説明

自転車のハンドルステムの固定構造

【課題】ハンドルステムをホークステムに確実に固定することが可能な自転車のハンドルステムの固定構造を提供する。
【解決手段】ホークステム4内に、内径が下方ほど縮小するテーパー部15が形成され、ホークステム4内に、ハンドルステム20が上方から挿入され、ハンドルステム20の下端部に、引上げられることによりハンドルステム20の下端部を径方向へ移動させてホークステム4の内周に押圧する固定部材21が設けられ、ハンドルステム20に固定部材21を引上げる引上手段14が設けられ、ハンドルステム20を固定部材21と共に上方からホークステム4内に挿入した際、固定部材21がテーパー部15よりも上方位置に保たれるようにハンドルステム20の挿入量を規制する挿入量規制手段25がハンドルステム20に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のハンドルステムをホークステムに固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7〜図9に示すように、自転車のフレーム1の前端部にはヘッドパイプ2が設けられ、前ホーク3のホークステム4が、下方からヘッドパイプ2に挿入され、上下一対のベアリング5によって回転自在に保持されている。ホークステム4内には、上方からハンドルステム7が挿入されている。ハンドルステム7の上端部にはハンドルバー8が設けられている。
【0003】
ハンドルステム7はホークステム4に固定されており、ハンドルバー8の左右への回動はハンドルステム7を介してホークステム4に伝わり、前ホーク3が左右に方向転換する。
【0004】
以下に、ハンドルステム7の固定構造を説明する。
ハンドルステム7の下端部には、下端が開放された縦スリット10によって割り部11が形成されている。また、ハンドルステム7の下端部には、引上げられることによって割り部11を径方向外向きに押し広げるコーン形のうす部材12が差し込まれている。図10に示すように、うす部材12には雌ねじを有するねじ孔13が形成され、ハンドルステム7の上部から差し込まれた引上げボルト14の下端部が上方からねじ孔13に螺合している。これにより、うす部材12は引上げボルト14の下端部に昇降自在に取り付けられている。
【0005】
また、ホークステム4にはバテットチューブが用いられている。すなわち、ホークステム4の下端部の肉厚は、強度を確保するため、ホークステム4の下端部より上位部分の肉厚よりも分厚く形成されている。これにより、ホークステム4の下端部内には、内径が下方ほど縮小するテーパー部15が形成されている。
【0006】
これによると、ハンドルステム7の下部をホークステム4に挿入し、引上げボルト14を一方向に回してうす部材12を引上げる。これにより、図8に示すように、ハンドルステム7の割り部11が径方向外向きに押し広げられ、割り部11がホークステム4の内周に押圧され、ハンドルステム7がホークステム4に固定される。
【0007】
上記のようなうす部材12を用いたハンドルステム7の固定構造については、例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−171588
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、ハンドルステム7をホークステム4に挿入して下限まで下げた場合、図10に示すように、うす部材12がテーパー部15の内周面に当接することで、ハンドルステム7の下降が阻止される。この状態で、引上げボルト14を一方向に回してハンドルステム7をホークステム4に固定する場合、割り部11がうす部材12によって径方向外向きに押し広げられる。
【0010】
このとき、割り部11はテーパー部15の内周面に線当りするため、固定力が不十分となり、ハンドルステム7に想定外の外力が作用すると、割り部11がテーパー部15をせり上がって内径の大きい上方へ移動してしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、ハンドルステムをホークステムに確実に固定することが可能な自転車のハンドルステムの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本第1発明は、ホークステム内に、内径が下方ほど縮小するテーパー部が形成され、
ホークステム内に、ハンドルステムが上方から挿入され、
ハンドルステムの下端部に、引上げられることによりハンドルステムの下端部を径方向へ移動させてホークステムの内周に押圧する固定部材が設けられ、
ハンドルステムに固定部材を引上げる引上手段が設けられた自転車のハンドルステムの固定構造であって、
ハンドルステムを固定部材と共にホークステム内に挿入した際、固定部材がテーパー部よりも上方位置に保たれるようにハンドルステムの挿入量を規制する挿入量規制手段がハンドルステムに設けられているものである。
【0013】
これによると、ハンドルステムを固定部材と共に上方からホークステム内に挿入して下限まで下げた際、ホークステムへのハンドルステムの挿入量が挿入量規制手段により規制され、固定部材がテーパー部よりも上方位置に保たれる。この状態で、引上手段で固定部材を引上げることにより、ハンドルステムの下端部がホークステムの内周に押圧され、ハンドルステムがホークステムに固定される。
【0014】
このとき、ハンドルステムの下端部は、テーパー部まで到達せず、テーパー部よりも上方位置においてホークステムの内周に押圧されるため、十分な固定力が確保され、ハンドルステムをホークステムに確実に固定することができる。
【0015】
本第2発明における自転車のハンドルステムの固定構造は、ハンドルステムは、ホークステム内に挿入可能な挿入部と、挿入量規制手段とを有し、
挿入量規制手段は挿入部の上部に形成され、
ハンドルステムの軸心から半径方向における挿入量規制手段の外端部までの距離がホークステムの内半径よりも大きいものである。
【0016】
これによると、ハンドルステムの挿入部を固定部材と共に上方からホークステム内に挿入して下限まで下げた際、ハンドルステムの挿入量規制手段が上方からホークステムの上端部に当接し、この時点で、ホークステムへのハンドルステムの挿入が規制される。これにより、固定部材がテーパー部よりも上方位置に保たれる。
【0017】
本第3発明における自転車のハンドルステムの固定構造は、挿入量規制手段はホークステムの内径よりも太い太径部であるものである。
これによると、ハンドルステムの挿入部を固定部材と共に上方からホークステム内に挿入して下限まで下げた際、ハンドルステムの太径部が上方からホークステムの上端部に当接し、この時点で、ホークステムへのハンドルステムの挿入が規制される。これにより、固定部材がテーパー部よりも上方位置に保たれる。
【0018】
本第4発明における自転車のハンドルステムの固定構造は、固定部材は、引上げられることによって、ハンドルステムの下端部を径方向外向きに押し広げるものである。
これによると、引上手段で固定部材を引上げることにより、ハンドルステムの下端部が径方向外向きに押し広げられてホークステムの内周に押圧され、ハンドルステムがホークステムに固定される。
【0019】
本第5発明における自転車のハンドルステムの固定構造は、固定部材を引上げることにより、ハンドルステムの下端部と固定部材とが径方向において互いに反対方向へ案内されるものである。
【0020】
これによると、引上手段で固定部材を引上げることにより、ハンドルステムの下端部と固定部材とが径方向において互いに反対方向へ移動してホークステムの内周に押圧され、ハンドルステムがホークステムに固定される。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によると、ハンドルステムを上方からホークステム内に挿入して下限まで下げた場合、ハンドルステムの下端部は、テーパー部まで到達せず、テーパー部よりも上方位置においてホークステムの内周に押圧されるため、十分な固定力が確保され、ハンドルステムをホークステムに確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における自転車のハンドルステムの固定構造を示す断面図
【図2】同、ハンドルステムの下端部とうす部材との斜視図
【図3】本発明の実施の形態2における自転車のハンドルステムの固定構造を示す断面図
【図4】同、ハンドルステムの下端部とうす部材との斜視図
【図5】本発明の実施の形態3における自転車のハンドルステムの固定構造を示す断面図
【図6】図5におけるX−X矢視図
【図7】従来の自転車の前部の側面図
【図8】同、自転車のハンドルステムの固定構造を示す断面図
【図9】同、自転車のハンドルステムの固定構造を示す分解図
【図10】同、ホークステム内のテーパー部におけるハンドルステムの固定構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
以下に、実施の形態1を説明する。尚、先述した従来技術と同じ部材については、同一の符号を付記してその詳細な説明を省略する。
【0024】
図1,図2に示すように、円管状のハンドルステム20の下端部には、引上げボルト14(引上手段の一例)で引上げられることによりハンドルステム20の割り部11(下端部)を径方向外向きJに押し広げてホークステム4の内周に押圧するうす部材21(固定部材の一例)が挿入されている。うす部材21は下部ほど太径となるコーン形状の部材である。うす部材21の外周面には、割り部11の縦スリット10に差し込まれてうす部材21を回り止めする突起片22が設けられている。
【0025】
ハンドルステム20は、上方からホークステム4内に挿入可能な挿入部24と、挿入部24の上部に形成された太径部25とを有している。太径部25は、ハンドルステム20をうす部材21と共に上方からホークステム4内に挿入した際、うす部材21がテーパー部15よりも上方位置に保たれるようにハンドルステム20の挿入量を規制する挿入量規制手段の一例である。
【0026】
太径部25の外径Aはホークステム4の内径Bよりも大きく形成されている。太径部25は、下部に、上方ほど拡径するテーパー状の部分を有している。また、うす部材21の下端から太径部25の下端までの長さCはホークステム4内のテーパー部15の上端からホークステム4の上端までの長さDよりも短い。
【0027】
以下、上記構成における作用を説明する。
うす部材21と共にハンドルステム20を上方からホークステム4内に挿入して下限まで下げた場合、ハンドルステム20の太径部25が上方からホークステム4の上端部に当接し、この時点で、ホークステム4内へのハンドルステム20の挿入が規制される。これにより、うす部材21がテーパー部15よりも上方位置に保たれる。
【0028】
この状態で、引上げボルト14を一方向に回してうす部材21を引上げることにより、ハンドルステム20の割り部11が径方向外向きJに押し広げられ、割り部11がホークステム4の内周に押圧されて面当りし、ハンドルステム20がホークステム4に固定される。
【0029】
このとき、割り部11は、テーパー部15まで到達せず、テーパー部15よりも上方位置においてホークステム4の内周に押圧されて面当りするため、十分な固定力が確保され、ハンドルステム20をホークステム4に確実に固定することができる。
【0030】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、図2に示すように、固定部材の一例としてコーン形状のうす部材21を用いたが、以下に説明する実施の形態2では、図3,図4に示すように、くさび形状のうす部材30を用いている。このうす部材30は、ねじ孔13を有する円筒状の部材であり、上端に、軸心31に対して一方向へ傾斜した傾斜面32を有している。
【0031】
また、ハンドルステム20の下端部に割り部11は設けられておらず、ハンドルステム20の下端には、上記うす部材30の傾斜面32と同様に、軸心31に対して一方向へ傾斜した傾斜端面33が形成されている。
【0032】
以下、上記構成における作用を説明する。
うす部材30と共にハンドルステム20を上方からホークステム4内に挿入して下限まで下げた場合、ハンドルステム20の太径部25が上方からホークステム4の上端部に当接し、この時点で、ホークステム4内へのハンドルステム20の挿入が規制される。これにより、うす部材30がテーパー部15よりも上方位置に保たれる。
【0033】
この状態で、引上げボルト14を一方向に回してうす部材30を引上げることにより、うす部材30の傾斜面32がハンドルステム20の傾斜端面33に当接し、ハンドルステム20の下端部とうす部材30とが径方向において互いに反対方向E,Fへ移動(位置ずれ)してホークステム4の内周に押圧され、ハンドルステム20がホークステム4に固定される。
【0034】
(実施の形態3)
上記実施の形態1,2では、図1,図3に示すように、挿入量規制手段の一例として太径部25をハンドルステム20に形成しているが、太径部25に限定されるものではなく、例えば、挿入量規制手段の他の例として、図5,図6に示すように、ハンドルステム20の挿入部24の外周面に、径方向外向きに突出する突起部40が形成されている。
【0035】
ハンドルステム20の軸心31から半径方向における突起部40の外端部までの距離Gはホークステム4の内半径Hよりも大きく形成されている。また、うす部材30の下端から突起部40の下端までの長さIはホークステム4内のテーパー部15の上端からホークステム4の上端までの長さDよりも短い。尚、突起部40はハンドルステム20の円周方向における一箇所に形成されている。
【0036】
以下、上記構成における作用を説明する。
うす部材30と共にハンドルステム20を上方からホークステム4内に挿入して下限まで下げた場合、ハンドルステム20の突起部40が上方からホークステム4の上端部に当接し、この時点で、ホークステム4内へのハンドルステム20の挿入が規制される。これにより、うす部材30がテーパー部15よりも上方位置に保たれる。
【0037】
上記実施の形態3では、図6に示すように、突起部40をハンドルステム20の円周方向における一箇所に形成しているが、円周方向における複数箇所に形成してもよい。また、ハンドルステム20の全周にわたって形成してもよい。
【0038】
上記実施の形態3では、実施の形態2に示したくさび形状のうす部材30を用いたが、実施の形態1に示したコーン形状のうす部材21(図2参照)を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、自転車全般すなわち汎用タイプやスポーツタイプの自転車、マウンテンバイク、ミニサイクル、折畳式自転車、子供用自転車、電動自転車などに適用できる。
【符号の説明】
【0040】
4 ホークステム
14 引き上げボルト(引上手段)
15 テーパー部
20 ハンドルステム
21,30 うす部材(固定部材)
24 挿入部
25 太径部(挿入量規制手段)
31 軸心
40 突起部(挿入量規制手段)
B ホークステムの内径
E,F 反対方向
G ハンドルステムの軸心から半径方向における突起部の外端部までの距離
H ホークステムの内半径
J 径方向外向き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホークステム内に、内径が下方ほど縮小するテーパー部が形成され、
ホークステム内に、ハンドルステムが上方から挿入され、
ハンドルステムの下端部に、引上げられることによりハンドルステムの下端部を径方向へ移動させてホークステムの内周に押圧する固定部材が設けられ、
ハンドルステムに固定部材を引上げる引上手段が設けられた自転車のハンドルステムの固定構造であって、
ハンドルステムを固定部材と共にホークステム内に挿入した際、固定部材がテーパー部よりも上方位置に保たれるようにハンドルステムの挿入量を規制する挿入量規制手段がハンドルステムに設けられていることを特徴とする自転車のハンドルステムの固定構造。
【請求項2】
ハンドルステムは、ホークステム内に挿入可能な挿入部と、挿入量規制手段とを有し、
挿入量規制手段は挿入部の上部に形成され、
ハンドルステムの軸心から半径方向における挿入量規制手段の外端部までの距離がホークステムの内半径よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の自転車のハンドルステムの固定構造。
【請求項3】
挿入量規制手段はホークステムの内径よりも太い太径部であることを特徴とする請求項2記載の自転車のハンドルステムの固定構造。
【請求項4】
固定部材は、引上げられることによって、ハンドルステムの下端部を径方向外向きに押し広げることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自転車のハンドルステムの固定構造。
【請求項5】
固定部材を引上げることにより、ハンドルステムの下端部と固定部材とが径方向において互いに反対方向へ案内されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自転車のハンドルステムの固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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