説明

舗装構造

【課題】透水性及び保水性に優れ、舗装面の昇温抑制効果を比較的長期間に亘って維持することができる舗装構造を提供する。
【解決手段】舗装構造10は、砂質系土材とセメント系固化剤と団粒化剤と水との混練物を地盤11上に打設して形成された路床12と、砕石とセメント系固化剤と団粒化剤と水との混練物を路床12上に打設して形成された路盤13と、ポーラスアスファルトを路盤13上に打設して形成された舗装層14と、を備えている。舗装面14aに降った雨水などの水分は、順次、舗装層14、路盤13及び路床12に浸透していき、それぞれの団粒構造に存在する空隙中に保持される。舗装構造10においては、舗装層14、路盤13及び路床12の3つの層が透水性及び保水性を有しているため、従来の舗装構造よりも大量の水分を保持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性及び保水性を備えた舗装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
透水性及び保水性を兼備した舗装構造については、従来、様々な技術が提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の「舗装構造」がある。この舗装構造は、土と安定化処理剤との混合物を地盤上に打設して形成された路床と、土とセメント系固化剤と団粒化剤と石炭灰との混合物を路床上に打設して形成された路盤と、路盤上に形成された保水性アスファルト層とを備えている。保水性アスファルト層を通過した水分は路盤に吸い込まれ、路盤中の空隙に浸透してその中に保持されるため、これによって透水性、保水性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−37571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の舗装構造を構成する路床は緻密な構造で透水性がなく、路盤中に保持された水分が下方に移動しても路床に浸透することがないので、水分によって路床が損傷されることがない点において優れている。しかしながら、路盤中に保持される水分量には限界があるので、近年、頻発している集中豪雨やゲリラ豪雨などのように、短時間に大量の降雨が発生すると、路盤中に浸透できなくなった雨水が舗装面から溢れたり、流出したりすることがある。
【0005】
また、前記舗装構造の場合、保水性を有するのは舗装層及び路盤であるため、夏場などに晴天が長期間続いて、舗装層及び路盤中に保持されていた水分が蒸発してしまうと、舗装面の温度上昇を抑制する効果が低下することがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、透水性及び保水性に優れ、舗装面の昇温抑制効果を比較的長期間に亘って維持することができる舗装構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の舗装構造は、砂質系土材と固化剤と団粒化剤と水との混練物を地盤上に打設して形成された路床と、砕石と固化剤と団粒化剤と水との混練物を前記路床上に打設して形成された路盤と、ポーラスアスファルトを前記路盤上に打設して形成された舗装層と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
砂質系土材と固化剤と団粒化剤と水との混練物を地盤上に打設すると、団粒化剤中のイオンの作用により、砂質系土材の粒子とセメント系固化剤の粒子とが立体的な団粒構造を形成して連続した空隙が発生するとともに、セメント系固化剤の作用によりこれらの空隙が外力で破壊されない程度に固化されるため、透水性及び保水性を兼備した路床が地盤上に形成される。
【0009】
また、砕石と固化剤と団粒化剤と水との混練物を路床上にすると、団粒化剤中のイオンの作用により、前述と同様に透水性及び保水性を兼備した路盤が路床上に形成される。さらに、ポーラスアスファルトを路盤上に打設すると、透水性及び保水性を有する舗装層が路盤上に形成される。
【0010】
従って、舗装面に降った雨水などの水分は、順次、舗装層、路盤及び路床に浸透していき、それぞれの団粒構造に存在する空隙中に保持される結果、従来の舗装構造よりも大量の水分を保持することが可能となるため、優れた透水性及び保水性を発揮する。
【0011】
また、舗装層に保持されている水分は、日照によって蒸発する際に気化熱を奪うので、舗装面の昇温を抑制することができる。この場合、舗装層中の水分が蒸発減少すると、その下方に位置する路盤及び路床中の水分が上昇して舗装層中へ移動し、引き続き舗装面からの水分蒸発が継続されるので、昇温抑制効果を比較的長期間に亘って維持することができる。
【0012】
一方、前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものであることが望ましい。
【0013】
このような団粒化剤を使用すれば、比較的強固な団粒構造を形成することができるので、舗装構造の耐久性向上に有効である。なお、団粒化剤は特に限定しないが、例えば、有限会社グローバル研究所の商品名「GB−2000」などが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、透水性及び保水性に優れ、舗装面の昇温抑制効果を比較的長期間に亘って維持することができる舗装構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態である舗装構造を示す垂直断面図である。
【図2】図1に示す舗装構造を構成する路床の施工手順を示す図である。
【図3】図1に示す舗装構造を構成する路盤の施工手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1,図2,図3に示すように、本実施形態の舗装構造10は、砂質系土材20とセメント系固化剤21と団粒化剤22と水23との混練物24を地盤11上に打設して形成された路床12と、砕石25とセメント系固化剤21と団粒化剤22と水23との混練物26を路床12上に打設して形成された路盤13と、ポーラスアスファルトを路盤13上に打設して形成された舗装層14と、を備えている。
【0017】
図1,図2に示すように、1立方メートルの砂質系土材20に対し、80〜120kgのセメント系固化剤21、2リットル程度の団粒化剤22及び適量の水23を混合して形成された混練物24を地盤11上に打設して転圧すると、混練物24が固化する過程において、団粒化剤22中のイオンの作用により、砂質系土材20の粒子とセメント系固化剤21の粒子とが立体的な団粒構造を形成して混練物24中に連続した空隙が発生するとともに、セメント系固化剤21の作用によりこれらの空隙が外力で破壊されない程度に固化されるため、透水性及び保水性を兼備した路床12が地盤11上に形成される。
【0018】
次に、図1,図3に示すように、1立方メートルの砕石25に対し60〜120kgのセメント系固化剤21と、2〜4リットル程度の団粒化剤22と、適量の水23を混合して形成された混練物26を路床12上に打設して転圧すると、混練物26が固化する過程において、団粒化剤22中のイオンの作用により、砕石25とセメント系固化剤21の粒子とが立体的な団粒構造を形成して混練物26中に連続した空隙が発生するとともに、セメント系固化剤21の作用によりこれらの空隙が外力で破壊されない程度に固化されるため、透水性及び保水性を兼備した路盤13が路床12上に形成される。
【0019】
この後、ポーラスアスファルトを路盤13上に打設して固化させると、透水性及び保水性を有する舗装層14が路盤上13上に形成され、舗装構造10が完成する。
【0020】
図1に示す舗装構造10において、舗装面14aに降った雨水などの水分は、順次、舗装層14、路盤13及び路床12に浸透していき、それぞれの団粒構造に存在する空隙中に保持される。舗装構造10においては、舗装層14、路盤13及び路床12の3つの層が透水性及び保水性を有しているため、従来の舗装構造よりも大量の水分を保持することが可能であり、優れた透水性及び保水性を発揮する。
【0021】
また、舗装層14に保持されている水分は、日照によって蒸発する際に気化熱を奪うので、舗装面14aの昇温を抑制することができる。この場合、舗装層14中の水分が蒸発減少すると、その下方に位置する路盤13及び路床12中の水分が上昇して舗装層14中へ移動し、引き続き舗装面14aからの水分蒸発が継続されるので、昇温抑制効果を比較的長期間に亘って維持することができる。
【0022】
さらに、団粒化剤22として、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むもの(有限会社グローバル研究所の商品名「GB−2000」)を使用したところ、路床12及び路盤13中に比較的強固な団粒構造が形成され、舗装構造10の耐久性向上に有効であった。
【0023】
なお、路盤13を形成するための混練物24あるいは路床12を形成するための混練物26の配合比率はいずれも例示であってこれらに限定するものではないので、施工現場の状況に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の舗装構造は、車道、歩道などの一般道路あるいは公園、広場、駐車場などの舗装手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 舗装構造
11 地盤
12 路床
13 路盤
14 舗装層
14a 舗装面
20 砂質系土材
21 セメント系固化剤
22 団粒化剤
23 水
24,26 混練物
25 砕石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂質系土材とセメント系固化剤と団粒化剤と水との混練物を地盤上に打設して形成された路床と、砕石とセメント系固化剤と団粒化剤と水との混練物を前記路床上に打設して形成された路盤と、ポーラスアスファルトを前記路盤上に打設して形成された舗装層と、を備えたことを特徴とする舗装構造。
【請求項2】
前記団粒化剤が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物を含むものである請求項1記載の舗装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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