR信号の局所検出と組み合わせられることができる。このハイブリッド手法は、MR撮像装置のRFシステムの設計における追加的な自由度を提供し、有利にはRF表面アンテナを介する近距離検出の高い感度と、進行波励起の改良されたRF範囲及び一様性とを結合する。
【0044】
スロット線構造アンテナと進行波アンテナとは共に、RF励起目的、励起後のMR信号の受信又はこれらの組み合わせのために使用されることができる点に留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によるMR撮像システムを概略的に示す図である。
【図2】MR撮像システムの検査ボリュームにおいて患者の下に配置されるスロットタイプのRFアンテナのスケッチを示す図である。
【図3】本発明による個別のRFアンテナを示す図である。
【図4】本発明によるRFアンテナを形成するスロットの平面アレイを示す図である。
【図5】フィードを持つ平面スロット線アンテナを示す図である。
【図6】スロット線アンテナに接続されるRFチェーンを示す図である。
【図7】スロット線アンテナを搬送する細長く切られた金属プレートを示す図である。
【図8】スロット線アンテナのアレイを示す図である。
【図9】誘電物質と組み合わせたスロット線アンテナを示す図である。
【図10】スロット線アンテナに関する異なる離調戦略を示す図である。
【図11】分割されたグラジエントコイルを持つMRシステムにおけるスロット線アンテナを示す図である。
【図12】グラジエントコイルにリセスを持つMRシステムにおけるスロット線アンテナを示す図である。
【図13】本発明によるMR撮像システムを通る長手方向の切断を示す図である。
【図14】外部ヤギアンテナを示す図である。
【図15】誘電層上の平面指向性アンテナを示す図である。
【図16】指向性アンテナ構造の個別の要素の異なるパターンを示す図である。
【図17】ヘリカルアンテナ設計を示す図である。
【図18】回状場を生み出す指向性アンテナを示す図である。
【図19】指向性アンテナ及び進行波構造の組合せを示す図である。
【図20】複数の個別の指向性アンテナの組合せを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面は、本発明の好ましい実施形態を開示する。しかしながら、この図面は、説明のためだけに設計され、本発明の範囲を規定するものではない点を理解されたい。
【0047】
図1を参照すると、MR撮像システム1が示される。実質的に一様な、時間的に一定の主磁場が検査ボリュームを通りz軸に沿って作成されるよう、このシステムは、超伝導又は抵抗性の主磁石コイル2を有する。
【0048】
磁気共鳴生成及び操作システムは、RFパルスのシリーズ及び切り替えられる傾斜磁場を適用して、核磁気スピンを反転させ又は励起させ、磁気共鳴を誘導し、磁気共鳴をリフォーカスし、磁気共鳴を操作し、磁気共鳴を空間的に又は他の態様でエンコードし、MR撮像を実行するためスピンその他を飽和させる。
【0049】
より特異的には、グラジエントパルス増幅器3が、検査ボリュームのx、y及びz軸に沿って全体の体グラジエントコイル4、5及び6の1つを選択するため、電流パルスを適用する。RF送信機7は、送信/受信スイッチ8を介して、検査ボリュームにRFパルスを送信するRFアンテナ9にRFパルス又はパルスパケットを送信する。典型的なMR撮像シーケンスは、互いに一緒にとられる短い持続時間のRFパルスシークエンスのパケットから作られ、任意の印加傾斜磁場が、核磁気共鳴の選択された操作を実現する。RFパルスは、飽和させ、共鳴を励起させ、磁化を反転させ、共鳴をリフォーカスさせ、又は共鳴を操作するのに使用され、検査ボリュームに配置される体10の部分を選択するのに使用される。MR信号は、RFアンテナ9により受信されることもできる。
【0050】
体10の限られた領域のMR画像の生成のため、例えばパラレルイメージングを用いて、局所アレイRFコイル11、12及び13のセットが、撮像に関して選択される領域に隣接して配置される。アレイコイル11、12及び13は、RFアンテナを介して遂行されるRF通信により誘導されるMR信号を受信するのに用いられることができる。しかしながら、検査ボリュームにRF信号を送信するのにアレイコイル11、12及び13を用いることも可能である。
【0051】
結果として生じるMR信号は、RFアンテナ9により及び/又はRFコイル11、12及び13のアレイにより受信され、好ましくはプリアンプ(図示省略)を含む受信機14により復調される。受信機14は、送信/受信スイッチ8を介してRFコイル9、11、12及び13に接続される。
【0052】
ホストコンピュータ15は、グラジエントパルス増幅器3及び複数の撮像シーケンスのいずれかを生成する送信機7を制御する。例えば、エコープラナー撮像(EPI)、エコーボリューム撮像、グラジエント及びスピンエコー撮像、高速スピンエコー撮像等の撮像シーケンスがある。選択されたシーケンスに対して、受信機14は、各RF励起パルスのあとに立て続けに、単数又は複数のMRデータラインを受信する。データ取得システム16は、受信信号のアナログデジタル変換を実行し、追加的な処理のため適切なデジタルフォーマットへと各MRデータラインを変換する。現代のMRデバイスにおいて、データ取得システム16は、raw画像データの取得に特化した分離したコンピュータである。
【0053】
究極的に、デジタルraw画像データは、フーリエ変換又は他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成プロセッサ17により、画像表現へと再構成される。MR画像は、患者を通る平面スライス、パラレル平面スライスのアレイ、3次元ボリューム等を表すことができる。画像は、画像メモリに格納される。そこでは、画像が、スライス、プロテクション又は画像表現の他の部分を、例えば、ビデオモニタ18を介する視覚化のための適切なフォーマットへと変換するためにアクセスされる。このことは、結果として生じるMR画像についての人間が見ることができる表示を提供する。
【0054】
図1には、RF導波管19も示される。これは、以下において図2を参照して、より詳細に説明されることになる。
【0055】
図2は、MR撮像システム1の検査ボリュームにおいて患者10の下に配置されるスロットタイプRFアンテナのスケッチを示す。図2に示される実施形態では、図1のMR撮像システム1は更に、RF導波管19を有する。このRF導波管19は、少なくとも1つの進行モードにおいて検査ボリュームのz軸に沿って進行するRF波を誘導する。RF導波管19は、体10を囲む構造により形成されることができる。この構造は、例えばグラジエントコイル4、5又は6、主な磁石コイル2の低温保持装置の壁及びRFスクリーン(図示省略)である。代替的に、RF導波管19は、図2において参照符号19で表されるような検査ボリュームを囲む、円形、楕円、矩形又はテーパー断面の別々に提供されるオープンエンドの管とすることができる。磁石の内壁に沿って並ぶ電気導電的スクリーン又はメッシュが、RF導波管19として用いられることができる。MR周波数がRF導波管19の寸法により決定されるカットオフ周波数を越える場合、ボア内のRFアンテナ9を介して生成されるRF場の電磁気エネルギーは、進行波によって導波管19を通り運搬される。
【0056】
図2を更に参照すると、図1のRFアンテナ9は、MR撮像システムの患者テーブル202の下に配置される。患者テーブル202自体は、MR撮像システム1のブリッジ204上に移動可能であるよう配置される。管形状のRF導波管19は、磁石のインナーボアを規定する。インナーボアは即ち、MR撮像システム1の検査ボリューム21を構成する自由空間である。図2から分かるように、最大限自由なボア直径は、RFパルスを送信する及び/又は体10からMR信号を受信するRFアンテナを患者テーブル202の下に配置することにより実現される。図2に示される実施形態では、RFアンテナ9は、スロット線アンテナ200により形成される。
【0057】
結果的に、検査ボリューム21が自由にアクセス可能であるよう、RFアンテナ9は、撮像システムに配置される。
【0058】
これは、検査ボリューム及び従って患者10が、MRシステム1の左側208及び右側210の両方から自由にアクセスできるという利点がある。この場合、左及び右側208及び210は、z軸に沿ってMRシステムを通る長手方向切断に関して図2において規定される。
【0059】
この場合も、スロット線アンテナ200がRF導波管19の存在なしに適用及び使用されることもできる点に留意されたい。従って導波管は、本実施形態においてオプションである。
【0060】
スロット構造200(図4参照)の実施形態は、スロット線アンテナ200により形成される個別のRFアンテナ9を示す図3を参照して、以下により詳細に述べられる。スロット線アンテナ200は、スロット形状のリセス23がオープンであるままにされる電気導電的プレート22を個別の要素として含む。リセス23のエッジでの電磁場分布が、(オプションの)RF導波管19(図2を参照)に結合されることができる電磁放射線の放出をもたらす。進行波励起のために選択されるモードに基づき、このリセスが、MR撮像システム1のz軸に垂直に構成されることができる。リセス23は、検査ボリューム21内のRF場分布を最適化するよう構成される湾曲形状又は他の任意のジオメトリとすることもできる。図3に示される実施形態において、送信/受信スイッチ8を介してRFアンテナ9をRF送信機7(図1を参照)に接続する1つ又は複数のフィード点24が、スロット形状のリセス23の間の中心に配置される。
【0061】
図3に示されるアンテナ要素は、単一のスロット23を有する個別のRFアンテナ要素である。フィード点24は、対称形のバランスの取れた励起のため、スロット23の対向するエッジに構成される。RF送信機7(図1参照)として使用されるRFパワーMOSFETの出力は、RFアンテナ9の低インピーダンス励起を得るため、フィード点24に直接接続されることができる。
【0062】
図4は、本発明によるRFアンテナ9を形成するスロット23の平面アレイ200を示す。本実施形態において、進行波送信及び/又は受信RFアンテナ9が、導電性プレート22内の細長いスロット形状のリセス23のアレイにより実現される。斯かるRFアンテナは好ましくは、ディスクリートチューニングコンデンサを必要としない。MR共鳴周波数のチューニングは、適切な容量性又は低損失誘電負荷(図示省略)を用いて簡単に実現されることができる。しかしながら、一般に、スロット線アンテナのチューニングは、スリット長及び/又は幅の機械的及び/又は電気的な変動により実現されることができる。導電性プレート22上のスロット形状のリセス23の構成は、検査ボリューム21(図2参照)内のRF範囲及び一様性の最適化を可能にする。導電性プレート22は、MR撮像システムのインナーボアの湾曲に整合させて曲げられることができる。しかしながら、一般に、RFアンテナ9のジオメトリは、MR撮像装置の検査ボリューム21を囲むグラジエントコイル構成への一体化を可能にするため、任意の態様で構成されることができる。更に、既に図2で述べたように、RFアンテナのジオメトリは、患者テーブル202への一体化を可能にするために構成されることができる。
【0063】
検査ボリューム21が、自由にアクセス可能であり、検査ボリュームに対する及び従って患者10に対する自由なアクセスを得るため、RFアンテナ9によりブロックされないよう、RFアンテナ9のジオメトリが構成される点に留意されたい。
【0064】
図5は、例えばパワー増幅器、送信/受信スイッチ、プリアンプ及び/又は駆動電子機器へのデジタル光学接続及び/又は有線接続500を含むRFモジュール7からのフィードを持つ平面スロット線アンテナを示す。この場合も、入力フィードは、スロット23の中心のフィード点24に接続される。RFモジュールは好ましくはアンテナの近く又はアンテナ内に配置される。即ち、RFモジュールは、RFアンテナ9の導電性プレート22に例えば取り付けられる。このプレートにおいて、スロット形状のリセス23はオープンであるままにされる。RFモジュール7は、RFモジュール7へ/からの個別の信号を送信/受信するため、例えばアナログ又はデジタル入力及び/又は出力500を有することができる。デジタル又はアナログ信号は、図1に関して述べられるホストコンピュータ15と入出力500を介して通信されることができる。
【0065】
図6は、スロット線アンテナ200に接続されるRFチェーンを示す。RFチェーンは、入力600及び増幅器604を有する。これは、例えば、入力600を介して受信される信号を増幅するため、電界効果トランジスタ606を有することができる。スロット線アンテナ200は、ひとかたまりにされた要素の適切なネットワーク又はケーブル変換又はこの両方を用いて、増幅器604のインピーダンスに整合させられることができるインピーダンスを有する。例えば、整合させることは、電界効果トランジスタ606の静電容量608及び/又は増幅器604に含まれる個別のコイル要素のインピーダンス610を用いて実行されることができる。1つ又は複数のバラン602及び612が、ケーブル上で共通のモードを抑制するために導入されることができる。更に、増幅器604のインピーダンスに対してアンテナインピーダンスを整合させるために、追加的な整合回路614が用いられることができる。バラン612は、FET606により増幅される信号を対称にするために用いられる。なぜなら、通常は増幅信号が非対称形だからである。一方、スロット23は対称形である。図6は、通信においてアンテナを駆動するパワー増幅器にスロットインピーダンスを整合させる構成を示すが、スロットアンテナを用いる信号受信の場合に適切な低ノイズ構成が案出されることができる。しかし、ここでは示されない。基本的に、アンテナにより受信される信号は、ひとかたまりにされた要素の適切な整合ネットワークを用いて、又は所望の変換を提供する適切なケーブルを用いて、低ノイズFETの入力に供給される。
【0066】
図6に更に示されるように、スロット線アンテナ200は、コンデンサ616と架橋されるスロット23を有する。これは、図7を参照してより詳細に説明される。
【0067】
図7は、スロット線アンテナを搬送する細長く切られた金属プレートを示す。アンテナは、対称形のバランスのとれた励起のためスロットの対向するエッジに配置される個別のフィード点を持つスロット形状のリセス23をここでも有する。図7に示される実施形態では、リセス23は、スロット線アンテナ200の最適なチューニングのため、コンデンサ616と架橋される。
【0068】
図7において、スロット線アンテナ200は更に、追加的なコンデンサ702により架橋されるスリット700を有する渦電流バリアを有する。傾斜磁場の切り替えは通常、誘導に関するファラデーの法則に基づき、スロット線アンテナの導電構造22における渦電流を誘導する。これらの渦電流は、磁石ボア内で生成される磁場を歪める場合があり、従ってMR画像の歪みが再構成されることをもたらす場合がある。スロット700及びコンデンサ702により形成される渦電流バリアを用いて、傾斜誘導された渦電流が伝搬することが防止される。
【0069】
この原理は、点線704により示されるように、長さにおいて延長されることができるリセス23にも適用されることができる。追加的な適切なコンデンサ706によってリセス23のこの延長された部分704を架橋することにより、この部分704は、非共鳴とされることができ、従って、渦電流バリアとしても機能する。結果的に、リセス23だけが、所望の態様において共鳴する。
【0070】
図8は、スロット線アンテナ200のアレイを示す。各アンテナは、別々のバラン800及び整合回路802及び個別のパワー増幅器804を備える。斯かるアレイは、マルチ要素送信/受信能力を提供する。これは、従来のパラレル撮像技術、及び/又はMR撮像装置1の検査ボリューム21へのマルチアンテナ要素励起RF場の提供と組み合わせて用いられることができる。複数の個別のスロットアンテナの組合せは、撮像される対象物10に対して励起場が最適に形成されるよう、例えば送信モードにおいて用いられることができる。
【0071】
図9は、誘電物質25と組み合わせたスロット線アンテナ構造200の様々な実施形態を示す。図9aにおいて、スロット線アンテナ200は、誘電物質25で充填される。図9bにおいて、スロット線構造は、誘電物質25において実現され、図9cにおいて、スロット線構造200は、誘電物質25の表面に置かれる。スロット線構造200及び誘電物質25の組合せは、チューニング及び/又は整合が最適化されるよう実行されることができる。
【0072】
図10は、スロット線アンテナ200に関する異なる離調戦略を示す。離調は、例えばRF送信のためだけの、又はRF受信のためだけのスロット線アンテナ200を用いるとき、使用されることができる。図10aにおいて、インダクタは、スロット23のチューニングコンデンサ19に並行に切り替えられることができる。代替的に、図10bに示されるように、チューニングコンデンサ19は、インダクタを用いて短絡されることができる。ダイオードバイアスを提供するDCワイヤは、RFチョークを用いて止められることができる。
【0073】
マルチ要素送信/受信能力を提供するのに複数のスロット線アンテナが用いられる場合、個別のスロット線アンテナのリセスの間の適切なインピーダンスを実現する、個別のアンテナの間のデカップリングネットワークが、挿入されることができる点に留意されたい。代替的に、誘導的なデカップリングが、この目的のために用いられることもできる。
【0074】
図11は、分割されたグラジエントコイルを持つMRシステムにおけるスロット線アンテナを示す。図11に示されるMRシステム1は、管形状のグラジエントコイル1100及び1104を有する。ここで、図11は、上記グラジエントコイルの長手方向断面のみを示す。MRシステムは更に、グラジエントコイル1100及び1104の間に配置されるRFシールド1102を有する。グラジエントコイル1104は、2つの半分を有する分割されたグラジエントコイルである。この場合、これらの2つの半分の間にリセスが形成される。このリセスは、インナーボア直径をRFアンテナの存在から解放するグラジエントコイル1104の2つの半分の間に取り付けられる1つ又は複数のアンテナで充填される。
【0075】
別の実施形態が、グラジエントコイル1200にリセスを持つMRシステムにおけるスロット線アンテナ200を示す図12を参照して示される。結果として、検査ボリューム21は、自由にアクセス可能であり、従って、円筒状MR磁石システムの両側から患者テーブル202上で検査ボリューム21内に配置される患者10に対するアクセスを可能にする。更に、検査ボリューム21を持つインナーボアが、解放され、従って検査ボリューム21に対して多くの空間が提供される。
【0076】
図13は、本発明によるMR撮像システム1を通る長手方向切断を示す。このシステムは、超伝導又は抵抗性の主磁石コイル2(図1を参照)を有する。更に、MR撮像システム1(図1を参照)のグラジエントコイル4、5及び6が、患者テーブル202が配置される検査ボリューム21を囲む円筒状体26上又は内に配置される電気導体(図示省略)を有する。RFアンテナ9の導電性プレート22は、円筒状体26の湾曲に整合する態様で曲げられる。RFアンテナ9は、グラジエントコイル体26の形状に対応するよう形成され、最大限自由な空間が磁石のインナーボア内で得られるよう、グラジエントコイル体26に直接隣接して構成される。図11に関して議論されたのと同様に、円筒状グラジエントコイル体26は、検査ボリューム21の長手方向軸(z軸)に沿ってここで分割される。導電性プレート22におけるリセス23は、グラジエントコイル体26の分割された部分の間のギャップに沿って延在する円周スロットとして形成される。
【0077】
上述したスロット線アレイ構造及びMRシステムへの組み込みのいずれかが、既知の局所表面受信コイルと組み合わせられることができる点に留意されたい。
【0078】
図14は、スロット線アンテナの代わりに、指向性アンテナ1400が用いられるMR撮像システム1の追加的な実施形態を示す。指向性アンテナ1400は、検査ボリューム21の方へ向けられる指向性アンテナ特性を有する。これにより指向性アンテナ1400は、図1におけるRFアンテナ9に対応する。指向性アンテナ1400は、組み込みRFモジュールを有することができる。このモジュールはここでも、例えば、送信のためのパワー増幅器、受信のためのプリアンプ、送信/受信スイッチ、アナログデジタル変換器、又は、他の任意の種類のRFモジュール要素を有する。好ましくは、斯かるRFモジュールはここでも、アンテナ1400の近くに又はアンテナ上に配置される。
【0079】
図14から分かるように、指向性アンテナ1400は、検査ボリューム21の外側に配置され、円筒状磁石システム2及びグラジエントシステム4の外側にさえ配置される。アンテナ1400の指向性特性により、このアンテナは、円筒状磁石システム2のオープンエンド1402又は1404を物理的にブロックしていない。結果的に、検査ボリューム21はやはり、自由にアクセス可能である。
【0080】
本発明の追加的な実施形態によれば、磁石のオープンエンドは傾けられる。この場合、アンテナ1400は、磁石2の傾斜した部分の表面1406に含まれることができる。この場合も、アンテナ1400は、磁石2のオープンエンド1402又は1404をブロックせず、従って、検査ボリューム21に対する自由なアクセスが可能にされる。
【0081】
図15は、支持部1500上で金属アレイ構造1502から成る指向性アンテナ1400を示す。本発明の実施形態において、支持部1500は、誘電層とする、又は誘電層を有することができる。この誘電層は、アンテナの電気的長さ及びサイズを短くすることを可能にする。結果的に、アンテナは、誘電物質内部に又はこの上に配置される。一般に、指向性アンテナは、検査ボリューム21の様々な領域に対して励起エネルギーの空間選択的な印加を可能にするメインビームの方向のゲインより大きなゲインを示すような態様で設計されるべきである。指向性アンテナ1400が、磁石のインナーボアにおける導波管と組み合わせて好ましくは用いられることができる点に留意されたい。磁石のインナーボアにおける導波管は特に、検査ボリューム21においてかなり一様なRF場分布が要求される場合に適切である。
【0082】
図14及び図15に示されるアンテナ1400は、例えばいわゆるヤギアンテナである。しかしながら、任意の種類の適切な指向性アンテナが用いられることができる。個別のアンテナ構造の個別の要素の異なるパターンが適用されることができる。例えば図16は、ヤギ構造の個別の要素の異なるパターンを示す。図16aにおいて、ヤギアンテナの双極子はまっすぐな導体である。この場合、図16bにおいて、このアンテナ構造の双極子の一部は、螺旋態様において構成される。図16cにおいて、アンテナ構造の双極子は、螺旋態様において完全に構成される。結果的に、斯かるヤギタイプのアンテナの幅、即ち双極子方向のアンテナの長さは、図16aと比較して図16b及び16cにおいて短くされる。
【0083】
図17において、ヘリカルアンテナ設計が示される。この場合、アンテナ特性は、方向1700の方へ向けられる。図17には示されていないが、個別の反射鏡が存在し、この鏡は、ヘリカルアンテナ構造の1つの端部で必要とされる場合がある。
【0084】
図18は、円形又は楕円形に分極された励起を持つRF場を生み出すヤギアンテナを示す。斯かるアンテナ設計は、×印の付いた双極子1800及び×印の付いた双極子1800の各双極子に提供されるRFパワーの個別の制御を用いて、方向1700における励起が、高い精度で制御されることができるという利点がある。例えば、ホストコンピュータ15(図1)の制御下で分極された励起の方向を個別に回転させることが可能である。結果的に、MRシステム1(図1)の検査ボリューム21内の励起が、高い精度かつ所望の態様で制御されることができる。
【0085】
図19は、ヤギアンテナ1900及び円形進行波構造1902の組合せを示す。ヤギアンテナ及び進行波構造は共に、ここでも個別のアンテナ要素の長さを短くするため、誘電層及び支持部1904に含まれることができる。誘導的結合円形ループ(又は、楕円ループ)の代わりに、進行波構造としてバードケージコイル構造体が用いられることができる点に留意されたい。
【0086】
図20は、複数の個別の指向性アンテナ、例えばヤギアンテナの組合せを示す。個別のアンテナ1400が、RF信号送信及び/又は受信目的のために用いられることもできる。複数の個別の指向性アンテナ1400を使用することにより、例えばMR励起のため、個別のアンテナが、異なる振幅又は位相でRF信号を提供することができる。こうして、組合せにおいて最適化された励起が与えられる。結果的に、検査ボリューム21における励起場が、時間のかかるアンテナ1400の手動による空間再配置を必要とすることなく、磁石の外側からホストコンピュータ15の制御の下で形成されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像システムであって、
検査ボリューム内の一様な、安定した磁場を生成する主磁石と、
少なくとも1つの進行モードにおいて前記検査ボリュームの軸に沿って進行するRF波を誘導するRF導波管と、
前記検査ボリュームに配置される患者の体にRFパルスを送信し、及び/又は前記体からMR信号を受信する少なくとも1つのRFアンテナであって、前記RFアンテナが、前記RF導波管の前記少なくとも1つの進行モードに結合するよう構成され、前記検査ボリュームが自由にアクセス可能であるよう、前記RFアンテナは、前記撮像システムに配置される、少なくとも1つのRFアンテナと、
RFパルスの時間的連続性を制御する制御ユニットと、
前記受信されるMR信号からMR画像を再構成する再構成ユニットとを有する、磁気共鳴撮像システム。
【請求項2】
前記RFアンテナが、患者テーブルの下に配置される、又は患者テーブルに一体化され、前記患者テーブルの上に前記患者の体が配置される、請求項1に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項3】
前記RFアンテナが、少なくとも1つのリセスを持つ電気導電的プレートにより形成される、請求項1又は2に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項4】
前記リセスの形状、サイズ及び/又は位置が機械的に可変である、請求項3に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項5】
前記導電性プレートの前記少なくとも1つのリセスが、1つ又は複数のPINダイオード及び/又は1つ又は複数のコンデンサにより架橋される、請求項3又は4に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項6】
前記システムが、前記検査ボリューム内の異なる空間方向において切り替えられた傾斜磁場を生成する複数のグラジエントコイルを更に有し、前記グラジエントコイルは、前記検査ボリュームを少なくとも部分的に囲む湾曲した体上に又は体内に構成される電気導体を有し、前記RFアンテナの導電性プレートは、前記湾曲した体の湾曲に整合する態様で曲げられ、前記RFアンテナが、前記湾曲した体に隣接して配置される、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項7】
前記湾曲した体が、前記検査ボリュームの軸に沿って分割される、請求項6に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項8】
前記RFアンテナが、非ディスクリート要素だけを用いてRF周波数に対してチューニングされる、請求項3又は4に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項9】
前記RFアンテナが、指向性アンテナであり、前記指向性アンテナは、前記検査ボリュームの方へ向けられる指向性アンテナ特性を有する、請求項1に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項10】
前記RFアンテナが、前記検査ボリュームの外側に配置される、請求項9に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項11】
前記RFアンテナが、前記検査ボリュームの方へ向けられる前記アンテナ特性を提供する周期的アンテナ構造を有する、請求項9又は10に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項12】
前記磁気共鳴システムが、RFアンテナのフェーズドアレイを有する、請求項9乃至11のいずれかに記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項13】
前記RF導波管が、前記検査ボリュームを囲むオープンエンドの管により形成される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項14】
前記管が、選択された進行モードにおいて進行するRF波を誘導することを可能にするよう構造化された電気導電的パターンを有する、請求項13に記載の磁気共鳴撮像システム。
【請求項15】
磁気共鳴撮像システムに関するRFアンテナであって、前記RFアンテナが、少なくとも1つのリセスを持つ電気導電的プレートにより形成される、RFアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16a−16c】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−505764(P2013−505764A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530384(P2012−530384)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054136
【国際公開番号】WO2011/036603
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】