説明

自転車用連動錠

【課題】ハンドルがロックされているにもかかわらず、車輪が回転することを回避することができる自転車用連動錠を得る。
【解決手段】車輪錠10には、かんぬき15をロック方向に移動させる操作レバー11を備えており、操作レバー11の移動と共に突起11Aが突起移動路50を移動する。ハンドル錠を作動させるインナーワイヤー12Aの一端部にはワイヤー固定駒16が設けられており、ワイヤー固定駒16が移動するワイヤー固定駒移動路52が突起移動路50とロック側でラップしている。ワイヤー固定駒16の突起部16Aが突起11Aに押されてロック側に移動することでハンドルがロックされる。ワイヤー固定駒16の当り部16Bは突起移動路50とワイヤー固定駒移動路52との間を移動し、当り部16Bが突起移動路50に位置したとき、復帰バネによる突起11Aのロック解除方向への移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪錠を操作するとハンドル錠が連動し、車輪錠の操作だけで、車輪とハンドルの両方を一度にロック及びロック解除させることができる自転車用連動錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、後車輪とハンドルの両方を一度にロック及びロック解除させることができる自転車用連動錠が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、後車輪のスポーク間に挿通されて後車輪をロックするリング状のかんぬきを備えた後輪錠と、この後輪錠と連動してハンドルをロックするハンドル錠とからなる自転車用連動錠が開示されている。この自転車用連動錠では、後輪錠の操作レバーを操作すると、かんぬきが飛び出して後車輪のスポーク間に挿通され、後車輪がロックされると共に、かんぬきの移動と連動する連動ワイヤーがハンドル錠のロックピンをスライドさせてハンドルをロックする。
【0004】
また、後輪錠のロックを解除する際には、後輪錠の鍵を操作することで、飛び出したかんぬきが復帰バネにより後輪錠の内部に戻ると共に、連動ワイヤーがハンドル錠のロックピンをスライドさせることで、ハンドルのロックが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−81952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の自転車用連動錠では、後輪錠の鍵を操作したときに、飛び出したかんぬきが復帰バネにより後輪錠の内部に戻るが、かんぬきを作動させる作動経路と連動ワイヤーを作動させる作動経路が同一軌道上にあり、かつ、かんぬき作動経路のストロークよりも連動ワイヤー作動経路のストロークが短い。このため、連動ワイヤーが凍結等によりロック解除位置までスライドしない場合に、ハンドルがロックされているにもかかわらず、飛び出したかんぬきが後輪錠の内部に戻り、後車輪が回転する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ハンドルがロックされているにもかかわらず、車輪が回転することを回避することができる自転車用連動錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る自転車用連動錠は、車輪をロックする車輪錠と、前記車輪錠と連動してハンドルをロックするハンドル錠と、を備えた自転車用連動錠であって、前記車輪錠が、前記車輪のロック時に前記車輪のスポークの間に挿通されるかんぬきと、前記かんぬきを前記車輪のロックを解除する方向に移動させる復帰バネと、前記かんぬきに一体に設けられ、前記復帰バネの力に抗して前記車輪をロックする方向に前記かんぬきを移動させる操作レバーと、前記ハンドル錠をロックさせる連動ワイヤーの一端部に取り付けられたワイヤー固定駒と、前記ワイヤー固定駒が移動するワイヤー固定駒移動路と、前記連動ワイヤーが前記ハンドル錠のロックを解除する方向に前記ワイヤー固定駒を付勢する解除用バネと、前記かんぬきと一体に設けられた突起と、前記突起が移動し、前記ワイヤー固定駒移動路と一部ラップする突起移動路と、前記ワイヤー固定駒に形成され、前記突起が前記突起移動路を移動し前記かんぬきが前記車輪のスポークの間へ挿通されるとき、前記ワイヤー固定駒移動路と一部ラップする前記突起移動路にて前記突起に押され、前記ハンドルをロックする方向に前記ワイヤー固定駒を移動させる当接部と、前記ワイヤー固定駒に形成され、前記突起移動路と前記ワイヤー固定駒移動路との間を移動すると共に、前記かんぬきが前記車輪のスポークの間から抜かれるとき、前記ワイヤー固定駒が前記ハンドルのロックを解除する位置まで移動しないと前記突起移動路に位置して前記復帰バネによる前記突起の移動を阻止する当り部と、を有するものである。
【0009】
請求項1に記載の発明では、ロックの際は、車輪錠の操作レバーを操作すると、操作レバーと一体に設けられたかんぬきが復帰バネの力に抗して車輪をロックする方向に移動し、かんぬきが車輪のスポークの間に入り、車輪の回転がロックされる。また、ハンドルをロックさせる連動ワイヤーの一端部にワイヤー固定駒が取り付けられており、ワイヤー固定駒が移動するワイヤー固定駒移動路が、かんぬきと一体に設けられた突起が移動する突起移動路と一部ラップしている。ロックの際に、かんぬきの移動に伴って突起が突起移動路を移動し、かんぬきが車輪のスポークの間へ挿通されるとき、突起がワイヤー固定駒に形成された当接部を押すことで、解除用バネの力に抗してワイヤー固定駒がハンドルをロックする方向に移動する。ワイヤー固定駒の移動により連動ワイヤーが操作され、ハンドル錠によりハンドルがロックされる。このため、かんぬきが車輪のスポークの間へ挿通された後にハンドル錠によりハンドルがロックされるようになっているので、車輪が回転できる状態にもかかわらず、ハンドルが先にロックされることはない。
【0010】
一方、ロックを解除する際は、かんぬきの拘束を外すことで、復帰バネの作用によりかんぬきが車輪スポークの間から抜け出て車輪のロックが解除される。同時にかんぬきと一体の操作レバーも元の位置に戻る。また、解除用バネの作用でワイヤー固定駒が付勢方向に移動し、連動ワイヤーもハンドルのロックの解除方向へ移動し、ハンドル錠がハンドルのロックを解除する。
【0011】
ロックが解除される際には、ワイヤー固定駒に形成された当り部が突起移動路とラップした直線路部分を抜け、ワイヤー固定駒移動路をさらに移動するが、ワイヤー固定駒がハンドルのロックを解除する位置まで移動しないと、当り部が突起移動路上に位置して復帰バネによる突起の移動を阻止する。突起の移動が阻止されることで、かんぬきが車輪のスポークの間から抜かれることが阻止される。このため、連動ワイヤーもしくはワイヤー固定駒に異常が発生したことに起因してハンドルがハンドル錠によってロックされている間はスポークの間に必ずかんぬきがあるので車輪を回すことができない。つまり、連動ワイヤーもしくはワイヤー固定駒に異常が発生したことに起因してハンドルがロックされている状態の間は、不用意に自転車を発進させて転倒するようなことはないので安全である。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自転車用連動錠において、前記当り部が前記突起の移動を阻止する状態の時は、前記かんぬきが前記車輪のスポークの間に移動し、前記車輪の回転も阻止されているものである。
【0013】
請求項2に記載の発明では、当り部が突起の移動を阻止する状態の時は、かんぬきが車輪のスポークの間に移動し、車輪の回転も阻止されている。これによって、ハンドルがロックされているにもかかわらず、車輪が回転することを回避することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の自転車用連動錠において、前記突起移動路は、前記かんぬきの移動軌跡に沿ったガイド路であり、前記ワイヤー固定駒移動路は、前記突起移動路と一部ラップした直線路であり、前記ガイド路には、前記当り部が前記突起移動路とラップした前記直線路から抜けたとき、前記突起が前記当り部から外れてさらに前記突起が移動し前記かんぬきが前記車輪のスポークの間から抜けるストロークを確保する空走路が形成されているものである。
【0015】
請求項3に記載の発明では、突起移動路は、かんぬきの移動軌跡に沿ったガイド路であり、ワイヤー固定駒移動路は、突起移動路と一部ラップした直線路であり、ワイヤー固定駒の当り部が突起移動路とラップした直線路から抜けたとき、突起が当り部から外れてさらに突起がガイド路に形成された空走路を移動し、かんぬきが車輪のスポークの間から抜けるストロークが確保される。これによって、かんぬきが車輪のスポークの間から抜ける前に、ワイヤー固定駒を移動させてハンドルのロックを解除することが可能となる。このため、ハンドルがロックされているにもかかわらず、車輪が回転することをより確実に回避することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の自転車用連動錠において、前記ハンドル錠が、前記ワイヤー固定駒により前記連動ワイヤーが操作されたときに、前記連動ワイヤーの他端部が当接して揺動するワイヤー受けと、前記ワイヤー受けと連動してスライドし、前記ハンドルをロックさせるロックピンと、前記ロックピンをハンドルのロック方向に付勢するロックバネと、前記ワイヤー受けをハンドルのロックを解除する方向に復帰させる復帰バネと、を有するものである。
【0017】
請求項4に記載の発明では、連動ワイヤーが操作されたときに、連動ワイヤーの他端部が当接してワイヤー受けが揺動し、ワイヤー受けと連動してロックピンがスライドし、ロックバネの作用によりロックピンがハンドルをロックさせる。ロックバネを設けることで、ロックピンとハンドルのロック溝の位置が一致していない場合であっても、ハンドルを少し回せばロックピンとロック溝の位置が合い、ロックピンが嵌まり込むようになる。
【0018】
また、連動ワイヤーがハンドルのロック解除方向に操作されたときに、復帰バネの作用によりワイヤー受けをハンドルのロックを解除する方向に復帰させる。これにより、ロックピンが逆方向にスライドし、ハンドルのロックが解除される。このため、簡易な構成により、連動ワイヤーの操作によってハンドルをロックしたり、ロックを解除することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の自転車用連動錠において、前記ワイヤー受けと連動して前記ハンドルのロック状態を報知する表示マークが設けられているものとする。
【0020】
請求項5に記載の発明では、ワイヤー受けと連動してハンドルのロック状態を報知する表示マークが設けられており、ハンドルがロックされているか否かの判別が容易となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自転車用連動錠によれば、ハンドルがロックされているにもかかわらず、車輪が回転することを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態である自転車用連動錠を取り付けた自転車を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態である自転車用連動錠に用いられる車輪錠(サークル錠)のロック解除状態を示す部分分解斜視図である。
【図3−1】本発明の一実施形態である自転車用連動錠に用いられる車輪錠(サークル錠)のロック状態を示す部分分解斜視図である。
【図3−2】車輪錠(サークル錠)に用いられるワイヤー固定駒を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態である自転車用連動錠に用いられるハンドル錠を示す斜視図である。
【図5】ハンドル錠の部分分解斜視図である。
【図6】ハンドル錠のロック解除状態における異なる位置を示す断面図、及び表示マークを示す平面図である。
【図7】車輪錠(サークル錠)のロック解除状態を示す平面図及び部分構成図である。
【図8】ハンドル錠のロック解除の異常作動状態における異なる位置を示す断面図、及び表示マークを示す平面図である。
【図9】車輪錠(サークル錠)のロック解除の異常作動状態を示す平面図及び部分構成図である。
【図10】ハンドル錠のロック状態における異なる位置を示す断面図、及び表示マークを示す平面図である。
【図11】車輪錠(サークル錠)のロック状態を示す平面図及び部分構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態である自転車用連動錠を取り付けた自転車を示す側面図である。図1に示すように、自転車用連動錠4は、自転車2の後車輪31をロックする車輪錠10と、車輪錠10と連動して自転車2のハンドル32をロックするハンドル錠20と、を備えている。また、車輪錠10とハンドル錠20とが連動ワイヤー12によって結ばれており、連動ワイヤー12は、フレーム34に対して取付片35によって部分的に結束されている。
【0025】
図2は、車輪錠10として最適なサークル錠を示す部分分解斜視図であり、ロック解除状態を示している。また、図3−1は、車輪錠10のロック状態を示す部分分解斜視図である。図2及び図3−1に示すように、車輪錠(サークル錠)10は、サークル錠本体18に、後車輪31のロック時に後車輪31のスポークの間に挿通されるリンク状のかんぬき15と、かんぬき15を後車輪31のロックを解除する方向に移動させる復帰バネ19と、かんぬき15と一体に設けられて後車輪31をロックする方向にかんぬき15を移動させる操作レバー11と、を備えている。連動ワイヤー12は、インナーワイヤー12Aと、その外側のアウターワイヤー12Bとで構成されており、インナーワイヤー12Aがかんぬき15と連動して押し出されるようになっている。
【0026】
さらに、車輪錠(サークル錠)10は、インナーワイヤー12Aの一端部が固定されるワイヤー固定駒16と、ワイヤー固定駒16をハンドル錠20のロックを解除する方向に移動させる解除用バネとしての復帰バネ13と、ワイヤー固定駒16をガイドするガイド片17A(図7、図11参照)を備えた固定駒ガイド部材17と、かんぬき15の拘束を外して後車輪31のロックを解除するための回転式の鍵40(図7、図11参照)と、を備えている。
【0027】
操作レバー11は、かんぬき15に連結され、かんぬき15の周方向に沿った部位に円柱状の突起11Aを備えており、突起11Aはかんぬき15とともに移動する。図7(B)等に示すように、サークル錠本体18には、かんぬき15の移動軌跡に沿って形成されると共に、突起11Aが挿入されて移動する湾曲形状のガイド孔からなる突起移動路50が設けられている。
【0028】
図3−2、図7(B)及び図11(B)等に示すように、ワイヤー固定駒16には、かんぬき15が後車輪31をロックする方向に移動したときに、突起11Aに押されてインナーワイヤー12Aを押し出す当接部としての突起部16Aが設けられている。また、ワイヤー固定駒16には、インナーワイヤー12Aのインナーワイヤー12Aの一端部(球形部分)を固定する固定孔16Cが形成されている。固定駒ガイド部材17には、ガイド片17Aの内側に、インナーワイヤー12Aをハンドル錠20のロック及びロック解除方向に作動させるためのワイヤー固定駒16を移動させるワイヤー固定駒移動路52が設けられている。
【0029】
ワイヤー固定駒移動路52は、突起移動路50における後車輪31のロック方向の端部側で突起移動路50と一部ラップするように形成されている。ワイヤー固定駒移動路52は、湾曲形状の突起移動路50とロック側でラップする直線状の溝(直線路)とされている。これによって、突起11Aが突起移動路50を後車輪31がロックされる方向に移動したときに、突起移動路50における後車輪31のロック方向の端部側で、突起11Aに押されて突起部16Aがインナーワイヤー12Aを押し出す方向に移動する(図7中の矢印Bを参照)。そして、インナーワイヤー12Aが押し出されたときに、ハンドル錠20がロックされる構成とされている。
【0030】
また、ワイヤー固定駒16には、インナーワイヤー12Aのロック方向と反対側に、突起移動路50とワイヤー固定駒移動路52との間を移動する当り部16Bが形成されている。図9(B)に示すように、当り部16Bは、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜かれるとき、ワイヤー固定駒16がハンドル32のロックを解除する位置まで移動しないと、ワイヤー固定駒移動路52と突起移動路50のラップする部分に位置して復帰バネ19による突起11Aの移動を阻止するものである。突起11Aが移動する突起移動路50における後車輪31のロック方向と反対側(ロック解除側)には、当り部16Bがラップ部分から抜けてワイヤー固定駒移動路52単独部分に移動した後、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜けるストロークを確保する空走路50Aが形成されている。
【0031】
この車輪錠(サークル錠)10では、突起移動路50における後車輪31のロック方向の端部側に、ワイヤー固定駒16が移動するワイヤー固定駒移動路52が形成されることで、突起11Aが突起移動路50を移動する際、かんぬき15が後車輪31のスポークの間に挿通されるときに突起11Aが突起部16Aを押し、ワイヤー固定駒16が移動する(図11(B)参照)。これによって、かんぬき15が後車輪31のスポークの間に挿通された後にハンドル錠20がロックされるようになっている。
【0032】
また、図9(B)に示すように、当り部16Bは、ワイヤー固定駒16がハンドル32のロックを解除する位置まで移動しないと、突起移動路50に位置して復帰バネ19による突起11Aの移動を阻止するため、ハンドル32のロックが解除されるまでは、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜けないようになっている。すなわち、ワイヤー固定駒16がワイヤー固定駒移動路52を移動してハンドル32のロックが解除された後、突起11Aが突起移動路50の空走路50Aを移動することで、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜けるようになっている。
【0033】
図4は、ハンドル錠20を示す斜視図、図5は、ハンドル錠20の部分分解斜視図、図6は、ハンドル錠20の正面のロック状態を示す一部断面図である。なお、図6に示す(A)は、図5のハンドル錠20における連動ワイヤー12よりも後方の断面を前方から見た図、図6に示す(B)は、連動ワイヤー12を通る部分の断面を前方から見た図、図6に示す(C)は、ハンドル錠20の表示マークを示す平面図である。
【0034】
図4〜図6に示すように、ハンドル錠20は、連動ワイヤー12のインナーワイヤー12Aの他端部(車輪錠10と反対側の端部)が当接することによって揺動するワイヤー受け21と、ワイヤー受け21と連動してスライドするロックピン22と、ロックピン22をハンドル32のロック方向に付勢するロックバネ24と、ワイヤー受け21をハンドル32のロックを解除する方向に復帰させる復帰バネ23と、ハンドル32のロック状態・ロック解除状態を表示する表示マーク25と、カバー27と、を備えている。
【0035】
ワイヤー受け21の回転軸に形成された突起21Aは、ロックピン22の溝22Aに嵌まり込んでいる。また、突起21Aと反対側の凸部21Bの表面は、ハンドル32がロック状態なのかロック解除状態なのかを表示する表示マーク25となっており、図4に示すカバー27の表示窓27Aから表示マーク25の一部が透けて見えるようになっている。さらに、ロックピン22の先端は、ハンドルとともに回転するロック溝33に嵌まり込むようになっている。なお、ハンドル錠本体26とアウターワイヤー12Bは、調整ネジ14を介して接続されている。
【0036】
次に、図1から図11に基づいて、本発明の自転車用連動錠4のロック及びロック解除機構について説明する。
【0037】
まず、自転車用連動錠4のロック時であるが、ロックさせるには、車輪錠(サークル錠)10の操作レバー11を操作する。すなわち、図2に示すように、操作レバー11を図の下方(矢印A方向)に押し下げる。すると、復帰バネ19が伸び、サークル錠本体18のガイド溝18Aに沿って操作レバー11が移動し、操作レバー11の移動に応じてサークル錠本体18からリング状のかんぬき15が飛び出し、スポーク(図示せず)の間に入り込んで止まり、後車輪31がロックされる(図3−1参照)。なお、後車輪31のロック状態は鍵40で外さない限り維持される。
【0038】
また、図7に示すように、車輪錠(サークル錠)10の操作レバー11を操作すると、操作レバー11の突起11Aが突起移動路50をスライドする。そして、突起11Aが移動する突起移動路50のロック方向の端部側で、操作レバー11の突起11Aがワイヤー固定駒16の突起部16Aに当たるので、突起11Aの移動と共にワイヤー固定駒16が固定駒ガイド部材17のワイヤー固定駒移動路52に沿って移動し、復帰バネ13を圧縮させる(図11参照)。
【0039】
さらに、アウターワイヤー12Bは固定駒ガイド部材17に固定支持されて動かないが、インナーワイヤー12Aがワイヤー固定駒16によって押し出される。
【0040】
そして、操作レバー11の操作前は、図6(B)に示すように、ワイヤー受け21からインナーワイヤー12Aが離れていたが、操作レバー11の操作によって、インナーワイヤー12Aだけがフレーム34(図1参照)に沿って動くこととなる結果、図10(B)に示すように、インナーワイヤー12Aの先端がワイヤー受け21を押し、ワイヤー受け21を図の上方に押し上げる(時計回りに回転させる)。
【0041】
ここで、図5に示すように、ワイヤー受け21には突起21Aが形成されているので、図10(B)のようにワイヤー受け21が上方に押し上げられると、図10(A)のように、図6(A)に対して突起21Aが時計回りに回転し、同時に、圧縮されていたロックバネ24が伸び、ロックピン22が図6及び図10の左方にスライドする。
【0042】
したがって、かんぬき15がスポークの間に入り込んで止まるまで操作レバー11を図2の下方(矢印A方向)に押し下げると、図10(B)に示す状態に至り、図10(A)に示すように、ロックピン22がスライドしてその先端がロック溝33に嵌まり込み、ハンドル32がロックされる。なお、ロックピン22の位置とロック溝33の位置とが一致していない場合であっても、ハンドルを少し回せばロック溝33の位置が合い、位置が合ったところでロックバネ24が伸びて、ロックピン22が嵌まり込む。また、ロック状態では、図10(C)に示すカバー27の表示窓27Aから、ロック状態を示す赤色の表示マーク25(図5中の赤色領域25A)が透けて見える。
【0043】
この自転車用連動錠4では、突起11Aが移動する突起移動路50における後車輪31のロック方向の端部側に、ワイヤー固定駒16が移動するワイヤー固定駒移動路52が一部ラップしている。このため、突起11Aが突起移動路50を移動するときに、かんぬき15が後車輪31のスポークの間に挿通された後に、ワイヤー固定駒16がワイヤー固定駒移動路52を移動し、ハンドル錠20がロックされる。このため、後車輪31が回転できる状態(かんぬき15が後車輪31をロックしていない)にもかかわらず、ハンドル32が先にロックされることはない。
【0044】
また、自転車用連動錠4では、押し出されたインナーワイヤー12Aがワイヤー受け21を押し、ワイヤー受け21を押し上げてハンドルをロックする。この場合、インナーワイヤー12Aの移動量に対するワイヤー受け21の回転量は、調整ネジ14によって調整することができ、図6(B)におけるインナーワイヤー12Aとワイヤー受け21との間隔、図10(B)におけるワイヤー受け21とカバー27との間隔が、調整のための余裕となっている。
【0045】
逆に、自転車用連動錠4のロック解除時は、車輪錠(サークル錠)10の鍵40を図11(A)に示す状態から時計方向に回転させてかんぬき15の拘束を外す(図7(A)参照)。すると、図3−1中の伸ばされていた復帰バネ19が収縮し、その作用によってかんぬき15がサークル錠本体18の内部に引き戻され、スポーク(図示せず)の間から抜け出して後車輪31のロックが解除される。同時に操作レバー11も、サークル錠本体18のガイド穴(図示省略)に沿って引き上げられる(図2及び図7参照)。
【0046】
また、図11に示すように、かんぬき15の戻りと同時に、突起11Aが突起移動路50を移動し、突起11Aがワイヤー固定駒16の突起部16Aから離れるため、復帰バネ13の伸長によってワイヤー固定駒16が固定駒ガイド部材17のワイヤー固定駒移動路52に沿って押し上げられる。さらに、ワイヤー固定駒16によってインナーワイヤー12Aが引っ張られる。なお、固定駒ガイド部材17及びアウターワイヤー12Bは動かない。
【0047】
インナーワイヤー12Aが引っ張られると、図10(B)において、ワイヤー受け21を上方に押し上げていたインナーワイヤー12Aがアウターワイヤー12B内に引き込まれる。同時に、復帰バネ23の作用でワイヤー受け21が反時計回りに回転し、ワイヤー受け21の突起21Aがロックピン22の溝22Aを図10(A)の右方に向けて押す。
【0048】
そのため、ロックバネ24が圧縮され、ロックピン22が図の右方に向けてスライドし、その先端がロック溝33から抜け出る。なお、この過程では、復帰バネ23(図5参照)によって、ワイヤー受け21もインナーワイヤー12Aを押し下げている(図6参照)。
【0049】
そして、最終的に図6(A)に示す状態に至り、ハンドルのロックが完全に解除され、図6(B)に示すように、インナーワイヤー12Aとワイヤー受け21との間が完全に離れる。なお、ロック解除状態では、図6(C)に示すカバー27の表示窓27Aから、ロック解除状態を示す青色の表示マーク25(図5中の青色領域25B)が透けて見える。
【0050】
この自転車用連動錠4では、突起11Aが移動する突起移動路50における後車輪31のロック解除側に、インナーワイヤー12Aのワイヤー固定駒16が移動するワイヤー固定駒移動路52とラップしない空走路50Aが形成されている。このため、図11(B)に示す状態から突起11Aが突起移動路50をロック解除方向にスライドし始めたときに、ワイヤー固定駒16がワイヤー固定駒移動路52を移動し、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜ける前にハンドル錠20のロックが解除される。従って、ハンドル錠20によりハンドル32がロックされている間は、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜けることはなく、後車輪31を回すことができないため、不用意に自転車2を発進させて転倒するようなことはない。
【0051】
また、この自転車用連動錠4では、ロックを解除するために車輪錠(サークル錠)10の鍵40を回転させたとき、復帰バネ19の作用により突起11Aが突起移動路50を移動し、復帰バネ13の伸長によってワイヤー固定駒16が固定駒ガイド部材17のワイヤー固定駒移動路52に沿って押し上げられるが、インナーワイヤー12Aが凍結等により正常に移動しない可能性がある。例えば、図9(B)に示すように、インナーワイヤー12Aが凍結等により正常に移動せず、ワイヤー固定駒16がワイヤー固定駒移動路52の途中で止まる場合がある。この状態では、図8(A)及び図8(B)に示すように、ワイヤー受け21が揺動途中で、ロックピン22の先端がロック溝33から抜け出ておらず、ハンドル32のロックが解除されていない可能性がある。
【0052】
その際、図9(B)に示すように、ワイヤー固定駒16がハンドル32のロックを解除する位置まで移動していないと、ワイヤー固定駒16の当り部16Bが突起移動路50に位置し、突起11Aが当り部16Bに当ることで、復帰バネ19による突起11Aの移動が阻止される。これによって、図9(A)に示すように、かんぬき15が後車輪31のスポークの間から抜けることが阻止される。このため、インナーワイヤー12Aが凍結等により正常に移動しない場合に、ハンドル錠20によりハンドル32がロックされている(ハンドル32がロック解除されていない)にもかかわらず、後車輪31が回転することを回避することができる。
【0053】
また、この状態では、図8(C)に示すように、カバー27の表示窓27Aから、表示マーク25の赤色領域25Aと青色領域25Bの中間の境界線が透けて見える。これによって、かんぬき15のロックが解除されておらず、自転車2が走行不可であることが報知される。つまり、表示マーク25による走行不可の表示と、かんぬき15のロックが解除されないという2種類の異常報知機能を備えているので、より安全に使用することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、突起11Aは、図2に示す例では円柱状のピンであるが、棒状、多角形状、パイプ状、板状等、ワイヤー固定駒16を介して連動ワイヤー12を押圧できれば、形状、構造(パイプ、二重構造等)、材質等は問わない。
【0055】
また、本実施形態では、ワイヤー固定駒に突起11Aが当接する突起部16Aを設けたが、これに限定されず、突起に押圧されてワイヤー固定駒16が押し出される構成であれば、単なる壁等からなる当接部でもよい。
【0056】
また、車輪錠は、後車輪のスポークの間に挿通されるリング状のかんぬきと、かんぬきの移動軌跡に沿った湾曲形状の突起移動路と、ワイヤー固定駒を移動させる直線状のワイヤー固定駒移動路を設けたが、これに限定されず、ロック側で突起移動路とワイヤー固定駒移動路が一部ラップする形状であれば、他の形状でもよい。例えば、かんぬきを直線的に出し入れする箱型錠やバーロック等をもちいてもよい。
【0057】
また、車輪錠は、自転車2の後車輪31をロックするものであるが、これに限定されず、自転車2の前車輪をロックするものでもよい。
【符号の説明】
【0058】
2 自転車
4 自転車用連動錠
10 車輪錠
11 操作レバー
11A 突起
12 連動ワイヤー
12A インナーワイヤー
13 復帰バネ(解除用バネ)
15 かんぬき
16 ワイヤー固定駒
16A 突起部(当接部)
16B 当り部
17 固定駒ガイド部材
19 復帰バネ
20 ハンドル錠
21 ワイヤー受け
22 ロックピン
23 復帰バネ
24 ロックバネ
25 表示マーク
31 後車輪
32 ハンドル
40 鍵
50 突起移動路
50A 空走路
52 ワイヤー固定駒移動路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪をロックする車輪錠と、前記車輪錠と連動してハンドルをロックするハンドル錠と、を備えた自転車用連動錠であって、
前記車輪錠が、
前記車輪のロック時に前記車輪のスポークの間に挿通されるかんぬきと、
前記かんぬきを前記車輪のロックを解除する方向に移動させる復帰バネと、
前記かんぬきに一体に設けられ、前記復帰バネの力に抗して前記車輪をロックする方向に前記かんぬきを移動させる操作レバーと、
前記ハンドル錠をロックさせる連動ワイヤーの一端部に取り付けられたワイヤー固定駒と、
前記ワイヤー固定駒が移動するワイヤー固定駒移動路と、
前記連動ワイヤーが前記ハンドル錠のロックを解除する方向に前記ワイヤー固定駒を付勢する解除用バネと、
前記かんぬきと一体に設けられた突起と、
前記突起が移動し、前記ワイヤー固定駒移動路と一部ラップする突起移動路と、
前記ワイヤー固定駒に形成され、前記突起が前記突起移動路を移動し前記かんぬきが前記車輪のスポークの間へ挿通されるとき、前記ワイヤー固定駒移動路と一部ラップする前記突起移動路にて前記突起に押され、前記ハンドルをロックする方向に前記ワイヤー固定駒を移動させる当接部と、
前記ワイヤー固定駒に形成され、前記突起移動路と前記ワイヤー固定駒移動路との間を移動すると共に、前記かんぬきが前記車輪のスポークの間から抜かれるとき、前記ワイヤー固定駒が前記ハンドルのロックを解除する位置まで移動しないと前記突起移動路に位置して前記復帰バネによる前記突起の移動を阻止する当り部と、
を有する自転車用連動錠。
【請求項2】
前記当り部が前記突起の移動を阻止する状態の時は、前記かんぬきが前記車輪のスポークの間に移動し、前記車輪の回転も阻止されている請求項1に記載の自転車用連動錠。
【請求項3】
前記突起移動路は、前記かんぬきの移動軌跡に沿ったガイド路であり、
前記ワイヤー固定駒移動路は、前記突起移動路と一部ラップした直線路であり、
前記ガイド路には、前記当り部が前記突起移動路とラップした前記直線路から抜けたとき、前記突起が前記当り部から外れてさらに前記突起が移動し前記かんぬきが前記車輪のスポークの間から抜けるストロークを確保する空走路が形成されている請求項1又は請求項2に記載の自転車用連動錠。
【請求項4】
前記ハンドル錠が、
前記ワイヤー固定駒により前記連動ワイヤーが操作されたときに、前記連動ワイヤーの他端部が当接して揺動するワイヤー受けと、
前記ワイヤー受けと連動してスライドし、前記ハンドルをロックさせるロックピンと、
前記ロックピンをハンドルのロック方向に付勢するロックバネと、
前記ワイヤー受けをハンドルのロックを解除する方向に復帰させる復帰バネと、
を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の自転車用連動錠。
【請求項5】
前記ワイヤー受けと連動して前記ハンドルのロック状態を報知する表示マークが設けられている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の自転車用連動錠。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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