説明

自発光型表示装置

【課題】負極性のビデオ信号と正極性のビデオ信号の両方に対応可能な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL表示装置は、デジタルビデオ信号の極性を切り替える極性切替回路28を備えている。この極性切替回路28は、表示パネル10が負極性のビデオ信号に対応したものである場合に、負極性のデジタルビデオ信号が入力されると、極性反転を行わずにそのまま通す。正極性のデジタルビデオ信号が入力されると、デジタルビデオ信号の極性を反転するとともに、正しい反転画像を得るために、白レベルと黒レベルに対応したリファレンスデータを反転して入れ替える。極性切替回路28の出力は第1のD/A変換器29を通してアナログビデオ信号に変換され、表示パネル10に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自発光型表示装置に関し、例えば、自発光素子として有機エレクトロルミネッセンスEL素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTやLCDに代わる表示装置として、自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略称する)を用いた有機EL表示装置が開発されている。特に、ビデオ信号に応じて有機EL素子を駆動する駆動トランジスタを備えたアクティブマトリクス型の有機EL表示装置が開発されている。
【0003】
有機EL表示装置に入力されるビデオ信号の種類として、一般に、負極性のビデオ信号と正極性のビデオ信号とがあるが、従来は、それぞれの極性のビデオ信号に個別に対応した有機EL表示装置が必要とされていた。
【0004】
図5は、負極性のビデオ信号に対応した有機EL表示装置の一画素の回路図である。データラインDLに印加された負極性のビデオ信号は、ゲートラインGLからのゲート信号によってオンオフが制御されたNチャネル型の画素選択トランジスタ1を通して、Pチャネル型の駆動トランジスタ2Aのゲートに印加される。すると負極性のビデオ信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタ2Aに流れ、この駆動電流が有機EL素子3に供給される。この駆動電流が大きくなるほど、有機EL素子3は高い輝度で発光7することになる。
【0005】
負極性のビデオ信号では、高電位側のリファレンス電位Ref(H)が黒レベルに対応しており、低電位側のリファレンス電位Ref(L)が白レベルに対応している。そのため、駆動トランジスタ2AをPチャネル型に設定し、負極性のビデオ信号はそのレベルが低いほど駆動トランジスタの駆動電流が大きくなるようにしている。
【0006】
一方、図6は、正極性のビデオ信号に対応した有機EL表示装置の一画素の回路図である。データラインDLに印加された正極性のビデオ信号は、ゲートラインGLからのゲート信号によってオンオフが制御されたNチャネル型の画素選択トランジスタ1を通して、Nチャネル型の駆動トランジスタ2Aのゲートに印加される。すると正極性のビデオ信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタ2Aに流れ、この駆動電流が有機EL素子3に供給される。この駆動電流が大きくなるほど、有機EL素子3は明るく発光7することになる。
【0007】
正極性ビデオ信号では、高電位側のリファレンス電位Ref(H)が白レベルに対応しており、低電位側のリファレンス電位Ref(L)が黒レベルに対応している。そのため、駆動トランジスタ2AをNチャネル型に設定し、正極性のビデオ信号はそのレベルが高いほど駆動トランジスタの駆動電流が大きくなるようにしている。
【特許文献1】特開2003−228328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、負極性のビデオ信号と正極性のビデオ信号に個別に対応した有機EL表示装置が必要とされていた。すなわち、負極性のビデオ信号に対応した図5の有機EL表示装置では、正極性のビデオ信号に対応することができず、正極性のビデオ信号に対応した図6の有機EL表示装置では、負正極性のビデオ信号に対応することができなかった。そこで、本発明は負極性のビデオ信号と正極性のビデオ信号の両方に対応可能な有機EL表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自発光型表示装置は、第1の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、この第1の極性のデジタルビデオ信号を反転することなく出力し、第1の極性と逆極性の第2の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、この第2の極性のデジタルビデオ信号を反転して出力するように切り替える第1の極性切替回路と、この第1の極性切替回路の出力をD/A変換してアナログビデオ信号を出力する第1のD/A変換器と、自発光素子と、前記アナログビデオ信号に応じて前記自発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタとを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記第1のD/A変換器に用いられる高電位側のリファレンス電位を発生する第2のD/A変換器と、前記第1のD/A変換器に用いられる低電位側のリファレンス電位を発生する第3のD/A変換器と、第1の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、第1の極性のデジタルビデオ信号の高電位側のリファレンスデータを前記第2のD/A変換器に入力し、第1の極性のデジタルビデオ信号の低電位側のリファレンスデータを前記第2のD/A変換器に入力し、第2の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、第2の極性のデジタルビデオ信号の高電位側のリファレンスデータを反転して前記第3のD/A変換器に入力し、第2の極性のデジタルビデオ信号の低電位側のリファレンスデータを反転して前記第2のD/A変換器に入力するように切り替える第2の極性切替回路を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自発光表示装置によれば、負極性のビデオ信号か、正極性のビデオ信号かに応じて、ビデオ信号の極性を切り替えることで、両方の極性のビデオ信号に対応可能な有機EL表示装置を提供することが可能になる。特に、負極性ビデオ信号か、正極性ビデオ信号かに応じて、白レベルと黒レベルを入れ替えているので、正しい反転画像を表示することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態に係る自発光型表示装置の構成について図面を参照して説明する。この自発光表示装置は、図1のブロック図に示すように、図5又は図6の画素がマトリクス状に配列された画素領域を含む表示パネル10と、外部から入力されたRGBのデジタルビデオ信号に対して信号処理を施す各種のビデオ信号処理回路(シリアル/パラレル変換器21、RGBマトリクス22、選択回路23、色補正回路24、コントラスト/ブライトネス調整回路25、ガンマ補正回路26、ACL回路27)、信号処理が施されたデジタルビデオ信号等の極性切り替えを行う極性切替回路28、極性切替回路28からのRGBビデオ信号をD/A変換する第1のD/A変換器29、極性切替回路28からの高電位側のリファレンスデータをDA変換する第2のD/A変換器30、極性切替回路28からの低電位側のリファレンスデータをDA変換する第3のD/A変換器31を備えている。そして、第1のD/A変換器29の出力であるRGBのアナログビデオ信号が表示パネル10の各画素に供給される。
【0013】
以下、各回路の構成と動作について説明する。シリアル/パラレル変換器21は、シリアル信号であるRGBのデジタルビデオ信号、及び輝度信号と色差信号とからなるYUV信号をパラレル信号に変換する。このパラレル信号のうちYUV信号は、RGBマトリックス22によってRGBのデジタルビデオ信号に変換される。シリアル/パラレル変換器21から出力されたRGBデジタルビデオ信号、もしくはRGBマトリックス22によってYUV信号から変換されたRGBデジタルビデオ信号は、選択回路23によっていずれか1つ選択されて出力される。
【0014】
選択回路23からのデジタルビデオ信号は、所定の色補正を行う色補正回路24に入力される。色補正回路24によって色補正されたデジタルビデオ信号は、そのコントラストや明るさを調整するコントラスト/ブライトネス調整回路25に入力される。コントラスト/ブライトネス調整回路25によってコントラスト及びブライトネス(明るさ)が調整されたデジタルビデオ信号は、ガンマ補正を行うガンマ補正回路26に入力される。ガンマ補正回路26によってガンマ補正されたデジタルビデオ信号は、極性切替回路28に入力される。
【0015】
また、ガンマ補正されたデジタルビデオ信号は、ACL回路33に入力される。ACL回路27は、表示パネル10の輝度を抑制するために、デジタルビデオ信号の白レベルを調整する回路である。ACL回路27から出力される低電位側のリファレンスデータは極性切替回路28に入力される。また、色補正回路24から出力された高電位側のリファレンスデータも極性切替回路28に入力される。
【0016】
極性切替回路28は、表示パネル10の特性に合わせて、上記デジタルビデオ信号の極性を反転するとともに、正しい反転画像を得るために、白レベルと黒レベルを入れ替える機能を有している。
【0017】
図2は負極性のデジタルビデオ信号が入力された場合の極性切替回路28の具体的な回路図である。また、図4は、正極性のデジタルビデオ信号が入力された場合の極性切替回路28の具体的な回路図である。極性切替回路28は、デジタルビデオ信号の極性を反転する機能を有する第1の極性切替回路28Aと、高電位側/低電位側のリファレンスデータを入れ替えてその極性を反転する機能を有する第2の極性切替回路28Bを備えている。また、図2、図4は、RGBのデジタルビデオ信号、リファレンスデータのうち、1色についての極性切替回路の構成を示している。
【0018】
いま、表示パネル10が負極性のビデオ信号に対応したもの(図5の画素を有した表示パネル)であるとして、この極性切替回路28の動作を説明する。いま、図2に示すように、負極性のデジタルビデオ信号がガンマ補正回路26を通して第1の極性切替回路28Aに入力されると、モード切替信号に応じて、スイッチSWが切り替わり、第1の極性切替回路28Aの非反転アンプ281を通して、第1のD/A変換器29に入力される。つまり、負極性のデジタルビデオ信号は反転されることなく、そのまま第1のD/A変換器29に入力される。
【0019】
また、色補正回路24からの高電位側のリファレンスデータは、黒レベルに対応しており、例えば8ビットのデジタルデータである。高電位側のリファレンスデータは、非反転アンプ282を通して第2のD/A変換器30に入力される。また、ACL回路27からの低高電位側のリファレンスデータが白レベルに対応しており、例えば8ビットのデジタルデータである。低高電位側のリファレンスデータは、非反転アンプ283を通して第3のD/A変換器31に入力される。つまり、これらのリファレンスデータも反転されることなく、それぞれ第2のD/A変換器30、第3のD/A変換器31に入力される。
【0020】
第1のD/A変換器29は、図3の回路のように、デジタルビデオ信号が9ビットのデジタルデータから成る場合には、(2−1)個のラダー抵抗を有しており、このラダー抵抗の両端に第2のD/A変換器30からの高電位側のリファレンス電位Ref(H)、第3のD/A変換器31からの高電位側のリファレンス電位Ref(L)がそれぞれ印加される。そして、デジタルビデオ信号に応じて、ラダー抵抗によって分圧された512個の電位(V1,V2,・・・V512)のうち、いずれかの電位がアナログスイッチ+ラッチ回路291によって選択され、かつ保持される。この保持された電位がアナログアンプ292を通してアナログビデオ信号として出力される。
【0021】
次に、図4に示すように、正極性のデジタルビデオ信号が第1の極性切替回路28Aに入力された場合には、モード切替信号に応じて、スイッチSWが切り替わり、第1の極性切替回路28Aの反転アンプ284を通して、第1のD/A変換器29に入力される。つまり、正極性のデジタルビデオ信号は反転された後、第1のD/A変換器29に入力される。反転アンプ284は、正極性のデジタルビデオ信号の各ビットの2値データ(「1」又は「0」)を反転する。つまり、あるビットの2値データが「1」のときは「0」に反転し、「0」のときは「1」に反転する。
【0022】
また、色補正回路24からの高電位側のリファレンスデータは白レベルに対応に対応しており、反転アンプ285を通して第3のD/A変換器31に入力される。また、ACL回路27からの低高電位側のリファレンスデータは黒レベルに対応しており、反転アンプ286を通して第2のD/A変換器30に入力される。ここで、反転アンプ285,286は、リファレンスデータの各ビットの2値データ(「1」又は「0」)を反転する。そして、第1のD/A変換器29からアナログビデオ信号が出力される。
【0023】
このように、極性切替回路28は、表示パネル10が負極性のビデオ信号に対応したものである場合には、負極性のデジタルビデオ信号が入力されると、極性反転を行わずにそのまま通し、正極性のデジタルビデオ信号が入力されると、デジタルビデオ信号の極性を反転するとともに、正しい反転画像を得るために、白レベルと黒レベルに対応したリファレンスデータを反転して入れ替える。
【0024】
なお、表示パネル10が正極性のビデオ信号に対応したもの(図6の画素を有した表示パネル)である場合には、極性切替回路28は、反対に、正極性のデジタルビデオ信号が入力された場合には、極性反転を行わずにそのまま通し、負極性のデジタルビデオ信号が入力された場合には、デジタルビデオ信号の極性を反転するとともに、白レベルと黒レベルに対応したリファレンスデータを反転して入れ替える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る自発光型表示装置のブロック図である。
【図2】図1の極性切替回路28の回路図である。
【図3】図2の第1の極性切替回路28Aの回路図である。
【図4】図1の極性切替回路28の回路図である。
【図5】負極性ビデオ信号に対応した有機EL表示装置の一画素の回路図である。
【図6】正極性ビデオ信号に対応した有機EL表示装置の一画素の回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1 画素選択トランジスタ 2A,2B 駆動トランジスタ
3 有機EL素子 10 表示パネル
21 シリアル/パラレル変換器 22 RGBマトリクス
23 選択回路 24 色補正回路
25 コントラスト/ブライトネス調整回路 26 ガンマ補正回路
27 ACL回路 28 極性切替回路
28A 第1の極性切替回路 28B 第2の極性切替回路
29 第1のD/A変換器 30 第2のD/A変換器
31 第3のD/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、この第1の極性のデジタルビデオ信号を反転することなく出力し、第1の極性と逆極性の第2の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、この第2の極性のデジタルビデオ信号を反転して出力するように切り替える第1の極性切替回路と、
この第1の極性切替回路の出力をD/A変換してアナログビデオ信号を出力する第1のD/A変換器と、自発光素子とを備え、前記アナログビデオ信号に応じて前記自発光素子に駆動電流を供給することによって前記自発光素子を発光させることを特徴とする自発光型表示装置。
【請求項2】
前記駆動電流を供給する駆動トランジスタを備えることを特徴とする請求項1に記載の自発光型表示装置。
【請求項3】
前記第1のD/A変換器に用いられる高電位側のリファレンス電位を発生する第2のD/A変換器と、前記第1のD/A変換器に用いられる低電位側のリファレンス電位を発生する第3のD/A変換器と、
第1の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、第1の極性のデジタルビデオ信号の高電位側のリファレンスデータを前記第2のD/A変換器に入力し、第1の極性のデジタルビデオ信号の低電位側のリファレンスデータを前記第2のD/A変換器に入力し、第2の極性のデジタルビデオ信号を受けた場合には、第2の極性のデジタルビデオ信号の高電位側のリファレンスデータを反転して前記第3のD/A変換器に入力し、第2の極性のデジタルビデオ信号の低電位側のリファレンスデータを反転して前記第2のD/A変換器に入力するように切り替える第2の極性切替回路を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自発光型表示装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の極性のデジタルビデオ信号は、色補正回路、コントラスト/ブライトネス調整回路及びガンマ補正回路によって信号処理されたデジタルビデオ信号であることを特徴とする請求項3に記載の自発光型表示装置。
【請求項5】
前記ガンマ補正回路によって信号処理された前記第1及び第2の極性のデジタルビデオ信号に基づいて、白レベルを調整するための前記リファレンスデータを出力するACL回路を備えることを特徴とする請求項3に記載の自発光型表示装置。
【請求項6】
前記色補正回路は黒レベルを調整するための前記リファレンスデータを出力することを特徴とする請求項4に記載の自発光型表示装置。
【請求項7】
前記自発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の自発光型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−78772(P2007−78772A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−263298(P2005−263298)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】