説明

自走式処理機械の供給コンベヤ装置

【課題】供給コンベヤ装置におけるコンベヤチェーンのローラ軸部への無駄な潤滑油の消費を改善することができる自走式処理機械の供給コンベヤ装置を提供する。
【解決手段】自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、油圧ポンプからの圧油を切換弁に供給する高速切換電磁弁64と、供給コンベヤ装置におけるコンベヤチェーンのローラ軸上に配置した潤滑油供給管50と、潤滑油供給管50に送給配管を介して連結された潤滑油貯留タンク55と、前記送給配管中に設けた潤滑油供給用電磁開閉弁56と、前記切換弁から前記油圧モータに供給される圧油の圧力を検出する油圧センサ68と、油圧センサからの検出値を取り込み、この検出値が予め設定した閾値以上の場合、高速切換電磁弁64に高速切換位置への切換信号を出力し、潤滑油供給用電磁開閉弁56に開指令信号を出力する制御手段69とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式処理機械の供給コンベヤ装置に係り、更に詳しくは、チェーンにより駆動されるプレートコンベヤを有する自走式処理機械の供給コンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伐採された樹木や剪定された木の枝や家屋解体等で発生する廃木材などの被粉砕物をチップ状に粉砕する木材破砕機として、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された木材破砕機には、破砕装置に向かって被破砕物を搬送する供給コンベヤ装置を備えている。
【0003】
この供給コンベヤ装置は、木材破砕機の左右方向に分けて設けた一対の駆動輪と、この一対の駆動輪に対して木材破砕機の前後方向に離れた位置にそれぞれ設けた一対の従動輪と、複数のチェーンリンクをローラ軸によって無端状に連結され、一対の駆動輪及び一対の従動輪にそれぞれ掛け回された一対のコンベヤチェーンと、一対のコンベヤチェーンの間に複数配設され、供給コンベヤ装置の搬送面を構成するコンベヤプレートとを備え、複数のチェーンリンクを連結するローラ軸には、レール上を転動するローラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−168206号公報(段落0030−段落0032.図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の木材破砕機は、作業終了後、供給コンベヤ装置上に残留した木片や葉等の残留物を外部に掃き出すための清掃作業を行っている。そのため、複数のチェーンリンクを連結するローラ軸の部分に、残留物中の砂塵、小片、粉塵等が溜まり込み易く、その場合、摺動抵抗が増大する。
【0006】
この摺動抵抗を軽減するために、潤滑油等をローラ軸部に滴下するが、この際、コンベヤチェーンを駆動しながら滴下すると、コンベヤチェーンの速度が通常作業で使用する低速で駆動するので、潤滑油は、コンベヤチェーンのローラ軸部に十分滴下されず、コンベヤチェーンのローラ軸部間から下方に落下する量が多くなるという問題があった。
【0007】
また、潤滑油をローラ軸部に確実に滴下するために、潤滑油を連続して滴下すると、潤滑油を無駄に消費するという不具合を生じる。
【0008】
本発明の目的は、供給コンベヤ装置におけるコンベヤチェーンのローラ軸部への無駄な潤滑油の消費を改善することができる自走式処理機械の供給コンベヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、複数のチェーンリンクをローラ軸によって無端状に連結され、駆動輪及び従動輪にそれぞれ掛け回されたコンベヤチェーンと、前記コンベヤチェーンの間に複数配設されたコンベヤプレートと、前記ローラ軸に設けられ、レール上を転動するローラとからなる自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、前記駆動輪に連結した油圧モータと、前記油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプと前記油圧モータとの連結配管中に設けた切換弁と、前記油圧ポンプから供給される圧油の量を調整する流量調整手段と、前記コンベヤチェーン上に配置した潤滑油供給管と、前記潤滑油供給管に送給配管を介して連結された潤滑油貯留タンクと、前記送給配管中に設けた潤滑油供給用電磁開閉弁と、前記切換弁から前記油圧モータに供給される圧油の圧力を検出する油圧センサと、前記油圧センサからの検出値を取り込み、この検出値が予め設定した閾値以上の場合、前記流量調整手段に高速切換位置への切換信号を出力し、前記潤滑油供給用電磁開閉弁に開指令信号を出力する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記制御手段は、前記油圧センサからの検出値が予め設定した閾値以下となった場合に、前記潤滑油供給用電磁開閉弁に閉指令信号を出力し、前記流量調整手段に低速切換位置への切換信号を出力することを特徴とする。
【0011】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記制御手段は、前記油圧センサからの検出値が、一定時間、閾値以下にならない場合に、警報信号を出力することを特徴とする。
【0012】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記流量調整手段は、高速切換電磁弁と流量調整弁とを備えたことを特徴とする。
【0013】
更に、第5の発明は、第4の発明において、前記流量調整弁は、絞り量を調整可能な可変絞りであることを特徴とする。
【0014】
また、第6の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記流量調整手段は、比例電磁弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供給コンベヤ装置におけるコンベヤチェーンのローラ軸部への潤滑油の無駄な消費を抑えることができるとともに、ローラ軸部の潤滑性を確保できるので、供給コンベヤ装置の耐久性、及び信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の側面図である。
【図2】図1に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の上面図である。
【図3】図1に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の背面図である。
【図4】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機を図2のIV-IV矢視から見た断面図である。
【図5】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態の後部の右側面である。
【図6】図5に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態をV−V矢視から見た断面図である。
【図7】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の一例を示す回路構成図である。
【図8】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の制御動作を説明するフローチャート図である。
【図9】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の他の例を示す回路構成図である。
【図10】本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の更に他の例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の自走式処理機械の供給コンベヤ装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0018】
図1乃至図6は本発明の自走式処理機械である自走式木材破砕機の供給コンベヤ装置の実施の形態を示すもので、図1は本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の側面図、図2は図1に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の上面図、図3は図1に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機の背面図、図4本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を備えた自走式木材破砕機を図2のIV-IV矢視から見た断面図、図5は本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態の後部の右側面、図6は図5に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態をV−V矢視から見た断面図である。なお、以下において、図1中の左・右に対応する方向を木材破砕機の後・前とする。
【0019】
図示した自走式木材破砕機は、自力走行するための走行装置1と、走行装置1の上部に設けられ、被破砕物を破砕する破砕機能構成部2と、この破砕機能構成部2で破砕された破砕物を搬送し機外に排出する排出コンベヤ3と、搭載した各機器の動力源であるエンジン等を備えた動力装置(パワーユニット)4を主に備えている。
【0020】
走行装置1は、油圧モータ等の駆動装置(図示せず)によって回転駆動が与えられる一対の駆動輪5、及び駆動輪5の後方に設けられた一対の従動輪6を有しており、これら各駆動輪5及び従動輪6に履帯7をかけ回して構成されるクローラ式の走行装置である。なお、走行装置1は、図示したクローラ式に代えて、複数のタイヤで構成されるホイール式等にしても良い。
【0021】
破砕機能構成部2は、被破砕物を破砕する破砕装置8(図4参照)と、機体後方に設けられ、グラップル等の適宜の作業具を備えた重機等(例えば油圧ショベル)によって投入される被破砕物を受け入れるホッパ9と、ホッパ9の底部に設けられ、ホッパ9で受け入れた被破砕物を破砕装置8に向かって搬送する供給コンベヤ装置10と、供給コンベヤ装置10上の被破砕物を上方から押さえ込みながら供給コンベヤ装置10と協働して破砕装置8に向かって搬送する供給ローラ11と、供給コンベヤ10及び供給ローラ11によって破砕装置8へ送り出される被破砕物が通過する受け板13を主に備えている。
【0022】
破砕装置8は、破砕室14(後述)内において回転軸15によって支持され、回転軸15に連結された油圧モータ等の駆動装置(図示せず)によって回転駆動される回転ドラム16と、回転ドラム16の外周面上に複数配された取り付け部材17に取り付けられ、被破砕物を破砕するカッタビット18と、供給コンベヤ10及び受け板13が形成する搬送面と連なるように設けられた上面を有し、カッタビット18と伴って被破砕物を剪断破砕する固定刃19を備えている。
【0023】
回転ドラム16は、破砕室14に導入される被破砕物にカッタビット18を上方から衝突させるように回転されている(図4中の矢印方向)。この回転ドラム16の外周面上には、上記カッタビット18等の他に、回転ドラム16の径方向に広がる面を有する板部材であるウイング25が複数取り付けられている。このウイング25は、回転ドラム16の回転によって破砕室14内に風力を発生させ、破砕室14内の被破砕物を攪拌するとともに排出スクリーン20を介して破砕室14外へ掻き出している。
【0024】
固定刃19は、受け板13の上面と連なるように設けられた上面(搬送面)を有し、受け板13の破砕装置8側に破砕装置8(破砕室14)に臨むように設けられている。
【0025】
排出スクリーン20の前方側の上方には排出スクリーン20を外側から覆うように衝突板26が設けられている。排出スクリーン20を通過した破砕物は、この衝突板26に衝突して排出コンベヤ3上に落下する。衝突板26は油圧シリンダ(図示せず)によって上下回動可能に取り付けられており、必要な場合には上方に回動させることにより排出スクリーン20を露出させ、排出スクリーン20の交換及び点検を行うことができる。
【0026】
ホッパ9は、供給コンベヤ装置10の両側面から上方へ立ち上がりながら互いに幅方向の異なる方向へ拡がる2つの壁部30,31を有している。機体側面に位置する壁部31は、図3に示すように、動力装置4側に位置する壁部30と比較して背が低く設けられている。そのため、油圧ショベル等の重機で壁部31の方からホッパ9に容易に接近することができ、被破砕物の投入性に配慮した構造となっている。
【0027】
受け板13は、供給コンベヤ装置10の被破砕物の搬送面と連なるように設けられた上面(搬送面)を有し、供給コンベヤ装置10の破砕装置8側に固定刃19と隣接して設けられている。これにより供給コンベヤ装置10、受け板13、及び固定刃19の搬送面の高さは、ほぼ同一の高さに設定されている。
【0028】
次に、本発明の自走式木材破砕機の供給コンベヤ装置10の一実施の形態を、図2、図4乃至図6を用いて説明する。
図5は本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態の後部の右側面、図6は図5に示す本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態をV−V矢視から見た断面図であり、この図5及び図6において、図1乃至図4と同じ部分には同じ符号を付し、説明は省略する。
これらの図において、供給コンベヤ(プレートコンベヤ)装置10は、破砕装置8側に設けられた一対の駆動スプロケット(駆動輪)41と、油圧モータ等の駆動装置(図示せず)によって回転駆動され、一対の駆動スプロケット41を連結する駆動軸40と、駆動軸40の後方に間隔を介して設けられた従動軸42(図4参照)と、従動軸42の両端に取り付けられた一対の従動スプロケット(従動輪)43(図4参照)と、一対の駆動スプロケット41及び一対の従動スプロケット42にそれぞれ掛け回され、駆動スプロケット41の回転に伴って周回する一対のコンベヤチェーン44と、一対のコンベヤチェーン44の間に複数配設され、供給コンベヤ装置10の搬送面を構成するコンベヤプレート46を主に備えている。
【0029】
コンベヤチェーン44は、図5及び図6に示すように、供給コンベヤ装置10の本体10aの長手方向内側に沿って概ね水平に設けられたレール47上をローラ軸48を中心にしながら転動する複数のチェーンローラ49と、隣り合うチェーンローラ49同士をローラ軸48を介して両側面から連結し、連鎖状のコンベヤチェーン44を構成するリンクプレート45とを有している。リンクプレート45は、チェーンローラ49の側面に沿って立ち上がった後に内側(対向するコンベヤチェーン44の方向)にほぼ直角に曲がるL字型に成形されている。
【0030】
コンベヤプレート46は、一対のコンベヤチェーン44の対応するリンクプレート45の先端部にボルト等の結合手段によって両端をそれぞれ連結され、一対のコンベヤチェーン44上に架け渡されている。コンベヤプレート46は、駆動スプロケット41及び従動スプロケット43に掛け回されるようにコンベヤチェーン44の駆動方向(被破砕物の搬送方向)に沿って複数配列されて、被破砕物が搬送される面(搬送面)をコンベヤチェーン44の外周側に構成している。
【0031】
供給コンベヤ装置10におけるローラ軸48の両側部上には、ローラ軸48の両側部に潤滑油を自重で滴下するための潤滑油供給管50が供給コンベヤ装置10の本体10aに内側面にそれぞれ配設されている。図6の左側における一方の潤滑油供給管50と図6の右側における他方の潤滑油供給管50は、管継ぎ手51、連結配管52を介して供給コンベヤ装置10の横桁10bの中間部に設けた中間管継ぎ手53にそれぞれ連結されている。
【0032】
中間管継ぎ手53には、潤滑油の送給配管54の一方端が連結している。送給配管54の他方端は、供給コンベヤ装置10の右側方に引き出されて潤滑油貯留タンク55に連結されている。潤滑油貯留タンク55は、ホッパ9の壁部30に固定されている。送給配管54の途中には、オンオフ形の潤滑油供給用電磁開閉弁56が設けられている。この潤滑油供給用電磁開閉弁56は、供給コンベヤ装置10の本体10a上に設置されている。
【0033】
次に、本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の一例を示す回路構成、及び本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の制御動作を、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7において、図5及び図6と同じ部分には同じ符号を付し、説明は省略する。
本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路は、供給コンベヤ装置10の一対の駆動輪41の駆動軸40に連結した双方向回転(正逆回転)可能な油圧モータ57と、油圧モータ57に圧油を供給する油圧ポンプ58と、油圧ポンプ58から油圧モータに供給される圧油の方向を切換えて、油圧モータ57を正回転又は逆回転に変更する3位置4ポート形の正逆転用電磁切換弁59と、作動油を貯留するタンク60を備えている。
【0034】
正逆転用電磁切換弁59と油圧モータ57は、正転用の配管61、逆転用の配管62によって連結している。また、正逆転用電磁切換弁59は、圧油送給用の配管63と、2位置3ポート形の高速切換電磁弁64を介して油圧ポンプ58に連結し、排油管65によってタンク60に連結している。高速切換電磁弁64と圧油送給用の配管63には、圧油送給用の配管63に対して配管66によって並列に連結され、油圧ポンプ58から油圧モータ57に供給される圧油量を制御する手動操作式の流量調整弁67の流量調整手段が設けられている。
【0035】
前述した正逆転用電磁切換弁59は、中立位置59aから切換位置59bに切換えられると、油圧ポンプ58からの圧油を正転用の配管61に供給し、油圧モータ57を正回転させ、また、中立位置59aから切換位置59cに切換えられると、油圧ポンプ58からの圧油を逆転用の配管62に供給し、油圧モータ57を逆回転させる。
【0036】
前述した高速切換電磁弁64は、通常、中立位置64aにあり、油圧ポンプ58からの圧油を流量調整弁67に供給する。流量調整弁67は、油圧ポンプ58からの圧油の量を絞り、正逆転用電磁切換弁59に供給する。これにより、流量調整弁67によって絞られた圧油が、正逆転用電磁切換弁59を介して油圧モータ57に供給され、油圧モータ57が低速で回転される。
【0037】
また、高速切換電磁弁64は、中立位置64aから切換位置64bに切換えられると、油圧ポンプ58からの圧油を正逆転用電磁切換弁59に供給する。これにより、油圧ポンプ58からの圧油が、正逆転用電磁切換弁59を介して油圧モータ57に供給され、油圧モータ57が高速で回転される。この油圧モータ57の高速回転は、後述するコンベヤチェーン44のローラ軸48部を潤滑する場合に用いられる。
【0038】
本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する潤滑油供給回路は、前述したように、潤滑油貯留タンク55内の潤滑油を、送給配管54、潤滑油供給用電磁開閉弁56を通して潤滑油供給管50に供給する構成である。なお、図7においては、作図の関係上、配管の表示を一部省略している。
【0039】
油圧モータ57の正転用の配管61には、油圧モータ57への供給圧油の圧力を検出する油圧センサ68が設けられている。この油圧センサ68は、油圧モータ57の負荷状態、即ち、コンベヤチェーン44のローラ軸48部での抵抗に関連する状態量を検出するものである。
【0040】
前述した正逆転用電磁切換弁59、高速切換弁64、及び潤滑油供給用電磁開閉弁56を切換制御するために、コントローラ(制御手段)69を備えている。コントローラ69には、コンベヤチェーン44の正転操作用スイッチ70、停止スイッチ71、逆転操作用スイッチ72、及び潤滑油供給用電磁開閉弁56を開位置に切換操作する潤滑操作用スイッチ73が接続している。また、コントローラ69には、正転用の配管61の圧力を検出する油圧センサ68からの検出信号が入力されている。
【0041】
コントローラ69は、コンベヤチェーン44の正転操作用スイッチ70の投入信号を取り込むと、正逆転用電磁切換弁59に切換位置59bへの切換信号を出力し、コンベヤチェーン44の逆転操作用スイッチ72の投入信号を取り込むと、正逆転用電磁切換弁59に切換位置59cへの切換信号を出力する。また、コントローラ69は、停止スイッチ71の投入信号を取り込むと、正逆転用電磁切換弁59に中立位置への復帰信号を出力する。
【0042】
また、コントローラ69は、潤滑操作用スイッチ74の投入信号を取り込み、高速切換電磁弁64を中立位置64aから切換位置64bに切換信号を出力する。これにより、高速切換電磁弁64は、油圧ポンプ58からの圧油を流量調整弁67を介さずに正逆転用電磁切換弁59に供給する。
【0043】
また、コントローラ69は、油圧モータ57への供給圧油の閾値、及び閾値との比較を行う一定時間を記憶する記憶部と、油圧センサ68からの検出値が、予め設定した閾値以上及び一定時間以下の場合には、コンベヤチェーン44のローラ軸48の部分に、残留物中の砂塵、小片、粉塵等が溜まり込み、摺動抵抗が増大していると判断して、潤滑油供給用電磁開閉弁56に開信号を出力し、また、高速切換電磁弁64に切換位置64bへの切換信号を出力する手順を実行する演算部とを備えている。これにより、コンベヤチェーン44は被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回動作し、このコンベヤチェーン44のローラ軸48部には、潤滑油が一定時間給油される。
【0044】
また、コントローラ69は、油圧センサ68からの検出値が、予め設定した閾値以上及び一定時間以上の場合には、警告灯、警報器等の警報手段74に警報信号を出力する演算手順を実行する。上述した制御動作の詳細については、後述する。
【0045】
次に、上述した本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態の動作を説明する。
被破砕物を破砕する場合、コンベヤチェーン44の正転操作用スイッチ70を投入すると、コントローラ69は、正逆転用電磁切換弁59に切換位置59bへの切換信号を出力するので、正逆転用電磁切換弁59は、流量調整弁67によって絞られた圧油を油圧モータ57に供給する。これにより、油圧モータ57は低速で回転される。
【0046】
この状態において、グラップル等の適宜の作業具を備えた重機等(例えば油圧ショベル)によって投入される被破砕物をホッパ9を介して供給コンベヤ装置10に供給すると、供給コンベヤ装置10は、その被破砕物は供給コンベヤ装置10におけるコンベヤプレート46の周回動作により、被破砕物を破砕機能構成部2に供給する。これにより、被破砕物は破砕機能構成部2で破砕されて、排出コンベヤ3から外部に排出される。
【0047】
上述した木材破砕機の破砕処理作業の使用により、供給コンベヤ装置10におけるローラ軸48部の粉塵等が堆積すると、供給コンベヤ装置10におけるコンベヤチェーン44の周回動作が重くなるので、供給コンベヤ装置10におけるローラ軸48部に潤滑油を供給する必要がある。
【0048】
この供給コンベヤ装置10におけるローラ軸48部に潤滑油を供給する動作を、図8のフローチャート図を用いて説明する。
この場合、まず、潤滑操作用スイッチ73を投入すると(ステップ81)、コントローラ69は、潤滑操作用スイッチ73のオン信号を取り込み、高速切換電磁弁64を中立位置64aから切換位置64bに切換える(ステップ82)。これにより、高速切換電磁弁64は、油圧ポンプ58からの圧油を圧油送給用の配管63を通して正逆転用電磁切換弁59に供給する。
【0049】
次に、正転操作用スイッチ70を投入すると(ステップ83)、コントローラ69は、正転操作用スイッチ70の投入信号を取り込み、正逆転用電磁切換弁59に切換位置59cへの切換信号を出力するので、正逆転用電磁切換弁59は、油圧ポンプ58からの圧油を正転用の配管61を通して油圧モータ57に供給する。これにより、供給コンベヤ装置10におけるコンベヤチェーン44の周回動作は、被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回する。また、コントローラ69は、正転操作用スイッチ70の投入信号の取り込みに応動して潤滑油供給用電磁開閉弁56に開信号を出力する(ステップ84)。これにより、潤滑油は、潤滑油供給管50によって被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回しているコンベヤチェーン44のローラ軸48部に滴下する。
【0050】
この状態において、コントローラ69は、油圧センサ68からの検出信号を取り込み、この検出値が予め設定した閾値以上であるかを判断し(ステップ85)、検出値が予め設定した閾値以下を一定時間(例えば、30秒)以上継続したか否かを判断し(ステップ86)、検出値が予め設定した閾値以下を一定時間以上継続した場合、潤滑操作用スイッチ73をオフにする(ステップ87)。検出値が予め設定した閾値以下を一定時間以上継続しない場合には、上述のステップ85に戻る。
【0051】
次に、ステップ85において、検出値が予め設定した閾値以上を一定時間(例えば、10分)以上継続したか否かを判断し(ステップ88)、検出値が予め設定した閾値以上を一定時間以上継続した場合、警報手段74に警報作動信号を出力し、検出値が予め設定した閾値以上を一定時間以上継続しない場合には、上述のステップ85に戻る。
【0052】
上述したように、本発明の一実施の形態によれば、被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回しているコンベヤチェーン44のローラ軸48部に、潤滑油供給管50から潤滑油を滴下することができるので、潤滑油のローラ軸48部への無駄な消費を改善することができるとともに、ローラ軸48部の潤滑性を確保できるので、供給コンベヤ装置の耐久性、及び信頼性が向上する。また、潤滑油のローラ軸48部への給油時間も短縮され、破砕機の稼動性も向上する。
【0053】
図9は、本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の他の例を示すもので、この図9において、図8と同じ部分には同じ符号を付し、説明は省略する。
この実施の形態は、上述した図8に示す本発明の一実施の形態における高速切換電磁弁64と流量調整弁67を、比例電磁弁75に置き換えて構成したものである。
【0054】
この実施の形態においても、前述した実施の形態と同様に、被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回しているコンベヤチェーン44のローラ軸48部に、潤滑油供給管50から潤滑油を滴下することができるので、潤滑油のローラ軸48部への無駄な消費を改善することができるとともに、ローラ軸48部の潤滑性を確保できるので、供給コンベヤ装置の耐久性、及び信頼性が向上する。また、潤滑油のローラ軸48部への給油時間も短縮され、破砕機の稼動性も向上する。更に、油圧回路系が簡素化する。
【0055】
図10は、本発明の供給コンベヤ装置の一実施の形態を構成する油圧駆動回路及び潤滑油供給回路の更に他の例を示すもので、この図10において、図8と同じ部分には同じ符号を付し、説明は省略する。
この実施の形態は、図8に示す本発明の一実施の形態における正逆転用の油圧モータ57を、一方向回転用の油圧モータ76に置き換え、また、正逆転用電磁切換弁59を2位置4ポート形のオンオフ電磁弁77に置き換えて構成したものである。
【0056】
この実施の形態においても、前述した実施の形態と同様に、被破砕物の破砕時における速度よりも速い速度で周回しているコンベヤチェーン44のローラ軸48部に、潤滑油供給管50から潤滑油を滴下することができるので、潤滑油のローラ軸48部への無駄な消費を改善することができるとともに、ローラ軸48部の潤滑性を確保できるので、供給コンベヤ装置の耐久性、及び信頼性が向上する。また、潤滑油のローラ軸48部への給油時間も短縮され、破砕機の稼動性も向上する。
【0057】
上述においては、本発明を自力走行可能な木材破砕機に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られず、牽引して走行可能な移動式木材破砕機、若しくは例えばクレーン等により吊り上げて運搬可能な可搬式木材破砕機、さらにはプラント等において固定機械として配置される定置式木材破砕機に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 走行装置
2 破砕機能構成部
3 排出コンベヤ
4 動力装置(パワーユニット)
10 供給コンベヤ装置
41 駆動輪
42 従動軸
44 コンベヤチェーン
48 ローラ軸
50 潤滑油供給管
55 潤滑油貯留タンク
56 潤滑油供給用電磁開閉弁
57 油圧モータ
58 油圧ポンプ
59 正逆転用電磁切換弁
64 高速切換電磁弁
67 流量調整弁
68 油圧センサ
69 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチェーンリンクをローラ軸によって無端状に連結され、駆動輪及び従動輪にそれぞれ掛け回されたコンベヤチェーンと、前記コンベヤチェーンの間に複数配設されたコンベヤプレートと、前記ローラ軸に設けられ、レール上を転動するローラとからなる自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記駆動輪に連結した油圧モータと、
前記油圧モータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプと前記油圧モータとの連結配管中に設けた切換弁と、
前記油圧ポンプから供給される圧油の量を調整する流量調整手段と、
前記コンベヤチェーン上に配置した潤滑油供給管と、
前記潤滑油供給管に送給配管を介して連結された潤滑油貯留タンクと、
前記送給配管中に設けた潤滑油供給用電磁開閉弁と、
前記切換弁から前記油圧モータに供給される圧油の圧力を検出する油圧センサと、
前記油圧センサからの検出値を取り込み、この検出値が予め設定した閾値以上の場合、前記流量調整手段に高速切換位置への切換信号を出力し、前記潤滑油供給用電磁開閉弁に開指令信号を出力する制御手段とを備えた
ことを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記制御手段は、前記油圧センサからの検出値が予め設定した閾値以下となった場合に、前記潤滑油供給用電磁開閉弁に閉指令信号を出力し、前記流量調整手段に低速切換位置への切換信号を出力する
ことを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記制御手段は、前記油圧センサからの検出値が、一定時間、閾値以下にならない場合に、警報信号を出力する
ことを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記流量調整手段は、高速切換電磁弁と流量調整弁とを備えたことを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記流量調整弁は、絞り量を調整可能な可変絞りであることを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自走式処理機械の供給コンベヤ装置において、
前記流量調整手段は、比例電磁弁であることを特徴とする自走式処理機械の供給コンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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