説明

自走式カプセル内視鏡

【課題】上下左右等、多様な方向に駆動でき、憩室や狭窄部位での落込みや滞留から脱出する機能、薬剤を疾患部に塗布する機能や、疾患部を様々な角度から撮像する機能を有した自走式カプセル内視鏡を提供する。
【解決手段】コイル部13及び駆動部17を含むリニア推進機構を内部に有する自走式カプセル内視鏡10において、前記駆動部が前記コイル部の外側に設けられていることを特徴とする自走式カプセル内視鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式カプセル内視鏡に関するものであって、特に、カプセル内視鏡の推進駆動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、医療等の分野において、管腔内等の直接目視することができない部位を観察するために広く用いられている。こうした内視鏡は、一般に細長の挿入部を備えて構成されており、使用者の手技により被検体内へ挿入されていた。
【0003】
一般的に汎用されているチューブ式内視鏡では、その撮像範囲が食道や胃、十二指腸、大腸などに限定されるため、さらに内部に位置する小腸における疾患の診断や治療には困難を伴っているのが現状である。そのため、現在実施されている小腸の検査法としては、撮像法および特定の内視鏡法が主流となっている。
【0004】
撮像法のうち、バリウムによる造影検査を基本とする小腸透視法では、小腸全体にバリウムが行き渡るのにかなりの個人差があり、検査時間もかかるという欠点があった。またCTやMRIによる断層撮像法では大きな病変、例えば腫瘤の存在や腸閉塞の程度などは十分に確認できるが、小腸粘膜の病変(潰瘍や腸内壁が損傷を受けるようなただれ、出血を伴う血管病変など)は検出することが困難といわれる。
【0005】
一方の内視鏡法については、現在のところではダブルバルーン法(非特許文献1参照)とカプセル法(非特許文献2参照)が汎用されるに至っている。ダブルバルーン法では、小腸全体の検査を実施する場合には経口および経肛門検査の2回に分けて行うのが一般的で、発見された病変に対し必要に応じて生検、内視鏡的ポリープ切除術、あるいは腸狭窄に対するバルーン拡張術などの内視鏡的処置が可能である点が特徴的である。
【0006】
他方のカプセル法は、カプセル内視鏡はサイズが小さいことから、被験者にとってより負担が少なく、苦痛を伴わない非侵襲的検査法として注目されている。最近では、小型カメラを搭載した錠剤状カプセルを飲み込み、小腸内部全体にわたる撮像を体外に無線通信で伝送するシステムの開発が進められており、我が国でも2008年に薬事法の適用を受けて、カプセル内視鏡の本格導入が始められている。
【0007】
しかしながら、現在使用されている多くのカプセル内視鏡は自走することができず、消化管内においては食物と同じ器官の腸壁の絨網運動や腸の蠕動運動によってカプセル本体が移動する。そのため、任意の位置や方向からの観察や制御が困難であり、その結果として像が不鮮明なための病変の見落とし、あるいは病変を観察できないための見落とし等、診断の信頼性にも問題を生ずることがある。
【0008】
さらに消化管の運動機能そのものが低下している場合には、進行する移動速度が低下しバッテリー性能の時間的制約から小腸全体の検査や撮像ができない、あるいは消化管内壁の憩室とか、病変による消化管の折れ曲がりや狭窄部位などにカプセルが滞留したりする事例もあり、疾患の診断や治療に対する信頼性は十分とはいえない。
【0009】
一方、自走するカプセル内視鏡に関しては、我国で2009年7月に発表されたが、胃内に予め飲み込んだ水中を、従来型カプセルに導電性ソフトアクチュエータのヒレを付けて泳がせるタイプ(全長は48mm)で、腸内環境への適用には解決すべき問題点も多い(非特許文献3参照)。
【0010】
そのためカプセル法はスクリーニング用、ダブルチューブ法は精密検査用と使い分けることが多い。しかしながら、カプセル法において、カメラによる撮像データの信頼性、移動走行の安全性や制御性、さらには滞留を回避する機能性などの付与が可能となれば、カプセル内視鏡検査への信頼性が増しカプセル内視鏡の需要は増加するものと考えられる。
【0011】
これらの問題点を解決するため、本発明者らは、日本機械学会福祉工学シンポジウム2008において、「DDS機能を有する自走式カプセル内視鏡の開発」の発表を行った。図4は、当該シンポジウムで発表した自走式カプセル内視鏡で、その特徴は、(1)電力供給は体外から行うため本体バッテリーが不要となり、そのフリースペースを治療薬剤の運搬、サンプル採取器具の格納、センサー装着、などのDDS機能として利用できる、(2)自走の駆動方式は回転・振動およびリニア推進が利用可能、(3)憩室や狭窄部位での落込みや滞留から脱出する機能が付与され、安全性・信頼性が向上する、などが挙げられる。
【0012】
しかしながら、上記シンポジウムで発表した自走式カプセル内視鏡は、図4に示すように、筒状カプセルの内側に沿って配置した単一の電磁コイル内に磁石を挿入し、電磁コイルに通電しコイル内の磁石を駆動して推進力を得る構造となっているが、推進方向は電磁コイル内の磁石の移動方向と同じ、つまり、自走式カプセル内視鏡の長軸方向に前後運動ができるのみであり、上下左右等への方向転換はできず、憩室や狭窄部位での落込みや滞留から脱出する機能としては不十分であった。
【0013】
また、上記発表した自走式カプセル内視鏡は、体外に設けた磁界発生装置が発生する磁力により方向が変えられる方式で、体内の自走式カプセル内視鏡の方向を転換させるためには大きな磁界を発生させる必要があり、強磁場が人体へ与える影響を無視できないという問題があった。
【0014】
更に、カプセル内視鏡に搭載した薬剤を疾患部に塗布する機能や、疾患部を様々な角度から撮像する機能を実現するためには、患部の前後の撮影場所への移動や、カプセルが停止して小刻みに角度を変える必要がある。そのため、カプセル内視鏡には、回転により撮影部位まで移動する為の方向転換機能が必要であるが、発表した自走式カプセル内視鏡は、当該機能を有していなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Tajiri, H. What do we see in the endoscopy world in 10 years’ time?. Digestive Endoscopy. 2007, Vol.19(suppl.1), p.174−179.
【非特許文献2】de Franchis, R.; Rondonotti, E.; Villa, F. Capsule endoscopy−state of the art. Dig Dis. 2007, Vol.25, No.3, p. 249−251.
【非特許文献3】森田英次郎、大塚尚武、遠藤康則ほか、「磁場により駆動制御を行う自走式カプセル内視鏡作製の試み」、消化器内科、2009, Vol.48, No2, p.177−183
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、従来の筒状カプセルの内側に沿って設けた単一の電磁コイルの内に磁石を配置したリニア推進構造に変え、筒状カプセルの内側に、棒状コイルを設け、該棒状コイルの外側に駆動部を配置したリニア推進構造とすることで、カプセル内視鏡に方向転換機能を与えること、更に、棒状コイルを複数設け、該複数の棒状コイルの間に駆動部を配置し、複数の棒状コイルの通電を制御することで、カプセル内視鏡に前後方向への推進機能を与えるとともに、多様な方向への方向転換機能を与えることができることを新たに見出した。本発明は該新知見に基づいて成されたものである。
【0017】
すなわち、本発明の目的は、リニア推進機構を備えた自走式カプセル内視鏡において、多様な方向に回転できるようにすることで、小腸の憩室や狭窄部位での落込みや滞留から十分脱出できる機能を備えた自走式カプセル内視鏡を提供することである。また、本発明の他の目的は、患部周辺において疾患部に薬剤を塗布したり、患部を様々な角度から撮影するための方向転換機能を備えた自走式カプセル内視鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、以下に示す、自走式カプセル内視鏡に関する。
【0019】
(1)コイル部及び駆動部を含むリニア推進機構を内部に有する自走式カプセル内視鏡において、前記駆動部が前記コイル部の外側に設けられていることを特徴とする自走式カプセル内視鏡。
【0020】
(2)前記コイル部が3以上の奇数本で且つ等間隔に設置されていることを特徴とする前記(1)に記載の自走式カプセル内視鏡。
【0021】
(3)前記コイル部が3本であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の自走式カプセル内視鏡。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、棒状コイル及び該棒状コイルの外側に駆動部を配置したリニア推進機構とすることで、(1)カプセル内視鏡を小刻みに回転、(2)薬剤を疾患部に塗布、(3)疾患部を様々な角度から撮像・検査、することができる。また、棒状コイルを複数本設け、複数の棒状コイルの間に駆動部を配置し、複数の棒状コイル全てに通電又は一部のみに通電することで、カプセル内視鏡の前後方向及び上下左右方向への駆動をより確実に制御することができ、小腸の憩室や狭窄部位での落込みや滞留からも確実に脱出することができる。
【0023】
更に、カプセル内視鏡の前後方向の推進力及び方向転換機能は、棒状コイルへの通電制御のみで得られることから、外部磁場は必要なく、人体への影響を低減することができる。そして、棒状コイル部はカプセルの内側に間隔をあけて設けられるので、DDS機能の設計がしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明のリニア推進機構を有する自走式カプセル内視鏡の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の自走式カプセル内視鏡の推進駆動原理を示す。
【図3】図3は、本発明の自走式カプセル内視鏡の方向転換の原理を示す。
【図4】図4は、従来の自走式カプセル内視鏡の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のリニア推進機構を有する自走式カプセル内視鏡の一例を、図面を参照して説明する。図1は、自走式カプセル内視鏡10の全体の概略構成を示すもので、本発明の自走式カプセル内視鏡の内部には、消化管内を撮像するための構成、カプセル内視鏡を推進及び方向転換するための構成、及び撮像データを伝送するための構成が含まれている。
【0026】
消化管内を撮像するための構成は、自走式カプセル内視鏡の一端に設けられたオプティカルドーム11、オプティカルドーム11内に設けられたカメラ部12、電力受磁コイル部13、蓄電コンデンサ部14、及び図示されていないLED等の照明部を含んでいる。カメラ部12は、CCD撮像素子等、デジタル画像が撮像できるものであれば特に限定はされず、磁力による反作用を利用したピント調整機能と、図示されていない左右に配するLEDの明るさとの組合せにより、単眼でも立体的な映像を作り出すことが可能である。また自走式機能を搭載するため、光学式と同じ方式のイメージセンサーアシスト式手ぶれ補正機能を適用することもできる。カメラによる撮像時間が制限されると、体内画像の撮像に影響を与えることから、電力源は体外から確保することが望ましく、例えば、無線による電力伝送を採用するための電力受磁コイル部13が配置されている。この受磁された電力は蓄電コンデンサ部14に蓄積され、消化管内の撮像に加え、自走式カプセル内視鏡の推進力発生や方向転換用としても供給される。現在汎用されている多くのカプセル内視鏡では、カプセル内に撮像のためのバッテリーが搭載されているが、かなり小型化されているとはいえ、カプセル本体に占める容量は依然として大きい。外部からの電力伝送方式を採用すれば、カプセル内部に大きなフリースペースを確保することができ、精密検査や治療用薬剤・センサーなどを格納するコンパートメント15として使用でき、カプセル内視鏡の更なる用途拡大も期待できる。勿論、電池が、本発明の自走式カプセル内視鏡の機能を十分達成できる程度に小型化されれば、電池を自走式カプセル内視鏡の駆動源として用いることもできる。
【0027】
本発明のカプセル内視鏡は、コイル部16及び該コイル部16の外側に配置された駆動部17を有するリニア推進機構により、推進及び方向転換することができる。コイル部16は、エナメル、銅等の導電性が優れた細線を中空状に巻いた細い棒状コイル、又は鉄や磁石等の芯棒の周りにエナメル、銅等の導電性が優れた細線を巻きつけた細い棒状のコイルで作製され、内部電池、或いは外部磁場からの遠隔供給により供給された電気が通電されるよう作製されている。
【0028】
駆動部17は、コイル部16に通電し発生する磁界により駆動される部材で、鉄芯又は磁束密度の高い磁石であれば特に限定されず、例えば、ネオジウム等の磁石から成る。
【0029】
撮像データを伝送するための構成は、マイクロ波ビデオトランスミッタ部18を含み、自走式カプセル内視鏡のカメラ部12で撮像された画像データを、図示しないホストコンピュータに送信し、データの解析、診断を可能にする。
【0030】
リニア推進機構は、図示しないマイコンにより制御され、駆動信号は、無線によりカプセル内視鏡に送信することができる。
【0031】
次に、本発明のリニア推進駆動原理を説明する。図2は、図1の自走式カプセル内視鏡の断面図で、コイル部16を90度の等間隔で4本設けた場合の前後方向の推進原理を説明する図である。コイル部16のすべてに通電すると、図2(1)に示すように駆動部17は内視鏡のカプセルの中心に浮上した状態になる。次いで、駆動部17は、(2)に示すように、自走式カプセル内視鏡の中心部へ向かう加速度を与えられる。このとき自走式カプセル内視鏡には、反作用力によって右方向へスライドする推進力が与えられる。駆動部17が移動空間の中央部を通過すると、コイル部16に逆方向への電流を流す(3)。このとき可動磁石の反作用力で自走式カプセル内視鏡を動かそうとする力より、自走式カプセル内視鏡と外部環境との摩擦力が勝るようにするため、駆動部17の速度を(1)〜(2)の場合に比して遅くなるよう制御する。具体的にはマイコンによるPWM(Pulse Width Modulation)制御において、デューティー比(on−off時間の比率)を低く抑えることで実行される。上記操作を1サイクルとして繰り返せば、自走式カプセル内視鏡を図面の右方向に駆動させることが可能となる(以下、本方法を「スライド走行」と記載することがある。)。
【0032】
一方、図2(4)に示すように、自走式カプセル内視鏡の右端に駆動部17を衝突させ、その衝突力で自走式カプセル内視鏡を移動させる様式も可能である。この場合には、まず(1)の状態からコイル部16にデューティー比を抑えた電流を通じ、駆動部17を(3)の位置まで緩やかに移動させる。次いでコイル部16に逆向きの電流を、デューティー比を抑えることなく通ずると、駆動部17は右端に衝突するまで加速し続け、その衝撃力によって自走式カプセル内視鏡は右方向に移動する。このとき(4)の加速過程では、自走式カプセル内視鏡は反作用力によって左方向に移動することになるが、衝撃力による移動のほうが勝るため、上記の操作の繰り返しにより、機体は右方向へ正味の移動量を得ることが可能となる(以下、本方法を「ノック走行」と記載することがある。)。
【0033】
以上の説明は、自走式カプセル内視鏡を右方向に推進させる場合の駆動方法であるが、図2の(1)〜(4)の駆動部17の移動方向及び通電方向を逆にすることで、上記と同様の原理により、自走式カプセル内視鏡を左方向に推進させることも可能である。
【0034】
次に、本発明のリニア推進機構を用いた方向転換について説明する。図3の(1)及び(2)は、自走式カプセル内視鏡の駆動部17の移動方向の垂直断面図で、(1)はコイル部16a〜16d全てに通電した場合の駆動部17の位置を示している。駆動部17の中心は、自走式カプセル内視鏡のカプセルの中心と一致するため、図2に示すように、自走式カプセル内視鏡に左右への推進力を付与する。
【0035】
これに対して、例えば、図3(2)に示すように、コイル部の一部(図3(2)では、16a及び16d)のみに通電すると、駆動部17はコイル部16a及び16d方向に移動する。そして、(3)に示すように、駆動部17が自走式カプセル内視鏡のカプセルの中心から偏心した状態で右端に衝突すると、自走式カプセル内視鏡は矢印の方向に回転する力が与えられる。勿論、ノック走行方式に加え、偏心した状態であれば、スライド走行方式でも回転する力を与えることができる。そして、通電する方向転換ローターコイル部16を適宜変更し、また、通電方向を制御することで、自走式カプセル内視鏡に様々な方向へ回転する力を与えることが可能である。
【0036】
上記のとおり、コイル部16を複数本設けた場合、駆動部17は比較的容易に制御されるが、コイル部16が少なくとも1本あれば、駆動部17を駆動させることも可能である。カプセル内視鏡は、腸内で蠕動運動等により進行・通過する際に、腸壁の摩擦により回転が与えられるため、カプセル内視鏡のカプセルの内側面の近くに設けられたコイル部16は、腸内でカプセル内視鏡の上下左右等、様々な位置を取りうる。更に、駆動部17は重量の影響も受ける為、コイル部16の位置や加速速度により、駆動部17は多様な位置関係で駆動されることになり、結果として、カプセル内視鏡は、前後方向、上方左右への回転等、様々な動きをすることができる。
【0037】
しかしながら、上記のとおり、コイル部16が1本以上あれば本発明を実施することは可能であるが、図3(1)及び(2)に示すような制御もできる方が望ましいので、コイル部16は3本以上とし、コイル部16への通電を、1本、2本、全て等、適宜調整するようにした方が好ましい。
【0038】
更に、コイル部16は、非対称に配置されることが好ましい。例えば、コイル部16を3本の等間隔に配置した場合、カプセル内視鏡に上記のような回転が与えられると、コイル部16は、2本が底辺に位置する正三角形の状態になったり、1本のみが底部に位置する逆三角形の状態になる。そうすると、重量の作用により、駆動部17が、コイル部16と離れやすくなったり、接触状態になったりするなど動きやすくなり、自走式カプセル内視鏡の運動性能が向上する。
【0039】
一方、前後方向に推進制御する場合は全てのコイル部16に通電することが好ましいが、コイル部16の本数が多すぎると消費電力が多くなり、また、治療用薬剤等を搭載するコンパートメント15のスペースが少なくなり好ましくない。
【0040】
したがって、カプセル内視鏡への推進力、方向転換及びコンパートメント15のスペースを考えた場合、コイル部16は、3本であって、等間隔に配置することが最も好ましい。
【0041】
また、駆動部17は、移動空間を円滑に移動できるものであれば、球、円柱、立方体、直方体等、任意の形状を選ぶことができるが、円滑な駆動及びノック走行の際に衝撃力を壁面に効果的に与える観点から、円柱形状が好ましい。また、移動空間に占める駆動部17の大きさは、小さすぎると十分な推進力が得られず、また、大きすぎると偏心程度が小さくなり、カプセル内視鏡の方向転換が不十分になる。
【実施例】
【0042】
本発明の自走式カプセル内視鏡の試験用装置を次のように作製した。φ32×120の透明PVC(塩化ビニル)製薄肉円筒の内側に、エナメル線を線密度2.5本/mmで巻き付けた外径φ8の中空の棒状コイル3本を等間隔に設けた。また、3本の棒状コイルの間には、可動磁石(磁束密度400mTのネオジウム製、φ15×10)を設けた。走行試験は、電圧6V−電流2.1Aを供給し、磁束密度5.5mTを発生させた。
【0043】
上記の自走式カプセル内視鏡を、腸管内模型上に設置し実験を行った。本実施例で用いた腸管内模型の概略は、内径φ50、外径φ60、長さ500mmのアクリル製円筒を縦に1/2分割したものを使用し、その内面には約10mm間隔で高さ20mmのシリコン製ヒダを接着し、さらに全内表面にヒトの皮膚に摩擦係数が類似する超軟質ウレタン樹脂を被覆した。ウレタン樹脂は、主剤(ポリオールブレンド)と硬化剤(イソシアネート)をvol.比3:1で混合・硬化させ、シリコン製ヒダ表面に4〜8mmの厚みで被覆した。自走式カプセル内視鏡とテストコース表面との摩擦特性は実測し、静摩擦係数は0.25、動摩擦係数は0.018であった。
【0044】
コイル部16全てに通電した場合は、スライド走行及びノック走行方式の何れにおいても、カプセル内視鏡が前後に駆動することが確認された。また、コイル部16の一部のみに通電して駆動部17を駆動したところ、スライド走行及びノック走行方式の何れにおいても、自走式カプセル内視鏡が様々な方向に回転し、特に、腸管内模型のシリコン製ヒダに当接した状態でコイル部16の一部のみに通電した場合には、自走式カプセル内視鏡が飛び跳ねて逆方向にひっくり返る等の動作が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部及び駆動部を含むリニア推進機構を内部に有する自走式カプセル内視鏡において、前記駆動部が前記コイル部の外側に設けられていることを特徴とする自走式カプセル内視鏡。
【請求項2】
前記コイル部が3以上の奇数本で且つ等間隔に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の自走式カプセル内視鏡。
【請求項3】
前記コイル部が3本であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自走式カプセル内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111255(P2013−111255A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260020(P2011−260020)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名 :一般社団法人 日本医療機器学会 刊行物名 :「医療機器学」、第81巻、第3号 発行年月日:平成23年6月1日
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(304000836)学校法人 名古屋電気学園 (22)
【Fターム(参考)】