説明

自脱型コンバイン

【課題】ハーネスの構成およびハーネスの配設作業の簡素化を図りつつ、ハーネスの損傷を防止できる自脱型コンバインを提供する。
【解決手段】刈取部3に装備された左右一対の引起装置9R,9Lの上部同士を連結する横向き補強フレーム78と、運転部4から遠距離側の引起装置9Lに装備された電気機器109Lと、を備え、ハーネス113を、横向き補強フレーム78の内部を介して設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部に装備された左右一対の引起装置の上部同士を連結する横向き補強フレームと、運転部から遠距離側の引起装置に装備された電気機器と、電源部と電気機器とを接続するハーネスとを備えた自脱型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転部から近距離側の引起装置に電気機器としての作業ランプを装備していた。しかし、近年、運転部から遠距離側の引起装置にも、作業ランプを装備することが望まれるようになってきた。運転部から遠距離側の引起装置に作業ランプを装備するには、例えば図16に示すように、左側引起装置(運転部から遠距離側の引起装置)9Lの上部に作業ランプ109Lを取り付け、左側引起装置9Lの上部から下方に延びる伝動ケース38と、その伝動ケース38の下端部から左右方向に延びるベベルギヤケース34およびカウンタケース37と、ベベルギヤケース34の途中から上方に延びる刈取部フレーム29とに沿って、作業ランプ109Lに接続された引起装置側のハーネス部分113を配設し、引起装置側のハーネス部分113のカプラ113aと走行機体側のハーネス部分114のカプラ114aとを接続する。
【0003】
ただし、伝動ケース38、ベベルギヤケース34およびカウンタケース37、刈取部フレーム29の内部には、引起装置等に動力を伝達する伝動軸が配設されている。このため、引起装置側のハーネス部分113を、伝動ケース38、ベベルギヤケース34およびカウンタケース37、刈取部フレーム29の内部に配設することはできない。そこで、引起装置側のハーネス部分113を、伝動ケース38、ベベルギヤケース34およびカウンタケース37、刈取部フレーム29の外部に沿わせ、結束バンド等の結束具115を、引起装置側のハーネス部分113と、伝動ケース38、ベベルギヤケース34およびカウンタケース37、刈取部フレーム29とに亘って巻回して締め付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引起装置側のハーネス部分は、刈取部の下部に位置するベベルギヤケースを経由するため、引起装置側のハーネス部分が長くなり易く、引起装置側のハーネス部分の固定箇所が増大する等、引起装置側のハーネス部分の配設が煩雑になり易い。また、湿田作業時において、刈取部の下部に位置するベベルギヤケースの外部に固定された引起装置側のハーネス部分が土や泥等の圧力を受けて損傷する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、ハーネスの構成およびハーネスの配設作業の簡素化を図りつつ、ハーネスの損傷を防止できる自脱型コンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の自脱型コンバインの第1特徴構成は、走行機体の前部に連結された刈取部と、前記走行機体の左右方向の一方側に設けられた運転部と、前記刈取部に装備された左右一対の引起装置の上部同士を連結する横向き補強フレームと、前記運転部から遠距離側の引起装置に装備された電気機器と、を備え、前記走行機体に設けられた少なくとも電源部および制御部のいずれか一方と前記電気機器とを接続するハーネスを、前記横向き補強フレームの内部を介して設けてある点にある。
【0007】
運転部から遠距離側の引起装置に電気機器を取り付け、その電気機器に接続されたハーネスを横向き補強フレームの内部を介して設けることにより、運転部から遠距離側の引起装置の上部と運転部から近距離側の引起装置の上部とに亘ってハーネスを配設し、運転部から近距離側の引起装置の上部と走行機体とに亘って、ハーネスを配設する。
【0008】
ハーネスは、左右一対の引起装置の上部を経由して走行機体に延びる。このため、ハーネスは、刈取部の下部を経由しないものとなり、その分ハーネスを短くすることができる。また、ハーネスを横向き補強フレームの内部に配設することにより、ハーネスの固定箇所を大幅に削減することに加えて、左右一対の引起装置を補強する横向き補強フレームを利用してハーネスを良好に保護することができる。
【0009】
横向き補強フレームは、左右一対の引起装置の上部に亘って設けられている。このため、土や泥等が横向き補強フレームに接触することはないものの、左右一対の引起装置の間を通る刈取穀稈が横向き補強フレームに接触することになる。しかし、本構成のようにハーネスが横向き補強フレームの内部に配設されてあれば、刈取穀稈が横向き補強フレームに接触したとしても、ハーネスが損傷を受けることはない。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記刈取部は、前記走行機体の前部に揺動支点周りに上下揺動可能に連結してあり、前記刈取部の揺動支点を形成する揺動支点部材と前記運転部から近距離側の引起装置の上部とを連結する前後向き補強フレームを備え、前記ハーネスを、前記前後向き補強フレームの内部を介して設けてある点にある。
【0011】
前後向き補強フレームによって揺動支点部材と引起装置の上部とを連結することにより、刈取部の上部を効果的に補強しながら、ハーネスを前後向き補強フレームの内部を介して設けることにより、前後向き補強フレームをハーネスの配索に有効活用して、ハーネスの固定箇所を大幅に削減することに加えて、ハーネスを良好に保護することができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、走行機体の前部に連結された刈取部と、前記走行機体の左右方向の一方側に設けられた運転部と、前記刈取部に左右方向に並べて装備された3以上の複数の引起装置のうち、隣接する引起装置の上部同士を連結する複数の横向き補強フレームと、前記運転部から最遠側の引起装置に装備された電気機器と、を備え、前記走行機体に設けられた少なくとも電源部および制御部のいずれか一方と前記電気機器とを接続するハーネスを、前記複数の横向き補強フレームの夫々の内部を介して設けてある点にある。
【0013】
運転部から最遠側の引起装置に電気機器を取り付け、その電気機器に接続されたハーネスを複数の横向き補強フレームの夫々の内部を介して設けることにより、運転部から最遠側の引起装置の上部と運転部から最近側の引起装置の上部とに亘ってハーネスを配設し、運転部から最近側の引起装置の上部と走行機体とに亘って、ハーネスを配設する。
【0014】
ハーネスは、左右方向に並べて装備された複数の引起装置の上部を経由して走行機体に延びる。このため、ハーネスは、刈取部の下部を経由しないものとなり、その分ハーネスを短くすることができる。また、ハーネスを複数の横向き補強フレームの夫々の内部に配設することにより、ハーネスの固定箇所を大幅に削減することに加えて、左右一対の引起装置を補強する横向き補強フレームを利用してハーネスを良好に保護することができる。
【0015】
横向き補強フレームは、隣接する引起装置の上部同士に亘って設けられている。このため、土や泥等が横向き補強フレームに接触することはないものの、隣接する引起装置の間を通る刈取穀稈が横向き補強フレームに接触することになる。しかし、本構成のようにハーネスが複数の横向き補強フレームの夫々の内部に配設されてあれば、刈取穀稈が横向き補強フレームに接触したとしても、ハーネスが損傷を受けることはない。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、前記刈取部は、前記走行機体の前部に揺動支点周りに上下揺動可能に連結してあり、前記刈取部の揺動支点を形成する揺動支点部材と前記複数の引起装置のうち運転部に最近側の引起装置の上部とを連結する前後向き補強フレームを備え、前記ハーネスを、前記前後向き補強フレームの内部を介して設けてある点にある。
【0017】
前後向き補強フレームによって揺動支点部材と引起装置の上部とを連結することにより、刈取部の上部を効果的に補強しながら、ハーネスを前後向き補強フレームの内部を介して設けることにより、前後向き補強フレームをハーネスの配索に有効活用して、ハーネスの固定箇所を大幅に削減することに加えて、ハーネスを良好に保護することができる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、前記横向き補強フレームは、上に凸の湾曲形状のパイプで構成してある点にある。
【0019】
ハーネスを横向き補強フレームの内部に通すだけの簡単な作業で、ハーネスを横向き補強フレームに配設することができる。しかも、ハーネスを横向き補強フレームの内部に通すことによって、補強フレームがハーネスを内包することになるため、ハーネスの固定箇所を大幅に削減することに加えて、ハーネスを良好に保護することができる。さらに、風雨や光が横向き補強フレームの内部に侵入することを防止でき、ハーネスの耐候性も向上する。横向き補強フレームは湾曲しているので、ハーネスを横向き補強フレームの内部に通す際に、ハーネスが横向き補強フレームに引っかかり難く、ハーネスを横向き補強フレームの内部にスムーズに通し易い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインを示す全体左側面図である。
【図2】コンバインを示す全体右側面図である。
【図3】コンバインを示す全体平面図である。
【図4】コンバインを示す全体正面図である。
【図5】刈取部への伝動系を示す断面図である。
【図6】左側引起装置への伝動系を示す左側面図である。
【図7】右側引起装置への伝動系を示す右側面図である。
【図8】チェーン伝動機構付近を示す縦断面図である。
【図9】引起装置の縦断正面図である。
【図10】左側引起装置に左側作業ランプを取り付けた状態を示す正面図である。
【図11】左側引起装置に左側作業ランプを取り付けた状態を示す側面図である。
【図12】左右一対の引起装置に亘って横向き補強フレームを取り付け、その横向き補強フレームにハーネスを配索する構成を示す側面図である。
【図13】左右一対の引起装置に亘って横向き補強フレームを取り付け、ギヤケースと運転部から近距離側の引起装置の上部とに亘って前後向き補強フレームを取り付け、それら横向き補強フレームおよび前後向き補強フレームにハーネスを配索する構成を示す側面図である。
【図14】別実施形態における、左右一対の引起装置に亘って横向き補強フレームを取り付け、その横向き補強フレームにハーネスを配索する構成を示す側面図である。
【図15】別実施形態における、隣り合う引起装置に亘って複数の横向き補強フレームを取り付け、それら横向き補強フレームにハーネスを配索する構成を示す正面図である。
【図16】従来の刈取部にハーネスを配索する構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔コンバインの全体構成〕
図1〜4に示すように、コンバインは、左右のクローラ走行装置1を備えた走行機体2と、その走行機体2の前部上部に昇降可能に連結された刈取部3と、走行機体2の右側前部に設けられた運転部4と、走行機体2の左側後部に搭載された脱穀装置5と、走行機体2の右側後部に搭載された穀粒回収タンク6と、その穀粒回収タンク6の後部に設けられた穀粒排出オーガ7と、脱穀装置5および穀粒排出オーガ7の後部に搭載された排ワラ処理装置8と、を備えている。
【0022】
(運転部)
図1〜図4に示すように、前記運転部4は、前後に長い平面視で長方形状のデッキ部2aと、エンジン(図示しない)を覆うボンネット4bと、そのボンネット4bの上部に装備された運転座席4aと、その運転座席4aの側方に位置する側部操縦搭4cと、運転座席4aの前方に位置する前部操縦搭4dと、を備えている。
【0023】
(刈取部)
図1〜図4に示すように、前記刈取部3は、植立作物を分草する複数(本実施形態では3つ)のデバイダ80と、分草された植立作物を所定の刈取り姿勢に引起す左側引起装置9L(運転部から遠距離側の引起装置の一例)および右側引起装置9R(運転部から近距離側の引起装置の一例)と、引起装置9R,9Lにより引起した植立作物を切断するバリカン型の刈取装置10と、引起し中の植立作物を係止搬送する左右の補助搬送装置11R,11Lと、植立作物の株元を掻込合流する左右の掻込回転パッカ12R,12Lと、合流された植立作物を後方上方に向けて挟持搬送する供給搬送装置13と、を備えている。
【0024】
刈取部3を構成する各種ケースについて具体的に説明する。
前記刈取部3は、刈取軸27が内装された横向き筒状の支持ケース26(揺動支点部材の一例)と、伝動軸30が内装されてその横向き筒状の支持ケース26の中央部から前方下方に延びる刈取部フレーム29と、刈取伝動軸36が内装されて刈取部フレーム29の下端部から左右方向に延びるベベルギヤケース34と、そのベベルギヤケース34の左端部から左方向に延びるカウンタケース37と、左側引起伝動軸39が内装されてカウンタケース37の左端部から前方上方に延びる伝動ケース38と、ベベルギヤケース34の右端部に取り付けられた右側ギヤケース51と、その右側ギヤケース51から前方上方に延びる右側引起伝動軸52およびパッカ駆動軸54と、を備えている。
【0025】
刈取部3に取り付けられた各種装置について具体的に説明する。
前記走行機体2と刈取部3の刈取部フレーム29とに亘って油圧シリンダ14が介装されている。油圧シリンダ14の操作によって、刈取部3全体が刈取部3の刈取軸27の揺動支点X周りに上下揺動する。伝動ケース38の先端部は、左側ベベルギヤケース41を介して左側引起装置9Lの上部に固定されている。右側引起伝動軸52およびパッカ駆動軸54の先端部は、右側ベベルギヤケース56を介して右側引起装置9Rの中央部に固定されている。ベベルギヤケース34およびカウンタケース37から複数(本実施形態では3つ)の刈取フレーム92が前方に延びている。刈取フレーム92の先端から取付フレーム93が前方に延びている。取付フレーム93の先端には、それぞれ右側デバイダ80R、中央デバイダ80C、左側デバイダ80Lが取り付けられている。
【0026】
上記各種ケースの内部に装備されて各種装置に動力を伝達する各種伝動軸について具体的に説明する。
前記刈取軸27は、ベベルギヤ伝達機構(図示しない)を介して伝動軸30に連動連結する。伝動軸30は、ベベルギヤ伝達機構35を介して刈取伝動軸36に連動連結する。刈取伝動軸36は、左端部がベベルギヤ伝達機構40を介して左側引起伝動軸39に連動連結するとともに、右端部がベベルギヤ伝達機構53を介して右側引起伝動軸52に連動連結する。左側引起伝動軸39は、ベベルギヤ伝動機構43を介して左側引起入力軸42に連動連結する。左側引起入力軸42の先端部が左側引起装置9Lに入り込んでいる。右側引起伝動軸52は、ベベルギヤ伝達機構58を介して中間駆動軸57に連動連結するとともに、複数のギヤを組み合わせて構成した減速機構56aを介してパッカ駆動軸54に連動連結する。中間駆動軸57の先端部が右側引起伝動軸52に入り込んでいる。パッカ駆動軸54には、右側の補助搬送装置11Rおよび右側の掻込回転パッカ12Rが固定されている。
【0027】
図1,図3,図13に示すように、前記供給搬送装置13は、作物の株元側を挟持して搬送する株元挟持搬送機構13aと、作物の穂先側を係止して搬送する穂先係止搬送機構13bと、供給搬送装置13全体を揺動支点Xを中心に上下揺動調節する扱深調節機構91と、を備えている。扱深調節機構91については後で詳述する。
【0028】
(左側引起装置)
図6、図9〜図11に示すように、前記左側引起装置9Lは、左側引起入力軸42に連動連結する駆動スプロケット45と、その駆動スプロケット45の横に配備された上下変位可能で上方にバネ付勢されたテンションスプロケット46と、駆動スプロケット45およびテンションスプロケット46の下方に配備されたチェーン案内ローラ47と、駆動スプロケット45、テンションスプロケット46、チェーン案内ローラ47に亘って巻回張設された引起チェーン48と、それらチェーンやスプロケット等を収容する引起ケース44と、を備えている。引起ケース44には、その前面を覆う化粧カバーが設けられている。
【0029】
前記引起ケース44は、前面パネル44Fおよび後面パネル44Rを重ね合わせてボルト連結し、上部、下部、および左側部が開口した長尺の扁平状に構成してある。引起チェーン48には、引起爪49が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されている。
【0030】
(右側引起装置)
図7〜図9に示すように、左側引起装置9Lと右側引起装置9Rとは、中間駆動軸57の動力を右側引起装置9Rに伝達するチェーン伝動機構70を設けた点で異なっている。また、ローラの数も異なっている。
【0031】
前記チェーン伝動機構70は、中間駆動軸57に連動連結する下部スプロケット71と、後述する右側引起入力軸59に連動連結する上部スプロケット72と、下部スプロケット71および上部スプロケット72に亘って巻回張設された伝動チェーン73と、それらチェーンやスプロケットを収容するチェーンカバー74と、を備えている。
【0032】
前記チェーンカバー74は、右側引起装置9Rの後述する引起ケース60の後面パネル60Rに固定されており、上下に長い帯板状の後面板74aと、この後面板74aの左右両側部から前方に折り曲げ成形された左右の側板74bと、後面板74aの上部に側面視での形状がL字状に折り曲げられた上部連結部74cと、左右の側板74bの下部に形成された下部連結部74dとを備えている。
【0033】
前記引起ケース60の上部には、右側引起入力軸59がベアリング75,77を介して前後向きの軸心周りで回動可能に支持されており、この右側引起入力軸59の後端部に、上部スプロケット72が連動連結されているとともに、この右側引起入力軸59の前端部に、駆動スプロケット62が連動連結されている。
【0034】
前記右側引起装置9Rは、右側引起入力軸59に連動連結する駆動スプロケット62と、その駆動スプロケット62の横に配備された上下変位可能で上方にバネ付勢されたテンションスプロケット63と、駆動スプロケット62およびテンションスプロケット63の下方に左右並列配備された第1及び第2チェーン案内ローラ64,65と、駆動スプロケット62、テンションスプロケット63、第1及び第2チェーン案内ローラ64,65に亘って巻回張設された引起チェーン66と、それらチェーンやスプロケット等を収容する引起ケース60と、を備えている。引起ケース60には、その前面を覆う化粧カバーが設けられている。
【0035】
前記引起ケース60は、前面パネル60Fおよび後面パネル60Rを重ね合わせてボルト連結し、上部、下部、および右側部が開口した長尺の扁平状に構成してある。引起チェーン66には、引起爪67が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されている。
【0036】
(刈取部の伝動構造)
図5〜図9に示すように。エンジンからの動力が、刈取部3の刈取軸27に伝達する。刈取軸27から分岐された動力は、出力軸(図示しない)を介してその両端部に連動連結された株元挟持搬送機構13aと穂先係止搬送機構13bに伝達する。これにより、供給搬送装置13を駆動可能に構成してある。刈取軸27から分岐された動力は、伝動軸30および刈取伝動軸36に伝達する。刈取伝動軸36から分岐された動力は、左側引起伝動軸39を介して左側引起入力軸42に伝達する。
【0037】
前記刈取伝動軸36から分岐された動力は、右側引起伝動軸52に伝達する。右側引起伝動軸52から分岐された動力は、中間駆動軸57に伝達する。右側引起伝動軸52から分岐された動力は、減速機構56aにより減速されてパッカ駆動軸54に伝達する。これにより、右側の補助搬送装置11R及び右側の掻込回転パッカ12Rを回転駆動可能に構成してある。右側の掻込回転パッカ12Rは左側の掻込回転パッカ12Lに噛み合い連動されている。これにより、この右側の掻込回転パッカ12Rの回転に伴って左側の掻込回転パッカ12Lおよび左側の補助搬送装置11Lを回転駆動可能に構成してある。
【0038】
前記左側引起入力軸42の動力によって駆動スプロケット45が回転駆動し、引起チェーン48も回動する。引起チェーン48の回動に伴って、引起爪49は、引起チェーン48に沿った倒伏姿勢で下方へ移動し、下側当接部材によって起立し、引起し径路脇に固定配備された案内レール50によってその起立状態を維持しつつ引起し径路を上方へ移動し、上側当接部材によって倒伏する。
【0039】
前記中間駆動軸57の動力によって下部スプロケット71が回転駆動し、伝動チェーン73も回動する。伝動チェーン73の回動に伴って上部スプロケット72および駆動スプロケット62が共に回転し、引起チェーン66も回動する。引起チェーン66の回動に伴って、引起爪67は、引起チェーン66に沿った倒伏姿勢で下方へ移動し、下側当接部材によって起立し、引起し径路脇に固定配備された案内レール69によってその起立状態を維持しつつ引起し径路を上方へ移動し、上側当接部材によって倒伏する。
【0040】
各引起装置9R,9Lの引起爪49,67は、引起し径路において互いに突き合わせ状態を維持して上方へ移動する。これにより、植立作物を引起し可能に構成してある。
【0041】
以上により、引起装置9R,9Lの駆動によって植立作物を所定の刈取り姿勢に引起し、刈取装置10の駆動によって植立作物を切断しつつ左右の補助搬送装置11L,11Rの駆動によって引起し中の植立作物を係止搬送し、左右の掻込回転パッカ12L,12Rの駆動によって植立作物の株元を掻込合流させ、供給搬送装置13の駆動によって植立作物を後方上方に向けて挟持搬送する。
【0042】
(横向き補強フレーム)
図6、図7、図9、図10、図12、図13に示すように、前記右側引起装置9Rの引起ケース60の上部と左側引起装置9Lの引起ケース44の上部とに亘って、側面視で後傾姿勢の横向き補強フレーム78が連結されている。
【0043】
具体的には、横向き補強フレーム78は、上に凸の湾曲形状の中空パイプでアーチ状に構成してある。横向き補強フレーム78の両端部には、開口94R,94Lが形成されている。横向き補強フレーム78の両端部には、側面視でく字状に屈曲形成された取付板95R,95Lが固定されている。右側取付板95Rが、右側引起装置9Rの引起ケース60の後面パネル60Rの上部後面にボルト連結されている。左側取付板95Lが、左側引起装置9Lの引起ケース44の後面パネル44Rの上部後面にボルト連結されている。
【0044】
(前後向き補強フレーム)
図7、図13に示すように、右側引起装置9Rの引起ケース60の後面パネル60Rの上部には、チェーン伝動機構70の横に位置する状態で第1ブラケット96が固定されている。第1ブラケット96と支持ケース26の右側部とに亘って前後向き補強フレーム97が連結されている。
【0045】
前記前後向き補強フレーム97は、前後向きの直線状の中空パイプで構成してある。前後向き補強フレーム97の両端部には、開口98F,98Rが形成されている。前後向き補強フレーム97の前端部には、取付板99が固定されている。取付板99が第1ブラケット96にボルト連結されている。前後向き補強フレーム97の後端部は、後述する第3ブラケット105を介して支持ケース26に連結されている。前後向き補強フレーム97は、図13に示すように、側面視で、その前後中間部が上向き凸状に屈曲した形状に形成されており、その前側部分が引起ケース60の向きに対して略直交する傾斜姿勢となり、その後側部分が刈取部フレーム29の向きに対して略直交する傾斜姿勢となる状態で配備されている。前後向き補強フレーム97は、図3に示すように、平面視で、右側引起装置9Rの引起ケース60の左側端部から運転部4の側部操縦搭4cを避けるように斜め後方左方に延出され、その延出端部から前後向きに延出されて支持ケース26の右側部に連結されている。
【0046】
(扱深調節機構)
図13に示すように、供給搬送装置13と前後向き補強フレーム97とに亘って扱深調節機構91が設けられている。
【0047】
前記扱深調節機構91は、前後向き補強フレーム97の後側寄り箇所に固定された第2ブラケット100と、その第2ブラケット100の左側面に固定された扱深さモータMと、第2ブラケット100から右側に突出する第1軸芯部材101に揺動可能に支持されかつ扱深さモータMのピニオンギヤ107に噛合可能なセクターギヤ102と、セクターギヤ102から右側に突出する第2軸芯部材103および第1軸芯部材101に固定された略三角状のアーム部材104と、前後向き補強フレーム97の後端部から上方に延びる第3ブラケット105と第2軸芯部材103とに亘って介装されたばね106と、を備えている。アーム部材104と供給搬送装置13とがロッド部材116を介して連結されている。
【0048】
前記扱深さモータMの回転駆動によって、セクターギヤ102が回転し、セクターギヤ102の回転に伴ってアーム部材104が揺動し、供給搬送装置13が上下揺動する。
【0049】
(供給搬送装置の制御構成)
前記供給搬送装置13に取り付けられたパイプ117には、植立作物を検出する作物検出センサS1,S2が上下に備えられている。作物検出センサS1,S2は制御装置(図示しない)に接続されている。制御装置は、CPUを中核部材として扱深さ制御等を行うための各種制御手段をハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。上段および下段の作物検出センサS1,S2が植立作物を検出するときには、制御装置は、植立作物が上側位置(深扱ぎ位置)で搬送されていると判別して、供給搬送装置13を上側に揺動させるように、扱深さモータMを駆動させる。上段および下段の作物検出センサS1,S2が植立作物を検出しないときには、制御装置は、植立作物が下側位置(浅扱ぎ位置)で搬送されていると判別して、供給搬送装置13を下側に揺動させるように、扱深さモータMを駆動させる。上段の作物検出センサS1が植立作物を検出しないでかつ下段の作物検出センサS2が植立作物を検出するときには、制御装置は、植立作物が適正位置で搬送されていると判別して、扱深さモータMの駆動を停止させる。
【0050】
(作業ランプの取付構造)
図1、図3、図4、図6、図9〜図11に示すように、運転部4の前部操縦搭4dの前部には右側作業ランプ109Rが取り付けられ、左側引起装置9Lの左側上部には、左側ステー110を介して左側作業ランプ109L(電気機器の一例)が取り付けられている。
【0051】
前記左側ステー110は、引起ケース44の後面パネル44Rにボルト連結される支持部110aと、支持部110aから横外方に延びるアーム部110bと、アーム部110bの先端部に形成されて左側作業ランプ109Lを支持するランプ支持部110cと、を備えている。後面パネル44Rにおける支持部110aとの連結箇所には、ボルトの頭部を収容する突出部111が形成されている。これにより、ボルトの頭部が引起ケース44の内方側に突出しないように構成してある。
【0052】
(ハーネスの配索構造)
図2、図4、図9、図10〜図13に示すように、左側作業ランプ109Lの後部下部には、左側作業ランプ109Lをon・off状態に切り換え可能な左側スイッチ112が設けられている。左側作業ランプ109Lに接続された引起装置側のハーネス部分113(ハーネスの一例)を、左側開口94Lから横向き補強フレーム78の内部に通して右側開口94Rから出す。これにより、左側引起装置9Lの上部と右側引起装置9Rの上部とに亘って引起装置側のハーネス部分113を配設する。引起装置側のハーネス部分113を、前側開口98Fから前後向き補強フレーム97の内部に通して後側開口98Rから出す。このようにして、右側引起装置9Rの上部と支持ケース26とに亘って、引起装置側のハーネス部分113を配設する。引起装置側のハーネス部分113の先端に取り付けられたカプラ113aと走行機体側のハーネス部分114(ハーネスの一例)の先端に取り付けられたカプラ114aとを接続する。
【0053】
前記引起装置側のハーネス部分113は、左右一対の引起装置9R,9Lの上部および刈取部3の上部に設けられる支持ケース26を経由して走行機体2に延びる。このため、引起装置側のハーネス部分113は、刈取部3の下部を経由しないものとなり、その分引起装置側のハーネス部分113を短くすることができる。また、引起装置側のハーネス部分113を横向き補強フレーム78および前後向き補強フレーム97の内部に通すことによって、横向き補強フレーム78および前後向き補強フレーム97が引起装置側のハーネス部分113を内包することになる。このため、引起装置側のハーネス部分113の固定箇所を大幅に削減することに加えて、引起装置側のハーネス部分113を良好に保護することができる。
【0054】
前記走行機体側のハーネス部分114は、運転部4の前部操縦搭4dの内部に装備された制御ボックス126(制御部の一例)に接続されている。制御ボックス126はリレー回路(図示しない)を備えて構成してある。制御ボックス126は前部操縦搭4dの上部に設けられたメインスイッチ122に接続してある。右側作業ランプ109Rと制御ボックス126とを接続する運転部側のハーネス部分124(ハーネスの一例)の途中には、右側作業ランプ109Rをon・off状態に切り換え可能な右側スイッチ121が設けられている。制御ボックス126とバッテリ123(電源部の一例)とを接続するバッテリ側のハーネス部分125(ハーネスの一例)が設けられている。
【0055】
前記メインスイッチ122は、右側および左側作業ランプ109R,109Lをon・off状態に切り換えるとともに、作業灯(図示しない)等をon・off状態に切り換えるように構成してある。メインスイッチ122をon状態に切り換え、右側および左側スイッチ121,112をon状態に切り換えることにより、右側および左側作業ランプ109R,109Lが点灯する。この状態で、左側スイッチ112をoff状態に切り換えることにより、右側作業ランプ109Rのみが点灯するのであり、右側スイッチ121をoff状態に切り換えることにより、左側作業ランプ109Lのみが点灯する。メインスイッチ122をoff状態に切り換えることにより、右側および左側作業ランプ109R,109Lが消灯する。
【0056】
〔別実施形態〕
(1)電気機器は、作業ランプに限られるものではなく、電力を供給する必要がある各種機器類に適用可能である。例えば、電気機器が各種装置を駆動させるモータ、例えば、左側引起装置9Lの分草杆を揺動させるモータであってもよい。
【0057】
具体的には、左側引起装置9Lの分草杆は、湾曲したパイプ部材で構成してあり、左側デバイダ80Lと走行機体2の左側部の中央とに亘って設けられている。分草杆は、平面視で前後方向に沿いかつ正面視で垂直方向に沿う非作業姿勢と、平面視で左側に膨出しかつ正面視で垂直方向から傾斜する作業姿勢とに姿勢変更可能に構成してある。分草杆を作業姿勢と非作業姿勢とに切り換えるモータが、左側デバイダ80Lに取り付けられている。このモータに接続された引起装置側のハーネス部分113を、デバイダ80Lおよび左側引起装置9Lを通して左側引起装置9Lの上側まで配索し、左側開口94Lから横向き補強フレーム78の内部に通して右側開口94Rから出し、前側開口98Fから前後向き補強フレーム97の内部に通して後側開口98Rから出す。引起装置側のハーネス部分113の先端に取り付けられたカプラ113aと走行機体側のハーネス部分114の先端に取り付けられたカプラ114aとを接続する。
【0058】
(2)横向き補強フレーム78の開口94R,94Lの構成として、図14に示すように、横向き補強フレーム78の途中(横向き補強フレーム78の左側下部または右側下部)に開口94Lを設けてもよい。これにより、引起装置側のハーネス部分113を取り出す箇所が端面に限定されない。よって、引起装置側のハーネス部分113の配索の自由度が高まる。さらに、前後向き補強フレーム97も同様に構成することが可能である。
【0059】
(3)図4に示す構成に代えて、図15に示すように、3以上の複数の引起装置9(この実施形態では3つ)を左右方向に並べて装備し、横向き補強フレーム78によって隣接する引起装置9の上部同士を連結し、運転部4から最遠側の引起装置9に左側作業ランプ109Lを装備し、複数の横向き補強フレーム78の夫々の内部に引起装置側のハーネス部分113を配設してもよい。さらに、前後向き補強フレーム97によって支持ケース26と運転部4に最近側の引起装置9とを連結し、前後向き補強フレーム97の内部に、引起装置側のハーネス部分113を配設してもよい。
【0060】
(4)横向き補強フレーム78や前後向き補強フレーム97を中空パイプで構成するのに代えて、横向き補強フレーム78や前後向き補強フレーム97をチャンネル材で構成したり、断面形状がオメガ状の部材で構成してもよい。
【0061】
(5)横向き補強フレーム78の形状として、正面視で下向きコ字状のものや、左右向きで直線状のものなど異なる形状のものを採用してもよく、前後向き補強フレーム97の形状として、側面視で一直線状のものや、平面視で一直線状のものなど異なる形状のものを採用してもよい。
【0062】
(6)前後向き補強フレーム97をハーネスの配索には使用しない単なる補強フレームとして機能させたり、前後向き補強フレーム97の外側にハーネスを結束バンド等により固定したりする構成を採用してもよい。
【0063】
(7)引起装置側のハーネス部分113、走行機体側のハーネス部分114、バッテリ側のハーネス部分125が、走行機体2に設けられたバッテリ123と刈取部3に設けられた左側作業ランプ109Lとを接続して、左側作業ランプ109Lに電力を供給する構成に加えて、通信用のハーネス(図示しない)が、走行機体2に設けられた制御装置と刈取部3に設けられた左側作業ランプ109Lとを接続して、左側作業ランプ109Lの点灯状態を制御するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、引起装置と該引起装置の上部同士を連結する横向き補強フレームとを備える各種の自脱型コンバインに適応可能である。
【符号の説明】
【0065】
2 走行機体
3 刈取部
4 運転部
9,9R,9L 引起装置
26 揺動支点部材
78 横向き補強フレーム,パイプ
97 前後向き補強フレーム,パイプ
109L 電気機器
123 電源部
126 制御部
113,114,124,125 ハーネス
X 揺動支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の前部に連結された刈取部と、
前記走行機体の左右方向の一方側に設けられた運転部と、
前記刈取部に装備された左右一対の引起装置の上部同士を連結する横向き補強フレームと、
前記運転部から遠距離側の引起装置に装備された電気機器と、を備え、
前記走行機体に設けられた少なくとも電源部および制御部のいずれか一方と前記電気機器とを接続するハーネスを、前記横向き補強フレームの内部を介して設けてある自脱型コンバイン。
【請求項2】
前記刈取部は、前記走行機体の前部に揺動支点周りに上下揺動可能に連結してあり、
前記刈取部の揺動支点を形成する揺動支点部材と前記運転部から近距離側の引起装置の上部とを連結する前後向き補強フレームを備え、
前記ハーネスを、前記前後向き補強フレームの内部を介して設けてある請求項1に記載の自脱型コンバイン。
【請求項3】
走行機体の前部に連結された刈取部と、
前記走行機体の左右方向の一方側に設けられた運転部と、
前記刈取部に左右方向に並べて装備された3以上の複数の引起装置のうち、隣接する引起装置の上部同士を連結する複数の横向き補強フレームと、
前記運転部から最遠側の引起装置に装備された電気機器と、を備え、
前記走行機体に設けられた少なくとも電源部および制御部のいずれか一方と前記電気機器とを接続するハーネスを、前記複数の横向き補強フレームの夫々の内部を介して設けてある自脱型コンバイン。
【請求項4】
前記刈取部は、前記走行機体の前部に揺動支点周りに上下揺動可能に連結してあり、
前記刈取部の揺動支点を形成する揺動支点部材と前記複数の引起装置のうち運転部に最近側の引起装置の上部とを連結する前後向き補強フレームを備え、
前記ハーネスを、前記前後向き補強フレームの内部を介して設けてある請求項3に記載の自脱型コンバイン。
【請求項5】
前記横向き補強フレームは、上に凸の湾曲形状のパイプで構成してある請求項1〜4のいずれか1項に記載の自脱型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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