自転車用のグリップ
【課題】グリップを握った際に、手首の位置が下がって手首の曲がり角度が大きくなることを抑えることができるだけでなく、手からの力を良好に受けたり、手や手首への衝撃を良好かつ確実に吸収できたりする自転車用のグリップを提供する。
【解決手段】ハンドル本体の外周に装着される筒状部5と、後方に膨出する後方膨出部4とを備え、後方膨出部4は、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部7と、この後方延長支持部7から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部8とを有し、広がり受け部8が後方延長支持部7を介して支持されている。
【解決手段】ハンドル本体の外周に装着される筒状部5と、後方に膨出する後方膨出部4とを備え、後方膨出部4は、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部7と、この後方延長支持部7から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部8とを有し、広がり受け部8が後方延長支持部7を介して支持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車のハンドルの両端部に設けられる自転車用のグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車のハンドルの両端部にはハンドルを把持し易くするためにグリップが取り付けられている。ハンドルの本体部分(以下、ハンドル本体と称す)は、断面が円筒形状の金属パイプから構成されており、一般に、グリップは、ハンドル本体の両端部を外周および側方から覆う円筒形状(詳しくは端部の側面部分がある有底円筒形状)で、弾性を有する塩化ビニル系の樹脂材などのエラストマーを用いて形成されている。なお、グリップに関する技術としては、例えば特許文献1に、硬めの材料で構成した筒状の内筒部の外側に、軟らかめの材料で構成した外筒部を組み合わせ、グリップの外側部分である外筒部が手に優しく接触するように図ったものが開示されている。
【0003】
この種のグリップは、従来、その断面形状が単なる円形であったため、図17に示すように、グリップ100を握った際に、手の平(手の掌)Mを受ける面積が狭い難点があった。したがって、長時間にわたって自転車を運転していると、手首Nの位置が下がって曲がり角度θが大きくなり易く、この場合には、手首Bに負荷がかかって疲れ易くなる短所があった。
【0004】
この短所を改善する構造として、図18に示すように、グリップ110の後部を後方に膨出させて後方膨出部111を形成し、断面形状が略卵形になるように形成したものが実用化されつつある。この種のグリップ110によれば、後方膨出部111で運転者の手の平(手の掌)Mを受けることができて、手の平Mを受ける面積が広くなるので、手首Nの位置が下がって手首Nの曲がり角度θが大きくならないように阻止できる。したがって、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手首Nがあまり曲がらない姿勢を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−67286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図18に示すようなグリップ110は、単に、グリップ110の後部を後方に膨出させただけの構造であるので、運転者の手の平を後方膨出部111に載せて下方に力を加えた際に、急激に後方膨出部111からの反力を受ける恐れがある。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際に、この衝撃が吸収されること無く手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好には軽減できないおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、グリップを握った際に、手首の位置が下がって手首の曲がり角度が大きくなることを抑えることができるだけでなく、手からの力を良好に受けたり、手や手首への衝撃を良好かつ確実に吸収できたりする自転車用のグリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、自転車のハンドル本体の左右両端部に取り付けられる自転車用のグリップであって、ハンドル本体の外周に装着される筒状部と、後方に膨出する後方膨出部とを備え、前記後方膨出部は、前記筒状部の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部と、この後方延長支持部から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部とを有し、この広がり受け部が前記後方延長支持部を介して支持されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、後方膨出部に設けられた広がり受け部によって、運転者の手の平(手の掌)を受けることができるだけでなく、広がり受け部が、変形し易い後方延長支持部を介して支持されているので、運転者の手の平を後方膨出部に載せて下方に力を加えた際に、後方延長支持部が下方に撓みながら良好に運転者の手の平からの力を受けることができる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際に、この衝撃が後方延長支持部で吸収されながら広がり受け部を介して手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好に軽減することが可能となる。
【0010】
また、本発明の自転車用のグリップは、前記筒状部の外周に外装部が装着されており、前記筒状部と前記後方延長支持部と前記広がり受け部とが、前記外装部よりも硬い硬質材料によって互いに続いた状態で形成されていることを特徴とする。この構成により、筒状部と後方延長支持部と広がり受け部とが硬い硬質材料によって形成されているので、比較的大きな力でも広がり受け部により良好に受けることができる。また、外装部は、筒状部などより軟らかい軟質材料で形成されるので、グリップを握った際に、軟らかく接触し、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0011】
また、本発明は、前記後方膨出部に、前記外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部が設けられ、この嵌合外装部は、前記筒状部よりも軟らかい軟質材料で形成されていることを特徴とする。この構成により、前記後方膨出部において、嵌合外装部が後方延長支持部および広がり受け部から離脱することなく一体的に弾性変形する。
【0012】
また、本発明は、前記後方膨出部において、前記広がり受け部の一部が外部に露出し、後方膨出部の他の箇所が軟質材料の嵌合外装部で略覆われていることを特徴とする。この構成によれば、前記広がり受け部の外部に露出している箇所で手の平からの力を直接良好に受けることができる。また前記広がり受け部が露出していない箇所は軟質材料の嵌合外装部により略覆っていることにより、手や手の平の他の箇所は軟質材料の嵌合外装部に接触して、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0013】
なお、前記後方膨出部において、前記後方延長支持部が、後方膨出部よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で後方に延び、前記後方延長支持部から広がり受け部が上下に広がるように構成すれば好適である。
【0014】
また、本発明は、前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所が、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。この構成により、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所の数を増減させることで、手から力を受けた際の前記後方膨出部の撓み状態(変形状態)などが最適になるように良好に調整可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記硬質材料と前記軟質材料とが同系の材料で形成されていることを特徴とする。この構成により、前記硬質材料の部分と前記軟質材料の部分とが互いに融着して前記軟質材料の部分が前記硬質材料の部分から離反することを最小限に抑えることができ、前記後方膨出部において、嵌合外装部が後方延長支持部や広がり受け部に追随して良好に変形することができる。
【0016】
また、後方延長支持部で支持されている広がり受け部を複数の箇所に設け、各箇所の広がり受け部の先端部同士を、外部に露出する接続受け部を介して接続させてもよく、これによれば、後方膨出部において露出する接続受け部が手の平に良好に接触して、手の力を広がり受け部や後方延長支持部を介してハンドルの本体部分に良好に伝えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部を、撓むことが可能な後方延長支持部を介して支持したので、運転者の手の平を後方膨出部に載せて下方に力を加えた際に、前記力が増加するにつれて後方延長支持部が下方に撓みながら良好なクッション性を有した状態で運転者の手の平からの力を受けることができる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部で吸収されながら広がり受け部を介して手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好に軽減することが可能となる。
【0018】
また、前記後方膨出部に、筒状部の外周に装着されている外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部を軟質材料で設けることにより、この嵌合外装部が後方延長支持部および広がり受け部から離脱することなく一体的に弾性変形する。
【0019】
また、広がり受け部の一部を外部に露出させることで、この露出箇所で手の平からの力を直接良好に受けることができる。また前記広がり受け部が露出していない箇所を軟質材料の嵌合外装部により略覆うことにより、軟質材料で形成された嵌合外装部がやさしく手の平に接触し、良好なフィット感を与えることができるとともに、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0020】
また、前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所を、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設け、この数を増減させることで、手から力を受けた際の前記後方膨出部の変形状態(撓み状態)などが最適になるように良好に調整することが可能となる。これにより、自転車の種類やハンドルの力など、ハンドルに作用する力の大きさや方向に良好に対応させたグリップを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップを備えたハンドルの斜視図
【図2】同グリップの斜視図
【図3】同グリップの硬質材料体の斜視図
【図4】同グリップの軟質材料体の斜視図
【図5】同グリップの平面図
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ同グリップの側面断面図で、(a)は図5におけるVIa−VIa線矢視断面図、(b)は図5におけるVIb−VIb線矢視断面図、(c)は図5におけるVIc−VIc線矢視断面図
【図7】同グリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図8】同グリップを把持して力を付与した状態を簡略的に示す断面図
【図9】同グリップの背面図で、仮想線部は力を付与する前の状態、実線部は力を付与した状態
【図10】本発明の他の実施の形態に係るグリップの斜視図
【図11】同グリップの硬質材料体の斜視図
【図12】(a)、(b)および(c)は同グリップの正面図、平面図および背面図
【図13】(a)、(b)および(c)は同グリップの硬質材料体の正面図、平面図および背面図
【図14】(a)および(b)は同グリップの硬質材料体の右側面図および左側面図
【図15】同グリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図16】同グリップを把持して力を付与した状態を簡略的に示す断面図
【図17】従来のグリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図18】従来の後方膨出部を有するグリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップを、図面に基づき説明する。
図1、図2、図5などにおける1は本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップで、図1に簡略的に示すように、自転車のハンドルの左右両端部に取り付けられる。なお、図1ではグリップが自転車のハンドルの左端部に取り付けられている状態を示している。つまり、ハンドルは、断面が円筒形状の金属パイプからなるハンドル本体2と、グリップ1とからなり、グリップ1はハンドル本体2の左右両端部に圧入されるなどして外側に嵌め込まれた状態で装着される。
【0023】
グリップ1は、弾性を有しながら比較的硬い硬質材料からなる硬質材料体A(図3参照)と、弾性を有しながら硬質材料体Aよりも軟らかい軟質材料からなる軟質材料体B(図4参照)とを組み合わせて形成されている。ここで、これらの材料体A、Bは、同じ成分を含む材料で構成されることが好適であり、他に硬さを変更する成分の配合量を調整したり、製造工程を変更したり、追加したりして作られる。例えば、これらの硬質材料体A、軟質材料体Bとも、塩化ビニル系樹脂や、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などの共通成分を有するエラストマーで製造すると好適である。このように、何れの材料体A、Bとも同じ成分の材料を含有させることで、製品となった状態での互いの材料体A、Bの密着性を高めることができる利点がある。なお、硬さを調整する方法としては、上記したように、硬さを変更する成分の配合量を調整する他、軟質材料Yのみを発泡させたり、硬質材料体Aよりも軟質材料体Bの発泡率を多くしたりして調整するとよいが、これに限るものではない。なお、グリップ1は、例えば、硬質材料体Aが金型などを用いて成形され(この際、金型内には、ハンドル本体2に対応する形状の中子が配設される)、さらに成形後の硬質材料体Aが別途金型の内部(キャビティ)に配設された状態で、軟質材料が硬質材料体Aを包み込むようにして金型内に注入されて成形されるが、この製造方法に限るものではない。
【0024】
図2〜図6などに示すように、グリップ1は、ハンドル本体2の端部の外周箇所に配設されたグリップ本体部3と、グリップ本体部3の後部から後方に膨出する後方膨出部4とから構成され、側面視した断面形状(すなわち、ハンドル本体2の軸心方向X(図2、図5参照)に直交する面で切断した断面視した断面形状)は略卵形とされている。グリップ本体部3は、ハンドル本体2の外周に圧入されるなどして装着され、硬質材料で形成された筒状部5と、筒状部5の外周に略筒状に装着され軟質材料で形成された外装部6とから構成されている。この実施の形態では、グリップ1の左右両端部は、硬質材料からなる筒状部5が外部に露出した状態で形成され、筒状部5の各端部5a、5bにより、軟質材料で形成された外装部6は左右に移動しないよう位置規制されている。また、筒状部5におけるハンドル本体2の中央寄りの端部(図2における右端部)5bの上部と下部とにはグリップ1の長さ方向(ハンドル本体2の軸心方向X)に延びる横長部5cが一体形成され、これにより、外装部6が周方向にも移動しないよう規制されている。
【0025】
図2〜図5に示すように、グリップ1の後方膨出部4は、それぞれ硬質材料で形成された後方延長支持部7および広がり受け部8と軟質材料で形成された嵌合外装部9とが互いに嵌まり込んだ状態で組み合わされて配設されている立設ピン嵌合部10と、単に軟質材料のみで形成された膨出外装部11とが、ハンドル本体2の軸心方向Xに対して交互に設けられている。すなわち、後方延長支持部7と広がり受け部8と嵌合外装部9とが形成されている立設ピン嵌合部10は、ハンドル本体2の軸心方向Xに対して、間隔をあけて複数(この実施の形態では4箇所)設けられている。
【0026】
ここで、図6(a)や図7、図8に示すように、立設ピン嵌合部10の後方延長支持部7は、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態(変形し易い状態)で後方に延びている。図6(a)に示すように、後方延長支持部7は、後方膨出部4よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で、より具体的には、上下方向に対して細幅の棒状形状で、後方に延びることで、上下に撓み易い状態で形成されている。そして、広がり受け部8は、後方延長支持部7により基部で繋がった状態で、この実施の形態では後方延長支持部7の後端部から上下に広がって、運転者の手の平Mを下方から受けることが可能な形状に形成されている。また、嵌合外装部9は、後方延長支持部7と広がり受け部8との間に嵌まり込んで、これらの後方延長支持部7および広がり受け部8と一体的に弾性変形するよう構成されている。また、後方膨出部4において、広がり受け部8の先端側に広がる湾曲面が外部に露出する一方、後方膨出部4の他の箇所は軟質材料の嵌合外装部9で覆われて露出している。
【0027】
したがって、図3に示すように、硬質材料体Aは、グリップ本体部3の筒状部5と、後方膨出部4の立設ピン嵌合部10に設けられた後方延長支持部7および広がり受け部8とが、硬質材料により一体成形されて形成されている。また、軟質材料体Bは、図4、図5、図6(a)、(b)などに示すように、グリップ本体部3の外装部6と、後方膨出部4の立設ピン嵌合部10に設けられた嵌合外装部9と、後方膨出部4の膨出外装部11とが、軟質材料により一体成形されて形成されている。
【0028】
なお、この実施の形態では、広がり受け部8が手によりなじみ易くするため、広がり受け部8の外面露出箇所の上端部と下端部とに窪み部8aが形成されている。また、この実施の形態では、広がり受け部8と後方延長支持部7との接続箇所は、後方延長支持部7よりも大きい断面形状(この実施の形態では略矩形の断面形状)の段付き接続部8bが形成され、後方延長支持部7と広がり受け部8とが確実かつ良好に接続されるよう構成されている。
【0029】
上記構成においても、グリップ1に後方膨出部4が設けられているので、手の平Mを受ける面積が広くなり、自転車の運転者によりグリップ1が把持されると、図7、図8に示されているように、後方膨出部4により運転者の手の平Mが受けられ、手首Nの位置が下がって手首Nの曲がり角度が大きくなることが阻止される。したがって、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手首Nがあまり曲がらない姿勢を維持できる。
【0030】
また特に、グリップ1の後方膨出部4には、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる硬質材料製の後方延長支持部7と、この後方延長支持部7から広がるように形成されて運転者の手の平Mを下方から受けることが可能な硬質材料製の広がり受け部8とが設けられている。したがって、グリップ1に下方に力が加えられた際には、図7〜図9に示すように、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が下方に撓みながら(変形しながら)、後方膨出部4に設けられた広がり受け部8などによって運転者の手の平(手の掌)Mが良好に受けられる。すなわち、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が徐々に下方に撓みながら、手の平(手の掌)Mが受けられるので、運転者の手の平Mを後方膨出部4に載せて下方に力を加えた際に、後方膨出部4からの反力も徐々に手の平Mに加えられ、運転者は、良好なクッション性を有した状態でグリップ1を握ることができる。また、筒状部5と後方延長支持部7と広がり受け部8とは硬質材料によって形成されているので、比較的大きな力でも後方延長支持部7および広がり受け部8により良好に受けられる。
【0031】
また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部7で吸収されながら広がり受け部8を介して手の平などに作用するため、手や手首などへの負担が良好に軽減される。
【0032】
なお、運転者の手の平によりグリップ1の後方膨出部4が下方に力を加えられた際には、図8に示すように、硬質材料で形成された後方延長支持部7が下方に撓むだけでなく、グリップ1の後方膨出部4において軟質材料で形成された嵌合外装部9および外装部6の各上側部分は斜め下方に伸びるように変形し、嵌合外装部9および外装部6の各下側部分は圧縮されながら変形する。したがって、この際、後方膨出部4の後方延長支持部7だけでなく、嵌合外装部9および外装部6の各上側部分にも、元の形状に収縮しようとする力が発生し、また、グリップ1の後方膨出部4における嵌合外装部9および外装部6の各下側部分には元の形状に戻ろうとする押し上げ力が発生する。これにより、硬質材料と軟質材料とで組み合わされた立設ピン嵌合部10における後方延長支持部7だけでなく、嵌合外装部9によっても手の平からの力を良好に受けることができる。
【0033】
また、筒状部5の外周には軟質材料からなる外装部6が装着され、また、後方膨出部4における立設ピン嵌合部10の間には軟質材料からなる膨出外装部11が設けられているので、これらの軟質材料の外装部6および膨出外装部11が、グリップ1を握った際に手に優しく接触し、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0034】
また、それぞれ硬質材料で形成された後方延長支持部7と広がり受け部8との間に、軟質材料により形成されている嵌合外装部9が嵌まり込んだ状態で組み合わされているので、軟質材料の部分が硬質材料の部分から離脱して空回りすることが防止され、後方膨出部4において、嵌合外装部9が後方延長支持部7および広がり受け部8から離脱することなく一体的に弾性変形する。さらに、グリップ1における硬質材料と軟質材料とを同系の材料で形成することより、硬質材料と軟質材料との境界部で軟質材料と硬質材料とが互いに融着して離反することを最小限に抑えることができ、後方膨出部4において、嵌合外装部9が後方延長支持部7や広がり受け部8に追随して良好に変形する。
【0035】
また、後方膨出部4において、広がり受け部8の一部を外部に露出させているので、この広がり受け部8の露出部で手の平Mからの力を直接良好に受けることができる。また上記のように、後方膨出部4における、後方延長支持部7と広がり受け部8と嵌合外装部9とが形成されている立設ピン嵌合部10を、ハンドル本体2の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けた構成としたことにより、立設ピン嵌合部10の数を調整することで、手に与える反力や後方膨出部4の変形状態(撓み状態)などが最適になるように容易かつ良好に調整することが可能となる。
【0036】
上記実施の形態では、複数の立設ピン嵌合部10は互いに独立して立設する形状であったが、これに限るものではなく、後方膨出部4において、立設ピン嵌合部10の先端部に設けられた広がり受け部8同士を接続する接続受け部22を設けて、この接続受け部22が外部に露出するよう構成してもよい。
【0037】
図10〜図16は、このような構成を有する本発明の他の実施の形態に係るグリップ21を示すものである。このグリップ21においても、ハンドル本体2の端部の外周箇所に配設されたグリップ本体部3と、グリップ本体部3の後部から後方に膨出する後方膨出部4とからなる。また、グリップ本体部3は、ハンドル本体2の外周に圧入されるなどして装着され、硬質材料で形成された筒状部5と、筒状部5の外周に略筒状に装着され軟質材料で形成された外装部6とから構成される。なお、図11、図13、図14は硬質材料体Aを示している。
【0038】
ただし、このグリップ21では、後方延長支持部7、広がり受け部8および嵌合外装部9(図15、図16参照)とからなる立設ピン嵌合部10が、後方膨出部4における左右方向の両端部のみ形成されている。すなわち、この実施の形態では、ハンドルの先端部に対応するグリップ21の一端部と、ハンドルの先端部よりも少し中央寄りに位置するグリップ21の中央部にわたって後方膨出部4が形成され、この後方膨出部4の両端部のみに立設ピン嵌合部10が形成されている。詳しくは、図11などに示すように、一方の立設ピン嵌合部10Aには、後方に延びる後方延長支持部7に、上下に延びる4つの広がり受け部8が形成され、他方の立設ピン嵌合部10Bには、後方に延びる後方延長支持部7に、上下に延びる2つの広がり受け部8が形成されている。そして、各立設ピン嵌合部10(10A、10B)における後方延長支持部7の先端に設けられた広がり受け部8同士の間に、グリップ21の表面部において、ハンドルの軸心方向Xに沿って延びる接続受け部22が外部に露出するように形成されて接続されている。
【0039】
この実施の形態に係るグリップ21によれば、後方膨出部4において露出する接続受け部22が手の平Mに良好に接触して、手の力を広がり受け部8や後方延長支持部7を介して外装部6やハンドル本体3に良好に伝えることができる。なお、手の平Mから後方膨出部4に力が加えられた際には、上記実施の形態と同様に、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が下方に撓むとともに、嵌合外装部9が伸縮しながら変形することで、後方膨出部4に設けられた広がり受け部8などによって運転者の手の平(手の掌)Mからの力が良好に受けられる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部7で吸収されながら広がり受け部8を介して手の平などに作用するため、手や手首などへの負担が良好に軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、各種の自転車用のグリップとして好適に適用でき、スポーツジムなどに設置される固定されたトレーニング用の自転車や電動自転車などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、21 グリップ
2 ハンドル本体
3 グリップ本体部
4 後方膨出部
5 筒状部
6 外装部
7 後方延長支持部
8 広がり受け部
9 嵌合外装部
10 立設ピン嵌合部
11 膨出外装部
22 接続受け部
A 硬質材料体
B 軟質材料体
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車のハンドルの両端部に設けられる自転車用のグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車のハンドルの両端部にはハンドルを把持し易くするためにグリップが取り付けられている。ハンドルの本体部分(以下、ハンドル本体と称す)は、断面が円筒形状の金属パイプから構成されており、一般に、グリップは、ハンドル本体の両端部を外周および側方から覆う円筒形状(詳しくは端部の側面部分がある有底円筒形状)で、弾性を有する塩化ビニル系の樹脂材などのエラストマーを用いて形成されている。なお、グリップに関する技術としては、例えば特許文献1に、硬めの材料で構成した筒状の内筒部の外側に、軟らかめの材料で構成した外筒部を組み合わせ、グリップの外側部分である外筒部が手に優しく接触するように図ったものが開示されている。
【0003】
この種のグリップは、従来、その断面形状が単なる円形であったため、図17に示すように、グリップ100を握った際に、手の平(手の掌)Mを受ける面積が狭い難点があった。したがって、長時間にわたって自転車を運転していると、手首Nの位置が下がって曲がり角度θが大きくなり易く、この場合には、手首Bに負荷がかかって疲れ易くなる短所があった。
【0004】
この短所を改善する構造として、図18に示すように、グリップ110の後部を後方に膨出させて後方膨出部111を形成し、断面形状が略卵形になるように形成したものが実用化されつつある。この種のグリップ110によれば、後方膨出部111で運転者の手の平(手の掌)Mを受けることができて、手の平Mを受ける面積が広くなるので、手首Nの位置が下がって手首Nの曲がり角度θが大きくならないように阻止できる。したがって、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手首Nがあまり曲がらない姿勢を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−67286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図18に示すようなグリップ110は、単に、グリップ110の後部を後方に膨出させただけの構造であるので、運転者の手の平を後方膨出部111に載せて下方に力を加えた際に、急激に後方膨出部111からの反力を受ける恐れがある。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際に、この衝撃が吸収されること無く手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好には軽減できないおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するもので、グリップを握った際に、手首の位置が下がって手首の曲がり角度が大きくなることを抑えることができるだけでなく、手からの力を良好に受けたり、手や手首への衝撃を良好かつ確実に吸収できたりする自転車用のグリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、自転車のハンドル本体の左右両端部に取り付けられる自転車用のグリップであって、ハンドル本体の外周に装着される筒状部と、後方に膨出する後方膨出部とを備え、前記後方膨出部は、前記筒状部の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部と、この後方延長支持部から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部とを有し、この広がり受け部が前記後方延長支持部を介して支持されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、後方膨出部に設けられた広がり受け部によって、運転者の手の平(手の掌)を受けることができるだけでなく、広がり受け部が、変形し易い後方延長支持部を介して支持されているので、運転者の手の平を後方膨出部に載せて下方に力を加えた際に、後方延長支持部が下方に撓みながら良好に運転者の手の平からの力を受けることができる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際に、この衝撃が後方延長支持部で吸収されながら広がり受け部を介して手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好に軽減することが可能となる。
【0010】
また、本発明の自転車用のグリップは、前記筒状部の外周に外装部が装着されており、前記筒状部と前記後方延長支持部と前記広がり受け部とが、前記外装部よりも硬い硬質材料によって互いに続いた状態で形成されていることを特徴とする。この構成により、筒状部と後方延長支持部と広がり受け部とが硬い硬質材料によって形成されているので、比較的大きな力でも広がり受け部により良好に受けることができる。また、外装部は、筒状部などより軟らかい軟質材料で形成されるので、グリップを握った際に、軟らかく接触し、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0011】
また、本発明は、前記後方膨出部に、前記外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部が設けられ、この嵌合外装部は、前記筒状部よりも軟らかい軟質材料で形成されていることを特徴とする。この構成により、前記後方膨出部において、嵌合外装部が後方延長支持部および広がり受け部から離脱することなく一体的に弾性変形する。
【0012】
また、本発明は、前記後方膨出部において、前記広がり受け部の一部が外部に露出し、後方膨出部の他の箇所が軟質材料の嵌合外装部で略覆われていることを特徴とする。この構成によれば、前記広がり受け部の外部に露出している箇所で手の平からの力を直接良好に受けることができる。また前記広がり受け部が露出していない箇所は軟質材料の嵌合外装部により略覆っていることにより、手や手の平の他の箇所は軟質材料の嵌合外装部に接触して、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0013】
なお、前記後方膨出部において、前記後方延長支持部が、後方膨出部よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で後方に延び、前記後方延長支持部から広がり受け部が上下に広がるように構成すれば好適である。
【0014】
また、本発明は、前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所が、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする。この構成により、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所の数を増減させることで、手から力を受けた際の前記後方膨出部の撓み状態(変形状態)などが最適になるように良好に調整可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記硬質材料と前記軟質材料とが同系の材料で形成されていることを特徴とする。この構成により、前記硬質材料の部分と前記軟質材料の部分とが互いに融着して前記軟質材料の部分が前記硬質材料の部分から離反することを最小限に抑えることができ、前記後方膨出部において、嵌合外装部が後方延長支持部や広がり受け部に追随して良好に変形することができる。
【0016】
また、後方延長支持部で支持されている広がり受け部を複数の箇所に設け、各箇所の広がり受け部の先端部同士を、外部に露出する接続受け部を介して接続させてもよく、これによれば、後方膨出部において露出する接続受け部が手の平に良好に接触して、手の力を広がり受け部や後方延長支持部を介してハンドルの本体部分に良好に伝えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部を、撓むことが可能な後方延長支持部を介して支持したので、運転者の手の平を後方膨出部に載せて下方に力を加えた際に、前記力が増加するにつれて後方延長支持部が下方に撓みながら良好なクッション性を有した状態で運転者の手の平からの力を受けることができる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部で吸収されながら広がり受け部を介して手の平などに作用して、手や手首などへの負担を良好に軽減することが可能となる。
【0018】
また、前記後方膨出部に、筒状部の外周に装着されている外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部を軟質材料で設けることにより、この嵌合外装部が後方延長支持部および広がり受け部から離脱することなく一体的に弾性変形する。
【0019】
また、広がり受け部の一部を外部に露出させることで、この露出箇所で手の平からの力を直接良好に受けることができる。また前記広がり受け部が露出していない箇所を軟質材料の嵌合外装部により略覆うことにより、軟質材料で形成された嵌合外装部がやさしく手の平に接触し、良好なフィット感を与えることができるとともに、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0020】
また、前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所を、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設け、この数を増減させることで、手から力を受けた際の前記後方膨出部の変形状態(撓み状態)などが最適になるように良好に調整することが可能となる。これにより、自転車の種類やハンドルの力など、ハンドルに作用する力の大きさや方向に良好に対応させたグリップを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップを備えたハンドルの斜視図
【図2】同グリップの斜視図
【図3】同グリップの硬質材料体の斜視図
【図4】同グリップの軟質材料体の斜視図
【図5】同グリップの平面図
【図6】(a)〜(c)はそれぞれ同グリップの側面断面図で、(a)は図5におけるVIa−VIa線矢視断面図、(b)は図5におけるVIb−VIb線矢視断面図、(c)は図5におけるVIc−VIc線矢視断面図
【図7】同グリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図8】同グリップを把持して力を付与した状態を簡略的に示す断面図
【図9】同グリップの背面図で、仮想線部は力を付与する前の状態、実線部は力を付与した状態
【図10】本発明の他の実施の形態に係るグリップの斜視図
【図11】同グリップの硬質材料体の斜視図
【図12】(a)、(b)および(c)は同グリップの正面図、平面図および背面図
【図13】(a)、(b)および(c)は同グリップの硬質材料体の正面図、平面図および背面図
【図14】(a)および(b)は同グリップの硬質材料体の右側面図および左側面図
【図15】同グリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図16】同グリップを把持して力を付与した状態を簡略的に示す断面図
【図17】従来のグリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【図18】従来の後方膨出部を有するグリップを把持した状態を簡略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップを、図面に基づき説明する。
図1、図2、図5などにおける1は本発明の実施の形態に係る自転車用のグリップで、図1に簡略的に示すように、自転車のハンドルの左右両端部に取り付けられる。なお、図1ではグリップが自転車のハンドルの左端部に取り付けられている状態を示している。つまり、ハンドルは、断面が円筒形状の金属パイプからなるハンドル本体2と、グリップ1とからなり、グリップ1はハンドル本体2の左右両端部に圧入されるなどして外側に嵌め込まれた状態で装着される。
【0023】
グリップ1は、弾性を有しながら比較的硬い硬質材料からなる硬質材料体A(図3参照)と、弾性を有しながら硬質材料体Aよりも軟らかい軟質材料からなる軟質材料体B(図4参照)とを組み合わせて形成されている。ここで、これらの材料体A、Bは、同じ成分を含む材料で構成されることが好適であり、他に硬さを変更する成分の配合量を調整したり、製造工程を変更したり、追加したりして作られる。例えば、これらの硬質材料体A、軟質材料体Bとも、塩化ビニル系樹脂や、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などの共通成分を有するエラストマーで製造すると好適である。このように、何れの材料体A、Bとも同じ成分の材料を含有させることで、製品となった状態での互いの材料体A、Bの密着性を高めることができる利点がある。なお、硬さを調整する方法としては、上記したように、硬さを変更する成分の配合量を調整する他、軟質材料Yのみを発泡させたり、硬質材料体Aよりも軟質材料体Bの発泡率を多くしたりして調整するとよいが、これに限るものではない。なお、グリップ1は、例えば、硬質材料体Aが金型などを用いて成形され(この際、金型内には、ハンドル本体2に対応する形状の中子が配設される)、さらに成形後の硬質材料体Aが別途金型の内部(キャビティ)に配設された状態で、軟質材料が硬質材料体Aを包み込むようにして金型内に注入されて成形されるが、この製造方法に限るものではない。
【0024】
図2〜図6などに示すように、グリップ1は、ハンドル本体2の端部の外周箇所に配設されたグリップ本体部3と、グリップ本体部3の後部から後方に膨出する後方膨出部4とから構成され、側面視した断面形状(すなわち、ハンドル本体2の軸心方向X(図2、図5参照)に直交する面で切断した断面視した断面形状)は略卵形とされている。グリップ本体部3は、ハンドル本体2の外周に圧入されるなどして装着され、硬質材料で形成された筒状部5と、筒状部5の外周に略筒状に装着され軟質材料で形成された外装部6とから構成されている。この実施の形態では、グリップ1の左右両端部は、硬質材料からなる筒状部5が外部に露出した状態で形成され、筒状部5の各端部5a、5bにより、軟質材料で形成された外装部6は左右に移動しないよう位置規制されている。また、筒状部5におけるハンドル本体2の中央寄りの端部(図2における右端部)5bの上部と下部とにはグリップ1の長さ方向(ハンドル本体2の軸心方向X)に延びる横長部5cが一体形成され、これにより、外装部6が周方向にも移動しないよう規制されている。
【0025】
図2〜図5に示すように、グリップ1の後方膨出部4は、それぞれ硬質材料で形成された後方延長支持部7および広がり受け部8と軟質材料で形成された嵌合外装部9とが互いに嵌まり込んだ状態で組み合わされて配設されている立設ピン嵌合部10と、単に軟質材料のみで形成された膨出外装部11とが、ハンドル本体2の軸心方向Xに対して交互に設けられている。すなわち、後方延長支持部7と広がり受け部8と嵌合外装部9とが形成されている立設ピン嵌合部10は、ハンドル本体2の軸心方向Xに対して、間隔をあけて複数(この実施の形態では4箇所)設けられている。
【0026】
ここで、図6(a)や図7、図8に示すように、立設ピン嵌合部10の後方延長支持部7は、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態(変形し易い状態)で後方に延びている。図6(a)に示すように、後方延長支持部7は、後方膨出部4よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で、より具体的には、上下方向に対して細幅の棒状形状で、後方に延びることで、上下に撓み易い状態で形成されている。そして、広がり受け部8は、後方延長支持部7により基部で繋がった状態で、この実施の形態では後方延長支持部7の後端部から上下に広がって、運転者の手の平Mを下方から受けることが可能な形状に形成されている。また、嵌合外装部9は、後方延長支持部7と広がり受け部8との間に嵌まり込んで、これらの後方延長支持部7および広がり受け部8と一体的に弾性変形するよう構成されている。また、後方膨出部4において、広がり受け部8の先端側に広がる湾曲面が外部に露出する一方、後方膨出部4の他の箇所は軟質材料の嵌合外装部9で覆われて露出している。
【0027】
したがって、図3に示すように、硬質材料体Aは、グリップ本体部3の筒状部5と、後方膨出部4の立設ピン嵌合部10に設けられた後方延長支持部7および広がり受け部8とが、硬質材料により一体成形されて形成されている。また、軟質材料体Bは、図4、図5、図6(a)、(b)などに示すように、グリップ本体部3の外装部6と、後方膨出部4の立設ピン嵌合部10に設けられた嵌合外装部9と、後方膨出部4の膨出外装部11とが、軟質材料により一体成形されて形成されている。
【0028】
なお、この実施の形態では、広がり受け部8が手によりなじみ易くするため、広がり受け部8の外面露出箇所の上端部と下端部とに窪み部8aが形成されている。また、この実施の形態では、広がり受け部8と後方延長支持部7との接続箇所は、後方延長支持部7よりも大きい断面形状(この実施の形態では略矩形の断面形状)の段付き接続部8bが形成され、後方延長支持部7と広がり受け部8とが確実かつ良好に接続されるよう構成されている。
【0029】
上記構成においても、グリップ1に後方膨出部4が設けられているので、手の平Mを受ける面積が広くなり、自転車の運転者によりグリップ1が把持されると、図7、図8に示されているように、後方膨出部4により運転者の手の平Mが受けられ、手首Nの位置が下がって手首Nの曲がり角度が大きくなることが阻止される。したがって、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手首Nがあまり曲がらない姿勢を維持できる。
【0030】
また特に、グリップ1の後方膨出部4には、筒状部5の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる硬質材料製の後方延長支持部7と、この後方延長支持部7から広がるように形成されて運転者の手の平Mを下方から受けることが可能な硬質材料製の広がり受け部8とが設けられている。したがって、グリップ1に下方に力が加えられた際には、図7〜図9に示すように、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が下方に撓みながら(変形しながら)、後方膨出部4に設けられた広がり受け部8などによって運転者の手の平(手の掌)Mが良好に受けられる。すなわち、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が徐々に下方に撓みながら、手の平(手の掌)Mが受けられるので、運転者の手の平Mを後方膨出部4に載せて下方に力を加えた際に、後方膨出部4からの反力も徐々に手の平Mに加えられ、運転者は、良好なクッション性を有した状態でグリップ1を握ることができる。また、筒状部5と後方延長支持部7と広がり受け部8とは硬質材料によって形成されているので、比較的大きな力でも後方延長支持部7および広がり受け部8により良好に受けられる。
【0031】
また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部7で吸収されながら広がり受け部8を介して手の平などに作用するため、手や手首などへの負担が良好に軽減される。
【0032】
なお、運転者の手の平によりグリップ1の後方膨出部4が下方に力を加えられた際には、図8に示すように、硬質材料で形成された後方延長支持部7が下方に撓むだけでなく、グリップ1の後方膨出部4において軟質材料で形成された嵌合外装部9および外装部6の各上側部分は斜め下方に伸びるように変形し、嵌合外装部9および外装部6の各下側部分は圧縮されながら変形する。したがって、この際、後方膨出部4の後方延長支持部7だけでなく、嵌合外装部9および外装部6の各上側部分にも、元の形状に収縮しようとする力が発生し、また、グリップ1の後方膨出部4における嵌合外装部9および外装部6の各下側部分には元の形状に戻ろうとする押し上げ力が発生する。これにより、硬質材料と軟質材料とで組み合わされた立設ピン嵌合部10における後方延長支持部7だけでなく、嵌合外装部9によっても手の平からの力を良好に受けることができる。
【0033】
また、筒状部5の外周には軟質材料からなる外装部6が装着され、また、後方膨出部4における立設ピン嵌合部10の間には軟質材料からなる膨出外装部11が設けられているので、これらの軟質材料の外装部6および膨出外装部11が、グリップ1を握った際に手に優しく接触し、長時間にわたって自転車を運転した場合でも、手の平や指の内側を傷めたり、まめができたりすることを最小限に抑えることができる。
【0034】
また、それぞれ硬質材料で形成された後方延長支持部7と広がり受け部8との間に、軟質材料により形成されている嵌合外装部9が嵌まり込んだ状態で組み合わされているので、軟質材料の部分が硬質材料の部分から離脱して空回りすることが防止され、後方膨出部4において、嵌合外装部9が後方延長支持部7および広がり受け部8から離脱することなく一体的に弾性変形する。さらに、グリップ1における硬質材料と軟質材料とを同系の材料で形成することより、硬質材料と軟質材料との境界部で軟質材料と硬質材料とが互いに融着して離反することを最小限に抑えることができ、後方膨出部4において、嵌合外装部9が後方延長支持部7や広がり受け部8に追随して良好に変形する。
【0035】
また、後方膨出部4において、広がり受け部8の一部を外部に露出させているので、この広がり受け部8の露出部で手の平Mからの力を直接良好に受けることができる。また上記のように、後方膨出部4における、後方延長支持部7と広がり受け部8と嵌合外装部9とが形成されている立設ピン嵌合部10を、ハンドル本体2の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けた構成としたことにより、立設ピン嵌合部10の数を調整することで、手に与える反力や後方膨出部4の変形状態(撓み状態)などが最適になるように容易かつ良好に調整することが可能となる。
【0036】
上記実施の形態では、複数の立設ピン嵌合部10は互いに独立して立設する形状であったが、これに限るものではなく、後方膨出部4において、立設ピン嵌合部10の先端部に設けられた広がり受け部8同士を接続する接続受け部22を設けて、この接続受け部22が外部に露出するよう構成してもよい。
【0037】
図10〜図16は、このような構成を有する本発明の他の実施の形態に係るグリップ21を示すものである。このグリップ21においても、ハンドル本体2の端部の外周箇所に配設されたグリップ本体部3と、グリップ本体部3の後部から後方に膨出する後方膨出部4とからなる。また、グリップ本体部3は、ハンドル本体2の外周に圧入されるなどして装着され、硬質材料で形成された筒状部5と、筒状部5の外周に略筒状に装着され軟質材料で形成された外装部6とから構成される。なお、図11、図13、図14は硬質材料体Aを示している。
【0038】
ただし、このグリップ21では、後方延長支持部7、広がり受け部8および嵌合外装部9(図15、図16参照)とからなる立設ピン嵌合部10が、後方膨出部4における左右方向の両端部のみ形成されている。すなわち、この実施の形態では、ハンドルの先端部に対応するグリップ21の一端部と、ハンドルの先端部よりも少し中央寄りに位置するグリップ21の中央部にわたって後方膨出部4が形成され、この後方膨出部4の両端部のみに立設ピン嵌合部10が形成されている。詳しくは、図11などに示すように、一方の立設ピン嵌合部10Aには、後方に延びる後方延長支持部7に、上下に延びる4つの広がり受け部8が形成され、他方の立設ピン嵌合部10Bには、後方に延びる後方延長支持部7に、上下に延びる2つの広がり受け部8が形成されている。そして、各立設ピン嵌合部10(10A、10B)における後方延長支持部7の先端に設けられた広がり受け部8同士の間に、グリップ21の表面部において、ハンドルの軸心方向Xに沿って延びる接続受け部22が外部に露出するように形成されて接続されている。
【0039】
この実施の形態に係るグリップ21によれば、後方膨出部4において露出する接続受け部22が手の平Mに良好に接触して、手の力を広がり受け部8や後方延長支持部7を介して外装部6やハンドル本体3に良好に伝えることができる。なお、手の平Mから後方膨出部4に力が加えられた際には、上記実施の形態と同様に、加えられた力に対応して、後方延長支持部7が下方に撓むとともに、嵌合外装部9が伸縮しながら変形することで、後方膨出部4に設けられた広がり受け部8などによって運転者の手の平(手の掌)Mからの力が良好に受けられる。また、地面からの衝撃などを、前輪を介してハンドルに受けた際でも、この衝撃が後方延長支持部7で吸収されながら広がり受け部8を介して手の平などに作用するため、手や手首などへの負担が良好に軽減される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、各種の自転車用のグリップとして好適に適用でき、スポーツジムなどに設置される固定されたトレーニング用の自転車や電動自転車などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、21 グリップ
2 ハンドル本体
3 グリップ本体部
4 後方膨出部
5 筒状部
6 外装部
7 後方延長支持部
8 広がり受け部
9 嵌合外装部
10 立設ピン嵌合部
11 膨出外装部
22 接続受け部
A 硬質材料体
B 軟質材料体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のハンドル本体の左右両端部に取り付けられる自転車用のグリップであって、ハンドル本体の外周に装着される筒状部と、後方に膨出する後方膨出部とを備え、前記後方膨出部は、前記筒状部の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部と、この後方延長支持部から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部とを有し、この広がり受け部が前記後方延長支持部を介して支持されていることを特徴とする自転車用のグリップ。
【請求項2】
前記筒状部の外周に外装部が装着されており、前記筒状部と前記後方延長支持部と前記広がり受け部とが、前記外装部よりも硬い硬質材料によって互いに続いた状態で形成されていることを特徴とする請求項1記載の自転車用のグリップ。
【請求項3】
前記後方膨出部に、前記外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部が設けられ、この嵌合外装部は、前記筒状部よりも軟らかい軟質材料で形成されていることを特徴とする請求項2記載の自転車用のグリップ。
【請求項4】
前記後方膨出部において、前記広がり受け部の一部が外部に露出し、後方膨出部の他の箇所が軟質材料の嵌合外装部で略覆われていることを特徴とする請求項3記載の自転車用のグリップ。
【請求項5】
前記後方膨出部において、前記後方延長支持部が、後方膨出部よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で後方に延び、前記後方延長支持部から広がり受け部が上下に広がるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自転車用のグリップ。
【請求項6】
前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所が、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項3記載の自転車用のグリップ。
【請求項7】
前記硬質材料と前記軟質材料とが同系の材料で形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の自転車用のグリップ。
【請求項8】
後方延長支持部で支持されている広がり受け部が複数の箇所に設けられ、各箇所の広がり受け部の先端部同士が、外部に露出する接続受け部を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自転車用のグリップ。
【請求項1】
自転車のハンドル本体の左右両端部に取り付けられる自転車用のグリップであって、ハンドル本体の外周に装着される筒状部と、後方に膨出する後方膨出部とを備え、前記後方膨出部は、前記筒状部の後部から撓むことが可能な状態で後方に延びる後方延長支持部と、この後方延長支持部から広がるように形成されて運転者の手の平を下方から受けることが可能な広がり受け部とを有し、この広がり受け部が前記後方延長支持部を介して支持されていることを特徴とする自転車用のグリップ。
【請求項2】
前記筒状部の外周に外装部が装着されており、前記筒状部と前記後方延長支持部と前記広がり受け部とが、前記外装部よりも硬い硬質材料によって互いに続いた状態で形成されていることを特徴とする請求項1記載の自転車用のグリップ。
【請求項3】
前記後方膨出部に、前記外装部に続いて、前記後方延長支持部と広がり受け部との間に嵌まり込んで、前記後方延長支持部および広がり受け部と一体的に弾性変形する嵌合外装部が設けられ、この嵌合外装部は、前記筒状部よりも軟らかい軟質材料で形成されていることを特徴とする請求項2記載の自転車用のグリップ。
【請求項4】
前記後方膨出部において、前記広がり受け部の一部が外部に露出し、後方膨出部の他の箇所が軟質材料の嵌合外装部で略覆われていることを特徴とする請求項3記載の自転車用のグリップ。
【請求項5】
前記後方膨出部において、前記後方延長支持部が、後方膨出部よりも上下寸法が小さい細幅の断面形状で後方に延び、前記後方延長支持部から広がり受け部が上下に広がるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の自転車用のグリップ。
【請求項6】
前記後方膨出部における、後方延長支持部と広がり受け部と嵌合外装部とが形成されている箇所が、ハンドル本体の軸心方向に対して、間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする請求項3記載の自転車用のグリップ。
【請求項7】
前記硬質材料と前記軟質材料とが同系の材料で形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の自転車用のグリップ。
【請求項8】
後方延長支持部で支持されている広がり受け部が複数の箇所に設けられ、各箇所の広がり受け部の先端部同士が、外部に露出する接続受け部を介して接続されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の自転車用のグリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−39856(P2013−39856A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176448(P2011−176448)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]