説明

自転車用ヘルメット

【課題】照明装置を取り付け可能な自転車用ヘルメットにおいて、照明装置の取付位置を容易に変更できるようにする。
【解決手段】自転車用ヘルメット10は、頭部を保護するヘルメットであって、ヘルメット本体12と、ガイド部14と、を備えている。ヘルメット本体は、頭部を覆うことができるものである。ガイド部は、ヘルメット本体に設けられ、照明装置16の取付位置が移動可能に照明装置16を案内するためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメット、特に、頭部を保護する自転車用ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車の走行時の転倒などに備えるために、頭部を保護するヘルメットが自転車レースなどで使用されている。この種の自転車用ヘルメットに装着可能な照明装置(自転車部品の一例)が従来知られている(特許文献1参照)。このような照明装置をヘルメットに装着できると、通常は照明装置が装着されていないロードレーサやマウンテンバイク等の競技用自転車を使用しても、24時間の自転車マラソンレース等で夜間に走行するときに便利である。
【0003】
従来の自転車用ヘルメットは、ヘルメットに形成された通気孔を利用して取り付けられた取付具を有しており、取付具に着脱自在に照明装置が取り付けられている。取付具は、2箇所の通気孔を挿通するベルトによりヘルメットに固定されている。この照明装置を装着可能な自転車用ヘルメットでは、取付具に対して着脱できるので、夜間以外は取り外して使用できるために便利である。
【特許文献1】特開2002−289030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の構成では、取付具をヘルメットに取り付けると、ヘルメットを脱いでベルトを付け直して取付具の取付位置を変えない限り、自転車部品である照明装置の取付位置は常に同じ位置になる。このため、走行中に前方の照射位置を変更するためには、頭を前後に動かさなければならず不便である。
【0005】
本発明の課題は、照明装置を取り付け可能な自転車用ヘルメットにおいて、自転車部品の取付位置を容易に変更できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用ヘルメットは、頭部を保護するヘルメットであって、ヘルメット本体と、ガイド部と、を備えている。ヘルメット本体は、頭部を覆うことができるものである。ガイド部は、ヘルメット本体に設けられ、自転車部品の取付位置が移動可能に自転車部品を案内するためのものである。
【0007】
このヘルメットでは、頭部を覆うことができるヘルメット本体に設けられたガイド部で自転車部品を案内すると、自転車部品の取付位置を移動させることができる。ここでは、ヘルメット本体に自転車部品の取付位置を移動可能なガイド部を設けたので、自転車部品の取付位置を容易に変更できる。特に、自転車部品として照明装置を用いた場合、湾曲しているヘルメット本体への取付位置が移動可能に照明装置が案内されるので、取付位置を変更すると照射位置も変更できる。
【0008】
発明2に係る自転車用ヘルメットは、発明1に記載のヘルメットにおいて、自転車部品を取付可能であり、ガイド部に案内される取付台と、ガイド部の案内方向の複数の位置のいずれかに取付台を位置決め可能な位置決め機構と、をさらに備えている。この場合には、自転車部品を取り付け可能な取付台が位置決め機構により位置決めされるので、各取付位置が一定に維持され、自転車部品が照明装置の場合は照射位置も一定に維持される。
【0009】
発明3に係る自転車用ヘルメットは、発明2に記載のヘルメットにおいて、ガイド部は、ヘルメット本体の頭頂部を通るように配置されたガイドレールを有し、位置決め機構は、ガイドレールの複数の位置で取付台を係止可能な係止部を有する。この場合には、ガイド部にガイドレールを設けたので、取付台が確実に案内されるとともに、ガイドレールの複数の位置で取付台を係止可能であるので、位置決めを確実に行える。
【0010】
発明4に係る自転車用ヘルメットは、発明2又は3に記載のヘルメットにおいて、ヘルメット本体は、頭頂部を通るように配置された取付凹部を有し、ガイド部は、取付凹部に設けられている。この場合には、取付凹部に自転車部品が配置されるので、自転車部品がヘルメット本体の外側面からあまり突出しなくなり、自転車部品が走行中に木の枝等の他のものに引っ掛かりにくくなる。
【0011】
発明5に係る自転車用ヘルメットは、発明1から4のいずれかに記載のヘルメットにおいて、自転車部品は照明装置である。この場合には、自転車部品が照明装置であるので、照明装置の照射位置を容易に変更できる。
【0012】
発明6に係る自転車用ヘルメットは、発明1から5のいずれかに記載のヘルメットにおいて、取付台は、自転車部品と一体形成されている。この場合には、取付台が自転車部品と一体形成されているので全体をコンパクトな構成にすることができるとともに部品点数を削減できる。
【0013】
発明7に係る自転車用ヘルメットは、発明1から6のいずれかに記載のヘルメットにおいて、ガイド部及び位置決め機構は、ヘルメット本体と一体形成されている。この場合には、ガイド部及び位置決め機構がヘルメット本体と一体形成さているので、全体をコンパクトにすることができるとともに部品点数を削減できる。
【0014】
発明8に係る自転車用ヘルメットは、発明1から7のいずれかに記載の装置において、
ヘルメット本体に設けられ、自転車部品に電力を供給する電源装置をさらに備えるこの場合には、電源装置が自転車部品と別に設けられているので、電源の交換が容易であるとともに、電源の容量を大きくすることができ長時間の動作が可能になる。
【0015】
発明9に係る自転車用ヘルメットは、発明1から8のいずれかに記載のヘルメットにおいて、ヘルメット本体の後端部に設けられ、ヘルメット本体の後方を照射する尾灯をさらに備える。この場合には、後方からの視認性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヘルメット本体に自転車部品の取付位置を移動可能なガイド部を設けたので、自転車部品の取付位置を容易に変更できる。特に、自転車部品として照明装置を用いた場合、湾曲しているヘルメット本体への取付位置が移動可能に照明装置が案内されるので、取付位置を変更すると照射位置も変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図3において、本発明の一実施形態による自転車用ヘルメット10は、頭部HDを保護するためのものであり、頭部HDを覆うことができるヘルメット本体12と、ヘルメット本体12に設けられ、照明装置(自転車部品の一例)16の取付位置が移動可能に照明装置16を案内するガイド部14と、を備えている。また、ヘルメット10は、照明装置16を取付可能であり、ガイド部14に案内される取付台30と、ガイド部14の案内方向の複数の位置のいずれかに取付台30を位置決め可能な位置決め機構34と、をさらに備えている。なお、以降の説明でヘルメット10の前後とは、頭部HDにかぶったときに前頭部に接触する部分が前部であり、後頭部に接触する部分が後部である。ヘルメット10は、ガイド部14に着脱自在に装着可能な照明装置16と、照明装置16に電力を供給する電源装置18と、ヘルメット本体12の後端部に設けられた尾灯20と、をさらに備えている。
【0018】
ヘルメット本体12は、外側面が頭頂部HPを含む頭部HDを覆うことができるように前後左右に湾曲した碗形状をした硬質合成樹脂製の外側部材22と、外側部材22の内側に形成された衝撃吸収用の合成樹脂製の内側部材24とを有している。ヘルメット本体12には、外側部材22及び内側部材24を貫通して複数の通気孔26が形成されている。
【0019】
外側部材22は、外側面の前後方向(図2左右方向)長さが左右方向(図2紙面直交方向)長さより長く湾曲して形成されており、左右方向の中心には、頭頂部HPを通るように前後方向に延びるスリット22aが形成されている。このスリット22aはガイド部14としても機能する。
【0020】
内側部材24は、スリット22a形成部分にスリット22aより幅広の取付凹部(図5)24aを有している。取付凹部24aは、ヘルメット本体12の頭頂部HPを通るように湾曲して形成されている。内側部材24の内側面は頭部HDに沿うように凹んで形成されている。
【0021】
ガイド部14は、外側部材22のスリット22aを挟んでその左右の所定幅で帯状に構成された1対のガイドレール42を有している。ガイドレール42は、取付台30を前後方向に案内するためのものである。具体的には、ガイドレール42は、外側部材22のスリット22aを挟んだ両側に他の部分より薄く形成されており、その段差部分で取付台30を案内する。スリット22aは、取付凹部24aより幅が狭く形成されており、ヘルメット本体12の頭頂部HPを通るように外側面に配置されている。したがって、ガイドレール42は、図5に示すように、外側部材22に取付凹部24aの壁からオーバーハングするように1対設けられている。
【0022】
取付台30は、この実施形態では、照明装置16と一体形成されている。具体的には、取付台30は、照明装置16の後述するケース部材40と一体形成された丸棒状のピン部材であり、たとえばケース部材40のそれぞれの側面に2本ずつ突出して形成されている。
【0023】
位置決め機構34は、ガイドレール42の下面に形成された円弧状に凹んだ1対の係止部44と、取付凹部24aの底面に配置された付勢部材46と、を有している。係止部44は、スリット22aを挟んでガイドレール42のオーバーハングした下面にガイド方向に並べて多数形成されており、取付台30の外周面が係合する形状である。付勢部材46は、たとえば、4フッ化エチレンゴムやウレタンゴムなどの滑りやすくかつ弾性を有する合成樹脂弾性体製の帯状の部材であり、取付台30を係止部44に向けて付勢する部材である。この付勢力より取付台30がガイドレール42の複数の位置のいずれかに位置決めされる。
【0024】
照明装置16は、図4及び図5に示すように,内部にたとえばLED(発光ダイオード)等の図示しない光源を有するものであり、ヘルメット10を着用した状態でライダーの前方を照射可能である。照明装置16は、頭頂部HPより前方に配置するのが好ましい。照射装置16は、光源が内部に配置されたケース部材40を有している。ケース部材40は、スリット22a内に配置可能な幅を有しており、高さは外側部材22の外側面から僅かに突出している。このようにスリット22a内に照明装置16を配置できるので、照明装置16が外側部材22からあまり突出しなくなり、走行中に照明装置16が木の枝などの他のものに引っ掛かりにくくなる。ケース部材40の後部には、スイッチ50が設けられている。ケース部材40の前部には、光源からの光を収束・拡散するレンズ52が配置されている。スイッチ50は、たとえば、手で操作しやすくかつオンオフがわかりやすいシーソー型のスイッチである。なお、スイッチの形式はシーソー型に限定されず、押しボタン型やスライド型のスイッチでもよい。また、周囲の照度を検出する照度センサを設け、照度センサの出力に応じてオンオフするようにしてもよい。
【0025】
電源装置18は、図1及び図2に示すように、照明装置16と離反したヘルメット本体12の外側面に装着可能である。電源装置18は、照明装置16と同様に係止部44に係合する取付台55が一体形成されたケース60を有している。したがって、この実施形態では、電源装置18もガイドレール42に沿って移動可能であり、かつガイドレール42のガイド方向の複数の位置で位置決め可能である。電源装置18は、頭頂部HPより後方に配置するのが好ましい。ケース60は、開閉可能でありかつ水密に封止されている。ケース60の内部には、電源としての電池を着脱可能に収納できる。電源装置18は、照明装置16と螺旋状にカールした電源コード62により電気的に接続されている。また、尾灯20とも螺旋状にカールした電源コード64により電気的に接続されている。
【0026】
尾灯20は、ヘルメット本体12の後方を照射可能なものである。尾灯20は、ガイドレール42の後端部にたとえばねじ部材などの適宜の固定手段により着脱可能に固定されている。尾灯20にも照明装置16と同様に図示しないスイッチが設けられている。また、尾灯20をガイドレール42から取り外すと、電源装置18や照明装置16をヘルメット本体12から取り外すことができる。
【0027】
このような構成の自転車用ヘルメット10において、照明装置16の照射位置を変更する場合には、以下のような操作を行う。まず、ケース部材40を付勢部材46に向けて片手で押圧して係止部44と取付台30との係合を解除する。係合を解除した状態でケース部材40を前後いずれかに移動させると、取付台30がガイドレール42により案内されて照明装置16の取付位置が変化する。そしてその位置で押圧した手を離すと、係止部33のいずれかに取付台30が係合して位置決めされる。ここで、ガイドレール42が湾曲しているので、取付位置を変更すると照明装置16の照射位置も変化する。これにより、ライダーは、照射位置を遠近いずれかに変化させることができる。たとえば、照明装置16を頭頂部HP側に移動させるとライダーから離れる方向に照射位置が変化し、前方に移動させるとライダーに接近する方向に照射位置が変化する。
【0028】
ここでは、ヘルメット本体12の通常は湾曲している外側面にガイド部14を設けたので、照明装置16の取付位置を調整することにより照射位置も変更される。このため、照明装置16の照射位置を容易に変更できるようになる。また、照明装置16の取付位置の調整を片手で簡単にできるので、走行中に片手で照射位置を簡単に変更できる。
【0029】
また、電源装置18と照明装置16とを別体にしたので、照明装置16の小型化を図れ、照明装置16の移動がより容易になる。
【0030】
<他の実施形態>
(a)前記実施形態では、ガイドレール42を、ヘルメット本体12の外側部材22と一体形成したが、別体にしてもよい。
【0031】
(b)前記実施形態では、取付台30を照明装置16のケース部材40と一体形成したが別体にしてもよい。たとえば、ヘルメットに照明装置を設けずに、取付台を電源が内蔵された汎用の照明装置を取付可能に構成してもよい。また、照明装置と一体に取付台を設けた場合にも、照明装置をヘルメットの構成に加えずにオプション等で別売りにしてもよい。
【0032】
(c)前記実施形態では、係止部44を有する位置決め機構34を例示したが、位置決め機構は、前記構成に限定されず、取付台を案内方向の複数の取付位置のいずれかに位置決めできるものであれば、どのような構成でもよい。
【0033】
(d)前記実施形態では、突出を抑えるためにスリット22a内に照明装置16を配置していたが、スリット22a外に照明装置を配置してもよい。
【0034】
(e)前記実施形態では、照明装置16と電源装置18とを別体にしたが一体にしてもよい。
【0035】
(f)前記実施形態では、スイッチ50を照明装置16に設けたが、スイッチを電源装置に設けてもよい。この場合、尾灯のスイッチを省略してもよい。
【0036】
(g)前記実施形態では、自転車部品として照明装置を例示したが、自転車部品は反射鏡や尾灯やアンテナ(たとえば、GPSや無線通信用)等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態による自転車用ヘルメットの斜視図。
【図2】そのスリット形成部分の縦断面図。
【図3】図3の前部縦断面拡大図。
【図4】照明装置配置部分の縦断面拡大図。
【図5】照明装置配置部分の横断面拡大図。
【符号の説明】
【0038】
10 自転車ヘルメット
12 ヘルメット本体
14 ガイド部
16 照明装置(自転車部品の一例)
18 電源装置
20 尾灯
24a 取付凹部
30 取付台
34 位置決め機構
42 ガイドレール
44 係止部
HD 頭部
HP 頭頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を保護する自転車用ヘルメットであって、
前記頭部を覆うことができるヘルメット本体と、
前記ヘルメット本体に設けられ、自転車部品の取付位置が移動可能に前記自転車部品を案内するガイド部と、
を備えた自転車用ヘルメット。
【請求項2】
前記自転車用部品を取付可能であり、前記ガイド部に案内される取付台と、
前記ガイド部の案内方向の複数の位置のいずれかに前記取付台を位置決め可能な位置決め機構と、
をさらに備える、請求項1に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項3】
前記ガイド部は、ヘルメット本体の頭頂部を通るように配置されたガイドレールを有し、
前記位置決め機構は、前記ガイドレールの複数の位置で前記取付台を係止可能な係止部を有する、請求項2に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項4】
前記ヘルメット本体は、前記頭頂部を通るように配置された取付凹部を有し、
前記ガイド部は、前記取付凹部に設けられている、請求項2又は3に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項5】
前記自転車部品は照明装置である、請求項1から4のいずれかに記載の自転車用ヘルメット。
【請求項6】
前記取付台は、前記自転車部品と一体形成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項7】
前記ガイド部及び前記位置決め機構は、前記ヘルメット本体と一体形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項8】
前記ヘルメット本体に設けられ、前記自転車部品に電力を供給する電源装置をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の自転車用ヘルメット。
【請求項9】
前記ヘルメット本体の後端部に設けられ、前記ヘルメット本体の後方を照射する尾灯をさらに備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の自転車用ヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−163500(P2008−163500A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352467(P2006−352467)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】