説明

臭素化ラクトン類化合物の製造方法

【課題】低コストで効率よく臭素化ラクトン類化合物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、下記式(1)
【化1】


(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を、臭素と反応させる臭素化工程を含み、上記臭素化工程は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下にて行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臭素化ラクトン類化合物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラクトン類化合物のハロゲン化については、例えば特許文献1に、γ−ブチロラクトンを臭素化してα−ブロモ−γ−ブチロラクトンを製造する方法が記載されている。ここでは、γ−ブチロラクトンを臭素化させる際の触媒として、赤リンまたはハロゲン化リンを用いている。また、非特許文献1にも同様に、γ−ブチロラクトンを臭素化してα−ブロモ−γ−ブチロラクトンを合成する際の触媒として単体のリンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,247,468号明細書(1981年1月27日)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本化学会編,「新実験化学講座14(I)」,丸善,1977年11月,p.351−352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1および非特許文献1に記載されている方法では、触媒としてリンおよびリン化合物を用いて臭素化ラクトン類化合物を製造している。しかし、単にこの方法を用いて臭素化ラクトン類化合物を製造した場合、河川等において富栄養化の原因物質になるリン化合物が環境に対して悪影響になり、また、臭素化反応によって得られる目的物の品質が十分ではないという課題がある。そのため、これらの課題を解決するためにはさらなる操作を要することになるが、この操作には多大な費用および労力を要し、工業的に適切とはいえない。
【0006】
よって、従来の臭素化ラクトン類化合物の製造方法では十分ではなく、さらに低コストで効率よく臭素化ラクトン類化合物を製造する技術が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストで効率よく臭素化ラクトン類化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行なった。その結果、低コストで効率よくラクトン類化合物を臭素化させて目的物を得る方法を見出し、本願発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新規知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
【0009】
本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、上記の課題を解決するために、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を、臭素と反応させる臭素化工程を含み、上記臭素化工程は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下にて行なわれることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法において、上記ラクトン類化合物は、γ−ブチロラクトンであることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、上記臭素化工程の後に、還元剤によって脱色する脱色工程をさらに含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、さらに、上記還元剤は、亜硫酸ナトリウムであることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、上記臭素化工程の後に、アルカリ物質によって中和する中和工程をさらに含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、上記の課題を解決するために、下記式(1)
【0017】
【化2】

【0018】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を臭素化反応させた後、還元剤を添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、以上のように、下記式(1)
【0020】
【化3】

【0021】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を、臭素と反応させる臭素化工程を含み、上記臭素化工程は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下にて行なわれる。また、本発明に係る臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、下記式(1)
【0022】
【化4】

【0023】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を臭素化反応させた後、還元剤を添加する。したがって、低コストで効率よく臭素化ラクトン類化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではない。
【0025】
〔本発明に係る第1の臭素化ラクトン類の製造方法〕
本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、下記式(1)
【0026】
【化5】

【0027】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を、臭素と反応させる臭素化工程を含み、上記臭素化工程は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下にて行なわれればよい。
【0028】
(臭素化工程)
臭素化工程とは、ラクトン類化合物を触媒の存在下にて臭素と反応させて、臭素化させる工程である。
【0029】
ラクトン類化合物としては、式(1)で表されるラクトン類化合物であればよいが、好ましくは、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、またはε−カプロラクトンであり、より好ましくは、γ−ブチロラクトンである。
【0030】
本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法において、臭素化工程における触媒は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種であればよい。これにより、低コストで効率よく臭素化ラクトン類化合物を製造することができる。
【0031】
従来、ラクトン類化合物を臭素化させる際の触媒として用いられるリンは、同素体により若干の違いはあるものの、いずれも発火性を有する危険な物質である。また、リンは臭素との反応性が高く、これらが接触すると急激な反応により激しい発熱を生じて発火することがある。さらに、リンと臭素とが反応することによって生成される三臭化リンも危険性が高い物質であり、この三臭化リンは分解により毒性および腐食性を有するガスを生じたり、大気中の水分と反応して発煙したりすることが知られている。
【0032】
これらの理由から、リンを触媒として用いる臭素化反応では、反応系内の大気を窒素等の不活性ガスによって置換して無酸素環境にすること、また、反応による急激な発熱を考慮して反応スケールを落とすことなど、安全性を期すための操作および処置が必要になる。しかし、このような一時的な安全対策を講じたとしても、可燃性の化合物を多量に取り扱う製造設備においては、さらなる安全対策が必要になることは言うまでもない。
【0033】
これに対して本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、触媒として硫黄または硫黄化合物を用いることにより、リンおよびリン化合物において見られた問題点を解決している。
【0034】
つまり、硫黄および硫黄化合物は、リンおよびリン化合物と比較して取り扱いが容易であり、且つ安全な物質である。つまり、硫黄および硫黄化合物、ならびにこれらと臭素との反応物は大気下で反応性を有していないか、穏やかなものである。よって、仕込み作業時に容易に取り扱うことができる。加えて、反応器内の大気を窒素等の不活性な気体で置換する煩雑な操作を必要とせず、大気下で反応に用いることができる。このような性質は、可燃性の材料(例えば、原料のラクトン類など)を用いる本発明の製造方法において、特に工業的な大量合成時における安全性確保の観点から非常に有利である。
【0035】
また、本発明において用いる硫黄および硫黄化合物は、その大半が臭素との反応によってハロゲン化されて、反応後の有機層を水洗浄する工程において加水分解される。その結果、廃棄物となる水層に、主に硫黄オキソ酸塩類として除去される。この水層を通常の廃水処理工程において処理することにより、最終的に環境に対する影響の少ない無機塩類になる。
【0036】
一方、ラクトン類化合物を臭素化させるときの触媒としてリンを用いた場合、反応後の廃棄物(例えば、反応液を水洗した水層など)に含まれるリン化合物は、湖沼、河川または海洋などに廃棄されると富栄養化の原因物質になることが知られており、環境に悪影響を与えてしまう。よって、このようなリンを含む廃棄物は、通常の処理に加えて高度な水準でリンを除去する処理が求められるが、該処理に多大な費用および労力を要するために工業的に適しているとは言えない。
【0037】
硫黄化合物としては、例えばハロゲン化硫黄または硫化水素が挙げられるが、本発明に用いられる触媒としては、硫黄またはハロゲン化硫黄が好ましく、硫黄が特に好ましい。なお、これらの触媒は一種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本願で単に「硫黄」と記載しているものは、単体の硫黄を示している。単体の硫黄には多くの同素体が知られているが、本発明において触媒として用いる硫黄の同素体は特に限定されない。また本願において硫黄の量や濃度を示す時は、どの同素体を用いた場合であっても硫黄1原子を1分子として示す。すなわち、硫黄1モルと記載した場合には、どの同素体を用いる場合でも32gを示し、硫黄1モル%という記載は0.01原子当量の硫黄を示す。
【0039】
触媒の濃度の下限値としては、ラクトン類化合物に対して0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、2モル%以上が特に好ましい。また、触媒の濃度の上限値としては、ラクトン類化合物に対して40モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、5モル%以下が特に好ましい。
【0040】
ラクトン類化合物に対して硫黄または硫黄化合物の濃度が上記下限値以上であることにより、十分な反応速度を得ることができる。また、該濃度が上記上限値以下であることにより、硫黄、硫黄化合物またはそれらの反応物を反応後の反応系から容易に除去することができ、その後の除去工程の負荷を軽減し、発生する廃棄物量を削減することができる。特に、触媒として硫黄を用いた場合は、濃度が15モル%未満であれば、反応後の反応系に硫黄が固体として残留することがなく、該硫黄を除くための濾過等の工程を加える必要がないため、操作が簡略化されて工業的に好ましい。
【0041】
本発明における臭素化工程において、ラクトン類化合物と臭素とを反応させて臭素化させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、まず、ラクトン類化合物および触媒を混合攪拌しながら臭素を添加し、その後、加熱および熟成することによって臭素化反応させてもよいし、臭素および触媒を混合攪拌しながらラクトン類化合物を添加し、その後、加熱および熟成をすることによって臭素化反応させてもよい。なお、これらの原料および触媒を反応器内に導入する順序は特に限定されない。また、ラクトン類化合物、臭素および触媒の使用量の一部をまず反応系に添加し、その後反応中に、残りの材料を反応系に添加してもよい。
【0042】
なお、本明細書において、反応系に触媒等の材料を添加するという表現は、反応器内に材料を添加することを指す。
【0043】
これらの方法のうち、本発明における臭素化反応を一般的な反応設備にて行なう場合、ラクトン類化合物および触媒を混合攪拌しながら臭素を添加し、その後、加熱および熟成することによって臭素化反応させる方法、または、ラクトン類化合物および触媒に加え臭素の使用量の一部を反応系に添加し、その後加熱昇温中または加熱された反応系に残りの臭素を滴下する方法が好ましい。
【0044】
ラクトン類化合物および触媒を予め混合する場合、その混合温度および混合時間は特に限定されない。例えば、混合温度の下限値としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、上限値としては115℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。また、混合時間の下限値としては1分間以上が好ましく、5分間以上が特に好ましく、上限値としては1時間以下が好ましく、30分間以下が特に好ましい。
【0045】
臭素を反応系内に導入する方法としては、例えば、使用量を一括で添加する方法、いくつかに分割して添加する方法、または滴下により連続的に添加する方法などが挙げられる。これらの方法は、使用する装置の形状および付帯設備の能力等を考慮して選択すればよいが、添加する際の臭素の蒸気を抑制または除外しやすい点から、分割して添加する方法が好ましく、滴下により連続的に添加する方法がより好ましい。
【0046】
臭素を反応系内に導入する際の反応容器内の温度は、下限値としては0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、上限値としては80℃以下が好ましく、40℃以下が特に好ましい。該温度がこれらの範囲内であれば臭素の蒸気を抑制しやすいため、好適に操作することができる。臭素を反応系内に滴下することにより添加する方法では、滴下時間は特に限定されるものではなく、実行する条件および付帯設備の能力等を考慮して設定すればよい。臭素の蒸気を効果的に抑制するためには、上限値としては30分間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、生産性を考慮した場合には24時間以内が好ましく、10時間以内がより好ましい。
【0047】
該臭素化の反応温度については、ラクトン類化合物の臭素化反応が進行し得る温度であればよく、特に限定されない。
【0048】
ここで、本明細書において使用される「熟成」という表現は、臭素化反応の大部分が進行した後に、これを十分に完結させるために設定する時間および操作を示す。なお、臭素化反応と熟成との間に明確な分岐点はなく、「反応時間」という表現には熟成の時間も包含され、「反応温度」という表現には熟成時の温度も包含される。
【0049】
この反応温度は、反応速度の観点から下限値としては50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上が最も好ましい。また、副反応の抑制の観点から、上限値としては150℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が特に好ましい。なお、反応温度を一定に保つ必要はなく、例えば反応の進行状況に合わせて多段階の温度に分けてもよいし、連続的に変化させてもよい。
【0050】
また、該臭素化反応において、反応時間は使用する原料および触媒の量もしくは種類、反応スケール、または反応温度などにより変動するものであり、特に制限されるものではない。しかし、副生する臭化水素を穏やかに除去および除外しやすいといった観点等から、下限値としては30分間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、生産効率などの観点から50時間以下が好ましく、30時間以下がより好ましく、10時間以下が特に好ましい。これにより、目的の臭素化ラクトン類化合物を得ることができる。
【0051】
例えば、ラクトン類化合物として、γ−ブチロラクトンを用いた場合、以下の反応式に示すように、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンを得ることができる。
【0052】
【化6】

【0053】
(洗浄工程および中和工程)
本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、上記臭素化工程の後に、水などの極性溶媒を用いて反応系の酸性物質を除去する洗浄工程および/またはアルカリ物質によって酸性物質を中和して除去する中和工程をさらに含むことが好ましい。これにより、純度の高い臭素化ラクトン類化合物を得ることができる。
【0054】
つまり、上述した臭素化反応後の反応系には臭化水素が副生している。また、触媒として添加した硫黄または硫黄化合物は、主に硫黄臭素化物となり反応系中に含まれている。そこで、該反応系に水を加えて洗浄するか、またはアルカリ物質を添加して中和することにより、これらが除去されて最終産物の純度を高めることができる。
【0055】
また、本発明に関わるラクトン類化合物の臭素化反応において、副生する臭化水素がラクトンの開環反応を起こすことが考えられ、例えばラクトン類化合物としてγ−ブチロラクトンを用いた場合、2,4−ジブロモ酪酸などがさらに副生していると推量される。洗浄工程および/または中和工程では、このようなラクトンの開環により生じる化合物を所望のラクトンに誘導していると考えられ、収率向上および純度向上に重要である。
【0056】
中和工程を行なう際のアルカリ物質としては特に限定されるものではなく、例えば炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、または水酸化ナトリウムを用いることができる。アルカリ物質の量は、反応系中の酸性物質を中和できる量であればよく、特に限定されない。アルカリ物質は溶液として用いることが好ましく、アルカリ溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、酸性物質を中和することにより生じる塩が析出しない濃度で用いることが好ましい。
【0057】
中和工程における操作は特に限定されるものではなく、例えば、まず、反応器内に窒素などの不活性ガスを導入して臭化水素および未反応の臭素をパージ(除去)して、続いて反応器内にアルカリ溶液を供給することにより、反応系中の酸分を中和すればよい。このとき、反応系のpHは、pH1.0〜4.5の範囲内にすることが好ましく、pH1.3〜3.4の範囲内にすればより好ましい。pHがこれらの範囲を下回ると酸性物質などの除去が不完全となり、上回ると目的化合物の分解を生じる。また、pHをこれらの範囲内とすることで、ラクトンの開環により生じる化合物を所望のラクトンに誘導できる。
【0058】
アルカリ溶液の添加方法としては、特に限定されないが、例えば該アルカリ溶液を滴下することにより添加することができる。
【0059】
洗浄工程および/または中和工程を行なう温度は20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
【0060】
(脱色工程)
本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法では、上記臭素化工程の後に、還元剤によって脱色する脱色工程をさらに含むことが好ましい。これにより、低コストで高品質な目的物を得ることができる。
【0061】
つまり、臭素化工程後の反応系は着色しており、何らかの方法で脱色しなければこれによって最終目的物が着色し、製品として好ましくない。そのため、実用に供する品質で製品を得るためには、着色を除去するための精製工程をさらに行なう必要があり、コストがかかってしまう。また、精製に伴って廃棄物が発生するため、環境面においても好ましくない。
【0062】
上記製造方法によれば、臭素化反応後の反応系に還元剤を添加することにより、該反応系が脱色されて高品質の目的物を得ることができる。
【0063】
還元剤としては、例えば、亜硫酸およびその金属塩、重亜硫酸およびその金属塩、亜ジチオン酸およびその金属塩、四チオン酸およびその金属塩、チオ硫酸およびその金属塩、次亜リン酸およびその金属塩、蟻酸またはシュウ酸などの還元性を有する有機化合物、ヒドラジンおよびその鉱酸塩類または水和物、亜鉛、錫もしくはマグネシウムなどの鉱酸と反応して発生期の水素を生じる金属類、塩化鉄(II)などの鉄(II)化合物およびその水和物、ならびに水素であり、好ましくは亜硫酸およびその金属塩、チオ硫酸およびその金属塩、ならびに重亜硫酸およびその金属塩であり、より好ましくは亜硫酸およびその金属塩、ならびに重亜硫酸およびその金属塩であり、特に好ましくは亜硫酸ナトリウムである。
【0064】
なお、上述のように、臭素化ラクトン類化合物を製造する際の原料としてリン等を用いた場合、製造後の廃棄物にはリン化合物が含まれている。このリン化合物は、湖沼、河川または海洋などに廃棄されると富栄養化の原因物質になることが知られており、環境に悪影響を与えてしまう。よって、このようなリンを含む廃棄物は、通常の処理に加えて高度な水準でリンを除去する処理が求められる。このような観点から、ここで用いられる還元剤はリン化合物以外を使用することが好ましい。これにより、環境に悪影響を及ぼすことがない。
【0065】
これらの還元剤は一種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、還元剤の形態は、水もしくは溶剤などの溶液、またはスラリーとして用いることができる。
【0066】
本発明における脱色工程において、脱色させる方法は特に限定されるものではなく、臭素化反応後の反応系に適宜還元剤を投入すればよい。さらに、先に述べた洗浄工程および/または中和工程を行なう場合は、還元剤を追加することによって同時に脱色工程を行なってもよい。
【0067】
このように、本発明に係る第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法によれば、取り扱いが容易である触媒を用いて、安全を期すための追加の操作を必要とせず、安全性の高い方法で高品質の臭素化ラクトン類化合物を提供することができる。
【0068】
〔本発明に係る第2の臭素化ラクトン類の製造方法〕
本発明に係る第2の臭素化ラクトン類化合物の製造方法は、下記式(1)
【0069】
【化7】

【0070】
(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を臭素化反応させた後、還元剤を添加すればよい。これにより、環境に悪影響を及ぼすことなく、また、特別な精製用の装置を使うことなく、高品質の臭素化ラクトン類化合物を製造することができる。
【0071】
本発明に係る第2の臭素化ラクトン類化合物の製造方法において、ラクトン類化合物を臭素化させる際に用いる触媒は特に限定されるものではなく、例えば、硫黄、硫黄化合物、リンまたは三臭化リンなどのリン化合物が挙げられる。
【0072】
本願で単に「リン」と記載しているものは、単体のリンを示している。単体のリンには多くの同素体が知られているが、本発明において触媒として用いるリンの同素体は特に限定されない。また本願においてリンの量や濃度を示す時は、どの同素体を用いた場合であってもリン1原子を1分子として示す。即ち、リン1モルと記載した場合には、どの同素体を用いる場合でも31gを示し、リン1モル%という記載は0.01原子当量のリンを示す。
【0073】
また、ラクトン類化合物と臭素とを反応させて臭素化させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、上述した第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法において列挙したいずれかの方法を用いて行なってもよいし、リンを触媒として用いる場合は、反応容器内に不活性ガスを導入して不活性雰囲気下で反応させてもよい。そして、ラクトン類化合物を臭素化反応させた後、反応系に含まれる着色物質を還元剤によって脱色する。
【0074】
還元剤としては、例えば、亜硫酸およびその金属塩、重亜硫酸およびその金属塩、亜ジチオン酸およびその金属塩、四チオン酸およびその金属塩、チオ硫酸およびその金属塩、次亜リン酸およびその金属塩、蟻酸またはシュウ酸などの還元性を有する有機化合物、ヒドラジンおよびその鉱酸塩類または水和物、亜鉛、錫もしくはマグネシウムなどの鉱酸と反応して発生期の水素を生じる金属類、塩化鉄(II)などの鉄(II)化合物およびその水和物、ならびに水素であり、好ましくは亜硫酸およびその金属塩、チオ硫酸およびその金属塩、ならびに重亜硫酸およびその金属塩であり、より好ましくは亜硫酸およびその金属塩、ならびに重亜硫酸およびその金属塩であり、特に好ましくは亜硫酸ナトリウムである。これらの還元剤は一種類のみを用いてもよいし、複数種類を組み合わせて用いてもよい。また、還元剤の形態は、水もしくは溶剤などの溶液、またはスラリーとして用いることができる。
【0075】
また、臭素化反応させた後の反応系は赤などに着色しているが、該反応系に還元剤を加えることにより脱色されて、実用に供する高品質の製品を得ることができる。
【0076】
なお、本発明においても、臭素化反応させた後に、第1の臭素化ラクトン類化合物の製造方法において記載した洗浄工程および中和工程における操作を行なってもよいし、洗浄工程および/または中和工程を行なう際に還元剤を追加して用いることによって、同時に脱色を行なってもよい。
【0077】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【0078】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【実施例】
【0079】
〔実施例1〕
(臭素化工程)
攪拌装置、還流装置、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた容量1000mlの反応容器に、γ−ブチロラクトン200g(2.32mol)、および触媒として硫黄2.76g(0.086mol、γ−ブチロラクトンに対して3.7mol%)を仕込み、該滴下ロートに臭素431g(2.70mol)を仕込んだ。攪拌を開始し、反応容器内の温度が40℃を超えないように保ちながら、該滴下ロート内の臭素全量を滴下した。滴下終了後、反応容器内の温度を約90℃に昇温して1時間、次いで約110℃に昇温して3時間反応を行なった。
【0080】
(中和工程)
反応終了後、上記窒素導入管より窒素を導入し、反応中に生成した臭化水素および過剰な臭素を除去すると共に、反応容器内容物の温度を約50℃まで冷却した。該滴下ロートにアルカリ溶液として25重量%炭酸ナトリウム水溶液を仕込み、窒素導入管に代えてpHメーターを取り付けた。該滴下ロートから炭酸ナトリウム水溶液を、反応容器内容物のpH値が2.5となるまで、50〜60℃の温度範囲で、且つpH値が2.5を超過しないように滴下した。このときの炭酸ナトリウム水溶液の使用量は約600gであった。
【0081】
(脱色工程)
次いで、還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いて脱色処理を行なった。この時、攪拌を一時停止すると反応容器内容物は2層を形成しており、この下層にあたる有機層は赤色を呈していた。10重量%亜硫酸ナトリウム水溶液を、この下層の色調が淡黄色となるまで、反応容器内容物に加えた。このとき、亜硫酸ナトリウム水溶液は約27gを要した。反応器内容物を分液ロートに移し、静置後に分液し、下層にあたる淡黄色の有機層357gを得た。この有機層は工業的に使用可能なα−ブロモ−γ−ブチロラクトン(収率93.1%)であり、ガスクロマトグラフによる分析では純度が96.7%であった。
【0082】
〔実施例2〕
(臭素化工程)
攪拌装置、還流装置、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた容量200mlの反応容器に、γ−ブチロラクトン40g(0.465mol)、および触媒として硫黄0.5516g(0.017mol、γ−ブチロラクトンに対して3.7mol%)を仕込み、該滴下ロートに臭素96.6g(0.604mol)を仕込んだ。攪拌を開始し、反応容器内の温度を80まで昇温したあと、80〜85℃の範囲に保ちながら、該滴下ロート内の臭素全量を滴下した。滴下には40分間を要した。滴下終了後、反応容器内の温度を85〜90℃の範囲に保って14時間反応を行なった。
【0083】
(中和工程)
反応終了後、該窒素導入管より窒素を導入し、反応中に生成した臭化水素と過剰の臭素を除去するとともに、反応容器内容物の温度を30分間かけて約50℃まで冷却した。該滴下ロートにアルカリ溶液として25重量%炭酸ナトリウム水溶液を仕込み、窒素導入管に代えてpHメーターを取り付けた。該滴下ロートから炭酸ナトリウム水溶液を、反応容器内容物のpH値が2.5となるまで、50〜60℃の温度範囲で、かつpH値が2.5を超過しないように、ゆっくり滴下した。このときの炭酸ナトリウム水溶液の使用量は約97gであり、滴下時間は約2時間を要した。この炭酸ナトリウム水溶液の滴下終了後、同温度範囲を1時間維持した。続いて、更に炭酸ナトリウム水溶液を、同温度範囲を保ちながら、反応容器内容物のpH値が5.8となるまで滴下した。このときの炭酸ナトリウム水溶液は約3gを要した。
【0084】
(脱色工程)
次いで、還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いて脱色処理を行なった。反応容器内容物の温度を約30分間かけて25℃にまで冷却した後、目視にて内容物の色が褐色から無色透明になるまで亜硫酸ナトリウムを投入した。亜硫酸ナトリウムは1.5gを要した。反応容器内容物を分液ロートに移し、10分間静置した後に分液して、下層にあたる無色透明の有機層66.39gを得た。この有機層は工業的に使用可能なα−ブロモ−γ−ブチロラクトン(収率86.8%)であり、ガスクロマトグラフによる分析では純度が96.9%であった。
【0085】
〔実施例3〕
(臭素化工程、中和工程)
滴下ロートへの臭素仕込み量を86.20g(0.539mol)としたこと以外は、反応容器内のpH値を2.5にするまでの操作を実施例1と同様に行なった。その後、約30分かけて反応容器内の温度を25℃まで冷却し、内容物を分液ロートに移し、10分間静置した後に分液して、下層にあたる淡黄色の有機層76.36gを得た。若干の着色を持つものの、この有機層は工業的に使用可能なα−ブロモ−γ−ブチロラクトンであり、収率88.6%、ガスクロマトグラフィーによる分析では、α-ブロモ-γ-ブチロラクトンの純度が97.9%であった。
【0086】
〔比較例1〕
(臭素化工程)
攪拌装置、還流装置、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた容量100mlの反応容器に、γ−ブチロラクトン10.00g(0.116mol)、および触媒として赤リン0.134g(0.043mol、γ−ブチロラクトンに対して3.7mol%)を仕込んだ。反応容器内の大気を窒素に置換するために、まず容器内を減圧し、ついで窒素を導入することにより減圧を解除する操作を2回繰り返した(この後、臭素化反応中は約20ml/分の流量で反応容器内に窒素を流し続けた)。次に、反応容器内容物の攪拌を始め、反応容器を氷浴で冷却することにより、内容物の温度を2.3℃まで冷却した。該滴下ロートに臭素21.7g(0.136mol)を仕込み、このうちの1.96gを反応容器内に滴下したところ、内容物の温度が2.3℃から19.5℃まで急激に上昇した。その後、反応容器内の温度を約110℃に昇温し、110〜115℃の範囲に保ちながら、該滴下ロート内の残りの臭素全量を滴下した。滴下終了後、反応容器内容物の温度を110〜115℃の範囲に保って3時間反応した。
【0087】
(洗浄工程)
反応終了後、該窒素導入管より導入している窒素の流量を一時的に増やし、反応中に生成した臭化水素と過剰の臭素を除去すると共に、反応容器内容物の温度を室温程度まで冷却した。次いで、反応容器内容物に水約10gを加え、反応容器を加熱して内容物を還流状態とし、この還流状態を4時間維持したのち、室温程度まで冷却した。反応容器の内容物を分液ロートに移し、静置した後に分液して、下層にあたる褐色の有機層21.9gを得た。この有機層をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンの含有量は90.2%であり、純分収率は90.4%であった。
【0088】
〔比較例2〕
(臭素化工程)
攪拌装置、還流装置、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた容量100mlの反応容器に、γ−ブチロラクトン10.00g(0.116mol)、および触媒として赤リン1.34g(0.043mol、γ−ブチロラクトンに対して37mol%)を仕込んだ。反応容器内の大気を窒素に置換するために、まず容器内を減圧し、ついで窒素を導入することにより減圧を解除する操作を2回繰り返した(この後、臭素化反応中は約20ml/分の流量で反応容器内に窒素を流し続けた)。次に、反応容器の内容物の攪拌を始め、内容物の温度を約15℃まで冷却した。該滴下ロートに臭素19.50g(0.122mol)を仕込み、反応容器内の温度が40℃を超過しないように冷却しながら、該滴下ロート内の臭素全量を数分間かけて滴下したが、この臭素滴下初期には急激な発熱が確認され、仮に大スケールで実施した場合は温度制御が困難となる状況が伺えた。臭素滴下終了後、反応容器内容物の温度を約20分間かけて70℃まで昇温した。再び、該滴下ロートに臭素19.50g(0.122mol)を仕込み、反応容器内容物の温度を70〜75℃の範囲に保ちながら、該滴下ロート内の臭素全量を数分間かけて滴下した。この臭素の滴下終了後、反応容器内の温度を約80℃に保って3時間反応した。
【0089】
(洗浄工程)
反応終了後、上記窒素導入管より窒素を導入し、反応中に生成した臭化水素および過剰な臭素を除去すると共に、反応容器内容物の温度を室温程度まで冷却した。次いで、反応容器内容物に水約33gを加え、反応容器を加熱して内容物を還流状態とし、この還流状態を4時間維持したのち、室温程度まで冷却した。反応容器の内容物を分液ロートに移し、静置した後に分液して、下層にあたる褐色の有機層24.7gを得た。有機層を水約15gで2回洗浄し、この有機層をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、α−ブロモ−γ−ブチロラクトンの含有量は59.8%であり、純分収率は77.2%であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の製造方法によって製造された臭素化ラクトン類化合物は、例えば、特開2007−182454号公報又は特開2006−265215号公報に開示されている医薬用途、特開2006−202745号公報、特開2001−357838号公報又は特表2008−532209号公報に開示されている、電池などの電解質に添加される添加剤、特開平10−7720号公報に開示されている重合開始剤、特開平11−43792号公報に開示されている酸洗促進剤、および、「Organic Syntheses, coll. vol.5, p.255 (1973);vol.45, p.22(1965)」に開示されている、γ−クロノラクトンの合成用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を、臭素と反応させる臭素化工程を含み、
上記臭素化工程は、硫黄および硫黄化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の触媒の存在下にて行なわれることを特徴とする臭素化ラクトン類化合物の製造方法。
【請求項2】
上記ラクトン類化合物は、γ−ブチロラクトンであることを特徴とする請求項1に記載の臭素化ラクトン類化合物の製造方法。
【請求項3】
上記臭素化工程の後に、還元剤によって脱色する脱色工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の臭素化ラクトン類化合物の製造方法。
【請求項4】
上記還元剤は、亜硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3に記載の臭素化ラクトン類化合物の製造方法。
【請求項5】
上記臭素化工程の後に、アルカリ物質によって中和する中和工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の臭素化ラクトン類化合物の製造方法。
【請求項6】
下記式(1)
【化2】

(上記式(1)において、Rは炭素数3〜5の鎖状の炭化水素基を表わし、該炭化水素基は炭化水素基、カルボニル基、オキソ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよく、ただし、Rを構成する炭素のうち、Rに隣接するケトン基に最も近い炭素には1つ以上の水素原子が結合している)で表わされるラクトン類化合物を臭素化反応させた後、還元剤を添加することを特徴とする臭素化ラクトン類化合物の製造方法。

【公開番号】特開2012−167020(P2012−167020A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26409(P2011−26409)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000227652)日宝化学株式会社 (34)
【Fターム(参考)】