説明

舗装体の補修方法、舗装体の補修材、及び補修材の製造方法

【課題】長期的に安定したシール性を確保でき、補修作業時の作業効率が向上する簡易な舗装体の補修方法、舗装体の補修材、及び補修材の製造方法を提供する。
【解決手段】道路Rに発生したひび割れCを補修するための補修方法は、紐状部材11に特殊アスファルト12を付着させるアスファルト付着工程と、特殊アスファルト12が付着した紐状部材11をひび割れCに充填する充填工程と、ひび割れCに充填した紐状部材11を加熱する加熱工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体の補修方法、舗装体の補修材、及び補修材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交通荷重や環境負荷による舗装材の劣化等に起因して、道路等の舗装体にひび割れが発生することが知られている。このひび割れ(クラック)を放置すると、ひび割れから舗装体内部に雨水等が浸入し、舗装体の剥離を引き起こして、舗装体の支持力の低下を招くことになる。
【0003】
そこで、ひび割れからの雨水等の浸入を防止するために、ひび割れにシール材を充填して補修するシール材注入工法が考案されており、シール材の材料や施工方法等が多数開発され実用化に至っている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、アスファルトに熱可塑性エラストマー等を添加して加熱溶解した液体状のシール材を、やかん等でひび割れに注入する技術が開示されている。この技術では、シール材の注入量を適量に調節するのが困難である一方、シール材の注入量が不足するとシール性が損なわれることから、シール材を多目に注入した後、盛り上がったシール材の表面を金属製のコテ等で均す作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「東亜道路工業株式会社」,[online],平成23年7月8日検索,インターネット〈URL:http://www.toadoro.co.jp/business/product/31/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記した従来技術では、盛り上がったシール材の表面を均すことにより、シール材の一部が舗装体の表面に付着するため、シール部材と他の箇所との間に段差が生じていた。その結果、舗装体上を走行する車両等がシール材に直接接触しやすくなるため、補修後比較的早期にシール材が剥離して飛散するという問題があった。
【0007】
また、前記した従来技術では、アスファルトに熱可塑性エラストマー等を添加した材料を溶解釜等に入れて高温になるまで加熱する作業が必要であったり、盛り上がったシール材の表面を均す作業が必要であったりするため、補修作業に多大な手間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、長期的に安定したシール性を確保でき、補修作業時の作業効率が向上する簡易な舗装体の補修方法を提供することを課題とする。
また、前記舗装体の補修方法に用いる補修材及び前記補修材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、舗装体に発生したひび割れを補修するための舗装体の補修方法であって、紐状部材にアスファルトを付着させるアスファルト付着工程と、前記アスファルトが付着した前記紐状部材を前記ひび割れに充填する充填工程と、前記ひび割れに充填した前記紐状部材を加熱する加熱工程と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ひび割れの長さに合わせて紐状部材を長さ方向に対し直角に切断し、且つひび割れの幅に合わせて紐状部材に付着させるアスファルトの付着量を調節することにより、ひび割れの形状(状態)に適合した紐状部材を作製できる。そして、当該紐状部材をひび割れに充填することにより、ひび割れを確実にシールできる一方、舗装体の表面への紐状部材の付着を抑制できるため、車両等が紐状部材に直接接触し難くなり、紐状部材が剥離し難くなる。
また、充填した紐状部材を加熱することにより、紐状部材に付着したアスファルトが溶融して舗装体に接着(結合)するため、ひび割れを確実にシールできる一方、ひび割れ内において紐状部材が剥離し難くなる。
したがって、本発明によれば、紐状部材が剥離して飛散し難くなるため、長期的に安定したシール性を確保できる。
【0011】
また、本発明によれば、アスファルトが付着した紐状部材を、ひび割れに充填してバーナー等の加熱手段で加熱するだけで補修作業が完了するため、クラック充填材を溶解釜に入れて高温になるまで加熱する作業を省略できる。
更に、本発明によれば、紐状部材の長さや太さを簡易に調節して、ひび割れの形状に適合した紐状部材を作製できるため、紐状部材が舗装体の表面よりも盛り上がることがなく、紐状部材の表面を均す作業を省略できる。
したがって、本発明によれば、従来技術(非特許文献1の技術)に比較して、補修作業時の作業効率が向上する。
【0012】
また、前記紐状部材に付着した前記アスファルトに補強材を付着させる補強材付着工程を更に備え、前記紐状部材に対して、前記アスファルトと前記補強材とを交互に2回以上付着させることにより、前記紐状部材の太さを調節するように構成するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、紐状部材に対して、アスファルトと補強材とを交互に2回以上付着させることにより、紐状部材の太さを調節して、ひび割れの幅に適合した紐状部材を簡易に作製できる。
【0014】
また、前記アスファルト付着工程において前記アスファルトの温度を変更することにより、前記紐状部材の太さを調節するように構成するのが好ましい。
【0015】
アスファルトの温度が高い場合には、アスファルトの粘度が下がるため、紐状部材に付着するアスファルトの付着量が少なくなる一方、アスファルトの温度が低い場合には、アスファルトの粘度が上がるため、紐状部材に付着するアスファルトの付着量が多くなることから、かかる構成によれば、アスファルト付着工程においてアスファルトの温度を変更することにより、アスファルトの付着量を調節することが可能となり、ひいては補修材の太さを調節して、ひび割れの幅に適合した紐状部材を簡易に作製できる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明は、舗装体に発生したひび割れを補修するための舗装体の補修材であって、紐状部材と、前記紐状部材に付着するアスファルトと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、前記したように、ひび割れの長さに合わせて紐状部材を長さ方向に対し直角に切断し、且つひび割れの幅に合わせて紐状部材に付着させるアスファルトの付着量を調節することにより、ひび割れの形状(状態)に適合した補修材を作製できる。そして、当該補修材をひび割れに充填することにより、ひび割れを確実にシールできる一方、舗装体の表面への補修材の付着を抑制できるため、車両等が補修材に直接接触し難くなり、補修材が剥離し難くなる。したがって、本発明によれば、長期的に安定したシール性を確保できる。
【0018】
また、本発明によれば、紐状部材の長さや太さを簡易に調節して、ひび割れの形状に適合した補修材を作製できるため、補修材が舗装体の表面よりも盛り上がることがなく、補修材の表面を均す作業を省略できる。したがって、本発明によれば、従来技術(非特許文献1の技術)に比較して、補修作業時の作業効率が向上する。
【0019】
前記課題を解決するために、本発明は、舗装体に発生したひび割れを補修するための補修材の製造方法であって、紐状部材にアスファルトを付着させるアスファルト付着工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、アスファルトを紐状部材に付着させることにより、補修材を簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、長期的に安定したシール性を確保でき、補修作業時の作業効率が向上する簡易な舗装体の補修方法を提供することができる。
また、前記舗装体の補修方法に用いる補修材及び前記補修材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係る補修材をひび割れに充填するときの様子を示す概略斜視図であり、(b)は、補修材をひび割れに充填した状態を示す断面図である。
【図2】補修材を製造する工程を示す説明図であり、(a)は、紐状部材を切断する切断工程を示す斜視図、(b)は、特殊アスファルトを付着させる特殊アスファルト付着工程を示す斜視図、(c)は、石粉を付着させる石粉付着工程を示す斜視図である。
【図3】ひび割れを補修する工程を示す説明図であり、(a)は、ひび割れを清掃する清掃工程を示す断面図、(b)は、ひび割れを乾燥させる乾燥工程を示す断面図、(c)は、補修材をひび割れに充填する充填工程を示す断面図、(d)は、充填した補修材を加熱する加熱工程を示す断面図である。
【図4】ひび割れを補修する他の方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
なお、本実施形態では、本発明の舗装体の補修材を、道路に発生したひび割れに適用する場合について説明するが、補修材の使用目的を限定するものではない。
【0024】
図1(a)は、本発明の実施形態に係る補修材1をひび割れCに充填するときの様子を示す概略斜視図であり、(b)は、補修材1をひび割れCに充填した状態を示す断面図である。なお、図1(b)では、説明の便宜上、紐状部材11に対する特殊アスファルト12及び石粉13の付着状態を模式的に描いている。
図1(a)(b)に示すように、補修材1は、既設のアスファルト舗装体たる道路Rに発生した線状のひび割れCに充填され、ひび割れCからの雨水等の浸入を防止するためのシール材である。
補修材1は、図1(b)に示すように、紐状部材11と、特殊アスファルト12と、石粉13と、を備えて構成されている。
【0025】
紐状部材11は、例えば、断面視円形状を呈する長尺な綿製の撚り紐で構成される。紐状部材11は、ひび割れCの形状に合わせて変形させることが可能であって、任意の長さに切断可能であり、かつ特殊アスファルト12を付着(含浸)させることが可能であれば、その形状、材質等は特に限定されるものではない。紐状部材11の太さは、後記するように特殊アスファルト12及び石粉13の付着量を適宜調節することにより太くできるため、例えば、1mm程度のものを用いることが好ましい。
【0026】
アスファルトたる特殊アスファルト12は、紐状部材11に付着される材料である。本実施形態の特殊アスファルト12としては、変形追従性(応力緩和性)の高いものを用いることが好ましく、例えば、以下の表1に示す性状のものを用いることが好ましい。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、本実施形態の特殊アスファルト12は、針入度が高い値を示しており比較的柔らかく弾力性があるため、繰り返し加わる交通荷重や温度変化等による道路R(特にひび割れC箇所)の変形(歪み)に追従して変形することが可能である。したがって、補修材1の損傷を抑制して、ひび割れCの再発及び伝播を抑制できる。
【0029】
また、表1に示すように、本実施形態の特殊アスファルト12は、軟化点及び60℃粘度が高い値を示しており耐流動性(高温性状)が優れる一方、フラース脆化点が低い値を示しており耐低温ひび割れ性(低温性状)が優れている。したがって、高温時及び低温時における耐久性が高いため、温度が変化しても補修材1の損傷を抑制して、ひび割れCの再発及び伝播を抑制できる。
【0030】
なお、特殊アスファルト12は、前記性状のものに限定されることなく、補修箇所の交通条件や環境条件等を考慮して、適宜変更してよい。また、特殊アスファルト12に替えて通常のアスファルトを用いてもよい。
【0031】
補強材たる石粉13は、特殊アスファルト12に付着される材料であり、公知の石粉の中から適宜選択して用いることができる。石粉13は、補修材1の強度(耐久性)を高めると共に、例えば、保管時や運搬時等の使用前(補修前)において補修材1,1同士や補修材1と他の物が付着するのを防止する役割を果たしている。これにより、補修材1の保管作業や運搬作業等が容易になる。
【0032】
なお、本実施形態では、補強材として石粉13を使用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、合成繊維、植物繊維、炭素繊維、ゴム粉、マイカ粉、クレー、タルク、フライアッシュ、カーボンブラック、人工骨材等を使用してもよい。また、これらの材料は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。更には、粉体(粉)よりも粒径の大きな砂等を粉体に混合したものを使用してもよい。
【0033】
本発明の実施形態に係る補修材1は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、図2を参照して、本実施形態に係る補修材1の製造方法について説明する。
なお、図2は、補修材1を製造する工程を示す説明図であり、(a)は、紐状部材11を切断する切断工程を示す斜視図、(b)は、特殊アスファルト12を付着させる特殊アスファルト付着工程を示す斜視図、(c)は、石粉13を付着させる石粉付着工程を示す斜視図である。
【0034】
本実施形態の補修材1の製造方法は、切断工程と、特殊アスファルト付着工程と、石粉付着工程と、を備える。
【0035】
<切断工程>
図2(a)に示すように、ひび割れCの長さに合わせて、はさみ2等の切断手段で紐状部材11を長さ方向に対し直角に切断し、紐状部材11の長さを調節する。この場合、後記するように紐状部材11の太さは適宜調節できるため、太さが1mm程度の細い紐状部材11を使用することが好ましい。
【0036】
<特殊アスファルト付着工程>
続いて、図2(b)に示すように、切断した紐状部材11に特殊アスファルト12を付着させる。具体的には、容器3内に入った液体状の特殊アスファルト12に紐状部材11を浸すことにより、特殊アスファルト12を紐状部材11に付着させる(詳しくは紐状部材11の内部まで含浸させる)。このとき、図示しない加熱手段で容器3を加熱することにより、特殊アスファルト12を溶融させて紐状部材11に付着させる。
【0037】
<石粉付着工程>
続いて、図2(c)に示すように、特殊アスファルト12に石粉13を付着させる。具体的には、特殊アスファルト12が付着した紐状部材11を、石粉13が入った容器4内に入れることにより、石粉13を特殊アスファルト12に付着させる。
【0038】
なお、前記石粉付着工程の後、補修材1の太さがひび割れCの幅よりも小さい場合には、ひび割れCの幅に合わせて特殊アスファルト12及び石粉13を付着させる作業を交互に2回以上繰り返し行ってもよい。これにより、補修材1の太さを任意且つ迅速に太くすることができ、ひび割れCの幅に適合させることができる。
【0039】
ちなみに、太さが2mmの紐状部材11を用意して、特殊アスファルト12及び石粉13の付着作業を交互に3回繰り返す実験を、本出願の発明者が行ったところ、1回目の付着作業で紐状部材11の太さが4mm、2回目の付着作業で紐状部材11の太さが7mm、3回目の付着作業で紐状部材11の太さが13mmになることが確認された。
【0040】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る補修材1を使用して、道路Rに発生したひび割れCを補修する方法について説明する。
なお、図3は、ひび割れCを補修する工程を示す説明図であり、(a)は、ひび割れCを清掃する清掃工程を示す断面図、(b)は、ひび割れCを乾燥させる乾燥工程を示す断面図、(c)は、補修材1をひび割れCに充填する充填工程を示す断面図、(d)は、充填した補修材1を加熱する加熱工程を示す断面図である。
【0041】
本実施形態の補修材1を用いた補修方法は、清掃工程と、乾燥工程と、充填工程と、加熱工程と、を備える。
【0042】
<清掃工程>
図3(a)に示すように、ひび割れC内の清掃を行う。具体的には、エアコンプレッサー5等を使用して圧搾空気をひび割れC内に吹きかけ、ひび割れC内に堆積している(こびりついている)土砂やほこり等の堆積物6を除去する。
【0043】
<乾燥工程>
続いて、図3(b)に示すように、ひび割れCを乾燥させる。具体的には、バーナー7等の加熱手段を使用してひび割れC内及びその周辺を乾燥させる。なお、道路Rが乾燥状態にある場合には、当該乾燥工程を省略してもよい。
【0044】
<充填工程>
続いて、図3(c)に示すように、特殊アスファルト12及び石粉13を紐状部材11に付着させることにより作製した補修材1を、ひび割れC内に充填する。具体的には、ひび割れCの長さ方向の形状に沿うように補修材1を変形させつつ、手作業でひび割れC内に押し込む(図1(a)参照)。
【0045】
<加熱工程>
続いて、図3(d)に示すように、ひび割れC内に充填した補修材1を加熱する。具体的には、バーナー7等の加熱手段を使用して補修材1を加熱する。このとき、特殊アスファルト12が溶融して石粉13と混合し、この混合物Mがひび割れCの側面と紐状部材11との間の隙間まで充填されると共に、ひび割れC内で道路Rに接着する。この状態のまま自然冷却すると、混合物Mが硬化し道路Rに一体的に結合して、補修作業が完了する。
なお、紐状部材11は、補修後ひび割れC内に残置されてもよいし、充填工程後であって混合物Mの硬化前にひび割れC内から除去されてもよい。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、ひび割れCの長さに合わせて紐状部材11を長さ方向に対し直角に切断し、且つひび割れCの幅に合わせて紐状部材11に付着させる特殊アスファルト12及び石粉13の付着量を調節することにより、ひび割れCの形状(状態)に適合した補修材1を作製できる。そして、当該補修材1をひび割れCに充填することにより、ひび割れCを確実にシールできる一方、道路Rの表面への補修材1の付着を抑制できるため、車両等(例えば普通自動車、除雪車等)が補修材1に直接接触し難くなり、補修材1が剥離し難くなる。
また、充填した補修材1を加熱することにより、補修材1の特殊アスファルト12が溶融して道路Rに接着(結合)するため、ひび割れCを確実にシールできる一方、ひび割れC内において補修材1が剥離し難くなる。
したがって、本実施形態によれば、補修材1が剥離して飛散し難くなるため、長期的に安定したシール性を確保できる。
【0047】
本実施形態によれば、特殊アスファルト12が比較的柔らかく弾力性があることにより、繰り返し加わる交通荷重等による道路Rの変形に追従して変形することが可能である。したがって、補修材1の損傷を抑制して、ひび割れCの再発及び伝播を抑制できるため、長期的に安定したシール性をより一層確保できる。
【0048】
本実施形態によれば、特殊アスファルト12及び石粉13を紐状部材11に付着させることにより作製した補修材1を、ひび割れCに充填してバーナー7等の加熱手段で加熱するだけで補修作業が完了する。すなわち、補修材1が冷えた状態でも柔らかく、冷えた状態でもひび割れCに充填できるため、従来技術(例えば非特許文献1の技術)に比較して、クラック充填材を溶解釜に入れて高温になるまで加熱する作業を省略でき、補修作業が容易になる。
また、本実施形態によれば、補修材1の長さや太さを簡易に調節して、ひび割れCの形状に適合した補修材1を作製できるため、補修材1が道路Rの表面よりも盛り上がることがなく、補修材1の表面を均す作業を省略できる。
したがって、本実施形態によれば、従来技術に比較して、補修作業時の作業効率が向上する。
【0049】
本実施形態によれば、紐状部材11が変形可能であり、かつ特殊アスファルト12が柔らかい弾力性を有するため、非常に幅の狭いひび割れである、所謂ヘアークラックの補修作業を容易且つ確実に行うことができる。
また、紐状部材11が変形可能であり、かつ特殊アスファルト12が柔らかい弾力性を有するため、長さ方向に複雑に曲がった形状のひび割れCや長さ方向に沿って幅が異なる形状のひび割れCに対しても補修材1が追従して変形することが可能であり、確実にシールできる。
すなわち、本実施形態の補修材1は柔軟性(可撓性)を有するため、様々な形状のひび割れCに対応することができ、確実にシールできる。
【0050】
本実施形態によれば、ひび割れCの深さが深い場合であっても、補修材1が紐状部材11を有するため、ひび割れCの底部側まで落ち込み難くなる。
【0051】
本実施形態によれば、ひび割れCの深さが深い場合であっても、ひび割れCの上部側の幅に合わせて、補修材1の太さを調節することにより、補修材1がひび割れCの上部側で係止されやすくなるため、ひび割れCの底部側までより一層落ち込み難くなる。
【0052】
本実施形態によれば、紐状部材11に対して、特殊アスファルト12と石粉13とを交互に2回以上付着させることにより、補修材1の太さを調節して、ひび割れCの幅に適合した補修材1を簡易に作製できる。
【0053】
本実施形態によれば、ひび割れC内に紐状部材11を残置した場合であっても、道路Rのリサイクル時に紐状部材11が支障にならないという利点を有する。
【0054】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
【0055】
本実施形態では、本発明の補修材1を、道路Rに発生したひび割れCに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、駐車場、飛行場、コンテナヤード、広場、駅のホーム、歩道、遊歩道、ダム遮水壁のアスファルト舗装等のひび割れが発生する虞のある場所に適用することができる。また、コンクリート舗装体に発生したひび割れに適用してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、本発明の補修材1を、線状のひび割れCを補修するために用いたが、本発明はこれに限定されることなく、面状(亀甲状)のひび割れCを補修するために用いてもよい。この場合、複数の補修材1,1を用いることが好ましい。また、複数の補修材1,1同士は、バーナー7等の加熱手段で互いの特殊アスファルト12,12を溶融して接着し合うことにより、補修材1,1間を隙間無く繋ぐことができる。そのため、隣り合う補修材1,1の間から雨水等がひび割れC内に浸入することがなく、シール性を確保できる。
【0057】
また、図4に示すように、ひび割れCの深さが深い場合には、複数の(少なくとも2つ以上の)補修材1,1を上下に重ねるように充填して、ひび割れCの補修を行ってもよい。この場合、ひび割れCに補修材1を1つ充填する毎にバーナー7等の加熱手段で加熱することが好ましい。このようにすると、ひび割れCの底部まで補修材1を行き渡らせることができる。
【0058】
また、補修材1を部分的に太くしたり、細くしたりするように不均一に作製してもよいし、単一のひび割れCに対して分割した複数の補修材1,1を用いて補修を行ってもよい。
【0059】
また、本実施形態では、特殊アスファルト12及び石粉13を付着させる作業を交互に2回以上繰り返し行うことにより補修材1の太さを調節したが、本発明はこれに限定されることなく、特殊アスファルト12の温度を変更することにより補修材1の太さを調節してもよい。すなわち、特殊アスファルト12の温度が高い場合には、特殊アスファルト12の粘度が下がるため、紐状部材11に付着する特殊アスファルト12の付着量が少なくなる一方、特殊アスファルト12の温度が低い場合には、特殊アスファルト12の粘度が上がるため、紐状部材11に付着する特殊アスファルト12の付着量が多くなることから、前記した特殊アスファルト付着工程において特殊アスファルト12の温度を適宜変更することにより、特殊アスファルト12の付着量を調節することが可能となり、補修材1の太さを調節できる。
【0060】
ちなみに、特殊アスファルト12の付着量を多くする場合、特殊アスファルト12の温度は、例えば、100℃以上〜140℃未満に設定されることが好ましく、特殊アスファルト12の付着量を少なくする場合、特殊アスファルト12の温度は、例えば、140℃以上〜180℃未満に設定されることが好ましい。なお、特殊アスファルト12及び石粉13を付着させる作業を交互に2回以上繰り返し行う方法と、特殊アスファルト12の温度を変更して特殊アスファルト12の付着量を調節する方法と、を組み合わせて補修材1の太さを調節してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、補修材1が石粉(補強材)13を備え、補修材1の製造方法として石粉付着工程(補強材付着工程)を備えたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、紐状部材11の太さを変更したり、特殊アスファルト12の温度を変更することにより特殊アスファルト12の付着量を増減したりして、ひび割れCの幅に適合する補修材1の太さを十分に確保できる場合には、石粉13を省略し、石粉付着工程を省略してもよい。また、石粉13を省略する場合には、施行現場で補修材1を製造すること(つまり、保管作業や運搬作業等が不要であること)が好ましい。
【0062】
また、補修材1の最も外側を覆うように剥離紙(台紙)を設けてもよい。この場合、補修材1の特殊アスファルト12に剥離紙が接触するように設けられる。このようにすると、保管時及び運搬時に補修材1,1同士や補修材1と他の物が付着するのを防止できるため、保管作業及び運搬作業が容易になる。また、補修後に補修材1の余剰部分を剥離紙で保護して再利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 補修材
11 紐状部材
12 特殊アスファルト(アスファルト)
13 石粉(補強材)
M 混合物
R 道路(舗装体)
C ひび割れ
2 はさみ
3 容器
4 容器
5 エアコンプレッサー
6 堆積物
7 バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装体に発生したひび割れを補修するための舗装体の補修方法であって、
紐状部材にアスファルトを付着させるアスファルト付着工程と、
前記アスファルトが付着した前記紐状部材を前記ひび割れに充填する充填工程と、
前記ひび割れに充填した前記紐状部材を加熱する加熱工程と、
を備えたことを特徴とする舗装体の補修方法。
【請求項2】
前記紐状部材に付着した前記アスファルトに補強材を付着させる補強材付着工程を更に備え、
前記紐状部材に対して、前記アスファルトと前記補強材とを交互に2回以上付着させることにより、前記紐状部材の太さを調節することを特徴とする請求項1に記載の舗装体の補修方法。
【請求項3】
前記アスファルト付着工程において前記アスファルトの温度を変更することにより、前記紐状部材の太さを調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の舗装体の補修方法。
【請求項4】
舗装体に発生したひび割れを補修するための舗装体の補修材であって、
紐状部材と、
前記紐状部材に付着するアスファルトと、
を備えたことを特徴とする舗装体の補修材。
【請求項5】
舗装体に発生したひび割れを補修するための補修材の製造方法であって、
紐状部材にアスファルトを付着させるアスファルト付着工程と、
を備えたことを特徴とする補修材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−53497(P2013−53497A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194225(P2011−194225)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(390002185)大成ロテック株式会社 (90)
【Fターム(参考)】