説明

自転車

【課題】 確実に停車時の自転車の転倒を防ぎ、かつ発光により周囲に注意を促すことができる自転車を提供する。
【解決手段】 前輪22を保持したフレームと一体的に取り付けられ前輪22の両側に接地可能に設けられた一対の脚部材26と、脚部材26を伸縮させる伸縮手段と、脚部材26に取り付けられ電源を備えた発光装置38を有する。脚部材26の上端部は、自転車10の前方に設けられた荷物篭14に取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷物を載せる篭等が前方に設けられている自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
現在わが国の自転車の保有台数は8600万台、年間販売数は1100万台とされている。そして、自転車の転倒事故も多く発生し、この転倒事故の半数近くが停車中によるものとされている。この原因として、自転車の前方に設けられた荷物篭に重い荷物や小形犬を積んだり、前方に取り付けた幼児用座席に幼児を座らせたりすることに起因する場合がある。これは、この状態では重心が上方に位置するため不安定であり、突風や接触で簡単に倒れるためである。そこで、転倒を防止する方法として、ハンドルを固定したり、スタンドの幅を広げる等の工夫がされているが、荷物等が重いと倒れやすくなり、不十分であった。
【0003】
この問題を解決するために、以下の特許文献に開示されているスタンド式の転倒防止装置が開示されている。特許文献1に開示されている自転車の転倒防止装置は、自転車の重心よりも高い位置における前輪寄りのフレームに設けた支点金具と、この支点金具に一端が取り付けられ駐輪時に他端が接地する伸縮自在もしくは折り畳み自在な、少なくとも1本の支柱が設けられているものである。また、特許文献2に開示されている簡易型自転車スタンドは、自転車フレーム部、シートポスト、サドル等に、取付部を設け、その取付部に様々な角度に調節、可動できる可動式ジョイントを設け、このジョイントに伸縮、折り畳み可能なスタンドポールが設けられているものである。
【特許文献1】特開2002−29465号公報
【特許文献2】特開2004−34952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の両者の場合、自転車の転倒は防止することができるが、停車時のハンドルの動きが自由であり、前輪側の篭に荷物等をおいて駐輪する場合は不安定なものであった。さらに、上記従来の技術においては、駐輪中に発光等により、周囲に注意を促す信号手段を有しているものではなかった。
【0005】
また、従来の夜間走行時の所在確認の方法は、前方を向いた照明器具をハンドル等に取り付け、後方の泥除けに反射鏡を取り付けることが行われているが、十分ではなかった。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、確実に停車時の自転車の転倒を防ぎ、なおかつ発光により周囲に注意を促すことができる自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前輪を保持したフレームと一体的に取り付けられ、前記前輪の両側に接地可能に設けられた一対の脚部材と、前記脚部材を伸縮させる伸縮手段と、前記脚部材に取り付けられ電源を備えた発光装置が設けられている自転車である。
【0008】
また、前記脚部材の上端部は、前記自転車の前方に設けられた荷物篭に取り付けられている。
【0009】
また、前記脚部材は、径が異なる複数のパイプシャフトが設けられ、径が大きい大径パイプシャフト内に、径が小さい小径パイプシャフトが挿抜自在に挿通され、大径パイプシャフトに挿通された小径パイプシャフトの一端部には、所定の操作により大径パイプシャフトに係合する固定係止部材が設けられている。前記固定係止部材の係合と解除を行う操作は、大径パイプシャフトと小径パイプシャフトを軸周りに相対回転させるものである。これにより、小径パイプシャフトは大径パイプシャフト内に収容可能である。
【0010】
また、前記脚部材の少なくとも一部分は透明な樹脂で形成され、前記脚部材のこの透明な部分の内側には、前記発光体が設けられている。また、電源に光センサ回路が設けられていても良い。前記光センサ回路は、一定の明るさ以下に周囲の照度が低下すると、自動的に動作して電力を前記発光体に供給するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自転車は、停車時に前輪側の脚部材が確実に地面に当接し、確実に自転車が自立し且つ前輪の向きが真っ直ぐに固定され、転倒を防ぐことができ、荷物の積み下ろしや幼児の乗り降りを、安全に行うことができる。また、暗いときには脚部が発光して、停車中に周囲に注意を促すことができ、この点からも安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の自転車10は、ハンドル12の前方に、前輪22を保持したフレームと一体的に荷物篭14が固定されている。荷物篭14の底部14aの下側には、板状の固定板16が、ネジ部材18で荷物篭14に固定されている。固定板16には、円筒状の係合部20が下方に突出して形成されている。係合部20は、自転車10の前輪22を挟んで両側に1個ずつ設けられ、係合部20の中空部24の挿通方向は、固定板16から下方に突出するに従い前輪から離れる方向に、つまり斜め下方に互いに開く方向に向いている。係合部20の中空部24内周面には、雌ねじ25が形成されている。
【0013】
固定板16の一対の係合部20には、同じ長さの脚部材26が各々取り付けられている。脚部材26は、径が異なる2本のパイプシャフトが設けられ、一方は径が大きい大径パイプシャフト28であり、他方は大径パイプシャフト28より径が小さい小径パイプシャフト30である。そして小径パイプシャフト30は、大径パイプシャフト28の内側に遊嵌状態で挿通可能である。大径パイプシャフト28の長さは、小径パイプシャフト30よりも少し長く形成されている。
【0014】
大径パイプシャフト28の一方の端部28aには、雄ねじ32が形成され、固定板16の係合部20の挿通部24の雌ねじ25に螺合されて取り付けられている。大径パイプシャフト28の反対側の端部28bには、円筒形のカバースリーブ34が取り付けられ、カバースリーブ34を通過して、小径パイプシャフト30の一方の端部30aが大径パイプシャフト28に挿抜自在に挿通されている。小径パイプシャフト30の端部30aには、所定の操作により大径パイプシャフト28の内周面に係合する固定係止部材が設けられている。この所定の操作は、大径パイプシャフト28と小径パイプシャフト30を軸周りに相対回転させるものである。これにより、小径パイプシャフト30は大径パイプシャフト28の任意の位置に係合可能であり、長さを調整すると共に小径パイプシャフト30を大径パイプシャフト28に収容する。
【0015】
小径パイプシャフト30の反対側の端部30bには、地面に当接する接地部材36が取り付けられている。なお、脚部材26は、駐輪して接地部材36を地面に当接させたとき、設置部材36がハンドル12の幅に収まるように、脚部材26の傾斜角度が設定されている。
【0016】
大径パイプシャフト28の少なくとも端部28a近傍は、透明な樹脂で設けられている。そして、大径パイプシャフト28の端部28a近傍には、大径パイプシャフト28の内部に、発光装置38が設けられている。発光装置38は、発光体、例えば赤色のLEDランプと、このLEDランプに電力を供給して発光させる電池や充電池、太陽電池等の電源が内蔵されている。大径パイプシャフト28は、全体が透明な樹脂で作られているほかに、全体は不透明でLEDランプに対面する部分のみ透明に設けても良い。また、電源に光センサ回路が設けられていても良い。光センサ回路は、一定の明るさ以下に周囲の照度が低下すると、自動的に動作して電力をLEDランプに供給するものである。さらに、脚部材26には反射塗料を塗っても良い。
【0017】
次にこの実施形態の自転車10の使用方法について説明する。まず、自転車10を運転するときは、脚部材26の小径パイプシャフト30を大径パイプシャフト28の内側に収容し、地面から離間させて安全に走行する。停車して自転車10を地面に自立させるときは、脚部材26の小径パイプシャフト30を大径パイプシャフト28から引き出して、接地部材36が地面に当接する長さで固定して、荷物篭14を支持する。夜間になって周囲の照度が一定の明るさ以下に低下すると、光センサ回路が動作してLEDランプに電力が供給され、発光する。また、電源にスイッチを設け、スイッチを操作して点灯や消灯を行っても良い。また、自転車10の後輪には、一般的なスタンドを設け、駐輪のときに併用しても良い。発光装置38の発光は、停車中のみならず、小径パイプシャフト30を収納して走行している際にも発光しても良い。
【0018】
この実施形態の自転車10によれば、停車時に脚部材26が確実に地面に立設され、荷物篭14を確実に支持して自転車10の転倒を防ぎ、荷物の積み下ろしが安全であり、幼児の乗り降りにも安全である。脚部材26は、前輪22から離れる方向に広がるように設けられているため、確実に転倒を防止する。さらに、ハンドル12も固定されるため、ふらつきをなくし安定する。また、脚部材26に取り付けられた発光装置38が発光し、周囲に注意を促すことができ、衝突等を防ぎ、この点からも安全なものとなる。また、暗いときでも自分の自転車10の駐輪場所が容易にわかり、また盗難等を防ぐ効果もある。
【0019】
脚部材26が必要ないときは、係合部20の雌ねじ25と大径パイプシャフト28の雄ねじ32の螺合を解除して、簡単に外すことができる。また、荷物篭14の底部14aに固定板16を取り付けるため、荷物篭14の強度が向上する。また、脚部材26はハンドル12の幅に収まるように設定されているため、駐輪場に停めるとき他の自転車の邪魔にならない。また、脚部材26は伸縮可能であるため、駐輪場所の地面が傾斜していたり凹凸があったりしても、長さを調節して自転車10をほぼ垂直に立てることができる。脚部材26を係合部20に螺合させるときは、係合部20が僅かに外側に向いているため、取り付けやすい。脚部材26の長さ調節の操作は簡単であり、走行を始めるときは短時間で短くして走行の準備することができる。また、現在使用している自転車や、一般的に販売している自転車に、固定板16を固定するだけで簡単に脚部26を取り付けることができ、便利である。
【0020】
なお、この発明の自転車10は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば発光体のランプの種類や発光する色等、変更可能である。また発光装置の形態は上記以外に、柔軟性を有しかつ薄い面状にした面発光体として、大径パイプシャフトの外側面に接着剤等で貼り付けても良い。また、脚部材の構造は大径パイプシャフトと小径パイプシャフトの二本ではなく、3本以上の径が異なるパイプシャフトが固定係止部材を介して挿通されていてもよい。固定係止部材の構造は、自由に変更可能であり、軸方向の回転により係止と解除を行うものの他に、レバー等の操作部を設けて係止・解除の操作を行うものなど、自由に変更可能である。脚部材の取付位置は、荷物篭に限定されず、フレームや幼児用シートに取り付けても良い。固定板や脚部のパイプシャフトの素材は、一定の強度を有するものであれば、金属製や樹脂性等、自由に選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態の自転車の正面図である。
【図2】この実施形態の自転車の荷物篭と脚部材を示す右側面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 自転車
12 ハンドル
14 荷物篭
16 固定板
20 係合部
22 前輪
26 脚部材
28 大径パイプシャフト
30 小径パイプシャフト
38 発光装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪を保持したフレームと一体的に取り付けられ、前記前輪の両側に接地可能に設けられた一対の脚部材と、前記脚部材を伸縮させる伸縮手段と、前記脚部材に取り付けられ電源を備えた発光装置が設けられていることを特徴とする自転車。
【請求項2】
前記脚部材は、前記自転車の前方に設けられた荷物篭部に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の自転車。
【請求項3】
前記脚部材は、径が異なる複数のパイプシャフトが設けられ、径が大きい大径パイプシャフト内に、径が小さい小径パイプシャフトが挿抜自在に挿通され、大径パイプシャフトに挿通された小径パイプシャフトの一端部には、回動操作により大径パイプシャフトに係合する固定係止部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自転車。
【請求項4】
前記脚部材の少なくとも一部分は透明な樹脂で形成され、前記脚部材のこの透明な部分の内側には、前記発光体が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自転車。



【図1】
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【図2】
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