説明

自走式小型走行玩具

【課題】モータとゼンマイとの2つの動力源を使い分けて2種類の自走走行をさせることができる自走式小型走行玩具を提供すること。
【解決手段】玩具本体1には駆動輪2を駆動するためのモータ駆動機構3とゼンマイ駆動機構4との2つの駆動機構とを備え、上記モータ駆動機構3を作動させるために電源ON操作をすると、上記モータ駆動機構3が機能するとともにゼンマイ駆動ユニット4が機能しなくなり、上記ゼンマイ駆動機構4を作動させるために電源OFF操作をするとゼンマイ駆動機構4が機能するとともにモータ駆動機構3が機能しなくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式小型走行玩具、詳しくはモータ駆動とゼンマイ駆動との2つの駆動源を備えた自走式小型走行玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自走する走行玩具はモータを駆動力にして電動走行するものが一般的であるが、電池が消耗した場合でも、手押し走行玩具と同様な感覚で遊ぶことができる走行玩具が提案されている(例えば、特許文献1)。この走行玩具は、外部操作部の操作によって可動歯車を移動させることによって、自走走行と手押し走行とを切り替えられるようにしたものである。
【特許文献1】特開平6−190151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上述の走行玩具は、モータを駆動力として走行させる自走走行と手押し走行とを切り替えて遊ぶことはできるが、自走走行の駆動力として考えられるの他の駆動力であるゼンマイを用いて走行させることはできないため、電池が消耗すると自走走行で遊ぶことができなくなる点であった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決し、モータとゼンマイとの2つの動力源を使い分けて2種類の自走走行をさせることができる自走式小型走行玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る自走式小型走行玩具は、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)玩具本体には駆動輪を駆動するためのモータ駆動機構とゼンマイ駆動機構との2つの駆動機構とを備えること
(ロ)上記モータ駆動機構を作動させるために電源ON操作をすると、上記モータ駆動機構が機能するとともにゼンマイ駆動ユニットが機能しなくなり、上記ゼンマイ駆動機構を作動させるために電源OFF操作をするとゼンマイ駆動機構が機能するとともにモータ駆動ユニットが機能しなくなること
なお、前記自走式小型走行玩具は、以下の要件を備えることが好ましい。
(イ)前記駆動輪のシャフトはシャーシー上に左右方向に移動しないように軸支されていること
(ロ)前記モータ駆動機構とゼンマイ駆動機構とはユニットケースに収容され、該ユニットケースは上記シャーシー上を左右にスライド可能に配置されていること
(ハ)上記シャフトには前記ゼンマイ駆動機構に連係する駆動歯車と、前記モータ駆動機構に連係するクラッチ歯車が固定され、ユニットケースを一方にスライドさせたときにはゼンマイ駆動機構が機能するとともにクラッチ歯車とモータ駆動機構との連係が外れ、ユニットケースを他方にスライドさせたときにはモータ駆動機構が機能するとともに上記駆動歯車とゼンマイ駆動機構との連係が外れること
そして、前記ゼンマイ駆動機構のゼンマイは上記駆動輪を後転させることにより巻き上げられるようにすればよい。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、小型の走行玩具でありながら内部にモータ駆動機構とゼンマイ駆動機構との2つの駆動機構を備え、電源をONするかOFFするかの操作で、モータ駆動機構とゼンマイ駆動機構とのいずれかを選択するとともに、選択されない駆動機構を機能しないようにすることができる画期的な自走式小型走行玩具を提供することができる。
【0007】
請求項2の発明によれば、モータ駆動機構とゼンマイ駆動機構との2つの駆動機構を内装したユニットケースをシャーシー上に左右にスライド可能に配置し、駆動輪のシャフトに固定された駆動歯車と、クラッチ歯車との連係を変えることにより、特別な機構を付加することなく選択することができる自走式小型走行玩具を実現することができる。
【0008】
請求項3の発明によれば、ゼンマイの巻上げを簡単に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明に係る自走式小型走行玩具の一例を示し、この自走式小型走行玩具1は駆動輪2を駆動するためにモータ駆動機構3とゼンマイ駆動機構4との2つの駆動機構をユニットケース5内に収容し、このユニットケース5を左右にスライドさせることにより、後述するモータのON/OFFを制御するとともに、モータのON時にはモータ駆動機構3を有効にし、モータのOFF時にはゼンマイ駆動機構4を有効にして何れの場合においても自走走行ができるようにした、全長5センチ程度の小型の走行玩具である。
【0010】
図2はボディを外した状態のシャーシー6とユニットケース5との関係を説明する分解斜視図を示し、シャーシー6の床面にはボタン電池7をセットするための開口部10が形成され、この開口部10に並接してボタン電池7のプラス極7aに接触可能に配置されたプラス電極11が固定されている。なお、この開口部10の後端に一体に形成された切欠き部12はユニットケース5の裏側面に形成された後述する摘み8を露出させるためのもので、摘み8を左右に動かすことによってユニットケース5を左右にスライド移動させることができるようになっている。
【0011】
さらに、上記シャーシー6にはユニットケース5を前後から保持する保持部13が形成されている。この保持部13は開口部10の前側に立設形成された係合板14と、後部壁面に形成された係合縁15とで構成されている。上記係合板14の上端には背面側にフック16が形成され、上記ユニットケース5の前面に形成された係合凸部20に係合板14のフック16が係合し、ユニットケース5の背面に形成された係合凸部21に係合縁15が係合し、ユニットケース5はシャーシー6上を左右にスライドできるように保持されている。
【0012】
なお、シャーシー6の上面にはユニットケース5を左右にスライドさせたとき、スライド状態が維持できるようにスタビライザー22が形成されている。
【0013】
ボタン電池7はシャーシー6の裏側から開口部10を介して、ユニットケース5内に収容するが、ボタン電池7はマイナス極7bがユニットケース5の左内側面に配置されたマイナス電極23に圧接する状態で収容されるようになっている。なお、符号24は電池蓋を示す。
【0014】
前輪25はシャフト26がシャーシー6の前部側壁に形成された軸受27にセットされた状態でユニットケース5の前部形成された凹溝28で軸受27から外れないように保持されている。
【0015】
次に、図3に基づいてユニットケース5内に配置されたモータ駆動機構3と、ゼンマイ駆動機構4とについて説明する。
【0016】
先ず、駆動輪2はシャフト30の両端に固定されるとともに、このシャフト30はシャーシー6の軸受31に保持され、駆動輪2の内側面に突出形成された凸部2aがシャーシー6の外側面に当接しシャフト30はシャーシー6に対し左右位置がずれないようになっている。
【0017】
このシャフト30には駆動歯車32と固定リング33とが固定され、駆動歯車32と固定リング33との間にはスプリング34とクラッチ歯車35とが配置されている。固定リング33はクラッチ歯車35の側面に形成された凹部35aに遊嵌してスプリング34でクラッチ歯車35が固定リング33に押し付けられた状態になっている。
【0018】
モータ駆動機構3はモータ40と、モータ40の出力軸に固定されたピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ41に噛み合う第1の二段歯車42と、この第1の二段歯車42に噛み合う第2の二段歯車43と、この第2の二段歯車43に噛み合う第3の二段歯車44と、この第3の二段歯車44に噛み合う平歯車45とで構成されている。なお、平歯車45の内側面にはクラッチ歯車46が形成され、このクラッチ歯車46には上記クラッチ歯車35がスプリング34に付勢されて噛み合うようになっており、モータの回転は、ピニオンギヤ41、第1の二段歯車42、第2の二段歯車43、第3の二段歯車44を介して平歯車45に伝達され、この平歯車45と一体のクラッチ歯車46を介してクラッチ歯車35に伝達され駆動歯車が32回転し、駆動輪2が回転するようになっている。
【0019】
なお、上記スプリング34は駆動輪2が回転できない状態が発生し駆動歯車32が回転しなくても、クラッチ歯車35とクラッチ歯車46との噛み合いがずれるようにしてモータ40に負荷がかからないようにするためのものである。
【0020】
なお、第2の二段歯車43と、平歯車45とはシャフト30にフリーになっており、ユニットケース5のスライド移動時には他の二段歯車42、44と噛み合った状態でスライド移動するようになっている。
【0021】
ゼンマイ駆動機構4は、ゼンマイ50と、ゼンマイ50の一端50aがシャフト51に形成されたスリット51a係止された平歯車52と、この平歯車52に噛み合う遊星歯車53と、この遊星歯車53に噛み合う二段歯車54とで構成され、この二段歯車54は上述の駆動歯車32に常に噛み合うようになっており、駆動輪2を後転させたときには駆動歯車32、二段歯車54、遊星歯車53を介して平歯車52が回転し、ゼンマイ50を巻き上げることができるようになっている。
【0022】
次に、上記構成の自走式小型走行玩具の走行態様について説明する。
【0023】
先ず、モータ40を駆動力として、自走走行する場合を説明する。図4(a)の底面図に示すように、切欠き部12に露出している摘み8を左(矢印a方向)に動かすと、ユニットケース5は図面上でシャーシー6に対し左にスライドする。この状態では、図4(b)に示すように、ユニットケース5は右(矢印b方向)にスライドするが、駆動輪2とシャフト30とはシャーシー6に対しに横位置は変わらないのでクラッチ歯車46はクラッチ歯車35に噛み合う。
【0024】
一方、ボタン電池7のマイナス極7bはマイナス電極23に圧接した状態で、ユニットケース6とともに右に移動するので、プラス極7aはシャーシー6の床面に固定されたプラス電極11に接触し、モータ40に電圧が印加され、モータ40が回転する。モータ40が回転すると、ピニオンギヤ41、第1の二段歯車42、第2の二段歯車43、第3の二段歯車44を介して平歯車45に伝達され、この平歯車45と一体のクラッチ歯車46を介してクラッチ歯車35に伝達され駆動歯車が32回転して駆動輪2が回転し、自走式小型走行玩具1はモータを駆動力として自力走行するようになっている。
【0025】
なお、この時は図6(a)に示すように、駆動歯車32が反時計方向に回転し、二段歯車54が時計方向に回転し、遊星歯車53が反時計方向に回転するが、遊星歯車53は平歯車52を回転させようとするが、平歯車52にはゼンマイが連係しているため遊星歯車53は平歯車32を駆け上がるようにして長孔55に沿って逃げるため、モータが回転し駆動歯車32が回転してもゼンマイ50が巻き上げられることはない。
【0026】
次に、ゼンマイ50を駆動力として、自走走行する場合を説明する。図5(a)の底面図に示すように、切欠き部12に露出している摘み8を左(矢印c方向)に動かすと、ユニットケース5は図面上でシャーシー6に対し右にスライドする。この状態では、図5(b)に示すように、ユニットケース5は左(矢印d方向)にスライドするが、駆動輪2とシャフト30とはシャーシー6に対しに横位置は変わらないので固定リング33に阻止されてクラッチ歯車35は移動しないのでクラッチ歯車35とクラッチ歯車46との噛み合いは外れる。
【0027】
一方、ボタン電池7はユニットケース6とともに左に移動するので、プラス極7aとシャーシー6の床面に固定されたプラス電極11との接触は解除され、モータ40への電圧の印加が解除されるのでモータ40の回転は停止する。
【0028】
この状態で、図7(a)に示すように、駆動輪2を床等に接触したまま後退させて、駆動輪2を逆回転させる所謂プルバック操作をすると、図6(b)に示すように、駆動歯車32は時計方向に回転し、二段歯車54は反時計方向に回転し、遊星歯車53は時計方向に回転して平歯車52を反時計方向に回転させる。この時遊星歯車53は平歯車52を押し上げるように回転するので、遊星歯車53長穴55の下端側に移動し、平歯車52との噛み合いが外れることはないので、ゼンマイ50を確実に巻き上げることができる。
【0029】
充分に自走式小型走行玩具を後退させてゼンマイ50を巻き上げた後、図7(b)に示すように、自走式小型走行玩具1から手を離すと、図6(c)に示すように、ゼンマイ50の巻き戻り力で平歯車52が時計方向に回転し、遊星歯車53、二段歯車54を介して駆動歯車32を反時計方向に回転させるので駆動輪2は正回転し、自走式小型走行玩具1はゼンマイ50を駆動力として自走走行させることができる。
【0030】
上述したように、シャーシー上に配置されたユニットケースを左右のいずれかにスライドさせる操作により、モータ40をONさせたときにはモータ40を駆動力として自走走行をさせることができ、モータをOFFさせたときにはゼンマイを駆動力として自走走行をさせることができる。しかも、モータ駆動機構を有効にしたときにはゼンマイ駆動機構に影響を与えず、ゼンマイ駆動機構を有効にしたときにはモータ駆動機構に影響を与えることはなく、小型でありながらモータ駆動機構とゼンマイ駆動機構とを内装し、しかも簡単な操作でどちらの駆動機構を使用して走行させるかが自由に選択でき、さらに何れか一方の駆動機構を作動させているときには他の作動機構に影響が及ばないようにした画期的な自走式の走行玩具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る自走式小型走行玩具の一例を示す斜視図
【図2】上記自走式小型走行玩具の内部構造を説明する分解斜視図
【図3】ユニットケース内のモータ駆動機構とゼンマイ駆動機構との構成を説明する分解斜視図
【図4】(a)(b)はモータ駆動機構を有効にする場合の底面図及び、ユニットケースの内部を説明する平面図
【図5】(a)(b)ゼンマイ駆動機構を有効にする場合の底面図及び、ユニットケースの内部を説明する平面図
【図6】(a)〜(c)はモータ駆動機構を有効にしたときのゼンマイ駆動機構の動きを説明する説明図
【図7】(a)(b)ゼンマイ駆動機構を有効にした場合の走行玩具の使用状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 自走走行玩具
2 駆動輪
3 モータ駆動機構
4 ゼンマイ駆動機構
5 ユニットケース
6 シャーシー
30 シャフト
32 駆動歯車
35 クラッチ歯車
40 モータ
50 ゼンマイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件を備えることを特徴とする自走式小型走行玩具。
(イ)玩具本体には駆動輪を駆動するためのモータ駆動機構とゼンマイ駆動機構との2つの駆動機構とを備えること
(ロ)上記モータ駆動機構を作動させるために電源ON操作をすると、上記モータ駆動機構が機能するとともにゼンマイ駆動ユニットが機能しなくなり、上記ゼンマイ駆動機構を作動させるために電源OFF操作をするとゼンマイ駆動機構が機能するとともにモータ駆動ユニットが機能しなくなること
【請求項2】
以下の要件を備えることを特徴とする、請求項1記載の自走式小型走行玩具。
(イ)前記駆動輪のシャフトはシャーシー上に左右方向に移動しないように軸支されていること
(ロ)前記モータ駆動機構とゼンマイ駆動機構とはユニットケースに収容され、該ユニットケースは上記シャーシー上を左右にスライド可能に配置されていること
(ハ)上記シャフトには前記ゼンマイ駆動機構に連係する駆動歯車と、前記モータ駆動機構に連係するクラッチ歯車が固定され、ユニットケースを一方にスライドさせたときにはゼンマイ駆動機構が機能するとともにクラッチ歯車とモータ駆動機構との連係が外れ、ユニットケースを他方にスライドさせたときにはモータ駆動機構が機能するとともに上記駆動歯車とゼンマイ駆動機構との連係が外れること
【請求項3】
前記ゼンマイ駆動機構のゼンマイは上記駆動輪を後転させることにより巻き上げられる、請求項1記載の自走式小型走行玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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