説明

自穿孔ロックボルトおよびその施工方法

【課題】ロックボルトの周囲に設置されたモルタルを清浄に保つことができ、かつ迅速に施工することができる自穿孔ロックボルトおよびその施工方法を提供する。
【解決手段】自穿孔ロックボルト1は、削孔チップ11が植設された削孔ビット本体10と、削孔ビット本体10に連結されたロックボルト本体20と、削孔ビット本体10に軸方向に拘束され、かつ周方向に回転自在に設置されたケーシングシュー30と、ケーシングシュー30に連結された筒状のケーシング40と、を有している。ケーシング40は薄鋼板によって形成されたシース管(スパイラルシースパイプ)であって、外周に断面略三角形に突出する突条41が螺旋状に等しいピッチで形成されている。削孔の際、掘削土砂は削孔ビット本体10から削孔内に噴出する圧縮空気によってケーシング40の外面と削孔の内面との隙間を経由して地上に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自穿孔ロックボルトおよびその施工方法、特に、自穿孔ロックボルトを包囲するモルタルを具備する自穿孔ロックボルトおよびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロックボルトの施工方法は、外面にロープねじが形成された中空のロックボルトを用い、その先端に削孔ビット(複数の削孔チップが設置されている)を設置して、これを回転したり、またはこれに打撃を付与したりして地盤の削孔をするものであった。このとき、圧縮空気をロックボルトの内部を経由して先端から噴出し、掘削土砂をロックボルトの外面と削孔の内面との隙間を経由して地上に排出していた(吹き上げていた)。そして、所定の深さまで削孔が形成されたところで、該削孔内にモルタルを注入し、ロックボルトの周囲をモルタルで包囲していた。
【0003】
また、崩壊性地盤にロックボルトを設置する場合、削孔の内面の崩壊によって、ロックボルトの外面と削孔の内面との隙間が狭くなったり、または閉塞されたりして掘削土砂の排出が困難になるため、二重管削孔方式を応用した自穿孔ロックボルトが利用されていた。
すなわち、先端に削孔ビットが設置された中空のロックボルトを使用するに際し、削孔ビットに回転自在に外管を設置し、外管内にロックボルトが配置された状態で削孔し、圧縮空気をロックボルトの内部を経由して先端から噴出し、掘削土砂を外管内に取り込んで、ロックボルトの外面と外管の内面との隙間を経由して地上に排出するものである。
そして、所定の深さまで削孔が形成されたところで、外管の内外にモルタルを注入した後、外管を地上に回収したり(引き抜いたり)、一旦、外管の内側にねじ接続鋼管を挿入してから外管を地上に回収した後、ねじ接続鋼管の内外にモルタルを注入して、かつねじ接続鋼管を削孔内に残置していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−36390(第8−9頁、図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ロックボルトの施工方法は、いずれも、掘削土砂をロックボルトの外面と削孔の内面との隙間、あるいは、ロックボルトの外面と外管の内面との隙間、の何れか若しくはその両方を経由して地上に排出するものであるため、モルタルを注入する際、ロックボルトの外面に掘削土砂が付着しているという問題があった。このため、ロックボルトの周囲に設置されたモルタルに掘削土砂が混入し、水密性の悪化を招き、ロックボルトの腐食が進行するおそれが生じていた。なお、前記ねじ接続鋼管の内外にモルタルを注入した場合であっても、ねじ接続鋼管が腐食した後は、前記ロックボルトの腐食が進行するおそれがあった。
また、かかる施工は、外管の回収やねじ接続鋼管の挿入等が必要であるため、施工が煩雑になり、迅速性に欠けるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ロックボルトの周囲に設置されたモルタルを清浄に保ち、モルタルの水密性を維持することを目的とし、引いては、ロックボルトの腐食を防止することができる自穿孔ロックボルト、および自穿孔ロックボルトを迅速に施工することができる、自穿孔ロックボルトの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る自穿孔ロックボルトは、
削孔チップが設置された削孔ビット本体と、
該削孔ビット本体に連結され、軸方向に貫通する貫通孔を具備するロックボルト本体と、
前記削孔ビット本体に設置され、軸方向に拘束され、かつ周方向に回転自在なケーシングシューと、
該ケーシングシューに連結された筒状のケーシングと、
を有する自穿孔ロックボルトであって、
前記削孔ビット本体に、前記貫通孔に連通する通孔が形成され、
前記削孔ビット本体の回転または並進によって削孔が形成される際、該削孔の形成によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする。
【0008】
(2)前記(1)において、前記ケーシングが外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース管であることを特徴とする。
(3)前記(2)において、前記ケーシングが外面側に突出する螺旋状の突条を具備する複数のシース管から構成され、それぞれが外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース継手管によって連結され、前記シース管の突条の外面に前記シース継手管の突条の内面が嵌合、または前記シース管の突条の内面に前記シース継手管の突条の外面が嵌合することを特徴とする。
(4)前記(2)または(3)において、前記ケーシングシューの外面に螺旋状の突条が形成され、該突条の外面に前記シース管の突条の内面が嵌合することを特徴とする。
【0009】
(5)また、本発明に係る自穿孔ロックボルトの施工方法は、
削孔チップが設置された削孔ビット本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備するロックボルト本体を連結すると共に、前記削孔ビット本体に形成された通孔と前記貫通孔とを連結する工程と、
筒状のケーシングシューに外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース管を連結する工程と、
前記削孔ビット本体に、前記ケーシングシューを軸方向に拘束し、かつ周方向に回転自在に設置する工程と、
前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
所定の深さまで、削孔が形成された時点で、前記ロックボルト本体と前記ケーシングとの間にモルタルを注入する工程と、
を有し、
前記削孔の工程において、削孔によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする。
【0010】
(6)さらに、本発明に係る自穿孔ロックボルトの施工方法は、
削孔チップが設置された削孔ビット本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備する第1ロックボルト本体を連結すると共に、前記削孔ビット本体に形成された通孔と前記貫通孔とを連結する工程と、
筒状のケーシングシューに外面側に突出する螺旋状の突条を具備する第1シース管を連結する工程と、
前記削孔ビット本体に、前記ケーシングシューを軸方向に拘束し、かつ周方向に回転自在に設置する工程と、
前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
前記第1ロックボルト本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備する第2ロックボルト本体を連結すると共に、前記第1シース管に、外面側に突出する螺旋状の突条を具備する第2シース管を、外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース継手管によって連結する工程と、
さらに、前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
所定の深さまで、削孔が形成された時点で、前記第1ロックボルト本体および第2ロックボルト本体と前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングとの間にモルタルを注入する工程と、
を有し、
前記削孔の工程において、削孔によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る自穿孔ロックボルトは以上であるから、以下の効果を奏する。
(i)本発明に係る自穿孔ロックボルトは、掘削土砂が、通孔から噴出する空気によって、ケーシングの外面と削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されるから、ロックボルト本体に掘削土砂が付着することがない。したがって、ロックボルト本体とケーシングとの間に注入されたモルタルは清浄であって、水密性を具備するから、ロックボルト本体の防食効果を奏する。
また、ケーシングは削孔に並行して設置されるから、施工が簡素で迅速になる。さらに、削孔ビット本体が回転しても、ケーシングは回転しないから、掘削に要するトルクが増すことがない。
(ii)また、ケーシングが外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース管であって、薄肉・軽量でありながら所定の剛性を有するから、自穿孔ロックボルト(削孔ビット本体、ロックボルト本体、ケーシングシュー、およびケーシングが結合された状態)が軽量になるため、施工機械が小型になると共に、施工が容易かつ迅速になる。また、シース管の止水によって、ロックボルト本体の防食効果が助長される。さらに、シース管が安価であるから、これを地盤に残置しても施工コストがさほど上昇することがない。
(iii)また、ケーシングを構成する複数のシース管が、シース継手管によって連結され、それぞれの突条が嵌合するから、それぞれの連結が容易かつ堅固であるため、施工が迅速になると共に、施工の信頼性が向上する。
【0012】
(iv)また、ケーシングシューの外面に螺旋状の突条が形成され、該突条の外面にシース管の突条の内面が嵌合するから、ケーシングシューとシース管との連結が容易かつ堅固であるため、施工が迅速になると共に、施工の信頼性が向上する。また、ケーシングシューの外面への螺旋状の突条の形成が容易であるから、ケーシングシューの製造コストの上昇が防止される。
【0013】
また、本発明に係る自穿孔ロックボルトの施工方法は以上であるから、以下の効果を奏する。
(v)削孔の工程において、削孔によって生じた掘削土砂が、ケーシングの外面と削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されるから、ロックボルト本体に掘削土砂が付着することがない。したがって、ロックボルト本体とケーシングとの間に注入されたモルタルは清浄であって、水密性を具備するから、ロックボルト本体の防食効果を奏する。また、ケーシングは削孔に並行して設置されるから、施工が簡素で迅速になる。さらに、削孔ビット本体が回転しても、ケーシングは回転しないから、掘削に要するトルクが増えない。
(vi)さらに、第1ロックボルト本体に第2ロックボルト本体を連結すると共に、第1シース管に第2シース管をシース継手管によって連結するから、それぞれの連結が容易かつ堅固であるため、深い削孔であっても、施工が迅速になると共に、施工の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施の形態1−自穿孔ロックボルト]
図1〜図3は本発明の実施形態1に係る自穿孔ロックボルトを模式的に説明するものであって、図1は全体を示す一部を透視した側面図、図2、3は自穿孔ロックボルトを構成する各部材を示す一部断面の側面図である。
図1において、自穿孔ロックボルト1は、削孔チップ11が設置された削孔ビット本体10と、削孔ビット本体10に連結され、軸方向に貫通する貫通孔22を具備するロックボルト本体20と、削孔ビット本体10に設置され、軸方向に拘束され、かつ周方向に回転自在なケーシングシュー30と、ケーシングシュー30に連結された筒状のケーシング40と、を有している。
【0015】
(削孔ビット本体)
図2の(a)において、 削孔ビット本体10は、先端側(図中左側)が広がった略円錐台状の頭部12と、頭部12の後端側(図中左側)に続く筒状部15とを有している。頭部12の先端面(図中左側の面)には、削孔チップ11が放射状に設置され、頭部12の中心には、筒状部15の内部に連通する止まり孔13が形成され、止まり孔13には側面に開口した通孔14が連通している。なお、本発明は、削孔チップ11の設置の要領を限定するものではなく、冶金的に接合または機械的に取り付けても、あるいは、頭部12と一体的に形成(たとえば、鋳包や一体鋳造等)してもよい。また、通孔14の数量や配置は限定するものではなく、先端面に開口してもよい。
筒状部15の内面にはロープ左ネジ16(たとえば、φ32.3/φ28.3−P12.7)が形成され、外面には前径大部17aおよび後径大部17bと、前径小部18aおよび後径小部8bとが交互に形成されている。そして、後径大部17b(前径小部18aと後径小部18bとに挟まれている)には、雄ねじ51が形成されている。
【0016】
(ロックボルト本体)
図2の(b)において、ロックボルト本体20の外面にはロープ左ネジ21(たとえば、φ32.3/φ28.3−P12.7)が形成され、軸方向に貫通する貫通孔22を有している。そして、ロックボルト本体20は削孔ビット本体10に連結されるものであって、前者のロープ左ネジ21は後者のロープ左ネジ16に嵌合(螺合)するものである。
なお、図1において、ロックボルト本体20の後端(図中左端部)には、図示しない第2のロックボルト本体がロックボルト継手23によって連結されている。ロックボルト継手23は所定の長さの筒状であって、内面にロープ左ネジ21に嵌合(螺合)するロープ左ネジが形成されている。
【0017】
(ケーシングシュー)
図3の(a)において、ケーシングシュー30は筒状であって、掘削ビット係止部31と、掘削ビット係止部31に連なって掘削ビット係止部31よりも僅かに径小のケーシング設置部34とを有している。
掘削ビット係止部31の内周には前径大部32aおよび後径大部32bと、これらに挟まれた径小部33とが形成され、径小部33には削孔ビット本体10に形成された雄ねじ51に螺合する雌ねじ52が形成されている。
したがって、削孔ビット本体10の後径小部18bを、ケーシングシュー30の前径大部32aおよび径小部33に挿入し、前者と後者とを相対的に回転して前者の雄ねじ51と後者の雌ねじ52とを螺合させ、さらに、前者と後者とを相対的に回転すると、該螺合は外れて、前者の後径大部17b(雄ねじ51が形成されている)は後者の後径大部32bに侵入し、前者の前径大部17aは後者の前径大部32aに、それぞれ侵入する。
すなわち、該侵入した状態で、両者は互いに軸方向には拘束され、周方向には回転自在になっている。
【0018】
ケーシング設置部34は、ロックボルト本体20が侵入するに十分な内径を有し、外周には、断面略三角形に突出する突条35が螺旋状に等しいピッチで形成されている。なお、突条35の断面形状は限定するものではなく、略台形や略半円形等であってもよい。また、突条の条数は限定するものではなく、1条または2条以上であってもよい。
【0019】
(ケーシング)
図3の(b)において、ケーシング40は薄鋼板によって形成されたシース管(スパイラルシースパイプ)であって、外周に断面略三角形に突出する突条41が螺旋状に等しいピッチで形成されている。なお、ケーシング40は薄鋼板によって形成されているから、内周にも、突条41に同じ突条が形成されている(図3の(b)において、図が煩雑にならないよう、突条41の内面の記載を省略している)。
そして、ケーシングシュー30のケーシング設置部34をケーシング40内に挿入して、両者を相対回転すると、前者の突条35の外面と後者の突条41の内面とは嵌合(螺合)するものである。したがって、該嵌合によって、ケーシングシュー30とケーシング40とは、容易かつ堅固に連結されることになる。なお、該連結の弛みを防止するために、たとえば、スポット溶接や接着材等によって、両者を部分的に接合してもよい。
【0020】
なお、図1において、ケーシング40の後端には、外周に断面略三角形に突出する突条43が螺旋状に等しいピッチで形成されているシース継手管42によって、図示しない第2のケーシングが連結されている。
このとき、シース継手管42はケーシング40よりも僅かに径大であって、前者の突条43の内面と後者の突条41の外面とが嵌合(螺合)するものである。なお、シース継手管42はケーシング40よりも僅かに径小にして、前者の突条43の外面と後者の突条41の内面とが嵌合(螺合)するようにしてよい。
したがって、該嵌合が容易かつ堅固であるから、ケーシング40が複数のシース管から形成される場合であっても、施工作業は迅速であって、施工の信頼性が担保される。
【0021】
[実施の形態2−自穿孔ロックボルト]
図4、5は本発明の実施形態2に係る自穿孔ロックボルトを模式的に説明するものであって、図4は部分を示す一部を透視した側面図、図5は自穿孔ロックボルトを構成する各部材を示す一部断面の側面図である。図4において、自穿孔ロックボルト2は、削孔チップ11が設置された削孔ビット本体60と、削孔ビット本体60に連結され、軸方向に貫通する貫通孔22を具備するロックボルト本体20と、削孔ビット本体60に設置され、軸方向に拘束され、かつ周方向に回転自在なケーシングシュー70と、ケーシングシュー70に連結された筒状のケーシング40と、を有している。
自穿孔ロックボルト2は、削孔ビット本体60とケーシングシュー70との連結機構80(これについては以下に説明する)において、自穿孔ロックボルト(実施の形態1)と相違し、その他の点において同じである。以下、相違点を中心に説明する。
【0022】
(削孔ビット本体)
図5の(a)において、削孔ビット本体60は、先端側(図中左側)が広がった頭部62と、頭部62の後端側(図中左側)に続く筒状部65とを有している。頭部62の先端面(図中左側の面)には、削孔チップ11が放射状に設置され、頭部62の中心には、筒状部65の内部に連通する止まり孔63が形成され、止まり孔63には側面に開口した通孔64が連通している。なお、通孔64の数量や配置は限定するものではなく、先端面に開口してもよい。
筒状部65の内面にはロープ左ネジ66(たとえば、φ32.3/φ28.3−P12.7)が形成され、外面には前径大部67aおよび後径大部67bと、前径小部68aおよび後径小部68bとが交互に形成されている。
【0023】
(止め輪)
そして、前径小部68a(前径大部67aと後径大部67bとに挟まれている)には、C字状の止め輪80(いわゆるCクリップ、前記「連結機構80」に同じ)が配置されている。止め輪80は、たとえば、ばね鋼によって形成され、可撓性を具備している。すなわち、拡径した際は、その内径が前径大部67aおよび後径大部67bの外径よりも大きくなり、縮径した際は、その外径が前径大部67aおよび後径大部67bの外径に略等しいか、前径大部67aおよび後径大部67bの外径よりも小さくなるものである。
【0024】
(ケーシングシュー)
図5の(b)において、ケーシングシュー70は筒状であって、掘削ビット係止部71と、掘削ビット係止部71に連なって掘削ビット係止部71よりも僅かに径小のケーシング設置部74とを有している。
掘削ビット係止部71の内周には前径小部72aおよび後径小部72bと、これらに挟まれた径大部73とが形成され、径大部73には削孔ビット本体60に設置された止め輪80が侵入自在になっている。
したがって、削孔ビット本体60をケーシングシュー70に設置する要領は、前者の後径大部67bおよび後径小部68bを、後者の前径小部72aに挿入し、止め輪80を縮径して、その外径を後者の前径小部72aの内径よりも小さくし、止め輪80を後者の前径小部72aに挿入する。そして、前者を後者にさらに押し込むと、止め輪80は後者の前径小部72aを通過し、径大部73に到達して拡径する。
【0025】
このとき、止め輪80の外径はケーシングシュー70の前径小部72aおよび後径小部72bの内径よりも大きく、止め輪80の内径はケーシングシュー70の前径小部72aおよび後径小部72bの内径よりも小さいから、止め輪80がケーシングシュー70の径大部73から外れることがない。また、止め輪80の外径は削孔ビット本体60の前径大部67aおよび後径大部67bの外径よりも大きく、止め輪80の内径は削孔ビット本体60の前径大部67aおよび後径大部67bの外径よりも小さいから、止め輪80が削孔ビット本体60の前径小部68aから外れることがない。すなわち、削孔ビット本体60とケーシングシュー70とは、止め輪80によって、軸方向には拘束され、周方向には回転自在に連結されている。
なお、以上は、削孔ビット本体60に止め輪80をあらかじめ設置した状態で、削孔ビット本体60とケーシングシュー70とを連結しているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、削孔ビット本体60をケーシングシュー70に挿入した後、前者の前径小部68aと後者の径大部73によって形成される環状溝に、削孔ビット本体60に設けた孔から可撓性を具備する略C字材あるいは線材(ピアノ線、ワイヤ等)を挿入してもよい。
【0026】
(ケーシング)
図4において、実施の形態1に説明するケーシング40に同じである。すなわち、薄鋼板によって形成されたシース管(スパイラルシースパイプ)であって、外周に断面略三角形に突出する突条41が螺旋状に等しいピッチで形成されている。
なお、本発明はケーシングは、突条が螺旋状に形成されているものに限定するものではなく、円環状の突条が複数形成されたもの(いわゆるコルゲートパイプに同じ)は均等である。このとき、ケーシングシュー70とケーシング(コルゲートパイプ)のとの連結は、ケーシングシュー70のケーシング設置部74に突条75に替えて、円環状の溝を形成しておき、かかるケーシングシュー70の溝とケーシング(コルゲートパイプ)の突条の内面とが形成する円環状の溝に、C型の止め輪を配置することによって実行される。また、ケーシング(コルゲートパイプ)同士の連結は、公知のコルゲートジョイントを使用する。なお、コルゲートパイプが螺旋状または円環状であるにかかわらず、連結を堅固にする目的で、スポット溶接や接着材を併用してもよい。
【0027】
[実施の形態3−自穿孔ロックボルトの施工方法]
図6は本発明の実施形態3に係る自穿孔ロックボルトの施工方法を模式的に説明する、一部を透視した側面図である。なお、以下、自穿孔ロックボルト1(実施の形態1)の施工方法を説明するが、自穿孔ロックボルト2(実施の形態2)の施工方法も同じである。
【0028】
図6の(a)において、自穿孔ロックボルト1(実施の形態1参照)を、削孔位置に配置する。すなわち、削孔ビット本体10が回転自在に連結されたケーシングシュー30にケーシング(シース管)40が連結され、削孔ビット本体10にロックボルト本体20が連結されている。そして、ロックボルト本体20の後端(図中上端)に、図示しない削孔機の駆動軸と連結手段9によって、連結されている。なお、連結手段9は、ロックボルト本体20に回転または打撃の一方または両方を伝達すると共に、ロックボルト本体20の貫通孔22に圧縮空気(または、掘削土砂を地上に排出するたの水等の液体)を供給するものである。
【0029】
図6の(b)において、削孔ビット本体10を回転して、または打撃して、あるいは回転と打撃の両方をして掘削している。このとき、削孔ビット本体10の通孔14から、圧縮空気(または水等の液体)削孔内に噴出している。このため、削孔によって発生した掘削土砂はケーシング40の外面と削孔の内面との隙間を経由して、地上に吹き出される(図中矢印にて示す)。このとき、噴出した圧縮空気(または水等の液体)がケーシング40内に侵入しないから、ケーシング40内に掘削土砂が侵入することもなく、ロックボルト本体20の外面に掘削土砂が付着することはない。
【0030】
図6の(c)において、所定の深さまで削孔が進んだところで、ロックボルト本体20に2本目のロックボルト本体20bをロックボルト継手23によって連結する。
【0031】
図6の(d)において、ケーシング40に2本目のケーシング40bをシース継手管42によって連結し、2本目のロックボルト本体20bを、連結手段9によって図示しない削孔機の駆動軸に連結する。
【0032】
図6の(e)において、図6の(b)と同様に削孔し、所定の深の削孔が形成された時点で、ケーシング40および2本目のケーシング40b内にモルタル91を注入する。このとき、前述のように、ケーシング40内に掘削土砂が侵入していないから、ロックボルト本体20および2本目のロックボルト本体20b外面は清浄なモルタル層で包囲されることになる。
【0033】
図6の(f)において、さらに、ロックボルト本体20の貫通孔22および2本目のロックボルト本体20bの貫通孔22と、削孔ビット本体10の通孔14とを経由して、削孔中にモルタル92を注入する。
したがって、ロックボルト本体20および2本目のロックボルト本体20bは、ケーシング40および2本目のケーシング40bの内側の清浄なモルタル91の層と、ケーシング40および2本目のケーシング40bと、その外側のモルタル92の層と、によって防錆されることになる。
【0034】
なお、以上は、ロックボルト本体20およびケーシング40にそれぞれ2本目のロックボルト本体20bおよびケーシング40bが連結される場合を示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、それぞれが1本あるいは3本以上であってもよい。
さらに、ケーシング40を形成する材料は限定するものではなく、腐食環境の地盤に施工される場合等、ケーシング40を表面処理鋼板やステンレス薄板によって形成されたものにしたり、連結部に水密性を向上させるシール手段を配置したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ケーシングとして地盤にそのまま残置するシース管を使用し、ロックボルトの周囲に設置されたモルタルを清浄に保つことができるから、様々な環境の地盤に設置される自穿孔ロックボルトとして、また、その施工方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態1に係る自穿孔ロックボルトを模式的に説明する全体を示す一部を透視した側面図。
【図2】図1に示す自穿孔ロックボルトを構成する各部材を示す一部断面の側面図であって、(a)は削孔ビット本体、(b)はロックボルト。
【図3】図1に示す自穿孔ロックボルトを構成する各部材を示す一部断面の側面図であって、(a)はケーシングシュー、(b)はケーシング。
【図4】本発明の実施形態2に係る自穿孔ロックボルトを模式的に説明する部分を示す一部を透視した側面図。
【図5】図4に示す自穿孔ロックボルトを構成する各部材を示す一部断面の側面図であって、(a)は削孔ビット本体、(b)はケーシングシュー。
【図6】図1に示す自穿孔ロックボルトの施工方法を模式的に説明する、一部を透視した側面図。
【符号の説明】
【0037】
1 自穿孔ロックボルト(実施の形態1)
2 自穿孔ロックボルト(実施の形態2)
9 連結手段
10 削孔ビット本体(実施の形態1)
11 削孔チップ
12 頭部
13 止まり孔
14 通孔
15 筒状部
16 ロープ左ネジ
17a 前径大部
17b 後径大部
18a 前径小部
18b 後径小部
20 ロックボルト本体
20b 2本目のロックボルト本体
21 ロープ左ネジ
22 貫通孔
23 ロックボルト継手
30 ケーシングシュー(実施の形態1)
31 掘削ビット係止部
32a 前径大部
32b 後径大部
33 径小部
34 ケーシング設置部
35 突条
40 ケーシング
40b 2本目のケーシング
41 突条
42 シース継手管
43 突条
60 削孔ビット本体(実施の形態2)
62 頭部
63 止まり孔
64 通孔
65 筒状部
66 ロープ左ネジ
67a 前径大部
67b 後径大部
68a 前径小部
68b 後径小部
70 ケーシングシュー(実施の形態2)
71 掘削ビット係止部
72a 前径小部
72b 後径小部
73 径大部
74 ケーシング設置部
75 突条
80 止め輪(連結機構)
91 モルタル(ケーシングの内側)
92 モルタル(ケーシングの外側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔チップが設置された削孔ビット本体と、
該削孔ビット本体に連結され、軸方向に貫通する貫通孔を具備するロックボルト本体と、
前記削孔ビット本体に設置され、軸方向に拘束され、かつ周方向に回転自在なケーシングシューと、
該ケーシングシューに連結された筒状のケーシングと、
を有する自穿孔ロックボルトであって、
前記削孔ビット本体に、前記貫通孔に連通する通孔が形成され、
前記削孔ビット本体の回転または並進によって削孔が形成される際、該削孔の形成によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする自穿孔ロックボルト。
【請求項2】
前記ケーシングが外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース管であることを特徴とする請求項1記載の自穿孔ロックボルト。
【請求項3】
前記ケーシングが外面側に突出する螺旋状の突条を具備する複数のシース管から構成され、それぞれが外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース継手管によって連結され、前記シース管の突条の外面に前記シース継手管の突条の内面が嵌合、または前記シース管の突条の内面に前記シース継手管の突条の外面が嵌合することを特徴とする請求項2記載の自穿孔ロックボルト。
【請求項4】
前記ケーシングシューの外面に螺旋状の突条が形成され、該突条の外面に前記シース管の突条の内面が嵌合することを特徴とする請求項2または3記載の自穿孔ロックボルト。
【請求項5】
削孔チップが設置された削孔ビット本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備するロックボルト本体を連結すると共に、前記削孔ビット本体に形成された通孔と前記貫通孔とを連結する工程と、
筒状のケーシングシューに外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース管を連結する工程と、
前記削孔ビット本体に、前記ケーシングシューを軸方向に拘束し、かつ周方向に回転自在に設置する工程と、
前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
所定の深さまで、削孔が形成された時点で、前記ロックボルト本体と前記ケーシングとの間にモルタルを注入する工程と、
を有し、
前記削孔の工程において、削孔によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする自穿孔ロックボルトの施工方法。
【請求項6】
削孔チップが設置された削孔ビット本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備する第1ロックボルト本体を連結すると共に、前記削孔ビット本体に形成された通孔と前記貫通孔とを連結する工程と、
筒状のケーシングシューに外面側に突出する螺旋状の突条を具備する第1シース管を連結する工程と、
前記削孔ビット本体に、前記ケーシングシューを軸方向に拘束し、かつ周方向に回転自在に設置する工程と、
前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
前記第1ロックボルト本体に、軸方向に貫通する貫通孔を具備する第2ロックボルト本体を連結すると共に、前記第1シース管に、外面側に突出する螺旋状の突条を具備する第2シース管を、外面側に突出する螺旋状の突条を具備するシース継手管によって連結する工程と、
さらに、前記削孔ビット本体を回転しながら、打撃しながら、あるいは回転および打撃しながら、前記貫通孔を経由して前記通孔から空気を噴出して、削孔する工程と、
所定の深さまで、削孔が形成された時点で、前記第1ロックボルト本体および第2ロックボルト本体と前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングとの間にモルタルを注入する工程と、
を有し、
前記削孔の工程において、削孔によって生じた掘削土砂が、前記通孔から噴出する空気によって、前記第1ケーシングおよび前記第2ケーシングの外面と前記削孔の内面との隙間を経由して、地上に排出されることを特徴とする自穿孔ロックボルトの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−327228(P2007−327228A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158588(P2006−158588)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(596147367)株式会社ティーエフティー (11)
【Fターム(参考)】