説明

自由高低暗渠側溝

【課題】プレキャストコンクリートU形側溝と掛蓋とを用い自由高低暗渠側溝を構築する。すなわち、U形側溝の上部で掛蓋を載置しても上載荷重によって偏心モーメントが側壁に生じない組合せ構造を得る。
【解決手段】ステップ7と胸壁4とで上部が内側へクランク状側壁3のU形側溝1を用い、両側壁直上ステップ部に現場打設した高低調整コンクリート8の小段9を支承にしてU形側溝1と同じ幅のフランジ付き掛蓋2をブリッジ状に載置し、フランジ5の中心軸とU形側溝側壁3の中心軸とを一致させる自由高低暗渠側溝。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の排水施設としてプレキャストコンクリートU形側溝と掛蓋とを用いて形成する自由高低暗渠側溝に関する。
【背景技術】
【先行技術文献】
【0002】
従来、下部を開放した門形のプレキャスト側溝本体により、底部を現場打コンクリートで形成する自由勾配暗渠側溝が用いられている。
この従来工法は側溝本体の高さが固定され、内空高のみ底部の調整によって変化するので本体設置後は路面計画高との調整が出来ず、さらに経年による破損修繕等において本体構造が門形のため、上部のみの切除改築は不可能でライフサイクルコストが割高となる。
これに対して、U形側溝の上部で掛蓋の載置高さを調節し、暗渠側溝自体の高さを自由高低に形成する工法も落し蓋U形側溝の部分改良等によって実用化がすすんでいる。
【0003】
【特許文献1】 特開2001−317115号公報
【特許文献2】 特開2001−123519号公報
【発明の概要】

【発明が解決しようする課題】
【0004】
U形側溝と掛蓋とを用い自由高低暗渠側溝とする工法は、本体設置後の路面計画高との調整が出来、経年による修繕改築等も埋設下部を温存したまま上部の補修や更新が可能で、ライフスタイルコストが軽減するが、さらに、U形側溝本体と掛蓋との高さ調整だけでなく、同時に上載荷重に対しても最小の部材で足りる構造とし、軽量化をはかることである。
現在、落し蓋U形側溝部分改良においては、掛蓋を側溝本体側壁からコーベル構造張出し部上の調整コンクリートで側壁中心軸からずれて支持するため、偏心上載荷重による曲げモーメントが生じ側壁厚さが過大に必要となる。
すなわち、U形側溝の上部で掛蓋を載置しても上載荷重によって偏心モーメントが側壁に生じない組合せ構造を得ることも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
両側上部の調整コンクリート分を加味した位置にステップを設け、内側に立つ胸壁とでクランク状断面の側壁とするU形側溝を用い、基礎上に排水勾配に合わせて布設したのち、ステップ上胸壁伝いに暗渠上面の計画高さに対応した調整コンクリートを打設する。
そして、U形側溝両側上部ステップ上の調整コンクリート両小段を支承にしてフランジ付き掛蓋をブリッジ状に載置して上部で側溝全体を覆い自由高低に暗渠側溝を形成するものである。
【0006】
掛蓋の脚となるフランジは側壁を兼ねており、通水部内側沿いの胸壁に近接し、高さ調整コンクリート小段上にU形側溝の側壁と同一中心軸で位置する。
そして、自立する掛蓋のフランジは埋設土に面する外壁であると同時に設計荷重を支持する構造部材となる。
【発明の効果】
【0007】
U形側溝の側壁は胸壁部分に荷重負担が生じなく、構造材としては高さが胸壁を加味しないステップ以下と低く限定されるため、横荷重の曲げに有利であると同時に上面からの設計荷重も掛蓋フランジと同一軸で偏心がなく、側壁厚さが節減出来、軽量で釣合のとれた暗渠構造となる。
そして、外側沿いステップ上での調整コンクリート打設およびフランジ付き掛蓋の載置が最上部での作業となり、自由高低暗渠側溝の形成が容易確実で資材構造、施工費全体として安価に築造できる。
【0008】
従来の門形構造自由勾配側溝では不可能な路面設計条件の経年変化にも適合し、U形側溝本体を変えずにフランジ付き掛蓋の更新や形状の多様化によって、改築や維持長寿化も可能で、ライフサイクルコストが軽減する。
【0009】
掛蓋上面の設計荷重は、調整コンクリートを介してU形側溝全体に伝達され、均等支持の安定構造となる。
そして、側圧および衝撃荷重は上辺部分が掛蓋フランジによって減殺され、U形側溝自体の安定が向上する。
【0010】
掛蓋は、1種類で同一幅のU形側溝深さ規格品すべてに組合せて高さ調整に対応すると同時に、U形側溝本体の上辺を覆って保護し、外側面からのレベル調整も容易に出来、ガタツキ音が生じない。
また、埋戻しによってフランジ付き掛蓋自体も安定した自由高低暗渠側溝構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 街渠用掛蓋を用いた自由高低暗渠側溝の実施例を示す切欠斜面図である。
【図2】 スリット付掛蓋を用いた自由高低暗渠側溝の実施例を示す切欠斜面図である。
【図3】 図1のA〜A線にそった断面図である。
【図4】 図2のB〜B線にそった断面図である。
【図5】 図1の実施例におけるU形側溝及び掛蓋の斜面図である。
【図6】 図2の実施例におけるU形側溝及び掛蓋の斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
U形側溝は内幅30〜60cm内高10cm刻みで30〜120cm長さ1m、2m等のプレキャストコンクリートにより、基礎上に水路勾配に合わせて布設される。
そして、胸壁両外側高さ伝いステップ上に暗渠側溝上面完成計画高さに載置する予定の掛蓋フランジの底面に対応せしめて打設したモルタルないし調整コンクリートが硬化したのち、U形側溝を覆いフランジ付き掛蓋をブリッジ状に載置する。
掛蓋の側壁と脚を兼ねるフランジの底面は調整コンクリート小段の敷モルタルによって水密が確保された構造の自由高低暗渠側溝全体が形成される。
【0013】
U形側溝は、両側壁が上部のステップ内側で胸壁がクランク状に立上っており、外側沿いステップ上胸壁高さ伝いに調整コンクリートを打設するが、ステップは側壁厚さと一致し、調整コンクリートを介して載置する掛蓋フランジとも中心軸が同一となる。
【0014】
掛蓋はU形側溝と同一幅とし、両フランジで側溝本体の両側調整コンクリート小段上に載置して両外側が垂直壁のボックス形暗渠側溝全体を形成する。
U形側溝の胸壁は掛蓋両フランジ間に自由端で立上り、寸法例としては、高さ16.5cmで、載置する掛蓋のフランジ高さはこれにプラス1cmほど余裕分を加味した組合せが一般的である。
この場合、予定する高低は0〜10cmで、その内訳は調整コンクリート0〜10cm、敷モルタル1.5cm、胸壁とフランジの重なり代15〜5cmとなる。
なお、胸壁の厚さはステップ部の側壁以下で足り、胸壁自体掛蓋フランジで覆われているため、外圧荷重の負担は無く、構造上十分なものとなる。
【実施例】
【0015】
図1、図2に実施例の施工状態を示す。
図1は街渠用掛蓋を用いた実施例であり、図2はスリット付掛蓋を用いた実施例である。
(1)はU形側溝、(2)は掛蓋である。
U形側溝(1)は図3、図4に示すとおり両側側壁(3)(3)上部内側沿いに胸壁(4)(4)があり、調整コンクリート分を加味した低い位置にステップ(7)(7)を設けてある。
U形側溝(1)は、基礎(30)の上に排水勾配に合わせて布設する。
胸壁(4)は、通水内面沿いに立設し、ステップ(7)上胸壁高さ伝いに調整コンクリート(8)を打設して、載置する掛蓋(2)の高さに合わせて小段(9)を設けU形側溝本体を形成する。
なお、ステップ(7)上に直接掛蓋(2)を載置し、固定高さでの組合せとすることも可能である。
そして、掛蓋(2)を連続載置して自由高低暗渠側溝を構築するのであるが、この場合、小段(9)上にプラスチック、鉄板片などのライナー(21)でレベル調整したのち、モルタル(20)をやや厚めに敷いて据付する。
なお、レベル再調整等は掛蓋載置後でも外側面から容易に作業出来る。
【0016】
U形側溝(1)は、図5、図6に示すとおり長さ1m、2m等のプレキャスト製品として供給される。
この実施例の図2、図4、図6に示すものは、ステップ(7)に長さ方向等間隔の埋込インサート(23)にアンカー(22)を建て調整コンクリート(8)の支圧強度に寄与せしめている。
【0017】
掛蓋(2)は、図5、図6に示すとおり長さ1m、2m等のプレキャスト製品として供給される。
掛蓋(2)は、U形側溝と同一幅で両側に側壁と脚を兼ねるフランジ(5)(5)を有し、調整コンクリートの小段(9)(9)を支承にしてU形側溝(1)を覆いブリッジ状に載置され両外側が垂直壁のボックス形暗渠側溝全体を形成している。
フランジ(5)、(5)の内面間隔はU形側溝の両胸壁(3)、(3)にほぼ外接するものとし、曲線施工や施工誤差に対する余裕分として例えば1〜3cmの間隙を加味してある。
さらにフランジ(5)は上載荷重及び側圧荷重の条件に対応した厚さ強度を具備している。
【0018】
図1、図3は街渠用で歩車道境界ブロック(31)をセットした実施例である。
図2、図4、図6の実施例は、スリット(10)を固定梁(11)によって連続状態に設けた掛蓋(2)で、さらにフランジ(5)(5)の各内側に凸条(6)(6)を設けている。
凸条(6)は調整コンクリート最大高さでも小段(9)上に載置した段階で胸壁(4)の天端をフランジ(5)との間に収納し、全通水断面をU形側溝胸壁内で確保するものであり、調整コンクリート最大高さにおいて通常胸壁(4)との重なり代1〜1.5cmで、フランジより低高としている。
【産業上の利用可能性】
【0019】
暗渠側溝は一般のヒューム管やボックスカルバートのように土中に全体埋設されるものでなく、車道部、歩道部等の側溝を兼ねた排水構造物であり、経年による破損は路面や上辺部分のみに生じやすい。
従来の自由勾配側溝は、当初施工時のみ底部自由排水勾配に適合するものの、改修時には門形構造のため上辺部分は除去できず、路面との現場合せ高低調整も困難で、維持管理に限界がある。
しかし、掛蓋のみ更新できる本発明によればU形側溝を温存出来、維持管理等長寿命化によりライフサイクルコストが低減する。
とりわけ道路沿いに商店や民家が密集していると地表面の人工化が進み、暗渠上面の現場の変化に合せて施工する必要があるので、U形側溝による自由高低暗渠側溝が最適で、生産供給においても在来の道路用コンクリート製品と同等に安価に流通する。
【符号の説明】
【0020】
1 U形側溝
2 掛蓋
3 側壁
4 胸壁
5 フランジ
6 凸条
7 ステップ
8 調整コンクリート
9 小段
10 スリット
11 固定梁
20 モルタル
21 ライナー
22 アンカー
23 インサート
30 基礎
31 歩車道境界ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステップと胸壁とで上部が内側へクランク状側壁のU形側溝を用い、両側壁直上ステップ部に現場打設した高低調整コンクリートの小段を支承にしてU形側溝と同じ幅のフランジ付き掛蓋をブリッジ状に載置し、フランジの中心軸とU形側溝側壁の中心軸とを一致させることを特徴とする自由高低暗渠側溝。
【請求項2】
掛蓋の両フランジ各内側をフランジと平行する凸条付きとし、調整コンクリート上に載置した段階で両胸壁の天端がフランジと凸条の間に収納され、全通水断面をU形側溝内のみで形成することを特徴とする請求項1記載の自由高低暗渠側溝。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−52399(P2012−52399A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208500(P2010−208500)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(503234115)
【Fターム(参考)】