説明

舗装用カラークラックシール材

【課題】 十分な止水効果を備え、かつ、シール跡が目立つことのない舗装用クラックシール材を提供することを課題とする。
【解決手段】 熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤に加えて、剥離防止剤、粘着抑制剤、及び無機系充填材を配合してなり、必要に応じて、無機系充填材として有色の無機系充填材を含む舗装用カラークラックシール材を提供することによって上記課題を解決する。各成分の配合割合としては、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部に対し、剥離防止剤を0.1〜10質量部、粘着抑制剤を1〜20質量部、無機系充填材を10〜50質量部の配合割合が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装用カラークラックシール材に関し、詳細には、舗装表面と同系色の色調に調色され、シール跡が目立つことのない、舗装用カラークラックシール材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路舗装の表面は、紫外線を含む太陽光や、降雨、降雪等の気象作用を受けるだけでなく、交通車両による荷重を繰り返し受ける極めて過酷な状況に置かれている。このため、一旦舗装が構築された後は、直ちにその劣化が始まると言っても過言ではなく、遅かれ早かれ舗装表面にクラックが発生してくることは避けられない。
【0003】
舗装表面に一旦クラックが発生すると、そのクラックから雨水等が舗装内に浸透し、アスファルトと骨材との剥離を引き起こしたり、さらには路盤にまで浸み込んで路盤を軟弱化させ、舗装の支持力の低下を招くこととなる。舗装の支持力の低下は、舗装表面のクラック発生をさらに助長することとなり、新たに発生したクラックから浸透した雨水等がさらに支持力を低下させるという悪循環が繰り返され、舗装の寿命は著しく短縮されることとなる。このため、舗装表面に発生したクラックは早期に補修する必要がある。
【0004】
通常、舗装表面に発生したクラックの補修は、クラックに止水性のシール材を注入、充填することによって行われており、たとえば、特許文献1に示されるような常温注入タイプのシール材や、特許文献2に示されるような加熱注入タイプのシール材が用いられている。しかしながら、常温注入タイプのシール材は、クラックに充填された後の体積収縮が大きいため、十分な止水効果が得られないという欠点がある上に、充填後も表面にべたつきが残るため、交通に供用すると、比較的短時間のうちに黒色に汚れ、シール跡が際だって美観を損ねるという欠点があった。
【0005】
一方、加熱注入タイプのシール材は、止水効果の点では十分に満足ができるものの、アスファルトを主成分としているために、本来黒色であり、シール跡が黒く仕上がるという問題点がある。すなわち、通常のアスファルト舗装の表面は、骨材の間隙にアスファルトモルタルが散在した構造となっており、一般に黒灰色に近い色彩を呈している。また、通常のセメントコンクリート舗装の表面は灰色を呈している。このような黒灰色ないしは灰色の舗装表面に生じたクラックに、従来の加熱注入タイプのシール材を充填してシールすると、シール跡が黒く際立って、舗装の美観を著しく損ねるばかりでなく、黒いシール跡を運転者が落下物と誤認して、急ハンドルを切ったり、急ブレーキを掛ける場合があり、交通安全上からも好ましくないという不都合があった。
【0006】
また、近年随所に採用されているカラー舗装に生じたクラックの補修に際しても、従来の加熱注入タイプのシール材を用いると、シール跡が黒くなり、色調の調和を乱し、美観上も、交通安全上も、好ましくないという欠点がある。さらには、道路の縦断方向の舗装継ぎ目は、接着力が劣り、早期に広がってクラックを生じ易い部分であるが、通常、この道路縦断方向の舗装継ぎ目は、道路中心線、すなわち、センターラインと同位置に設けられることが多く、白色または黄色のセンターライン上にクラックが生じることとなる。このような白色または黄色のセンターライン上に生じたクラックを、黒色の加熱注入タイプのシール材でシールすると、シール跡が際立ち、美観を損ねるばかりでなく、区画線の視認が悪くなり、交通安全上も好ましいものではない。同様に、横断歩道や駐停車禁止区域など、白色の道路標示が為されている部分に生じたクラックの補修に際しても、黒色の加熱注入タイプのシール材を用いると、シール跡が目立ち、好ましいものではなかった。
【特許文献1】特開昭61−157521号公報
【特許文献2】特開昭63−60307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来のクラックシール材が有する問題点を解決するために為されたもので、十分な止水効果を備え、かつ、シール跡が目立つことのない舗装用クラックシール材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤に加えて、剥離防止剤、粘着抑制剤、及び無機系充填材を配合してなる舗装用カラークラックシール材を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明の舗装用カラークラックシール材には、無機系充填材として、有色の無機系充填材を配合するのが望ましく、無機系充填材の一部または全部を1種または2種以上の有色の無機系充填材とすることによって、本発明の舗装用カラークラックシール材の色調を、様々な所望の色調に整えることができる。もっとも、有色の無機系充填材を配合せずに、上記配合により得られる色調のまま使用しても良いことは勿論である。
【0010】
各成分の配合割合としては、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部に対し、剥離防止剤を0.1〜10質量部、粘着抑制剤を1〜20質量部、無機系充填材を10〜50質量部の配合割合が好ましく、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部の内訳としては、熱可塑性樹脂を10〜50質量部、粘着付与剤を10〜80質量部、及び可塑剤を10〜80質量部の割合にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の舗装用カラークラックシール材によれば、上記のような各成分を配合しているので、止水効果に優れる上に、シール表面のべたつきが少く、剥離したり、走行車両のタイヤ等を汚したりすることがなく、しかも、その色を調整して補修すべき舗装表面の色調に合わせることができるので、シール跡が目立たず、舗装の美観を損ねることがないことは勿論、センターラインや道路上に表示された種々の道路標示の視認性を損なうこともなく、運転者等がシール跡を落下物と誤認して、急ハンドルを切ったり、急ブレーキを掛けたりすることもないので、交通安全上も極めて好ましいという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の舗装用カラークラックシール材は、上述のとおり、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤に加えて、剥離防止剤、粘着抑制剤、及び無機系充填材を配合してなり、必要に応じて、無機系充填材として有色の無機系充填材を含むものである。各配合成分について説明すると以下のとおりである。
【0013】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる熱可塑性樹脂としては、SIS、SBS及びそれらの水添品などのスチレン系樹脂、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂などが挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0014】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる粘着付与剤としては、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂環族石油樹脂、水添石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などが挙げられ、これらの粘着付与剤は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0015】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる可塑剤としては、脂肪族油、芳香族油、脂環族油、シリンダ油などが挙げられ、これらの可塑剤は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0016】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる剥離防止剤としては、アミン系、アミド系、第4級アンモニウム塩などの界面活性剤、リン酸エステルなどが挙げられ、これらの剥離防止剤は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0017】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる粘着抑制剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、これらの粘着抑制剤は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0018】
本発明の舗装用カラークラックシール材に用いることができる無機系充填材としては、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ノイブルグ硅土、クレーなどや、顔料としても知られる有色の無機系充填材である酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、鉛白、黒鉛、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ、水酸化第二鉄、酸化鉄黄、黄鉛、酸化クロム、クロムグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、マンガンバイオレットなどが挙げられ、これらの無機系充填材は、そのいずれか1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、酸化チタンは白色であり、カーボンブラックは黒色であるので、これらを適宜配合して用いれば、本発明の舗装用カラークラックシールの色調を、横断歩道等の道路標示に近い白色や、アスファルト舗装やセメントコンクリート舗装の表面色に近い黒灰色ないし灰色に調整することができるという利点が得られる。また、たとえば、カドミウムレッドや酸化第二鉄は赤色であり、酸化鉄黄は黄色であるので、これらを適宜選択ないしは組み合わせて用いれば、赤色の有色舗装の補修や、黄色のセンターライン上に生じたクラックの補修などに使用しても、シール跡が目立つことのない舗装用カラークラックシール材が得られる。なお、上記のような有色ないしは非有色の無機系充填材は、あくまでも例示であって、本発明の舗装用カラークラックシール材には、その他、通常使用される種々の有色ないしは非有色の無機系充填材を使用することができることはいうまでもない。
【0019】
上記各成分の配合割合には、配合して得られるクラックシール材が舗装用のクラックシール材として使用できる限り、特段の制限はないけれども、シール表面のべたつきが少なく、しかも、クラックからの剥離もなく、止水性並びに耐久性に優れた舗装用カラークラックシール材を得るという観点からは、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部に対し、剥離防止剤を0.1〜10質量部、粘着抑制剤を1〜20質量部、無機系充填材を10〜50質量部配合するのが好ましい。
【0020】
剥離防止剤が0.1質量部未満では剥離防止に効果がなく、一方、10質量部を超えても、剥離防止効果はさほど向上せず、経済的でないので、好ましくない。また、粘着抑制剤が1質量部未満では、粘着抑制効果がなく、シール表面がべたつくようになり、好ましくない。一方、粘着抑制剤が20質量部を超えると、シール材のクラック内面に対する付着力が弱まり、シール材が剥がれやすくなり、十分な止水性が得られない不都合がある。無機系充填材が10質量部未満では、シール材として摩耗に対する耐久性が劣るようになるばかりでなく、シール表面にべたつきが感じられるようになるので好ましくない。一方、無機系充填材が50質量部を超えると、充填材の量が多すぎて、粘度が上昇し、作業性が劣るので、好ましくない。なお、無機系充填材として有色の無機系充填材を用いる場合には、無機系充填材の全量を有色の無機系充填材としても良いけれども、所期の色調が得られる限り、無機系充填材に占める有色の無機系充填材の量は少ない方が経済的に好ましく、通常は10質量部まで、好ましくは7質量部以下が良く、非有色の無機系充填材と組み合わせて用いるのが良い。
【0021】
また、熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部の内訳としては、熱可塑性樹脂を10〜50質量部、粘着付与剤を10〜80質量部、及び可塑剤を10〜80質量部の割合にするのが好ましい。これら3種の成分の量がこの範囲からはずれると、十分な止水効果が得られず、また、作業性や、加熱安定性に劣るようになり、好ましくない。
【0022】
以下、実施例をもって、本発明の舗装用カラークラックシール材をさらに詳細に説明する。
【0023】
〈実施例1〜3〉
以下の表1に示す配合で、各材料を加熱釜内で加熱しながら溶解、混合し、本発明の舗装用カラークラックシール材1〜3を製造した。製造された3種の舗装用カラークラックシール材の色調は、実施例1のものがやや明るい灰色、実施例2のものは灰色、実施例3のものは黒灰色であり、セメントコンクリート舗装ないしアスファルト舗装の表面色と同系色であった。
【0024】
【表1】

【0025】
〈比較例1〜2〉
以下の表2に示す配合で、各材料を加熱釜内で加熱しながら溶解、混合し、比較例1及び比較例2のシール材を製造した。なお、比較例1のシール材は、従来の加熱注入タイプのシール材であり、その色調は黒色であった。一方、比較例2のシール材は、通常使用されている樹脂バインダであり、その色調は薄茶色であった。
【0026】
【表2】

【0027】
〈引張接着試験〉
上記実施例1〜3の舗装用カラークラックシール材と、比較例1〜2のシール材を用いて、JIS K5400に規定されている付着強さの試験方法に準じ、引張接着試験を行った。すなわち、70×70×20mmの大きさの鋼板の片面に、約200℃前後に加熱した実施例1〜3及び比較例1〜2のシール材のそれぞれを約3mmの厚さに塗り、試験温度まで冷却した後、その上に引っ張り用の鋼製ジグを載せ、さらにその上に質量約1kgの錘を載せて、24時間静置した。静置後、錘を取り除き、ジグの周りを40×40mmの大きさに、鋼板に達する切り傷を付け、その状態で引張試験機にセットして、鋼板に対して鉛直方向に引張荷重を加えて、最大引張荷重を測定した。引張接着強度A(MPa)は、測定された最大引張荷重T(N)から下記の計算式によって求め、各シール材ごとに3回行った結果の平均値を求めた。試験温度は5℃と20℃の2種類で行った。結果を表3に示す。
計算式:
A(MPa)={T(N)/16(cm)}×10/10
【0028】
【表3】

【0029】
表3に示すとおり、実施例1〜3のシール材は、いずれも、試験温度5℃においては1.5MPa以上、試験温度20℃においても0.8MPa以上の高い引張接着強度を示し、これは、従来の加熱注入タイプのシール材である比較例1のシール材と比べて、同等若しくはそれ以上の強い引張接着強度であり、本発明の舗装用カラークラックシール材が、クラックシール材としてクラック内面や舗装表面と強く付着して、剥離し難く、高い止水性と耐久性を有することを示している。一方、本来、樹脂バインダに過ぎない比較例2のシール材は、引張接着強度が、5℃において1.1MPa、20℃においては0.5MPaと低く、クラックシール材に必要とされる高い引張接着強度の要件を満たさないものであることが分かった。
【0030】
〈付着性試験〉
上記実施例1〜3の舗装用カラークラックシール材と、比較例1〜2のシール材を用いて、以下に示す方法で、付着性試験を行った。すなわち、30×30×4cmの大きさのコンクリート板の表面にセロプライマーを塗布して乾燥させた後、4×6×0.3cmの大きさの型枠をコンクリート板上にセットし、その中に、約200℃前後に加熱した各シール材のそれぞれを流し込み、室温まで冷却後、型枠を外して、試験温度である60℃で2時間養生した。養生後、質量既知のゴムシート(15×15×0.1cm)をシール材の上に置き、その上にさらに波形ゴム板(30×30×1cm)を置いて、その上を、ホイールトラッキング試験のソリッドタイヤを5往復トラバース走行させ、トラバース走行終了後、ゴムシートを引き剥がし、ゴムシートに付着したシール材の質量を測定した。付着率(%)は下記の計算式によって求め、各シール材ごとに3回行った結果の平均値を求めた。結果を表4に示す。
計算式:
付着率(%)={(引き剥がしたゴムシートの質量−当初のゴムシートの質量)/(型枠に流し込んだシール材の質量)}×100
【0031】
【表4】

【0032】
表4に示すとおり、実施例1〜3のシール材は、いずれも、付着率が0.0であり、上に載せたゴムシートに全く付着することなく、剥がれなかったのに対し、従来の加熱注入タイプのシール材である比較例1のシール材は、23.3%もの付着率を示し、約1/4のシール材がゴムシートに付着して剥がれた結果となった。また、樹脂バインダに過ぎない比較例2のシール材に至っては、実に70%もの付着率を示し、ソリッドタイヤの5往復のトラバース走行によって、シール材のほとんどがゴムシートに付着して剥がれてしまったという結果が得られた。この結果から明らかなとおり、本発明の舗装用カラークラックシール材は、そのシール面にべとつきがなく、その上を車両のタイヤが走行しても、タイヤに付着することがほとんどない極めて優れたシール材である。
【0033】
〈浸透性試験〉
実施例3のシール材と、比較例1のシール材とを用い、以下の要領で浸透性試験を行った。すなわち、縦100mm、横200mmの2枚のガラス板を重ね合わせ、横200mmの辺が上下になるように横長にして垂直に立設し、立設させた2枚のガラス板の上辺の両端部において対向するガラス板の間に厚さ2.5mmのスペーサーを挿入して、2枚のガラス板の間に上部が開口した楔状の空間部を形成する。次いで、この楔状の空間部に、浸透性を試験するシール材を上部から幅約130mmにわたって注入し、注入したシール材が楔状の空間部に浸透して上部に空間が生じた場合には、さらにシール材を楔状空間部に注入する作業を繰り返し、シール材が楔状空間部の上部まで充填されたのを確認して注入作業を終了する。注入作業が終了した時点で、シール材が楔状空間部に浸透した深さを約130mmの注入幅にわたって測定し、その浸透深さの最低値をもって、そのシール材の浸透深さとした。なお、浸透性試験は、各シール材を加温して、粘度を、1Pa・sまたは0.5Pa・sに調整して、各粘度毎に2回行い、各シール材の各粘度における浸透深さの平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0034】
【表5】

【0035】
表5の結果に示されるとおり、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例3のシール材は、従来の加熱注入タイプのシール材である比較例1のシール材に比べて、同じ粘度で比較した場合、ほぼ同等の浸透深さを示し、浸透性において優れており、十分にクラックシール材として使用できるものであることが分かる。
【0036】
〈作業性試験〉
実施例3のシール材と、比較例1のシール材とを各温度に加熱し、作業性の目安となる各温度での粘度を測定した。なお、粘度の測定は、二重円筒型回転粘度計を用いて行った。結果を表6に示す。
【0037】
【表6】

【0038】
表6の結果に見られるとおり、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例3のシール材は、従来の加熱注入タイプのシール材である比較例1のシール材に比べて、高温粘度はやや高めであるが、注入作業には問題のない粘度であり、良好な作業性を有していることが分かる。
【0039】
〈加熱安定性試験〉
実施例3のシール材と、比較例1のシール材とを用い、各シール材を260℃に加熱して4時間保持し、室温に冷却するというサイクルを3回行い、3回のサイクルを行う前後での針入度、軟化点、フラース脆化点を測定し、加熱による劣化の程度、すなわち、加熱安定性を試験した。なお、針入度、軟化点、フラース脆化点の測定は、いずれも、JIS K 2207に規定されている測定方法に準拠して行った。結果を表7に示す。
【0040】
【表7】

【0041】
表7の結果に示されるとおり、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例3のシール材は、260℃に加熱して4時間保持後冷却するという熱サイクルを3回受けても、針入度、軟化点、フラース脆化点のいずれの特性においても、殆ど変化せず、極めて加熱安定性に優れていることが分かる。一方、従来の加熱注入タイプのシール材である比較例1のシール材は、同様の熱サイクルを受けると、若干ではあるけれども、特性が劣化しており、加熱安定性の点で、本発明の舗装用カラークラックシール材は、従来の加熱注入タイプのシール材よりも優れているという結果が得られた。
【0042】
〈実施例4〉
表8に示す配合で、各材料を加熱釜内で加熱しながら溶解、混合し、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例4のシール材を製造した。製造されたシール材の色調は、明るい灰色であり、セメントコンクリート舗装の表面に生じたクラックに注入、充填しても、そのシール跡が目立つことがない。
【0043】
【表8】

【0044】
〈実施例5〉
表9に示す配合で、各材料を加熱釜内で加熱しながら溶解、混合し、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例5のシール材を製造した。製造されたシール材の色調は赤色であり、赤色のカラー舗装の表面に生じたクラックに注入、充填しても、そのシール跡が目立つことがない。
【0045】
【表9】

【0046】
〈実施例6〉
表10に示す配合で、各材料を加熱釜内で加熱しながら溶解、混合し、本発明の舗装用カラークラックシール材である実施例6のシール材を製造した。製造されたシール材の色調は黄色であり、黄色のセンターライン上に生じたクラックに注入、充填しても、そのシール跡が目立つことがない。
【0047】
【表10】

【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明の舗装用カラークラックシール材は、その色調を自在に調整することができ、補修すべき舗装の表面色と合わせることができるので、アスファルト舗装、セメントコンクリート舗装、カラー舗装のいずれに発生したクラックの補修に使用しても、また、白色または黄色のセンターライン上や、横断歩道等の白色の道路標示上に生じたクラックの補修に使用しても、その補修後のシール跡が際立つことがなく、既設舗装の美観を損なうことがない上に、車両の運転者等がシール跡を落下物と誤認して、急ハンドルや急ブレーキを掛けたりすることも、また、センターラインや道路標示の視認性を損なうこともなく、交通安全上極めて有用である。また、本発明の舗装用カラークラックシール材は、止水効果に優れる上に、そのシール面はべとつきが少ないので、シール面上を走行する車両タイヤに付着して、タイヤを汚したり、自身が剥がれてしまうこともなく、長期に亘って良好な止水効果を持続することができるものである。このように、舗装用カラークラックシール材は、既設舗装のクラック補修に威力を発揮し、道路は勿論、駐車場や飛行場、コンテナヤードや広場、遊歩道等、あらゆる場所におけるクラックの補修に利用できるものであり、これら道路等の維持管理に極めて有用な材料である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、粘着付与剤、可塑剤に加えて、剥離防止剤、粘着抑制剤、及び無機系充填材を配合してなる舗装用カラークラックシール材。
【請求項2】
無機系充填材として、有色の無機系充填材を含む請求項1記載の舗装用カラークラックシール材。
【請求項3】
熱可塑性樹脂、粘着付与剤、及び可塑剤の合計100質量部に対し、剥離防止剤を0.1〜10質量部、粘着抑制剤を1〜20質量部、無機系充填材を10〜50質量部配合してなる、請求項1または2記載の舗装用カラークラックシール材。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を10〜50質量部、粘着付与剤を10〜80質量部、及び可塑剤を10〜80質量部配合してなる請求項3記載の舗装用カラークラックシール材。

【公開番号】特開2006−249704(P2006−249704A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64725(P2005−64725)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000233653)ニチレキ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】